運命論なんて信じないけど。
小指の先の赤い糸なんて信じないけど。
もし運命なんて物が本当にあって、俺のこの小指に赤い糸がくっついてるなら。それは、きみの小指と繋がっていたい。
ジリジリ日差しが照りつける真夏の空、窓ガラス一枚隔てて涼しい室内。温度差は多分、10℃以上。
涼しい室内に慣れた身体はきっと一歩でも外に出てしまったら眩暈を引き起こす。そんな真夏日。
俺ときみの関係にも、どこか似てると思わない?
一緒にいることに慣れて、それが当然みたいに思ってる心は、きっと少しの間でも離れてしまったら、痛みに耐えかねて蹲る。そんな気がしない?
ぐったりとソファーに身体を預けて人工的な涼しさに微睡んでいたきみに尋ねると、きみは少し眠たそうにあくびをしてから俺に向き直った。
「一緒じゃなかったことないから、わかんない」
ウソツキ。
一緒じゃなかったことなんていっぱいあった。取材とか、テレビとか、そう言うのだって、一緒じゃなかったこと、いっぱいあったのに。
俺の考えを見透かすように、きみが笑う。しょうがないなあ、なんて年上風吹かしながら。
クーラーで冷えたきみの手が俺の首へ伸びる。しがみつくみたいに抱きしめられて、背中をぽんぽんと叩かれた。
「物理的に一緒にいないとき、お前何考えてた?仕事のことばっか?勉強のことばっか?俺のこと、ちっとも思い出さなかった?」
「そんな訳ないじゃん!ずっとお前のこと考えてたよ!」
「ほらー」
「?」
「俺もお前のこと考えてたもん。お前が隣にいないとき、ずっと考えてたもん」
優しい声音。聞いてるだけでこっちまで優しくなれるような。
「ホントに隣にいなくても、お前が俺のこと考えて、俺がお前のこと考えてたら、ホントのホントは一緒にいるんだよ」
それは、きっと、ただの屁理屈で。幼稚な、言い訳で。だけど。
…だけど。
「わ、何」
「……」
もし運命の赤い糸なんて物があって、それが目に見えて、もしきみと繋がっていられたら。
ずっと一緒に感じられるのに。
抱きしめ返したら思いの外力が入ってきみが小さく呻いた。
ごめん、と形だけ謝って、少しだけ力を抜く。そんな俺に、きみはまた少し笑って。
「そんなに不安?」
言葉もなく頷くときみの腕に力がこもる。ひんやりした空気に、人の体温はひどく温かくて、こんなにも安心出来る物なんだとはじめて知った。
大人ぶってても、まだ子供だったってことなのかな。
「見えなくても、あるよ。ちゃんと、繋がってる証」
小指を絡めて見つめ合う。
運命なんて、信じないけど。赤い糸なんて信じてないけど。
きみだけは信じたいと思った。
「一緒だよ。ずっと。いつでも」
体温が感じられる距離にいても、声さえ聞こえない場所にいても、ずっと。
運命じゃなくても、赤い糸じゃなくても、繋がってるなら。
ずっとずっと、一緒だよね。
クーラーの冷たい風に晒された肌と、触れあったトコロの温度差に、少し胸が苦しくなった。
とりあえず王道的に報道うさぎ×ねこ。
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