子供だましの幸せ
たった数時間だけ与えられた自由時間。オルガは艦を降りて本屋に出かけた。
目に留まった文庫本を手に取って話の概要に目を通しながら、ふと本を読むのが趣味になったのはいつからだろうと考える。

あれはいつだっただろう。まだGに本格的に乗る前、けれどもうそれが決定していたある日のことだ。
ごく稀に自由時間が与えられることがあっても一向にどこにも出かけようとしないオルガに、おそらく気まぐれでだろうが、アズラエルが一冊の本をオルガに与えた。
多分、あれが始まりだった。

本の中ならどこへでも行けた。何にだってなれた。そこには求めてやまない自由と幸せがあった。

作り話だから、困難があったとしても最後は大抵ハッピーエンドで終わる。子供だましの本にアンハッピーは似合わないから、必ず救いのあるラストが待っていた。
多分、それがよかったのだろう。
現実には有り得ないような無茶苦茶な内容でも最後がハッピーエンドならどんな本でもよかった。
だから児童書に近い類の本ばかりを読んでいた。
読んでいる最中も、読み終わった後も、なんだかやけに心安らいだのだ。

手に取っていた本を反対の手に持ち替え、新たに本を取る。気に入れば持ち替え、また他の本に手を伸ばす。そうこうしているうちに持っている本がかなりの量になったので会計を済ませに行った。

店を出て空を仰ぐ。晴天の空だけを見つめていると、自分が自由になったような錯覚が出来た。
シャニが大音量で音楽を聴くのはきっと世界から自分を隔絶する為だ。彼の中にまだ残る、誰にも侵害されない場所を守りたいのだ。
クロトがゲームに夢中になるのはきっとあの小さなゲーム機の中に自分の知らない何かが詰まっているからだ。
なんだ、意外と似たもの同士なんだな、と空を見つめたまま思った。

どこにだって行けそうな気がする空を見ていても、オルガは自分がどこにも行けないことを知っていた。

このまま艦に戻らずに逃げ出したとしても、良くて数日で捕まって破棄されるか強制的に薬物ステージを上げられてそんな思考回路すら保てないようにされるのが関の山だろう。
一見自由に見えても、見えない鎖ががんじがらめに絡みついている。
行き交う人がオルガを見てもオルガが鎖に繋がれた犬に過ぎないことなど気付かないだろう。どれほど自由を渇望しているかもわからないだろう。
傍から見ればオルガは地球軍に所属しているだけの少年で、どこにでもいる本が好きな少年以外に映らない。
けれど実際はどこへも行けない。何にもなれない。自由になんて夢のまた夢だった。
自嘲気味に買い求めた本の束に目をやる。きっと悪あがきのようなものだ、とオルガは一人ごちた。

なぜか急に甘いものが飲みたくなって、艦に戻る前に自販機で一つ、あたたかいココアを買った。
飲めば甘ったるさに顔を歪めるだろうとわかっているのにそれを手にした時、少しだけあたたかい気持ちになれた。
だから思い立ってもう二つココアを買った。

なぜかなんて、わからない。

                  


ハッピーエンドなんて無理だけど、ちょっとだけそんなごっこ遊び。みたいな!
三人でココア飲んでるとかちょっとウケる。でもちょっと仲良しそうで微笑ましい。そんな感じのイメージで。
大分前に書いたまま放置してたもの。直しようがなかったのでそのまま。

                             

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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