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(無題)

その日の授業は全く身が入らなかった。
得意な理数科目の授業すら耳に入らない。
授業の終了を知らすチャイムが鳴り響くと同時に席を立つ。
勢いよく教室を出ようとした所で声を掛けられた。
「なのはちゃん、一緒に帰ろう」
「なのは、帰るわよ」
私は振り返り、二人の友達に両手を合わせる。
「ごめん!今日はちょっと用事があるんだ。また明日ね!」
そう言って、二人の返事も待たずに教室を飛び出た。
そう、今日は大切な友達が帰ってくる日なのだ。

一目散に坂を駆け下り、海岸線を目指す。
彼女が転送されてくる時間にはまだ余裕があったけど、何となく急ぎたかった。
到着。予定の時間まではまだ15分程ある。
急いできたせいか、心臓がドクドクと脈打っている。
汗を拭い、呼吸を落ち着かせる。
しばらく立っても何故かドキドキは収まらなかった。
私は、レイジングハートを手に取り出し、じっと見つめた。
彼女と過ごした日々が鮮明に思い返せる。
それは決して幸せな記憶ばかりじゃ無かったけど、
二人が分かり合うために費やした大切な過去。
ぐっと手を握り締め、私は目の前を見据えた。
そこにはいつの間にか光の柱が出来ていた。
その中に揺らめく人影が、徐々に輪郭を形成していく。
光が収まると、そこにはあの日と変わらない姿で彼女が立っていた。
あの綺麗な瞳には、もう寂しさは残っていない。
「…おかえり、フェイトちゃん」
私は微笑んで彼女の名前を呼んだ。
「…ただいま、なのは」
彼女も私の名前を呼んでくれた。あの日のように。

アースラから、フェイトちゃんの無罪が確定した、と連絡が来たのは一週間前。
そして三日前、彼女が私に会いたいと言っている、と連絡が来た。
本当に嬉しかった。
私達は確かに友達だったけど、始まったばかりで別たれてしまった。
だから早く友達として同じ時を過ごしたかった。
彼女が来たら一緒に何をしようか、そればかり考えていたら時間はあっという間に過ぎてしまった。
そして今、彼女はここに居る。
「へへへ…」
私は何だか緊張してしまって、次の言葉が出せないでいた。
あれだけ彼女と過ごす日々を夢想していたにも関わらず。
所帯なさげに頬を掻く。
「なのは…」
「…へ?」
突然彼女は私の体を、ぎゅっ、と抱きしめた。
「また会えたね…なのは…」
「え…うん…」
「名前を呼んでよ。なのは…」
「うん…フェイトちゃん…」
「なのは…なのは…」
フェイトちゃんは夢見るように私の名前を呼び続けた。
フェイトちゃんの体は温かくて、柔らかくて、何だかとても安らいで、緊張は解れてしまった。
それから私達はベンチに腰掛け話し始めた。
「裁判、無罪で良かったね」
「うん、なのはのお陰だよ」
「そんな事無いよ。クロノ君が頑張ってくれたから」
「でも、なのはの口添えがあったからだよ」
「クロノ君は私が何も言わなくたって力を貸してくれたよ、きっと」
「…そうだね」
「今日はアルフさんは?」
「アースラに残ってもらった。今日は…なのはと二人で会いたかったから」
そう言ってフェイトちゃんは頬を赤らめ俯く。
その姿が可愛らしくて、私も恥ずかしくなってしまう。
話はお互いの近況から、もっとお互い自身の事になっていく。
「フェイトちゃんは、何が好きなの?」
「…え?」
「えっと、その、食べ物とか、何でも良いんだけど。フェイトちゃんの好きなものが知りたいな。」
「…」
フェイトちゃんは悩み始めて、私の顔と地面を交互に見始める。
「私は…なのはが好きだな」
真顔でそう言われ、私は思わず息を呑んで赤面してしまった。
「…あ、ありがとう」
手をもじもじとさせながらそう言う。いつもの調子が出せない。
(何やってるの私、相手は女の子…)
「えと、じゃあ…食べ物は?」
「食べ物?…私が好きだった食べ物はこの世界には無いと思う。食文化が違うから。
この世界の食べ物は余り食べたことが無いから…ちょっと分からないな」
私はある事を思い出して、質問を続ける。
「…どうしても食べられない食材ってある?」
「そうだね……特に、無いと思う」
「うん、良かった!じゃあ行こう!」
フェイトちゃんの手を取り、私は走り出そうとする。
「ちょ…なのは、何処に行くの?」
「夕飯!一緒に食べよう!フェイトちゃんしばらく此処に居られるよね?私のうちに泊まってよ!」
海に沈み行く夕日を背に、私たちは町を目指して走り出した。
此処に来る時と同じように。
走る必要なんか無いのに、心がうきうきして、そうせずには入られなかった。
フェイトちゃんも同じみたいで、振り返って見るその顔はとても嬉しそうだった。

いつの間にか競争のように駆けていて、あっという間に家についた。
私のほうが道を知っていて有利なはずなのに、最後の直線でフェイトちゃんに抜かされてしまった。
門の前で、激しく呼吸するお互いを見合って、苦笑しあう。
私は玄関の戸に手を掛ける。その時フェイトちゃんが不安そうな顔になったのを私は見逃さなかった。
「大丈夫。私の家族は、優しいよ」
精一杯の笑顔で微笑みかける。
「おかえり、なのは」
リビングに入るとお母さんが笑顔で迎えてくれた。
「ただいま、お母さん」
「あら、そっちの子が、そうなの?」
お母さんは体を屈めてフェイトちゃんの目線に合わせる。
「そう!フェイトちゃん」
「あ、あの、こんにちわ。フェイト・テスタロッサです」
「ふふ、こんにちわ。なのはから聞いてるわよ。遠くからいらしたんですってね。
自分の家だと思ってゆっくりくつろいでいて。夕飯、もうすぐ出来るから。」
お母さんはフェイトちゃんに微笑みかけると台所へと戻っていった。
私とフェイトちゃんがテーブルに付いてしばらくするとお父さんとお兄ちゃんが帰ってきた。
そしてフェイトちゃんを見るなりこう言った。
「おおっ…なのは!その頭どうしたんだ!?父さんは…ッ、父さんは…ッ、そんな娘に育てた覚えは無いぞ!」
「…父さん、べた過ぎるよ」
しばらくしてお姉ちゃんも帰ってきた。
予めフェイトちゃんは私の文通相手として紹介しておいたお陰か、皆気さくに彼女に話しかけてくれた。
夕食中、慣れない質問攻めに合ってフェイトちゃんは戸惑っていたけど、
だんだん慣れていって微笑みながら皆の質問に答えるようになっていた。
夕食が終わり、フェイトちゃんを私の部屋に招き入れる。
「凄い、良い人たちだね」
「そうでしょ?私の自慢の家族!」
「料理も、とてもおいしかった」
夢見心地でフェイトちゃんは言う。
「えへへ…」
フェイトちゃんが余りにもべた褒めするので私は誇らしかった。
それから私たちは、またいろいろ話し始めた。
明日は何をするとか、私の友達のこととか、学校のこととか、
もしかしたらとても退屈な話だったかも知れないけど
フェイトちゃんは自分のことのように嬉しそうに聞いてくれた。
だから私も嬉しくて、時間を忘れて話し込む。
「なのは、フェイトちゃん、お風呂沸いたわよ」
そう言ってお母さんが入ってきたとき、時計を見たらもう十時になっていた。
「わ。もうこんな時間」
「ほんとだね」
「フェイトちゃん、お風呂先はいる?」
「え、なのは先入って良いよ」
「あらあら、折角だし二人で入ってきたら?」
「…え!!」
思わぬ母の発言に私はどきっとしてしまう。
「いいじゃないか、裸の付き合い」
いつの間にかお父さんも来て頷いてるし…。
「で、でもお風呂狭いし…」
「私は平気だよ、なのは。…なのはは嫌なの?」
「!…う、ううん。そんな事無いよ!じゃあ行こう」
私はお父さんたちの脇を抜けて廊下に出る。
何でだろう。同世代、同姓の子とお風呂に入るなんて
そう珍しいことじゃないのに、私はとてもドキドキしていた。

