(…!?)
心地よい眠りに附いていた明彦は、激しい射精感に襲われて目を覚ました。
瞼を開けると同時に起き上がりその原因を探る。飛び込んできた映像に思わず我が目を疑った。
屹立した自身を頬張っているのは、他でもない自分たちの仲間であり、どこかただの仲間では片付かない感情を持つ相手だった。
(これは一体、どういうことだ…!?)
現状が理解出来なくて硬直する。唯も明彦が目を覚ましたのには気付いたようだったが上目でこちらを窺いながらも口淫を行うことは止めなかった。
どうにか止めさせようと手を伸ばすけれど、寝起きの所為かうまく力が入らない。ただ手を添えただけに近い状態では唯を引き剥がすことは不可能だった。「はなっ、七瀬っ!」
「んーんぅー」
「こら、駄目だ、本当に…っ」
押し寄せてくる射精感をどうにかやり過ごそうとはするのだけれど、どこで覚えてきたのか誰に仕込まれたのか、唯の口技は妙に巧みで堪えるのも限界だった。
雁首や裏筋に舌を這わされ、尿道を舌先で突付かれる。唇の柔らかな感触がやたらと気持ちがいい。それと同時に睾丸までやんわりと揉まれては堪えろと言う方が無理だろう。
本気で限界を感じ、慌てて腰を引く。
「くっ…」
「んぁ…、…ひゃっ…!」
謀らずも唯の顔に掛けることになってしまって明彦はこれ以上ないほど慌てた。
今の唯の状態は、健康な男子であれば一度ならずもお世話になったことのあるそういった雑誌やDVDでよく見かけるような扇情的な姿になっている。
唯の顔や髪にかかった白く濁った液体が自分のものだということは誤魔化しようがない。どうにか息を整えて状況を整理しようとするけれど、それも次の唯の行動で無駄に終わった。
あろうことか唯は頬についた液体を指で掬い、それをぱくりと咥えてしまったのだ。
「…っ!!」
「あ、先輩のまたおっきくなったー」
「あ、こら!」
唯は嬉しそうに笑って、またしても明彦のそれを指を絡ませゆるく扱く。
無邪気な笑顔は普段目にしている唯そのままのくせに、やっていることはと言えば淫靡すぎる行為だ。
状況を整理しようにもこう次から次に快楽を与えられては健康な男子そのものである明彦に出来ることなどたかが知れていた。
「え?」
とん、と唯を押し倒しその上に伸し掛かる。
あんなことをしておきながらわからない訳でもあるまいに、唯はきょとんと明彦を見上げていた。
首筋に軽く歯を立てて獣が獲物を捕食するように色々なところを喰む。白く柔らかい肌に残る僅かな歯形と鬱血の痕は妙にそそるものがあった。
嫌がる訳でもなく唯は明彦の好きにさせている。時折鼻から抜けるような声が唯の口から漏れ、それがやけに耳に響いた。
下肢に手を伸ばしショーツを剥ぐ。剥いだ瞬間、隠れていた場所とショーツの間に糸が伝った。
「…お前……」
「言わないでください、…わかってますから…」
「そ、そうか…」
剥ぎ取ったショーツをその辺に放り投げて、濡れそぼった箇所に指を差し入れる。
中指で内側を掻き回し親指で突起を押しつぶした。
甲高い声が上がり、思わず手を止める。隣は荒垣の部屋だし(まあ彼は一度寝たら大地震が起きたって目を覚ましたりはしないだろうけれど)、向かいの部屋は真夜中まで起きていることの多い順平の部屋だ。女の声はよく通る。まさかとは思うが聞こえていた場合、どうしたらいいのだろうか。
「真田先輩…?」
「あ、ああ…」
不思議そうな目を向けられ、慌てて手の動きを再開させる。
指を包む唯の中はひどく熱くてきゅうきゅうと締め付けるくせに柔らかくて、そこに自身を埋め込んだらどれほど気持ちがいいだろうと思った。
「あ、ん!そこ…っ」
「え?」
「そこ、きもちい…っ、真田せんぱぁ…っ、…もっと…っ」
か細い声で恥ずかしそうにねだられては、男というものの悲しい性か、がんばらざるを得なくなる。
部屋中に水音が響くほど指を動かして、しばらくすると唯が一際大きく鳴き、びくりと身体を痙攣させたかと思うと続いてくたりと身体が弛緩していった。
「え、へへ…、イっちゃったぁ…」
そう言って明彦に向かって照れたような笑顔を向ける。
その笑顔に堪えきれず、指を引き抜くや否や思わず自身を挿入させた。
明彦の動きが予想外だったのか、唯は目を硬く瞑り、シーツをぎゅっと掴んでいた。
「あ、あっ、は、あ…っ」
「す、すまん…っ」
胸を大きく上下させ肩で呼吸する唯の頭に手を伸ばしそっと髪を撫でる。
明彦自身性急すぎた自覚はあったので申し訳なく思ったのだ。眉を下げ唯の様子を窺っていると、どうにか落ち着いたらしい唯がふっと笑った。
「大丈夫です…へいき」
「だが、」
「ふふ…そんなに困った顔しないでください」
「七瀬…」
コンコン!
