動物的本能。
何かがあった訳じゃない。
ただ、何もなかったから。

そこに何も、なかったから。

            

つけっぱなしのテレビ。
同じような内容ばかりのバラエティにも、小難しいことばかり並べ立てるニュースにも、いい加減飽きが来ていた。
部屋にあるCDも、聞き飽きたものばかり。
正直言って、つまらなかった。だからだ。
それ以外に理由はない。

           

なー三上

何。

ちゅーしよっか

はああ?

              

冗談混じりで口にしたのは何が原因だったのだろう。
男とキスなんかして、何が楽しいと思ったのだろう。
いや、きっと三上とでなければそんなことしようとも思わなかった。
いくら退屈を持て余していても。
そして、原因を考えても何もないことを近藤は知っていた。だからそれを考えることを放棄した。

               

何考えてんだよ

別になんにも?

だってキモチワルイじゃん。男だぜ俺。

わかってるよ

…ヘンタイ?

                  

気持ち悪いと言った三上。
でもキスには簡単に応えた。きっとそれにも理由はない。あるとしたら近藤と同じようにつまらなかったからだ。
触れた口唇は柔らかくて、思いの外心地よかった。
病みつきになりそうなくらい。

               

ん…っ

……。

…は…っふ、

             

息苦しかった。
息継ぎの仕方すら知らない子供で、まるで、海の中で溺れているような感覚を覚えて。
歯列を割って絡ませた舌にびくりと反応して三上が近藤の服を掴んだ。
気持ち悪いと言ったくせに、そーゆうことを持ちかけた相手に簡単に縋る。
どっちがヘンタイだよ、と心の中で思った。

                   

近藤…っ

何。

も、ヤダって…っ

何が。

キモチ、ワルイ…っ

            

どこがだよと思う。いつもよりずっと潤んだ瞳で、溶けたような表情を浮かべているくせに。
それともそれすらわからないのだろうか。
顔を赤く染めて、嫌だ、と首を振る三上が、近藤の中の何かに火をつけた。
何かは何かであって、それの名前は知らない。
ただ火のついた、その、何かは、きっと三上の所為だ。
キス一つで、そんな表情を見せた三上が悪い、と誰にだか言い訳をした。
首筋に口唇を這わせる。
ふと思い立ってそこを舐めたら、非難がましい声音で三上が悲鳴をあげた。

        

ちょ、近藤…っ、やめ、ろってば…!

ヤダ。

なんか、ヘンだって…っ

              

経験があった訳ではない。
少しばかりの知識と、衝動があっただけ。
駆り立てられるように、身体が動いただけ。

余裕のない三上を、なぜか可愛いと思った。

            

……っふ…ぁ…っ

なあ、歯、立ててイイ?

やっだ…も…っ、シャレに、なんねって…!

            

男同士でこんなことをするべきではない。何をやってるんだろうとも思う。
不健全だ。不健康だ。汚らわしいと非難されても仕方がない。
けれど普段の自分が健全で健康かと言うと、必ずしもそうだとは答えられないから、そんなことはどうでもいい。

理屈でなかった。
何か、理由があった訳ではなくて、たとえば特別だって言葉を使ってどうにかなるものでもない。
ただ、近藤が抱きしめた三上の身体が、がちがちに固まっていて、それを可愛いと思ってしまった。
普段三上になんて形容出来ない単語がすんなりと浮かぶ。
つまらなかった。暇だった。日常、自分に与えられていたものに飽きていた。
だからそれだけだ。
しいて理由をつけたとしても。

             

い、た…あぁっ…!!

力、抜けって三上、…っ

できるか、…馬鹿…っ!お前、こそ…っコレ抜けよ…っ

抜けるか!

あ、っ!んんっ…こんど…ああっ!!

…っ大丈夫かよ、

ヤダって、も…っさわんな…っ

          

痛そうに顔を顰めた三上に少しだけ、罪悪感が浮かぶ。
けれどそれはほんの少しだけだ。
痛いと泣きながら、びくびくと反応を返す三上になんて、それくらいの量で充分だ。
なのに、泣き顔が、あんまり普段見られない表情が、近藤に優しくしたいと思わせる。
気休めになればとキスをすれば、繋がっている部分がひくりと動く。
膝に抱えて、抱きしめるようにしてやれば、三上は近藤にしがみついた。
自分にこんなことをされているのに、自分に三上が縋る。それがなぜかすごく嬉しい。
だって三上のこんなところ、誰も見たことがない。誰にも見せたくない。自分だけが知っていればいい。
優越感にも似た、そんなよくわからない感情に付随してきたのは、鍵をかけ忘れた、なんてくだらないことだ。
見られたら問題になるかもしれないけれど、今更止められるような理性を持ち合わせているほど、近藤は大人でなかった。
だから行為に没頭した。誰も知らない、ずっと一緒にいても知らなかった三上を知りたいと。

            

………………。

            

馬鹿。阿呆。ヘンタイ。ホモ。…お前なんか、キライ。

はいはい。

しんっじらんね。サイアク。

…キモチよかったくせに。

な…っ!

           

気持ち悪いと詰ったくせに、反応を返したのは誰だ。
男のくせに、男に挿れられて、よがっていたのは誰だ。
女が出すような甘ったるい声を出して、イッたくせに、と笑ってやりたかった。
けれど、男のくせに男の三上に欲情した自分も、責められるような立場ではないとわかっていたから何も言わなかった。
自分だって三上の中に出しているのだ。何も言えることはない。
だから三上の視線を避けるように、ベッドに寝転がった。

         

…楽しかったかよ、お前。俺なんかとこんなことして。

うん、三上、なんか可愛かったし。

俺男ですけど。

知ってるよ。

お前も、男だぜ?わかってんの?

…じゃあさあ、理由、つけたとしてさ、俺がもし三上好きだとか言い出したら、お前どうすんの?

……は?

         

呆気にとられたような三上の顔が可笑しかった。
別に近藤だって、そんな生易しい感情があった訳ではないと思う。
だって退屈だったから、仕掛けただけなのだ。最初は。
それ以外の何かを、行為の最中になってようやく抱いたかも知れないけれど、とにかく、最初はなんの理由もなかった。

ああ、そう言えば、と思い出す。

人間というものは動物の中で唯一、種の保存のためだけでなく快楽のためにセックスする生き物だ、と前に中西あたりが蘊蓄を垂れていたと。
真面目な顔をして、だから俺は夜遊びすんの、と言った中西に、辰巳が拳骨で殴っていたなあ、と思考がずれていく。

快楽のため。そうかも知れないし、そうでないかも知れない。
肉体的な快楽をあのとき求めていた訳ではない。心理的な快楽を求めて始めた。
途中からは確かに肉体的な快楽ばかり追っていたけれど。
他に、何かがあった。
何かはわからないけれど、何か別のものがあった。
ただそれの名前を知らない。
だから何もなかったのだと思うことにした。

何もなかった。
中西の言う薀蓄に適う感情も、もっと別の感情も。
ただ気付けばそうなっていた。

             

嘘だって。あー、でもわかんねー。

…あっそ。

別にいいじゃん。

へーへー。

なあ三上。

んだよ。

           

…またさあ、……しよーぜ?

               


まだ出来上がってない。この頃から近藤イメージが固まり出したんだと思う(ようやくか)。
考えることがめんどくさい。だから気にしない。馬鹿ばっかやって生きてければいいと思ってるような、等身大の少年っぽい感じ(あくまで感じ。だってBLなんてファンタジーだ。そこにほんの少しリアリティを出したいだけで)

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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