星空の下で
星空の下でデート、と言ったら、その響きの甘さに思わず、うげ、となってしまう。
手を繋いで歩くのも、デートと言う言葉も、自分にも桐原にも似つかわしいとは言えない。
けれど実際のところ、しっかりと手は繋いでいたし、星を見ながらのんきに散歩をするというのは、デートと言っても過言ではないと思う。
きっと数日経って今日の日を思い出したとき、あまりの恥ずかしさに悶絶するだろうことは必至だ。

なのに。でも。なんでだろうか。

胸の辺りが暖かい気がしてしまうのは、少しだけ気分が浮かれているようなのは。
ひょっとして、自分は、嬉しいと思っているのだろうか。

        

「監督」

繋いだ手の先の人に声をかける。
普段憮然とした表情をくっつけて歩いている人間と、とても同じ人物とは思えないような表情を桐原は浮かべている。
元奥さんに見せる以外では、三上と二人でいるときにだけ、彼は表情を崩した。
それくらい、彼の笑顔は貴重だ。
それを自分は引き出せるのだ、それが自分一人出ないことは悔しいけれど、それでも数少ない笑顔を引き出せる人間なのだと思えば、それだけで自分を特別だと桐原が言ってくれているようで嬉しくなった。
繋いでいた手を引っ張って腕を抱え込む。こんなことを、普段の自分なら三上は絶対にしない。

「三上?」

少し困ったように首を傾げる桐原に、同じように首を傾げてみる。
三上だってわからないのだ。
なぜそんなことをしてしまったのか、訊ねられてもその腕を放せずにいるのはなぜなのか。
口をついて出たのも、だからその行為とはなんの脈絡もない。

「監督は俺のですからね」

脈絡がないどころか、独占欲丸出しの子供のような言葉に、言ってしまってすぐ、あまりの恥ずかしさから咄嗟に腕を放した。
困らせることくらいはわかっているから、たとえ思ったとしてもけして言わないし、そんなことを思う自分すら、三上は自身で否定してしまうのに。
距離をとった三上の代わりに、桐原の方が三上の腕を掴み、一定の距離以上は逃げられない。
仕方なく俯き、黙り込む。
夜だというのに暑いのは、きっと顔が火照っているから。耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。
赤面する三上、というだけでも普段の三上を知る人間からしたら晴天の霹靂だ。
幾度かそれを見ているはずの桐原も腕を取っただけで何も言わず、かといって距離を縮めようともしないのは、どうしていいか図りかねているのかもしれない。

本当は、我侭だって言いたい。
自分一人にだけ笑ってほしい。
子ども扱いされてもいいから、甘えたい。

いつも覆い隠してしまうはずのそんな欲求が、溢れ出しそうになるのは星が綺麗だからだ。
きっとそうだ、だってもう、他に言いがかりをつける相手なんてない、と心の中で八つ当たる。
うまく沈黙を破る術を知らない三上を気遣ってか、桐原は腕を掴んでいる手とは逆の手で三上の頭を撫でた。

「そんな言い方と態度では、お前も俺のものだと言われても仕方ないぞ」

話しかけられて顔を上げると、さも可笑しそうに桐原は笑っていて、三上でさえはじめて見るような顔で笑っていて、だから、

「それでいいんです。そう、ありたいんです」

思ったことを、三上にしては珍しく口にした。
自分は桐原のものでありたい。桐原は自分のものであってほしい。
物扱いする訳ではないけれど、そうであったらいいと思う。

「そんなに心配するな」

それだけ告げると、桐原は撫でていた髪をくしゃくしゃと掻き混ぜて、それからもう一度手を繋ぎなおして歩き出した。
その後ろを、てくてくとついていく。

「好きです。すごい、多分らしくないですけど、俺、監督のこと好きです」

そうか、と言っただけで振り返りはしなかったけれど、桐原の、三上の手を握る力が少し強くなって、なんだかそれが、自分もだと言ってくれているようで、堪えきれずに笑みが浮かんだ。
背中しか見えない三上には、桐原がどんな顔をしているかなんてわからないけれど。
ぎゅっと握った手は、酷く優しかった。

         

数日後、やはり思い出して恥ずかしさに悶絶したけれど、その日の記憶は仕舞い込むにはもったいなかったから、結局忘れたふりをすることも出来ずにじたばたする羽目になっていた。

      


何が書きたかったのか…。多分桐原ブームだったんだと思う。
んで三上に優しい桐原さんが書きたかったんだと思う。
書き直す前の話はもう、恥ずかしすぎてそれこそ佐倉さんが悶絶したい。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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