RPG DREAM



「・・・なぁ、越前。お前、これどう思う・・・?」

「どう思うって言われても・・・・」

 はぁ、とリョーマの口から溜め息が零れた。同時に菊丸や大石からもそれが零れる。

 何故か四人はレギュラージャージではなく、RPGに出て来るキャラクターの衣装を着ていた。

 ちなみにリョーマは勇者、桃城は戦士、菊丸は魔術師、大石は司祭である。

「・・・これは」

「絶対・・・・」

「「「「不二(先輩)の仕業だ・・・」」」」

 四人は再度、深々と溜め息を吐いた。



 それは、一ヶ月前のこと。


 文化祭で、リョーマ達男子テニス部は劇をする事になった。別に反対意見は出ても良かったのだが・・・。

「手塚。僕が脚本やってもいいかな?」

 それが出る前に、不二の一言で決まってしまったのである。



 不二周助に逆らってはならない。



 テニス部では、何故かそんな暗黙のルールが存在していた。だから誰一人として、何も言えなかったのである。

 ちなみに、脚本の他に演出・衣装なども不二が手がける事になった。

「脚本は後一週間くらいかかるんだ。でも衣装はもう明日持ってくるよ」  

 その言葉は、まるでこうなる事を予感していたみたいで怖い、と部員一同は思った。


「・・・もしかして不二先輩、俺らに夢でRPGの世界を冒険させて、それを脚本にするつもりなんじゃ・・・」

「あり得るな・・・それなら、昨日持ってきていた衣装が妙に俺達にぴったりなサイズだった理由が分かる・・・」

「サイズの出所は・・・あんまり口に出したくないスけどね・・・」

「不二の事だから、俺達の夢を操る事なんて簡単だにゃあ・・・」  

 ・・・と、まぁ皆いろいろ言っていた時だった。急に周囲が反転した。



「・・・・いやぁ、いろいろと言ってくれるねぇ、君達・・・・」  


 ドスの効いた声・・・・現れたのは・・・・。

「ふっ、不二先輩っ!!」

「ぎゃ〜〜〜〜っ!!出たにゃ〜〜〜!!!」

「まっ、待ってくれっ!話せば解る!!!」  

 辺りは暗く、場所も森だったのにどこかの部屋のようだ。

「・・・不二先輩。もしかしてここ、ラストステージの魔王の城ッスか?」  

 唯一冷静なのは、ゲーム好きな桃城。

 不二の衣装、そして周囲の様子を見てすぐに順応した。さすが曲者(笑)。

「うん、そうだよ。凄いでしょう。これ、ついさっき作ったんだ」


「「「「ついさっき!!??」」」」



 見事にハモる。フツー、こんな簡単に魔王の城が作れるはずが無いのだ。いや・・・・・・・・不二なら出来る。

 よくよく見てみたら、不二の衣装は魔王の衣装だ。

「・・・・似合いすぎッスね」

 リョーマがボソッと呟いたので、大石は慌ててその口を塞いだ。幸いにも不二には聞かれていないようだ。

「・・・ねぇ大石〜、一つ聞いても良い?」

「ん?何だい、英二」  

 菊丸は不二の後ろを指差した。




「何で手塚や乾達、女装して不二の後ろに隠れてるの?」



 その言葉に、残る三人は一瞬我が耳を疑い・・・・そして菊丸が指差す方を見た。

 手塚や乾、河村や海堂が隠れていた。いや、それだけなら良い。

 彼らは皆美しいドレス(かなりフリルのついたもの)を纏い、かつらを付け、化粧をしていた。

(ちなみにかつらについては、手塚は金髪縦ロール、乾は黒髪ストレートヘアー、河村は赤毛三つ編み、海堂は栗色セミロングである)

