ある恋のうた
夢を見た
夢の中で見知らぬ少女が歌を歌っていた
ハッキリとした言葉は聞き取れなかったが、悲しい歌だった気がする
光を浴びて歌うその姿はとても白くて 今にも光に溶けて消えてしまいそうだった
恋をしていた
そんな記憶の蘇るメロディーだった
光と闇
白と黒
例えるならそんな感じ
そんな二人だった
一人はこう思っていた
白日の下晒されても変わらないそれが真実(ホントウ)なのではないか
一人はこう思っていた
暗黒にあってなお変わらないものも真実(ホントウ)
故に真実を求めるならば 相容れることなく 地平の果てまで手を伸ばしても届かない
光でも闇でも同じなのだと気づいたとしても
お互いの境界を越えることは叶わない.....
もしそれを越えたら 越えた先には 暗闇のみの世界で
目も耳も塞がれてしまったとしたら
それは死
羽をもがれた鳥の様に 歌を忘れた歌い手の様に
だが、それを恐れるのは光を求めているものの方
闇をまとうものは光を恐れはしない
それどころか、光求めるもののなかにある 闇に気づいていた
だからそのまま 闇の部分だけでも手を合わせ 重なり合うことを望んだ
そのまま二人闇に堕ちようとも 手を離すことを決してしないと
決めていた
誓っていた
何故なら 光あるところに影は落ち
人の中には善と悪
相反するものこそ一対とあり
共存しているものだと知っていた
ある日光もとめるものは闇纏うものにこう言った
お前と私は近すぎる
両極にあって 同じくして 最も畏ろしい
そしてコインの裏表の様だとも言った
背中合わせにあり ピタリと張り付いているのに 向かう方がいつも逆だと
視界が交わることは決してないと
闇まとうものはこう返した
まるで私達はすりガラス越しに互いを見ている
すぐ側に居るのに 顔さえ見えない 触れようとしても 厚いガラスの隔たりに阻まれ
温度さえ感じることも叶わない
しかし 確かにそこに居る
それは感覚 言葉ではなく 温もりでもない ただそこに居ると
伝うべきは思いのみ
それでは繋げないのだろうか
それ以上に何をのぞむのだろうか
いつか昔にみた悲しい思い出
叶わなかった恋の最後は
幻のごとく ゆらめいては 流れ続けていた
少女の歌がやむ
朝日の輝きに 目を焼かれ 鳥が飛び立つ
あの歌はなんて歌だったかな