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ミサトが本部で碇ゲンドウに報告をしている頃、アスカとカヲルはファーストフード店にいた。全国チェーン店で24時間営業。行き場のない二人は向かい合わせでポテトを摘みながら、これからどうしよう、と呟いた。

「いつまでもここにいる訳にいかないわよね」
「かといってどこかへ行くあてがある訳でもない」
「その通りね」

傍らに大きめの旅行バッグが二つ。日常から持ち出したのはほんの少しの荷物だけだ。
制服のままでは目立つからと私服に着替えて待ち合わせをし、その辺の雑貨屋で度の入っていない眼鏡を買って変装代わりにかけてみた。似合わない、と指をさして笑った。
希望を求めて第三新東京市を出た訳ではなかった。けれどあそこにいては無理だと思った。だから出た。出てどうしようとまでは考えていなかったのだけれど。
それでもこうして、ただの中学生として向かい合っているのは悪くないと思った。

「出るのは意外と簡単だったね」
「出てからが問題なのよ」
「一応僕たちこどもだからね」
「大人だったらもっと簡単だったのに」

大人であれば、いやせめて高校生であれば、適当な場所で働いて、暮らしていくことも出来ただろうに。
かといって今更戻れない。やっていくしかないのだ。
ポテトを咥えてぼんやりと考える。かき集めてきた手持ちの金は二人合わせて大人の平均月収1ヶ月とちょっとあるかどうか。エヴァのパイロットの割には少ないと嘆くべきか、中学生にしては大金だと息を吐くべきか。
まだ少年であり少女でしかない自分たちは、エヴァに乗っていた際に得たお金のうちのほとんどを自分たちの意思とは無関係に勝手に作られた口座に勝手に貯金されているのだ。本当の意味で自由に出来る金額は意外と少ない。
けれど、いつ連れ戻されるかもわからないのだ。使い切るまで自由でいられる確証もない。

「ここを出たら、どうしようか」
「とりあえず泊まるとこね。朝になったら、もう少し遠い場所に行くわよ」
「遠いところ?」
「そう」
「ドイツにでも行ってみるかい?」
「言葉には不自由しないけどね。旅費がかかるわ」

チョコシェイクを口に含んで、ドイツまでっていくらだっけ、と考えた。

「いっちばん安くて簡単に泊まれるところがこーゆうとこってなんか嫌ね…」
「こんなところってラブホテル?」
「口に出して言わないでよ!」

一番安く、手っ取り早く泊まれるところ。
年齢をみてどうこう言われては適わない。
そうなると不本意だがラブホテルが最適だった。店員だって監視カメラごしでしか人を見ないし、客の年齢になんかそうそう頓着しない。エントランスで他の客に会ったって向こうもわざわざ注意したりしない。
宿泊料金を払う金ぐらいはちゃんとあるのだから別に構わないだろう。
だけどやっぱり不本意だ。
こんなところで泊まるなんて!と思うけれど、言い方は悪いがなるべくこそこそするべきなのだ。痕跡は残せない。何せ逃亡中の身なのだから。

荷物を適当に置いて、必要なものだけを取り出してバスルームへ向かう。
場所は違うのに、普段から慣れ親しんだシャンプーやボディソープの香りはいつも通りで、変な違和感をアスカに与えた。
湯船に浸かってぼんやりとしていると、これからどうしよう、と何度目かわからない問いが浮かぶ。なるようにしかならないのだとわかってはいる。けれど、なるべくなら長く、もっと言えば、ずっと見つからずに生きていけたらと思う。
おそらくアスカは不要と言われるだろう。それはもういい。本当はあまりよくはないけれど、自分で選んだのだ、後悔はしない。けれど、見つかった場合、どうなるか。
アスカは弐号機を降ろされるだろう。厳重な処罰も与えられるかもしれない。
ではカヲルは?
使徒と知られればどうなるかなんて明白だ。使徒を殲滅するための組織なのだから。
そう考えれば絶対に捕まる訳にはいかないのだと決意を新たにする。
そして思う。
今までアスカが、アスカたちが殲滅してきた使徒も、言葉を話せて、見た目がもっと人に近ければ、ただ戦いあうだけではない解決が望めたのでは、と。
それはアスカの甘さだ。カヲルを知ったがゆえの甘さだった。知らなければ疑問を持たずにいられた。使徒は倒すべき標的だった。
長湯し過ぎたのか、ふいにくらり、と眩暈を感じ、アスカは湯船から立ち上がる。
バスルームを出たところで本格的に立っていられなくなってしゃがみこんだ。どうにかバスタオルを掴んで引き寄せるけれど、立ち上がるのは難しそうだった。

「…どうしよう」

助けを呼べるのはカヲルしかいない。それはわかっている。けれど自分は裸だし、バスタオルを巻きつけたとしても、たかが布一枚。使徒ではあるけれど、男なのだ。そしてここは、そういう場所で。
(ああもう!どうしろってのよ!)
半ば自棄になって舌打ちをする。この場でこのままやり過ごすにしても風邪を引くだろうし、湯あたりがひくまでには大体30分はかかる。
だから一番良い選択肢は、と考えているうちに視界が闇に包まれた。

    

「……もう少し、危機感とか持って倒れて欲しいんだけどな」

余りに遅いアスカに声をかけるかどうか迷っているうちに、とさりという音がした。遠慮がちにカヲルが顔を出すとぐったりと倒れこんでいるアスカの姿があった。
バスタオルを巻きつけただけの格好は、無防備というか、まるで据え膳で、カヲルは頬をかく。
だが、さすがにこの状態でどうこう、という訳にもいかない。
仕方なくアスカを抱えあげてベッドへ寝かせ、タオルを濡らして額に乗せる。
自分はのぼせないようにしよう、と思いながらカヲルもバスルームへと入った。

         


とりあえず第三新東京市脱出。
2人だとビジネスホテルよりラブホテルのが安くて綺麗なとこいっぱいある。
さて。LAKで色っぽい話は需要があるのか否か。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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