バグ
「寂しいの?」

カラミティのコックピット。ひとりになれる場所を探して入り込んだのは自分が自分であるための愛機だった。
本来なら必要な時以外立ち入ることは禁止されているが、カラミティの調整がしたいというと、すんなり通ることが出来た。
ようやく落ち着ける、と息を吐き、何をするでもなく時間を過ごす。
しばらく経った頃、遮断されているはずの回線にノイズ交じりで男が映った。

「んだよてめえ…」

見知らぬ男だった。グリーンの髪にオレンジ色のメッシュ。少なくともオルガの中にある記憶にこんな男の顔はない。
先の台詞とその事実にオルガは不機嫌そうな顔を隠そうともせず睨んだ。
ひとりになりたかったのだ。
兵器である自分たち3人に与えられたのはたった一室で、いつだって誰かの気配がする。
気配がするだけならまだいい方で、
2人が起きていればシャニのイヤホンからもれる喚き散らすような騒音やクロトの小型ゲームの耳障りな騒音もある。
一度読書に熱中してしまえばそれらが気になることはなかったけれど、今日はそんな気分にはなれなかった。
ひょっとしたらそれは、昨夜読んだ小説のセンチメンタルな内容が関係しているのかもしれないが。
とにかく今日はひとりになりたかったのだ。

「どこの誰だかしらねえが、
「主人さんの愛機のカラミティ。」
「そう、俺のカラミティが、………」
「なんですか、主人さん」
「はぁ?」

カラミティがどうしたって?
鬱陶しいから消えろ、と言いかけた言葉を遮ったのは意味不明の言葉。
怒鳴るのも忘れて瞬きを繰り返すと、男は小首をかしげてオルガを見返した。

「主人さん?」
「誰が…」
「あんた」
「誰の」
「俺の」
「……お前って」
「カラミティガンダム。主人さんの愛機。」

疑問符がまとわりつく。
オルガの愛機、カラミティだと名乗る男は、疑問符だらけのオルガの顔を面白そうに見ている。
普段そう言った表情を浮かべる側の人間として、少しばかりの悔しさといらだたしさが募った。

「…で、その自称カラミティが俺に何の用だよ」
「主人さんが乗ってきたんじゃん」
「うっせえな、ひとりになりたかったんだよたまには!」
「そう」

だから消えろ。
オルガは言外にそう伝えたつもりだったが、どうやらカラミティには通じないらしい。
仕方なく目を閉じてカラミティの存在を遮断しようとすると、今度は非難がましい声音で、主人さん、と呼ばれた。
目線だけで返せば、ただそれだけでもうれしかったのか、少し表情が明るくなる。
うっかりと自分まで微笑みそうになって、気づかれない程度に唇をかんだ。

ああ、この男は確かにカラミティだ。何よりも自分が愛しているものだ。
災厄を与えんと作られ、自分の手足を動かすことと同じくらいに馴染んだ機体。高揚と快楽、痛みと爽快感をオルガに与える、自分の半身といってもいいものだ。
でなければ、プラスの感情が欠け落ちたと言っても過言ではない自分に、笑む、などという動作が出来るはずがない。
だからこれは、本当にカラミティガンダムなのだ。

「頭、イカレたかな、とうとう」
「そう思う?」
「普通じゃねえだろ、こんなの」
「この世にありえないなんてことは何一つないんだよ。バグって俺が生まれても不思議じゃない」
「ああ、そうかも」

ナチュラルがコーディネーターに匹敵するような能力を持つことだって、向こうからすればありえないのだ。
自分たちは、薬の服用に因ってでも、その能力を手にしている。たとえ副作用や薬切れに悩まされてはいても。
半ば諦めたようなため息を吐いて、オルガはカラミティを見た。

「人は怖い?

オルガの視線を受け、それから唐突に男は言った。
何だそれ、と言い返そうとして、次いで男がカラミティであると思い出し、困ったように笑った。

「こえーと思ってたら、殺れねえだろ」
「怖いから殺せるんだよ」
「殺されるよりは殺した方が、って?」
「主人さんはそれを誰よりわかってると思ってたけど」
「…そうだな」

恐れるがゆえに牙を剥く。
ブルーコスモスの理念などどうでもよかったけれど、確かに、オルガにとってのコーディネーターも未知の生物であり、恐れるべき対象だった。
そう。恐れなければ、牙を剥こうとは思わない。
危害を加えられると、実際がどうであれ、思うのだ。だからこちらも危害を加えようとする。
それこそが争いの種となることもわかっていた。

「寂しいのは、ひとりだから。寂しいのは、怖いから」

だから俺が生まれたんだよ、とカラミティは言った。

「でも主人さんは一人じゃないよ」
「一人だよ」
「だって俺がいる」

ああ、そうか。
確かに一人だ。けれど、一人というのは御幣がある。
戦場に立つ時には、必ずこの機体と共にあった。ノイズ交じりの画面に映るこの男がカラミティなら、確かに自分は一人ではないのだろう。

「あんたと共に戦場に立てるのは、最後まで共に在れるのは、俺だけだ」
「バグじゃなくて実は精神的な面をフォローする為のプログラムとか?」
「そんな親切なプログラム、組まれてると思う?」
「思わないな。所詮俺たちは使い捨てだ」

はは、とカラミティは笑う。そして言った。

「バグだよ。主人さんたちよりずっと、もっとずっと不安定な」

どこか、悲しそうに。
それにオルガは気づかないふりをした。

「まだ寂しい?」

首を振る。
災厄という名を冠する癖にカラミティはどこまでも優しい。

「お前がいるから大丈夫」

これが偶然というものが作り出したバグだとするなら、なんて、ああ、なんて     

            


カラミティが好きすぎて擬人化。超ごめん(誰に謝ってんの)。ゲームでも基本カラミティ使い。あたしが使うとストライクフリーダムよりカラミティのが強い。愛故に。
ベッドの上で死ねるほど優しい世界にいない彼らにとって、愛機は最後の最後まで共にあるパートナーだといい。

2010/10/27 改訂

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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