初恋は突然に
有能だと思った。だから話していたいと思った。
自分とは違い、校内での評判もよく、人好きのする笑顔が印象的だった。
ただ、それだけだ。
ただ、それだけだったはずだ。

喫煙の被疑者をリストアップしている最中、妙な噂が耳に入ってきた。
普段ならそんな噂は低俗だと一蹴するか、聞く耳も持たないはずの小田桐は、珍しくクラスメイトの会話に耳を欹てた。
曰く2-Fの七瀬唯が夜のポロニアンモールを徘徊していると言う。
クラブに入り浸って坊主と話していた、スーツ姿の怪しい男と一緒にいたと。

「え、援助とかしてんの!?マジで!?」
「結構遊んでんのなー」
「声かけたらオレらも遊んでくれんじゃね?」

ぎゃはは、と下卑た笑い声がして、それに不快感を抱く。
(彼女はそんなんじゃない)
そう考えて、少し疑問に思う。なぜ自分はそう思ったのかと。
確かに唯は生徒会長である美鶴が推薦して生徒会の手伝いをしてくれてる人物だ。受け答えもはっきりしていて仕事もきちんとこなす、小田桐にしてみれば珍しく好ましいと思える人物だ。
けれど、それだけで果たして疑惑を否定するに足るほどの材料となるのか。
答えは簡単に出てくれそうになく、小田桐はその件には蓋をすることにした。
どうあれ、彼女はそんな女性ではないと思う。もちろん、今現在鋭意製作中の喫煙被疑者リストに載せる必要もない。
そう思って、未だくだらない話を繰り広げるクラスメイトからそっと離れた。

生徒会室へ向かおうと廊下を歩いていると、見慣れた教師の後姿が見えた。喫煙の犯人を割り出せば小田桐を次期生徒会長に推薦すると約束した教師だ。
挨拶をしようと近づくと、彼の様子が少しおかしいことに気付いた。教師はにやりと口角をあげ、嫌な笑みを浮かべている。
不思議に思って教師の視線の先を辿ると、そこには唯がいた。確かクラスメイトだったか、野球帽を被った少年とピンク色のカーディガンを着た少女と親しげに話している。
最初はなぜそんな風に彼女らを見ているのかわからなかった。ただ、教師の浮かべるその笑顔によくない意味が込められていることだけはなんとなく小田桐にも理解出来た。

「こんにちは」
「あ、ああ…」

声をかけると、教師は小田桐の存在に今気付いたようで慌てたように取り繕う。普段通りに会話をしながらも、教師の視線は時折小田桐を通り越して何かを追っていた。
何度かその視線を追う内、彼の視線の先にあるのが彼女らではなく唯個人であると気付く。
(まさか、な)
教職にある者が、そんな邪な目で彼女を見ていいはずがない。表面上笑顔を貼り付けて教師と対話するものの、胸の奥底では何かが渦巻いていた。
そんなこちらの事情などお構いなしに唯は小田桐がいることに気付いたのだろう、微笑みながらこちらにやってくる。その瞬間、教師の顔があからさまににやけていくのが不快でたまらなかった。

「小田桐くん!あ、先生もこんにちは。ねえ、今日も生徒会?」
「ああ…」
「唯も今日は行けるから、またあとでね!先生、失礼します」

短い会話を追え手を振る彼女に、ふっと微笑んで返す。手をあげていつものように唯を見送りながらも、隣に立つ男性教師の嫌な笑みが小田桐を落ち着かなくさせていた。

「小田桐、ちょっといいか」
「…はい」

なんとなく嫌な予感がしたけれど、教師の言を断るさした理由も思いつかず、小田桐は頷いた。

   

「だから、リストに載せるだけだろう!?」
「ですから、載せる必要がないと言っているんです」

本当に低俗な人間との会話は疲れる。特にこんな、良からぬ企てばかりに頭を使う人種との会話は苛々が募るばかりでやっていられない。
賢く、人を和ませることに長けた唯との会話とは雲泥の差だ。彼女となら長時間話していても疲れるどころか心安らぐが、彼のような人間と長時間話していてもこちらには何の利もない。
この教師が、自分の嫌悪する種類の人間であることを、今更思い知った。この前まで、自分はこの教師相手に一体どんな風に会話していたのだろう。
思い切り溜息を吐きたい衝動と頭を抱えたい衝動をどうにかやり過ごしながら根気強く訴えるものの、この低俗な脳みそしか持たない教師は大人しく引き下がってくれそうになかった。
彼は喫煙被疑者のリストに唯の名を載せろと言った。小田桐が教室で聞いた唯についての噂を教師も耳に挟んだのだろう。先ほどから延々とこのやり取りが続いている。
リストに唯の名を載せて、彼が一体何を企んでいるかなんて、想像しなくてもわかる。
自分の後ろ盾をしてくれようという人物に対して思う感情ではなかったが、反吐が出そうだった。

