空と君の間 |
見つめるのは、この雲の向こう、この空の向こう。 手を延ばせば届きそうで、でもどれだけ手を延ばしてももう届くことのない人。
笑っていた。 生きていた。 もう、いないキミ。
千切れそうになるくらい手を延ばしても彼にこの手は届かない。 空を羽ばたく鳥になりたいと云った彼は空の彼方へと消えた。 生きている彼を見たのは結人がきっと最後だ。 だって結人の目の前で彼は。
みんなが彼をさがしていた。
彼は絶対に自分のことを見てくれない人を愛した。
最後に見たキミは、今にも消え入りそうに儚くて哀しい笑みを浮かべていた。 『あー、しくった、見つかった…』 それはとても穏やかな声。 一歩一歩彼に近づいて、頬に手を伸ばす。 『お前をすきになれてたらよかったのに』 彼の瞳から水が零れ落ちて頬を伝う。それが嫌で、何度も何度も指で拭うけれど、一向に止まってはくれない。 綺麗だと、思った。 こんな時に、なぜかはわからないけれど。
その時もう少し強く抱きしめていたら、結果は違っていただろうか。 『ごめんな、ゆーと』 聞き取れるか取れないか、彼は結人から離れて、小さな声でそう口にして。
空を、飛んだ。
延ばしかけた手が虚空を描く。
ずっと頭の中で彼の言葉がリフレインしている。 空を羽ばたく鳥になりたいと云った彼は空の彼方へと消えた。
空と彼を隔てるものはなくなった。
「ねえあきら、お願いがあるんだけど」
(俺も、そっちいっていい?)
結人と三上さん。
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