銀色の星
「これやる!」

そう言って差し出されたのは銀色の星だった。
厚紙をアルミホイルで巻いただけの子供だましの星が小さな手のひらの上で太陽を反射して鈍く光っていた。

「なんだこれ」

催促されるまま受け取ってまじまじと見てみれば、アルミホイルはしわくちゃで所々盛り上がっていたし、星の形としても不恰好だ。いかにも手作りしました、と言わんばかりの出来損ないの星。
ランボが差し出した星を表に裏にと見ていると、いつの間にか目の前にいたはずのランボは遠くに行ってしまっていて、そのくせ民家の塀の影からちょこりと顔を出して獄寺を伺っている。
獄寺がそれに気づいて見ると、ランボは脱兎のごとく走り去っていった。

「なんなんだ、あのアホ牛…」

ぽつんと取り残された獄寺は、やけにきらきらとした目で渡されたプレゼントらしきものと共に途方に暮れた。

     

「あー!!」

突然大声を上げたランボに獄寺は、ち、と舌打ちをして読んでいた雑誌から顔を上げた。
それからゆっくりランボの方へ目線をやると、図体ばかりが大きくなって、中身の方はまだまだ子供のままのアホ牛が何やら探り当てたらしく、ぎゃーぎゃーと騒いでいた。
何を見つけたんだ、とため息混じりにランボに近づく。
一応、ここは獄寺の私室だ。言っても直らないので物を壊さない限り好きにさせているのだけれど、そこまで大声を上げるのは何事だ、と気になってくる。
ランボの手元を覗き込めば、どこだかで見た、鈍い銀色の星が一つ。

「なんだっけ、これ」
「えっ、ひどい!」
「なにがだよ」
「これオレがプレゼントした奴だよ!忘れてたなんて!」

そう言われればそうだった気もする、と記憶の詰まった箱をひっくり返して該当する記憶を引っ張り出す。
今より十年程前、そう言えばそんなこともあった、気がする。かなりうろ覚えではあったが、いきなり突き出された銀色の星に獄寺は当時どうしていいか途方に暮れたものだ。
かと言ってそのまま捨ててしまうのは躊躇われて(後でぐぢぐぢと泣かれても鬱陶しい)、仕方なく引き出しの中にしまっておいた。はずだ。
十年の月日の所為で、鈍く光っていたアルミホイルはその輝きをなくしている。
なんだかそれが妙に悲しくて、結局十年経っても自分の隣にランボがいることが腹立たしくて、仕舞いこんでいた星を当の本人に見つけられたことが苛立たしい。
だから殊更そっけなく、

「忘れてた、そんなもん」

と言って星を取り上げ、さっさと引き出しに仕舞いこんだ。
その所為でランボは大声を上げて泣き喚いたけれど、獄寺はそれを無視して読みかけだった雑誌に戻った。

               

翌日。
満面の笑みで獄寺を迎えたランボは可愛らしくラッピングされた箱を、これあげる、と差し出した。
その動作に既視感を感じたのは、前日の星を思い出したからだ。
開けてみて、と言われ、言われるままラッピングをといていく。箱を開けると銀色の星がそこにはあった。
驚いて顔を上げると、うれしそうなランボの顔。うれしいような、鬱陶しいような複雑な気分で獄寺はその星を手に取った。
きれいな星のモチーフのリングだ。間違っても男がするようなデザインではないが、嵌めてみると妙に違和感なく獄寺の指に納まった。女性的すぎるデザインではなかったことも幸いしたかもしれない。

「昨日見た星、汚れちゃってたから」
「だからってわざわざ…」

指に光るリングは決して安いものではないだろう。
もちろんある程度の地位にいるマフィアにとってはそこまで高額と感じるものではないだろうが。

「どうしても隼人にはオレからの星、持ってて欲しかったんだ」
「…なんで星?」
「あの時のオレにはさ、一番きれいなものって星しか知らなかったんだよね」
「へえ」
「だからずっと、隼人は銀色の星だと思ってた。あれは小さなオレの精一杯の愛の告白だったの」
「ほう」
「いやもっとなんかリアクションあるよね!?ねえ!?」
「あーうるさいうるさい」

引き出しの中の古い古いアルミホイルの星も、キラキラキラキラ輝く星のリングも、自分の隣にいるランボを許してしまっているように、獄寺はやはり捨てられず。
彼の指にこれ見よがしなリングが常につけられるようになった。

                


ランボの告白は常にスルー。なごっきゅんが好き。
そのくせ結局受け入れてるごっきゅんが更に好き。

2010/11/01 改訂

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!