if...
やばい。やられる。こんなはずじゃないのに。
出来ると思った。こんな相手に手間取るようではこの先やっていけない。そう思っていた。
けれどこのままでは撤退するしかない。悪くすれば魚の化け物みたいなこの使徒になぶり殺しにされる。
負けたくない。だけど――…!

「や、いやあああっ!」

殺される。そう思った瞬間、どこからか白銀のエヴァが現れた。
何よあれ…、と思うアスカだったが、搭乗者らしい少年は使徒に言う。

「レディーには優しくするもんだよ!」

頬をが一気に熱くなる。そんな場合ではないのにも関わらず、だ。
加持はいつだってアスカを子供扱いしたし、シンジやクラスメイトはそういった対象ですらない。だからレディーという単語に、恥ずかしい台詞、と半ば呆れるように見ていたのだが、そう言った少年は颯爽と現れた登場に見合った圧倒的強さで使徒を殲滅した。
あまりの手際の良さに自分との力量の差を見せ付けられた気がした。
もしこれがレイであったりシンジであったのなら、あたしにだって出来るわよ!と啖呵を切ることもしただろう。けれど、そんな言葉も出ないほど鮮やかな戦い方だった。シンクロ率もアスカの知る適合者の比ではないだろう。

「グッドラック」

一心に見つめていたアスカにただ一言を残して、彼はそのままどこかへと消えてしまった。
(誰だったんだろう…新しいパイロット?)
アスカの疑問に答えをくれる人間はその場にはいなかった。

      

プラグスーツを脱いで、シャワーを浴び、レモンイエローのワンピースに着替える。愛用のコロンを振って、髪をいつものように纏め上げた。
部屋を出てしばらく歩いていると、全体的に色素の薄い少年が佇んでいた。
ハーフか何かだろうか。恐ろしく整った顔立ちをしている。まじまじと観察していたアスカに気づいたのか、その少年は薄く笑んで、

「やあ、大丈夫だったかい?」

と言った。
その声で気づく。先ほどの少年だ。
お礼を言わなければ、と思い笑顔を作る。助けられたのがレイやシンジであっても一応のお礼は言おうとする。実際に言えるかどうかはさておいて、アスカはそういう人間だ。

「さっきは、その………あ、ありがと。助かったわ」

多少声が小さくなっていたものの、目の前の少年にはしっかりと聞き取ることが出来たらしく、どういたしまして、と笑った。
どこか作り物めいた彼の顔が、笑みが深くなるにつれ、柔らかな雰囲気に変わる。その様子になぜかほっとしながら、アスカは笑みを返した。

「自己紹介…っていうのも変だけど、あたしはアスカよ。あんたは?」
「僕は渚カヲル。よろしく、可愛いパイロットさん」

かゆい。言動のあまりのかゆさに思わず後ずさりかけた。けれど邪気のない様子で手を差し出されたので、アスカもつられて手を差し出す。
触れた瞬間、何故か違和感に似た感じを受けたのだけれど、それには気づかないふりをした。その意味を知るのはまだ先のことになる。

「銀色のエヴァ、あんたのよね?」
「そう。四号機。カラーリングは搭乗者に合わせてあるのかな?君のエヴァはとてもきれいな赤だった」
「あんたのもね。あ、カヲル…でいい?あんたの髪と同じきれいな色だった」
「ありがとう。構わないよ。僕もアスカって呼ばせてもらう」

その言葉にアスカは少し頬を染めて、出会ったばかりだと言うのにカヲルに対して加持に相対する時に見せるような笑顔を浮かべた。
それがどうしてなのかはアスカもわからない。きっとカヲルの笑顔に感化された所為だと適当に結論付けて、終わらせた。
その日はそれだけだ。シンクロテストの時にでも会うだろうと簡単な言葉で別れを告げた。

「セカンドチルドレン…か。君、あんまり危ないことしてると壊れちゃうよ」

背を向けて歩き出したカヲルが口にした言葉を、アスカは気づかなかった。

           

「シンクロ率400%!?」

ありえない、とテスト結果を見て思わず零した。
高いだろうと思っていたカヲルのシンクロ率は、アスカがどうがんばったって叩きだすことの出来ない数値だ。驚きながらカヲルの顔を伺うと、平然とした笑みでミサトやリツコの話を聞いている。
レイはそれに大して興味もない様子で、シンジは逆にカヲルにすごいすごいとまとわりついていた。
アスカの数値は良くも悪くも平均的だ。落ちていなかった分マシなのだろうが、上がらないということはやはりいつシンクロ率が下がって弐号機を降ろされるかわからないということだ。漠然とした不安のようなものが胸に渦巻いて、素直に賞賛する気にはなれなかった。

