「おい、ユーノ!急に何処に行くんだよ?」
「ふん…クロノは僕といるより、フェイトと名良くしてるほうが良いんだろ?」
「な、何を言ってるんだ!フェイトは僕の妹」
「血はつながってないんだろ?」
「例え血はつながって無くても、僕はフェイトを妹としか見ていないって…」
「じゃあ証明して見せてよ」
「証明って…こ、こらユーノ…こんなところで、誰か来たら…」
「でも君のデュランダルはこんなになってるじゃないか?」
「ゆ、ユーノ…やめろって…」
「そう言いながら…ふふふ、氷結系のクセにこんなにもブレイズキャノン」
「なんだこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
時空管理局の食堂の片隅で、クロノ・ハラオウン執務間の叫び声が響き渡る。
「このエロフェレット!わざわざ呼び出しておいて何のつもりかと思えば…
お前とは一度決着をつける必要があると思ってはいたが、今日がその日のようだな!」
「く、クロノ落ち着け!デュランダルを起動させるな!」
怒り狂うクロノを必死でなだめるのは無限書庫司書ユーノ・スクライア。彼らの間には、
クロノが激怒する原因となった同人誌があった。
「落ち着いていられるか!何だこの本は!どうしてよりによって僕がお前と!」
同人誌の内容は、この二人が間違った方向に大人の階段を上っていくという物である。
そりゃそんなもん見せられた日には、冷静でいられる事等不可能と言えよう。
「は、ハラオウン執務官!一体何が!?」
「い、いや何でもない!」
たまたま食堂にいた部下の言葉になんとか平常心をとりもどす。
「し、しかし…あ、執務官本が落ちて」
「拾うな!見るな!いいから気にしないでむこうに行っててくれ!」
「は、ハイ!」
あわれ、彼は殺気すらこもったその叫びにビビリながら去っていった。
「で、ユーノ…これは一体何だ?」
「僕が聞きたいぐらいだよ…」
「ハァ?」
「無限書庫の本の中に混ざってたのを、たまたま見つけたんだ」
「混ざってたって…」
まさかこれが古代に書かれたものだと?いや、或いはロストロギアだとでも言うのか?
確かに危険極まりない代物であるが…だからと言ってその…何がなんだか…何なんだ?
「いや、本の整理をしている時に紛れ込んだんだと想うんだけど」
「そ、そうか…」
そうだよな…そんなわけ無いよな…
「で、これは誰の物なんだ?持ち主に色々と聞きたいことが…」
とりあえず持ち主から作者を聞き出さなければ、それから交渉なり脅すなり何なりして
これらの危険物の回収をしなければなるまい。
「それが解らないから君に協力を頼もうと」
「解らないって、職員の名簿ぐらいあるだろ?」
当然それを調べれば、ある程度絞り込む事は可能だろう。
「あるにはあるけど、人の出入りが激しすぎて完璧に把握できてないんだよ」
「なんでそんなにずさんなんだ!」
「しょうがないだろ!整理も全然だってのに、何処かの執務官がやたらと資料をよこせと
せっつくから、見かねた職員の友人が善意で手伝ってくれたりしてるんだ!
勿論手当ては出すつもりだから、名前は控えてもらってるけど…
把握できてない人が何人いることやら」
「それを何とかするのがお前の仕事だろ!」
「こんな事まで司書の仕事に入ってるわけないだろ!」
しばらく睨み合ってから周りの視線に気付く。
「と、とにかく、なんとかこの本を回収しないと…これがなのは達に見られたらと思うと…」
「そうだな、こんなものをフェイト達に見られたら…」
互いにその光景を想像し、顔を青くする。
「…クロノ、協力してもらうぞ」
「仕方が無いな…」
「それで、どうするクロノ?」
食堂での一件の後、流石にあの場所で詳しく対策を立てるわけにもいかないので、場所を
ハラオウン家に移し、対策を練る事にしたのだった。
「手がかりは有る。今気付いたが。この漫画で僕が来ている服はこの世界の物だ。
そしてこの服を着て管理局に行った事は無い…」
ユーノがその言葉の意味に気付く。
「つまり、僕達と親しい人間。それもこっちの世界に来た事が有る人に限られると」
「ああ、それにこの服はこの前の花見では着ていない。となると人数はグッと絞られるな」
何とか捜査の方向性は見えて来た。
「容疑者をリストアップしよう…なのはとフェイトは当然対象外だな」
