夢魔の悪戯 〜荒垣真次郎の場合〜
必要なもの以外何もない部屋の中、ベッドでまどろんでいた荒垣に突然誰かの声がかけられた。
戸締りもしていたはずだ。先ほどまでこの部屋には自分以外の気配はなかったはずだ。それなのに腹の辺りに重みさえ感じる。
不審に思いながらもベッドから起き上がると、目の前数センチのところに唯の顔があった。

「なっ…」

二の句が継げない。
眼前の唯はやたら潤んだ瞳と上気した頬で困ったように荒垣を見つめていたし、身体のサイズにまったく合っていないような大きな白いシャツを一枚身に着けただけの姿で荒垣に伸し掛かっていたからだ。
硬直する荒垣を尻目に唯は縋るような目線で荒垣を見る。小さく震えながら困ったように唯は言う。
助けて、荒垣先輩、と。

「どうしよう、荒垣先輩…。唯…なんか変なの…」
「は…」
「熱くて、苦しくて、くらくらする…」

言葉だけを素直に受け取ればそれは風邪の症状にも聞こえたけれど、目の前の唯の姿はとてもそんな風には見えなかった。
シャツを押し上げる胸のふくらみからは白い布の所為か充血して赤く立ち上がった突起が透けて見えているし、時折太ももを摩り合わせるような動きをする。高熱で目が潤んでいると言うより、それはとろりと情欲を訴えていた。

「ねえ、荒垣先輩…どうしたら治りますか…?」
「ど、どうしたらってお前…」
「助けてください…っ」
「うわ、」

思い余ったようにしがみつく唯に荒垣はこれ以上ないほど狼狽する。
まずい。とにかくまずい。抑制剤の所為で色々身体にガタはきていたけれど、それ以外は、というかこういうことに関しては荒垣だってそれなりに健康な男なのだ。
薄い布地一枚隔てて伝わってくる柔らかな胸の感触だとか、首元をくすぐる熱っぽい吐息だとか、妙に甘ったるい香りだとか、それらは荒垣の中の雄を呼び覚ますには充分すぎる材料だった。
けれど、いくら憎からず…いや、この表現には語弊がある。確かに彼女のことは好いていたが、ただ、それはもっと、こう、純粋な好意であって。その先にこのような欲求がなかったかと言えば嘘になるが、とにかく付き合ってもいない相手とそういった行為になだれ込むのは抵抗があった。

「ちょ、とりあえず待てって…」

そう言ってどうにか彼女を引き剥がすけれど、引き剥がされた唯はこれ以上ないほど傷ついた顔をしていて、思わず言葉を失う。
瞬間、唯の瞳から涙がぽろりと零れ落ちた。
それを見咎めると同時に荒垣の脳裏で、何か糸のようなものが切れる音が小さく聞こえた。
先ほどとは逆に唯の身体を引き寄せて体勢を入れ替える。こんな形で見下ろす彼女の姿は新鮮で妙な感慨が浮かんだ。

「…んなカッコで夜中に男の部屋来たんだ、…わかってるよな?」

確認を込めてそう呟けば、唯は恥ずかしそうに目を伏せて小さく頷いた。

瞼に口付けてそれから耳、首筋、胸元と唇で辿っていく。
服を脱がさないままに胸の突起に歯を立てて軽く吸えば、唾液を吸ってそこだけ異様に透けて見えた。その様がやたらいやらしく見えて思わず息を飲むと、それに唯も気付いたようでぱっと顔を背ける。
くく、と喉を鳴らして笑ってやれば、唯は羞恥を掻き立てられたように目を閉じて唇を噛んだ。

「これくらいで恥ずかしがんな」
「で、でも…っ」
「これからもっと恥ずかしいことされんだぞ、お前」
「…あ…」

邪魔なショーツを剥ぎ取って指を滑らせる。予想通りというか、そこはぐっしょりと濡れていて、動かす度に卑猥な音が響き、指を離せば透明な糸が引いた。
中を掻き回すけれど、これ以上ないほどに濡れているくせに、ほぐれるどころかきゅうきゅうと指を締め付けてきて動きづらい。
しばらく指を動かし続けていたもの、少し考えて、指を引き抜いた。

「え…きゃ、っあ!」

唯の両足を掴んで広げ、身体を折り曲げるような体勢に固定する。慌てたように唯は手を伸ばしたけれど、それを無視して濡れそぼる秘所に顔を近づけた。
襞を伸ばすように舌を這わせ、存在を主張する充血した突起に吸い付く。ちょっとした悪戯心で軽く歯を立てると、その途端、唯の身体が今までにないほど跳ねた。
次いで強張っていた身体から力が抜けていく。
唇を離し、ふ、と息を吹きかけると、それだけでも感じるのか身体を震わせた。

