名無しさん@ピンキー<><>2006/01/24(火) 12:26:44 ID:05IGr4Rl<> 魔法少女、続いてます。


魔法少女リリカルなのは
魔法少女リリカルなのはA's

のエロパロスレです。
エロは無くても大丈夫。でも、特殊な嗜好の作品は投稿前に確認をお願いします。

前スレです。
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第四話☆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1135567023/l50

保管庫です。
☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html <>☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第五話☆ 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 12:30:03 ID:wFGeWlCN<> >>1
スレ立て乙です。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 12:33:55 ID:3g/1ZmKu<>            ̄ ̄ ̄ ̄-----________ \ | / -- ̄
---------------------------------  。  >>1   ェ
     _______ -- _ ,'⌒ヽ- ̄ ̄ ̄ ̄ ̄             エ
        ∠__ヽ彡       / / |  \     /__
  ///    又 ハ 又)      /   /   | .    \  /  /
 〔 〕    〈y从从从y〉    /   / .  |     __ /
<◯二===〈y〉([水]).〈y〉        /    |     ヽ/  
 〔 〕    ¥/《/ヘ》ヽ¥        /      | ノ  /\
         `~ヽし'~        / __ 、、_|_
                      /    /  ./
     スレ立て乙です。         / .  /
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 12:39:59 ID:ts2F6gg8<> >>1
乙かレイジングハート <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 14:13:02 ID:ntR3DEse<> >>1 即死防止乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 18:57:46 ID:mCSWStsR<> >>1
乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 19:21:18 ID:nQVNdYNZ<> >>1乙です!

>>3
あーあ、>>1がヴィータにやられてお星様に・・・
シャマルに癒して貰って下さい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/24(火) 21:45:56 ID:J6YQpc5G<> >>1乙であります! <> 549 ◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/01/24(火) 23:09:05 ID:W2CDTCGf<> >>1 乙です。
ちょうど圧縮もおきたようです。
SSデビューしたスレが落ちてたし。

今月中にはもう一回UPしたいなぁ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 00:22:35 ID:mtC7WlCy<> >>1 乙。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 08:11:50 ID:ahRAcV/Y<> >>1
乙〜 <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/01/25(水) 08:28:02 ID:nnCgTDgX<> >>1 乙即死防止age <> 640<>sage<>2006/01/25(水) 16:54:02 ID:7ZhzH4bP<> >>1
新スレ乙 <> 280<>sage<>2006/01/25(水) 17:00:58 ID:AUnRXy/s<> >>1氏に全力全開の乙。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 19:26:40 ID:+qEEzFPN<> >>1
Zです! <> 640<>sage<>2006/01/25(水) 21:14:10 ID:7ZhzH4bP<> デパート店内の喫茶店で、少年と少女が向かい合って座っていた。
彼らの前には、それぞれ注文した冷たい飲み物が。更に少女の前にはそれに加えて可愛らしい小さなケーキが置かれていたけれど。
注文が揃ってからしばらく経つというのに、どちらもそれに手をつけてはいなかった。
きっと飲み物は若干氷が溶けて、薄まっているだろう。下のほうに水の層ができてしまっている。
ユーノも、フェイトも。二人ともただ頬を紅くして、恥ずかしそうに俯いたまま気まずそうに時折相手の様子をちらちらと見るだけだ。

そして、フェイトの隣の椅子には。
デパートの袋の中で青い包装紙に包まれた小さな包みが、二人を見守っているかのようにちょこんと座していた。





魔法少女リリカルなのはA’s after 〜買い物に行こう。〜

第四回 発見、そしていざ戦場へ





『ひょっとして────・・・フェイトの彼氏?』

フェイトの同級生の一言が二人に与えた影響は、軽い気持ちで言ったであろう本人の予想を遥かに超えて大きなもので。
少年と別れたあと、気まずさを抱えたままなんとか店を回って目的にかなったものを見つけたものの。
二人はもう碌に目を合わせることもできなかった。

(・・・喫茶店に入ったの、失敗だったかな・・・)

商品を購入後、このままでは間が持たないと判断したからこそ、ユーノは一旦頭を冷やすべくフェイトに休憩を提案したのだが。

結果はむしろ、逆効果。
全然、落ち着けないし頭も火照りっぱなしだ。会話もない。
結局今日の朝、振り出しに戻ってしまった感すらある。
あんなよくも知らないような奴の言った言葉にこれほど動揺する自分が、なんだか情けなかった。
(あいつめ・・・)
名前すらもはや覚えていない少年を、密かにユーノは恨んだ。

「ユーノ」
「・・・・」

「・・・ユーノ?」
「・・・はっ!?はい!?」

あまりに沈黙に慣れてしまっていたせいか、フェイトの話しかける声を一瞬、聞き逃していた。
気付いたユーノは慌てて彼女のほうへと目線を向ける。・・・・なるべく、視線が一致しないように。

間抜けなユーノの様子に気付くこともなく──正確には気付く余裕がないのだが──、フェイトは視線を落としたり、上目遣いに
彼のほうを見たりしてしばらく迷った挙句に、やはり朝と同じことを言った。

「・・・ごめん、ユーノ。やっぱり嫌だった、よね」
「って、え!?な、なな、なんで!?」

違ったのは、朝は語尾が疑問形であったのが、今度はそうに違いないとでも言いたげに、確認をとる形になっていること。
そして朝とは意味は同じでもとっさに出た言葉の違うユーノの返事であった。

「・・・だって。ユーノはなのはのこと、好きなのに」
「そ、それは・・・」
───それは確かにフェイトの言うとおりなんだけど。なんでわかったんだろうと冷や汗をかきつつ疑問に思うのは、本人だけである。  <> 640<>sage<>2006/01/25(水) 21:15:36 ID:7ZhzH4bP<> 「なのに、その、私なんかと・・・その、あの、あの、か、か、・・・だなんて言われて、きっと嫌な思いしたと思うから」
肝心な部分、というか単語は聞き取れないくらい小さい音量だった。
だって彼氏なんて言葉、恥ずかしくてとても口に出して言えるわけがないもの。
ただでさえ上気していた顔を更に真っ赤にして、
消え入りそうなくらいに縮こまるフェイトは、おそらく頭から見えない湯気を吹いていただろう。
恥ずかしさと、ユーノに対する申し訳なさとで。

「フェイト・・・」
「だから・・・ごめんなさい・・・」

三度謝るフェイトのその謝罪の言葉を聞いて、ユーノは自身の抱えていた混乱と気恥ずかしさも忘れ。
先ほどまではじっと見返すこともできなかった彼女の俯く頭を、影になって見えないその表情をつい、見つめていた。
そんなことない、とか。謝らないで、とか。何か気の利いたことを言うべきなのに、何も言えぬまま。


───────と。

「へ?」
「え?」

キィン、と独特の発動音を伴って。

「け、結界・・・?」
「っ・・・!?」

辺りの雰囲気ががらりと変り、人っ子一人いなくなった。

「しかもこの魔力・・・・」
「お兄ちゃん・・・・?」

おまけに二人が無茶苦茶よく知る人物の魔力だ、これは。
結界の発生に警戒し一瞬戦闘時の厳しい表情をとりかけたフェイトも、すぐその顔に困惑を浮かべ首を傾げる。

「・・・・なんで?」
「さ、さあ・・・?」

「おい、そこの淫獣」
とりあえずその答えは、たった今目の前に転移用魔法陣から現れた黒髪の馬鹿兄から聞いたほうがよさそうだ。
まだ二人は今のクロノが完全に暴走しているということは知らないのだが、そこはそれ。

「・・クロノ!?一体どうして・・・・」
「問答無用!!うちのフェイトに手を出した報い、受けろフェレットもどきっ!!」
「お、お兄ちゃん!?」
「だからフェレットはやめ・・・ほ、本気かっ!?」
そう。残念ながら、本気である。彼の失礼な言葉に激昂する間もなく、
事態も飲み込めないままのユーノに対しクロノは手にしたデュランダルを掲げ飛び掛っていく。

「永久に氷の中で眠ってしまえーっ!!!」
「はあっ!?」
「ちょ、お兄ちゃ・・・クロノ!?」
<> 640<>sage<>2006/01/25(水) 21:16:36 ID:7ZhzH4bP<>




『──ってわけでごめん、よろしくっ!!』
「はい・・・・わかりました」

慌てて連絡を入れてきたエイミィから説明を受け一同は、その通信が切れた後深く溜め息をつく。
なんだか、なあ。彼女達がジト目で見る先では、ユーノがクロノからの攻撃をシールドで防いでいるところだった。
うわぁ。あの兄馬鹿シスコン男、本気でやってるよ。あそこまでやるか普通。

「あのシスコン・・・」
「・・・あんなのが上司とは、この宮仕えの身が情けない・・・」
「と、とりあえず二人を止めんことには」
「うん、もしフェイトちゃんがユーノ君をかばったりしたら、余計クロノ君勘違いして暴走しちゃうよね・・・」

そうなる前になんとかしなければ、自分達が身体を張って。・・・・・・・非常に不本意ながら。

「なのはちゃん達、頑張って」
「「「はぁ・・・・」」」

『let's go,master,Let's stop that foolish boy!!』
「・・・・・・だからなんでそうやる気まんまんなの、レイジングハート」
『For the friend of my master!!』
嘘だ。絶対嘘だ。この杖絶対、自分が楽しむためにやろうとしてる。
「・・・セットアップ」
釈然としないままだが、とりあえず起動するなのは。
今のレイジングハートだったら勝手に起動してクロノにつっこんでいきかねない。
エクセリオンモードでA.C.Sを展開してそれはもうおもいっきり。
ここは素直にデバイスモードにしておいたほうがいい、きっと。

「頼むからおとなしくしてね、レイジングハート」
『It is necessary to exclude the trouble immediately』(早急に障害は排除すべきです)
「・・・・・努力はするよ」
・・・・・本当に、大丈夫なんだろうか。果てしなく不安になる一同。

「仕方あるまい・・・・。レヴァンティン、いくぞ」
『Verstandnis』(了解)
「うちも一応原因の一人やからなー・・・ちゃんと最後まで面倒みたらんと」

換装を終えもう一度深々と溜め息をつく三人。本当にご苦労さまです。


「えと、私がアクセルシューターで牽制するから・・・・」
「つっこむのは私だな。背後からレヴァンティンで脅して止まればよいのだが・・・。まあ、なんとかするとしよう」
「で、そこをうちがミストルティンで固める、と。こんなとこか」
そしてすぐに回収、離脱。
しばらくクロノが石になる(比喩表現ではなく)が、止むを得まい。魔力の槍で貫くけれど、気にしない。どうせシャマルに治してもらえばいいし。
多少物騒でもこの方法が一番てっとりばやいのだから、さっさと済ませてしまおう。
<> 640<>sage<>2006/01/25(水) 21:17:42 ID:7ZhzH4bP<> 『なんなんだよ、もう!!!』
『だまれ!!このエロイタチ!!その罪、万死に値するっ!!!天誅と思え!!』
『わけわかんないって!!それに誰がエロイタチだ!!誰が!!』
『ふ、二人とも落ち着いて・・・・』

ガシャーン。あ、ブランド腕時計のショーケースがおもいっきり割れた。一個ン十万するようなやつが。
向こうのほうでは相変わらず暴走したクロノによって、売り場が戦場と化している。
あとでアースラから修復部隊も呼ばなくては。出動予算はおそらく彼の給料から引かれるのだろうけど。
一応、被害が拡大する前に自分達も急いだほうがよさそうだ。

(・・・・クロノ君、あとでスターライトブレイカーの刑)
(・・・・斬る)
(・・・・石に固めたまま叩き割ったろか)

「とりあえず二人とも、結界抜いてしまわんよう気いつけような」
「はっ」
「そうだね」
「「いってらっしゃいー」」

手を振る非戦闘員二人を背に、三人は友の待つ戦場へと(しぶしぶ)向かう。
・・・・・・・・それぞれの考えた黒い思いを胸に秘めて。

多分そこは彼女達が今まで駆け抜けてきた中で、最も下らない戦場であった。 <> 640<>sage<>2006/01/25(水) 21:25:11 ID:7ZhzH4bP<> なのはも少し黒くなりました。
レイジングハートが壊れました。
クロノがシスコンなのは仕様で(ry
どうも、640です。5スレ目突入おめ。
そして前スレ見返してGJ>>他の職人all <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 22:04:13 ID:9Seql/SX<> >>640

GJです
なのはとレイジングハートのやりとりで某サイト4コマを思い出す人がいる・・・はず <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 22:13:10 ID:AEsZYeok<> >>640
GJ

>>21
>>某サイト4コマ

kuwasiku!!
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 22:18:12 ID:cCDpqj7v<> 640氏 GJ!!
可愛い妹に手出す奴にはまだまだ物足りないくらいですよw <> YUKI <>sage<>2006/01/25(水) 23:03:00 ID:ptJ1cdvP<> >>640氏GJ!!
さすが!クロノの暴走っぷりが想像できますね。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/25(水) 23:42:55 ID:Qt4tCVkc<> 640氏、グーですよ。
それにしてもクロノめ、すっかり妹萌えになりやがって・・・ <> 549
◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/01/25(水) 23:54:09 ID:JGHikla5<> >640氏 シスコンは正義w <> jewel<>sage<>2006/01/25(水) 23:58:42 ID:TsqCy22w<> >>1
遅ればせながらスレ立ておつです!
>>640
GJです!! クロノ君が最高にいいキャラしてます!w <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 00:23:58 ID:mgbMHSIU<> ここで空気を読まずに日本では義兄妹は結婚できると言ってみる <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 00:34:16 ID:IyBy4e+N<> 言ってみるも何も義妹って普通に攻略キャラだろ? と思う俺はエロゲ脳 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:30:25 ID:PBYG9aTk<> >>28
あまい、クロノの倫理規定はミッドチルダ企画
つまりもっとくぁrftgyふじこ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:31:38 ID:RObqSdKf<> Asエピローグ6年後の話で、クロノがメインです。

20歳のお花見



「クロノ、今度の日曜確かお休みだよね」

 夕食の席でそう訊ねてくるのは義妹のフェイトだ。

「まぁ予定ではそうだが…それがどうかしたのか?」
「それじゃあさ、お花見に行こうよ。みんな誘ってさ」

 笑顔で言うフェイト。隣に座る彼女の使い魔アルフと母親のリンディはすでに話を聞い
ているのかフェイトと同じようににこやかな笑みを浮かべている。
 二人の様子から見てなのは達にも話は通っているのだろう。

「…お花見」

 しかしクロノの顔は曇っている。料理を取る手を止め、しばし考え込んだあと

「僕は、いい」

 そう告げ再び料理に箸をのばす。

「どうして? せっかくの休みなんだから行こうよ。今日局に行く前に桜を見に行ったけ
ど満開で、綺麗だったよ」
「その様子じゃなのはやはやて達、エイミィも来るんだろう? 僕まで参加したらアース
ラはどうなる?」
「それなら心配ないわ。土曜からアースラは整備メンテナンスがあるからしばらく本局に
駐留するし」

 そう言ったのは砂糖入りのお茶をすすっているリンディだ。

「それは知っているよ。でもメンテナンスを行うんだから現場に僕がいないと細かい調整
や、重要な箇所の細かい指示が出せないじゃないか」
「それなら簡単な部位だけ先に割り出して、そこだけメンテするようスタッフに指示して
おけば? あとの重要な箇所は翌日にでもフェイトやなのはと一緒に指示すればいいんだ
し。どうせ一日でメンテ終わらないじゃん」

 骨付き肉の骨をかみ砕いたアルフが言う。

「どうしたのクロノ。やけに消極的じゃない」
「そんなことは…」
「じゃあ決まりね♪」
「ちょ…母さん、勝手に決めないでくれ! 僕にも色々と用事が…」
「用事って、何の?」
「そ、それは…まぁ、色々だ」

 戦闘訓練とか、資料集めといったら即座に花見に行くことが決まってしまうためか、口
ごもってしまうクロノ。
 何か上手い言い訳はないか考えていると

「彼女とデートとかですか? クロノ提督」
 
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:37:15 ID:RObqSdKf<>  面白そうに言うアルフ。クロノは席を立ち、叫ぶように言う。

「そんな相手はいない!!」

 その言葉になぜかフェイトは胸をなで下ろし、リンディは肩を落とし、

「そんなはっきり言わなくても…」

 と呟く。
 話が逸れつつあると感じるクロノ。しかし軌道修正していいものかと悩む。
 クロノとしてはお花見をすることは嫌ではない。むしろクロノは桜が好きだ。なのはの
世界で花見を知り、初めて花見をしたときに目にした桜の美しさは、今もなおクロノの心
にくっきり残っている。
 しかしクロノは今年はそんな風にのんびりと花を見る余裕があるのか、と思う。

「クロノ、どうしても駄目なの…?」

 悲しげな表情で言うフェイト。うっと詰まるクロノ。その表情は反則だぞ、と心の内で
呟く。

「フェイト…クロノ、あんた兄として妹を悲しませていいのかい」

 フェイトを慰めるアルフが殺気じみた表情でこちらを向く。一方のリンディも悲しげな
表情で「ああ…あなた、クロノが家族の輪を壊そうとしているわ。どうしたらいいの…」
とのたまっている。
 クロノは大きく息を吐くと、疲れた声で言った。

「わかったよ…なにもなければ参加する」

 その言葉にそれぞれ異なった表情の三者が一斉に明るくなる。

「ありがとう、クロノ!」
「そうこなくっちゃ!」
「それでこそ、私の息子だわ!」

 喜ぶ三人を見て、クロノは再びため息をつくのだった。



 結局日曜日まで特に大きな事件もなく、アースラは本局に到着後、メンテナンススタッ
フにさして重要でない部位のメンテを指示。クロノには予定通りの休みが与えられた。
 そして日曜日、クロノ達ハラオウン一家と高町(ユーノ含む)、八神、バニング、月村
一家の面々は近くの地主が花見時期だけ開放している場所へ向かった。
 到着し、クロノの視界に入ったのは無数の桜の木と、そこから舞い散る花びらの雨だ。
幻想的なその光景にしばしクロノは見入り、ヴィータにけっ飛ばされてしまった。
 シートを引き、料理を並べ、お花見が始まった。始まって十数分の間は皆は各家々の料
理に舌鼓をうち、又はクロノ同様桜の咲き散る様に見入っていた。
 自分の心配は杞憂に終わりそうだな…とクロノが思い始めたとき、杞憂が現実となった。
 気がつけば目の前に座っているエイミィが真っ赤に顔を染めて酒を飲んでいる。その隣
に座る美由希も同様だ。
 二人はけらけら笑い、互いに酌をして酒を飲み続けている。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:41:19 ID:RObqSdKf<> 「ふ、二人とも、ペースが速いぞ。少しゆるめた方が」

 クロノの言葉に反応した二人はすわった目つきで

「なぁによぉ〜クロノくんの、くせに〜。あたしの、邪魔をしよおっていうの〜」
「そんな〜悪い子には、お酌を〜してあげます〜」

 同時にクロノのコップに酒を注ぐ。慌てて飲むが、注ぐ勢いの方が勝っておりたちまち
コップから酒が溢れる。

「二人とも、やめろ! 酒が零れる…ぐ」

 一気に酒を飲んだせいか、うっとなるクロノ。クロノは酒を頻繁には飲まない。つまり
酒に強くない。

「ホラホラクロノく〜ん、早く飲まないと零れちゃうぞ、もったいないぞ〜」
「エ、エイミィ…! 桃子さん、エイミィと美由希さんを…」

 と横を向くと桃子は桃子で頬を真っ赤に染めて隣に座る士郎といちゃついている。リン
ディはクロノの惨状を見てニコニコと笑っている(当然酒を口にしている)から戦力外だ。
へたをすると二人のように自分にちょっかいを出しかねない。
 他の大人達、恭也、忍は高町夫妻と同じで、ファリンはすでに顔を真っ赤してすやすや
と眠っており、ノエルは近くに住んでいるのか、野良猫たちに料理を盛っている。
 大人組は頼りにならないと判断したクロノは仕方なしになのはとフェイトを呼ぶ。

「クロノくん? …うわっ! お姉ちゃん!?」
「エ、エイミィ…」

 平穏なお花見の時間を過ごしていた二人は目の前の惨状に唖然となる。

「は、早くエイミィと美由希さんを!」

 クロノの声にはっとなった二人は慌ててエイミィ達の間に割って入り、クロノを救助し
た。
 そのまま二人はクロノを連れて子供側のレジャーシートにクロノを連れていく。
 こっちのシートでは実に楽しそうだ。ヴィータ、シグナム、シャマルはすずかと楽しそ
うに話すはやてを中心に笑ってたり、喋ったりしており、アルフ、ザフィーラの獣コンビ
は互いに肉を黙々と食べている。
 ユーノはアリサに料理を差し出され、なぜか苦しげで、困惑顔だ。まぁどうでもいいと
思い、シートに腰を下ろす。

「ありがとう二人とも…助かったよ」

 心底安堵し、ほっと息をつくクロノ。

「こうなるから来たくなかったんだ…」
「こうなるって…クロノ、わかってたの?」
「まぁね…。君たちは眠ってて覚えてないだろうけど、昨年の僕の誕生日と正月も似たよう
な状況だった…。
 母さんやエイミィが無理矢理酒を注いだり…酔った恭也さんや士郎さんがなぜか勝負を
挑んできたり…」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:46:17 ID:RObqSdKf<> 「…あ、あはははは」

 乾いた声で笑うなのは。

「ご苦労様やな、クロノくん」

 目の前に色とりどりの料理が盛られた皿が出される。差し出したのははやてだ。
 クロノは礼を言って皿を受け取り、料理を口にする。

「美味いな…」

 思わずぽろりと口から出る。途端にはやてが嬉しそうな顔になる。

「ありがとなー。まだまだあるでー」
「あたしの作ったのも食べてみてよ」
「わたしのもあるよー」

 すずか、アリサが同じように料理を盛った皿を持ってくる。なぜかアリサは迫るような
姿勢だ。

「どう? おいしい?」
「…ああ。しっかり火が通っているし、食感もいい。少し味が濃いとは思うが、まぁそれ
は個人の好みの問題だろう」
「はやてと比べてイマイチな返事ねー。…まぁユーノよりはましか」
「ユーノ?」
「どうかって聞いてもおいしいの一点張りなんだもの。もうちょっとクロノみたいに品評
できないのかしらね」
「本当に美味しかったから、そう言ったんじゃないかな…」

 やれやれといった表情のアリサに、すずかが苦笑気味に突っ込む。
 ユーノを見やると、苦しげに呻いているユーノの姿がある。どうやら味のことを聞くた
めに結構な量の料理を食べさせられたようだ。
 ユーノにほんの少しだけ哀れみの視線を投げると、クロノも食事を再開する。少女達の
料理を食べながら、クロノは目の前に立つ桜の木を眺める。そよそよと緩やかな風に煽ら
れて、桜の花びらが舞い落ちる。
 春の風情を静かに楽しんでいると、横から声をかけられる。

「クロノくん、桜好きなの?」

 横を見ると笑顔のなのはがいる。片手にはお茶があり、クロノに差し出す。

「…そうだな、好き…なんだろうな」

 お茶に軽く口をつけ、ほぅと息を吐き出す。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:47:33 ID:RObqSdKf<> 「どうしてここまで気になるのか…自分でもよくわからないんだが。…でも嫌いじゃない。
桜は綺麗だけど、儚げな感じもする。…でも弱々しいって言う感じじゃなくて…」

 ただ桜には―あの色には、なぜか惹かれる。癒される。励まされる。

「なんて言ったらいいんだろう…ご免、自分で言ってなんだけどよくわからないな」
「ううん。私も好きだもん、桜。綺麗だし」

 にこっと笑うなのは。明るく、柔らかい笑顔に、クロノも思わず微笑む。

「…そうだな、桜は綺麗だ。それでいいか、好きな理由」

 手元の皿に目を向けると、いつの間にか料理が無くなっている。それに気がついたなの
はは立ち上がり

「料理無くなったったね。ちょっと待ってて、取ってくるから」
「いや、それくらい自分で…」

 立ち上がりかけたクロノの肩になのはは手を置き

「今度は私やフェイトちゃんの料理を食べて欲しいから。―すぐ持ってくるね」

 そう言うと重箱の元へ行き、新しい紙皿に料理を盛る。
 クロノは微笑し、お茶に口を付ける。するとお茶の上に桜の花びらが一枚、浮いている。
一瞬取り出そうと思ったが、やめ、そのままお茶と一緒に桜の花びらを異に流し込んだ。
 不思議と美味く感じた。




「嘘だろ…」
 異変に気がついたときはもう遅かった。なぜ気がつかなかったのだろうか。
 目の前にいる少女達と使い魔三匹、そして守護騎士達四人。そのほぼ全員の顔が真っ赤
になっている。
 そして彼らの手元には見間違う事なき缶ビールの缶が、ある。先日の買い出しの時にエ
イミィが買っていたものだ。

「…な、なぜ…ビールが…」

 絶句しているとふらふらのヴィータが未開封のビールを手に取る。はっとなったクロノ
は彼女に駆け寄りビールを奪う。

「なにすんだよぉ!!」

 まるで戦闘時の時のような、すわった目つきで叫ぶヴィータ。

「子供が酒を飲むんじゃない!」
「あんだとぉ!! あたしは子供じゃねー!!」

 今にもグラーフアイゼンを発動しかねないヴィータ。と、両者の間に割って入る影があ
る。
 同じ守護騎士のシャマルだ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:48:48 ID:RObqSdKf<> 「駄目れすよ、ヴィータちゃん、喧嘩しりゃ〜」
 
ろれつは回っているが意外としっかりしたことを言うシャマル。するとヴィータはなぜ
か両目に大粒の涙を浮かべて

「だって…あいつが、あたしのジュースを取ったんだ!」

 と、クロノを指差す。

「これはジュースじゃない! ビールだ! 見ればわかる…だろう?」

 こちらを向いたシャマルもなぜか戦闘時のような目つきだ。

「クロノ提督…いけませんよ。……ヴィータちゃんに意地悪しちゃ」
「は!?」
「さ、そのジュースをヴィータちゃんへ、返してあげてください」
「だからこれはジュースじゃ…」
「うぁあああーん! クロノがいじめる、はやてーっ!!」

 泣き出したヴィータはタックルするようにはやてに抱きつく。はやては赤い顔でヴィー
タの背中を撫でると、やはり戦闘時のような目つきでクロノを睨み

「クロノくん…こないな小さな女の子、いじめて楽しいんか」
「いじめてない!!」
「最低やな…やっぱりまだ昔のことでヴィータ達のこと、嫌ってるんか。
 そないにこの子達が嫌いか。確かに昔は色々やっとったけど今はみんな頑張って管理局
やクロノくんに協力してんのに…ぐすっ」
「そ、それについては本当に感謝してる…て、何で泣く!?」
「はやてぇ〜」
「ええよ…私の胸で思いっきり泣き。安心し、クロノくんが敵でも私は一生ヴィータの味
方や」
「はやてぇ〜〜」
「ありがとう、はやてちゃん…」

「主はやて…我らは幸せ者です…ううう…」
 いつの間にかシャマル、そしてシグナムまで泣き、はやてにすがりついている。唖然と

その光景を眺めていると突如首に腕が回される。
「だ、誰だ…って、フェイト!?」
「…お兄ちゃ〜ん」

 滅多に聞かない呼称と甘い声でフェイトはクロノの胸の頬をよせ、スリスリする。たち
まちクロノの顔が瞬間沸騰する。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:50:52 ID:RObqSdKf<> 「フェ、フェフェフェフェイト! 酔っているんだな、君も酔っているんだな! そうだ
ろう? そうだよな!?」
「酔ってないよぉ〜…いつもの、フェイト・T・ハラオウン、15歳だよぉ…。
ちなみにクロノお兄ちゃんは20歳だよ〜」
 
 完全に酔っぱらってる事が解り、少し正気に戻るクロノ。しかし頬はリンゴ色のままだ。

「ぼ、僕のことはどうでもいい! それよりも説明してくれ、いったい何でみんな酒を飲
んでいるんだ!?」
「お酒じゃないよぉ…これはぁ」
「じゃあ何だと…」
「これはね…ビール、です。お酒じゃないよぉ」
「ビールはお酒だ!!」

 クロノの叫びにフェイトは一瞬、ぽかんとなり、再びにっこり笑うと

「そっかぁ〜お酒なんだ〜。ありがとうお兄ちゃん、また一つフェイトは賢くなりました
〜」

 そう言うと、フェイトはなぜか頭を差し出してくる。

「……フェイト?」
「頭がよくなったから、ご褒美のいい子いい子…」
「い、いい子いい子? なんだそれ…」
「えとね…いい子いい子って、言いながらぁ、頭を優しく撫でるの。こんな感じで〜」

 顔を上げたフェイトはクロノ頭を2、3度なでる。そしてにこっと笑うと、再び頭を突
き出してくる。
 ―何というか、酔っているとはいえ、ここまでキャラが変わるものなのか…?
 戸惑うクロノだがとりあえず大人しく言うことを聞いていた方がいいと思い、2、3回
優しく撫でる。
 するとぱっと顔を上げたフェイトはにっこりと笑いクロノに抱きついてくる。

「フ、フェイト! 離れるんだ!!」
「や〜だ〜」
「ふふふ…」

 何やら地の底から響くような声が聞こえ振り向くと、やはり顔を真っ赤にして、何やら
妖しい笑みを浮かべているユーノがいた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:52:33 ID:RObqSdKf<> 「ユ、ユーノ…」

 真っ赤だったクロノの顔が、さーっと青くなる。よりにもよってこの男にこんな場面を
見られるとは…!

