空と君の間
見つめるのは、この雲の向こう、この空の向こう。

手を延ばせば届きそうで、でもどれだけ手を延ばしてももう届くことのない人。

        

笑っていた。
しゃべっていた。
泣いていた。
怒っていた。

生きていた。

もう、いないキミ。

           

千切れそうになるくらい手を延ばしても彼にこの手は届かない。
声が枯れて出なくなるくらい叫んでも彼にこの声は届かない。

空を羽ばたく鳥になりたいと云った彼は空の彼方へと消えた。

生きている彼を見たのは結人がきっと最後だ。
一馬でも、英士でも、武蔵森の人間でもない。

だって結人の目の前で彼は。
この手を放して、彼は。

          

みんなが彼をさがしていた。
みんな彼のことをすきだったのに。

        

彼は絶対に自分のことを見てくれない人を愛した。
それでもみんなが彼を愛してた。自分も愛してた。
彼を守りたくて、みんな必死だったのに。

             

最後に見たキミは、今にも消え入りそうに儚くて哀しい笑みを浮かべていた。
夜の闇と同化することを拒むように、真っ白な服を身に纏った彼はぽつりと呟いた。

『あー、しくった、見つかった…』

それはとても穏やかな声。
聞いているこっちの方が泣きそうになるくらい、優しい声だった。
言葉だけ聞いていれば、なんてことのないもののはずなのに、彼が何をしようとしているか、結人は気づいてしまった。

一歩一歩彼に近づいて、頬に手を伸ばす。
ゆっくりと彼は目を閉じて口を開いた。

『お前をすきになれてたらよかったのに』

彼の瞳から水が零れ落ちて頬を伝う。それが嫌で、何度も何度も指で拭うけれど、一向に止まってはくれない。
瞬きすらしないで真っ直ぐ結人を彼は見つめていた。

綺麗だと、思った。

こんな時に、なぜかはわからないけれど。
けれど本当にそう思った。

     

その時もう少し強く抱きしめていたら、結果は違っていただろうか。
トン、と結人の胸を押して、彼は結人の腕の中から抜け出していった。

『ごめんな、ゆーと』

聞き取れるか取れないか、彼は結人から離れて、小さな声でそう口にして。

       

空を、飛んだ。

         

延ばしかけた手が虚空を描く。
あきら、と名前を呼ぶ自分の声がやけに震えていていた。
彼が空を飛んだ先を見る勇気はなかった。

            

            

ずっと頭の中で彼の言葉がリフレインしている。
彼のぬくもりを腕がずっと憶えている。

空を羽ばたく鳥になりたいと云った彼は空の彼方へと消えた。
では、結人の見つめるこの雲の先に、この空の先に彼はいるのだろうか。

          

空と彼を隔てるものはなくなった。
けれど、彼と自分を隔てるものが出来てしまったから。

          

「ねえあきら、お願いがあるんだけど」

            

(俺も、そっちいっていい?)

               


結人と三上さん。
きっとみんな、いろいろなところを探して走り回っていた。それくらい、彼は愛されていてもいいと思う。

               

                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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