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[631]446 2005/09/18(日) 22:56:27 ID:Akjnedw1
[632]446 2005/09/18(日) 22:57:00 ID:Akjnedw1
[633]446 2005/09/18(日) 22:57:34 ID:Akjnedw1
[634]446 2005/09/18(日) 22:58:06 ID:Akjnedw1
[635]446 2005/09/18(日) 22:58:38 ID:Akjnedw1
[636]446 2005/09/18(日) 22:59:09 ID:Akjnedw1
[637]446 2005/09/18(日) 22:59:42 ID:Akjnedw1
[638]446 2005/09/18(日) 23:00:19 ID:Akjnedw1

ラブレター(仮題)

下足箱の中に入っていた、真っ白な封筒。
彼女はそれを、さりげなく、ポケットに仕舞いこんだ。






差出人の名前は無く、表書きには「高町なのは様」と、几帳面な文字が並んでいた。




「おはよう」
「おはよう」

ある日の朝。
いつも通り、通学バスに乗り、半ば指定席化している最後部座席に4人で座る。
程無くして学校に到着。
靴を仕舞い、上履きを取り出す。

ふと、なのはの方を見る。
ちょうど下足箱の表扉を空ようとするところだった。

・・・どうしてこの娘は、いちいちその仕草が絵になるのだろう。
アリサやすずかに話してもあまり要領を得ないのだが、自分はそう信じている。

そのなのはが、中のなにかに気付いたようだ。
真っ白な封筒。
ふと可愛い顔を傾げて思案し、それを右手で、上履きは左手で。
こちら側の右手に収まっている封筒の表書きがはっきり読める。
そのまま、封筒は彼女のポケットに消えた。

やっぱり、と思う自分と。

そんな馬鹿な、と考える自分。

「・・・フェイト?どうしたの?固まって」

後ろから、アリサの怪訝な声が聴こえる。
なのはのポケットの中のモノに気付いたのは自分だけらしい。
黙って上履きを引っ掛けた。

授業開始。
時折、黒板へ追加される白チョークを板書しながら、頭は別のことを考えている。

朝の封筒。
封筒であるからには、きっと中には何か入っている。
「高町なのは様」
手書きのあの文字には、一体どんな心が込められているのだろう。
ふと、なのはを見やる。
真面目そうに教科書を立て、その内で、白い紙を開いている。
目を凝らす。
が、この位置では読めない。

と。
こちらを向いたなのはと目が合う。
微笑んだなのはは、紙を折りたたんで机に仕舞った。

「・・・・さん。起きてますか?87ページの3行目からです。フェイトさん?」
「あ!すみません!読みます!」

教科書を指差して教えてくれる隣のクラスメートに感謝しつつ、音読する。
頭の中では白い紙がぐるぐると回っていた。

らぶれたー、なんだろうな・・・

下駄箱になんて仕込んで。
楷書で宛名を入れて。
白い便箋。

・・・何て、書いてあるんだろう・・・

貴女を見ていました。
貴女に憧れていました。
貴女に惹かれました。

貴女が好きです。
貴女が好きです。
貴女が好きです。

御返事お待ちしています。
付き合ってください。
放課後、校舎裏に来てください。

後から後からフレーズが浮かんでくる。
困ったことに、それを書く人の心が理解できる。

なぜなら、それらこそ、自分がなのはに伝えたいと思っていたことそのものだからだ。

「・・・と、いうわけなんだけど」

休み時間、アリサとすずかを廊下に引きずり出す。

「えっと、その、私達に相談されても」
「フェイトちゃんは、なのはちゃんのこと、好きなんでしょう?」
「・・・うん」
「いやいやいや、知ってたから。今更そんな反応されても」

自分としては隠していたつもりなのだが、友達の目は誤魔化せなかったのか。

「ということは、フェイト、なのはとはキスとかマダー?」
「っな、き、ききき、きす・・・!」
「・・・(え、なにこの初々しい反応は?)」
「・・・(私たちが思っていた以上に、進んでいないようね)」
「・・・(「私の、私達の全ては、始まってもいない」?)」
「・・・(何もこんなことにまで・・・)」

「そんなことより、よ」
「その手紙の内容によれば・・・」
「どっかの男に、なのは、獲られちゃうよ」
「・・・そんな」
「いいの?許せるの?というかあんた、なのはから自立できるの?」
「結果がどうであれ、一度、なのはちゃんに伝えてみる方が・・・」