「クロノ…やはり君はシスコンなんだね…このシスコン提督」
「違う! てか誰がシスコン提督だ!!」
「否定しなくていいよ…なのはのことは安心して僕に任せて君はフェイトと…」

 ユーノに最後まで言わせず、クロノは近くに転がっている空き缶を、ユーノの額めがけ
て蹴る。缶は見事に狙った部位に命中、甲高い音を立てて缶が宙に浮き、ユーノは倒れる。
 しばらくユーノを見ているが立ち上がる様子はない。気絶したようだ。

「今の一撃でこの光景を忘れてくれるといいんだが…」

 安堵の息を漏らすクロノ。しかし周りの惨状を見て、再び鬱になる。
 泣いているはやてに、それに泣きついているヴィータ、シグナム、シャマル。カエルが
ひっくり返ったような姿勢で気絶しているユーノ。
 唯一の救い(?)はアリサとすずか、ザフィーラとアルフの獣コンビだ。アリサ達は実
に仲むつまじくすやすやと健やかな寝息をたてており、子犬形態の二人も静かに木陰で眠
っている。
 と、そこまで見て気がつく。この場に一人足りないことに。

「…なのははどこに行ったんだ?」

 と呟いたその時、なぜか結界が展開される。それもクロノの背後で。
 何事と思いきやなんと後ろにはなぜかレイジングハートを構えているなのはの姿があ
る。

「…な、なのは……?」
「…クロノくん」

 いつものなのはとはまるで違った、低く、重い声だ。

「な、何だ…?」
「あのね、私はね、別に、二人がどういった関係になっもね、いいと思うの。お互いが納
得しているんなら」

 ゆっくりと、なのははレイジングハートの先端をクロノに向ける。

「なのは…な、なにを言って…」
「でもね…だからってね……こんな場所での、そういうことは、やっちゃ駄目だと思うの」

 そう言われ、思い出す。自分の今の状態を。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:55:05 ID:RObqSdKf<> 「こ、こここれは違う!」
「違わへんよー!」

 叫びと共に何かが腰に当たる。後ろを振り向けばなぜか先程まで守護騎士達と一緒に泣
いていたはやての姿がある。

「女の子いじめて…こーんな、公衆の場で、妹やからて、そんなことして…。
 本当に、クロノくん、さいてーや」

 すわった目つきで言うはやて。レイジングハートの先端に桜色の光が収束されていく。

「や、やめろなのは! フェイトとはやてまで巻き添えを…」
「大丈夫…全力全開だから……」

 顔を上げたなのはも顔が真っ赤だ。目もはやてのようにすわっている。

「いっくよー…レイジングはー…とぉ」
『All right』.
「『All right』じゃないー!」

 叫び、クロノははやて、フェイトにしがみつかれながらもなのはに駆け寄り、肩を掴む。
 その衝撃になのはの体勢が崩れ、こちらに倒れてくる。レイジングハートに収束してい
た光も消え、地面に転がる。

「な、なのは…ちょ…!」

 慌てて受け止めるもフェイトとはやてがいるためめか、上手くいかない。反射的になの
はの頭を右腕に置き、腰にしがみついているはやてに乗らないよう横向きに地面に倒れる。
 体に衝撃が来るのと同時に、頭に何か硬いものがぶつかる。それが何か確認する前に、
クロノの意識は闇に落ちた。



「…う」

 うめき声を上げ、目を覚ますクロノ。起きた彼の視界には何故かキリンの絵柄が描いて
ある空き缶がある。
 なぜこんなものがあるのかと思い、気絶する前のことを思い返す。そしてこれが気絶の
原因だと気付く。
 何となく腹が立ち、どかそうとするがなぜか右腕が重い。怪訝に思い右腕を見ると

「なっ、なの…!」

 すやすやと穏やかな寝息を立てて、眠っているなのはの姿がある。
 ―なんだこれは!? 一体何故??
 混乱するクロノ。と、腰と体の上にも何やら妙な感触がある。視線を向けるや体の上面
にはフェイトが、そして腰の辺りにははやてがしがみついてる。
 両者を見たクロノの脳裏に、先程の惨状が蘇る。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 01:56:59 ID:RObqSdKf<> 「そうか…魔法の発動を止めたときになのはが倒れ込んできて…」

 原因がわかりほっとするクロノ。しかししばらくしてこれがいかなる事態かを自覚し、
青くなる。
 大変まずい状況である。年頃の女の子に抱きつかれている青年。これを第三者が見たら
どう思うか、そして自分がどんな目に遭うか。

「こ、これはまずい…」

 と呟いたその時だ。右腕に頭を乗せているなのはが小さく、可愛らしい声を上げて目を開
ける。

「…ん〜…」
「…!!」

 なのはは無反応。目を2、3回閉じたり自分の頬をつまんだりする。
 それから数秒後、火がついたように真っ赤になる。

「あ、あわっ。あわわわわ…!!」
「な、なのは! これは違う。いいか、落ち着いて聞いてくれ―」

 この状況を説明しようとしたその時、体の上にいるフェイト、腰にしがみついているは
やてが動く。
 ―目を覚まさないでくれ!
 心の中で必死に懇願するが、それはかなわない。フェイトの目が開き、先程のなのはと
同じ理悪書を取ったかと思えば、フェイトの顔が瞬間沸騰し、硬直する。
 そして腰の辺りから「なんやぁ…?」と声を上げたはやてと視線が会い、彼女の顔も同
じように真っ赤に染まり、叫ぶように言う。

「な、何? どないなっとるん? 何で私がクロノくんに抱きついとるん!?」
「落ち着くんだはやて! 静かにしないと…!!」
『静かにしないと…なんだって?』

 殺気の籠った二つの声。おそるおそる上を向くと無表情の士郎と恭也の姿がある。

「―!!」
『クロノ…貴様…』

 二人は全く同じ口調で、静かに腰から小太刀を抜く。二人の脇には唖然とした様子のエ
イミィと顔を真っ赤にした美由希に忍、そして顔面蒼白の母親二人の姿がある。

「ち、違うんです! これは…!」
「これは…なんですか? クロノ提督…」

 二人に負けず劣らない殺気が今度は足下から発している。ゆっくりと視線を向けると甲
冑姿のシグナムとヴィータ、そしてボキボキと指を鳴らす人型形態のアルフの姿がある。
 そしてその横では目を伏せ、倒れかかっているすずかとシャマル、それを支えながら軽
蔑の色が籠もった視線を投げかけるアリサとザフィーラ。

「違う…これは、違うんだぁーーーーーー!!!」

 夕暮れの海鳴に、クロノの絶叫が響き渡った。

END <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 02:16:59 ID:4/jjsIPF<> >>31
超GJ!!
フェイトのお兄ちゃ〜んの一連のコンボはまじやばいw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 02:50:20 ID:ko8r/su3<> >>31
OK,お茶吹いた!GJ!
あの親子に襲われたらいくらクロノでも確実に殺られるんじゃないのかねぇ。
ま、美味しい思いした代償ってことか……等価交換ってやつだね。
<> YUKI <>sage<>2006/01/26(木) 06:57:22 ID:AHJHp66i<> >>31
マジGJ!!
フェイトの「お兄ちゃ〜ん」はホントヤバイね。
一撃必殺ですよ。

クロノよ・・・・・・死ぬな。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 11:52:24 ID:iyU6g79m<> >>31
エロゲならここで4Pだな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 12:04:32 ID:/+5X5uMY<> ただ、クロノの気持ちはわかる。
酒呑めない人間はつきあいとはいえ酒の席に出るのにおっくうになるだろう。
特に他の人間が呑んでしまうと、必然的に呑めない人間がフォローと後始末
の役を担わされるわけで。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 12:25:53 ID:QEzw3PYg<> >>45
お主も呑めん口か、俺もだ(・∀・)人(・∀・)ナカーマ
同期で呑めないの俺だけなもんだからその気持ちはよーく分かるぞ。
しかも一人限度っちゅーものを超えて呑むやつがいるから正直困る。

とにかく>>31氏、GJ。またいいの出来たら投下して下さい。お願いします。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 13:46:39 ID:e5HF4x8z<> 漏れは仲間外れか…(´・ω・)
ブラックニッカとか割らないで呑める…でもカクテルはムリポ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 14:43:08 ID:escEX7Lu<> >>31
GJ!!酒の席では酔ったもの勝ちだよw <> 31<>sage<>2006/01/26(木) 17:41:41 ID:IQ452b2D<> 皆さん、暖かい言葉をありがとう。
酒に関しては自分も強くないですww
これからちょくちょくうpしていこうかと思っていますので、なにとぞよろしく。
多分殆どがギャグ、コメディものになると思いますが… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 17:46:20 ID:sNVlCw4y<> >>31
GJ!
まさしく世界は(ry


>>21
遅レスでスマソ
名前聞けば分かるかな
つ『怠惰な日常』 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 17:49:00 ID:sNVlCw4y<> ×>>21
>>22

自分にレスしてどーする <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/26(木) 22:59:04 ID:00dccFLh<> マイナーネタでクロノ×はやてキボンと言ってみる <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/01/27(金) 01:05:39 ID:DguGZKlw<> age <> jewel :『Turn over』続き。<>sage<>2006/01/27(金) 02:34:33 ID:gGgCcTI9<> 【Y】

―5時間後、ポイントC―

「ヴィータちゃんは?」
「ああ、さっき眠ったところだ。…昼間の事情聴取で、大分疲れたらしい」
「そっか…」
 テントの中から出てきたシグナムが、シャマルの隣に座った。
「はい、おべんと。」
「これは…主はやてが?」
「うん。冷めても美味しいようにって、色々考えてくれたみたい」
「有難いな…いただこう」

「…また、考え事?」
「…まあな」
 シャマルの問いかけに、シグナムは目線を合わせぬまま答えた。
「はやてちゃんに怒られちゃうわよ。『考えすぎるのは、シグナムの悪い癖やよ』って」
「ふっ…そうだな」
 自嘲気味に笑うシグナムに、シャマルは諭すような口調で続ける。
「でも、なんとなく分かるわ。こういう静かな夜って、物思いにふけりたくなるもの」
 夜空を見上げるシャマル。彼女たちの頭上には、皮肉なほど美しい星空が広がる。
「…昔は、こうやって夜空の下で眠ることも多かったわよね」
「ああ」
「それが、はやてちゃんがマスターになった日から変わったわ。私たち一人一人に、
 暖かくて柔らかいベッドを用意してくれた。かわいいお洋服も、おいしい食事も。
 昔の私たちには、信じられないくらい」
「…本当に、感謝している。いや、そのことだけではない。主の為とはいえ、我らは
 勝手に事を起こし、多くの者を傷つけた。それ以前にも、数え切れぬ程の者に不幸を
 もたらした。主はやては…それらを全て受け入れてくださった」
「シグナム…まだ、あの時自分たちも消えるべきだった、って思ってるの?」
 シャマルが、哀しげに問いかける。
「以前ほど、強く思っている訳ではないがな…だが時折、ふと頭をよぎることがある」
「駄目よ。ハラオウン執務官も言ってたじゃない。罪は消えない。罪滅ぼしなんて
 言うけど、それは綺麗事なのかもしれない。でも、今と未来を守ることは出来るって」
「…」
「はやてちゃんは、私達がいることを幸せだって言ってくれた。私の幸せには、
 シグナム達が必要だって。なら、私達は守らなくちゃ。私達のマスターの幸せと、
 この世界を」
「…主にも、多くを背負わせてしまった。幼いヴィータにも、申し訳ない思いでいる」
「ヴィータちゃんは、ああ見えて聡い子よ。闇の書のシステムの欠陥に気付いたのも、
 ヴィータちゃんだけだったじゃない。…大丈夫、一緒に背負ってくれるわ。勿論、
 私とザフィーラもね」
「…そうか」
 瞳を閉じ、シグナムが微笑う。そうよ、とシャマルは微笑みを返した。

「知ってる、リーダー? 『夢』って、本当は眠ってる時に見るものなんだって。
不思議だと思わない? 私たちは、『眠って』いるときには、本当にただ眠っている
だけだった。それなのに、今こうして起きているときに、夢を見ていられる。
 温かくて、素敵な夢を」
 立ち上がったシャマルが、夜空を見上げて言った。
「…そうだな。本当に、温かい」
 お弁当を一口口にすると、シグナムは静かに呟いた。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/27(金) 02:35:25 ID:gGgCcTI9<> 【Z】
     ―同時刻、ポイントB―

「でさ〜、その時にリニスが私のしっぽ引っ張って引きとめようとするからさぁ、
 私も思いっきり噛み付いてやったワケ♪」
「………」
「でも、ヒドイと思わなぁい? アタシはフェイトと一緒にいたいだけだったのに、
『アルフがいるとお勉強になりませんから!』って部屋に入れてくれなかったんだよ」
「……………」
「あの頃はまだ、アルフが子供だったからね。私もつい、可愛くて相手したくなって」
「あ〜、フェイト問題発言! 今のアタシが可愛くないみたいじゃん!」
「そんなコトないよ。ね、ザフィーラさん?」
「…………………ああ」
「何よ、今の微妙な間は」
 アルフがザフィーラに睨みかかる。
「…いや、特に意味はないのだが」
「怪しい〜。もう、せーっかくアタシとフェイトの思い出を語ってあげてるのにさぁ、
 『ふむ』とか『ああ』とか『そうか』とか、そんなんばっかり」
「アルフがおしゃべりすぎるんだよ。それにザフィーラさん、ちゃんと全部
 聞いてくれてるじゃない」
 ぷん、と拗ねたアルフの頭を撫でながら、フェイトが言った。
「まぁ、そうだけどさぁ…」
 ご主人様の言葉がもっともだと思いつつも、どことなく納得いかないご様子のアルフ。
「お散歩行っておいで、アルフ。星がとてもきれいだ。ザフィーラさんも、一緒に
 行ってもらえますか? クロノ達との連絡は、私が残りますから」
「…そうだな。是非、付き合おう」
 あぐらをかいていたザフィーラが、すっと立ち上がる。フェイトの膝枕をうけていた
アルフの耳が、それに反応した。
「…どうした? 行かないのか?」
「…い、行くわよ! ホントは、フェイトと二人がいいんだけどね!」
 ザフィーラの隣に並ぶアルフ。フェイトは、それを見てクスクスと笑っていた。
「1時間くらいで戻ってきてね。ザフィーラさん、アルフのこと宜しくお願いします」
「ああ」
「こんなヤツにお願いしなくたって、ちゃーんと戻ってくるよ」
「はいはい、いってらっしゃい」

 二人の背中を見守るフェイト。会話の内容は離れているため聞こえないが、
相変わらず、アルフが一方的にザフィーラの方を見てしゃべっている。
 しっぽを振り、楽しそうに笑いながら。
(…もう、アルフも素直じゃないんだから)
 クスリと笑いながら、フェイトは通信機を起動させた。
「こちらポイントB、異状なしです」 『はいは〜い、ご苦労様フェイトちゃん!』

(そういえばユーノ、うまくいってるかな…?)
 そんなことを思いながら、フェイトも夜空を見上げた。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/27(金) 02:36:14 ID:gGgCcTI9<> 【[】
      ―同じく、ポイントA―

「わぁ〜! きれいな星空だよ、ユーノ君!」
 少し遅めの夕食を済ませ、テントの外に出た二人を、満天の星空が迎えた。
「わたしの世界だと、こんなにきれいな星空って、なかなか見れないの」
 そうなんだ、とユーノが微笑む。
「なんかこうしてると、任務中だってコト忘れちゃうね」
「そうかも」
 くす、と笑うユーノだったが、なのはは慌てた様子で付け加えた。
「あ、ごめんね。遺跡を壊してる人を捕まえようとしてるのに… クロノ君って遺跡調査
 が好きだから、今回の事件、一番気にしてるよね」
「ああ、こっちこそごめん。なんか、余計な気をつかわせちゃったね」
 なぜか微妙に遠慮しあう二人。草の上に腰掛けたユーノの隣に、なのはが座った。

「ユーノ君、今の仕事楽しい?」
 いつもの明るい表情で、なのはが話し始める。
「そうだね… 大変なことも多いし、まだまだ勉強しなくちゃいけないけど、自分が
 ずっとやりたかったことだから。すごく、充実してると思う」
「そっかぁ…凄いなぁ。ユーノ君もクロノ君もフェイトちゃんも、みんな自分の道を
 はっきり決めて、がんばってる」
「なのはだってそうじゃない。管理局の仕事、凄くがんばってるって、フェイトとクロノ
 がいつも言ってるよ」
「ホント!?」
「うん。クロノには、内緒にしておいてくれって言われてるけど」
「あはは…相変わらず、厳しい先生だなぁ」
 笑いあうなのはとユーノ。

「でも、ユーノ君が本局勤めになってよかった。ミッドチルダのほうに帰っちゃったら、
 わたしの世界からはなかなか会いに行けないもん」
「………僕も、なのはと会えるのは、うれしい」
「そっか。よかった♪」

…ユーノの精一杯の告白を、なのはが満面の笑みでスルー。

「あ、あははは、…はぁ」
 微妙に肩を落とすユーノ。高鳴る心臓の鼓動も、一瞬ですっとんだ。


「そういえば、前にフェイトにもらったリボン、ずっと使ってるね」
「うん。わたしにとって、とっても大切なものだから」
「そっか。僕も、何かなのはに渡せるといいんだけどな。欲しいものとか、ある?」
「そんな、別にいいのに…あ、だってほら、わたしにレイジングハートをくれたのって、
 ユーノ君じゃない! ユーノ君はもう、わたしに大切なものをプレゼントしてくれてる」
「そ、そう言ってもらえると、嬉しいかな」
「あ、でもそーすると、わたしがユーノ君に何かプレゼントあげなくちゃいけないなぁ」
「僕は別に気にしないよ」
「ダメ! ユーノ君、優しすぎるのは良くないよ!」
 口元に指先をあて、なのははうーん…と考える。

「…そうだ! リボンとかは!?」
「は!?」
「ほら、フェイトちゃんにもあげたし…それにユーノ君、髪長くしても似合うと
 思うんだけどなぁ」
「そ…そうかな…?」
 微妙に苦笑いのユーノ。隣では、なのはがいつもの笑顔で笑っている。
 穏やかな時間が、そこにあった。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/27(金) 02:37:00 ID:gGgCcTI9<> 【\】
     ―艦船『アースラ』司令室―

「…うーん、ユーノ君おしぃ!! もう一押しだったね〜♪」
 司令室で一人、ディスプレイを眺めていた(というか凝視していた)エイミィが、
ぷはぁと息を吐き出して言った。ジュースを飲もうと、手をのばす。
「あれ?」
 右手が空を切った。あるはずの場所に、コップがない。
 振り向くと…そこにはオレンジジュースを持ったクロノの姿が。
「…何 が お し い ん だ ? エイミィ」
「あ、あはは…クロノ君、気配を感じさせずに背中を取るとは…腕をあげたねぇ。
 確か、1時間ほど仮眠をとるんじゃなかったっけ?」
「緊張感で寝付けなくてね。それに、最近は休んでばかりだから」
「…腕の調子、どう?」
「問題ない。魔力ダメージに、物理的ダメージも加わってたから、治りが遅かったけど」
 そう話すクロノだったが、いつもと同じ手袋をしているため、その手元は見えない。
「ウソばっかり。いくらクロノ君とはいえ、あれだけの怪我をそんなに簡単に治せる
 ワケない。それなのに、『後から転送ポートで駆けつける』なんて言っちゃって…」
「…僕が後ろにいることで、みんなの不安が少しでも解消されるなら、
 張り子の虎だってなんだってやるさ」
「もう…相変わらず、無理しちゃって」
 呆れ顔のエイミィだったが、表情は柔らかかった。

「…ところでだエイミィ。微妙〜に話を逸らそうとしてるね?」
「うぐ」 バレたか、とエイミィは誤魔化し笑いを浮かべる。
「当たり前だ…何年顔をつきあわせてると思ってるんだ。まったく、君ってやつは…」
「はーいはい、お説教はストップ。ちゃーんと反省してます」
「…全っ然その様子が感じられないのは、僕の気のせいか?」
「してるってば。第一、クロノ君だって悪いんだからね!」
「ちょっと待て! 何でそこで僕のせいになる!?」
 呆れて笑い出すクロノに、エイミィは少し不機嫌そうに答えた。
「だぁってさぁ…最近ずーっと任務ばっかりだったし、休暇もずっととってないし。
 しかもクロノ君は怪我しちゃうし。せっかく哨戒任務でゆっくり出来ると思ったのに、
 独自行動で犯人捕らえるって言い出すしさっ」
「そ…それは、すまないと思ってるけど…」
「第一この3日間、クロノ君の報告書とか通常勤務、全部私がやってあげたんだよ。
 ちょーっとくらい、感謝してくれてもいいんじゃないの?」
「う…」 いつの間にか、劣勢に立たされるクロノ。
 一方のエイミィは、ぐーっと顔を近づけ、ニヤニヤと笑う。勝負アリ。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/27(金) 02:37:34 ID:gGgCcTI9<> 【]】

「…その…いつも、君に負担をかけてるのは…本当にすまないと思ってるんだ」
「ふーん…それで?」
 相変わらず、不敵に笑うエイミィ。
「よければ…執務官補佐をもう一人、申請することもできるんだが」
「それはダメ。前にも言ったでしょ?」
「でも、仕事が大変なら…」
 そう続けるクロノに、エイミィはようやく顔を離すと、やれやれと笑った。
「やっぱりクロノ君は、もう少し乙女心を学習する必要があるわね〜」
「は!? なんでいきなりそーなる?」
「クロノ君のパートナーが務まるのは私だけ。そこんとこ、ちゃんと理解しておくように」
(なんか、いきなり上機嫌だな…)
 コロコロと変わる表情に、確かに自分には「乙女心」ってやつは理解できそうにないな、
とクロノは思った。
「分かったよ… これが終わったら、ちゃんと休暇を申請するから」
「それだけ?」
「それだけって…」
「この3日分のお礼、欲しいんだけどなぁ…」

 エイミィはそっと目を閉じると…すっと顎をあげ、クロノに唇を向けてきた。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/27(金) 02:40:14 ID:gGgCcTI9<> 【]T】

 目の前の状況に、思考停止。
 そして3秒後、クロノは急転直下の大パニックに襲われていた。
(こ、これって、やっぱり…いや、まてクロノ。いつものエイミィの冗談の可能性だって
 こともある。というかさっき、僕は仮眠をとったじゃないか。だとすればこれは夢だ。
 そう、夢。夢だな。夢夢夢。)
「…クロノ君…んー。」
 エイミィの静かな声に、再び思考が吹き飛ばされ、唇が引き寄せられる…
「…」「…」
 二人の唇が、今にも重なろうという…その瞬間。
 パシュ、という乾いた音とともに、明るい声が届いた。
「クロノ、エイミィ、お疲れ様〜♪ 交代に、って…あら」
「か、母さ…じゃなくて艦長!?」
 慌てて顔を離すクロノだったが、時すでに遅し。リンディは、自分の世界に入って
しまっていた。
「あなた…クロノも大人になりました。女手一つで育ててきて、優しい子には
 なってくれたんだけど、どーにも生真面目すぎるというか、そういう所があって…」
「…艦長」
「でも、良かったわ。エイミィもとってもいい娘だし、心配ないわね」
「…艦長!」
「あ、ゴメンナサイね二人とも。私は部屋に戻るから、ごゆっくり♪」
 そそくさと退散しようとするリンディ。ドアの前でもう一度、二人の方に体を向けた。
「…エイミィ。クロノはちょっと難しくて神経質な子だけど、きっと貴方のことを
 大切にしてくれるわ。これから、どうぞ宜しくお願いします」
 深々とお辞儀をすると、リンディは扉の向こうに消えた。

 …そして、その場に取り残され、茫然自失の二人。
「…あ、あははは…どーしよっか、クロノ君?」
「…どーするもこーするもないだろう…今すぐ誤解を解きに行く」
「だよねぇ… 艦長、なんか目元に光るものがあったし」
「…君のせいだぞ、エイミィ」
「はーいはい、ちゃんと責任とってご挨拶に伺いますよ」
「…そういう表現も勘弁してくれ」
 クスクス、と笑いながら、エイミィがドアの方に歩き出す。
「あ、そうだクロノ君。さっき、ホントにキスしようとした?」
「そ、それは…」
「あはは♪ 私はいつでも待ってるからね〜♪」
 とびきりの笑顔を向けると、エイミィも司令室をあとにした。

 はぁ…と大きくため息をつくと、ドサッとイスに腰掛けるクロノ。
(まったく…エイミィには敵わないな)
 そう思いつつも、心地良い高鳴りが、胸の中に残っていた。
 同時に、奇妙な力が、自分に生まれてくるのを感じる。
 まだ痛みの残る手を握り、クロノは真剣な表情になった。

(さあ…そろそろ、仕事の時間だ)
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/27(金) 18:16:41 ID:YCYfoIrW<> 果てしなく乙
1期からのエイミィファンとしてクロノ×エイミィは美味しい。×フェイトも好きだけど。

あと細かいツッコミ
56にクロノが紛れ込んでるw <> 430<>sage<>2006/01/27(金) 21:18:35 ID:CmnrIWpy<> 遅くなりましたが
>>640
>>31
>>jewel氏
皆さんGJです!
笑い転げたりニヤニヤ笑ったりしながら読ませて頂きました!

ところで、以前ここに投下した小説を自分のHPに掲載させていただいてよろしいでしょうか。
初心者板で聞いたところ問題ないとのことなのですが、盗作と間違われないよう宣言もかねて確認させてください。 <> 640<>sage<>2006/01/27(金) 22:01:03 ID:jTG2hHQV<> >>31
乙です。クロノはこれ死ぬな・・・・

>>jewel氏
アルフ×ザフィーラキタコレ
そして鈍感なのはキタコレ

>>430
いいんじゃないですか?というかそのHPうpキボンぬ <> 549
◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/01/27(金) 22:13:41 ID:DguGZKlw<> >430氏
心配な時はトリップを使いましょう。
<> 430<>sage<>2006/01/27(金) 23:18:58 ID:FCXy0lBs<> >>640
つ ttp://vollmond17.hp.infoseek.co.jp/
こちらになります。
ぶっちゃけただいま改装中なのでまだ滅茶苦茶味気ないですが、なのはに関しては一応こちらに乗せたものの加筆修正版と、新作を一本おいてあります。
よろしければぜひおいでください。
640氏の小説はハイレベルなここの小説の中でも特に大好きなので、とても尊敬しております。
これからもがんばってください。

>>549
アドバイスありがとうございます。
ですが、申し訳ありません。トリップとはなんなのか、教えていただけませんか? <> 549
◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/01/27(金) 23:28:34 ID:DguGZKlw<> 名前を入れるとこに、半角の#と任意の言葉を入れて書き込みすると
「◆51nyTkmf/g」のような文字列に変換されます。
これがトリップです。

基本的に元の言葉は書いた本人しか分からないので、
トリップ付きでSS書いて、トリップ付きでHPに載せた書けば、
本人だと分かります。

任意の言葉は、半角なら8文字、全角なら4文字まで。
「なのは」とか単純なのは止めましょう。 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/01/28(土) 00:18:35 ID:+Hn8o7YG<> >>549
ありがとうございます、よく分かりました。
試しにやってみましたので、これからはこれを使おうかと思います。 <> YUKI <>sage<>2006/01/28(土) 14:14:24 ID:Gc4R/IRl<> >>Jewel氏
乙!&GJ!
それぞれのキャラの味が良いですね!
アルフが気になるよ!