「とにかく、彼女は会長が直々に推薦した女性ですし、深夜の徘徊については風紀委員の方で事実確認のうえ対処します。現在問題視されている喫煙については彼女は潔白と言っていいでしょう」
「庇うのか?」
「いいえ。彼女がそんな女性ではないと知っているだけです」
「お前も所詮はそこらの子供と同じか…もう少し賢いと思っていたがな」

これ以上の会話はお互いに無駄だと思ったのだろう。失礼しますと断る小田桐を教師も止めなかった。
教師の前では吐き出せなかった溜息をようやく開放する。それは思いの外重苦しい溜息になって外に出た。

「…小田桐くん」

突然声をかけられて、慌てて顔を上げると、今にも泣きそうな表情で唯がこちらを見ていた。
おそらく、先ほどの会話を聞いていたのだろう。

「唯、やってないよ」

そう訴える唯の声は震えていたけれど、視線を外すことはしなかった。ただまっすぐに小田桐の目を見つめている。
風紀委員という立場上、泣き落としでこちらに訴えてくるような者も見てきたが、唯のそれは何よりも雄弁に無実を訴えているようだった。
けれど、唯は小田桐が疑っていると思っているのか、普段より口数が少ない。それが少しおかしくて、小田桐は笑いながら言った。

「そんなこと、言われなくてもわかっているさ」
「…ほんとに?」
「しかしあの教師には気をつけた方がいい。どういう意味で君に目をつけているか、君はわかっていないだろうからな」

小田桐の言葉に、やはりというか、唯はきょとんとしている。
とりあえず下手にあの教師に付け入る隙を与えない為にも唯の深夜徘徊について真偽を正す必要があるだろう。
話す内容が内容だけに出来れば人には聞かれたくない。この時間であれば生徒会室にはもう人はいないだろう、と唯を誘った。

  

「小田桐くんには言っておくね」
「うん?」
「夜、ポロニアンモールにいるとかって噂になってるでしょ?」
「ああ…知っていたのか」
「うん」

小田桐がどう切り出したものかと悩んでいると、唯の方が先に口を開いた。
聞きたかった噂の真偽。小田桐とて唯が噂通り遊んでいるなどと思っている訳ではないが、はっきりとそれを否定出来るだけの材料が欲しいと思っていた。
あの教師に対してだけでなく、それを欲しがっている理由に薄々感づきながら、それに気付かないふりで唯の言葉を待つ。
夕焼けが生徒会室を赤く染め、遠くから部活動を行っている生徒のだろうか、賑やかな声が聞こえた。

「えと、誤解されたくないから言っておくね。夜に出歩いてるのはほんとだよ。寮の買出しとか、唯がやることになってるから」
「そうか。スーツの男といたのは?」
「スーツの人はね、お友達なの。なんていうのかな、自分の力で必死にがんばって成功を手にした、すごい人だよ」
「…クラブに入り浸っていたとも聞いたが」

つい尋問するような口調になってしまい、小田桐は唇を噛む。
けれど唯の方はそれを気にする様子もなく微笑みながら答えた。

「お坊さんがいてね、息子さんと奥さんと仲違いして淋しがってる人なんだ。唯、お父さんの記憶とか、あんまりないけど…お父さんみたいな人だよ。たまに、ほんとのお父さんみたく心配してくれる優しい人」