「アスカ」
「え?」

なんとなく居心地の悪さを感じて背を向けたアスカに声がかけられる。顔だけで振り返ると、カヲルが駆け寄ってきた。後ろからはシンジがついてきている。
それになんだか苛立ちにも似た感情が湧き、アスカはそのまま何も言わず立ち去った。
結果的に無視に近い対応をしたことにほんの少し、後悔をしながら。

電車に揺られ、家路につく。けれど家に戻っても誰もいないことは明白だ。
カヲルの数値についてミサトはリツコと話し合っているし、シンジはカヲルと一緒だろう。誰かの家に寄ることも考えたが、ヒカリは基本的に忙しいし、トウジと一緒にいる可能性もある。加持に至っては連絡を取れることの方が稀だ。
そこまで考えて、家に帰ることが嫌になり、アスカは降車駅より1つ手前の駅で降りた。
大して距離がある訳でもないが、のんびり歩いていけば気分転換くらいにはなるはずだ。

1つ手前の駅からぼんやりと歩く。
にぎやかな場所を通れば気分も晴れるのではと思ったのだけれど、軽快な音を奏でるゲームセンターにも可愛らしい服が置いてあるショップにも寄る気にはなれなかった。
これではなんの為の気分転換だ、と溜息をつき、空を見る。
薄曇の空はアスカの心と同様に晴れやかとは言いがたかった。

どうせ食事もないんだろうな、と手近な店で買ったファーストフードを、人気もまばらになった公園で食べる。
やはり大しておいしくはない。
お腹が減っているはずなのに、食べる気になれなくて、結局バーガーもポテトも何口か食べただけで袋に仕舞い込んだ。ストロベリーのシェイクだけを残して後はくずかごに捨てる。作ってくれた人ごめんなさい、と心の中で謝って。
チープな味だけれど、シェイクは嫌いではない。季節的にも冷たい飲み物は丁度よかったし、甘ったるい香りもささくれ立った気分を和らげてくれた。

どれくらいそうしていただろうか。
中途半端に残ったシェイクはとけきってしまって、今更飲む気にもなれない。気分転換のはずが、結局気分はネルフを出た時と何も変わっていなかった。

「…なんか、ばかみたい」

呟いたアスカの隣で、とさ、と音がした。
不思議に思って見ると、よく見慣れたコンビニの袋。そのまま視線を上げれば色素の薄い少年が立っていた。

「…フィフスチルドレン」
「今日はカヲルって呼んでくれないのかい?」
「……」

口を噤んでそっぽを向くアスカに、カヲルはただ笑った。
いつまで経っても立ち去らないカヲルに根負けして、ようやくアスカも向き直る。

「…何の用よ」
「君に会いたくて」
「会ったじゃない」
「話してないよ」

はあ、と溜息。降参だ。
確かに勝手に卑屈になって勝手に苛立って勝手に一人で帰ってきたのはアスカだ。理由があるならともかく、苛立った原因に関してはアスカだってよくわかっていないのに。
カヲルのよくわからない笑顔に、苛立っている自分がバカらしくなって、また溜息。

「シンジは?」
「アスカがご飯食べずに帰ってきたら困るから家に帰ってご飯作るってさ」
「へえ」
「僕も行くけど。」
「…案外ちゃっかりしてるのね」
「人と食事するなんて機会少ないからね」

わかったわよ。帰る。アスカがそう言うとカヲルが手を差し出す。
その手の意味がわからずカヲルを見ると、相変わらず彼は笑って、

「お手をどうぞ?お姫様」

と言った。
言われるままに手を乗せ、立ち上がる。無性に笑い出したい気持ちになって、その衝動のままに笑ったら、やっと笑ったね、とカヲルが言った。

なんとなく、乗せた手をそのまま繋いで、歩いた。

         


パチのエヴァ5をやってたら書けと言わんばかりにあまりにもカヲルくんとアスカがセットになって出てきたので暴走してみた。
ビジュアル的にはレイとカヲルくんが並ぶより、アスカと加持さんもしくはシンジが並ぶよりときめく。
…ちなみに続きます。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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