「…ぁ、…っぁ、…っ」
「おい…、大丈夫か?」

唯の口から漏れるのは鼻に抜けるような甘ったるい吐息ばかりで意味のある言葉ではなかった。
まだ前戯でしかないというのにこんな風になってしまっていては、この先大丈夫なのだろうかとも思う。
思わず心配になって顔を覗き込むと、少し落ち着いたのか、予想外に唯は微笑んで見せた。

「だいじょぶ、です…、だから…その…」
「あ…?」
「…い、挿れて…ください。唯だけじゃなくて…先輩も、…一緒に気持ちよくなってほしいです…」

荒垣とて元からまともな自制心などこの状態ではあるはずもなかったが、欠片ほど残っていた理性は唯の言葉で粉々に砕けた。
硬く熱を持ったものを入り口に宛がい、どうにか負担をかけないようにゆっくりと腰を押し進める。やたらめったら狭いくせに指より太いものを着々と咥え込んでいく様はある種異様な光景でもあった。
根元近くまで押し込み、ちゃんと咥え込んだのを確認してほっと息を吐く。
…のだけれど。
(…んだ、これ…っ)
こちらが動いてもいないのに内側がゆるゆると蠢いて中のものを刺激する。締め付けられるだけではない刺激に目を瞠った。女を抱いた経験がないではなかったが、こんなのは初めてだ。
どうにか気を散らそうと貪るように口付ける。先より幾分乱暴に胸を揉みしだき、胸の突起を指で弾いた。

「あ、ぅっ、あっ!あっ!」

けれど、どうもそれは逆効果だったようで、ゆるゆると蠢くくせに唯が身体を撓らせる度きゅうきゅうと締め付けてくる。
堪えきれず腰を動かし始めると、一瞬持って行かれるのではと思うほど引き絞られた。

「…く…っ」
「や、待って、せんぱ…っああ!」

唯の嬌声に煽られてほとんど無意識に腰が動く。快楽を追うことだけに夢中になっていた。
何度となく絶頂に達しそうになるのを堪え、もっともっとと高みを目指す。早く達したい気持ちと、もっと長くこの快感を味わっていたい気持ちがせめぎあっていた。
ふと思いついて唯の背中を抱え、向かい合うように膝の上に乗せる。とろりと潤んだ唯の瞳は少しだけ不思議そうに荒垣を見つめていた。
引き寄せて首に腕を回させ、ついでとばかりに口付ける。それから尻たぶを掴んで持ち上げ、上下に動かした。腰の動きも合わせると先ほどとは比較にならないほど深くまで飲み込まれる。

「あ、やっ、深…っ!」

涙まじりの嬌声が甘く耳朶を刺激する。知らず動きが激しくなっていたようで、唯が焦ったように声を上げた。

「やぁっ、だめ!だめですっ…!そんなにしたら…!」
「…っ!」
「やぁあ、んっ!」

欲望のまま唯の中に白濁を吐き出す。堪えていた分、達した時の快感は相当なものだった。
僅かの差で唯も絶頂に達したのか、一際大きく痙攣し、喉を反らせた。随分長い間堪えていた所為か未だ断続的に出続けている白濁した液が唯の中から溢れていく。
ベッドのシーツには唯から溢れ出た愛液と荒垣の吐き出した精液でぐしゃぐしゃになっていた。

   

「……っ!!!」

思い切りよく飛び起きる。
慌てて辺りを見回すけれど、部屋は無人でベッドもさして乱れてはいなかった。

「ゆ、夢…?」

夢にしたってあれはあまりにリアル過ぎた。
腰に響く唯の甘い声も、感触も、すべてが鮮明に思い出せる。

「…なんつー夢見てんだ、俺ァ…」

軽く自己嫌悪に陥りながらも、とりあえず恐る恐るベッドのシーツを捲って下半身を確認してみる。怖れていた事態にはなっていなかったことが唯一の救いだった。
やはりというか、元気に勃ち上がってはいたものの、あんな夢を見たのだ、まだ許容範囲だろう。
けれど、いくら好いている女を相手にしたって、あの夢はどうか。まるで欲求不満の中学生のようではないか、と荒垣は肩を落す。
明日からどんな顔で唯に会えばいいのだと途方に暮れる荒垣の鼻腔に夢の中で嗅いだ、唯の甘い香りが届いた。

「…夢、…だよな?」

明け方に近い無人の部屋では荒垣の問いに答える者は誰もいなかった。

        


荒垣先輩の場合。
個別テーマは白シャツと対面座位です☆うふ☆

2010/10/28 改訂

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル