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バレンタイン大作戦なの?

−2月13日(日) PM2:55 月村家・すずかの部屋−
「あ〜、また負けた〜!」
「やっぱりなのはちゃんは強いねー」
「…うん。なのは…強い」
今日は日曜日で塾もお休みなので、すずかちゃんのうちにフェイトちゃんと一緒に遊びに来てます。
アリサちゃんが相変わらず「今日は負けないわよなのは!」と言うもので、無理矢理ゲームの相手をさせられているのですが…
「ねぇアリサちゃん、もうやめない?わたし疲れたよー」
「まだよ!今日こそ、今日こそはなのはに勝つまではやめないんだから!」
…と、このような感じで未だに逃げ出せないでいるわけで…
すずかちゃんとフェイトちゃんはと言うと、わたし達の勝負をニコニコ見ているだけ…
…そろそろ、止めて欲しいんだけどなぁ。
と、そんなことを思っていると不意にドアがノックされる音が。
「すずか様、紅茶とケーキをお持ちしました」
ノエルさんの声だ。相変わらず凛としていてかっこいい。
「ありがとうノエル。入って」
「失礼致します」
ドアがゆっくりと開き、紅茶とケーキを乗せたトレーを持ったノエルさんが入ってきた。
「じゃ、ここに置いてくれる?」
「畏まりました」
目の前のテーブルを指すすずかちゃんと、それに応えるノエルさん。
…どうでもいいことだと分かっていながらも、場慣れしてるなぁ、と思ったり。
「それでは失礼致します。なのは様、アリサ様、フェイト様、ごゆっくり」
「それじゃ、ちょっと休憩してお茶にしよう?」
ノエルさんが部屋から出て行き、すずかちゃんがそう切り出す。
「えー」
…アリサちゃん、露骨に不満そう…
「ゲームもなのはちゃんも逃げやしないから、お茶にしようよ」
「…仕方ないわね、分かったわよ」
渋々納得してくれたみたい。すずかちゃん、相変わらずアリサちゃんを納得させるの上手だなぁ…
「そう言えばみんな、明日はどうするつもり?」
紅茶を飲みながら、アリサちゃんが唐突に切り出す。
「明日?」
「ほら、バレンタイン」
「あぁ…私は、特に何も考えてないけど…」
「なのはは?」
「う〜ん…例年通りお父さんとお兄ちゃんにあげるくらいかな…?」
「じゃあフェイトは?」
「…ばれんたいん、って、何…?」
…そう言えば、フェイトちゃんこっち来てから1年経たないもんね…知らなくても当然かな?
「え、フェイト、あんたバレンタイン知らないの?」
「うん…何、それ?」
「まぁ簡単に言えば、好きな子や日頃お世話になってる人にチョコをあげる日なのよ」
「アリサちゃん、それかなり簡単過ぎる気が…」
「でもバレンタイン全く知らない子に事細かに説明してもしょうがないんじゃない?」
「そりゃ、そうだけど…」
「好きな人に…チョコ…?」
あぁ、やっぱりフェイトちゃん困惑してる…
えっと、何て説明したらいいのやら…
「そうよ…そうだ、この雑誌読んで勉強しなさいよ」
おもむろにカバンから1冊の女性誌を取り出すアリサちゃん。
「…アリサちゃん、それいつも持ち歩いてるの…?」
「そんなわけないじゃない、買い忘れてたのをここ来る前に買っただけよ」
…よかった。ここでもし「当然じゃない」とか言われたら、わたしどう対処していいやら…
「え…でも、今日買ったばかりの雑誌…いいの?」
「いいのいいの。こっち来る前に大体読みたいところは読んじゃったしね」
「アリサちゃん、お行儀悪いよ…」
「うっさいわねぇ、あたしは時間を有効活用してるだけよっ!」
すずかちゃんとアリサちゃん、相変わらずだなぁ。
「…ばれんたいん、か…」

−同日 PM5:27 高町家・玄関口−
「ただいま〜」
「ただいま」
「…誰かお客さんかな?」
リビングの方で笑い声。とりあえず、リビングの方に行ってみることに。
「いえね、それであの子ったら」
「まぁ、そうなんですの?」
「お母さん、ただいまー」
「ただいま」
「あらなのは、フェイトちゃん、お帰りなさい」
「お邪魔してるわね、なのはちゃん、フェイトちゃん」
そこには、時空管理局の…と言うよりは、立派に専業主婦してる、リンディさんがいました。
「あ、リンディさん来てたんですねー ってことはクロノくんも?」
「クロノ君ならユーノ君と遊んでるって言ってなのはの部屋行ったわよ」
「わかったー。じゃ、リンディさんごゆっくりー」

−同日 PM5:31 高町家・なのはの部屋−
「遅かったね、なのは、フェイト」
「ただいまー。久しぶりだねクロノくん」
「今日は、何か…?」
「いや、館長…母さんが休暇を取ってね、どうせだからなのはとフェイトに会いに行こうって」
まぁこれじゃ保護観察に来るのと大して変わらないんだけどね、とクロノくんが苦笑する。
「ところで、遅かったね、って何時くらいにこっち来たの?」
「地球時間でざっと…13:00かな」
「そ、そんな時間からいたの?ごめん、今日来るって知ってたなら家にいたのに…」
ちょっとびっくり。せいぜい4〜5時くらいだと思ってたのに。
「いやいいんだ。こっちも突然だったしな」
まぁ、リンディさん、結構唐突に動く人だし…案外休暇取ったのも昨日とかだったりして?
「ところで、そんな時間にこっち来て今まで何してたの?」
「僕はこの街を適当に見学させてもらってたよ。大体見回ってここでユーノと話し合い始めたのが、17:00頃か」
「リンディさんは?」
「ずっとあの調子だ」
「ずっと、って…えぇぇぇぇぇぇ?!も、もう5時間近く経つんじゃない?」
主婦は長話が好きだ、って良く言うけど、まさかここまでとは…ちょっと甘く見ていたような…
「よっぽど気が合うみたいだね、桃子さんとリンディさん」
「うん…かなりのものだよね、5時間は…」
しばらく4人で特に何というわけでもない雑談をしていると
「なのはー、フェイトちゃーん、クロノくーん、ごはんができたわよ、いらっしゃーい」
リビングからお母さんの声。
「はーい…いこ、フェイトちゃん、ユーノくん、クロノくん」
「うん…今日のご飯、何かな…」
「…僕もいいのかい?」
「お母さんが呼んでるんだし、用意してあると思うよ。その辺結構用意周到な人だから、お母さん」
「そうか…じゃあ、お言葉に甘えるとしよう」
にっこり笑顔を見せるクロノくん。こう見ると、私たちとさほど変わらない年格好に見えるんだよね…

−同日 PM6:25 高町家・リビング−
「今日の晩ご飯は寒ブリのお刺身でーす!」
テーブルの上にはたくさんおブリのお刺身。丸一匹捌いてもあんな量はないんじゃないか、ってくらい。
「…かんぶり?」
「寒ブリって言うのはね、冬場に捕れるブリって言う魚の事を言うんだけど、脂がのってておいしいんだよ」
「へぇ…」
「さぁさぁ、みんな座って座って。はい、いただきます」
『いただきます!』
「はい、ユーノくん」
「きゅ」
「あ、悪いフェイト、醤油取ってくれないか?」
「はい、恭也さん」
「サンキュ」
「それにしても、桃子は相変わらず魚捌きもプロ級だな」
「やだあなたったら、恥ずかしい」
「ん?リンディさん、それは?」
「これはマイ砂糖です」
「さ、砂糖醤油ですか…?」
「母は極端に甘いモノが好きなので…」
「…極端とか、そういう問題…?」
何と言いますか、いわゆる「高町家の食卓」は和やかに時を刻み…
「ごちそうさまでしたー」
「いやぁ今日も相変わらず桃子の料理はうまかったなぁ」
「もー、褒めても何も出ませんからね?」
「相変わらずらぶらぶでいいですねぇ、桃子さんと士郎さんは」
「嫌ですわ、お恥ずかしい…おほほほほ」
…仲がいいのはいいことだとは思うんだけど…やりすぎじゃないかな、これは?
「さて、じゃあ今日は俺が片付けしとくよ」
お兄ちゃんが立ち上がりながら珍しいことを言う。
「いいの、お兄ちゃん?」
「ああ。今日はあまり動いてないからせめて食器の片付けくらいは動かないとな」
「よし、なら俺も手伝おう」
「じゃ、頼めるかな父さん」
「任せとけ」
お父さんとお兄ちゃんが食器を持ってキッチンに行こうとしたその時。
「あ、なら僕も手伝います」
クロノくんがそう言って立ち上がる。
「しかし、客人に仕事をさせるわけには…」
「夕食をご馳走していただいたのですから、せめてそのくらいは」
「そうか。じゃあお願いしよう」
「ところで、リンディさん休暇は何日あるんですか?」
「とりあえず、明日までは休みを取ってますわ」
「それじゃ、お泊まりになっては如何です?」
相変わらず唐突な提案だね、お母さん…
「あら、いいんですか?」
「どうぞどうぞ〜」
「じゃ、お言葉に甘えようかしら。いいわよねクロノ?」
「母さんがそう言うなら僕だけどこか別で泊まるって言うのも野暮な話だね」
…と、まぁ唐突なお母さんの申し出もあっさり受けるあたり、流石リンディさん。