さて、一応新作です。
今回は自分の妄想ばっかり詰め込ませてます。
第1部投下! <> YUKI 妹1<>sage<>2006/01/28(土) 14:15:42 ID:Gc4R/IRl<> ―――――どうしてこんなことに―――――

時空管理局執務官クロノ・ハラオウン14歳は頭を抱えていた

いや、抱えていたかったが、片方の腕がある人物に奪われていて抱えることはできなかった

「お兄ちゃ〜ん、、、、んふふふふふ、、、、」
フェイト・テスタロッサ9歳 クロノの義妹であり、時空管理局嘱託魔道士
クロノの腕を奪っている本人である
本来の彼女ならばこのような行為は絶対にしない
いや、したいと思っても、クロノの性格等を考えすることができない

ではなぜ彼女はこのような行為を今しているのだろうか・・・・
話は3時間前に遡る


3時間前
「フェイト、無理はするな。危険を感じたら一旦引くんだ」
「うん。わかってるよ、クロノ」
洞窟の入り口に着いたフェイトにクロノが話し掛ける
重要指定捜索物ロストロギア「幻惑の壺」
クロノ達はこのロストロギア捜索の任務にあたっていた

「闇の書」に比べたら危険性も低く、さほど重要な任務ではなかった
調査員達からも、「すでに能力のほとんどが失われている」という報告を受けていた

すでに隠されている場所も突き止め、後は回収するだけになっていた
「私に行かせてほしい」
出動準備をしているクロノにフェイトが申し出た
「フェイト、1人でか?」
「うん」
確かに危険性低い任務なので、執務官であるクロノがわざわざ出動する必要もなかった

「う〜ん・・・、解った。キミにとってもいい経験になるだろうから、今回はキミに任せよう」

「ありがとうクロノ。私、頑張るね」
「ああ。気を付けてな」
<> YUKI 妹2<>sage<>2006/01/28(土) 14:16:27 ID:Gc4R/IRl<> そのようなやりとりの末、今回はフェイト1人で回収任務にあたることになった
「それじゃぁ、クロノ、洞窟に入るね」
「あぁ、気をつけろ」
フェイトとアースラとの通信も問題なく、このまま無事に回収ができると誰もが思っていた、、、、、
だが、、、、、

「きゃぁぁぁぁ!!」
洞窟に入ろうとしたフェイトが突然悲鳴をあげる
「!!!!」
突然洞窟の中から赤紫色の煙が噴出し、フェイトを一瞬によって飲み込んでいく
「フェイト!!」
アースラに緊張が走り、クロノは急いで転送の準備に入る

「クロノ君!」
「エイミィ!フォローを頼む!」
「了解!」

一瞬によりクロノの姿はアースラから消え、現場へと転送した
「フェイトォ!!」
クロノが到着した際にはすでに煙は晴れ、そこに倒れているフェイトを見つけた
急いで駆け寄りフェイトを抱き起こす
「フェイト!フェイト!」
普段のクロノからは想像できないほどの大声でフェイトを呼びつづける
「クロノ君!落ち着いて!フェイトちゃんの様子は!?」

エイミィからの通信でやっと正気に戻ったクロノがフェイトの身体を調べる
「が、外傷は無いようだ、、、それに、、、魔力も弱ってない、、、、、これは、、、、」
「、、、、、、、」
「気を失ってるだけのようだ」

アースラからは安堵のため息が漏れる
「クロノ君、洞窟の中には入れそう?」
「あ、あぁ。特に何も危険は無いようだ、、、ん、、、、、?、、、あれは、、、?」
「どうしたの? 何かあった?」
「あぁ、見つけたよ。あれが幻惑の壺か、、、、」

その後特に問題も無くロストロギアは回収され、フェイトも眠ったまま医務室へと運ばれた
<> YUKI 妹3<>sage<>2006/01/28(土) 14:17:09 ID:Gc4R/IRl<>

「ふぅ〜、それにしても大きな怪我も無くて良かったねぇ。」
「あぁ、結局あの煙もただの催眠ガスだったしね。」
クロノとエイミィは缶コーヒーを飲みながらデッキ内で報告資料の作成をしていた

「あれは多分、幻惑の壺の最後のエネルギーだったんだろう。
 本来ならばあの煙を吸った人間は、何らかの幻惑を見せられるんだろうが、もうエネルギー切れだったようで、フェイトを眠らせることしかできなかったんだろうな。」
「ふぅ〜ん、、でも、クロノ君のあの慌てっぷりは可愛かったなぁ、、、ふふふ」
思い出しながらクスクス笑うエイミィ

「あ、あれは!もしロストロギアによってフェイトが怪我をしたら艦長が悲しむと思って! 僕は緊急出動したんだ!」
「はいはい、そういうことにしておきましょう〜」
「エイミィ、、、キミは、、、まったく」
クロノがいつものようにエイミィにからかわれる

「「リンディ艦長、クロノ執務官、フェイトさんが目を覚ましました」」

艦内アナウンスによりクロノ達が呼び出される
「あ!フェイトちゃん起きたんだね。」
「そのようだな、よし、行こうか」
「うん」
エイミィと二人で医務室に向かう

医務室の前で母親のリンディと出会い一緒に中に入る
ベッドの上では、目をさましたフェイトが上半身を起こしてぼーっとしていた
「やぁ、フェイト。気分はどうだい?」
「・・・・・?」
なぜか返事が無い
思わず顔を見合わせるリンディとクロノ
「フェイト?聞こえてるかい?」
もう一度クロノが問い掛ける
するとフェイトはクロノの手を握り始めた
突然のことに驚くクロノ
「フェ、フェイト!?」
「おはよう。お兄ちゃん!」
<> YUKI 妹4<>sage<>2006/01/28(土) 14:17:59 ID:Gc4R/IRl<>
!!!!?????
医務室内に突然の困惑が訪れる
「ふぇふぇっふぇ、フェイト!突然何を!」
「え〜、だってお兄ちゃんは、フェイトのお兄ちゃんで、ママは、フェイトのママだもん!」
「ママ?!」
思わずリンディも一瞬驚くが、さすがにこの人は大物だった
「そうよ〜、私がママよ。フェイトちゃん」
「か、母さん!何を言って、、、」
「だってぇ、母さん娘からママって呼ばれたかったんだもん。クロノは呼んでくれないし」

「いい、いや、今はそんなことを言ってる場合じゃない!」
「エイミィ!キミもなんとか言ってくれ!」
「いや〜ん、フェイトちゃん可愛い〜!」
「ほっぺすりすりしたい〜」
「あのなぁ!あぁ〜もう!」
「ドクター、これはいったい!?」
「これは、まさか、、、、、少し調べてみましょう」


「フェイトさん?あなたの名前は解りますか?」
少し落ち着きを取り戻した室内で、ドクターがフェイトに質問をする
ただ、フェイトはクロノの手を握ったままだが
無理やりに引き離すとフェイトが泣きそうになるので、クロノもやむを得ず握り返してあげる

「フェイトはねぇ、フェイト・テスタロッサっていうの」
「そう、良い名前だね。それじゃぁ、年齢はわかるかな?」
「うんっとね、いち、に、さん、5さい!!」
「?????!!!!」
「ご、、、、、、、五歳、、、?」
思わずクロノが口に出す
<> YUKI 妹5<>sage<>2006/01/28(土) 14:18:58 ID:Gc4R/IRl<>
その後の検査で、フェイトはロストロギアの能力によって幼児退行してしまったことがわかった
それでも、日常生活には支障が無いレベルの知識とルールは覚えていて、これ以上は処置の施しようがないらしい

幼児退行によって、一番家族に甘えたい年頃に戻ってしまったのだろう、、とドクターの見解


そして現在に至る
「はぁ〜、、、、結局解決策は無しかぁ、、、」
家のソファに座ってため息を漏らすクロノ
そんなクロノを見て、腕にしがみついたフェイトが、、、、
「お兄ちゃん、、、、フェイトのこと嫌いなの?」
上目使いで泣きそうな眼差しをクロノに向けるフェイト

この表情は反則だ!と心の中で叫びつつも、
「そんなわけないだろう?フェイトは大事な妹だよ」
フェイトに対する扱いもコツをつかんだようで、フェイトを悲しませないように言葉を選んで語りかける

「フェイト、今日はもう遅いから早くお風呂に入って、ゆっくり寝なさい」
「うん!フェイトお風呂に入る!」
「うん、良い子だ」
「じゃぁ、行こ!」
クロノの腕を引っ張ってフェイトがはしゃぐ
「行くって、、、、どこに?」
「お風呂!」
「、、、、、、えっ!?い、いや、、えっ!?、、、、ええ!」
突然のフェイトの言葉にクロノはうろたえる

「ま、待て、フェイト!それは駄目だ!」
「え〜なんでぇ?フェイト、お兄ちゃんと一緒にお風呂入るぅぅ!」
<> YUKI 妹6<>sage<>2006/01/28(土) 14:19:54 ID:Gc4R/IRl<>
「ま、待つんだ!か、母さん!母さ〜ん!!」
たまらず助けを呼ぶクロノ
キッチンからリンディが顔を出す
「なぁにぃ、大きな声だして」
「フェイトがお風呂に一緒に入るって言ってるんだよ!」
「あら、良いじゃない。兄妹なんだから」
この母親に助けを求めた自分が愚かだった
クロノは強く思った

「た、頼むから、これだけは助けてください!母さん!」
ふぅ、とため息をついてリンディはクロノにしがみつくフェイトに話し掛ける

「ねぇ、フェイトちゃん今日はママとお風呂に入りましょ?」
「うう〜、フェイト、お兄ちゃんとお風呂入りたい〜」
「うん、ママも3人でお風呂入りたいんだけど、今日はお兄ちゃんお腹が痛くてお風呂は入れないの。だから、今日はママと入りましょ?」

こう言われるとフェイトも文句は言えない
ちょっと涙目になりながら、クロノを心配する
「お兄ちゃん、、、お腹大丈夫?」
「えっ!?、、、、う、、うん。  大丈夫だよ。ありがとう、フェイト」

少し罪悪感を感じつつもリンディの助け舟に感謝するクロノ
「じゃぁ、行きましょ?フェイトちゃん?」
「うん!♪ママと お風呂! お風呂!♪」
嬉しそうに跳ねながらお風呂場へと向かうフェイトを見ると、何故だか微笑ましく見えた

結局その夜は、家族3人で川の字になって寝ることになった
みんなで一緒に寝たい というフェイトの望みを叶えるために
真中にフェイトを置き、その右にクロノ、左にリンディが寝る
フェイトはクロノとリンディの手を繋ぎながらすやすやと静かな寝息をたてている
「クロノと寝るのも久しぶりね」
「うん。そうだね、母さん。」
クロノも、フェイトの手の温もりを感じながら寝るのにはまんざらでもなさそうだ
「明日はどうなるんだろう・・・・」
「明日は学校があるから、クロノ付いて行ってあげてね」
「えっ!?学校は休ませるんじゃないんですか?」
「駄目よ。フェイトちゃんは行きたがってるんだから」
「し、しかし、いくら日常生活に支障がなくても、5歳のフェイトを行かせるのは無理がありますよ」
「だから、あなたが付いて行くのよ。大丈夫、さっきなのはさんとはやてさんには連絡して全ての事情は伝えたから」
「そ、そんな、、、、」
「さぁ、明日も早いんだからもう寝ましょ」
「はぁ、、、、、、、」

明日からの想像を絶する日常を考えるとため息しか出てこなかった


―――――自宅編終了―――――
次回 学校編に続く


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/28(土) 15:51:04 ID:N+EeN8H7<> ハリー!ハリー!ハリー! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/28(土) 16:13:54 ID:tLGcDPOo<> >>YUKI氏
GJ!!
続きが気になるw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/28(土) 17:26:54 ID:Rt7cT0ie<> YUKI氏GJ!!続き期待してます。
<> jewel<>sage<>2006/01/28(土) 19:28:37 ID:g8Pcc7b3<> >>YUKI氏
 GJです! 続編投下待ってます!w
>>60
 ま…またやってしまった…orz  でも懲りずに投下させて頂きます…
  <> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/28(土) 19:29:31 ID:g8Pcc7b3<> 【]U】
     ―更に8時間経過、ミッドチルダ夜明け―

「…来る」
 紫色に染まり、徐々に明るさを増していく空の下。
 気配を感じ取ったシグナムが、二人に先んじて立ち上がった。
「夜明け時に襲撃なんて、随分と詩的な犯人さんね」
「あたしらが当たりか。ラッキー!」
「二人共、準備は?」
「はい、いつでも」 「同じく!」
 緊張感を増す空気の中、シャマルとヴィータがデバイスを起動させる。
「クラールヴィント、結界と索敵お願い」
 二つのペンデュラムが輝きを増し、広域結界が展開された。
「グラーフアイゼン、暴れっぞ!」
 ガキン、という重いサウンド。真紅の騎士服が、朝焼けに映える。
『Schwertform!』
「…そうだ。行くぞ、レヴァンティン」
 静かな闘気を纏い、シグナムが剣を手にした。
「魔力反応感知。結界内、数…複数!」



「…傀儡兵!?」
 時を同じくして、フェイト達の周囲にも現れた傀儡兵が、彼女たちを取り囲んでいた。
「アタシらのとこに来るなんて、上等じゃ〜ん? こっちは徹夜明けで
 イライラしてんだ。軽ぅく相手してやるよ♪」
「…つい先刻まで、眠っていただろう」
「うっさい!」
「こらこらアルフ。今は目の前の敵に集中」
 はーい、と返事するアルフに笑顔を向ける一方、フェイトは緊張感を抱いていた。
(…これだけの傀儡兵…個体のレベル次第では、魔導師は母さんクラスかもしれない…)
 実の母、プレシア・テスタロッサの姿が頭をよぎったとき、フェイトの手元が輝く。
『Sir...』バルディッシュからの呼びかけだった。
「うん。バルディッシュ、行こう!」
 光り輝く鎌を手に、フェイトは空高く飛び上がった。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/28(土) 19:30:07 ID:g8Pcc7b3<> 【]V】

「B・C両ポイント、共に数50!」
「傀儡兵だと!? エイミィ、両者の波形は?」
「魔力パターン照合…一致! 95%以上の確率で、同じマスターの作ったものだよ」
「…二つの地点の距離を考えれば、遠隔操作(リモート)じゃなくて自動操縦(オート)か。
 マスターの反応はあるか?」
「今のところはまだ。どうする?」
「とりあえず様子を見る。Aポイントのなのは達にも待機指示を。いいですね、艦長!?」
「ええ、勿論よ。但しクロノ、あなたもここで待機しなさい」
 艦長席を見上げるクロノに、リンディが告げる。
「艦長!」
「理由はあなたが一番分かっている筈よ。それに、もっとみんなを信頼しなさい」
 くっ…と歯を食いしばるクロノ。両腕の状態は、未だ70%というところだった。
「Cポイント、状況を!」
 瞬時に思考を切り替える。信頼…そうだ。今僕がすべきことは、僕が出来ることの全て。


「行け、グラーフアイゼン!」
 ヴィータが弾き飛ばす鉄球が兵士達に命中。だが、活動を停止させるには至らない。
「ち、防御力はそれなりにあるじゃんかよ!」
「ヴィータ、散弾攻撃では無理だ! 確実に、一体ずつ仕留めろ!」
「わあってるよ!」
『Cポイント、状況を!』
「こちらCポイント、今のところ問題ありません!」
 クロノからの通信に、シャマルが答える。
(…というか、問題はないんですケド…)
「紫電………一閃!!!」      スバァ!
「テイトリヒ・シュラァアク!!!」 ドォン!
 シグナムとヴィータが、ド派手な大技で次々と鎧兵士を打ち倒していく。
(…二人共、事情聴取とかで大分ストレスがたまってたみたいね…)
 苦笑いのシャマル…だったが、彼女の周囲でも優に5体以上の兵士が、
 結界で完全に動きを封じられている。
「動いたら、壊しちゃいますよ♪…って、通じないか」
(カートリッジ、多めに持ってきておいて良かった♪)
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/28(土) 19:30:51 ID:g8Pcc7b3<> 【]W】

「うぅりゃあああ!!」
 魔力を圧縮させたアルフの拳が、傀儡兵のバリアを軽々と貫く!
「うーん、絶好調♪」
「アルフ、後ろ!」 ガッツポーズを取るアルフの背後で、大型の兵士が武器を掲げる。
 ドォン!
「…背中が甘い。油断するな」
 ザフィーラの蹴りで、傀儡兵は粉々に砕け散った。
「あ…ありがと…///」
「礼など要らん。それよりも、さっさと片付けるぞ」
「…! 分かってるわよ! やっぱアンタムカつく!」
 再び敵にアタックしていくアルフの後方で、ザフィーラが的確に敵戦力を削いでいく。
(ここは、二人に任せておいて大丈夫、かな)
 フェイトは小さく微笑むと、傀儡兵の攻撃が届かない位置まで上昇した。
「バルディッシュ、広域探査を!」『Yes, Sir.』
(10……20……30……まだ…?)
 潜んでいるはずのマスターを探すべく、徐々に探索範囲を広げていく。
 しかし、その魔力反応は感じ取れない。
「…こちらBポイント。マスターの反応、ありません!」


「了解した。フェイト、そのまま敵の鎮圧を頼む」
『はい!』
『クロノ君! 私たちも行く!』 なのはからの心配そうな声が届く。
「ダメだ。君たちの場所からでは、別地点への転送に最低15分はかかる。敵の意図が
 読めない以上、迂闊に移動は出来ない」
『でも!』
「心配するな。両地点とも、かなりこちらが押してる。このままいけば、鎮圧できる」
『分かった…気をつけてって、みんなに伝えてね!』
「勿論だ」
(そう、『このままいけば』、だが…)
 『違和感』という虚像の前に、クロノの中で徐々に不安が増していく。
(何故だ…? 今までは、次元震を発生させる短時間の犯行だったのに…
 何故、今頃になってこんな大っぴらな方法を取る!? やはり、兵士達は囮で、
 別の遺跡が目標なのか…?)
「クロノ君…」
「探索範囲広げて! それから、転送ポートの準備を!」
「クロノ執務官! 焦らないで!」 リンディの声がブリッジに響く。
「大丈夫です!」
(落ち着け。もう一度考えるんだ。相手の目標…目的…目的?
 そうだ、もし、遺跡の破壊そのものが『目的』ではなく、『手段』だとしたら…?
 僕らはそれを止めなきゃいけない。その為に僕らがいる。その為に、僕らはここに…)
 そこまで考えたところで、クロノは一つの推論に辿り着き…背筋を凍らせた。
「しまった…!!」
 モニター画面に拳を打ち付けるクロノの隣で、エイミィが異変に気付く。
「高レベル転位反応確認! 座標は…あれ? これって…嘘!?」

 やられた…! そう思うクロノの後方に、魔方陣が現れていた。
<> jewel :『Turn over』<>sage<>2006/01/28(土) 19:31:31 ID:g8Pcc7b3<> 【]X】

「ダメだ…やっぱり、連絡が通じない」
「こっちも。別チャンネルに変えてもダメみたい」
 突如途切れたアースラとの通信に、ユーノとなのはは不安を募らせていた。
「どうしよう、ユーノ君…」
「アースラの方でトラブルがあったのかもしれない。急いで戻ろう!
 フェイトやシグナム達が戦ってる以上、自由に動けるのは僕らしかいない」
「うん、レイジングハート、お願い!」
『Ok,master. Barrier Jacket』
 レイジングハートを起動させたなのはが、瞬時に魔導服を纏った。
「ユーノ君!」
「うん。次元転送…行くよ!!」
 緑色の魔方陣に包まれ、二人の姿は、光の中へ。



「…やれやれ。一時はどうなるかと思ったけど、とりあえずは成功かな。
 驚いてくれたかい? 管理局の諸君」
 司令室に現れた魔導師が、笑いながら両手を広げる。
「…ふざけるな。戦艦に直接乗り込んでくる度胸は認めるが、無謀だな」
「君が指揮官か? かなり優秀なようだが…状況が分からない訳じゃあるまい」
 余裕たっぷりに、魔導師は答えた。
 クロノはエイミィをかばう様に立ちふさがると、杖を起動させた。
「おいおい、冗談だろ? ブリッジで戦闘するつもりか? ここは次元航路内、
 ドンパチやらかして船が破損したら、二度と帰れなくなるぞ。
 第一、君の両腕…巧く隠してるが、その呪式、回復魔法だろ? ムリはするもんじゃない」
「…!!」
 狼狽を隠せないクロノ。瞬時に見抜かれたという事実が、自分と相手との
レベルの違いを如実に表していた。リンディまでもが、口を噤む。
「しかし、どんなマジックだ? 各地点の戦闘を見させてもらったが、とても一個小隊の
 レベルとは思えない。念のために傀儡兵を多めに用意して、ポイントを分散させたのは
 正解だったみたいだな」
「…一連の遺跡破壊の犯人は、お前か」
「その通り。こういっては失礼だが、あまり価値のない遺跡を選んだつもりだ。
 意外と難しいんだぞ? 直撃させずに、遺跡だけを破壊するよう、威力を調整するのは。
 しかも犠牲者はおろか、ケガ人すら出さないようにしたんだ」
「全ては僕らを…いや、アースラをおびき寄せるためか」
「アースラ…8番艦か。成る程、君がクロノ・ハラオウンだね。噂どおりの優秀ぶりだ」
「…同じような出来事が2度続けば『偶然』、3度なら『奇跡』…4度目にもなれば、
 誰だって怪しく思うもんさ」
「だが、実際に動いたのは君たちだけだ。管理局の人手不足、利用させてもらったよ」
 司令室内を見渡しながら魔導師は答えた。束ねた長髪が、静かに揺れる。
「目的は何だ」
 杖を構えつつ、クロノが問い詰めた。
「そうだな…とりあえず、別の航路を通って、管理局本局に向かってもらおうか。
 この船にも搭載されてるんだろう? 『アルカンシェル』は」
<> jewel<>sage<>2006/01/28(土) 19:38:30 ID:g8Pcc7b3<>  というワケで、アースラをジャックしてみました☆
 何となく先が読める展開ではございますが(汗
 とりあえずここまでにしときます。宜しければ今後もお読みクダサイm(__)m <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/28(土) 20:01:36 ID:yJtYUyEU<> >>82
とりあえずGJ!

しかしこの後はアレですか?某ネタスレみたいにアルカンシェルで本局大崩壊とかですか?ワクテカ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/29(日) 13:13:28 ID:7aWsrFD7<> ここは本当になのは分を補給できますね、ありがたいことで。 <> 640<>sage<>2006/01/29(日) 15:15:54 ID:+a5lN7Hj<> 「そういえば、お前は行かなかったのだな」
「・・・何が?」

寄り添いあいタオルケットにくるまる二匹の子犬のうち、濃紺の身体のほうが、もう一方の赤毛に話しかけていた。
普通に考えれば奇妙な光景ではあるが、彼らにとってみれば何らおかしなことではない。
二匹はただの犬でなく、主持つ魔導の生物──使い魔(守護獣)なのだから。

「お前の主のことだ。何やら大騒ぎだったと聞くが」

喉を鳴らし身体を摺り寄せてくる赤毛──アルフに対し、言葉を続けるもう一方のザフィーラ。

「みたいだね。でもなんであたしが?」
「いや・・・・お前のことだから主が殿方と出かけるなどとなったら・・・」
「追いかけてって噛み殺すとでも?」
「あ・・・いや、そういうわけではないのだが・・・」

意地悪そうに言うアルフに慌ててフォローを入れようとするも、当の彼女は気にする風もなく。

「んー、フェイトがユーノと出かけて楽しいなら、あたしはそれでいいし。それに」
「?・・・それに?」

「あたしがこうやってあんたといちゃついてんのに、フェイトに行くなとは言えないだろ?」
ザフィーラの首元に自身の身体を擦り付けながら、いたずらっぽい言葉で笑うアルフ。

「・・・そういうものなのか?」
「そー、そういうもん」

僅かにその無表情な顔を朱に染めたザフィーラに、アルフはささやかな満足感を感じ。
目を閉じると再び己が体重を彼に預け、昼寝の夢見の中へと戻っていった。



魔法少女リリカルなのはA’s after 〜買い物に行こう。〜

第5話 おめでとう、ありがとう、ごめんなさい。



「あ、お兄ちゃん」
「───へ?・・・ああ、フェイト」

シャマルの治癒魔法を受け石化から回復したのも束の間。
リンディ、はやて、エイミィというフェイトとなのはを除いたアースラ女性陣三強にこってりと脂を絞られ、
ボロ雑巾状態で部屋から出てきたクロノを、妹が待っていた。

「その、なんだ・・・今日は済まなかったな」

冷静になって自分の行動を思い返すと、なんとも情けない。
私情に流されて暴走するなど、執務官としてあるまじき行為だ。
数ヶ月の減給(というか給料は全て母のリンディが受け取っているので要は小遣いカット)で済んだのは僥倖といえるだろう。
<> 640<>sage<>2006/01/29(日) 15:17:48 ID:+a5lN7Hj<>
「ううん。ちゃんと言っていかなかった私も悪いんだし。・・・少し、驚いたけど」

そりゃあそうだ。わけのわからないことを口走りデバイスを振り回す兄の姿なんて、驚かないほうがおかしい。

「できれば忘れてもらえると嬉しい・・・」
「ふふ、努力はするよ。それで、ね」

後ろに回していた手を前に持ってきて、その中にあるものをクロノへと差し出す。

「これ」

そこにあったのは、小さな青い包み。

「?これは?」
「・・・お祝い、なんだけど・・・・。今日はこれを買いに行ってたの」
「お祝い?」

はて、何か最近祝われるようなことがあっただろうか。

「なるんでしょ?来月付けで執務官から、提督に。だからそのお祝い」
「・・・ああ、昇進のことか」

決まったのは先週だったが、それからの忙しさにかまけて忘れていた。
今思い出さなければおそらく当日まで忘れていただろう。

「私こういうのよくわからなくて。だからユーノに頼んで一緒にきてもらったの」
「・・・・・そういうことだったのか」

事実を知ると、尚のこと恥ずかしい。結局自分の独り相撲だったわけではないか。
さすがにあとであのフェレットもどきにも謝っておかなくては、一応。

「・・・とりあえず、本当に済まなかった。それと、ありがとう」
「うん、喜んでもらえると嬉しいな」

───喜ばないわけがないだろう。大切な妹からの贈り物を。

「・・・と、それじゃ私いかないと」
「ん?ああ、なのは達と約束してるのか?」
「ううん、ユーノに」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

何ですと?何と言ったマイシスター。

「ずっと、言いたいことがあって。待ってもらってるから」
「い、いいいいい言いたいこと?そそそそれは一体な」
「じゃあ、またあとでね。感想聞かせてね」
「あ、フェ・・・!!」

ああ、妹よ。兄の気持ちも察してくれ。
話を聞かずに行ってしまう彼女の後ろ姿に、呆然となってクロノは固まる他なく。
やはりあとで一発ユーノのことは殴っておこうと誓いを新たにして立ち直ったのはしばらく経ってのことだった。

あ、ちなみに包みの中身はシルバーメタリックの時計でした。 <> 640<>sage<>2006/01/29(日) 15:20:44 ID:+a5lN7Hj<>
そして、 肝心のフェイトとユーノだが。



「ごめん、お待たせユーノ。なのは達は?」
「みんなで食堂で話してるよ。・・・今日はお疲れ様」
「うん、ユーノも」

あれだけの騒動のあとだ。さすがにもう気まずさも何もない。
隣に腰掛け、笑いあう二人。

「ほんと、あれには驚いたよ」
「・・・うん。なんというか、迷惑な兄で」
「はは・・・ま、それだけクロノがフェイトのこと大事に思ってるってことだよ」
「そう、かな・・・・?私は最初からみんなに見られてたってことにもちょっとびっくり」
「あー、確かに。なのはの隠蔽魔法、いつの間にあんなにうまくなってたんだろ」

昼間話しにくかった分、他愛もない話が次から次へと溢れ出てくる。
それはいつもどおりの二人の会話で。

「ほんとに今日はありがとう」
「いや、こんなことでよければ全然」
「それに、ごめんなさい」

「・・・・・・え?」

なのに、唐突に。
談笑の最中、フェイトが言った言葉は、謝罪の一言。

「・・・・・」

先ほどまでの笑顔とはうってかわり、彼女は俯き眉根を寄せている。
ユーノには彼女がそんな顔をして謝る理由は、一つしか思い浮かばない。

「・・・・まだ、あの子の言ったこと気にしてるの?」
だとしたら謝られる必要はない。もう過ぎたことなのだし、何よりさっきまで笑って話していたように、
ユーノ自身今日は十分に楽しめたのだから。

「・・・・違う」
「じゃあ、どうして」
「・・・今日、一緒に出かけて、話してて。何度も思い出してたんだ。前になのはから聞いたことを」
「なのはから?」
「うん。・・・どうして行く前に思い出さなかったんだろう」

それは、お互いの家族について話題がでたときのこと。会話の流れでユーノの家族構成について尋ねた際に。

「───ユーノと私は、同じだったのに」

父も母もいない、天涯孤独の身。
そのことをなのはからかいつまんで聞いた時、自分と彼は同じだったんだ、そう思った。生みの親を失い、身寄りのいなくなった自分と。
けれど、自分は変ってしまった。新しい家族を得て。暖かい家庭を持ち。寮で一人生活する彼とは、大きな隔たりが生まれてしまった。
一度だけアルフと遊びに行った彼の部屋を思い出す。彼らしく、整頓された小さな部屋。
強いて言えば、スクライア一族のみんなが家族。その家族からさえ離れ彼は一人で生きているというのに。

「・・・・なのに、私無神経にお兄ちゃんのプレゼント選びなんか頼んで」
<> 640<>sage<>2006/01/29(日) 15:22:14 ID:+a5lN7Hj<> 「そんな」
そんなことを、気にしていたなんて。
「ごめんなさい」
「いいよ、別に」
「でも」
「あのね、フェイト」
もういいというユーノの言葉にも尚自分を責めようとするフェイトの両肩を、ユーノはしっかりと掴んでいた。

「今日僕はすごく楽しかったし、別に傷ついたりなんかしてない。それに」
「・・・・」
「目的を聞いて、もっと嬉しかった。そりゃ、クロノとはいまいちそりが合わないけど、フェイトに協力ができるってことだから」
「え・・・?」
「君の言うとおり、僕には直接、家族と呼べる人はいないから。だから君がクロノやリンディさんと家族になって、本当に嬉しかったんだよ?」
「ユーノ・・・」
「だって、僕にいない分、フェイトにはしっかり家族との時間を味わって欲しいから。それに協力できるのが、嬉しいんだ」

似ていたからこそ、幸せであってほしい。

昼間、目もあわせられず顔を真っ赤に染めていた少年が真剣な目で今、しっかりと自分のことを見つめている。
両肩を支えている彼の手が、暖かかった。そして後悔に満たされていたはずの心もまた、いつの間にか暖かさに満ちていて。

「だから君が自分を責めることなんて、何もないんだ。君がリンディさんやクロノと『家族』でいてくれるのが、僕にも凄く嬉しいことなんだから」
「・・・ほんとに?」
「当たり前だろ」

嘘や強がりなんて言う筈がない。
同じだったからこそ、ユーノはフェイトの今の幸せを喜んでいるのだから。

「さ、なのは達のところに行こう?そんな顔じゃきっとみんな、心配するよ」
「・・・・うん。ありがと、ユーノ」


やっぱり、ユーノはやさしい。兄の持つ不器用なやさしさとはまた違う、彼の得意とする結界と同じような、
全てを暖かく包み込むようなやさしさ。そんなところがきっと大らかななのはのパートナーとして波長が合うのだろう。

彼の差し出す手をとりつつ、フェイトはそう思った。

(やっぱり二人は・・・似合ってるよ。これ以上ないくらい)

───だけど。

(ちょっと・・・悔しいかな)

そんなユーノに好意を向けられているなのはが、うらやましくもあり。

『ひょっとして────・・・フェイトの彼氏?』
昼間の言葉を、もう一度思い出す。
きっと、そうはならない。そうなることはないのだろうが。

(がんばれ、ユーノ)
彼のすぐ後ろをついていきながら心中でつぶやくのは、一人の友としてのエールと。

(・・・私も、がんばるから)
一人の少女として芽生えた、想いだった。
<> 640<>sage<>2006/01/29(日) 15:34:38 ID:+a5lN7Hj<> というわけでなんだか微妙ですが糸冬了。
全5話ですね。この二人、なんだかんだで境遇似てると思うんですよ。
だからこういうのもありかなー・・・と。え?ダメ?orz