あんまり優しい笑顔で答えるものだから、小田桐の方が居た堪れなくなってしまう。どんな人間を相手にしても真偽を問いただすこの瞬間はあまり気分のいいものではない。
小田桐は唯の言葉が偽りないものだと思う。風紀を乱す要因はあれど、
寮の買出しや友人との交友は唯を知っている者であれば納得出来る。頼まれれば嫌とは言えないし、責任感も強い。そして彼女にとっての友人は年齢や性別で決まるものではないと知っている。
けれど、この言をどれほどの人間が信じるか。唯の人となりを知り、唯と話した者であればそれは当たり前に信用に足る言葉になるだろうが、あの教師のような人間にはそこにいたという事実だけが問題でその背景などはどうだっていいのだ。
無能な権力者ほど怖ろしいものはないのだと今更ながらに思い知らされた。

「唯はあの人たちを友達だって思ってるよ。年齢も離れてるし、性別も違うけど、たなかさんも無達さんも唯にとっては大切な友達なの」
「わかっている。僕は君の言葉を信じるよ、七瀬君」
「小田桐くん…」
「だが、しばらくの間は夜間の外出は控えた方がいいな。理由があることとはいえ、あまり褒められた行いではない」
「…ん」

小さく頷いた唯が少し淋しそうで、心が痛くなる。きっとポロニアンモールで会っていたという人間は唯の本当の友達なのだろう。年齢や性別が違うからこそ学べるものもある。
それに、これは憶測の域を出ないが、こんな笑顔で友達なのだと言われ、あの教師のような企てを起こすとは考えにくかった。何より自分が彼女の言と彼女が信用に足ると認めた人物を信じたい。

「まあ、何かあったら僕を呼べ。全校生徒を敵に回しても君の事は守るよ」
「…ありがとう」

人をあたたかくさせる笑みを乗せて、彼女は笑った。
夕焼けに照らされた彼女の微笑みはとてもきれいで、思わず見惚れてしまった事実に、小田桐の方が狼狽する。
相変わらずきょとんとしている唯に帰るよう促し、小田桐は彼女の疑いが一刻も早く晴らされるように、と祈った。

  

「七瀬」
「はい?」

数日後の土曜日、委員会の用事で職員室に寄った帰り、唯は件の教師に呼び止められた。小田桐との会話から、目を付けられているのだと知っていた唯はお説教でもされるのかと身構える。
教師はまるで聖職者然とした様子で唯を生活指導室に呼んだ。唯も断ることは出来ず、大人しく付いていく。
唯自身は噂の元凶となった行為を悪いことだという意識はなかったし、小田桐に言われてからはなるべく夜は出歩かないようにしていたので特に警戒するということをしなかった。
生活指導室に入ると教師はなぜか扉を後ろ手に閉め、そこから動く気配がない。

「先生?」

かちゃりと不穏な音がしたが、それが何を示すのか、唯にはわからなかった。

  

日々、生徒に廊下を走るなと言っている小田桐は今、必死に廊下を走っている。俗に言う全力疾走だ。体育のマラソンでもこんなに必死に走ったことはないだろうというくらい、必死に走っている。
その切羽詰ったような様子に、注意すべき教師も物珍しく見るだけで誰一人小田桐に注意する者はいなかった。
当たり前だが、小田桐が走っているのには理由がある。
生徒会の集まりがない日だったので、授業が終わるとすぐに小田桐は犯人探しの聞き込みをする為に教室を出た。
3階にいる生徒へ聞き込みを終え、2階へと降りる途中、それは聞こえた。

「さっき七瀬さん呼び出しくってたけど大丈夫かな?あれだよね?最近変な噂流れてるから」
「あ、唯が夜ポロニアンモールでうろうろしてるってやつでしょ?」
「そうそう。なんかあの教師ってあんまいい噂聞かないし大丈夫かなー」
「っていうか、夜にポロニアンモールにいると何か問題なの?」
「…意味わかってないでしょ、岩崎」

髪をまとめた少女とポニーテールの少女が交わしていた会話に、小田桐は抱えていたリストが散らばるのも構わず走り出した。

階段を駆け下り、職員室前廊下に出る。職員室や図書室には人がいるだろうが、廊下にはまったく人がいなかった。
努めて平静を装いながら生活指導室の扉に手をかける。案の定鍵がかかっていた。

「すみません、誰かいますか!?」

逸る気持ちを抑えながら、どんどんと扉を叩く。
人の気配はするのに、なぜ誰も出てこない。出てこられないような状態にでもあるのか。
再び扉を叩き反応を伺っていると、小さく、本当に小さく、誰かの声がした。くぐもったような声だったけれど、間違えようもない。彼女の声だ。

