もう一度、始まり。

一度すべてを失った。

それはわたしの弱さの所為。
だからもう、わたしは立ち止まれない。
一度失くしてもう充分泣いたから。
一生分の涙を流して自分の愚かさを悔いたから。
だからわたしは立ち止まるわたしを許さない。
何も出来ないと嘆くことは終わりにしよう。
守られてばかりいては失うだけで、失ってしまってからではそれを取り戻すことは出来ない。
わたしが導いてしまった運命を二度と繰り返すことは許さないし、許されない。
絶望に打ちひしがれることも、子供のように泣き叫ぶことも、時間を浪費するだけで何も生まない。
立ち止まって惑う時間があるのなら時空を超えて過ちを正しに行く。
それしかもう、わたしが出来る贖罪はない。

みんなの、続いていくはずだった未来への道を閉ざしたわたしには。

祈った。
みんなのいる時空へと。
わたしがわたしの所為で消してしまったみんなの未来が、まだ存在する時空へ。
時を司る白龍の逆鱗には、時空を超える力がある。
逆鱗を奪われれば消滅すると知っていてわたしを生かす為に逆鱗をくれた白龍。
生きて、と言った彼の言葉はとても重いけれど、わたしは生きなくてはいけないから。
過ちを正せるのはわたししかいないから。

わたしはもう、あの運命を辿ってはいけない。
みんなにも、辿らせる訳にはいかない。
赤く染まった京を、すべてを焼き尽くす炎を、もう見たくない。
悲劇は二度と繰り返してはならない。

その為にだけ、わたしは生きている。
みんなを、みんなで生きられる未来へ導く為に。

どうか、どうか。

「お願い、白龍の逆鱗よ。わたしに時空を超える力を」

悲痛に眉を顰める顔を笑顔に。
悲しみに涙するのなら、その涙を拭いに。
苦しみに嘆くのなら、その禍根を断ちに。
わたしは行く。

光が身体を包む。
目を開いていても尚暗闇が支配する世界を通り、また光が見えた。
眩しさに目を瞑り、次に目を開いたときには辺り一面に雪が積もっていた。
冷たい雪の感触。
これはわたしが一番最初に見た景色。
遠くに見える小さな子供の姿。
それは祈りが届けられたことを意味する。

「お願い朔、手伝って」
「え、ええ」

怨霊を封印して、朔と白龍を見る。
初めてではないけれど、はじめましてと口にして、わたしは過去のわたしが歩んだ運命の出発点へと立った。

何も出来ないなら、出来るようになってやる。
女の子らしい指もいらない。剣だこだらけになったって構わない。
どんな怪我を負っても、それがたとえ一生身体に残ってもいい。
わたしの所為で誰かを失う怖さに比べたら、そんなもの痛くも痒くもない。

前に進むしか残されていないわたしには、何度逆鱗を使って過去へ戻ったとしても、後ろを振り返って立ち止まっている余裕なんてない。
運命を上書いて、みんなに、わたしの所為で苦しんだみんなに、その分安らぎを。

守られる神子なんかに、わたしはもう、絶対にならない。

 


二周目に入るとき。
守る神子にならなくてはならなかった望美が、他の時代の守られる神子と違いすぎて、哀しくて愛しい。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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