肩凝り。 |
こきり。 固まった筋肉をほぐすついでに首を曲げると関節が悲鳴を上げるように音が鳴った。 肩の辺りがだるいから、これは肩凝りかもしれない。 キィ、と椅子の背もたれに身体を預けてパソコンのディスプレイから距離を取る。目の粘膜が乾いたように引きつって、瞬きをした瞬間痛みが走った。 少し根を詰めすぎたかもしれないと思って首を反対の方向へ傾げるとまた音が鳴って少しばかりげんなりとした。 魔王城のセキュリティは悪魔たちの力だけでなく人間の作り出した機器をも使って整えられている。専らそれを調整するのはナオヤの役目で、同じくそういった知識に精通しているはずのアツロウさえも手出し出来ないほどの領域になっている。腐っても天才プログラマーと呼ばれただけはあるといったところか。 ふう、と小さく息を吐くと、相も変わらず部屋に入り浸ってソファで雑誌を読んでいたはずのレンの気配をほんの間近に感じた。 「どうした?」 振り返らず訊ねてもレンは驚きはしない。彼が魔王となり自分が彼の側近となってからも、彼が人であり自分も仮初めに人の真似事をしていた頃からも、余りに長い時間傍にいた所為だ。 「かっちかち…」 それだけの短い会話をして、レンはナオヤの肩に両手を置き揉み解すように指を動かしていく。 「ありがとう」 常になく素直にそう感謝を伝えると、一瞬驚いたように指の動きが止まって、照れくさそうな笑い声が返ってきた。
拍手。2010/11/18〜2011/04/01までのもの。 たまにはナオヤさんに優しいレンで。
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