「七瀬君!いるのか!?七瀬君!!」
「…おだ、ぎりくん…っ、たす…やぁ!」

職員室に行けば予備の鍵くらいはあるだろう。けれど、今は非常事態だ。職員室に行って鍵を探している余裕などない。小田桐が惑う時間の分だけ彼女に危険が迫るのだ。
一瞬たりと躊躇することなく、小田桐は扉に体当たりした。

「七瀬君!」

力任せに体当たりを繰り返すと、取り付けられていた鍵は思ったよりも簡単に飛び、扉は扉であったものに姿を変えた。器物破損だったが、それよりも小田桐は目の前の状況に愕然とした。
唯は口を手で塞がれ、教師に覆いかぶさられている。服も無理矢理引っ張られたのか、ところどころ破れて肌が覗いていた。

「何をしているんです!」
「お、小田桐…これは…」
「彼女を放してください!早く!」

ぱっと放された唯はそのままずるずると床にすべり落ちていく。慌てて駆け寄って、彼女に自分の着ていた上着をかけていると、廊下から慌てたように美鶴が現れた。おそらくは小田桐が扉を強引に開けた際にした騒音に気付いてやってきたのだろう。ありがたい。美鶴の優秀さとタイミングの良さに小田桐はほっと息をついた。

「何をしている!…な、唯!?どういうことだ、これは…!」
「…見ればわかるでしょう。この教師が彼女に何をしたかなんて」
「貴様…!!」

教師に詰め寄るのは美鶴に任せて、小田桐はそっと唯の前にしゃがむ。よほど怖かったのか、目にいっぱいの涙を溜めて震えていた。
無理矢理引っ張られた際にそうなったのだろう、唯がいつも着ているカーディガンは伸びきっていて、ボタンがあちこちに飛んでいる。頬も叩かれたのか、赤くなっていた。

「七瀬君、大丈夫か?」
「…う、うん…」
「無理にしゃべらなくてもいい。今はとにかく落ち着け」

出来るだけ優しい声音で話しかける。けれどやはり小田桐も男だ、こんな状況では彼女の不安を完全に拭い去るのは難しい。

「会長、僕が代わります。会長は彼女についていてあげてください」
「…わかった。すまない。面倒をかける」
「いえ。…このことは警察に?」
「いや…とりあえず桐条の者を呼ぶ。大事にしては唯が傷つくことになるかもしれない。それまで別室でその男を待機させてくれ」
「わかりました」

教師に向き直り、腕を掴む。抵抗されたが、今更この男を教師と言って敬う必要もなく、力づくで抵抗を封じた。
壊してしまった扉を跨いで男と共に部屋を出ようとした時、唯を宥めようとする美鶴の柔らかい声が聞こえた。

「唯、大丈夫か?」
「みつ、る、せんっ…うああああん!」
「よしよし、もう大丈夫だ。私が付いている。怖くないぞ」

堰を切ったように泣き出す彼女に、やはり美鶴に任せてよかったと息をつく。こんな時にはやはり同性の方がいい。それも、なるべく親しい方が彼女の負担を軽く出来るはずだ。
こんなにも優しい声で誰かに語りかける美鶴というのも珍しかったが、今は男を別室に連れて行くことが先決だろうと思い、小田桐は足早に生活指導室を後にした。

  

「小田桐、今回はすまなかったな」
「いいえ」
「君がいなかったら、唯は今頃…」

心底苛立たしげに言う美鶴は、本当に唯のことを案じてくれているのだろう。本当に彼女は人に好かれている。
あの後しばらくして、唯は同じ寮に住む少女たちに連れられて帰っていった。
小田桐は美鶴と共に留まり、生徒会室で今回の事件の処理に当たっている。
壊してしまった扉の件は、男のこともあり放免となった。美鶴なりの謝罪と感謝のつもりらしかった。

「もし君が見つけてくれなかったら、私はあの光景を知らずにいたかもしれない。見つけられたとしても、…遅かったかもしれない」
「……」
「そんなことになったら、私は…!」

ただの先輩後輩や同じ寮の者というだけではない感情が美鶴から見え隠れする。
決して感情が乏しい訳ではないが、美鶴のこんな表情を引き出せるのは唯だけだろう。同じ生徒会の役員として過ごす時間の中で、小田桐は美鶴のこんな悲痛な表情も、あの時見せたような慈しむような微笑みも、見たことはなかった。
思わず美鶴を凝視してしまい、彼女は視線に気付いたのか、こほん、と不自然な咳払いをした。