「…あ、そうだフェイトちゃん」
なのはが唐突に声をかけてくる。気のせいか、興味津々な眼差しだ。
「なに?」
「アリサちゃんじゃないけど、明日どうする?」
「うん…ちょっと考えてるとこ」
ちょっと残念そうな表情を見せるなのは。どんな答えを期待してたのかな…
「そっかぁ…わたしはこれからみんなの分のチョコ作るけど、フェイトちゃんは?」
「私は…アリサにもらった本で「ばれんたいん」についてもうちょっと勉強しようと思う」
「わかった。じゃ、また明日ね、フェイトちゃん」
「うん、おやすみ、なのは」

−2月14日(月) AM0:17 高町家・フェイトの部屋−
アリサからもらった本を読んでいたらこんな時間になってしまった。
…日本語はまだあまり慣れてないから、ほとんど読めなかったけど。
明日も学校だと言うのに、こんな時間まで起きていては授業に差し障りが出るのではないか?
分かってはいるんだけど、どうも気分が高ぶって眠れる感じじゃない。
…ちょっと、散歩してこようかな…

−同日 AM0:38 海鳴市住宅街−
「…あ…」
ふらりと気の向くままに歩いていくと、コンビニがあった。
「…バレンタイン…」
そう言えば、チョコを用意していない。あげるかどうかは分からないけど、チョコレート、買っておこうかな…
財布は…うん、ある程度のお金はある。買っておこう。

「いらっしゃいませー」
店内は赤系のハートマークがたくさんあった。「バレンタインセール」とのことらしい。
チョコレート、チョコレート…あった。でもすごくたくさんある。
…どれにしよう。そんなことを考え、長い時間思案していると…
「何をお探しでしょうか?」
店員さんがいつのまにか私の近くにやって来ていた。
「バレンタインの、チョコを…」
「バレンタインチョコ?またけったいなモノ送るんだねぇ、フェイトは」
…あれ?何かどこかで聞いたような…
「…アルフ?」
「フェイト、気付くの遅くなったねぇ…そんなに集中して何してんだい」
「うん、あのね…」

「はぁー、要するに本命チョコを送ろうってんだね?」
「うん」
アルフは腕組みをしてちょっと考える。
「誰に送るかなんてのはまぁこの際どうでもいいとして…これなんかどうだい?」
ハート形の、おおきいチョコを取り出した。
「でもこれ、高いんじゃ…」
「バカだねぇ、あたしがフェイトから金取ると思ってんのかい?」
「でも、それじゃお店…」
「あたしの給料から出しとくよ、このバイトもフェイトのために始めたバイトだしね」
「私の…ため?」
「さぁさぁ、そんなことはどうでもいいから、早くそれを持って行った行った!小学3年生がウロウロしてていい時間じゃないよ!」
私の疑問を掻き消すようにまくし立てるアルフ。ちょっと焦ってる感じがするけど、気のせいかな?
「…うん、ありがとう」
「ありがとうございましたー」

−同日 AM6:52 高町家・なのはの部屋−
「ふぁ…あ、おはようユーノくん」
「あぁ、おはようなのは。今日もいい天気だよ」
んーっと伸びをして、ベッドから抜け出す。冬の気温が布団で暖められた肌に突き刺さる。
「うぅ…でも寒いね…」
「そうかな…?」
…ユーノくん、フェレットだもんね…
「なのは?起きてるか?」
ノックの音と共にクロノくんの声。どうやら起こしに来てくれたみたい。
「うん、起きてるよ」
「そうか。桃子さんが朝ご飯の準備がもうできたから降りてこいって」
「うん、わかったー…あ、そうだ。クロノくん、ちょっと入って」
「いいのか?なら入るぞ…」
「うん、あのね…はい、これ。こっちはユーノくんの分」
「…なのは、これは?」
二人とも困り顔。ちょっと得意げに解説してあげようかな。
「今日はバレンタインって言ってね、好きな子やお世話になってる人にチョコをあげる日なんだよ」
(…なのは、もしかして僕のこと?)
(14歳と9歳…いやいや、25歳と20歳って考えれば充分アリじゃないか)
「それはいつもお世話になってる二人への義理チョコ!さ、朝ご飯、朝ご飯っと!」
「…ひどいよなのは…」
「…僕って一体…」

