数日後。八神家玄関にて。
「ただいま戻りました、わが主」
「ああ、おかえりシグナム。おつかれさまやったなあ」
任務を終えシグナムが主の元へ帰宅すると、はやては笑顔で出迎えてくれた。
優しい笑顔を浮かべるはやてに、シグナムは満たされたような気持ちになる。
帰ってきてよかった。単純だがそう思えるのが幸せだった。
その時までは。
「あ、そうや、シグナム」
「? なんでしょうか?」
優しい笑顔を浮かべたまま、はやてはとんでもないことを言い出した。
「クロノくんを強引に説得して無茶やったんやって? あかんよ、そんなことしたら」
「な、なぜそれを?!」
「ザフィーラが通信で教えてくれたんよ」
ものすごい勢いで振り返るが、ザフィーラは既に犬の姿で横たわっていた。おのれ畜生め。
「まったく、あかん子やなあ、シグナムは……」
「も、申し訳ありません……」
「ん。じゃあ、反省しとるようやし、これで勘弁してあげるわ」
にこにこと笑顔を絶やさない主の手の中に在るのは、色とりどりの鮮やかなリボン。
シグナムの血の気が引いた。
「あ、主。それは……?」
「シグナムに迷惑かけられたクロノくんが罰を受けたんやから、シグナムも同じ罰くらい受けなあかんよなあ」
「い、いえ、しかし、あの……」
「シグナムはどの色が似合うんかなあ、色々試してみなあかんなあ……」
じりじりと笑顔のままにじりよってくる彼女の愛すべき主。
じりじりと怯えを見せてずり下がる守護騎士。
そんな折、ザフィーラからの念話が届いてきた。
(信頼とはいいものだな、シグナム)
……黙れバカ犬。