「・・・・な、何をやってるんスか、あんたたち・・・・・」

 リョーマはそれを言うだけで精一杯だった。

 一瞬、「あ、似合う・・・」と思ってしまった事は内緒だ。

「彼らは魔王に捕らわれた姫だよ」



「「「「姫っ!!!!?????」」」」



 四人は思った。不二・・・趣味が悪いぞ・・・と。

 同時に菊丸が、俺の方が絶対女装似合ってるのに・・・とぼやいたという事を記しておく。

「君達は魔王を倒し、攫われた姫達を救うため旅をする勇者一行。

 ちなみに魔王の城に着くまでだけど、君達は魔王の手下となった他校のレギュラーと戦わなければならないっていう設定」  

 スラスラと不二の口から設定が語られていった。

「ちょっと待って!俺達、彼らとは戦っていないぞ!」

「ページ数が足りないらしいんだ。オマケにイベントも近いらしいし。だから他校との対決は省くしかなかったってわけ」

(「ページ数」・・・?「イベント」・・・・?)

 そんな言葉に首を傾げつつも、大石は何とか納得した。


「とりあえず、俺達は魔王の城に来たわけですから・・・倒しちゃってもいいんスよね?」


 リョーマの目は燃えていた。まだあの紅白戦を根に持っているらしい。

「うん、そうだね」

 一方不二の目にも、真っ赤な炎が轟々と燃えていた。



「・・・・辞めておけ、越前・・・・」(手塚)

「そうにゃ〜悪い事は言わないから」(菊丸)

「ナンマイダーブ、ナンマイダーブ」(桃城)

「ケッ、バカが・・・・」(海堂)

「ううっ、胃が・・・・」(大石)

「やっ・・・辞めなよ、二人とも・・・・」(河村)

「越前が負けて、俺達のように女装させられる確率、87%」(乾)  



 ・・・と、誰もが(約一名を除く)止めに入ったが、二人はやる気だ。  

 不二がパチンと指を鳴らした。すると、ゴゴゴゴ・・・と音を立て、地面からテニスコートが現れた。  

 もう、何でテニスコートが地面から現れたんだ?とか、何でRPGなのにテニスで戦うんだ?とか、そんな疑問はすでに彼らの中で消え失せていた。

「行くよ、越前」

 不二がボールを空高く上げた。






 そこでリョーマはパチッと目が覚めた。起き上がり目覚ましを見ると、まだ6時であった。

「・・・変な夢だったな・・・」

 ゆっくりとベッドから抜け出すと、朝錬の準備をし始めた。



「ちぃーっす」

 部室に行くと、すでにレギュラー陣は全員集まっていた。が、何だか暗い。

 乾的に言うなら、「いつもの6割増に暗い」だ。

「はい、越前。これ」

 不二がいつもの微笑みを浮かべて、リョーマにあるものを手渡した。

「・・・・何スか、これ・・・・」

「脚本。昨日書き終えたから」

 ・・・昨日、一週間かかるって言ってなかったっけ?そんな事を思いつつ、リョーマは脚本を捲った。

 そして・・・・叫んだ。


「不二先輩っ!!!これは何なんっスか!!!!」




 リョーマの肩はワナワナと震えていた。それもそのはずだ。配役が、昨夜夢で見た通りだったからだ。

 いや、それだけならまだ良かったかもしれない・・・話の内容も、夢の通りだったのだ。



「もっとマシなやつ考えません!?これ、受け狙いでしょ!明らかに!」

「だって、手塚の女装が見たいって言う女生徒が多くてさ。大丈夫。手塚の事だから、夢以上に綺麗になるよ」

「そうですか・・・(想像中)・・・って、俺が言いたいのはそう言う事じゃなくて・・・ていうかアンタ、さっき『夢』って!」


「僕の辞書に“不可能”の文字は無いから」


「意味わかんないッス!!」  


 そして以下延々とリョーマと不二の論争は続けられ、手塚達はショックから立ち直るのに時間がかかったそうな。



 後日、文化祭でリョーマ達男子テニス部の劇は大盛況を修めた。

 ・・・・が、リョーマ達レギュラー陣は暫くの間、女生徒達に「女装してください!」とか「今度一緒にイベントでコスプレしてください!」というような、酷くマニアックな熱烈な告白を受けた。

 オマケにその時の写真が出回り、部活そっちのけでそれを回収するために走る姿が見受けられたそうな・・・。


 教訓:不二にやれない事なんて何も無い。  


皆さんも、夢を見る時はお気をつけて・・・。                        終わり


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