「そうだな、母さんとエイミィも…いや…まさか…しかし…一応容疑者としておこう…」
「く、クロノ…」
「言うな!」
そう叫ぶクロノの顔には、様々な種類の苦悩が顔に浮かんでいた…
「わ、解った…え〜と、アルフも対象外と考えていいかな?」
「そうだな。あの犬っころに、漫画を描く等という細かい作業が出来るとは思えない」
「後はヴォルケンリッターだけど…」
「シグナムやヴィータも対象外だな。勿論ザフィーラもだ」
「シャマルさんは…怪しいといえば怪しいけど…」
「ああ、だがシャマルははやて一筋のようだし、確率は低いだろう」
「それはそれで大問題のような気がするけど…」
「まあ、それはそうだが…他人の家庭の事情に首を突っ込むのも筋違いだろう」
「う〜ん…まあそれはそれとして。はやては…どうだろう?」
「彼女は、正直言ってわからないな。そんなことは無いとは思うんだが…」
「そうだったとしても、不思議じゃない気も…」
「ああ…」
「…容疑者はこれぐらいかな?」
「いや…一番厄介な奴らが残っている」
「他に誰かいたっけ?」
「リーゼ達だ」
「あ!」
「確率の高さで行けば本命といっていいだろう…」
「それじゃあまずは、本命のリーゼさん達を直接問い詰め」
「馬鹿なことを言うな!もし間違っていたとしたら、それこそ身の破滅だ!」
慌ててユーノの意見を却下するクロノ。
「じゃあ、どうするんだよ…詳しく調べようにもリーゼさん達はイギリスに住んでるし、
どうやって確認すればいいんだ?」
「…そうだ!お前がフェレットの姿に戻って餌として潜入」
「するか!大体僕はアルフ達と違って…いや、まてよ…それだ!」
自分の閃きに思わず立ち上がるユーノ。
「本当にそうやって潜入するつもりか?冗談の解らない奴だな。まあ精々食われないように」
「そうじゃない!それにいちいち一人一人確認しなくてもすむ方法があるんだよ!」
「なるほど、それで俺の所に来たと…」
所変わって八神家、クロノとユーノの目の前には子犬モードとなったザフィーラが、
二人の話を聞いていた。
「ああ、この本に残った臭いに、僕達の知り合いがいるかどうか確認して欲しい、できるか?」
「頼みます!アルフじゃ秘密を守れるかどうか…貴方だけが頼りなんです!」
そう言ってユーノが頭を下げる。
「その必要は無い…」
「そんな!」
ユーノがこの世の終わりとばかりに声をあげる。しかしクロノはザフィーラの言葉に
不可解な所がある事に気付く。
「…必要が無い?」
「ああ」
クロノの言葉に頷くザフィーラ。
「この本を借りるぞ」
二人の返事を待たずに、本を咥え部屋を出るザフィーラ。
「どういう事?」
「…ユーノ、部屋の外から話し声がしないか?」
耳を澄ませば確かに、今出て行ったザフィーラともう一人の話し声が聞こえる。
「シャマル…」
「な〜に?ザフィー…そそそ、それは一体!?」
「シャマル、正直に話してくれ…」
「わ、わかったわ。だから落ち着いて…」
「もうこういう物は書かないと誓ったな?」
「も、勿論よ!わ、私が約束を破ったって言うの!酷いわザフィーラ!」
「そうは言っていない。これは管理局に落ちていたそうだ…」
「そ、それは…わ、私も出来るだけ回収したけど、どうしても限界が…」
「そうか…」
「た、確かに全部回収できなかったのは悪かったわ。あ、謝るから」
「いや、それなら良い…それはそうと一つ質問がある」
「な、何かしら?」
「俺が見た書きかけの本にはPart.5と記してあった、しかしこれにはPart.7と記してある。
どういう事なのだろうな?」
「え、え〜と…」
「シャマル…」
「ほら、あれじゃない?ブラックメンの陰謀ちょっ、待ってザフィーラ!短気は損気!
話せばわクァwセdrftgyふじこlp;@:!!!」
「解決した」
そういって、クロノ達がいる部屋に戻ってきたザフィーラは、出て行ったときの子犬フォーム
ではなく、狼形態になっていた。
あと口の周りに血がついていたり。
「あ、ありがとう、ザフィーラ…」
少しビビリながら、クロノが何とか礼を言う。
「た、助かりました…」
ユーノも似たり寄ったりである。
「いや、侘びをいれねばならんのはこちらの方だ。迷惑をかけた…」
そう言って頭を下げるザフィーラ。
「苦労…してるんですね」
「同乗するよ…ザフィーラ…」
「お前達もな」
「「いや、まあそうなんだけどね」」