それは、冬のある日。
体育のマラソンの授業を終え、更衣室で着替えている時のこと。
「はぁ〜〜、疲れた・・・」
「お疲れ様、なのは。大丈夫?」
「うん、なんとか乗り切れてよかったよ。フェイトちゃんもお疲れ様・・・って全然平気そうだね」
「わ、私は運動好きだし、走るのも嫌いじゃないから」
「うー、好き嫌いとは関係ない気が・・・」
「あはは・・・」
「そういえば、走ってる最中に気がついたんだけど、フェイトちゃん、最近胸大きくなってるよね・・・」
「・・・え!? そ、そうかな?」
「うんうん、見た感じ大きくなってると思うよ」
「・・・う〜ん、た、たしかに最近ちょっと下着がきつくなってきた・・・かも?」
「やっぱり〜。いいなぁ、うらやましいなぁ」
「な、なのはだって、これから大きくなるよ」
「・・・そうかなぁ」
「そ、そうだよ絶対」
「う〜ん、それにしても・・・」
「・・・?」
「・・・えっと、もしよかったらでいいんだけど、ちょっと胸・・・さわってみてもいいかな?」
「・・・さ、さわる!? な、なのはが!?」
「ダ、ダメかな?」
「・・・あ、あの・・その・・・ええと」
(ど、どうしよう・・・こういう場合、断ったら変なのかな・・・)
「あはは・・・ご、ごめんね、フェイトちゃん。変な事言っちゃって・・・」
(で、でもこっちの世界ではわりとポピュラーなスキンシップなのかもしれないし・・・)
「よ、良く考えたら、嫌だよね、さわられるなんて・・・。今言った事、気にしないでね?」
(それに、なのはに嫌われるようなことになったら私・・・)
「・・・こ、この話はこれでおしまい! さ、次の授業も移動教室だから、早く着替えて教室帰ろっか」
「・・・な、なのは!」
「わっ、ど、どうしたの?」
「えと・・・その・・・」
「フェ、フェイトちゃん・・・?」
「い、嫌じゃない・・・から」
「・・・えっ?」
「・・・わ、私のでよかったら・・・さ、さわってもいい・・・よ?」
「・・・フェイトちゃん。大丈夫? 無理してない?」
「む、無理なんてしてないよ。こんな事言えるの、なのはだけだから・・・」
「・・・わたしだけ?」
「うん、なのはが望むことなら私、できるかぎりのことはしたいんだ・・・」
「フェイトちゃん・・・ありがとう、嬉しいよ・・・」
「なのは・・・」
「・・・じゃあ、さわるね?」
「・・・う、うん」
「はいはーい! ストーップ!」
「わっ! ア、アリサちゃん?」
「ア、アリサ?」
「そういう乳繰り合いは家に帰ってからやってよねー。こっちが恥ずかしくて見てらんないわよ」
「乳繰り合いって・・・アリサちゃん親父くさいよ〜」
「つっこむところが違うでしょうが! それにフェイトも女同士なんだから胸くらいすぐさわらせてあげなさいよ」
「う・・・ごめんなさい」
「そう深刻そうに謝られても困るんだけど・・・まあいいわ」
「あはは・・・」
「でも、なのはちゃん、フェイトちゃん。アリサちゃんの言うことは抜きとしても、そろそろ行かないと次の授業遅れちゃうよ」
「あ、ごめんね、すずかちゃん。 急いで着替えるよ〜」
「すずか! 抜きってどういうことよ!」
「ふふ、アリサちゃん、さっきから怒ってばっかり」
「怒ってな〜い!」
(はぁ・・・私、本当はなのはにさわって欲しかったのかな・・・)
「? フェイトちゃん、何か言った?」
「う、ううん! なんでもないよ、行こう、なのは」
そんなマラソンよりも数倍、鼓動が早くなったひとときでした。