>>430
うはwwwキタコレwwwwお気に入りに速攻登録しますた

>>YUKI氏
幼女フェイトに激しく萌えさせて頂きました。
学校編が楽しみですwww

>>jewel氏
アースラ主砲ズドン?GJです
続きに期待。

<> YUKI<>sage<>2006/01/29(日) 17:56:06 ID:5WqSBvI0<> >>640氏 
GJ!!&乙です。
ユーノ優しいなぁ、やっぱ。ユーノっていつもなんか損するけど、こういうタイプが1人居るとそのグループって良い感じになるんだよねぇ。

さて、〜妹〜学校編スタートです <> YUKI〜妹・学校編〜1<>sage<>2006/01/29(日) 17:57:03 ID:5WqSBvI0<> ――――ピピッピピピピピピ――――
「、、、う、、」
健やかな眠りを妨げる雑音

折角の睡眠を邪魔され、寝ぼけた頭に血がまわりはじめる
「朝、、、、か、、、、、、」
目覚まし時計の音にわずらわしさを感じつつも、一日の始まりを自覚する瞬間
何かが違う、、、、、
「なんだ、、、、」

自分の部屋とは天井が違う
それだけじゃない、、、何か、、、、

少しずつ自分の状況を理解する
手に感じる温もり、、、、隣から聞こえる寝息、、、、

!!
一気に上半身を起こし、隣に目をやる
そこには無邪気な寝顔の義妹フェイト

「そうか、、、3人で寝たんだったな」
しっかりと手を握るフェイトから伝わる体温が実に心地よい
「起きたら治ってるといいんだが、、、、」
祈るようにフェイトに話し掛ける
この温もりは心地よいが、いつまでも5歳でいられては困る
これは執務官としてではなく、1人の兄としての願いでもあった

だが、、、
「う〜ん、、、、、、ふぁぁ、、、、あ、、おはよう、お兄ちゃん、、、、、」
まだ駄目だったか、、、落胆を感じつつも表に出さずに返事を返す
「おはよう、フェイト」
「良く眠れたかい?」
「うん。ママとお兄ちゃんの手が温かくて、すっごい眠れたよ!」
「そうか、それは良かった。じゃぁ、顔を洗って、歯を磨きに行かなきゃな」
「はぁ〜い」

元気に布団を飛び出し、洗面所に向かう
<> YUKI〜妹・学校編〜2<>sage<>2006/01/29(日) 17:57:53 ID:5WqSBvI0<>
朝食を食べながら家族の団欒を楽しむ
「フェイトちゃん、今日はお兄ちゃんと一緒に学校に行ってね」
「うん!お兄ちゃんも一緒にお勉強するの!?」
「いや、僕はフェイトを教室の後ろから見学するだけさ」
「じゃぁ、今日はずっと一緒だね!」
「あぁ、そうだよ」
一緒に居られることがよほど嬉しいのか、いつもの登校時間より20分も早く出発しようとするフェイトに引っ張られて家を出る

まずはなのはの家に寄ってなのはと合流する

ピーンポーン

インターホーンの音が住宅街に響く
「な〜の〜は〜ちゃ〜ん。」
フェイトの子供心爆発な呼びかけにクロノも思わず苦笑い、、、

「は〜い」
応答と共にガチャリと玄関の扉が開く
「おはよう。フェイトちゃん、、、、く、、クロノ君、、、」
なのはは思わずたじろいでしまった
そのなのはの肩の上で必死に笑いをこらえるユーノ

(くっくく、、、いいカッコだね。クロノ執務官殿?(笑))
(だまれフェレット,,,,)
念話でユーノがクロノをからかう

「あ、あははは、、、仲良いね、、、フェイトちゃん、クロノ君」
なのはも少し反応に困っている
それもそのはず、フェイトはクロノの右腕にしっかりと抱きつき満面の笑みですから、、、、

「なのは、リンディ艦長から聞いてると思うが、フェイトがこういう状況だから、学校ではフォローを頼む。」
「う、うん。解った。」
(ちょっと羨ましいなぁ、、、、フェイトちゃん)
なのはもまだ9歳、兄の恭也に甘えていい年頃である
こう感じるのも当然なのだが、、、、

「次ははやての家か、、、はぁ、、、反応が今から予想がつくよ」
「あ、あははは、、、、」

そして、、、
「はぁ〜ラブラブやなぁ。」
「はやて、そういう言い方は止めてくれ」
「ええやん。仲良しっちゅうのは大事なことなんよ」


結局はやてとヴォルケンリッターのメンバーにからかわれ、クロノ達は学校へと到着した
「クロノ君、先生にはどうやって説明するの?」
「あぁ、そのことなら問題無い。すでに手は打ってある」
「手?」
「ようは、催眠術みたいなものさ。フェイトは頭を打って軽い記憶喪失になっているって信じ込ませたのさ。僕はその保護役ということでクラスの後ろで様子を見てるよ」
「いややなぁ、じゃぁ、今日の体育の着替えの時もクロノ君は教室の後ろにいるの?」
「な、な、何を言ってるんだ!はやて!僕がそんなことをするわけないだろう!?」
顔を真っ赤にしながら狼狽するクロノ
何故かなのはの顔も少し赤い
<> YUKI〜妹・学校編〜3<>sage<>2006/01/29(日) 17:58:49 ID:5WqSBvI0<>

1時間目 道徳
最初は教育番組を20分ほど見て、その後はみんなでそのテレビの内容について議論する
議論と言っても子供の意見だから他愛も無い内容だが、中々、みな個性のある意見が出て聞いていると面白い

その中でもはやてとなのはの意見は段違いにレベルが高く、その内容を理解できるのは先生とクロノ、フェイト達だけだろう

2時間目 算数
「じゃぁ、この問題わかる人?」
黒板の分数の掛け算と割り算の混ざった問題を先生が指しながら問い掛ける
生徒たちの元気な挙手の掛け声の中に、フェイトも混ざっている

5歳に戻ってしまったフェイトに解けるのか?
先生は疑問に思ったのだろう、フェイトには当てずに別の生徒に当てる
しかし、その生徒は間違ってしまった為、やむを得ずフェイトが答える番になった
「11分の2、あまり3です」
正解だった。
クロノは改めてフェイトの能力の高さを実感すると共に、なぜか嬉しかった
フェイトが正解を言えた事に、先生に誉められているフェイトを見るのが嬉しかった
(僕も兄馬鹿だな・・・)
(やっと気付いたのかい?クロノ,,,)
(居たのか、フェレット)
(フェレットじゃない!)
(今のキミはフェレットだろ?どこが間違ってるんだ)
(たまたま学校に居る時は動物形態になってるだけだ!)

念話でユーノと口論していると気付けば2時間目が終了していた

2時間目と3時間目の間には20分休みが存在し、生徒たちはグラウンドに飛び出していく

最初はクラスメイトもクロノの存在に困惑していたが、子供というのは順応力が高く、すでにクロノに対してこの時間に話し掛ける生徒も出てきた

「クロノさんはフェイトちゃんのお兄ちゃんなんですか?」
「ああ、そうだよ。」
「じゃぁ、お兄さんもフェイトちゃんと同じように頭良いんだぁ。」
等々

だが、その間もフェイトはクロノの腕にぴったりとくっついて離れないが、、、、
「フェイトのブラコンは重症ねぇ〜」
「そうだね、、フェイトちゃん、すっごいしがみついてる」
「なのは、フェイトは魔法で治せないの?」
「う〜ん、、時空管理局の優秀なお医者様でも治せなかったんだって」
「まぁ、でも一時的な幼児退行なら2〜3日で治るんやってゆうてたよ」
アリサ、すずか、なのは、はやて、は遠巻きに二人の様子を見ている
「でも、クロノさんもなんだかまんざらでもないんじゃない?」
「うんうん。なんか結構お似合いの二人だと思うなぁ」
女の子同士の会話はいつの時代も変わらないものらしい
<> YUKI〜妹・学校編〜4<>sage<>2006/01/29(日) 17:59:42 ID:5WqSBvI0<>

3時間目の国語も特に変化は無く、4時間目の音楽ではフェイトの歌声を初めて聞いたクロノは、この様子をアースラで見ているであろうエイミィに後で録画を頼もうと思っていた
兄馬鹿の兆しを確かに見せ始めていた

この4時間目が終わる直前に小さな事件が起きた
授業中、用を足しにトイレに行ったクロノが音楽室に戻ると、教室から泣き声が聞こえた
聞き覚えのある声にクロノが駆け出す
「フェイト!!どうした!!」
ドアを開けて教室に飛び込むと同時に叫ぶクロノ

「お兄ちゃ〜ん!!グスッ、フェイトを置いて行っちゃやぁ〜」
泣きながらクロノにすがりつくフェイト
「お兄さんが教室から出られて少ししたら、フェイトさんがお兄さんが居ないって泣き出してしまって・・・」
先生の説明に少し安心しつつも、フェイトを抱きしめる
「そうか、ごめんな、フェイト。でも、もう大丈夫だから。僕はキミの側から離れたりしないよ。ずっとそばに居る。ずっと一緒だ」
聞き方によってはプロポーズとも取れる内容だ、、、
周りの生徒達は気にしてないが、なのは達は少し顔を赤くしていた


-―――お昼時間--------
「さっきは見させてもらいましたよぉ、クロノさんっ」
「美しい兄妹愛でしたわ」
「と、いうよりも愛の告白みたいやったなぁ」
「あは、あはははははは、、、、」

弁当を広げながらアリサ達からからかわれるクロノ
「い、いや、あれは、、、フェイトを慰めるためにだな。5歳に対しては、優しく語り掛けることが大事だと解ったから、ああ言ったわけで、、」
「で、でもフェイトちゃんが泣き止んでくれて良かった」
「そうねぇ、フェイトったら私たちがそばに居たのに、すっと「お兄ちゃん、お兄ちゃん」って呼びつづけるんだもの」
「よっぽどフェイトちゃんにとってクロノさんは大切な存在なんですわね」

にこやかにリンディ手作りの弁当を食べながら、フェイトはご満悦の様子

<> YUKI〜妹・学校編〜5<>sage<>2006/01/29(日) 18:00:44 ID:5WqSBvI0<> 5時間目 体育
今日の体育は跳び箱らしい。
体育館にはマットと跳び箱が用意され、フェイト達が更衣室から出てきた
フェイトの体操服姿を見るのも初めてだった
「・・・・・・・・」
「、、、、、ちゃん、、、、お兄ちゃん、、、、?」
「ん、、、あ、ああ、何だい?フェイト」
「お兄ちゃんの番だよ?」
「はっ!?」
「僕の、、、番?」
「うん」
なぜかみんなクロノの方を見ている
フェイトの体操服姿に見惚れていたのか、それとも別の感情からか、クロノはぼーっとしたまま何か会話をしていたらしい

「お兄さん、生徒たちに模範演技を見せてあげてもらえませんか?」
先生がクロノにお願いをする
「僕が、、、ですか?」
「はい、お兄さんは非常に運動が得意と、フェイトさんやなのはさん達から伺いまして」
「えっ!、、、ええまぁ。」

思わずなのは達を睨むクロノ
(クロノ君ごめんなさい。つい、私達のお喋りが先生に聞こえちゃったみたいで)
(まぁ、それはいいが、何をすれば良いんだ?)
(とりあえず、ムーンサルト!)
(は、はやて!小学生にそんなの見せても意味無いだろう!それにムーンサルトってなんだ!)
(できひんの?)
(いや、出来るが、みんなが真似したら怪我するだろう?!)
(大丈夫やって.)
「フェイトも見たいよね、クロノさんのムーンサルト!」
「そ、そこだけ声に出して言うなよ、、、、、、、」
「うん。フェイト、お兄ちゃんの跳び箱見たい」
(ま、またそんな顔で,,,,)
上目使いで迫られると断ることができない
クロノの弱点を十分フェイトは熟知していた

「解ったよ。でも、みんなは真似しちゃ駄目だぞ。危険だから」
「はーい!!」
元気な声が体育館に響き、クロノは助走から一気に飛び出す
ロイター版を踏み、飛び跳ねる、跳び箱の最上段に両手をつき、そのまま倒立状態に入り身体を180度回転させ、そのまま後ろ向きに飛び跳ね、膝を抱え込み3回転ほどして着地

ムーンサルトではないが、綺麗なフォームでの演技だった

いっせいに歓声が上がる
「すげぇーーー!」
「人間じゃないよ!」
感想は様々だが、生徒達は喜んでくれたようだ
「有難う御座います。お兄さん!」
「い、いえ、あれで良かったでしょうか?」
「もう、十分です!」
先生も興奮している
<> YUKI〜妹・学校編〜6<>sage<>2006/01/29(日) 18:01:32 ID:5WqSBvI0<> 「お兄ちゃん!カッコよかったよ!」
「あ、ああ、ありがとうフェイト」
「ご褒美あげるね!」
「ご褒美?」
「うん。お兄ちゃん、もっとしゃがんで。」
クロノの腕を引っ張りながらフェイトがクロノの顔を引き寄せる
「ご褒美!、、、、、、ちゅっ、、、、」
クロノのほっぺにチュウ

体育館に嵐が起こる
「うわぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちゅうだ!!ちゅう!!」
悲鳴のような、歓声のような、複雑な声があがる
顔を真っ赤にしたなのは達も何も言えなかった

「な、な、な」
クロノも真っ赤になりながら何かを言おうとするのだが、、、、
「えへへへへ。お兄ちゃんだ〜い好き」
「あ、ふぇ、ふぇ、フェイト、、、、」


結局そのまま授業になるわけも無く
授業終了のチャイムと共に、クロノはフェイトを連れて逃げるようにして家に帰った


「きょ、今日は、、、疲れた、、、、もう、駄目だ、、、」
フェイトのことが嫌いなわけじゃない、むしろその逆だ
無邪気に甘えるようになったフェイトと一緒に居ると、クロノの心の中まで暖かくなる

しかし、今日のほっぺにちゅうはクロノの対応能力をはるかに超える出来事だった
それとともに、クロノには今までに無い感情が生まれていることに気付いた

すやすやとコタツの中で寝ているフェイトの寝顔
妹であるはずのフェイトに対する想い
これは兄としてなのか、それとも、、、

わからない、、、、
どんなに考えても答えが出ない
ため息が止まらない

「何を考えてるんだ、僕は。、、、、、、、、フェイトは僕の大事な妹、それで良いじゃないか」

自分に言い聞かせるようにクロノは結論付けた

「よっと、思ったより軽いな」
コタツからフェイトを出し、抱きかかえながら布団に運ぶ
「こんな小さな身体で闘い続けてきたんだな、そして、、、、これからも、、、、」
その事実に少し心が痛んだ

そして思う。もう少しこのまま、5歳のままで甘えさせてあげたいと、、、、

――――学校編終了――――

次回 エピローグに続く
<> jewel<>sage<>2006/01/29(日) 18:36:10 ID:hsCufnBc<> >>YUKI氏GJ!
 キター! 兄馬鹿最高! てかむしろバカ兄!
 フェイトが異常にカワイイ☆ そして全く違和感がないのがスゴイw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/29(日) 19:30:27 ID:av2Tpxmv<> 何か書きたくなったんだが、ここってシリアス小説もOK? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/29(日) 19:44:32 ID:lVCdqBpm<> >>98
無茶なオリキャラやオリ設定じゃなければ大概受け入れられてるよ。
グロやハードなエロ描写がある時は先に一言入れて欲しいけど。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/29(日) 19:48:03 ID:av2Tpxmv<> >>99
ありがとう。オリキャラやエロは得意じゃないから心配なさそうだ。
何かできたら投下してみることにするよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/29(日) 20:12:48 ID:/5hMtMLR<> >>YUKI氏GJ!!
クロノウラヤマシス
精神的にはかなり疲れそうだがw
>>100
wktk <> 176<>sage<>2006/01/29(日) 22:47:26 ID:osveXv/U<> 6 でも轟沈

am 10:30 シネマックスハート海鳴

 この手に握り締められし紙切れはどんな映画も一つだけ無料で観賞できる権限を持つという。
 御託を並べてみたが、まぁいわゆるタダ券である。
「へぇ〜、映画かぁ」
 隣でエイミィが感嘆の声を上げている。長い艦船生活で映画館とてんで縁がなかった彼女もどうやらご満悦のようだ。
「それでなに見るの?」
「ああ、それはもちろん――」
 視線の先には上映予定の映画のタイトルがずらりと並んでいた。
 今からだとちょうど十一時が開始時間。タイムテーブルの線上には三つが並ぶ。
 ちなみに任務書になぜか書いてあったおかげでどれがどんなジャンルの映画なのか把握済みだ。
「『マイス……」
 ちょっと待て。取りあえず待てクロノ・ハラオウン。
 飛び出しかけた映画のタイトルを喉の奥に押し戻し、今一度この映画を見ていいものかと思案してみる。
 SF映画は確かにエイミィは好きだと思う。この前もフェイトから借りたものがまさにこのような映画だった。
 だがはたしてそれでいいのだろうか。このままこれを選ぶと確実にエイミィが『わかってないなぁ』なんて言うのではないだろうか。
 今日の主役は彼女だ。エスコートする以上彼女のご機嫌を取らなければ流石にまずい。それで機嫌を損ねたら最後、アースラでの自分の立場も危うい。
 どちらといえばこの映画を見ようとしている理由は自分が見たいという欲求の方が明らかに強い。
 以前、自分も少し見させてもらってこの世界の映像の技術水準に思わず下を巻いたくらいなのだ。また見たいと思うのは人として当然だ。
 だからってエイミィにそれを押し付けるのはエゴ以外の何でもない。彼女がこのジャンルを好む確証がないのだ。下手に動くのはリスクが大きすぎる。
 残る二つの映画はロマンスとホラー。やはりここは女性が好むだろう定番が当然だ。
「……これでいいだろ?」
 指差す先には『後で会いに行きます』の文字。地球で、正確には日本でヒット中の恋愛映画らしい。
 これなら文句は言えまい。
 あまり色恋沙汰には興味のないクロノだったがこれも仕方ない。本日二度目の譲歩である。
「……クロノ君、本気?」
 ちょっと待て何でそんな顔をする。
「わかってないなぁ」
 それでその台詞をなぜ言うんだ。
「あのねぇ、せっかくマイスターウォーズのシリーズ完結編がやってるのになんでそんなこと言えるのかなぁ」
 深いため息だった。
 ああ、わかるさ。これでもないくらいに失望されてるのが。
「あのダース・ヴィーターが悪の道に落ちた理由とか、師匠のハヤ・テンとの対決とか見所満載って言うのに」
「エイミィ……君はロマンス映画は嫌いなのか……?」
「嫌いじゃないけど。でもせっかくの映画館なんだからここはSF一択でしょ。大迫力のスクリーン、臨場感たっぷりの5.1chサラウンド――」
 もはやエイミィ言葉届かず。揺れる鼓膜の情報は脳が受け取り一斉拒否。
 クロノの自信は鉄球に押しつぶされたように木っ端微塵のぺしゃんことなった。
<> 176<>sage<>2006/01/29(日) 22:48:43 ID:osveXv/U<>
am 10:49 アースラ艦橋

「クロノ執務官、映画の選択に失敗しました」
 状況報告班の冷静な声に艦橋にいる誰もが大きなため息を吐いた。
 あちゃ〜、と声に出すものも入れば頭を抱えクロノの不出来さに呆れるものもいる。
「なんでそれを選ぶのかしらねぇ……」
 首を振りながら息子の誤算に母もがっかり。思わず肩が落ちた。
「身近にいるなら普通は分かると思いますけど……以外に鈍感なんですね」
「そうね、仕事一辺倒でこういうのには疎いのよ。誰に似たのかしらねぇ」
「まぁ、これで全てが終わったわけではないですから大丈夫ですよ。ベルカの諺に下手な太刀筋数打ちゃ当たるってありますし」
 きっと太刀でも鉄砲でもクロノの命中率は一割を切っている。
 シャマルのフォローも暖簾に腕押し、馬の耳に念仏。
「だといいんだけどねぇ……」
 手元にあったグラスの中で、氷が小気味よい音で崩れ落ちた。
 気まぐれで淹れたアイスコーヒーはすっかり二層に分かれ、底には彼女の甘党の度合いを示す砂糖の山脈が聳えていた。
 口をつける気にもならない。おかわりをする気にもならない。
 リンディ・ハラオウン、息子の失態に失笑。

同時刻 シネマックスハート内第2映写室

『ブレェィィク!! マァァグナムッ!!」 
 シャウトが所狭しと館内駆け巡り、スクリーンに映し出された黒の巨人が拳を撃ち出す。
 医者のような風貌をした巨人は満を持してそれを受け止める。
 だが――
『せぇぇりゃあ!!』
 その隙を突いて頭上からの踵落し。鋭い爪が巨人の体を粉々に引き裂いていく。同時に拳が体をぶち破り哀れ巨人は遥か真下のビルへ吸い込まれるように叩き付けられた。
 まさに破壊の神。主人公の乗る黒光りする巨人は今までの鬱憤を晴らすように敵の巨人を滅多打ちにしていく。
「ねぇ……すずか」
「話しかけないで今良い所だから」
 スクリーンに映る勇姿にすずかは目を輝かせている。いつもおっとりしている彼女とは大違いな様子に隣のアリサはある意味呆然としていた。
「なのは、すずかってあんな子だっけ?」
「あはは……すずかちゃん機械好きだからロボットも好きなんだよ」
 なのはも戸惑いを隠せない。すずかの変貌振りに表情も心なしかひきつっていた。
 クロノたちより先に映画館に着いた四人は二人を待ち伏せするためにこうやって暇な時間を映画鑑賞としゃれ込んでいた。
 最初にクロノが映画にエイミィを連れて行くことは既にフェイト経由でわかっていた。ちょうどタダ券もあったのでそれならと思ったまでは良かったのだが。
「悪くはないんだけどね……」
 半ばすずかに押し切られアリサとなのはとフェイト。
 ファンの声に答え、ついに映画化となった『勇者大王ギャオギャイギャー』。このタイトルがすずかの視界に捉えられた瞬間、運命は決定した。
 握っていたはずの券はいつの間にか窓口に消え、気がつけば席に座らされていた。
『ザムギルガンゴォ〜〜グ――』 
 主人公が呪文を唱える。それは相反する力を融合させるための勇気の言葉。
『ウホッ!!』
 翠に輝く主人公の巨人。両手を組み合わせ莫大な推力で敵に突撃。
『ヴィーーーーーータァ!!』
 装甲を砕き、動力炉を捻り潰し、拳が敵を亡き者に、鉄くずへと変えていく。
 断末魔も叫びも上げられぬまま地に伏す敗北者。真紅の炎と共に戦いの幕は降りる。
「うん!」
 すずかが小さな声と共に拳を握っていた。
 勧善懲悪のロボットアニメは自分だって好きと言われれば好きだ。気持ちがスカッとするのは何時感じても心地よい。
 取りあえず深く考えないでおくことにする。今日は親友の意外な一面を見られた、それでいいではないか。
 納得するための理由を作ってアリサは再び画面に見入った。
「格好いいね、バルディッシュ」
『Yes,sir』
「バルディッシュも今度やってみようか?」
 そしてなのはの隣で魅せられた少女がここに一人。
 近いうちに彼女の愛杖もロボットのようなフォームを手に入れるかもしれない。彼の意思がどうであれ。
『俺様の勇気は死なない!!』
 私の杖としての姿は死ぬかもしれません。 <> 176<>sage<>2006/01/29(日) 22:50:08 ID:osveXv/U<>
合間を縫ってクロノの6話を投下
暴走気味です

みなさん今回もGJ!です
今度のスレもリリカル印良品で飛ばしまくりましょう

>>549
すみませんが前回の一部修正を

5話の翠屋での会話で

「甘い!」
 ぺち、となんとも情けない音と共になのはの額に萎びたレモンが叩き付けられる。怯むなのはの隙を突いてアリサはなのはの両頬に手を伸ばす。



「甘い!」
 褐色の海からサルベージされたレモンが豪速に唸り、ぺちっ、となんとも情けない音を残してなのはの額に着弾する。
 怯むなのは。その隙を突いてさらにアリサはなのはの両頬に手を伸ばす。

に修正お願いします。後から読んでものすごいへんてこな文章になっているのに気がついてしまい
落ち着け自分と

二月になれば私もスピードが上げられると思いますのでそれまでまたしばらく(もう2、3日程度ですが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/30(月) 00:05:35 ID:nu376DXH<> >>104
超GJ!!

ヴィータ大人気だなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/30(月) 00:34:24 ID:XkM1NzBQ<> >>176氏の文章に対するこだわりはすごいな…(゚д゚;) <> 98(暗めのシリアス系なので嫌いな人はスルーで)<>sage<>2006/01/30(月) 06:45:54 ID:Cj0CtSqs<>  <アリサの大切なもの>

「がんばれ、がんばれ!」
頭が出てきた。もう少し。
神様に祈りながら、アリサは母犬を励ます。
「もうすこし!」
ポンッ
そんな音が聞こえた気がした。子犬が産まれたのだ。
「やったー!」
アリサは飛び上がって、夢のような笑顔で喜んだ。
待ちに待った子犬の誕生。アリサの胸は幸せでいっぱいになった。

アリサはその子犬を「ミア」と名付けた。ずっと考えていた名前だった。
親戚のおばさんが、今度子犬が生まれたらアリサにあげるという約束を
してくれてからというもの、アリサはずっとこの日のことを思い描いていた。
忙しい両親は家を空けることが多く、寂しい思いをしていた一人っ子のアリサには、家族が増えることが嬉しくてしょうがなかったのだ。
「ミア…これからよろしくね」
そう言ってアリサは、生まれたてのミアを優しく抱きしめた。
五年前の話である。


キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムと共に、アリサ達三人は教室を出る。
一人は高町なのは、もう一人は月村すずか。二人ともアリサの、大切な大切な親友だ。
「今日はミアちゃんのお話聞かせてくれるんだったよね」
「うん。まだちゃんとお話したことなかったもんね」
「うふふっ。楽しみにしてるよ」
三人はアリサの家へ向かった。

「さて、何からお話しようかな?」
アリサの部屋に着くと、アリサは二人にそう尋ねた。
「うーん、アリサちゃんが一番したいお話!」
なのはが答える。
「わかったわ。じゃあこのお話。あたしが5歳の頃、家族で車で旅行したんだけどね…」
アリサは静かに話し始めた。


一歳になったミアは、体も随分と大きくなり、背丈はアリサの半分ほどになった。
「それじゃミア、いい子にしてるんだよ」
アリサはミアの頭をなでる。今日は旅行に出発する日。
長期休暇が取れたアリサの両親は、アリサを連れて旅行することにしたのだ。
行き先は車で三時間ほどの海。雑誌でも大々的に紹介されるほどの人気スポットだが、夏休みにはまだ少し早いこの時期は、旅行客も少なく快適に過ごせる穴場の時期だ。
去年の誕生日に貰ったお気に入りの帽子をかぶり、準備は万全。
「お嬢様、お父様とお母様がお待ちですぞ」
「はーい」
運転手の鮫島に呼ばれ、アリサは車に乗った。

「くぅーん」
走ること数十分。どこかから何かの鳴き声が聞こえた。
「あら、なにかしら?」
アリサの母親が周りを見回すが、何も見当たらない。
「ん…どうしたのお母さん?」
母親の膝で眠っていたアリサが目を覚ますと、再び鳴き声が聞こえた。
「くぅーんくぅーん」
「あれ、もしかしてミア?」
毎日一緒に過ごしているアリサには聞き慣れた声である。
どうやらアリサと母親が座っている後部座席のさらに後ろの隙間に隠れているようだ。
アリサはミアを抱え上げ、膝の上に乗せた。
「ミアか?どうしてここに」
前の席に座っていた父親が騒ぎに気付き、驚いて振り向いた。 <> 98<>sage<>2006/01/30(月) 06:47:08 ID:Cj0CtSqs<> 「ついてきてしまったのか…。しょうがない、一旦戻るか。」
「だめっ!」
アリサが叫ぶ。
「ミアも行きたかったんだよっ!お願い、連れて行ってあげて!」
「う、うーむ。まあミアはおとなしいし…別にいいか」
必死に訴えるアリサを見て、父親はミアの同行を許した。

青く澄み切った空と同じ色の海は、夏の太陽を浴びて眩しく輝いていた。
海岸にはパラソルが点々と立ち並び、海を賑やかに彩っていた。
スイカ割りの音が響く。楽しげな会話が聞こえる。
海に到着した。
水着に着替えたアリサは、早速浮き輪を持ってミアと一緒に海に飛び込んだ。
水しぶきが上がり小さな虹がかかる。
「あはははっ、楽しいねミア」
浮き輪でプカプカ浮かんでいるアリサの横を、ミアが泳いで周っている。
「ミアはいいわねー。上手に泳げて」
「あら、じゃあ練習する?」
アリサが呟くと、少し遅れてやってきた母親がアリサの手を取ってそう言った。
「え、えぇー!うーん…うん!する!」
「あらびっくりした。てっきり嫌がるかと思ったのに。じゃあ頑張りましょう」
本当はアリサは泳ぎがあまり好きではない。理由は簡単、泳げないからだ。
いつもなら泳ぎの練習は嫌がってやらないのだが、今日は違った。
「ミアに負けたくないからねっ」
そう呟いたアリサは、母親と一緒に泳ぎの練習を始めた。