「とにかく、助かったよ。ありがとう」
「いえ、僕だけではどうにも出来ませんでしたから」

丁寧に礼を言う美鶴に苦笑で返し、ふと思った疑問を口にする。

「あの男は…結局どうされるんですか?」
「そうだな。とりあえず学園は出て行ってもらう。他でもない唯にあんなことをしたのだ、いつものような処刑ではすまされん」
「七瀬君は大丈夫でしょうか」
「彼女については私が全面的にフォローをしよう。君も、何がしかのフォローを入れてくれると助かるが」

美鶴の言葉に小田桐は微笑んで返した。

      

数日後、いつものように生徒会の集まりが行われていると、こんこん、と控えめに生徒会室の扉がノックされた。
次いで申し訳なさそうに唯が入ってくる。
あの日引き伸ばされたカーディガンは新しいものに代わり、いっぱいに溜めていた涙の代わりに今は笑顔があった。見た限り、不自然な様子は感じられない。

「すみません、遅くなっちゃいました」

その笑顔に胸を撫で下ろし、構わないと唯を迎え入れる。
あんなことがあったのだ、こんな短期間で立ち直れたとは思わないが、いつもと変わらぬ笑顔を見せる唯に小田桐は気付かれぬよう息を吐いた。
今回の定例会では大きな報告や話し合いはなく、割と早く解散することになった。

「小田桐くん」
「うん?」

生徒会の人間が帰り、相変わらず最後まで残ってくれる唯と2人きりになった頃、彼女から少し遠慮がちに話しかけられた。
これ、と差し出されたのは可愛らしい色の紙袋。受け取ると、その中にはあの日唯にかけてやった自分の制服がある。わざわざクリーニングに出してくれたのか、タグが付いていた。

「助けてくれて、ありがとね。気をつけろって言われてたのに…」
「いや、構わないさ。寧ろ、もう少し早く助けられたんじゃないかと悔やんでもいる」
「そんなことないよ!」

否定する彼女が思わずとう風に掴んだ腕が熱い。
まさか振り払う訳にもいかず、小田桐はそのまま唯の言葉の続きを待った。

「小田桐くん、前に何かあったら呼べって言ってくれたよね」
「ああ…」
「唯ね、呼んだの。小田桐くん助けてって。そしたらほんとに来てくれたから…だから、」

すごく、嬉しかったんだよ。ありがとね。
そう言って笑う彼女を、抱きしめたいと思った。そんな感情を抱いたのは初めてで、何も言えなくなる。耳の辺りがいやに熱い気がするから、ひょっとしたら赤くなっているのかもしれない。それすらもよくわからなくて、ただ彼女の言葉に相槌を打った。

その後、どうやって生徒会室を後にしたのかも、唯と別れたのかも記憶にない。
それほどにあの感情は小田桐にとって衝撃的だった。
覚えているのは、彼女が掴んだ腕の熱さと、抱きしめたいと思った衝動と、耳の熱さだけだ。
自分の感情もよくわからない。自分は彼女を好いているのだろうか。女性として。そう考えれば自分の中のいろいろなことに説明が付くような気がした。だからと言って、どうもしようがないのだけれど。

(次の生徒会も、七瀬君は来るだろうか)

先ほどまで一緒にいたはずなのに、なぜだか妙に彼女に会いたくなって、自分が持つには少し可愛らしすぎる紙袋を提げて歩きながら、小田桐はそんなことを思った。

      


ステータス・美しき悪魔の弊害。そして小田桐コミュをやっていて、絶対書きたかったとこ。書けて満足。予想外に長くなったけど!更にぶっちゃけていえば美鶴×女主っぽいとこありますけどね!
ちなみに土曜日だから美鶴さんがいるんです。たぶん図書室辺りで勉強してたと思われる。
明らかにみんなのコミュMAXにすることを考えてると、時期的に見て美鶴先輩コミュはMAXじゃないんですが、そこはそれで、名前呼びです。夏の時点でみんなのコミュMAXになっていてもいいくらいの気概でお願いします。

2010/10/28 改訂

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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