脱衣所に着ても私の心臓は加速を緩めなかった。
後から入ってきたフェイトちゃんと合った目を思わず逸らす。
「じゃ、じゃあ入ろうか」
「うん」
フェイトちゃんは平然と服を脱ぎ始める。
フェイトちゃんは私と違ってドキドキしてないのかな…。
そう考えると私の鼓動は急に冷めてしまって、私もスカートを脱いだ。
再び顔を上げた瞬間、今度は私の心臓は凍りついた。
そこに美しすぎる裸体があったから。
私と年は同じはずなのに、もう膨らみ始めている小さいけど形の良い胸。
シルクのように白い肌。細くバランスの取れた足腰。その肩に掛かる煌く金髪。
それは、何かの本で見た彫刻のようで、私はぼーっと見惚れてしまった。
「なのは?」
フェイトちゃんが首を傾げて呼ぶ。
「…」
「なのは?どうしたの?」
「…あっ!ご、ごめん」
「タオル、ある?」
いつの間にかフェイトちゃんの腕は差し出されていた。
「あ、はい、どうぞ」
私は慌ててタオルを取り出し差し出す。
「ありがとう。先に入ってるね、なのは」
ニコリと微笑むと、フェイトちゃんはお風呂の中に入っていった。
残された私は、自己嫌悪に浸りながら、脱ぎかけの服を脱ぎ始めた。
(女の子の裸に見とれちゃうなんて…)
それからまた私の心臓は早鐘を打ち出した。
「なのは、背中流そうか?」
「うん、ありがとう、フェイトちゃん」
「…なのは、君の髪は綺麗だね。」
そう言ってフェイトちゃんは私の髪をかきあげる。
「そ、そんな事無いよ。フェイトちゃんのほうが綺麗じゃない。金髪だし。
髪長いから手入れが大変じゃない?」
「特に何もしてないよ。乾かすのは大変だけど。…はい、終わり」
「今度は私が流すね……あっ!」
いつもと勝手が違っていたせいか私は立ち上がるときにバランスを崩してしまった。
「!…なのはっ」
倒れようとした私をフェイトちゃんが抱きとめ、背中から倒れる。
「ごめん!フェイトちゃん!大丈夫!?」
「私は大丈夫だよ。なのはは怪我は無かった?」
「うん、大丈夫」
風呂場は裸の少女二人が抱き合っているという凄い状況になっていた。
押し倒してる方の私がまずどかなければならないんだろうけど、私は躊躇していた。
始めて裸で触れ合ったフェイトちゃんの体は、とても柔らかくて、温かくて、良い匂いがして、
ずっと触れて居たい様な、そんな気持ちを抱かせた。
私はフェイトちゃんの顔を見上げる。フェイトちゃんはちょっと赤くなった顔で困ったような表情をしていた。
フェイトちゃんの鼓動が伝わってくる。それは、私と同じように速く脈動していた。
何かを期待するような、恐れているような、そんな鼓動だった。
(フェイトちゃんも、私と同じ…?)
「…」
「…」
「湯船入ろうか」
「…うん」
フェイトちゃんから切り出されてしまい、私は仕方なく立ち上がった。

それから部屋に戻るまで、何となくお互いの口数は少なくなっていたような気がする。
「フェイトちゃん、床で良いよね?」
彼女はコクリと頷く。
私は用意されていた布団をベッドの隣に敷く。
「…それじゃあ、お休み」
会話を早々に切り上げ、電気を消して、ベッドに潜り込む。
そうしないと何だか自分がおかしくなってしまいそうで怖かったから。
布団を深く被って思いを巡らせる。
(どうしちゃったんだろう、私…フェイトちゃんを見てると凄くドキドキする。
すずかちゃんや、アリサちゃんならこんな事無いのに…。
フェイトちゃんが、綺麗だから…?ううん、綺麗さだけならアリサちゃんもすずかちゃんも…。
何なんだろうこの気持ち…。……フェイトちゃんはどうなんだろう?
さっき、凄くドキドキしてたけど……。でも、あれって驚いてただけ、なのかな…)
「なのは、起きてる?」
フェイトちゃんが急に私を呼んだので、私は驚いた。
「な、なに?」
布団から顔を出し、暗闇の中を見ると、フェイトちゃんが枕を抱いて立っていた。
「なのは…その、一緒に寝ちゃ、駄目?」
これ以上無いって位に私の心臓が跳ね上がる。
今は、とてもまずいような気がした。
でも、此処で断るのも酷い様な気がする。
「なのはと、少しでも近くに居たいんだ」
フェイトちゃんが追い討ちをかけてくる。
こうなったらもう断るわけには行かない。
「うん、いいよ。でも、狭いよ?」
「狭くても良い。なのはと一緒に居たい」
そんな風にまた私を動揺させる言葉を吐いて、彼女はベッドに入り込んでくる。
(フェイトちゃん…何を考えてるんだろう…)
誰かと同じ布団の中で寝たことなど余り無い。
こういう時はどう振舞えば良いのだろう。
とりあえず相手に背を向けるのは失礼だと思うから、私はフェイトちゃんのほうを向いていた。
フェイトちゃんも私の方を見つめていた。
眠るつもりなのに、何故か瞳は閉じられなくて、どんどんフェイトちゃんの顔に集中してしまう。
「なのはは…どうしてこんな私と向き合ってくれたの?」
フェイトちゃんが語りかけてくる。
「え?」
「あの時の私は、母さんの願いを叶えるために本当に酷い事をしていた。
そんな人と、どうして向き合おうと思えたの?」
フェイトちゃんが悲しそうに俯く。
「それはフェイトちゃんと友達になりたかったからだよ。前にも言ったでしょ」
私は淡々と理由を述べた。
「…どうして、友達になりたいと思ったの?」
その答えだけじゃ飽きないのか、フェイトちゃんは質問を続ける。
まるで、何かひとつの答えを見つけたいかのように。
私はじっと見つめてくるフェイトちゃんの瞳にどんどん吸い込まれてしまう。
そう、この瞳が、全ての始まり。
少し間を置いて私は答えた。
「…それは、フェイトちゃんの瞳がとても綺麗だったからだよ」
「瞳が?」
フェイトちゃんは目を見開く。
「うん、私が今まで出会った中で一番綺麗だよ!
こんな綺麗な瞳の子が、悪い子な訳無い。だから、友達になりたいと思ったんだよ」
「そう…」
フェイトちゃんは再び俯いた。そして何かを決意したかのように話し始める。
「私も、あんな事していて、こんな事言えた義理じゃないけど、貴方の瞳が綺麗だと思った」
「じゃあ、一緒だね」
私は微笑んでみせた。その笑顔は何処かぎこちなかったかもしれない。
「ううん、私はなのはとは違っていたと思う」
フェイトちゃんの雰囲気が変わる。じりと私の顔との距離が詰められた。
フェイトちゃんの顔が目の前に来る。
「フェ、フェイトちゃん…」
フェイトちゃんはうっとりとした表情で私の髪を撫でた。
「私はなのはの全てが綺麗だと思ったから。
どうしてこんな可愛い子と、戦わなければいけないんだろうって、何度も思った…」
指は髪から、首筋へ、そして下顎へ伝わる。
顎を掴れるとゾクゾクして、体から力が抜けた。
「フェイトちゃん…駄目だよ」
私はフェイトちゃんの意図を理解して、精一杯の抵抗をしてみせる。
フェイトちゃんの腕から逃れようと身を引く。
でも、フェイトちゃんは許さなかった。私をベッドの端まで追い詰めて、鼻と鼻が触れてしまうくらいに顔を近づける。
フェイトちゃんの吐息が掛かる。
「ねぇ、なのは?なのはは私のこと、どう思ってる?私は…なのはが好き。…さっきも言ったよ。何度でも言うよ」
フェイトちゃんは私の耳に囁きかける。
その懇願するような言葉に、胸が苦しくなった。
私はどうにかして言葉を捻り出す。
「私も、フェイトちゃんが好きだよ…もちろん友達として…」
フェイトちゃんはかぶりを振る。
「…駄目だよなのは。私の好きは、異性に傾ける思いとして、好きなんだ。
…別に嫌いなら嫌いと言ってくれても良い。なのはの本当の気持ちが知りたいんだ。」
フェイトちゃんがこんなに私を思ってくれているなんて知らなかった。
私はフェイトちゃんの瞳を見返す。
「…」
私もフェイトちゃんのことが、好きだと、思う。
フェイトちゃんが私を好いてくれて本当に嬉しいと思う。
(でも、女の子同士でなんて…いいのかな…いけない事なんじゃないのかな…。)
けど、目の前に迫るフェイトちゃんは本当に魅力的で、そんな考えはついに四散してしまった。
「……私もフェイトちゃんと同じ、同じ…気持ち」
「…なのは」
フェイトちゃんは嬉しそうに目を細めた。
そして次の瞬間私の唇は彼女の唇に塞がれていた。

「んっ」
私の初めてのキスは、女の子との物になった。
それは本当に浅くて、お互いの存在を確かめ合うようなキスだった。
音の無い、静かなキス。
私は咄嗟の事に驚いたが、その甘美な感触に溺れ、瞳を閉じた。
しばらくして、フェイトちゃんが身を引くのを感じた。
私は目をゆっくりと開く。
私の瞳には、頬をほんのり赤らめて俯くフェイトちゃんの姿が映った。
「ごめんなさい、なのは。私勝手に…。…でも、なのはが本当に好きだったから」
しょげている姿は、形容しがたいほどに可愛らしい。
「いいんだよフェイトちゃん。私も…フェイトちゃんとキスしたかったから…。
…ねぇ、フェイトちゃん、もう一回、いい?」
私はもう一度あの感触を味わいたくて、つい要求してしまった。
「なのは…」
フェイトちゃんはとても喜んだように見えた。
そして再び顔が近づいて、私達はまたキスをした。
またも浅い口付け。
「なのは…口を開いて…」
「…口?」
どうしてそんな事をするのか分からなかったが、私は言われるがままに口を少し開ける。
すると、フェイトちゃんはそこに自らの舌を侵入させた。
「!」
驚いた私は思わず声を出そうとするが、肝心の口はフェイトちゃんの口で塞がれた。
突如入ってきたフェイトちゃんの舌は、私の口内をたどたどしく徘徊する。
「んっ…はふ…ふぅ……」
どうしていいか分からない私の吐息が二人の間から漏れる。
苦しい、そう思った。だけど、同時に得れるのは、物凄い快感。
口の中を這いずり回るそれが、フェイトちゃんのだと思うだけで、体中が熱くなった。
舌は私の口のあらゆる場所を犯して回る。
身を任しているのも良かったが、やられっ放しは何となく悔しい気分になる。
奥に入ってきた舌を隙を見て自らのもので絡みとり、捻じ伏せる。
予想外の行動にビクッとフェイトちゃんの体が振動した。
なるほど、自分でやるのは心地が良い。
私は調子に乗って、フェイトちゃんの口内への侵入を試みた。
舌を伸ばすだけでは届かず、自然と深い口付けを自ら行うことになる。
「ん……ちゅ…ちゅ…はむ……」
舌先を大胆に踊りこませる。
(…これが、フェイトちゃんの味……おいしい)
私は味を占めた。フェイトちゃんの口の中を好きなだけ犯し、彼女の唾液を存分に味わう。
私たちは時間の長さが分からなくなるほど、その行為に没頭していた。
ぴちゃ、ぴちゃ、びちゃ、ちゅ…んちゅ…。
飽き足りない。もっと、もっと深く繋がりたい。
そう思っていたのに、長い長いキスはフェイトちゃんからふいに絶たれた。
「あ………」
私は名残惜しそうに連なる唾液の橋を見つめた。
フェイトちゃんに密かな抗議の目を向ける。
「なのは…続きしても、いい?」
「…続き?」
キスの続きだろうか、と私は思った。
私が腑に落ちていないことが伝わったのだろうか。
フェイトちゃんも不思議な顔をしている。
「なのはは、続き…知らないの?」
「…続きがあるの?」
愛し合う行為など、キスしか知らなかった。
これまでの行為だけでも有り余る快感だったのに、まだ続きがあるというのか。
私は期待に目を輝かせていたことだろう。
「…する?」
断る理由など無い。
「うん…」