−同日 AM7:50 聖祥大附属小学校通学バス−
「そだ、アリサちゃんすずかちゃん、これ」
去年も一昨年もあげたので最早好例となっている、わたしのチョコ。
普通は女の子が男の子にあげるものだけど、いいよね、このくらい。
「ありがと、なのは」
「なのはちゃん、ありがとう…わ、今年のは結構気合入ってるね」
「うん、ちょっと今年のは自信作なんだ」
「こりゃ、あたしもホワイトデーには気合入れなくちゃいけないわね〜」
「あれ、ところでフェイトちゃんのは?」
「うん、ちょっと材料が足り無くなっちゃって、放課後買って行くつもりなんだ」
「そうなの?フェイト、あんたも不幸だねぇ…恨むならなのはの計画性の無さを恨みなさい」
何か同情心丸出しで更に恨みがましい声で物凄いこと言われちゃってるんですが、わたし…
「ううん。私はなのはを信じてるから」
「…義理チョコ如きで「信じてる」なんて、物凄い間柄ね、あんたたち…」
「あはは、まぁ一緒に暮らしてるから渡そうと思えばいつでも渡せるしね」
「そ、そうだよアリサちゃん!わたしは、短い時間しか会えない人達のチョコを最優先にと考えて…」
「はいはい、分かりました分かりました」
何か釈然としないけど、これもアリサちゃんの行動を考えればいつものことだから、気にしない。

−同日 PM5:32 聖祥大附属小学校・3年教室前廊下−
「なのはー、フェイトー、一緒に帰るわよー」
アリサちゃんが声をかけてくる。でもわたしは…
「アリサちゃん、帰り際にフェイトちゃんの分の材料買うってなのはちゃん言ってたじゃない」
「あ、そうだっけ。忘れてたわ」
すずかちゃん、ナイスフォロー。…別にわたしが言っちゃいけないわけじゃないけど。
「うん、ごめんねアリサちゃんすずかちゃん、また明日!」
「またね、なのは」
「ばいばい、なのはちゃん」

−同日 PM5:40 海鳴市住宅街−
「…あ、フェイトちゃんは先帰っててもいいよ?わたし、ちょっとお買い物に時間かかるだろうし…」
「うん、わかった。じゃあ先に帰って待ってるね、なのは」
…とりあえずフェイトちゃんと別れることに成功、っと。
流石にそんなどっさりチョコ買ってるところ見られるの、ちょっと恥ずかしいしね…
さ、本番はこれからこれから!

…まさか、避けられてるってことはないと思うけど。
でも、買い物に行くときにはいつも私となのはで一緒に行っていたのに、今日に限って…
…ううん、私がなのはを信じないでどうするの?
「そう…だよね。大丈夫、きっと大丈夫…」

−同日 PM6:01 高町家・玄関口−
「ただいま…」
いつもと違って、なのはがいないと何と言うか家に入るのがちょっと躊躇われる。
「お、おかえりフェイト。なのはは一緒じゃないのか?」
「あ、ただいま、恭也さん…なのはは、お買い物…」
「珍しいな、買い物もいつもお前達一緒なのに」
「はい…」
ちょっと考え込むと、恭也さんが神妙な顔つきで口を開いた。
「もしかしてなのは、フェイトに嫌なことでもしたか?もしそうなら、はっきり言ってくれていいんだぞ」
「そんなことはないです…むしろ、私がなのはに嫌なことしたんじゃないかと心配なくらいで…」
「そっか。その様子なら問題は無さそうだな。なのはも昨日キッチンで「フェイトちゃんのチョコ〜♪」とか言ってたからそんなことはないだろう」
恭也さんが笑顔になってそう答える。
「そうですか…安心しました」
「ま、これからも末永くなのはと仲良くしてやってくれ…」
恭也さんはそれだけ言うと、手をひらひらさせながら道場の方へ歩いていった。

