甘き死を、君に
アレクシエルを求め、無道刹那を愛し、彼は生きた。
そして彼は今、自分の命をも手中にしている。

もうすぐお別れだ、この大嘘つき。

加藤がまだ、人間として生きていた時。彼は自分にとって、とても近しい人間だった。実際は人間ですらなかったのだけれど、ともかく。
きっかけはなんだったか、身体を重ねたことがある。
何度か身体を繋げて感じた疑問を、それからまた何度かして尋ねてみた。

『なあ、お前俺のこと好きなの?』
『そう言って欲しいなら言うけど』
『なんだそれ』

わざとらしく吐いた溜息に、彼は言葉が欲しいならいくらでもやると言った。
確かに望めばもらえた。別に欲しかった訳でもなかったから、冷やかし程度に数回尋ねただけだけれど。

『じゃあ言ってみ?』
『好きだよ』
『なんだよそれ』

言えと言うと、望むだけ望んだ量帰ってくるのがとても不愉快だった。
愛というものは、自分にとってどこか遠いもので、だからあまり、本当は知らないのだけれど。
それでも愛というものは過不足あってのものなのだろうと思う。だから、望んだ量だけ帰ってくるのはそれが偽りだということだ。
別に愛なんてものが存在していると思っていた訳ではない。
そして、自分にも彼にも、愛なんて言葉は似合わない。
愛情を知らず生きた自分。愛情を否定して生きた彼。どちらにも、そんな甘やかなものは似合わない。
ただ、無性に苛立ったのを覚えている。

それが、何の感情もない癖に割り開かれる身体の痛みにか、自分の心は赦さない癖に人の心にはずかずかと入り込んでくる無神経さにかはわからない。

野良猫が気まぐれに身体を摺り寄せ合うような。怪我を負った傷を舐めあうような。
結局、そんな刹那的なものしかない。自分たちの間には、そんなものしかないし、それ以上のものを必要とはしていなかった。
だから一夜の宿ではあっても、家ではないように、決して永遠ではない。

何もない。

何もなければ、別にどうというものでもない。
彼が自分を殺すことも、どうということではない。
彼は自分の生きたいように生きたし、自分もようやく自分らしく生きることが出来たのだ。
現実世界の生をなくしてから本当に生を全うしたなんて、なんて滑稽。
けれど、人間なんて所詮滑稽な生き物で。そうでない彼はきっと笑うだろうけれど、所詮そんな生き物で。だから。

「さようなら」

永遠に。
ひと時ぬくもりをくれてありがとう。
彼の生きた長い年月にすれば、瞬きするほどの、自分にしてみれば人生の中のほんの短い時間。
愛情ではなかったけれど、彼が自分に与えてくれたぬくもりは、とにかく優しかったから。
甘やかなものではなかったけれど、とても優しかったから。
ありがとうと言外に滲ませて、さようなら。

「…お前が望んだ眠りを」

その言葉に苦笑を返して。

ゆっくり目を閉じた。

(さようなら、優しい大嘘つき)

 


両思いでも絶対通じ合わないキラカトが好き。
甘やかな死という形で愛を。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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