ちょんまげってみる。
何それ。
思わず口をついて出たクロトの率直な感想をオルガは涼しい顔で受け流した。

「ああん?ワックス切れたんだよ」

いつも後ろに撫で付けられている前髪が、可愛らしい、それこそ女の子がつけるような赤に白のドット柄のボンボンがついたゴムで束ねられている。
どういった風の吹き回しだと思わずにはいられない。
オルガにそんな可愛らしいものをつけるような趣味があるなど想像もつかないからだ。
手元にはいつもの文庫本。ブックカバーがされているのでタイトルはわからないが、それもいつものことで、髪形をのぞけばオルガ自身も特に普段と変化はない。
けれど髪飾りとのギャップがどうにも滑稽に見えてクロトは笑いをこらえるのに必死だった。

「そのボンボンどうしたのさ」
「フレイがくれたんだよ」
「フレイ?」

確か赤い髪の曹長だ。階級など自分たちには関係がないが、自分たちの艦の艦長がそう呼んでいたのを思い出す。
直接関係がないはずのその少女とオルガがいつの間にそんな仲が良くなったのだろう。

「ワックスなくて前髪が鬱陶しいっつってぼやいてたら何個かくれたんだよ」
「へえ」
「初めてまともに話したけど、あいつ結構いい奴だよな」
「……」

いい奴、と言うのだろうか。
まったく女の子というものはわからない。自分だったらたとえそんな可愛らしいものを持っていたとしてもオルガに使わせようなどと考えはしない。
もらったからといって素直にそれをつけるオルガもクロトには理解不能だったが。

「俺も髪うざい…」

どこからともなくシャニが顔を出す。
こえーよ、と言いかけて言ったところでどうにもならないことに気づいて言葉を飲み込んだ。
彼の登場の仕方が不気味なのも、彼の発言が突拍子もないことも、今に始まったことではないのだ。

「オルガ、それ1個ちょうだい」
「これ?」
「うん」
「いいぜ」

ボンボンをもらおうとしているシャニに、うざいんなら髪切れよ!とかお前もオルガもそんなもん似合わねえよ!とか言いたいのをぐっとこらえる。
突っ込んだら負けだ。
そんなことをぐるぐる考えて立ち尽くしているうちに、オルガはフレイからもらったという髪飾りを広げてシャニにどれがいい?と聞いている。
無地のオレンジに赤、オルガがつけているものと同じタイプのドット柄が黒とピンク。どれも女の子がつけてこそ可愛らしいものばかりだ。

「もっとどす黒いのないの…?」
「ああ?ねえよ、そんなもん。だったら黒と白のでいいだろ」
「んー…じゃあそれでいい」
「んじゃ後ろ向け」
「うん」

……何やってんの。
今度こそ飲み込まずに口にして、
2人を見る。

「クロト、俺が自分で結べると思ってる…?」
「いや思ってないけど」
「結んでオルガ」
「いや結んでるし、今」
「待って、いやてゆか待って、なんかおかしいことに気づいて」

うざぁい、といういつものシャニの言葉でクロトの制止は効力をなくす。
ボンボンをつけた
1918の男。これでいいのか、お前ら。
自分たち
3人の中で常識人はオルガじゃなかったのか。そうか、自分が一番常識人なんだな。なあんだ、やっぱり僕が一番マトモなんじゃん。

「クロトもいるか?」
「いらないよばーか!」
「んだよ可愛くねえなあ」
「オルガ…、クロト髪短いから必要ないんだよ」
「ああ、なるほど」

可愛らしいボンボンをつけた可愛くない男どもに可愛くないといわれる自分は何なんだろう。
前髪だけはある程度の長さあるっての!と返したいのを堪えて、少しだけ悲しい気持ちになりながら、常識人って大変だ、と心の中で呟いた。

     


うちのおーたんはオールバック時々ぼんぼん付き。まれにカチューシャ(え
クロトも結局常識人でもマトモでもない。というか、常識人なんてこの人たちの周りにいない。

2010/10/27 改訂

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル