飼育係
〜生徒会長との兼任〜



 結衣香が、現役生徒会長でありながら異例の飼育係就任が決まってから2週間近くたったころ……、結衣香の生徒会長と飼育係の業務内容に変化が訪れた。
 そもそも現役の生徒会役員が就任することを想定していなかった飼育係において、急遽、生徒会と飼育係の兼任方法が取り決められることとなった。
 その兼任方法というのは、基本的に週に3日従事することになっている飼育係の日程を避けて生徒会役員会議を開催することにより、両方の職に影響を与えることなくするというものであった。
 結衣香が飼育係に就任してから1週間ほどは、その取り決めどおりに飼育係に従事する日と、生徒会役員会議の開催日が重なることはなく、結衣香は放課後に両方の業務を務めることができていた。
 とは言え、それは結衣香にとって、とても平静で耐えられるようなものではなかった。
 日々増えていく飼育係補助を担う男子生徒の数……。
 はじめは5〜6人程度だった飼育係補助の人数は、1週間がたったころには10人を超えるようになっていた。
 そして、本来であれば生徒会長特権によって、男子生徒の指示や命令に対する拒否権を持っているばかりか、男子生徒へのさまざまな発言が認められる結衣香 であったが、飼育係に従事する日の放課後に限って、その特権は一時的に無効化され、飼育係補助の男子生徒が出す指示や命令に従わなければならないのであ る。
 その男子生徒の指示は、日々、趣向を凝らした変態的で結衣香の心と身体を辱めるものであった。

 そんなある日の放課後、飼育係を務めるはずの日であったが、急遽生徒会役員会議の開催が取り決められることとなった。
 
 今回の一件により、生徒会役員会議に参加しながらでも、飼育係としてウナギに給餌することに何ら支障はないということが確認されることとなった。
 そこで、改めて生徒会役員と飼育係の兼任方法について検討がなされ、「飼育係に従事する日程と生徒会役員会議の開催日を、必ずしもずらす必要はない」ということが定められたのである。
 逆に、生徒会役員会議の最中であっても、ウナギへの給餌は可能ということから、ウナギにできるだけ空腹を感じさせないように……という配慮のもと、たと え飼育係として給餌する予定のない日であったとしても、役員会議が開かれる際には、会議中に給餌してもいいのではないか……という意見が出された。
 その結果、生徒会役員の半数の賛成が得られた場合には、生徒会役員会議の最中であっても、飼育係である結衣香は特製水槽椅子に座り、ウナギへの給餌作業を務めながら会議に参加することとなった。
 なお、生徒会役員は、全6人(生徒会長、副生徒会長、書記2名、会計2名)の役員のうち、副生徒会長、書記のひとり、会計のひとりを男子生徒が務めることになっているため、ちょうど男女比が3対3となっている。
 そして、会議中における飼育係の給餌を決めるためには、生徒会役員の半数――すなわち3人の賛成が必要となるのだった。

 ……この生徒会役員会議中に飼育係給餌を認める取り決めがなされた日から、生徒会役員会議が始まる前には必ず結衣香に給餌作業をさせるかどうかの議案が副生徒会長から提案されるようになり、そして採決の結果、毎回賛成3人で可決されることとなった。
 その結果、飼育係を兼任する結衣香は、生徒会役員会議の最中、常に特製水槽椅子に座って、ウナギへの給餌を務めながら生徒会役員会議に参加することになったのだった。



 原案:鰻屋さん
 文章・イラスト:ロック


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