冬の訪れ
いつの間にか、風がひんやりと冷たい季節になった。
首元だけはどうにかマフラーを巻いていたけれど、制服のスカートから覗く足も袖口から覗く指先も冷気に晒されて悴み赤くなっていた。
学校からの帰り道、気軽に寄り道するにはあまり適した気温ではない。

「唯」

呼ばれて振り返るとふんわりと優しい笑みを乗せて缶ココアを差し出す片割れの姿があった。
買い物をして帰ると言った唯に、心配だから、とついてきた自分の兄は普段は無愛想なくせに唯の前でだけは柔らかく笑って見せる。
自分だけを甘やかして、自分だけの為に笑って、自分だけを大切にする兄は相当に過保護だ。過保護だとわかっていてその優しさに甘えている唯は、だからこの時も一臣と同じように甘く笑んで差し出された缶を受け取った。
すぐに飲めるようにだろうか、すでに蓋は開けられていたのでそのまま口に含む。人によっては甘すぎるかもしれないが、冷え切った体にはその甘みも温かさもちょうど良かった。

「あったかい…」
「唯、手、貸して」
「うん」

缶を持つ手とは反対の手を言われるがまま差し出すとそっと壊れ物に触れるかのような仕草で包まれる。
同じように冷気に晒されているはずなのに、一臣の手の温度は唯のそれよりも少しだけではあったが温かかった。

「やっぱり冷たいね。買い物ついでに手袋買おう」
「お兄ちゃん選んでくれる?」
「もちろん」
「じゃあ唯はお兄ちゃんの選ぶね」
「ありがとう」

片方にココアの缶、もう片方は一臣の手に繋がれて、冷たい風が吹く中を歩く。
頬に当たる風は突き刺すように冷たいけれど、手に持った缶を頬に当てると温度差の所為で痛みを感じたのでそのままにした。
隣を歩く一臣はそれら全て見ていたようで、くつくつと笑って、それから空いた手で頬に振れる。
缶のような温度差はなく、じんわりと温かい手が頬を温めた。
これは甘えかもしれない。けれど唯がぐずぐずに甘えてもそれを寧ろ望んでいる節のある一臣は望む以上に唯を甘やかす。
あったかい、と先と同じ言葉を先より甘く口にして目を閉じると、剥き出しになっていた他他の肌がそうであるように冷え切った額に柔らかいものが触れた。

      


2010/11/28〜2011/04/1までのもの。

鬱陶しいほど仲良しなキタハム。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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