突然、扉をノックする音が聞こえた。
まさか。やはり。どう言うべきだろうか。身を硬くして扉を見つめていると、扉の向こうから順平の声がした。
「真田せんぱーい?AVでも見てるんすかー?ボリュームでっかいっスよー」
「…っ」
さすがに鍵もかけてあったはずだし順平がいきなり入ってくることはないだろうが、唯が部屋に入ってきている時点でそれも確証のあるものではない。
とにかくどうにか切り抜けなければと思うのにあまりに突然のことで身動き一つ出来なかった。
唯が小声で、自分を呼び、とん、と先ほど自分が唯に対してしたようにベッドに押し倒される。
「先輩気付いてますか?」
「な、何がだ…!」
「順平くんの声聞こえた途端、真田先輩の、もっとおっきくなったの」
見上げた唯の浮かべていた笑みはやけに小悪魔じみていて、明彦は言葉を失った。
「スリルがあった方が興奮するんだ、先輩かわいい…」
「なっ…!」
「あんまり声出しちゃダメですよ。唯も…なるべく我慢するから…」
言うなり、唯は明彦の腹に手を付いて腰を動かし始めた。
途端に襲う自慰などでは得られない快楽に思わず目を瞑る。扉の向こうでは未だに順平が何か声をかけているようだったが、それに構っていられる余裕はもうなかった。
けれど、されるがままに快楽を与えられるのでは面白くない。下から突き上げるのには多少体力が要ったが、突き上げる度唯から上がる甘ったるい嬌声と自身を包む快楽とに引き換えて考えれば大して気にもならなかった。
「は、っあ!あん!」
「あ、…っく、そ…出る…!」
動きを止め、身体を震わせる。断続的に吐き出されていく白濁が唯の中に溜まっていく感触がやけにリアルに感じられた。
唯はくたりとくず折れて明彦の胸に顔を埋めている。荒い吐息が部屋中にこだまする。
ようやく我に返って扉を見つめるけれど、その扉の向こうには誰の気配もない。いつの間にいなくなったのだろう。何をどこまで聞かれていたのか、かなり不安になっている明彦に唯はふっと笑いかけた。
「大丈夫ですよ、先輩」
「え?」
「だって…」
「…!!!」
ばちりと瞼を開き覚醒する。
しばらく部屋や自分の状態を確認する為に時間を使い、それからようやく先ほどまでのものが夢だったのだと気付いた。
「お、俺はなんて夢を…っ!」
思わず頭を抱える。性欲がないとは言わない。健康な人間なら誰しも持つものだし、それ自体は恥じるものではないだろう。
けれど、その対象として夢とはいえ唯を求めてしまったのは相当に明彦にダメージを与えていた。ゆかりや美鶴であればよかったのかと言うと、それはまた別問題だが、妹のようにも思っているあの少女を無意識下とはいえ自分は汚してしまったのだ。
すっくと立ち上がり、雑念を振り払うかのように明彦はパンチングボールに向かった。
(俺は最低だ…っ!)
真田先輩の場合。
個別テーマは顔射と騎乗位です☆てへ!
所詮夢なのであれですけど、順平は中の様子を察して戻ってったんだと思います(笑)。
2010/10/28 改訂
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