『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
シャマルの言葉に悲鳴を上げるリーゼ姉妹。
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
悲鳴を上げる二人。
「…なぁ」
ヴィータは頭に浮かんだ疑問を口にした。
「なんか、嬉しそうじゃねえか?」
『気のせいよ!!!』
「シャマル…お前な」
シグナムが軽く頭を抱えながら呻く。
「大丈夫。心配しなくてもわかってるわよリーダー…」
「本当か?」
その言葉に一縷の望みをこめ、シグナムはシャマルに聞き返した。
「ええ。さすがにヴィータちゃんは…悪いけど、今日のところは」
「いや、そうじゃなくて…」
「えええ!?なんでだよ!」
シャマルの言葉に不満の声をあげるヴィータ。
「だって、ヴィータちゃんにはまだ早いわよ」
「子ども扱いすんなよ!」
「じゃあ、赤ちゃんってどうやったら出来るか知ってる?」
基本である。
「うぇ?えーと…は、裸になって…抱き合ったり…その、き、キスしたり…」
顔を赤くし、先程までとはうって変わった小さな声で答えるヴィータに、シャマルが
さらに問いかける。
「他には?」
「ええ!?他になんかすんのか!?」
ヴィータ的にはその程度で、なんというか、かなりのレベルの話なのである。それ以上の事と
なると、もはや未知の領域どころか、MMRの出動を要請せねばならないほどミステリーゾーン!
「はいはい、ヴィータちゃんはオネムの時間ですよ〜」
無論、シャマル的にはお話にもならないレベルである。
「お、おい、シグナム!ほ、他っていったい何なんだ!?」
「………」
思わずシグナムに助けを求めるが、答えはない。
「し、シグナム?」
「ほらほら、シグナムも困ってるでしょ?」
抵抗するヴィータを部屋から出そうとした時、背後からシグナムの搾り出すような声がした。
「ち…違うのか!?」
「というわけで、お子様二人には退場してもらいました!
さあ、いよいよ本日のメインイベントの始まりよ!」
『おおおお!!!』
一人盛り上がるシャマルと、やはり嬉しそうに歓声を上げるリーゼ姉妹。
「さあ、ザフィーラ!今こそ獣の本能を解放して、このメス猫達をめくるめく官能の世界に!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」』
ますます盛り上がる3人。
「蒼き狼らしく存分にオルドって!諸葛亮曰く、他にする事はないのですか!ってな感じで」
くるくる回ってからポーズをとって、ザフィーラを指差すくシャマル。しかし、
「……ザフィーラ?」
「…あったか」
物置で目的の物を見つけたザフィーラは、そのまま庭に出、木の強度を確認する。
「十分か…」
「ザフィーラぁぁぁぁぁ!!」
そこに、シャマルが飛び出してきた。
「もう、何やってるのよ!」
「準備だ…シャマル、時間を考えろ。大声は近所迷惑だ」
「あ、ごめんなさい…って、準備?それにそのロープは…ははーん
もう、意外とマニアックなんだから!」
一人納得するシャマルに、とりあえず今この場で終らそうか、そんな考えが頭に浮かぶが
二人の拘束の解き方を知らない事を思い出す。
「おまたせ!今度こそ本当の本当に本番よ!」
『イェェェェェェェェェェェェェ!!!』
ザフィーラを引き連れたシャマルの言葉に、先程と同じようにを歓声を上げる二人。
「シャマル、拘束をといてやれ」
ザフィーラが淡々と告げる。
「そうね、せっかく貴方がやる気満々でロープなんてもってきたんだから…
で、どっちの方から相手をするの?」
「縛るなんて…やっぱり本質はワイルド(?)なのね…」
「いよっ!このエロ狼!」
二人の言葉を黙殺し、答える。
「二人ともだ」
「えええ!!2人一緒だなんて…わ、わかったわ。ザフィーラも色々たまってるのね…」
二人の拘束を解くシャマル。
「さ、好きなだけ、思うがままに蹂躙しちゃって…ってザフィーラ、何を!?」
おもむろに手に持ったロープで、シャマルを縛る。
「どどど、どういう事ザフィーラ?ま、まさか!駄目よザフィーラ、こんなのって!
あ、貴方の気持ちに気付かなかったのは悪かったけど、だからって…こんなのは…嫌…」
目を潤ませ、必死に訴えるシャマルに、やはり淡々と告げる。
「…お前の考えは間違っている」
「そんな!それじゃあ身体だけが目的なの!そんなのはもっと嫌よ!」
「…いつもやっている事だ」
その言葉にシャマルは凍りついた。
「お、お仕置き?」
無言で頷く。
「それはそれで嫌なんだけど…」
その言葉は華麗にスルーし、シャマルを外に連れ出そうとするザフィーラだったが、
「ちょっと、私達は!」
リーゼ姉妹が引き止めようとした。
「…すまなかった、やり過ぎないように気をつけるつもりだったが」
今までの発言は酔いが残っているせいと判断し、とりあえず謝ったのだが。
「そうじゃなくて。私達みたいなイケてる女の子を好きに出来る機会なんてそうないぞ!」
「そうそう、せっかくのチャンスなんだから…」
二人はザフィーラの予想通りというか、予想以上に腐っていた。
「な〜にがイケてる女の子よ!貴方達が貧相だから私がお仕置きを受けるんじゃない!
ザフィーラに噛まれると凄く痛いのよ!血もいっぱい出るし!」
「貧相とはなんだ貧相とは!」
「あ〜ら…貧相なのは彼の方じゃないの?」
「…どーいう意味よ?」
「彼、実はモノが貧相で、それがバレるのが嫌なんじゃない?」
「な〜る、そういう事…」
「ふっふっふっ」
「な、何だよその笑いは…」
「………これぐらい」
「なんだ…そのぐらいなら別に」
「…通常状態でよ」
『マジで!?』
「ちょ、アンタ考え直して!」
「そ、そうよ。添え膳食わねばなんとやらって言うじゃない!」
「…………」
老人の朝は早いと言われる。
それはどうやら異なる世界をまたにかける、軸管理局で働いていたギル・グレアムにも
当てはまるようだ。
リビングに入ったグレアムは、その身に朝日を浴びる為にカーテンを開けた。
良い天気だ。
昇り始めた太陽、そして庭の木の緑が目に心地いい。
その木に自分の使い魔と、この家の主たる少女の家族が吊るされていた。
静かだ、聞こえるのは雀の鳴き声ぐらいのものである。
さわやかな朝といえよう。
一度カーテンを閉める。
「………」
心の中で10数え、再びカーテンを開く。
先程と同じ光景、吊るされた3人の女性が嫌でも目に入ってくる。
「グレアム殿…」
いつの間にか青き狼がリビングに入ってきていた。
「話せば長くな」
「すまなかったザフィーラ君!うちの娘たちが何を…いや、言わなくても良い!
君たちには本当に迷惑をかけてしまった。本当にすまない!」
「………」
ものすごい勢いで頭を下げ、必死で謝るギル・グレアム。
「苦労…なされているのですね…」
青き狼のその声に、グレアムは全てを悟った。
「…君も…か」
それ以上の言葉は要らない。