夜、海の近くの別荘に戻ったアリサ達は、食事を済ませ寝床に着いた。
「今日は楽しかったね、ミア」
同じベッドに入ったミアを抱きかかえながら、そう話しかけた。
「きゃんきゃんっ」
「あははっ、ミアも楽しかった?一緒に来れて良かったね」
「きゃんっ」
その時、開けていた窓から強い風が吹き込んできた。
アリサは帽子を窓の側に置いていたのだが、その風に乗って外に消えてしまった。
「ああっ、あたしの帽子!」
「あらあら、飛んで行っちゃったのね…。また新しいの買ってあげるわよ」
隣で寝ていた母親がアリサを慰める。
「うん…」
楽しかった気分が一転して憂鬱な気分になり、アリサはうつむいて目に涙を溜める。
「くぅーん、くぅーん」
そんなアリサの涙を、ミアは優しく舐め取った。
「うふふ、ミアも元気出してって言ってるわよ。ほら、今日はもう寝ましょう」
「うん…おやすみなさい」
アリサは目を閉じ、眠りに就いた。

起きると、ミアがいなくなっていた。
「あれ…ミア?ミアは?」
部屋中を見回してもどこにも見当たらない。家具の少ない部屋なので隠れる場所は無い。
「おはようアリサ…どうかしたの?」
「お母さん!ミアがいないの!」
「えっ、ミアが?」
ドアは暑いからと開け放して眠っていた。もしかしたら外に行ったのかもしれない。
「探してくる!」
アリサは飛び出した。
「ミアー!どこ行っちゃたの!ミアー!」
別荘の周りを探す。いない。
海岸を端から端まで探す。いない。
近くの道路を探す。いない。
小さな林の中を探し、見慣れない町中を探し、二時間が経った。
夏の暑い日差しの中ずっと探し回っていたアリサは、フラフラになりながら別荘に戻った。
「アリサ!心配したじゃないのどこ行ってたの!」 <> 98<>sage<>2006/01/30(月) 06:47:50 ID:Cj0CtSqs<> 「お母さん…ミア、みつからなかった…」
母親の怒る声も耳に入らず、アリサは母親の胸に倒れ込んだ。
「ああ、アリサ…。大丈夫よ、ミアはきっと無事よ」
それは根拠の無い励ましだと、母親はわかっていた。そしてアリサも。
アリサは泣いた。声が枯れるほど泣いた。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どなたでしょうか」
母親はアリサをそっとベッドに寝かせ、ドアを開いた。
だが誰もいない。
「いたずらかしら…?」
母親は怒ってドアを閉めようとしたが、その瞬間足元を何かが駆け抜け、アリサに飛びついた。
「くぅーん」
「え…もしかしてミア?」
それはいつもの声で、いつものように鳴く、アリサの大切なミアだった。
「ミア!無事だったのね!良かった、本当に良かった…」
アリサはミアを抱きしめた。
「アリサ、これ…」
母親はミアが何かを落としたことに気付き、拾い上げる。
「あっ…!」
それはアリサの大切な帽子だった。
「ミア…ありがとう、ありがとう、ありがとう…」
アリサは再び泣き出した。ミアを抱いて静かに泣いた。とても暖かかった。


「…っと、こんなお話。聞いてくれてありがとね」
「すっごくいいお話だったよ。こっちこそ聞かせてくれてありがとう」
話し終えたアリサに、なのはとすずかがお礼を言う。
「えへへ。まだ他にもあるんだけど、聞いてくれる?」
「もちろん。聞かせてくれるならいくつでも」
アリサは再びミアとの思い出を語り始めた。
一緒に買い物に行ったこと、家のベッドで毎日一緒に寝ていたこと、遠くまで散歩したこと、公園で他の犬とケンカしたこと、風邪を引いたアリサの側にミアがずっといてくれたこと…。
様々な時間が楽しげに語られた。アリサとミアの幸せな時間だ。


「去年…だったよね。ミアが…死んじゃったのは」
すずかがそう切り出した。アリサの話が終わり、しばらく沈黙が続いていた頃だった。
「うん…」
避けられない話である。避けてはいけない話である。
「あの時あたし、二人にすごく迷惑かけたよね。ごめんね」
「ううん、迷惑なんて思ってないよ」
「そうだよ。そんなこと言わないで」
普段は自分の弱さを見せようとしないアリサだが、今日ばかりは違った。
そんなアリサを二人は優しく受け止める。

「あの日、学校を休んで寝込んでたあたしを、二人はお見舞いに来てくれたんだったよね」

―――アリサちゃん…話は鮫島さんから全部聞いたよ。元気出して…なんて簡単には言えないけど…
―――アリサちゃん…大丈夫?
―――なのは、すずか…

「本当は嬉しかった。だけどあたしはその時、自分のことしか考えられなくて」

―――帰ってよ
―――え?
―――帰ってって言ってんのよ!
―――ど、どうしたのアリサちゃん?
―――どうせあたしの気持ちなんてわからないくせに!あたしがどれだけミアのこと好きだったか、何にも知らないくせに!

「あんなこと言った自分を、二人の気持ちを踏みにじるようなことをした自分を、あたしは今でも許せない。だけど、それでも二人はそんなあたしを見捨てなかった。その時だったよね、なのはがああ言ってくれたのは」
<> 98<>sage<>2006/01/30(月) 06:48:26 ID:Cj0CtSqs<> ―――うん…ごめんね。アリサちゃんの気持ち、本当はよくわかってないんだと思う
―――だったら…!
―――でもね、これだけはわかってる。アリサちゃんは私達の大切な友達だってこと。ずっと私達が側にいるから。一人で悲しむことなんてないんだよ、アリサちゃん…

「その言葉を聞いて、あたしの心はなんだかすっごく軽くなった。知らず知らずのうちにあたしは、悲しみを自分の胸の中に押さえ込もうとしてたのかもしれない。なのははそんなあたしを助けてくれた」

―――うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!
―――アリサちゃんっ

「そしてすずかは、我慢できなくなって泣き出したあたしを抱きしめてくれたのよね」

―――昨日、ミアが死んじゃった夜ね、あたしずっとドアの前で待ってたの
―――うん
―――ノックの音を待ってたの。ミアが帰ってくるノックの音を
―――うん
―――でも、いつまでも待ってもノックの音はしなくて、ああ、ミアは本当にいなくなっちゃったんだなぁって…
―――うんっ…
―――そう思うとあたし、あたしっ…うわぁぁぁぁぁぁん!

「それからずっとすずかの胸で泣きつづけてたわね。なのはも手を握ってくれて。すごく暖かかった。…その後だったよね、今日の約束をしたのは」

―――アリサちゃん…良かったら、ミアとの思い出聞かせてくれない?
―――うん…あっ、やっぱり…今日はダメ…
―――あ、ごめんね。そうだよね。まだ無理だよね…
―――来年、ちょうど一年後の今日、その日にお話しさせて。ミアの話は、笑ってしたいから…
―――うん、わかった。待ってる


「あたしが立ち直れたのは、なのはとすずかのおかげだよ。本当にありがとね」
アリサは二人に心からの感謝を捧げる。
「えへへ、どういたしまして。でも私だってアリサにいっぱい助けられてるから、おあいこだよ」
「私も。アリサちゃんにはたくさんお世話になってるもん」
なのはとすずかがそれに応える。
「じゃあ、そろそろ行きますか。ミアのお墓参り」
「うんっ」
「いこっ」
あれから一年経ち、悲しみは暖かさに変わった。もう誰も涙は流さない。
「今日からは、ミアに笑って挨拶できそう」
家を出た三人は、手を繋いで夕暮れの道を歩く。
胸に広がる優しさを、いつまでも忘れないように…。 <> 98<>sage<>2006/01/30(月) 06:49:33 ID:Cj0CtSqs<>

アニメではあまり描かれなかったアリサの一面を想像して書いてみました。
他の皆様が書かれている傑作の数々には到底及びませんが、ご一読頂けたら幸いです。 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/01/30(月) 11:33:25 ID:/eDh/R9j<> 諸事情により自分もトリップつけることにしました。
・・・見ればわかるっつーのorz

>>YUKI氏
フェイトがかわいすぎますよ?悶え死にますよ?むしろ悶え死ねと?

>>176
それなんてガオガ(ry

>>98
アリサかわいいよアリサええ子や・・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/30(月) 17:25:37 ID:XkM1NzBQ<> >>98
全米が泣いた <> YUKI<>sage<>2006/01/30(月) 21:20:12 ID:Fh7zv3dq<> >>98
泣いていいですか?
マジGJ!!
アリサの性格や特徴が良く出ていて最高に可愛いじゃないですか!
お疲れ様でした!

>>640
フェイト、気にいっていただけたでしょうか?
自分の妄想爆発で書いているので、フェイトファンの方々には気を悪くされてやしないかと不安なんですが・・・。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 02:31:29 ID:btYKziqu<> >>640
GJ!
さぁ次は三角関係編d(ry <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 02:42:50 ID:Jy1yVjEO<> >>640 遅レスだがGJ!!
こうくるとはおもわなかた。俺の中の妄想回路があなたの作品のおかげで
ハゲしく回転しています。同じく続きキボン!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 14:42:51 ID:UEK3pDVi<> 今月のメガミマガジンで奇跡を見た!
つーか…ありゃネ申だね。プリシアママンGJ!リニスGJ!エロ杉だ!もうお腹いっぱいですよシャッチョサン!ヤベェ!
アルフ…もう少しアップでも良かったな。皆かなりエロ杉だ!
来月は等身大ポスタ。漫画のカバー付き…三冊買わねば!漫画は4・5冊かう( `∀´) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 14:48:24 ID:abfVxQmp<> >>117
漫画5冊はヤメレ。俺が買えなくなるw <> 98<>sage<>2006/01/31(火) 15:22:50 ID:+RIG+opC<> >>640氏、>>113氏、>>YUKI氏
ありがとうございます。
もしかしたらこのスレに合わない作品かもと思って不安だったんですが、
ありがたい感想を頂けてとても嬉しいです。
これからもアリサを中心にいろいろ書いていければと思っていますので、
どうぞよろしくお願いします。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 16:35:59 ID:UEK3pDVi<> >>118
安心汁!
漏れは福島県の郡山がアジトだから…(´・ω・`) <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/01/31(火) 17:06:32 ID:nV2Y7EqS<> >>115、116両氏
え?続き?・・・・まあそのうちできれば。
ゴッドよ時間と文才を我に与えたまえorz

>>98
次回作期待しております。


続きの代わりといっては何ですが一応新しい話の第一話できたので
投下します。全部で十数話の予定。最終回エピ後の話。


<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/01/31(火) 17:09:38 ID:nV2Y7EqS<> 「──・・・・ッ!!!!」

──────乾いた音が、教室中に響き渡った。

その鋭い音に、ある者は友人と興じていた下らない雑談を中断し。
またある者は今正に教室を後にしようとしていた足を止め、振り返る。

「フェイト・・・ちゃん・・・・?」

彼らの視線が集中するその先では、一人の少女が呆然と打たれた頬を押さえ。

「・・・・・・」

彼女自身の親友──立ち上がり頬を張った際の姿勢のまま無言で肩を震わせる、金色の髪の少女を見上げていた。

「フェ、フェイト・・・?」
「どうしたん・・・?」

金髪の少女は、突然の状況に戸惑いつつも気遣いの声をかけてくる友たちに、答えることなく、ただ、一言。

「・・・ユーノが、可哀想・・・」
と。
未だ打たれた頬を利き手で押さえ、ショックから抜けきれていない横ポニーの少女に、搾り出すように言っただけだった。

「え・・・・?」
「どうして、気付いてあげないの・・・・?」

彼女は多分、怒っていた。そしてそれ以上に、悲しんでいた。
またその右手はきっと、最愛の友を打ったという心の痛みに苛まれていることだろう。

それら全ての負の感情がない交ぜとなって、切なげに眉根を寄せた彼女の表情に表れていた。

「・・・・気付かないのは、残酷だよ・・・・?」
自分の想いを、わかってもらえない。理解してもらえないということはきっと、どんなことよりも辛い。
彼女自身、そのことを経験でよく知っているから。だから、許せなかった。

教室の中はしんと静まりかえり。
誰もが普段物静かな少女のとった予想外の行為に息を飲み、みじろぎひとつもしない。否、することができない。

「・・・・叩いたりして、ごめん」
「あ、ちょっとフェイト!!」

衆人達の見守る中、話は終わりだと言わんばかりに彼女は乱暴に鞄を持ち上げ、踵を返す。
苛立ったような足取りで出て行く少女は、友人やクラスメートの呼び止める声にも振り返ることはなくて。
泣きそうになっているその顔を隠すように俯きながら立ち去っていく。

「あたし、追いかけてくる」

そんなフェイトを慌ただしく追いかけていくアリサの後ろ姿を、呆けたように。
側に残り彼女を気遣ってくれる二人の友人にも、何の反応も返せぬまま。
高町なのはは真っ白になった思考回路でただ、見つめていることしかできなかった────・・・。




魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく二人の絆−

第一話 憂える少女
<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/01/31(火) 17:15:08 ID:nV2Y7EqS<>



(ああやってなのはと喧嘩するのって、はじめてだっけ・・・・)

がらんと静まり返った広いその場所で少女はひとり、物思いに耽っていた。
彼女、フェイト・T・ハラオウンの頭に浮かぶのは、いくつもの重なり合った出来事。

大きな荷物を背負い、顔を赤らめながら自分へと決意を打ち明ける栗色の髪の少年。
言葉と共に少年の見せてくれた、「彼女」に対する想いの表れ。彼の意志の証。
彼を応援するように両手を握り、祝福と喜び、激励と約束の言葉を伝え見送る自分自身の姿。
何も知らない少女の無邪気な微笑みと、その唇の紡ぐ彼女にだけはもう言って欲しくなかった言葉。
湧き上がってきた悲しみと、無神経な彼女に対する憤り、苛立ち。

そして何より、頬を打たれ愕然とする彼女の表情と、自分の手に残った不思議なほどの熱さ。

(喧嘩じゃ、ないか・・・。私が一方的に怒って、なのはを叩いただけだもんね・・・・)

それら全ては絡まりあい、連なるように何度も何度も。
フェイトの心の中に、現れては消えていく。

(・・・ちゃんと、謝らなきゃ・・・・だけど・・・)
(六年、だよ・・・?あの二人が出会って、もう六年。なのに)
(どうしてなのはは、気付かないの・・・?)
(どうして、ユーノの気持ちに・・・・)

思考に埋没するフェイトが、静かに歩いてくる青年の姿に気付くわけもなく。

「・・・何か、あっただろう」
「わっ」
不意に横から差し出されたドリンクの缶に、彼女は驚き顔を上げた。
「・・・艦長」
よく冷えているのであろう、うっすらと表面に汗をかいている青い缶を持って、この船の──アースラ艦長こと、クロノ・ハラオウンが立っていた。
「今は勤務時間外だろ。・・・それに」
缶を渡すとクロノは、彼女の隣にどっかり、と腰を下ろす。勤務時間外だというのに不思議と休憩所には他に誰も居なかったし、来る気配もなかった。
いくらスペースを使っても問題ないはずなのに、兄妹とはいえあえてすぐ横に。
「艦長としてじゃなく、兄として君のことが気にかかったんだからな」
「艦・・・お兄ちゃん・・・」
「ん、それでいい」
小気味良い音とともに缶のプルトップを開ける。
5歳年上の兄はぐいとその中身のコーヒーを煽り、一息ついた。
超甘党である母とは違い、何も入っていないいわゆるブラックコーヒー。彼は基本的にコーヒーはこれしか飲まない。

「・・・やっぱり、わかる?私、変?」
「そりゃあな。何年君の兄貴をやってると思う」
「そっか」

沈んだ心というものは隠していてもやはり、知らず知らず雰囲気に出てしまうものらしい。
フェイトがそういったことが、人一倍下手で露見しやすいタイプだということもあるのだろうが。

「・・・僕や母さんに、言えることか?」
「・・・・わからない」
「そうか・・・。・・・じゃああんまり詮索するのもよくないな・・・。けど」

缶を全て乾してしまうと、彼はすぐ横のくず入れにそれを投げ入れ、立ち上がる。
きっと忙しい艦長の業務の合間を縫って、心配してきてくれたのだろう。
昔から変らぬやさしい兄の心遣いが、フェイトにはありがたかった。

<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/01/31(火) 17:16:26 ID:nV2Y7EqS<>
「ちゃんと解決するんだぞ?自分が納得して、元気になれるような形で」
「・・・うん。ありがとう、お兄ちゃん。忙しいのに」
「いいんだよ。何かあったり、話したくなったりしたら来い。僕は艦長室にいるから」
「わかった」

─────解決、か。

果たして、すんなり解決なんて、できるのだろうか。
思わず小さく溜め息をつくフェイト。

自分と、なのはの関係だけじゃなく。「彼」となのはの関係も。
いつになったらあの子は気付いてくれるのだろう。

理不尽に手をあげた自分のことを、なのはは赦してくれるだろうか。
彼の気持ちを何もわかっていない彼女を、自分は赦すことができるのだろうか。

「ユーノ・・・・私、どうすればいい?」

兄の姿が廊下の向こうに消えるのを見届けてから、天を仰ぎここにはいない少年へと呟く。
それはきっと、おせっかいなのだろうけど。それでも。

「君となのはのために・・・・私、何が出来るのかな・・・?」


<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/01/31(火) 17:34:01 ID:nV2Y7EqS<> だめだこの子たち全然脳内で喧嘩してくれないよorz
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 20:38:49 ID:aEtXi5jb<> 全力全開の魔砲言語で語る子たちだからなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 21:29:41 ID:RyNlrn/G<> 川原に行くしかないんじゃないw
でもって最後は土手で寝そべりながら笑いあうw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/01/31(火) 21:35:02 ID:L+xDnwLU<> これから>>640氏はどう話を繋げていくんだろう…
wkwktktk <> YUKI<>sage<>2006/01/31(火) 23:25:28 ID:ZkGUmvg9<> >>640
新作GJ!
うわ、続きが気になります。
そうかぁ、そうかぁ、フェイト大人になったんだねぇ。
上手く言えないですが、ホント続きが気になります。 <> 名無しさん@ピンキー<>age<>2006/01/31(火) 23:29:58 ID:Qnwaaa+F<>   ∧_∧
`∧( ´∀`)
( ⊂   ⊃
( つ ノ ノ
|(__)_)
(__)_)

アゲ <> jewel<>sage<>2006/02/01(水) 01:58:56 ID:Ps+piILt<> >>98
 感涙。スバラシヒ…
>>640
 6年たっても鈍感ななのはw フェイトはいい子ですよね☆
 続き期待してます <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/01(水) 03:26:50 ID:SO52QR5x<> みなさんの書いた小説、実際にTVアニメ化で
見てみたいかも・・・・駄目ならせめて
ドラマCDで!!けっこう面白くなりそう
な気がします。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/01(水) 05:54:28 ID:ZZWYwN5c<> >>640
本当に書k(ry
しかしGJ!!!!!
言ってみるもんだ…

そしてラストでは本編さながらの喧嘩をするんですねw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/01(水) 08:01:33 ID:UEmblRCo<> 640氏GJ!
いきなり修羅場キタコレ!!6年は長いね。
フェイトが不憫な形で終わってほしくない…。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/01(水) 08:43:32 ID:OBNrDXa0<> >>132
他作品では同人でやってる人もいるみたいだな… <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/01(水) 09:42:54 ID:1oWkr0Pm<> おはようございます640です
一晩よく考えてみるといきなり6年後に飛んでて多少説明不足かな、
という気もしてきたので補足を。

>>122からの話は一応「買い物に〜」の続編という形になっています。
また先日言った「八神家の補完とユーノとなのはの進展」の話(前スレ参照)
でもあるというてめーもう少し自分の力量考えてプロット起こせやと
セルフでつっこみ入れておきたくなる一品だったりしますorz
ただフェイトがはいってきたことで関係がどう転ぶかは修正中、考え中
ではあるんですが。

以上補足という名の言い訳終わりorz <> jewel<>sage<>2006/02/01(水) 14:35:53 ID:3N99rhcV<>  『Turn over』の続き、よーやく書き終えました…
てか、時間かけたわりに、自分で読み返してみると内容薄いよ…orz
 よろしかったらどーぞ。 <> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:37:58 ID:3N99rhcV<> 【]Y】

 爽やかな笑顔とは真逆、男が口にした単語に、ブリッジにいた全員が凍りついた。
 一人、クロノを除いて。
「…残念だな。アースラのアルカンシェルは、ちょうど整備中でね」
 その言葉に、ふぅ…と溜め息をつく魔導師。
「クロノ君…嘘をつくときのポイントってのは、『いかにそれが本当らしく聞こえるか』
 ではなく、相手にいかに『嘘ではないと思わせるか』だ。機転が利くのは認めるが、
 君は随分と正直者のようだね。嘘をつくのに慣れていない。
 それとも、君の後ろにいるオペレーターの彼女に聞いたほうがいいかな?」
「何だと…!」
「クロノ! やめなさい!」
 リンディの声がクロノを制する。
「これが発射キーです。受け取りなさい」
「…本物、でしょうね?」
投げられたキーを受け取ると、魔導師はリンディを見上げた。
「…撃ってみますか?」 リンディが相手を睨み返す。
「ふ…食えない人だねぇ。まぁいいさ。指示に従わなければどうなるかは、
 私の口から言うまでもないようだし」
「クロノ君…」エイミィが小声で囁く。クロノには、答えることができなかった。
(甘かった…僕のミスだ。なぜ、気付かなかった…!)

 艦に残っているのが自分一人ならいい。この魔導師もろとも、消えればいいだけだ。
 …そう、父さんの様に。
でも今はダメだ。局員の仲間がいる。何より、母さんと…エイミィが。
 頼む。奇跡でも運命でも、何だっていいさ。
 代償が僕の命ってのは、ちょっと安いかもしれないけど…
 皆を…彼女を、守ってくれないか?

 クロノが、まだ痛みの残る拳を握り締めたその時。
 ―ブリッジに、桜色の風が一陣。
「A.C.S.起動! エクセリオンバスター!」
「く!」 バキィン! 受け止める魔導師だったが、突撃の勢いに押しこまれる。
 その先には、アースラの転送ポートがあった。
「…エイミィさん!」
「了解!」 瞬時に反応したエイミィがそれを起動させ、2人の姿が消える。
「…艦長!」 「ええ!」
 司令室を飛び出すクロノとリンディ。
「クロノ君!」 背中に、エイミィの声が届く。
 (成る程ね…「運命」ってヤツも、意外と捨てたもんじゃないってことか)
 その声にサムズアップして答えると、クロノは杖を起動させた。
<> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:39:01 ID:3N99rhcV<> 【]Z】

「まったく…まぁだ戦力を隠してたとはね。つくづく、この船の連中には驚かされる」
 転送先のトレーニングルームで、魔導師は服のほこりを払いながら笑った。
「なまじ防御力が高くなると、ついバリアで全てを受けようとしてしまう。悪い癖だよ。
 よけるってことを忘れちゃうんだ。君たちも、覚えておいたほうがいい」
 なのはとユーノを前に、魔導師はまだ余裕たっぷりに言った。

「エクセリオンバスターでも、ほとんどダメージ無し…?」
「大丈夫、とりあえずの目的は達したよ」
 トレーニングルーム内部に張られた二重の結界を見て、ユーノが微笑む。
 その隣に、クロノが駆けつけた。結界の外には、リンディの姿も。
「二人共、よく来てくれた」「うん!」
 頷きあう三人。
「成る程…あの一瞬では、他の世界への強制転送はムリでも、艦内の移動くらいなら
 できる。協奏結界を張れば、船を傷つけることなく戦闘も可能。
 しかも、これだけの結界を一人で維持できるとは…艦長さんもやるじゃない。
 美人なだけじゃなく、魔導師としての腕もたいしたもんだ」
「お世辞は結構。今すぐ武装を解いて、降参しなさい」
「まさか。自由に戦えるようになったのは、こっちも同じなんだ。彼らを倒せば、
 結界を破るのはたやすい。状況はまだこっちに有利さ。君もそう思うだろ? クロノ君。
 見たところ、優秀な部下を抱えてる半面、苦労も多いんじゃないかい?」
「…あいにくだけど、彼女たちの命令違反は、いい方向にしか働いたことがないんだ。
 むしろ歓迎してるくらいさ」
「あはは、成る程! そういう『信頼』の形もあるか。いい指揮官だ」
 場の緊張感におよそ相応しくない、魔導師の爽やかな笑い声。
「いや、すまない。しゃべりすぎるのも悪い癖なんだ。分かってはいるんだがね。
 …さて、そろそろ始めようか。これ以上のんびり話してたら、
 君たちの仲間が戻ってきてしまうからね」
 魔導師の足元に、黄色の魔法陣が展開。
 相手の強烈な魔力に気圧されそうになりながらも、3人は強く身構えた。
<> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:39:44 ID:3N99rhcV<> 【][】

「アクセルシューター!」
 複雑かつ有機的な連動性を伴って、なのはの魔力弾が魔導師へと向かっていく。
 一部をバリアで受け止め、残りを避けようとするも、そこにはクロノの罠が。
「ディレイドバインド!」
「甘い!」 驚く魔導師だが、間一髪でその鎖をかわす。
「ディバイィィン・バスター!!」
 ドォン! なのはの砲撃がフィールドを駆け抜け、魔導師にヒット。
 どうだ!? 3人が着地したのも束の間、煙の中から放たれる3本の槍。
「くっ!」「うわ!」「きゃ!」
 クロノが相殺し、ユーノが避け、なのはが受け止める、3者3様のリアクション。
(クロノ君、お願い!)
「ブレイズキャノン!」 ドォン!
「おおっと!」
 またもや、紙一重でかわされる。砲撃が当たった協奏結界が、その衝撃に震えた。
「今度は、こちらの番ってね!」
 カウンターとばかりに放たれた砲撃が、術後のクロノを襲う。
 バキィィン! 受け止めたのは、ユーノの防御結界だった。
(サンキュー、ユーノ)
(うん、それよりどうする?)
(もう一度行く。バックアップを!)
 話しきるよりも早く、クロノが魔法陣を展開。
「デュランダル、スティンガースナイプ!」『OK,Boss』 
 放った操作弾は相殺されるも、なのはが隙を縫って再び飛び込む。
「レイジングハート、A.C.S.行くよ!」『All right.』
「…その技は、さっき見せてもらったろう!?」
 右手に魔力を収束させると、魔導師は逆に間合いを詰め、真っ向から対峙。
 閃光とともに、二人が弾け飛んだ―
「きゃああ!」
(―互角の威力!? まいったねこりゃ)
「はああああ!」 
 魔導師が体勢を整えきる前に、今度はクロノが接近。
「ち!」 小型の魔力弾を放つも、彼はユーノのバリアに包まれていた。
「何!?」 「ブレイクインパルス!!」
 バキィィ…ドォン!
 今度こそ、捉えた!…はずだった。
<> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:40:31 ID:3N99rhcV<> 【]\】

「危ない危ない。個々のレベルはもとより、コンビネーションは特筆に価するな。
 …だが、決め手に欠ける。特にクロノ君、今の攻撃も合格点だが、魔力の圧縮が
 不十分だ。怪我のせいだろうが、惜しかったな」
(相手のいうとおりだわ…このままでは、あの強固なバリアは破れない。こちらの
 手の内を見せるほど、状況は不利になっていく。しかも、徐々にではあるけど、
 クロノの魔法の精度が落ちてきている…)
 リンディは不安そうに戦況を見つめていた。しかし、今ここで自分が出て行けば、
結界が消える。そうなれば元も子もない…もどかしかった。

 一方、相手の強さを目の当たりにしたなのは達も、同様の不安を抱いていた。
 せめて、フェイトかシグナムのどちらかがいてくれたら…そう思わずには
いられなかった。しかし、彼女達の到着を待って「守り」に入ろうものなら、
逆に数分と持たずに叩き潰される。それ程、相手の実力は本物だった。

「お約束のセリフで申し訳ないんだが、そろそろ終わらせようじゃないか。
 これ以上そっちの戦力が増えるのは困るんでね」
(クロノ君、腕、大丈夫?)
(大丈夫といいたいが、強がってもしょうがないんでね。…ユーノ、色々考えてみたが、
 やっぱり『アレ』しかなさそうだ)
(みたいだね…だとすると、問題は僕達2人か)
(え? え?)
 魔導師の攻撃を何とか最小限に食い止めつつ、3人は念話を続ける。
(なのは、手短に伝えるよ。これから僕とクロノが何とか時間を作る。その間に、
 『スターライトブレイカー』のチャージをお願い)
 そう。魔導師のバリアを破れるとすれば、なのはのスターライトブレイカー以外に
有り得なかった。集束型、しかも自分以外の周囲の魔力をも集積するなのはの切り札。
 しかも先ほどからの戦闘で、結界内には魔力が溢れている。
 しかし、逆転のためには、大きなリスクが伴っていた。
(そんな!? 二人だけでなんて、危ないよ! 私、チャージ中は全然動けないし)
(大丈夫、僕とユーノで必ず守る)
(でもでも! チャージが間に合っても、かわされちゃったら?)
 なのはの単純な質問に、苦笑いの2人。
(それは…確かに…考えてなかったかも…)
(どうやら、やらなきゃならないことが増えたみたいだな、ユーノ)
(おっそろしくハイレベルな要求だけどね…)
(だが、やるしかない。…行くぞ、これがラストチャンスだ!)
 攻撃をかいくぐり、クロノが魔導師へと向かう。
<> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:41:40 ID:3N99rhcV<> 【]]】

 (…ここだ!)
 3人が敵の執拗なアタックを紙一重で防ぐ中、ついにクロノが「一瞬」を見出した。
「スティンガーブレイド、エクスキューションシフト!」
 100本を越える青白い光刃が、魔導師へと向かっていく。
「…圧縮がムリなら拡散、とでも?」
 あっさりと受けきると、魔導師は再度右手に魔力を圧縮させ、クロノを弾き飛ばす!
「うわあああ!」 ドォン!
「クロノ君!!」 なのはが叫ぶも、後頭部を強打したクロノは起き上がらない。
「最後の判断にしては、随分と短絡的だったな」
「…うんん、流石クロノだよ」
 ―ユーノが、魔導師の背中を取っていた。
「何!?」「…封!」
 幾重にも重なった立方体が、魔導師を捕えた。
「なの…は…!」
「レイジングハート、お願い!」 『Starlight Breaker!』
 なのなの杖に、桜色の光が集まり始める。
「成る程、さっきのは目くらましってワケか。やるねぇ」
「…残念、だったね…」 不敵に笑うユーノ。
「…いい目だ。君といい、他の2人といい。決意が…鈍りそうだよ!」
 魔導師が魔力を解き放った。結界が、内部から崩されていく。
「くっ…!」 吹き飛ばされそうになりながらも、ユーノは必死に魔力を注ぎ込む。
「ユーノ君! レイジングハート、急いで!」
「まったく偽善だな。世界を守ろうとでも!?」
 語気を強める魔導師。
「…残念…だけど、僕にはそんな…力は、ないよ…。でも、僕がなのはや…クロノ達を
 守れれば…きっと…みんなが、世界を…」
「ユーノ君っ!!」 『…five…four…three…』
(…まだなの?…早く、早く!)
 涙目になるなのはの眼前で―遂に、結界が砕かれた。
「あと一歩だったな!」 魔導師が、なのはに飛びかかる。
「!!」 ドォン!

