my sweet darling |
振り回されるなんて格好悪いし、自分のペースを守れないなんて以ての外だ。 自分が振り回すのは構わないけれど、振り回されてペースを崩されるなんて許せない。 それは確かに、そうなんだけど。
「こーんーどーぉー」 近藤の部屋にしては不自然なほど静かな空気の中間延びした三上の声が響く。 「なんだよ三上ー俺明日のテスト赤点とるとヤバイんだってー」 渋沢だってあれで勉強してんだぜ、と呟かれた言葉なんかに三上が耳を貸すはずもなく、三上は先ほどまで寝っころがっていたベッドの上から降りると背後から近藤の首に腕を回した。 「…つまんねー」 近藤は、仕方ないだろ、とでもいうように机の上に散乱している教科書やノートに視線を移す。 「お前俺とテストどっちが大事な訳?」 ぎゅう、と音がしそうなほどに抱きつきながら三上がそう言うと近藤は観念したように大きなため息をついて三上を抱きしめ返した。 「三上の甘ったれー」 に、と笑って近藤は三上を自分の膝の上に乗せる。 「…てゆーかさあ、俺なんか膝の上乗せて楽しい?」 文句を言うつもりで口を開いた三上だったが近藤に満面の笑みで返されて何も言えなくなってしまう。 「勉強なんかしなくたって生きてけるって」 散らかった机の上に目をやりながら三上が呟く。 「何、勉強にヤキモチやいてんの?」 からかうような言い方に今度こそ文句の一つでも言ってやろうと近藤の方を睨めばそれを遮るかのように強い調子で抱きしめられた。 「勉強しないと俺ヤバイんだけどさ、赤点取ると部活いけないし、遊べないし」 近藤は狡い。 「だからさ、三上が勉強教えてよ」 そしたらくっついてられるじゃん、と悪びれもせず三上の頬にキスをしながら言う近藤に三上がリアクションを取れずにいるとその隙をついて近藤は三上のシャツのボタンを器用に外していく。 「いやいやいや、待てって近藤!どんな勉強だよばかっ」 耳元で囁かれて三上がひくんと反応を返すと、近藤はしてやったりといったような表情を浮かべて笑った。 「つまんなかったんだろ?」 黙ったままの三上に近藤が顔を覗き込むと三上は彼にしては珍しく頬を赤くして、いつも通り怒鳴った。 「鍵くらい閉めろ、ばか!」
振り回されるのは格好悪いと思う。 実はそんなに嫌でなかったりするから、手に負えない。
近藤と三上は仲良しだ、と言い張ってた頃のもの。
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