赤い糸
運命の人には、小指を繋ぐ赤い糸があるという。
そんなものが本当に見えたなら、誰も間違った恋なんかしない。
だからきっと、そんなものはありはしないんだ。

         

キスをして、抱き合って、一緒に眠る。
その瞬間、確かに自分はしあわせだった。
見つめあっているだけで優しい気持ちになれた。
きっと自分はその人を好いているのだろうと思う。
それが、一般的に見て、おかしい対象だとしても。

「あき、…あきら」
「かず、ま?」

自分の部屋のそれとは違うモノトーンで統一された家具。
見上げた先の天井にも肌に感じる自分より少し高い体温にも大分慣れてきていた。
嫌でも慣れる。それくらいに長い時間をそこで一緒に過ごしたから。

そして目覚めていちばん最初に見る、一馬の顔。

「おはよう」
「んー…」

朝一番にされる、優しすぎるくらい優しいキス。
それは、自分にはとても似合わない。
けれど記憶が確かなら、それは自分が言った言葉の所為で行われる行為だ。
どうしても眠くて、もっと寝ていたくて、どうせ出来ないだろうと思って、言った。
キスしてくれたら起きてやってもいい、と。
ああこれで眠れると思った三上を一馬は裏切ってくれたのだけれど。

      

頬に手が添えられて、降ってくるキスの雨。
それをうっとうしいとは思わない。眠たいとは思うけれど。
眠りたいではなく、眠いと思うのは、それを心のどこかで心地いいと思っているから。
それは多分、一馬だからだ。
眠いことに代わりはないけれど。

「あき、起きろって」
「嫌だ」
「今日は出かけるって、」
「もう少し寝たい」

一緒に寝よう、と寝起き特有の掠れた声で言えば、一馬は一瞬固まって、

「それはお誘いされてると受け取っていい訳?」

耳元で囁かれた一馬の声にどきりとする。
そんなつもりで言った訳では、決してなかったけれど。
別にそれはそれで、構わない。
その後きっと、彼はゆっくり眠らせてくれるから。

「寝込み襲う度胸があるならやってみろよ」

           

小指をつなぐ赤い糸なんて見えないし、そんなものが存在するとも思わない。
間違いの恋。
でもこれは、自分にとってとても大切なものだから。
見えない赤い糸を、自分は見えると嘘をつこう。

自分の小指は、もう一馬の分しか空いていないと。

               


全部書き直し☆(二度目ですね)(ソウデスネ)
初期系はひどい。甘い。砂糖で出来てるのかと思うくらい甘い。
当時の自分を否定する気はないし、別にあれはあれであの当時はよかったんだと思うけど、今は見るに耐えないので必死に書き直し。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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