「…ホント、あと一歩だったね」
 攻撃を受けたのは、二人の間に割り込んだユーノだった。
「な!?」 「ユーノ君!」 『…zero. Master!』
 全てを出し尽くし、倒れこむ。だが、薄れ行く意識の中、ユーノは確かに聞いた。
(スターライト…!)
 自らの、守るべき人の声を。
<> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:42:19 ID:3N99rhcV<> 【]]T】
         ―アースラ医務室―

(…ん………白い……天井…?)
 ユーノが目を覚ましたのは、医務室のベッドの上だった。
 瞬間、先の戦闘の光景が、思い出そうとするよりも早く脳内を駆け巡る。
「!!」
 緊張で体が強張るも、極度の疲労感が襲ってきた。
「ユーノ君! 良かった…!」
 ユーノの目覚めに気付いたなのはが、笑顔でベッドに駆け寄る。
 それと同時に、ユーノは肩を撫で下ろした。
(そっか…守った…守れた…)
 なのはがここにいる意味。ユーノには、それが何よりも嬉しく、誇らしかった。

「クロノ、は…?」 自分のものとは思えないほど重い体を、半分だけ起こす。
「軽い脳震盪だったんだって。今はもう大丈夫」
「そっか…流石っていうべきなのかな」 言いつつ、ユーノは微笑った。
「…あの魔導師は?」
「…その…ごめん、逃げちゃったの。スターライトブレイカーは直撃させたんだけど、
 その時にリンディさんとクロノ君の協奏結界も一緒に壊れちゃって…
 それで、煙の中で、転位魔法使われて…」
 なのはが、申し訳なさそうにうつむく。
「その…ごめんなさい。ユーノ君とクロノ君が、必死になって守ってくれたのに…
 それなのに… ほんとに、ごめんなさい…」
 彼女は、静かに泣いた。涙の落ちるその手に、ユーノがそっと手を重ねる。
「ううん、なのはが無事で良かった。ほんとに。それに…助けてもらったのは僕の方だし。
 どうもありがとう、なのは」
「……! ユーノ君…!」
 なのはが、ユーノに抱きつく。ありがと…と彼女は涙を溢れさせた。
<> jewel :【Turn over】<>sage<>2006/02/01(水) 14:43:48 ID:3N99rhcV<> 【]]U】

(お〜♪ なんかイイ感じ♪)
(こらアルフ、静かに)
(でも、ホントにいい雰囲気ですね♪)
(そうやね。ユーノ君はナイトや☆)
(チャーンス到来! いけぇユーノ君! キスだぁ!)

 …医務室の外に、ドアを僅かに開いて二人の様子を伺う4人と1匹。
 異様にテンションの高いエイミィを筆頭に、こいぬフォームのアルフを抱きかかえる
フェイト。白衣姿のシャマルに、更には「事情」を聴いて駆けつけた(?)はやて。

「… 何 を や っ て る ん だ 君 達 は」
「主、ここにおられましたか」
 彼女たちの後方に、眉間にしわを寄せた執務官が1名。彼の後ろには、
他のヴォルケンリッターの騎士達が立っていた。
「ちょーっとクロノ君! 今イイトコなんだから!」
「いい加減にしないかエイミィ。ユーノは重傷なんだぞ」
 ガラ、とクロノが問答無用で医務室のドアを開く。

「クロノ君! みんな!」
 ぱあっと笑顔を広げ、なのはがユーノから離れる。
「クロノ、大丈夫?」
「君よりは大分マシだよ。全く、リンカーコアが損傷するまで魔力を消耗するなんて…
 ムチャをする」
「それはお互い様でしょ?」
「ふ、まったくだな」
「みんな、なんか残念そーだね。どしたの?」
 なのはが首をかしげる。エイミィ達が、あはは…と苦しい笑いで答えた。

「…あの人、逃げちゃったんだってね」
「…ああ。でも、アースラは守った。遺跡も損傷なしだし、それに…本局も守れた。
 有難う。今回は、本当に君に助けられた」
「こっちこそ。ありがとう、クロノ。これからも宜しく」
 握手を交わす二人。お互い手に力は入らなかったが、思いは同じだった。
 そう。医務室には、笑い声が溢れている。
 相変わらず、男そっちのけでにぎやかにトークを交わす女性陣の脇で、
 ユーノとクロノの二人も、心から微笑んだ。

           (END)
<> jewel<>sage<>2006/02/01(水) 15:05:32 ID:3N99rhcV<> …とまあ、こんな感じになりました。
 なんと言いますか、どーにも不完全燃焼な感じになっちゃってスミマセンm(__)m

 当初の予定では、各ポイントにAAAクラス以上の敵を配置し、なのは達も戦ってから
駆けつけるというものだったのですが…
「移動されちゃったら、座標指定の転位魔法でアースラ戻れなくなるじゃん!」
というコトに気付いてしまい…上のシナリオになってしまったワケです。
 内容が薄くなっちゃったのはそのせいです。ヴォルケンリッターの戦闘、
もっと書きたかったんだけどなぁ…(TT)

 まぁそのまま書き続けてたとしても、ワタシの力量では
「逆転不可能→本局にアルカンシェル発射ぁ!」となってしまったかもしれませんが(苦笑) <> YUKI<>sage<>2006/02/01(水) 21:42:36 ID:v3BMxU/1<> >>Jewel氏
お疲れ様でした!
ユーノかっこいいですねぇ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/01(水) 23:53:51 ID:qttmBJmU<> 久々に書くかな


捕らわれのフェイトでも




でも今ははやてをイジメタイ <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/02(木) 00:28:29 ID:sjGATHbm<> >>Jewel氏
GJです。ところで、
逃げた魔導師の正体や、本局への攻撃目的は
今後明らかにされるのでしょうか?
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/02(木) 17:50:01 ID:FpjbfYXQ<> >>jewel氏
 激GJ! 萌え・燃え・感動アリ…これで「内容薄い」んか( ̄ロ ̄|||)
 普通にドラマCDとか映画にできるくらいレベル高ぇと思うんですがw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/02(木) 22:14:53 ID:S0vzyX5o<> 最近、百合分が少なくて寂しいのお <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/02(木) 23:03:46 ID:POnAmFfU<> >>150
激しく同意!
ラブラブあまあまなフェイト×なのはが読みたいな〜 <> YUKI<>sage<>2006/02/02(木) 23:11:28 ID:q669hh3L<> コンバンワ。
さてさて、今回の投下で、〜妹〜は終了です。
自分の妄想だけで書きつづけたので、なんかつじつまが合わないかもしれませんが、ご容赦ください。 <> YUKI〜妹〜エピローグ1<>sage<>2006/02/02(木) 23:12:33 ID:q669hh3L<>
淡いオレンジ色の空間
目に映る物全てが鮮やかに光り輝いている
遠くから聞こえる聞き覚えのある声

「・・・・・おはよう」
どこから聞こえるのだろう・・・・
「・・・・・・おはよう」
何度も繰り返されるその言葉は、私の全てを包み込むような・・・・
そんな優しさを秘めていて・・・・・

「やっと気付いてくれた?」
気付けば目の前に、見覚えのある子が立っていた
金髪の長い髪を黒いリボンで二つに分けて
赤みがかった瞳が、悲しみと慈愛を共存させるような・・・・

「あなたは、、、、誰、、、、?」

「わたし?、、、私はあなた、、、、、、、、、、、、、、あなたは私」

「・・・・・・?」
彼女の言う言葉の意味が解らなかった
「もう少し、私を見て、、、、」

そう言う彼女の顔が少し悲しそうに見えて、、、
「、、、、、わ、、、、た、、、、し、、、?」
「そう、、、、。私はあなた、、、、、、正確には、5歳の時のあなた」
「5歳の時の、、、わたし」

「うん。ず〜っと、呼び続けてたんだよ」
「わたし、、、を?、、、あなたが、、、?」
「そう。あなたが眠り続けてる間、ず〜っとね。」

「どうして、、、?」
「だって、あなたはあの日から眠り続けていたんだもん」
「あの、、、日、、、?」
「そう。あなたが初めて1人で任務に当たったあの日」

少しずつ記憶が蘇る
「あ、、、、、、私が1人で、ロストロギアを回収しようとしたあの日、、、」
「うん、、、、。あなたが煙に包まれた時、あなたの心が私を呼び出した」
「私が、、、あなたを、、、。」
「うん、思い出して。あの時を」

私はあの時・・・・・・
「兄さんに呼ばれていた時、、、」
「お兄ちゃんは凄い慌ててたよ」
「かすかに覚えてる。兄さんの暖かい手が、私を抱き起こしてくれたこと」
「そう。その時に私はあなたに呼ばれたの」
「あの時に、、、、」
<> YUKI〜妹〜エピローグ2<>sage<>2006/02/02(木) 23:13:19 ID:q669hh3L<>
「思い出して、、、あなたの心を」
「私は、、、あの時、、、、寂しかった、、、」
「私は、兄さんに誉めてもらいたかった、、、、、、あの暖かい手で、、、」

「だから1人で回収しようとしたんだ?」
「うん、、、、、1人で出来たら、兄さんが誉めてくれると思って、、、、、、でも、、、失敗しちゃって、、、」
「兄さんに嫌われたくなかった、、、、、もう、、、誰かに嫌われたくなかった、、、、う、、ぐす、、、」

「泣かないで、あなたは皆に大切に思われてる、、、、」
「でも、、、、でも、、、、、、」

「プレシア母さんの、、、、、こと、、、?」
「!!、、、、う、、、、うん、、、、、、、」

「あの時のように、、、優しくて、暖かい手で、、、誉めて欲しかった、、、たとえ植え付けられた記憶でも、、、、、私にとっては、、、母さんとの大切な記憶、、、、」
「だから失敗したら嫌われると思って、、、、私を呼び出したんだね、、、5歳の私は、私達の記憶の中で、幸せな時がたくさんあった時だから、、、」
「うん、、、、」

「ねぇ、、、もう少しお兄ちゃんに甘えてみたら、、、?」
「えっ、、?」
「お兄ちゃんも、リンディママも、エイミィさんも、あなたを責めたりしないよ」
「もしあなたが自分のことを責めて落ち込んでいたら、お兄ちゃん達は絶対、あなたを見捨てたりしない。 もっと、甘えて良いんだよ。」

「で、でも、突然言われても、、、」
「大丈夫、あなたが望むようにやってごらん、、、必ずお兄ちゃんは答えてくれるよ」
「私が、、、望むように、、、、?」
「うん。そう、、、」

「もう大丈夫だね、、、、私はこれでさよならするね」
「ま、待って!あなたが居なくなったら、私、、、,私、、、、」
「大丈夫。あなたは私、、、、、、、、、、、私はあなた。私達はいつも一緒。いつも、どんな時でも、、、」

そのまま彼女は消えてしまった、、、
違う、消えたんじゃない、、、私の中に戻っていったんだ、、、、

声が聞こえる
私を呼ぶ声
優しくて、凛とした強さを持った声が、、、、
<> YUKI〜妹〜エピローグ3<>sage<>2006/02/02(木) 23:14:09 ID:q669hh3L<>

「フェイト、、、、、、フェイト、、、、、」
太陽の光が目に刺さる
うっすらと開けた目に向かって、太陽は容赦なく私を攻め立てる

「フェイト、、、、もうお昼だぞ、、、、いくら休みの日でも寝すぎだ」
「う、、、うん、、、、お、、おはおう、、、兄さん、、、」
「おはよう、、、フェイト、、、、、?」
「フェイト、い、,,,今なんて言った?」
「おはよう、、、兄さん」

「!!!フェイト!治ったのか!?、、、、、キ、キミの年齢はわかるか!?」
「うん。私は、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、9歳」
「9歳、、、9歳なんだな?」
「そうよ。兄さん。、、、、、心配かけて、御免なさい、、、、」

!!!!
謝ると同時に、私の視界が塞がれた
突然何が起こったか解らなかった
「そうか、、、良かった、、、ホントに良かった、、、、」
「兄、、、、さん?」
兄さんに抱きしめられると、、、兄さんから伝わる温もりが暖かくて、、、


「ねぇ、兄さん、、、、お願いがあるの、、、、、、」

「お願い?僕にかい、、、、、?」

(あの娘との約束//・・・)
「うん。、、、、、、、、、、、、、、、、お、、、、お、、、お兄ちゃんって呼んでも、、、、、、いい、、、、、?」



数年後・・・・・・
「うぅ〜ん・・・・・・」

「良く晴れたなぁ、、、、、良かった」
大きく屈伸をしながらクロノはある人物を待っていた

タッタッタッ
軽快な足音と共に二つに分かれた金髪が左右に揺れる

「走って来なくても間に合うだろう・・・・」
「だ、だって、、、、、、、早く制服見て欲しかったんだもん、、、、、」
「だったら家から一緒に来ればいいのに」
「そ、それじゃ意味が無い、、、、んだもん、、、(照)」

「解ったよ、、、、しょうがないな、、、じゃ、行こうか、フェイト、、、、、」

「うん、、、、お兄ちゃん、、、、」
繋いだ手からは、クロノの優しい温もりが伝わってきて、、、、、、



――――――――――「只今より、聖祥中学校入学式を開始致します」―――――――


Fin.
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/02(木) 23:31:56 ID:1whuKUEK<> >>YUKI氏乙&GJ!!
某所の影響でクロフェにもはまってきてる俺にはダメージがでかいぜ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/03(金) 01:53:39 ID:c09itBL7<> >>YUKI氏
乙&GJ!
萌え重視かと思いきや良い話に持って行きましたなー <> jewel<>sage<>2006/02/03(金) 06:15:38 ID:RXrUSO+n<> >>YUKI氏
 GJでした! な…なるほど…そーきたかぁ!! って感じです!
 萌え萌えの展開からイイ話に持ってくとは…上手いですね。巧い!

>>148
 続きは書きたい、とは思ってるんですが…
 >>99で指摘があったように、オリキャラを重視しすぎるのはちょっとよくないかも、
 と思ってます。「Silver」の時もそうでしたが、名前付けてないのはそのためなので…
 でも、「完全に悪い人はいない」っていうなのはの世界観は壊したくないですね。
>>149
 完っ全に褒めすぎですw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/03(金) 22:46:12 ID:YyjUU4RW<> >>YUKI氏
GJです! いやこんな方向にいくとは思ってませんでした。

>>jewel氏
>でも、「完全に悪い人はいない」っていうなのはの世界観は壊したくないですね。
すっっっっごく関係ない話ですが、夜天の書を改変したり、SS02の主は悪っぽい…。
まあ、そこまで表舞台に立ってるわけじゃないからいいのかもしれませんが。
それとも、やっぱり事情があったり?
どうでもいい話ごめんなさい。 <> 31<>sage<>2006/02/03(金) 23:03:50 ID:HwLhqLqW<> >jewel氏
GJです! 戦いも熱かったがそれ以上に男二人
の捨て身の時間稼ぎが熱かった。
謎の魔導士もいい感じですね。何となく「不可能を可能に…」
の人を思い出しました。


>YUKI氏
過去の自分に後押しされて新しい一歩を踏み出す…。
よかったです。
<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/04(土) 00:17:45 ID:WXZj5hKo<> 『そっか、じゃあしばらくユーノ君いないんだ』
『うん、なのはに会えないって、残念がってたよ』
『ほほー・・・それはそれは』
『へ?アリサちゃんどうかした?』
『どうかしたじゃないでしょーが。大体あんたねー・・・・』

少女が思い出すのは、そんな些細な日常のやりとり。思い出すだけで顔の綻ぶ、微笑ましい会話。

────そして。

『ユーノが・・・・可哀想・・・』

親友の自分さえも初めて見る、悲しげな憤りの篭った、責めるような彼女の視線。
彼女は一言詫びると、何も言わずただ去っていくだけだった。

それは正に、心安らぐ会話が一転し───苦い記憶に替わった、その瞬間であった。



魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−

第二話 想い、そしてはじまり



(フェイトちゃん・・・・)

どうして、あんな目をしていたんだろう。
一体彼女は、何が言いたかったんだろう。

愛機・レイジングハートエクセリオンを手に、空いた方の手で無意識のうちに打たれた頬を押さえながら、
青く澄み渡った空の下、前日の出来事に想いを馳せていた。

(きっと、私が悪いんだよね・・・)
わからない。何故かはわからないけど、彼女を怒らせてしまったのは自分だ。
結局、そのことを謝ることができぬまま、仲直りすることができぬまま。

そんなヒマもなくなのはは自身に任された仕事を全うすべく、
この週末を辺境の次元にある時空管理局の支局で過ごしていた。

(だけど、なんでだろ・・・フェイトちゃん、どうして・・・?)

<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/04(土) 00:20:01 ID:WXZj5hKo<>
『master?』
「・・・・あ、ごめんレイジングハート。何?」
『Today's master is different from usually. Is the physical condition bad?』(今日の主は変です。体調でも悪いのですか?)
「ううん、そんなことないよ。ありがと、レイジングハート」
『Then, there is no problem.and.....』(それならかまいません。それから)
「?」
『Trainees seem to have ended training』(研修生達が訓練を終えたようです)
「え?」

愛杖の指摘に顔をあげると、なるほど。確かに広い訓練場のあちこちで新人局員達が──なのはの教え子達が──息を切らせ、思い思いに休息をとっている。
・・・その多くは、もう立つのも辛いといった表情で倒れていたり、座り込んでいたりするのだが。

「・・・・・だらしないなぁ」
なのはとしてはけっして無理な量の訓練(あくまでなのは基準で)を課しているつもりはないのだけれど。
まぁ、そんな自分の教え子達の様子に気付かずにフェイトとのことばかり考えていた自分も問題なのだろうが。

「レイジングハート、時間は?」
『It is about 15 another minutes until noon』(正午まで15分といったところです)
「そっか」

少し早いが昼休みにすべきかもしれない。きっとこのままではなのは自身、集中できないだろうし。
教える側の自分がそんな状態のままでは、教わる側の彼らに対しても失礼であろう。

(切り替えなきゃ、ね。頭を冷やさないと)

そう決めるとなのはは訓練生たちに念話で一時間後にまた集合するよう休憩である旨を告げ、
考えすぎて軽く知恵熱を起こしてしまいそうな自分の頭を軽く小突きながら、
彼らを見下ろす形で建造されている支局の建物へと向かい踵を返した。
食堂のほうから漂ってくる良い匂いに、いくぶん気持ちが落ち着いていった。








なのはが自分の務めを果たすべく働いている、そんな頃。
遠く離れた海鳴市にある八神家には、なのはとフェイトをよく知る三人、はやて、すずか、アリサが集まってお茶を飲んでいた。

「・・・・ありゃやっぱり、なのはが悪いわよね」
「うん、悪気があったわけじゃないんだろうけど・・・」
「鈍感すぎやもんなぁ、なのはちゃん」

昨日の、友達二人の喧嘩を目の当たりにした彼女たちはこうして対策会議などと銘打ったお茶会を開催して
話し合い、二人の関係についての打開策を練っているのだが。

「フェイトちゃんにとってなのはちゃんもユーノ君も大切な人やから、やっぱ許せんかったんやろうね」
「ちょっと、あれはね・・・無理ないと思う、あたしも」

なのはの言った無神経な言葉は、フェイトの気持ちを逆撫でするには十分だったのだろう。
彼女の気持ちや立場を含めて今考えてみると、フェイトが怒ったのも頷ける気がする。

「・・・で、肝心の二人はどっちも仕事でいない、と」
「うん。フェイトちゃんはアースラで通常勤務やからまだいいんやけど、なのはちゃんがな・・・」

<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/04(土) 00:21:09 ID:WXZj5hKo<>
支局に飛んでの、2泊3日の出張。本年度入局の訓練生達への特別強化訓練の監督官ということだった。
場所と任務が特殊なだけに、そう簡単に連絡をとったり会いに行ったりするわけにもいかない。

「どうして気付かないかなぁ、なのはも」
「ほんとに。一番フェイトちゃんやユーノくんと付き合い長いの、なのはちゃんなのになぁ」
「それがなのはちゃんのいいところでもあるんだけど・・・」


三人揃って前途多難の溜め息をつく。
今回のことを解決しても、きっと根本の問題がなのはに理解されるのは、大分先であろうと。

「大体フェイトちゃんもフェイトちゃんなんよ。二人のことを変に納得してしまっとるから──・・・お?」
マナーモードにしていた携帯が震えていた。
開けてみるとそこには、「アースラ・クロノ」の文字が。
「ありゃ?」
「誰?」
「クロノくんからや。なんやろ?ちょい、ごめんなー」
フェイトのことか、はたまた仕事のことだろうか。席を外し、通話ボタンを押すはやて。
「はいはい、はやてですー」

深く考えずに出たはやてを見ながら、二人は温くなったお茶をすする。
こうなってしまっては、流石に二人は蚊帳の外だ。
しかし手持ち無沙汰な二人を尻目に、次第にはやての表情と口調は変化していく。

「え?みんなを連れて?なんでまた・・・え?いや、すずかちゃん達と話してただけですけど」
「えっと、ヴィータはお昼寝中やからたたき起こすとして・・・シャマルとシグナムは今日本局に・・・」
「・・・・・なんやて!?それほんま!?はい、わかりました。すぐみんな連れてそっち向かいます。はい、はい、それじゃ」

───そして、電話を切ったはやての表情は先ほどまでの友のことを憂う年頃の女の子のものとは違い。

「ごめん、二人とも。うち出かけなあかんくなってしもた」

すずか達にはあまりみせたことのない、守護騎士達を率い戦う、優秀な歴戦の時空管理局捜査官としての顔になっていた。
「仕事?」
「うん、クロノくんとこ」
「そっか、じゃあフェイトちゃんとも一緒なんだ」
「・・・それだけやない」
「「え?」」

ヴィータを起こしに行くのだろう、ドアの前に立った彼女は、首だけをわずかに二人のほうに向け、告げる。

「事件に巻き込まれたんは・・・・・・ユーノ君や」 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/04(土) 00:25:07 ID:WXZj5hKo<> >>jewel氏、>>YUKI氏
共に乙です。どちらも素敵文章で激しくGJ
続きを期待させる <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/04(土) 00:29:10 ID:WXZj5hKo<> ↑ミスorz
>>jewel氏、>>YUKI氏
共に乙です。どちらも素敵文章で激しくGJ
続きを期待させる >>jewel氏にフェイトに超萌えられるYUKI氏、
良かったです。


・・・と、一件ご報告。
ttp://www.nanoha-fes.net/


・・・・応募しますた
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 00:41:36 ID:fB1sWxV3<> >>640
リアルタイムで遭遇してしましましたw
GJです!
おまけになのフェス参加ですか!?
うわー、買いに行こうかな。遠いけど。

jewel氏 YUKI氏、98氏、176氏、
皆様もGJです!
なんだかエロパロ板なのにエロの割合がどんどん少なくなってますねw
面白いので私的には歓迎ですがw

土日に長編の1話投下できるかもしれません〜 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 02:38:42 ID:/kJBpFk5<> >>640氏GJ!
つ…続きが、続きが気になります!
なのはさん基準の訓練量ワロスwww <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:45:45 ID:14CKFpQr<> 皆様GJ&乙です。やっぱり本当にレベル高いですね。
>>640
心情がひしひしと伝わってくるその文章、尊敬します。
続き楽しみに待ってます。
なのフェスも頑張って下さいませ。
さすがに遠くて行けず残念ですが、応援してます。
>>jewel氏
一気に読んでしまいました。戦闘が熱くて引き込まれますね。
続き期待してます。
>>YUKI氏
セリフの余韻がいい味出してますね。
意外だけれど違和感のない展開、とてもよかったです。
次回作楽しみにしてます。




で、私も1つ書いてみました。
ギャグっぽい日常を書こうと思ったんですがグダグダにorz
なんかもう全然自信ありませんが一応投下してみます。 <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:46:19 ID:14CKFpQr<>  <アリサ、ラブラブに挑戦>

学校が終わり、なのは、フェイト、アリサ、すずかの四人はアリサの家へ向かう。
今日は皆でアリサの家に遊びに行く約束をしていたのだ。
「フェイトはあたしの家に来るの、今日が初めてだったよね?」
「うん。楽しみだよ」
いろいろあって忙しかったフェイトは、今までアリサの家に遊びに行く時間が無かった。
だがそれも落ち着いたので、今日ようやく遊びに行くことになったのだ。
「あっ、うちには犬がたくさんいるんだけど、フェイト大丈夫?」
「うん。犬は好きだよ」
「あはっ、良かった。フェイトも犬好きなんだ」
「アリサちゃんもすごく犬好きなんだよ。家に10匹くらい飼ってるんだって」
すずかがフェイトに説明すると、フェイトは驚いたように言った。
「10匹…。大丈夫かな、私あんまり本物の犬触ったことないから、少し緊張する」
そんなフェイトの手を握って、なのはは明るい声でフェイトを励ます。
「大丈夫大丈夫。アリサちゃんちの犬はみんな優しいから、フェイトちゃんにもきっと懐いてくれるよ」
「そうかな。ならよかった」
フェイトの顔に笑顔が戻った。二人はにこにことお互いを見つめ合う。
「はぁ、まーたこの二人はー」
アリサはそんな二人を見て呆れたような声で言った。
「うふふ、でも仲良しさんでいいじゃない」
すずかがアリサをたしなめる。
もちろんアリサも二人が仲良くしているのはいいことだと思っている。
以前は本気で喧嘩し合うような関係だったことはもう二人から聞いていたし、実際にアリサはその当時の辛そうななのはの様子を知っていた。そしてアリサ自身もそのことで悩んだ。
だから二人が仲良く話しているのを見るととても嬉しい。どちらも大切な友達だ。
それはいいのだが…
「なのはの手、すべすべで気持ちいいね」
「えへっ、そうかなぁ。でもフェイトちゃんもこんなにきれいな手でうらやましいよ」
「ありがとう。あ、なのはは爪もつるつるだ。いいなー」
「フェイトちゃんだって、ほら」
これである。二人のラブラブっぷりはさすがのアリサも手に負えない。
「ま、いいんだけどねー」
しばらく歩くと、四人はアリサの家に到着した。