二人の言い分は尤もだ。
毎日のお弁当も含め、なのはの居ない生活は考えられない。
そして、もはや猶予が無いということも分かっている。

「・・・だけど、こわい」

受け入れられるならいいが、拒まれたら。
そもそも、女同士でこのような感情を抱くなど、異常としか言いようが無い。
確かに最近、校内でべたべたしている女子がいる、という噂も聞く。
でも、だからといって、自分達が上手くいくということとは無関係だ。
いや、しかし、だからといって・・・

「・・・(どうすれば?)」
「・・・(さあ・・・)」

結局、何も出来ず放課後を迎えた。
意を決し、なのはに話しかけるが。

「あ、ごめんねフェイトちゃん、今日、一緒には帰れないから、一人で帰ってくれる?」
「・・・あ、うん、わかった・・・さよなら」

もう、なのはの顔がまともに見られず、鞄を掴んで教室を飛び出した。




「・・・・・・はぁ」

これで何度目のため息か。
教室を出たはいいが、とても帰る気にはなれず。
屋上で年甲斐も無く黄昏る。

「・・・はふ」

今頃、なのはは誰と会っているのだろう。
丁重に断るのだろうか。
或いは彼を気持ちに応えるのか。
そのまま2人して、お店を巡るとか。
手を繋ぎ、腕を組み、あちこち歩き回るとか。
並んで座り、肩を抱いて、愛を語り合うとか。
そして、そして、そっと、き、キスなんかしちゃったり。
誰も見たことの無い、頬を染めたなのはの顔を想像してみる。

「・・・・・・っう」

両手で固く握り締めた手すり。
その間に、透明な雫が、後から後から落ちていく。

「なのは、なのはぁ・・・」

誰にも届かない、精一杯の想いをこめて名前を呼ぶ。

「呼んだ?」

「・・・え?」
「呼んだ?フェイトちゃん?」
「どうして・・・?」
「ここにいるって思って来てみたら、私の名前呼んでたから」
「そうじゃなくて、相手の男の子には?」

ああ、と白い封筒を渡される。
震える指で、4つ折の白い便箋を取り出し、開く。

真っ白だった。

「・・・・・・・・・・・・え?」

なんで?と見やると、なのはは俯いている。
肩が震えている。

「あはははははははははは!」

お腹を抱えて笑い出した。

「ごめんね。まさかこんなに上手くいくとは思わなくて」
「・・・え?」
「だから、騙してごめんなさい、フェイトちゃん」
「じゃあ・・・」
「はい、なのはの自作自演でしたー♪」

力が抜け、座り込む。
呆然と、なのはを見上げる。

「・・・なんで?」

ようやく、その言葉を吐き出す。
なのはが視線を逸らせた。

「・・・だって、フェイトちゃん、何も言ってくれないから、ね・・・」

「だから、こんな、酷いこと思いついて」

「これでも駄目だったら、もう、フェイトちゃんのこと、諦めようかなって・・・」

黙って、なのはの言葉に耳を傾ける。
最後のほうは、涙声でよく聞き取れない。
我慢できず、なのはを、しっかりと、抱きしめた。

「なのは、ごめん、ごめん、ごめんね・・・!」
「わ、私のほうこそ、騙したりして、ごめんなさい・・・!」

なんだ。
2人して、臆病者だったんだ。

柔らかな風が、吹き抜ける。

一言も交わさず分かり合った私達は、誰も見ていない屋上で、キスをした。





翌日。
なのはと手を繋いだ私は、これ以上なく上機嫌で学校に入る。

「・・・ねえすずか、あの2人、なんかあったのかな」
「・・・あったんでしょうね」
「分かってるのかな?噂のべたべたしてる女の子達って・・・」
「今日からは、らぶらぶしてる女の子達、になるわけだね」
「・・・いいなぁ」
「羨ましい?」
「・・・すずか、えっと、その・・・この際、付き合っちゃおうか?私達も」
「嬉しい。実は私もそう思ってました・・・と」
「んあっ、ちょ、こんな人前でっ!」
「あら?アリサちゃんはキス嫌い?」
「い、いや、その・・・」

とかなんとか。

「はい、フェイトちゃん、あ〜ん」
「あ、あ〜ん」

「こ、ここで見せ付けるか、こいつらは・・・」
「・・・あ、居たたまれなくなって逃げ出す人達も」
「・・・すずか、あんた明日はお弁当持ってこなくていいわよっ」
「まぁ。手作り愛妻弁当?すずか嬉しい〜」
「ど、努力はするわ」

その後聖祥で、友達関係以上に仲よさそうな女の子達というのが流行ったりとか。


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