「大丈夫…私が、リードするから…」
フェイトちゃんが囁きかけ、私の微かな不安を拭い取ってくれる。
フェイトちゃんは、優しい。こんな優しい子なのに、母親に憎まれ続け、捨てられ、
それでも最後には自分を取り戻した、強い女の子。だから、惹かれてしまう。
「服を、脱がすね…」
フェイトちゃんが私のパジャマに手をかける。
「裸になるの…?じゃあ、フェイトちゃんのは…私が…」
脱がしっこだ。こういうのも何だか楽しい。
でも、女の子の服を脱がすなんてなんか不思議だ。男の子でも不思議だけど。
手早く脱ぎ終え、生まれたままの姿で相対する。
ふいに、フェイトちゃんにトンと体を押され、ベッドに横たわる。
その上にフェイトちゃんが覆いかぶさった。
「優しくするよ…」
フェイトちゃんは私の胸に手を掛け、揉み始める。
まだ膨らんでもいないそこを丹念に揉みあげ、頭を垂れるとキスをした。
「ちゅ…んちゅ…ちゅ…」
堪らない快感がそこから走る。
「あうぅ……フェイトちゃん……」
思わず声を上げてしまう。
「大丈夫、なのは?…もっと凄くなるよ」
フェイトちゃんはクスリと笑うと、舌を丘から臍、さらに下へと滑らせていく。
「フェイトちゃん…そっちは…あんっ…」
太腿の内を舐め上げられたとき、一際大きな声を出してしまう。
「そこ…おしっこ出る所だから…汚いよ?」
「なのはの体に…汚いところなんか無いよ…。とても、良い匂い…」
フェイトちゃんは私の陰裂に鼻を当て、思い切り匂いを嗅いでいる。
鼻息の感触に身悶えした。
フェイトちゃんは筋を優しく摩り、何度も舐めあげる。それが繰り返されるたび、私は厭らしい声で鳴いてしまう。
キスとは比べ物に成らないほどの快感の波が押し寄せる。
ツプリと音を立て、フェイトちゃんの舌が私の中に侵攻してきた。
自分の体の中に異物が入ってくる感覚に私は眩暈を覚えた。
上部にある肉の芽にも刺激は休むことなく与えられ続ける。
「…なのは、感じてくれてるんだね。嬉しいよ…」
いつの間にか大量の露を溢れ出させていた私の恥部から指を抜き、私に見せ付けてくる。
かーっと頬が熱くなるのを感じた。
「私ばっかり…されるの嫌……。それにフェイトちゃんも…」
「…うん、そうだね。じゃあ、二人で気持ちよくなろうか?」
フェイトちゃんはお互いの腿が、それぞれの秘所に当たるように私の腿に乗った。
そして、擦り合わせるように上下に動き出す。
「あっ…んっ…」
お互いがお互いの陰部を刺激するこの行為は至極官能的だった。
私も夢中になって腰を動かし、快楽を得ようとする。

淫靡な音が結合部から響く。
ぬちゅ、ぬちゅ…ずちゅ…ぬちゅ…。
とても小学生の部屋から立つ音とは思えない。
「はぁ……なのは…あっ…はぁ…!」
「んっ…フェイト…ちゃん……あん…ッ!」
いつしか動きは激しいものになり、お互いが必死で相手にしがみつく様になった。
快楽の波は次第に激しくなり、絶頂が近いことを予感させる。
「なのは…好きだよっ…なのは……!」
「フェイトちゃん…私も好き…!」
ふいにフェイトちゃんの体が弓なりに反り、ビクンと大きく震えた。
その悦楽の表情が、私をも絶頂へと押し上げる。
「ん、アッ…!」
一瞬だけ痙攣し、電流の様に伝わる快楽に身を任せる。
波が引いていくと、私は身を横たわらせた。
「はぁ…はぁ……」
どちらとも付かない荒い呼吸が部屋に充満する。
私は上を向いた。
そこには手をついて、こちらを見下ろしているフェイトちゃんの顔があった。
疲れきったその顔から汗が零れ落ちてくる。
私ははにかんで、彼女に口付けをした。

「ずっと一緒に居ようね…なのは」
「うん、フェイトちゃん…」
その日私達はあの日のようにもう一度約束をした。
友達としてではなく、恋人として。


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