一足先に家に入ったアリサは皆を迎える。
「はい、みんないらっしゃい」
「おじゃましまーす」
そこへジョンソンがのそのそやってきた。アリサの飼う大型犬である。
「この子がアリサの言ってた犬?かわいい」
フェイトがゆっくりと側に寄る。
「ふふっ、そうでしょー。ジョンソンっていうのよ」
「ジョンソン…さわってもいい?」
「いいわよ」
フェイトがおそるおそる手をのばし、ジョンソンの柔らかな毛並みに触れる。
「あっ…ふわふわ」
ジョンソンはしっぽを振っている。どうやら喜んでいるようだ。
「どう?フェイト。怖くない?」
「うん、ありがとうアリサ。とっても気持ちいいよ」
フェイトはおとなしいジョンソンに安心したのか、両手で抱えるようにジョンソンを撫でた。
すると庭からどんどん犬がやってきて、フェイトの周りを歩き出した。どうやらフェイトに興味津々のようだ。
「あ、みんな集まってきた…。でも思ったより怖くないね。それどころかかわいいよ」
犬に囲まれてフェイトもご満悦。
「あははっ。フェイトちゃん良かったね」
そんなフェイトの幸せそうな様子を見て、なのはも心底嬉しそうだ。
しばらくすると、アリサが
「そろそろあたしの部屋いかない?」
と言った。フェイトはうなずいて名残惜しそうにジョンソン達から手を離す。
フェイトが立ち去ろうとすると、ジョンソンは舌を左右に振った。さようならの意味だろうか。
「うん、みんなまたね」
フェイトがそれに応え、四人はアリサの部屋へ向かった。 <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:46:53 ID:14CKFpQr<>
「じゃあ何してあそぼっか?」
部屋に着いてアリサが問う。
「うーん…そうだ、ここはやっぱりみんなでできるゲームはどうかな?」
なのはがそう提案する。
「賛成ー。あっ、でもフェイトちゃんゲームわかるかな?」
「そっか、フェイトちゃんゲームやったことなかったね。ごめん」
すずかの言葉になのはがしょんぼりする。フェイトはそんななのはを見ると、慌てて言った。
「ううん、大丈夫。説明書みればなんとかなるよ。それにゲームはやってみたかったし」
フェイトはゲームをやったことは無かったが、学校でゲームについて語り合うクラスメイトの楽しそうな声を聞くたび、自分もいつかやってみたいと思っていたのだ。それになのは達とやれば絶対に楽しいという確信もあった。
「そっか、良かったー」
「きっとすぐできるようになるよ。それじゃフェイト、何のゲームやりたい?」
「えっと…じゃあ戦いのゲームがいいかな」
「戦いっていうと格ゲーね。ふふん、負けないわよっ」
そう言うとアリサは、ゲームソフト置き場から一本のゲームを取り出した。
「これこれ。面白いのよねこのゲーム」
パッケージは真っ白で、表には「ストリー闘ファイター」と書いてある。その右下には小さく「(c)samejima」の文字。
いかにも怪しげであるが、誰も気にしていないので特に問題はなさそうだ。
「じゃあ始めるわよー。すずか、テレビつけてっ」
アリサは取り出したディスクをゲーム機に入れ、すずかがテレビのスイッチを付けた。
勇ましい音楽と共にタイトル画面が表示される。
「これがゲーム…」
フェイトは感動して画面に見入っている。アリサが慣れた手つきで操作し、キャラクター選択画面が出た。
「はい、好きなの選んでね」
「え、えとっ、どれがいいかな…」
アリサにコントローラーを渡されると、フェイトは困惑した顔でなのはを見た。
「あはは。強いキャラばっかりだから好きなのでいいんだよ」
「好きなの…えっと、じゃあなのは」
声が小さい。
「えっ?」
「な、なんでもないよ!えっと、なのは選んでくれない?」
「私が選んでいいの?じゃあ、そうだなぁ…この女の人なんていいかも」
「うん、それにする。なのはは?」
「私はこの人にしようかな。いつも使ってる人」
こうして二人のキャラクターは決まった。次はアリサとすずかである。
「すずか先に決める?」
「いいよ、アリサちゃんお先にどうぞ」
「んー、じゃああたしはこの人にしよっかな。動きが面白いのよね」
「じゃあ私は…この人。大きくてかっこいいんだよ」
全員決まったようだ。次の画面に進む。
「せっかく四人いるんだし、チーム戦にしない?」
「さんせー」
アリサの提案になのはが賛成の声を上げ、フェイトとすずかもうなずいて賛成の意を示す。
「じゃあチーム決めのグーパーしよっか。いくわよー、グーとパーでわかれましょっ」
なのはとフェイトはグー。アリサとすずかはパー。このようなチームに決まった。
「がんばろうねフェイトちゃん!」
「うん、一緒にがんばろう」
「よーし、あたしたちも負けないわよー!すずか、用意はいい?」
「うん、大丈夫。がんばろうね」
戦闘開始。
なのはがいきなり大技を繰り出した。わずか0.2秒での高速コマンド入力による全体攻撃だ。
為す術も無くアリサとすずかのゲージが一気に3/4まで減る。
「やったわねーっ!すずか、反撃いくわよ!」
「うん!」
体勢を立て直したアリサキャラが、なのはキャラに向かって突進し攻撃。ガードを破りパンチで少量のダメージ。
その間にすずかキャラは、うろたえるフェイトキャラに向かって中程度の技でダメージを与える。
「フェイトちゃん!大丈夫?」
なのはが心配して声をかける。
「う、うん…どうすればいいのかな」
「えっとね…あーっ、このキャラよくわかんないっ。適当にボタン押してればなんとかなるよ!」 <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:47:27 ID:14CKFpQr<> 「じゃあ、えいっ」
フェイトがボタンを連打。するとキャラクターが光り出した。
「な、なのは。どうしようこれ」
「あ、それは敵のそばでこのボタン押せばいいんだよ」
「わかった」
危険を感じ、アリサキャラとすずかキャラは一歩下がる。だが一瞬後、その背後になのはキャラが着地。
アリサキャラは強烈なキックで前へ飛ばされる。
「あっ、やば!」
そこにはちょうどフェイトキャラがいた。フェイトは言われたとおりボタンを押す。
「アリサちゃん!」
轟音が響き、すずかの叫びも空しくアリサのゲージは1/4にまで減ってしまった。
「な、なかなかやるじゃない。だけど、まだこれからよっ!」
窮地に立たされアリサが本気になった。
「うんっ、やっちゃうよっ!」
すずかもノリノリである。
「すずか、ちょっと聞いて。まず…」
二人はある作戦を練った。アリサキャラは左側、すずかキャラは右側へ移動し好機を待つ。
「どうしよう、なのは」
「そうだなー、じゃあフェイトちゃんはすずかちゃんをやっつけて。私はアリサちゃんを!」
「うん、わかった」
フェイトキャラがすずかキャラに向かっていき、強キック。だがすずかはガードで守る。
すぐさま反撃。ガードの弱いフェイトキャラをフィールドの真ん中に飛ばす。
同じ頃、アリサキャラはなのはキャラの攻撃を受けていた。強弱織り交ぜた絶妙な攻撃にアリサのガードも破れかける。
だが、一瞬の隙をついてなのはキャラの背後にジャンプで移動し投げ技。フィールドの真ん中に飛ばす。
「よし、いくわよすずか!」
「うんっ!」
二人のキャラの体が光る。アリサが素早くコマンドを入力すると、背景の色がガラッと変わり敵の時間が止まった。
同時にすずかもコマンドを入力。すると大きな火の玉が出現し、画面の中心で固まっているなのはとフェイトのキャラを直撃。莫大なダメージを連続で与える。なのはとフェイトのゲージはそれぞれ1/4、1/5にまで減った。
「アリサちゃん時間止めるなんてひどいー」
なのはが嘆いている。
「ふふーん、どうだっ。すずかの必殺技は普通だとすぐ弾かれちゃうからね。完璧な作戦よっ」
「うふふっ、私達勝っちゃうかも」
アリサとすずかが得意げに笑う。
「なのは、あれやろっ」
突然フェイトが言った。
「え、あれって何?」
「さっき少し説明書見てたら書いてあったんだけど…えっと…」
「うん?」
「ラ…」
「ラ?」
「ラ…ラブラブアタック!」
フェイトの声が部屋中に響いた。今度は現実の時間が止まったようだった。
「な…なに?それ…」
アリサが半分固まってフェイトに聞く。
「えっと、一つのコントローラーを二人で持って、重ねた手で出す技…だって」
「そんなのあったの…」
すずかも驚いている。
「ね、なのは。やろっ?」
「うん、いいよ!」
なのはは快諾だ。フェイトは嬉しくなった。
「ありがとう。じゃあ、なのはのコントローラーを一緒に操作するね」
そう言ってフェイトはなのはの背中から重なり、コントローラーを一緒に持った。
二人羽織の状態である。
「あはっ、フェイトちゃんあったかい」
「うん、なのはもあったかいよ。…くすぐったくない?」
「んー、ちょっとだけ。フェイトちゃんの胸のあたりかな?」
「あ、ごめん。もっときつくくっついた方がいいかな」
「うんっ、お願い…あっ、それくらいが丁度いいよ。フェイトちゃん気持ちいいなー」
「私も気持ちいいよ、なのは」 <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:48:00 ID:14CKFpQr<> 固まっていたアリサが
更に固まって
崩れ落ちて
復活した
「もうなんなのこの状況はー!すずか!こうなったらあたしたちもやるわよ!」
「え、えぇー?ラ、ラブラブアタック?」
「そうよラブラブアタックよ!」
そう言ってアリサはすずかの上に乗った。
「アリサちゃん、重いよー」
「あ、ごめん。…でも本当にあったかいのね」
「うん、アリサちゃんもあったかいね」
二人はまんざらでもないようだ。アリサは初めて知ったラブラブの感覚に心がときめく。
フェイトもこんな気持ちなのかな…とアリサは思った。
いつもはまたやってるーとしか思わなかったけど、なかなかいいじゃない…と。
「けっこう気持ちいいのね」
「柔らかくてふわふわだよ、アリサちゃん」
「えへへ、ありがと」
「あっ、アリサちゃんなんだかドキドキしてるよ?背中に胸があたってわかるよ」
「そ、そんなことないわよっ!」
知らず知らずのうちにアリサの胸の鼓動は速さを増していた。何故かドキドキしているのは自分でも感じていた。
ただ、なんとなくそれをすずかに知られるのは恥ずかしかった。頬が赤く染まる。
なんだろうこの気持ち。今まで感じたことのないこの気持ち。体がポカポカあったかい。
なのはやフェイトやすずか、みんなと一緒に過ごす時もあったかい気持ちになることはたくさんあったけど、そういうのとも何か違う。
わからない。わからないけど嫌じゃない。それどころかすごく嬉しくて幸せな気持ち。
アリサはしばらくすずかに重なってボーッとしていた。
「うふふ、アリサちゃんったらどうしたの?」
「えっ…あ!なんでもないなんでもない!んっと…はやく準備しなきゃねっ」
忘れていたが、今は勝負の最中だったのだ。
アリサはコントローラーの上のすずかの手に自分の手を重ねる。ふっと指先同士が軽く触れ合う。
「あっ…」
「ん、どうしたのアリサちゃん?」
思わず声が出てしまった。
「き、気にしないでっ!えっと…じゃあすずか、準備はいい?」
気を取り直して、というか気を落ち着けて、アリサは戦闘準備を整えた。
こうして二組のラブラブパートナーが出来上がった。後は戦うのみである。
「じゃあフェイトちゃん、いくよー!」
「すずか、いくわよー!」
重なり合った手でぐっと力を込める。
そして同時に掛け声を放った。
「「ラブラブアタッーーーク!」」

「んーっ、楽しかったー!」
アリサがぱたっとベッドに寝転んで言った。
「うん。引き分けだったけどすごく面白かった」
フェイトも満足そうに言う。
「フェイトちゃん、初めてなのにすごいね。あんなにできちゃうなんて」
「うん、私もびっくりしちゃった」
「フェイト才能あるわねー。絶対勝てると思ったのになー」
三人に褒められて、フェイトは少し照れながら笑った。
そんなフェイトを見つつ、アリサは小声で呟いた。
「でも、ラブラブって意外といいわね…」
幸い、その言葉は誰にも聞こえなかったようだ。
「お嬢様方、お飲み物はいかがでしょう」
そこへ鮫島が麦茶を持ってやってきた。
「ありがと。そこ置いといて」
アリサの言う通り麦茶をテーブルに置くと、鮫島は静かに部屋を去った。
「じゃあみんな、お茶にしましょうか」
「うん!」
アリサを先頭に四人はテーブルにつき、グラスを手に取る。
と、その時フェイトの手からグラスが滑り落ちた。 <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:48:37 ID:14CKFpQr<> 「あっ!」
驚くフェイト。とっさにつかみ直したためグラスは落ちず割れなかったが、傾いた拍子にその中身のほとんどはフェイトの服に降りかかり、服がビショ濡れになってしまった。
「フェイトちゃん!大丈夫?」
なのはが椅子から立ち上がりフェイトの側に寄る。
「なのは…うん、私は大丈夫だけど、服が濡れちゃった…」
うつむくフェイト。
「あっ、あたし着替え用意するね!なのは、フェイトお願い!」
「私も手伝う!」
フェイトの様子を見ていてくれるようなのはに頼み、アリサとすずかは部屋のタンスで着替えを探し始めた。
そして数分後、二人は着替えを持って戻ってきた。元の椅子に座り着替えを渡す。
「はいフェイト、これに着替えて」
「うん…ありがと」
着替えを受け取り、フェイトがボタンを外し始めた。スルスルと上着を脱ぐ。
「あっ…んっ…」
次にブラウスを脱ごうとする。だがひっかかってうまく脱げないようだ。
「どうしたのフェイトちゃん?」
「なのは…服が濡れてくっついちゃって…うまく脱げない」
フェイトが困ったような目でなのはを見る。
「うーん…そうだ、じゃあ私が手伝ってあげる!」
なのはが言った。
「あ、うん。ありがと。お願い」
フェイトはブラウスから手を離し、なのはの前に立った。
アリサはそれを見ている。
「はいフェイトちゃん、両手を上にあげてー」
フェイトが言われた通りにすると、なのははゆっくりとブラウスを上に引っ張ろうとする。
だがやはり濡れた部分が張り付いて動かない。なのははくっついている部分を確認すると、丁寧にはがし始めた。
「ひゃうんっ」
フェイトが体をくねらせる。
「あっ、くすぐったかった?」
「ん…ちょっと」
「ごめーん。でも我慢できる?ここはがさないと脱げないみたいなの」
「うん…がんばる」
なのはは再び、上に少しずつ引っ張りつつはがし始めた。
フェイトはやはりくすぐったそうだ。必死に我慢しているものの、体が時折ピクピク動く。
アリサはそれを見ている。
「あんっ」「ひゅんっ」「んんっ」
フェイトはかなりくすぐったそうだ。
その時、何気なくテーブルに置いたフェイトの手が、アリサの麦茶入りグラスに直撃した。
「うわっ」
とっさの出来事にアリサは反応することができず、アリサの服はビショビショになってしまった。
「あ、ごめんアリサ…服濡らしちゃったね…ごめん」
フェイトは必死に謝っている。アリサが怒っていると思ったのかもしれない。
だがアリサは別段怒る様子もなく、
「あははっ、いいのいいの。んー、でもあたしも着替えなくっちゃね」
と明るい声で言った。
「私、着替え持ってくるね」
二人のやりとりを見ていたすずかは、自分の役割を感じて立ち上がった。
「うん、おねがいすずか」
しばらくタンスをごそごそ探し、すずかは着替えを持ってきた。
「はいどうぞ」
「ありがと」
アリサはそれを受け取り、服を脱ごうとする。
が、フェイトの時と同じように濡れていてうまく脱げない。
「あーっ、脱げないっ!」
アリサがそう叫ぶと、すずかが言った。
「じゃあ私がお手伝いしようか?」
「えっ!」
その申し出に、アリサは驚いた声を出した。それはアリサの淡い願いだった。
なのはに着替えさせてもらってるフェイトを見ていたアリサは、少し羨ましさを感じていた。
自分も着替えさせてほしいなと、はっきりとではないが心の隅で思っていた。 <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 11:49:10 ID:14CKFpQr<> けれど同時に、これもはっきりとではないが、諦めも持っていた。自分がそんな風に甘えられるわけはないという諦め。
アリサは人に甘えることが苦手だった。それは甘えるのが嫌だというわけではなく、ただ不器用だったのだ。
自分もあんな風に着替えさせてもらったらどんな気持ちだろう。嬉しいのかな?やっぱり恥ずかしいのかな?
そんなことを考えながらフェイトの着替えを見ていた。
だが。
だがまさか自分がそんな状況になるとは思っていなかった。
「い、いいわよー。自分でなんとかするからさっ」
だから思わず断ってしまった。
「そう?それならいいんだけどね」
だけどやっぱり…
「す、すずかっ!」
「ん?」
たまには甘えてみたい。そう思った。
「手伝って…くれない?」
「うん、いいよ!」
すずかがアリサの服を脱がせる。やはり濡れた部分が引っかかるので、少しずつはがしながら。
「アリサちゃん、もうちょっと手高くあげてくれる?」
「こう?」
アリサが腕を上げると、すずかがアリサのわき近くに手を添えた。
「あははっ、くすぐったいよすずかー」
「ふふっ、がまんがまん」
本当はそれほどくすぐったかったわけではない。ちょっとした照れ隠しで言ってみた。
やっぱり人に服を脱がせてもらうのは恥ずかしいかもしれない。でも…なんだかすごく嬉しい。
自然と笑顔がこぼれる。
「すずか…」
「うん?」
「ありがとね」
「ふふ、どういたしまして」
着替えさせてもらうということ。それは嬉しいことでもあり、ちょっぴり恥ずかしいことでもあった。

そんなこんなで、フェイトとアリサの着替えは終わった。二人とも新しい服に着替えてスッキリしたようだ。
「ねえフェイト、なのはに着替えさせてもらってどうだった?」
「なんだか…嬉しかった」
「えへへ、そうなんだ。あたしもすずかに着替えさせてもらって嬉しかったよ」
「アリサもなんだ。…なのは、今度は私がなのはの着替え手伝ってあげるね」
「えっ、フェイトちゃんが?うーん、それは楽しみ!」
「あはっ、じゃあ私はすずかの着替え手伝ってあげなきゃね」
「うふふっ、楽しみにしてるよ」
四人は再びテーブルに座り、夕方になり帰る時までそんな会話を楽しんでいた。
友情が更に深まった一日であった。

fin <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 12:45:36 ID:bA82nR4K<> 和んだ。GJ! <> jewel<>sage<>2006/02/04(土) 14:06:16 ID:12leq8+R<> >>640
 GJ! 続きを!続きを〜!!w
>>98
 友情?に超GJですw (*゚ー゚*) 

>>159>>160 検索してみたのですが、ガ○ダムのキャラクターでしょうか?
  スミマセン、そっちの方は全然分かりません…私は声優さんのファンで
  なのはを見始めたので…「完全に悪い人はいない」っていうのも、
  DVDのインタビューの受け売りです…

 さて、魔導師一人逃がしたせいで続編書くことになったマヌケな私でゴザイマスが…
その前に一つ投下させていただきます。『Turn over』とはほとんど関係ありません
…書きます!ちゃんと書きます! むしろあと3本程ひっぱります(えー
のでゴメンナサイ m(__)m <> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:09:20 ID:12leq8+R<> 【T】

    ―管理局艦船『アースラ』―

「なのは。今度の日曜日、暇かな?」

 ガタッ!
 突然のユーノの申し出に、一瞬、ブリッジの空気がとまった。
(ま、まさか…?)
 はやて・フェイトが、つい今まで自分達と談笑していた少女に目を向ける。
「うん、特に用事はないケド」
「だったら、一緒に遊びに行かない?」
「うん、いいよ♪」
(ど、どーゆーコト!?)
(フェイトちゃんにわからんのに、ウチに分かるわけないやん!)
 笑顔をフリーズさせたまま、フェイトとはやてはかろうじて念話で意思疎通。
(な、なんでいきなり積極的に?)
(わ、わたしにも全然…しかもなのは、速攻でOKしちゃってるし…)
(その辺は、相変わらずやね…)
 普段のユーノからすれば「奇行」と言ってもいいくらいのその行動に、二人はすっかり
混乱してしまっていた。当のユーノは、いつもと同じ爽やかな笑顔を浮かべている。
 その時、司令室のドアが開き、白衣姿のシャマルが入ってきた。
「あらみなさん、お揃いだったんですね」
「あーシャマル、『お疲れ様』ぁ♪」
 笑顔を交し合う、エイミィとシャマル。
(ま、まさか…)
(シャマル…もしかして、ユーノ君になんかしたんか?)
(いーえ、私は特に。この間のケガの診察のついでに、ちょっと『相談』に乗って
 あげただけですよ♪)
 天使のような微笑で、シャマルがさらりと言う。
(さ、さすがヴォルケンリッター参謀…)
(褒めるとこちゃうって、フェイトちゃん…)

 はぁ…と溜め息をつく二人の脇で、主犯エイミィはニヤニヤと笑っていた。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:10:11 ID:12leq8+R<>
【U】

「そうだ! みんなも一緒にいこーよ!」
 ― え ? 何 で す と ?
 何とか落ち着きを取り戻したと思いきや、今度はなのはの言葉が届く。

「あ、ほら、わたしは…その、クロノと本局の方で仕事があって…」
「う、ウチらも、ちょっと用事が入ってて…」
「そーなんだ。ちょっと残念だね、ユーノ君」
「うん。でも、 『 用 事 』 ならしょうがないよ」
 そういって、フェイト達に笑顔をむけるユーノ。
(アカン、やっぱりなのはちゃん、全っ然わかってへん!)
(てゆーか、ユーノのあの笑顔が怖い…)
 ユーノと視線を合わせぬよう注意しながら、なんとか念話をつづける一同。
「はやてー。『用事』って、なんかあったっけ?」
「!」
 ヴィータの無邪気な質問が飛ぶ。
「…ほら、その…アレやよ、アレ」
「あれ?」 主の苦しい言い訳に、首をかしげるヴィータ。
「グレアムさんのところに、ご挨拶に伺うのよね、はやてちゃん?」
(…ヴィータちゃん、話合わせなかったら、明日から1週間おやつ抜きますよ?)
(!?)
シャマルの絶妙すぎるフォローに、再び時が流れ出す。
「そ…そーだったね。すっかり忘れてた」
「そ、そうそう。もう、忘れたらあかんよ、ヴィータ」
 あはは… どう考えても不自然な笑いが、ブリッジを満たしていた。
(クロノがいなくて、本っ当に良かった…)
 生真面目な兄の不在に、肩を撫で下ろすフェイトだった。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:10:57 ID:12leq8+R<>
【V】

     ―2日後、高町家・なのはの部屋―

 女の子が3人集まると、トークは無限に続くもの。
「あ、この服もカワイイかも♪」
「そやねー。なのはちゃんに似合うと思うよ」
「プリーツスカートは、この色が合うかな」
 ローティーン向けのファッション雑誌を片手に、なのは・フェイト・はやての3人も、
かれこれ3時間以上話を続けていた。

「そーいえば、明日、ユーノとどこに遊びに行くの?」
 あくまでもさりげな〜く、フェイトがなのはに尋ねてみる。
「うーんとね、この前オープンした、海鳴テーマパーク」
 チケットを机から取り出し、二人に見せるなのは。
(ベ…ベタやなぁ…ユーノ君も…)
(まぁ、らしいといえばらしいんじゃないかな、うん)

「なのはちゃん、服は何着て行くん?」
「え?」
「カワイイのにしなきゃね、なのは」
「そーやね〜☆ せっかくの『デート』なんやし♪」
「…え? デ、デート!?」
「だって、明日は二人っきりやろ? 立派なデートやん」
「なのは、頑張ってね♪」

―ちょっとからかっただけのつもり、だった。しかし、2人の目の前の親友は…

「………///」
「あれ? なのは?」 「なのはちゃん?」
「…あ、あの、わたし、紅茶のおかわり、もらってくるから!」
 急に立ち上がると、なのはは部屋を出て、駆け足で階段を下りていった。
 取り残された二人が、顔を見合わせる。
「今の、ひょっとして…」
「…うん。わたしもそう思う」
「た、大変や! こーしてられへん!」
 同時に立ち上がる二人。
 ひょっとしたら、ひょっとするかも…

 そんな思いを胸に、テンションが上がるフェイトとはやてだった。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:11:43 ID:12leq8+R<>
【W】

     ―日曜AM10:02、海鳴テーマパーク―

「なのは!」
 近づいてくる少女に、軽く手を挙げて挨拶するユーノ。
「お、おはよ、ユーノ君…」
一方、なのははうつむき気味に応じる。
「早いね。待ち合わせ、10時半だったのに」
「あの、遅れちゃいけないと思って…」
「そっか、ありがと。あ、その服って見たことないかも」
「こ、これは昨日、フェイトちゃんとはやてちゃんに…」
 強引にショッピングに連れていかれて、それで…と言うつもりが、言葉が出てこない。
「似合ってるよ、うん。可愛い」
「……! ///」
 なのはの頬が、桜色に染まった。


「お〜♪ ユーノ君、最高の先制攻撃ぃ!」
「よかったですねぇ、なのはちゃん♪」
「当たり前やシャマル。ウチらがフルコーディネートしたんやから☆」
「…というか…いいのかな、こんな覗き見とかしちゃったりして」
「な〜に言ってんのさフェイト! アタシらがちゃーんと見届けてあげなきゃ!」
「…主、なぜ私まで一緒に…」
「はいはい、ザフィーラも静かに。なんかあった時、男のヒトがおったほうが
 何かと安心やろ?」
 ―いつもの(?)メンバーが、遠くから2人を見つめていた。
 6人の腕には、魔力を極度に落とすリングがつけられている。
「これ、ホントに大丈夫なのかい?」
「当ったり前! 時空管理局の『てくのろじぃ』をもってすれば、朝飯前よぉ♪」
「…ほんとは、この世界の魔力バランスに影響をもたらさない為のアイテムなんだよね…」
 若干呆れ顔のフェイト。
「しょーがないでしょフェイトちゃん。あの二人、特にユーノ君に広域探査されたら、
 どんなに魔力抑えてても、確実にバレちゃうんだから」
 一方、エイミィには反省の色は全くナシ。
「それに…クロノにも、あんなことして…」
「まぁ…それはあれや、後でみんなで叱られよ♪」
 はやてがニコニコと笑って言った。


   ―同時刻、艦船『アースラ』トレーニングルーム―

「…まっっったく、どーゆーつもりなんだ彼女達は…」
 言いつつ、クロノは深々と溜め息をついた。彼の周囲には、光が幾重にも重なっている。
 …ザフィーラ・アルフ・シャマルの結界に、フェイト・はやてのバインドだった。
「君も君だぞ、シグナム…」
「すみません、執務官。ですが私にとって、主の命令は絶対ですので」
 チャキ、という乾いた剣の音とともに、傍らに立つシグナムが答える。
『逃げ出そうとしたらヨロシクな、シグナム♪』
「はぁ…」
 はやての言葉を思い返し、再び溜め息をつくクロノ。

「時空管理局って…ダメかもしんない…」
 一人司令室に残り、モニターを眺めていたヴィータが、呆れ顔で呟いた。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:12:26 ID:12leq8+R<>
【X】
      ―海鳴テーマパーク、AM10:48―

「…す、凄かったね…」
「だ、大丈夫ユーノ君?」
 軽い眩暈をおぼえるユーノに、なのはが微笑みかける。
「『ジェットコースター』だっけ? 外から見てるときはそんなに速くないと思ったのに、
 いざ乗ってみると…あはは…」
「ユーノ君、ジェットコースター初めてなんだ?」
「うん。僕のいた世界には、こういうのはなかったからね」
「でも、普段魔法で空飛んでるのに…」
「あれは、スピードも方向も自分の意思だからね。これはなんていうか…暴走って感じ」
 着ぐるみのキャラクター達の間を通りながら、二人は言葉を交わす。


(…だんだん、なのはの緊張が解けてきたかな?)
(そーみたいやね。でも、まだ油断はでけへん)
(主…何故我々が、このような格好を…?)
(シャラーップザフィーラ! せっかくリーゼ達から借りてきた変装用のデバイス、
 ここで使わずしていつ使う!?)
(エイミィの言うとおりよザフィーラ。オオカミの着ぐるみ、似合ってるじゃない♪
 とってもカワイイわよ。ねぇ、アルフ?)
(フン! どーだかね!?)
(…そして、何故お前はそんなに怒っているのだ)
(うっさい! 知るか!)
 着ぐるみを着たまま、そっぽを向くもう一匹のファンシーなオオカミ。
(あちゃ〜…逆にこっちは険悪になってるし)
(せっかくアルフにも新しい服用意したのに、ザフィーラさん完全スルーだもんね…)
(ごめん…ウチの教育がなっとらんかった…後でフォローしよ)
(そうですね。今は、あの二人を追いかけないと)
 グッズショップの脇でデバイスを解除すると、一同は巧みに人ごみに紛れ込む。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:13:05 ID:12leq8+R<>
【Y】

「うわ…1時間待ちだって。どうしよっか?」
 人気のアトラクションに並ぶ長蛇の列。最後尾の係員が抱えるプレートを見て、
ユーノが驚いた。
「こんなに混むものなの?」
「このアトラクション、この前テレビでも注目されてたから…」
 行列に加わるのをためらう二人。

(さぁ〜これは予期せぬ展開か!? どーするユーノ君!)
(あのさエイミィ…ずーっと言おうと思ってたんだけど、これって完全に盗聴だよね…)
(フェイトちゃん甘い! 親友の恋を応援するのは、当然の努めでしょ!)
 通信無線&音声傍受の携帯デバイスを片手に、盛り上がるエイミィ。
『並ぶ? それとも、疲れるからやめとこっか?』
『私は、どっちでも…ユーノ君は?』
『僕は、待ってる間、なのはと話せれば十分楽しいけど…』
『………///』
『なのは…?』
(おーっと! 再びユーノ君、直球勝負に出たぁ! 解説のシャマルさん、どーでしょう?)
(はぁい、とっても有効だと思います♪)
(でもあのセリフ…普通の男の子に言われたら、ちょっと引くかも…)
(ユーノ君の爽やかキャラが為せる特権や♪)
(それを無意識でやってる辺りが、ユーノ君の長所なんだよねぇ〜♪)
『…やっぱり、やめとこっか。えーっと…あ、ここにグッズの販売店があるみたい。
 行ってみようよ』
『う、うん………あ』
 パンフレットをたたみ、なのはの手を取るユーノ。
 手をつないだまま、二人は別の向きに歩いていく。

(出たぁ! ユーノ選手、ここで一気に攻める〜!)
 俄然テンションが上がる、時空管理局執務官補佐。
(こ…これはホントに、もしかするかも…)
 他の魔導師達も、予想を超える展開にえもいわれぬ高揚感を抱いていた。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 14:13:46 ID:12leq8+R<>
【Z】

 一方、偵察部隊から離れること約100メートル。
「…ありえない」
 オープンカフェの一角で頬を膨らませながら、ジュースを口にするアルフがいた。
「なーんでアタシが、あの無口オオカミと一緒に置いてかれなきゃなんないのサ!」
 ドン!と荒っぽくコップをテーブルに置く。
「…仕方あるまい。我らの主が命じられたのだ。それに従うのは、我らの務め」
「…アンタ、いるならいるって言いなさいよ」
「たった今戻ったところだ。先刻から、何をそんなに腹を立てている?」
「別にぃ。どーせアンタに言ったところでムダだし」
「そうか」
 特に取り乱すこともなく、アルフの向かいの席に座るザフィーラ。
 そんな彼の両手には…フライドチキン。
「あれ、アンタそれ…」
「ん? 先程、主に一つ買っていただいたものが、意外に旨かったのでな。
 新しく買ってきた。良かったら、食べるといい」
「あ、ありがと…」
 アルフは一つを受け取り、小さくかじる。
「それにしても、ここにいる人間たちは妙だな。我らのような耳や尻尾を、
 多くのものが身につけている。しかも一目見て偽物とわかるものをだ。理解できん」
「まぁ、いいんじゃない? おかげでアタシ達も、隠す必要なく堂々としてられるし」
 周囲を見回すザフィーラに、アルフがもぐもぐしながら答える。

