ポケットの中には
一度手を差し伸べたら、最後まで。
動物を拾ったら最後まで責任を持って面倒をみましょう。子供を産んだら何があっても責任を持って育てましょう。
…拾った訳でも、まして産んだ訳でもないのだけれど、どうやら自分は、ランボに手を差し伸べてしまったことになるらしい。

大空のリング戦、絶対安静のはずのランボはチェルベッロの差し金で戦いの場に連れてこられた。
仕込まれた毒を、獄寺もどうにか沈静することが出来て(後で聞くと、雲雀のおかげらしい)、ならばと他の守護者の元へ走った。
重体のランボ。小さなランボ。野生の象すら身動きをとめると言われる毒は、彼にとってどれほどの脅威か。
レヴィを退けてランボを抱えあげる。いつもは小生意気なことばかり言ってうざったいほど元気なはずのランボが弱弱しく呼吸をしていた。
可哀想だと思った。まだ子供で、それは確かに自分たちだって子供だけれど、もっとずっと、ランボは子供だ。それこそ、こんな戦いになんかふさわしくないほど。
何か、どうしようもなく哀しくなってそろそろと髪を撫でる。ふわふわとした髪の毛をこんな風に撫でたのは初めてだった。

リング戦が終わり、日常に戻る。
未だランボは入院中だ。そろそろ退院出来るはずだとツナから聞いていた獄寺は、鬱陶しい奴が戻ってくる、と毒づきながら、どこかほっとしていた。
いれば鬱陶しい、けれどいなければなんとなく物足りない。あんな奴でも一応存在意義があったんだな、と心の中で呟いて、咥えていたタバコを携帯灰皿の中で揉み消した。

「じゃあね、獄寺くん」
「はい、10代目。また明日!」
「またなー」
「おう」

ツナや山本と別れて家路を歩く。
飯を作るのは面倒だ。確かすぐ少し先にコンビニがあったから、サンドウィッチかおにぎりでも買おう。
いらっしゃいませ、とおざなりな店員の声。
カゴを持って適当に入れていく。とりあえずジュース。ハムサンドにコーンサラダ。ドレッシングは別売りだけれど、家にあったはずだからそれは買わない。雑誌は書店で購入する派なので素通りした。
そしてふとお菓子のコーナーで立ち止まる。
ブドウのプリントがされたキャンディ。どこそこのブドウを使いましたとかなんとか書かれている。もっとメジャーな果物使えよと思いながらそれを手に取った。
(そういえばアホ牛ブドウの飴好きだったな。)
なんとなくだ。いつもだったら絶対にそんなものは買わないし、気にも留めない。口寂しい時はタバコを咥えるし、飴を舐める習慣は獄寺にはなかった。
けれど獄寺はそれがまるで当然のことように手に取った袋をカゴの中に入れた。

数日して、ランボが退院したからお祝いをするのだとツナに呼び出された。
本当に病み上がりなのかと疑いたくなるほど元気いっぱいで鬱陶しいランボは、子供らしくない笑い方で、今日はランボさんの日だもんね!と張り切っている。
ツナの母、奈々が作った料理と、山本の持ってきたお造り。ハルや京子の持ってきたケーキでテーブルは埋め尽くされていた。

「退院おめでとう、ランボ」
「ランボちゃんおめでとう」

お祝いの言葉を受けるランボは調子に乗ってふんぞり返っている。
ああ、鬱陶しい。けれど、この鬱陶しさも日常だと思ってしまう。弱弱しい呼吸とくたりと力の抜けた身体、青白い顔など、獄寺の知るランボではないし、お調子者で、下品で、うざったいランボの方がよっぽど彼らしい。ものすごく鬱陶しいけれど。

夜も更けて、そろそろお開きに、とツナが言ったので各々身支度を済ませて(洗い物はとうに奈々が片付けてしまっていた)帰っていく。
律儀に玄関まで見送るツナたちに、獄寺も手を振りかえそうとして止まる。
皆一様に不思議そうな顔をしたけれど、獄寺はそんな視線を気にも留めずにポケットの中を探った。

「ほれ、アホ牛、手ぇ出せ」
「なんだ?」

不思議そうな目で、それでも言われた通りに手を出す様は、やはりヒットマンとは言い難く、どこにでもいる子供のそれだった。
小さな手のひらに二つ、先日買ったキャンディを乗せる。
包み紙にプリントされたブドウの柄に中身を理解したのか、目をきらきらさせている。

「ら、ランボさんもらっちゃうもんね!返せったって返さないもんね!」
「いや、お前にやるつもりだから」
「…ごくでらが変だ」

獄寺が変だ、おかしい、と本人からしてみれば失礼極まりないことを散々に言って泣き喚きながら、それでも握ったキャンディは離さない。
本格的にうざったくなって、獄寺はツナとリボーンに手を振って帰ることにした。

翌日学校へ向かう道すがら、ツナが言った。

「ランボね、獄寺くんからもらったキャンディ、すごく喜んでたんだよ。食べる時も、ほんとに、すごくうれしそうに食べてたんだ。懐かれちゃったね」

あんなものはただの気まぐれだ。懐かせようなんて思わないし、獄寺は子供が好きではない。年上も嫌いだけれど。
たかがキャンディでつられる(あれでも一応)ヒットマンもどうなんだ。

「獄寺」
「はい?なんですかリボーンさん」
「ランボの面倒、責任持てよ」

え?いや無理ですよ!オレ子供ってかランボ嫌いです!と慌てて言うけれど、リボーンはそれには返さず笑っているだけ。ツナも苦笑を浮かべていた。

         

その日から、何故か彼のポケットにはいつもブドウ味のキャンディ。

                


こんなもんが積み重なってランボはごっきゅんラブになる。はず。
いっつも厳しい人が不意に優しくしてくれると、ものすごく優しく感じるジャイアン的効果。

2010/11/01 改訂

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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