−同日 PM8:49 高町家・フェイトの部屋−
私が家に帰って、大体30分くらいしてからなのはが帰ってきた。
なのははやはり私を避けるようにこそこそしていたけど…
とりあえず、1時間ほど前に夕食も済み、今は自室でぼーっとしている。
…いや、ぼーっとしている、と言うのは正しくない。厳密には…
「フェイトちゃん、ちょっといい?」
と考えているとノックの音と共になのはの声がする。
「なのは?いいよ、開いてる」
「お邪魔しま〜す…」
何か、妙にこそこそ入ってくるなのは。背中に隠しているが、大きな包みがここからでも見える。
「えっと、時間、いいかな?」
「うん、いいよ」
なのはのその不自然な態度に、私の気分が高ぶってくるのを感じる。…何だろう、この感じ。
「えっと…今朝はごめんね」
「ううん、別に気にしてないよ」
「それで、これ…フェイトちゃんの分」
その背中の包みを前にずいと突き出してくるなのは。
「うん、ありがとうなのは」
「そ、それじゃおやすみっ!」
私がその包みを受け取ると、なのははまるでフラッシュムーヴでも使ったかのようなスピードで私の部屋から出て行った。
「…おっきい…」
受け取った包みを開けると、私がアルフから受け取ったチョコよりも大きなハート形のチョコの中央に

 「フェイトちゃん、大好き」

とだけ、書いてあった。

−同日 PM9:15 高町家・なのはの部屋−
あー、ついに渡しちゃった…どう思ってるだろう、フェイトちゃん…
軽蔑されるかも知れない、そんなこと分かってる、でも…
渡さずには、いられなかった…
うう、やっぱりわたし変なのかなぁ…いつだろう、フェイトちゃんに友達以上の愛情を覚え始めたのは…
「…あぁー、もしフェイトちゃんが出て行くとか言ったら、どうしよう…ねぇユーノくん」
…返事がない。ただの屍のようだ。
なんて、ユーノくん勝手に殺しちゃダメだよわたし…どこいったのかな?
「…あれ?ユーノくんのベッドに何か紙が…」
『今日はクロノと一緒に寝ます。あまり気にしないでください。 ユーノ』
…なんだ。クロノくんと一緒にいるんだ。なら安心。
…って言うか、正直な話、ユーノくんいなくて良かったかも…
と、安堵のため息を漏らしていると、ドアをノックする音。
「ひゃ、ひゃいっ!ど、どうぞっ!」
思わず声が裏返っちゃった…落ち着け、落ち着いて、わたし…
「なのは…」
フェ、フェフェフェフェフェイトちゃんっ?!
「あの…なのは…」
「うううううううん、どどどどどどどどどうしたのフェフェフェフェイトちゃん」
冷静にならなくても分かるくらい、我ながら上擦っていると思う。
「…うふふ…」
…フェイトちゃん、笑ってる…
……ちょっと、落ち着いたかな…

「うん、私も決心がついた」
「え、何の決心がついたの?」
「なのは!」
突然、名前を呼ばれてちょっとビクッとする。
「これ、私の気持ち。私も、なのはのこと大好き」
…え?
「私も、なのはのこと大好き。友達としてじゃなくて、1人の恋愛感情を持つ人間として、なのは、君が好き」
「…うふ、うふふ、あはははははははは…」
「…え?なのは、私変かな?」
「フェイトちゃん、わたしそこまで言ってないよー」
「え、それじゃあ…」
「ううん。わたしはフェイトちゃんが好き。大好き。友達としてじゃなくて、フェイトちゃんがわたしを好きなのと同じくらいに、大好き!」
「なのは…」
「フェイトちゃん…」
「私達、ずっと一緒だよね?」
「うん、もちろんだよフェイトちゃん!」
わたしの人生史上、もっとも幸福な一日として、死んでも絶対にこの日のことは忘れない。
それは、きっと彼女…フェイトちゃんも、そうだと思う。ううん、そうに違いない。

−2月15日 AM0:17 高町家・空き部屋(クロノ宿泊中)−
「…どう思う?」
「…なのはが幸せなら、それでいいんじゃないかな…」
「…そうだな…」
「…自棄酒でも飲もうか?」
「…僕達、未成年だぞ?」
「…いいじゃないか、今日くらいは…」
「…正直な話、僕も飲みたかったんだけどね…」
「…満場一致、かな…」


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