「しかし、何か特別な意図でもあるのか? お前も、普段とは違う服を着ているようだし」
 え? と口に向かう手を止めるアルフ。
「アンタ、気付いてたの!?」
「当たり前だろう。よく散歩に付き合ってもらっているからな」
「じゃ、じゃあなんか言いなさいよ!」
「…似たようなことを、先程主もおっしゃっていたが…何を言えばいいのだ?」
 ザフィーラが真顔で答える。
「そ、それは…その、最初にユーノがなのはに言ったみたいに、『可愛い』とか、
 『似合ってる』とか…」
「何だ、そんなことでよかったのか?」
「『そんなコト』ってアンタねぇ…!」
(…このヤロウ、一発ぶん殴ったろーか?)
 アルフが、思わず魔力制御のリングを外そうとした瞬間。
「―わざわざ、分かりきっていることを口にするまでもないと思ったのでな」
 ―え? ザフィーラの呟きに、再度動きを止める。
「それって、つまり… ///」
「ああ。『可愛いらしい』という表現はあまり相応しくないが、よく似合っている」

(―アルフには、もうちょっと、大人っぽい服が似合うと思うよ)

 昨日のフェイトの言葉が頭をよぎった。
(なんだ…コイツ…ちゃんと分かってんじゃん…)
 目の前のオオカミオトコは、相変わらず真面目な顔でフライドチキンを食べている。
「どうした? 食べないのか?」
「あ、うん… ///」
 同じようにそれを口にするアルフだったが、既に嬉しさで味覚が吹っ飛んでいた。
<> jewel<>sage<>2006/02/04(土) 14:20:42 ID:12leq8+R<>  はい、とりあえず約半分です。
 ユーノ君、ここまではうまくいってます。ここまではね…(`ー´) クククッ
 だが世の中はそう上手くいかないのさ。続きはこれから書くのさ(最悪) <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 14:23:42 ID:Y8sVSijQ<> >>jewel氏
うわ、バイト前にまたリアルタイムで遭遇w
なんてツイているんだろう。
珍しく積極的なユーノ君GJです!鈍感なのはも正攻法で来られる分にはやっぱり弱いんですねw
ニヤニヤしながら読んでましたw
というかl、アルフとザフィーラのカップル、最近良く見るなあw
続きも楽しみにさせていただいてます!がんばってください。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 14:33:24 ID:gOZ3ycsF<> >>jewel氏
読ませてもらいました〜。
珍しく照れるなのはも良かったのですが、
ザフィーラかぁいいよザフィーラ <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 14:36:24 ID:Y8sVSijQ<> せっかくなのでバイトに行く前に投下さていただきます。
タイトルは未定。ユーノ君メインの長編(中篇くらいになるかもしれませんが)です
オリジナルキャラがでてきますので、そういったものが嫌いな方はご注意ください。 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 14:37:19 ID:Y8sVSijQ<> 1.そんな始まり

 清潔な白い部屋に端末を操作する音が響いていた。
 ミッドチルダの魔道技術に関する研究室。その一室で、男は黙々と作業を続けていた。
 椅子に座るその背筋はピシッと伸び、身を包む白衣をシワ一つなく着込んでいる、いかにも真面目そうなイメージの男だった。
 座っているために正確な慎重はわからないが、かなりの長身だ。そのきりっとした瞳は、エリートビジネスマンを思わせる雰囲気を漂わせている。
 座る男の目の前には何もない空間に画面が開かれていた。そこに映っているのは彼らだけにしかわからない特殊なプログラム言語。
 画面で踊る文字と男が格闘していると、背後のドアがスライドして開いた。
 端末を操作する手が止まる。振り返ると、同じく白衣を着た男がこの部屋には不似合いな古びた本を山のように抱えて立っていた。
 その詰まれた本の高さに男は目を見張った。

「レーゲン、ただいまー」
「戻ったか、フィーゲル。首尾は……聞くまでもないようだな」

 フィーゲルと呼ばれた男は自分の目の高さまで詰まれた本を自分の机に置くと、袖で額の汗をぬぐった。
 こちらもレーゲンと呼ばれた男と同じくらいの長身だが。無駄のない体つきをしているレーゲンと違い、こちらはひょろりとした印象を受ける。
 同じように着込んだ白衣も清潔ではあるがよれよれで、目じりの下がった顔つきのせいで冴えない優男といった風体だった。
 しかし、今その瞳には宝物を見つけた子供のように輝いている。

「いや、新しく入った無限書庫の司書の子は凄いね! 見てくれ、この資料の山!
 いくら前に頼んでおいたとは言え、たったの1日でこれだけの資料を集めてくれたなんて信じられない!」

 両手を広げて驚きをアピールする相棒の大げさなしぐさに呆れつつも、その成果にはレーゲンも驚いていた。
 無限書庫は名のとおり無限に近い莫大な蔵書が未整理のまま眠っている。
 探せば目的のものは必ず見つかる反面、それを探すのにかかる時間も莫大なものとなってしまう。
 下手をすれば、というより普通は別のところで探した方が結果的に早く見つかることの方が多い。
 今回は探す対象が対象だったので、ほとんど駄目もとで頼んでみたのだが、まさかここまで上手くいくとは。

「ほら、僕らがアレの存在を知ったあの闇の書事件、司書の子がちょうどアレの調査をしていたらしくてね。探す手間はほとんどなかったそうなんだ。
 おかげでこれだけの資料を一晩でそろえられたって言うんだから、本当に僕らはついてるよ」

 その意見にはまったく同感だった。常に最悪の事態を想定して動いているだけに、その思いは深い。

「まあ、とはいえさすがにロストロギアの資料だけあってすぐにあの子に転用する、って訳にはいかなさそうだけどね。
 パラパラと流し読みしてみたけど、さすがにソースコードそのものまでは載ってなさそうだ」
「問題ない。どうせ載っていたところで今の俺たちの技術では再現不可能だろう。ましてや応用など何をいわんや、だ。参考になれば御の字だろう」

 それもそうだとフィーゲルは肩をすくめた。しかし、その笑顔は明るい。
 それはレーゲンも同じだった。
 大して期待もしていなかったものが予想以上の成果を挙げられたのだ。自分達には追い風が吹いている、そう感じるのには十分だった。

「とりあえず、さっきまで修正しておいたプログラムができたからアレを貸せ。もう一度再調整する」
「ん、分かった。えっと……」

 そうしてフィーゲルは白衣のポケットをまさぐるが、なかなか目的のものは出てこない。
 レーゲンは先程までの昂揚感も忘れてジト目で相棒の様子を眺めた。
 彼と相棒との付き合いは長い。こういう時彼がどんな大ポカをやらかすかは身にしみてよく知っていた。

「……お前……まさか……」

 口調どおり厳しい性格の相棒の冷たい視線にさらされて、どこか人形じみた動きで頭に手を置く。
 そのまま、フィーゲルは乾いた笑いをこぼした。

「……無限書庫に、落としてきたみたい」

 レーゲンは椅子の背にもたれて天井を見上げた。
 白い蛍光灯が辺りを照らしていた。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 14:38:32 ID:Y8sVSijQ<> 「……あれ。もうこんな時間か」

 時空管理局本局、無限書庫。
 あたり一面を本棚に囲まれた空間で司書としての仕事に没頭していたユーノは、終業時間をとっくに過ぎていることに気が付いた。

「さすがにこれ以上は限界かなあ……」

 周りの本の山を見渡しながら一人ごちる。
 彼の周りには数十冊と言う数の書籍が浮かび、その内の数冊が開かれていた。
 ユーノの今日一日の仕事の成果だ。

 首をかしげると、9歳とは思えないゴキゴキと関節がなる音がした。
 まあ、一日中本を検索整理していれば無理もない話ではある。

 闇の書事件を通じて評判が広まったのか、ユーノが無限書庫の司書に就任して以来、資料の検索依頼が山のように押し寄せる日々が続いている。
 最優先となる回収対象のロストロギアの資料を初めとして、魔道技術の資料やロストロギアが生産されていた時代の資料など、その仕事にいとまはない。
 こうした仕事はスクライア族のユーノにとっては望むところではあったが、その量にはさすがに身体が悲鳴を上げている。
 それに何より。

「最近、なのは達にあってないしなあ……」

 誰もいないことを確認してから、ユーノは素直な気持ちを口にした。
 司書に就任して以来、仕事に忙殺される形でなのはの世界にはもちろん、クロノ達アースラの面々とも会っていない。
 若干9歳にして自立しているユーノではあるが、さすがに友達とも会えないまま仕事に追われていればさすがに気も滅入ってくる。
 気になる子がいるとなれば尚更だ。


<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 14:39:35 ID:Y8sVSijQ<>  使い手の心情を表してか、ふらふらと危なっかしい軌道で出口へと向かっていくと、途中で何かが光っているのに気が付いた。
 手にとって見ると、それはどうやらデバイスのようだった。ジュエルシードのような大きさや形で、透き通った栗色をしている。

「……なんだろう。落し物かな?」

 少なくとも、自分の持ち物ではない。
 無限書庫にデバイスが置いてあるとも思えないし、昨日はこんなもの見かけなかったから、おそらくは今日出入りした誰かが落としていったものだろう。

 ユーノは目を瞑って精神を集中し、ちょっとした魔法を紡いだ。
 デバイスは大抵の場合、悪用されないように個人情報を登録しておく場合が多い。
 インテリジェントデバイスになると、デバイス自体が持ち主を選んで登録しておくため、それが顕著となる。
 その情報を閲覧することができれば持ち主は分かる。そのための魔法だった。

 ユーノの描いた魔法陣を通じて、淡い緑色の魔力がデバイスへと流れ込む。
 それに応じるようにデバイスはうっすらと輝いた。
 しかし、彼の望む反応をデバイスは返してくれなかった。プロテクトによってはじかれる反応とも違う。

「……まだ、登録されていない?」

 デバイスには持ち主の情報自体がまだ入力されていないようだった。
 認証登録なしで使用しているのだろうか、と考えるが、すぐに別の可能性に思い当たった。

「そうか。もしかしたら試作品のデバイスかもしれない」

 無限書庫を訪れる人間は、当たり前だが資料や知識を求めてやってくる。
 それはロストロギアの情報を探す管理局員であったりするし、各種の資料を求めてやってくる研究員だったりもする。
 その中の誰かが開発中のデバイスを落としていったとすれば、納得のいく話だった。

 とはいえ。

「だとしたら、随分間の抜けた人だなあ……」

 普通に考えれば開発中の新型デバイスの情報など部外秘に決まっている。
 それを資料を探しに来た折に落としていくなど、間が抜けている以前の話だ。
 いや、そもそものところ、そんな品をわざわざここまで持ってくるとも思えない。普通に考えれば研究室に置いておくものだろう。

「そうだよなあ。普通に考えればそんなことある訳ないか」

 そう一人ごちて、自分の思考の浅はかさに苦笑した。 もちろん彼は、ミッドチルダのとある研究室で交わされた間抜けな会話を知らない。

 とりあえず本局の遺失物係に届けておけばいいだろう。そう結論付けて改めてデバイスを見る。
 ふと、その透き通った栗色の輝きが、なのはの髪の色とダブって見えた。

「会いたいなぁ……」

 思わずこぼしてしまった素直な感情に、ユーノは赤面しながらあわてて周りを見渡した。
 当然の話だが、終業時間を過ぎた無限書庫には彼以外の人の姿はない。その事に大きく安堵の息を漏らす。

 高町なのは。彼の大切な友人であり、仲間であり、そして気になる女の子。
 とはいっても、彼女自身はひどくその手のことには疎い。そうした気持ちはおろか、未だに自分が異性として見られているかどうかも怪しいものだ。
 仕事に追われてロクに会いに行くこともできない上に、こんな状況で会ってどうするのか、という気もしなくはない。
 ユーノは自分を取り巻く状況に思いため息をついて、デバイスをポケットにしまった。そして頼りない軌道で出口へと向かう。

 ――set up.

 その時、彼のポケットの中でデバイスがかすかに光ったことに、ユーノは気がつかなかった。 
 それは、心臓の鼓動のような光り方だった。 <> 549
◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/02/04(土) 14:39:43 ID:N0HcJRcf<> ほんの少しですが保管庫更新しました。
このスレの分は今書いてるSSができてから。
しかし、みんな早いし面白いし。 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/04(土) 14:40:43 ID:Y8sVSijQ<> 以上です。導入部分のせいか短いのはどうかご勘弁ください。
できるだけ早く2話以降を投下したいとは思っています。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 14:46:20 ID:Yu/aLWJi<> jewel氏乙!
ユーノきゅんストーキングされまくりだなw

430氏期待してます。
バイトがんがれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 14:57:23 ID:fkGfs2+c<> ■魔法少女リリカルなのはシリーズ キャラ人気投票■
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/vote/1139014621/ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 15:10:40 ID:SlQ2eDTk<> >>430
ユーノSSの長編ということで期待しています
バイトがんばってください。俺も夕方からバイトですorz

>>640
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 修羅場!修羅場!
 ⊂彡 <> YUKI<>sage<>2006/02/04(土) 16:05:10 ID:68JgtVXd<> >>皆様
凄い!凄すぎです!
みなさんのそれぞれの作品、もう感動しました。
みなさん頑張れ!! <> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:30:09 ID:pchf/07Y<>
7 そして挽回?

pm 1:14 シネマックスハート第1映写室

 二時間に渡る超大作は大盛況のうちに幕を閉じた。誰もが感動に包まれ、スタッフロールが終わるまで席を立つものは一人としていない。
「んぅ〜〜〜、やっぱり映画館で見るのは最高だね」
 照明が点き周囲の人間が立ち上がる頃、同じようにエイミィも席を立った。
 縮こまった体に背伸びで活を入れ喜色満面だ。
「…………」
 一方、こちらの執務官殿は二時間前と変わらずの格好で椅子に座っていた。
 感動のあまり放心しているわけではない。砕かれた自信をどうにか拾い集め修復している最中なのだ。
 自分ではエイミィの心理を完璧に読んでいたはずだ。なのに結果は間逆。
 いや、冷静に考えればやっぱり自分の選択は間違っていたのではないのか。エイミィはこんなに複雑な女性だったのか。いやいや、オペレーターなんだしそれは失礼だ。
 どちらにせよ、いつもなら的確な判断を下せただろう、クロノよ。
 ちなみに二時間の間クロノが考えていたのがこんな感じである。
「さてと……次はどうするの?」
「……えっ? ああ」
 恐ろしいほど気が抜けていた。普段からは想像も付かないなんともしまりのない返事だった。
「クロノ君? なにぼけ〜ってしてるのよ」
 また呆れられてしまった。
「い、いや……別にそういうわけじゃないんだが」
 出鼻を挫かれたのが何もこれで全てが終わりじゃない。それだというのに今の自分はなぜこんなにも呆けているのか。
 世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかり。だから未来は自分で切り開くしかない。
 こんな所で足踏みしてる暇なんてないだろう。
 今が駄目なら次。一つ失敗したなら二つ成功すればチャラだ。
「エイミィ、次は昼食なんてどうだ?」
「そうだね……お昼もちょうど過ぎてるし」
 時計を見ながらエイミィが呟く。正午はとっくに過ぎて長針と短針の追いかけっこがまた始まっていた。
<> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:31:37 ID:pchf/07Y<>
「いい店を知ってるんだ。昼はそこにしよう」
 頭の中のガイドブック、もとい任務書から情報を引き出す。母親の気遣いは嬉しいものもあるが一体何処でこんな事を調べてきたのか。
 海鳴の娯楽施設、飲食店、商店、その他名所。おまけにそれらを効率よく巡るためのおすすめコースなんてものも。
 この映画館だってそれに書いてあったから来たようなものなのだ。誰かが――どうせリンディなのだろうけど、タダ券をポケットの中に忍ばせてあったことが後押しをした。
「もちろんクロノ君のおごりだよね」
「……ああ、今日は全部僕が持つよ」
 流石エイミィ、ちゃっかりしている。どの道今日はそのつもりだったから問題はない。
「ほんと!? さっすがクロノ君、わかってる〜」
「当然だ」
 これでさっきの失敗はチャラだ。少しだけ誇らしげな顔をしてクロノは胸を張った。
 思いっきりエイミィに乗せられたような気もしないわけではないが機嫌が良くなるならそれもまた良し。
「それじゃいくぞ、エイミィ」
 ようやく腰を上げ背伸び。
「あっ、ちょっと待って」
「ん?」
 何か思い出したようにエイミィはクロノを呼び止める。
 まさか前言撤回――
「パンフレット買うの忘れてた」
 じゃなかったか。
「ああ、それも僕が出すよ」
「いいよそれくらいは。私の自己満足だし」
「今日の主役は君なんだ。別に宝石とか買うんじゃないんだし」
 財布から札を一枚取り出しエイミィに手渡す。嬉しそうな顔で礼を言うエイミィにクロノは軽く手を上げ応える。
 ふと自分も子供の頃よく母親にねだっていたことを思い出した。こんなもの熱が冷めればただの可燃ゴミに成り果てるというのに何で欲しがっていたのか。
「やっぱり揃えられるものは揃えないとね」
 エイミィの場合は収集欲から欲しかったらしい。結局こういう物への考え方は人それぞれなのだ。
 自分の時はどうだったか、もう十年も前のことだから良くは覚えていない。端に子供じみた理由を思い出すのが気恥ずかしかっただけでもあるが。
「それじゃ買ったら昼食にするぞ、エイミィ」
「オッケー! クロノ君」
 親指立てていつになく上機嫌なエイミィに微笑ましさを感じながらクロノは次の目的地へ向け歩みを進めた。 <> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:32:48 ID:pchf/07Y<>
pm 1:32 喫茶リーゼロッテリア

 ちょっと遅めの昼食はお洒落なカフェのオープンテラスで。
「私、Aセットで飲み物は紅茶でお願いします」
「僕は……同じもので」
「かしこまりました」
 軽く頭を下げてウェイトレスは店内へと消えていく。
 視線を移した街路には多くの人が行き来している。仲良く手を繋ぐ親子連れ。こちらまで恥ずかしくなりそうな腕を組む恋人達。なぜだかそればかり目が行ってしまう。
「エイミィ……? どうした」
「えっ? ……なんでもない」
 水に口をつけはぐらかした。
 それにしてもこんなのんびりとした休日は最後に満喫したのはいつ頃だったか。
 任務ばかりの毎日に自分のプライベートは与えられた狭くも広くもない部屋で寝るか、DVDを見るか、ネットサーフィンに講じるぐらい。散歩するにも始終金属板で囲まれたアースラの中では、歩いてみてもあまりいい気分転換にはならない。
 もう少し大きな管理局の艦なら内部に小規模な公園など遊戯施設を設けているものもあるのだが。ないものねだりはしょうがない。
「そういえばクロノ君は休暇なんて久しぶりじゃない?」
「そうだな……そうかもしれない」
 言葉を濁すくらいクロノには休暇はない。執務官はアースラの中には一人しかいないのだから当然ではあるが。
 執務官補佐である自分はオペレーターだけあって交代などで常に艦橋にはいない。クロノには多分寝る時間以外、特に際立った用事がなければずっと艦橋にいるのだろう。
「よかったね、艦長に有休もらえて」
「あまりいい気分じゃないけどな。特に今回は母さんのいらんおせっかいだし」
 クロノがリンディを艦長としてではなく母として呼ぶときは大抵リンディへの不満だ。管理局提督として魔導師として彼女をクロノは心から尊敬している。
 一方、お茶目で気まぐれ、さらに大の甘党である母親としてのリンディに頭を抱えているのも本当のこと。
「母さんにはもう少ししっかりしてもらわないと。私的に提督権限を使うなんてどうかしてる」
「いいじゃんいいじゃん。どうせ私といなかったら部屋でごろごろしてるだけでしょ」
「そ、そんなことあるか。僕だって休日にはいろいろなことをやってるさ」
 どうせ魔法の訓練とかデバイスの調整だったり、仕事に必ず関係することばかりでしょ、とはあえて言わない。
<> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:33:44 ID:pchf/07Y<>
「S2Uの調製とか、腕が鈍らないよう魔法の鍛錬とか」
 だってほら、こうやって言ってしまうのだから。思ったとおりである。
「もう、もっと笑えるようなこととか楽しいことしようよ」
「僕にはこれがあってるからいいんだ」
「もう少し子供になってもいいと思うけどなぁ、固いよクロノ君」
 まだ十四歳なんだからもっと子供らしい一面を見せ欲しい。二歳年上の自分が言うのもなんだが目の前の執務官は少々真面目すぎると思う。
「かっこいいばかりじゃ駄目。たまには笑い転げるクロノ君とか見てみたいし」
「それは君の好奇心だろう」
「あはは、ばれた?」
 呆れ顔で睨むクロノにちょっとだけたじろいだ。
「でもさ、クロノ君変わったと思う」
「僕がか?」
「だってなのはちゃんたち皆に会ってからちょっとだけだけどクロノ君優しい顔つきになった」
「見間違いだろ? 僕は僕だ」
 今度はすまし顔。でも長い付き合いのエイミィには自信を持って彼が変わったと言える。
「友達ってやっぱりいいよね、クロノ君」
 九歳で執務官。なのはたちの世界ではようやく義務教育の中腹だ。それを思うとやはりクロノにはそれなりに大切な時間を失っているのだろう。
 それ言ってしまえば自分だって同じようなものか。ミッドの人間は誰もが生き急いでる。もっとゆっくり人生を楽しんだって罰は当たらない。
 結局は文化の違い。カルチャーショックで片付いていしまう。
「ユーノ君となんていいコンビだし」
「は、はぁ!? なんであんなイタチもどきとコンビなんだよ!」
 ユーノの名前が出た途端クロノの顔が思いっきり崩れた。こんな乱した表情も以前はちっともお目にかかれなかった。
「喧嘩するほど仲が良いって、なのはちゃんも言ってたよ」
「あいつとは別だ! 大体あんなに気の合わない奴も珍しいくらいだよ」
 ぷいっとそっぽを向いてクロノは拗ねてしまった。見ているこっちが噴出しそうになる。
「なんだよ」
「なんでもないよ」
 半分以上あった水全部を一息で飲み干した。
 口を一文字にしていたクロノもエイミィに習って水を飲んだ。こっちは手をつけていなかったから一気飲みだ。
「むせないでよ」
「げほっ!」
 執務官形無しだった。
<> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:35:03 ID:pchf/07Y<>
pm 1:53 喫茶リーゼロッテリア15メートル手前の物陰

「じゃあ、すずかお願い」
「うん、きっと大丈夫だよ」
 フェイトの合図にすずかは携帯を手に取った。
「……あっ、うん。わかった、お姉ちゃん頼んだよ」
 電話の向こうでは彼女の姉である月村忍が今や遅しと出番を待ち受けていた。
「でもフェイト、よくこんなこと考え付いたわよね」
 腕を組みながらアリサが不思議そうにフェイトに呟いた。
「うん、前なのはの家で見た漫画にそう描いてあったから」
「隣の恋人に感化されて自分達もラブラブな雰囲気に……ねぇ」
 よもやフェイトがここまで大胆な作戦を持ってくるなんてにわかに信じられなかった。
 兄への思いがそうさせるのか。いやはや、フェイトは時々こうなるから油断できない。
「でもフェイトちゃん、クロノさんとエイミィさんって昔から仲いいんだよね?」
「うん、もう五年くらいの付き合いなんだって」
「それってお互い異性として意識してない気がするんだけど」
 アリサの指摘にフェイトは少しだけ眉をひそめた。フェイトには思いもよらない一言だったようで言葉の意味を飲み込もうとしているようだ。
「まっ、でも鈍感さんはここにもいたことだし。どうなるかわからないもんね」
 隣の少女に話を振った。
「えっ?」
 振られた本人はアリサの視線に気まずそうに目を逸らした。
「そのわたしの場合は……鈍感とかじゃなくってユーノくんのこと信頼していたというかなんといいますか……。こ、このままでいいかなぁ……なんて」
「そうやってユーノへの好きって気持ち、気づかなかったんでしょ? そういうのが鈍感なの」
「で、でもほんとにユーノくんもそう思ってたんだと思って……今の関係壊しちゃいけないかなって思ったり」
 人差し指同士をツンツン合わせて赤面のなのは。まったくもって見ているだけで歯がゆくなる。
<> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:35:56 ID:pchf/07Y<>
「まぁ、火がついたなのはは面白いくらいに可愛かったから別にいいって言えばいいんだけど」
「……ユーノくんのこと好きだもん」
 蚊の鳴くような声でそれだけ言うと、なのはあまりの顔の火照りに俯いてしまった。
「すずかとアタシとフェイトとその他多くの人たちが縁結びしてあげたの感謝しなさいよね」
「言いながら、ほっぺ引っ張らないでひょ〜〜!」
「ああ、もう! 可愛すぎるあんたが悪いの! 少し幸せ分けなさいよ〜〜」
 いつか自分の頬は伸びきったまま戻らなくなるのでは、何てこと思いながらなのははアリサの攻撃に半分涙目で甘受していた。
「もう……二人とも」
「でも羨ましいな、仲が良くて」
「フェイトちゃんだって私たちの親友だよ。頼めばアリサちゃん、ほっぺ引っ張ってくれるよ」
「それは……ちょっと嫌かな」
 こっちもこっちで可愛いらしい。
 赤らんだフェイトの顔にすずかは口元を緩めていた。
「ほう、ひゃへへよ〜〜ひゃりひゃやはん」
「アタシの気が済むまで止めないわよ。覚悟しなさいなのは!」
「通じてるんだ……」
 なんとなく自分でもわかるけど。
「ひょいひゃふ! ひょいひゃふ〜〜!」
「大丈夫だよ、なのは。多分心配するほど伸びないから」
 通じている人には通じているのだ。
 それにしても――。
 仲直りさせて、あまつさえ恋仲にしてしまおうなんて、フェイトがこんなに積極的だったなんて驚いた。
 初めて会った時の印象が大人しくて優しそうだけだったから余計にそう感じる。
 でも他ならぬ兄のためならこうなるのかもしれない。自分だって姉がなのはなの兄といい仲になれるよう幼心で頑張っていたころがあったのだし。
「クロノさんも幸せ者だね」
「……うん」
 そういう意味では似たもの同士の二人だ。
 すずかの笑みにフェイトも目を細め、はにかみながらゆっくりと頷いた。
 何処も彼処も微笑ましい。そんな午後の風景。
 願わくば、これが台風の前の静けさであらんことを。 <> 176<>sage<>2006/02/04(土) 16:36:58 ID:pchf/07Y<> いやっほぉ、! 176です
……すいませんちょっと飲みすぎですね
一月に忙殺されそうになりながらも何とか凌いだこの二月
また正月のようなハイペース、それなりのクオリティでお送りできるよう頑張りたいと思う次第
まだレポート残ってるんですけどね(ダメダこりゃ

>>640
なのはさんにしごかれる局員に敬礼w
どうなるんでしょう、楽しみですねこれからが

>>98
GJ!
和みました、友情はいいなぁ

>>jewel氏
ああんもう、なのはが可愛いなぁ
やっぱりなのはは一度火がついたらとことん行きそうですね
続き楽しみにしてます

>>430
これからが楽しみです
ユーノくんをぜひ可愛がってあげてください

>>549
保管庫充実してきましたね
ご苦労様です

しかしみなさん早いですね、私も頑張っているのですが
とかいいながら他にも暇つぶしが積もってできたのがあるのです
内容は彼女の守り手エピローグのその後の展開です
ユーノくん大活躍まではいかないんですけどね
見たい人います? もうだいぶ前の作品ですし風化してたり見てない方もいらっしゃると思うんで <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/04(土) 19:12:19 ID:gqwkdKpn<> >>176
もちろん見たいですよ!投下期待。 <> jewel :【Symmetry?】続き。<>sage<>2006/02/04(土) 21:16:29 ID:12leq8+R<>
【[】

    ―PM 1:07、『スクリームゲート』内―

 バタン!「うわあ!」
 突然閉じた背後のドアの音に、体が強張るユーノ。
 と同時に、暗かった室内に並ぶパソコンのディスプレイの電源が一斉に入り…
『HELP』という赤い文字が。
「○◆×☆★●◎!?」
 ユーノの心拍数が更に上昇。慌てて部屋を通り抜け、次の通路へ向かう。
(この世界の人たちって…なんでわざわざこんなモノ作ってるんだ!?)
『お化け屋敷』という、自分の価値観を遥かに上回る建築物の中で、何とか冷静さを
保とうとするユーノ。
…そして彼の隣には、何故かどの仕掛けにも完全ノーリアクションのなのは。
「な、なのは…怖くないの!?」
「…あ…うん…えっと…」
 なのはの言葉に、ウソぉ!?と驚く。自分はともかく、前後から大人たちの悲鳴が
届いてきているのだ。にもかかわらず、自分の傍らの少女は全く動じることなく、
てくてくと歩いている。
(ま、まずいかも…)
 苦笑いを浮かべつつ、歩を進めるユーノだったが…3秒後、再びの恐怖に襲われた。


「うーん…これはマズイわね…」
 お化け屋敷に入っていった二人を見送り、出口付近で待ち構える管理局のプロ集団。
「やっぱり、屋内の音声は拾えないのかい?」
「そーみたい。も〜! 後で技術部のスタッフに文句言ってやる!」
 デバイスをいじりながら、エイミィがもどかしそうに腹を立てる。
「まぁええやんか。きっと今頃、なのはちゃん『キャー!』とか言って、
 ユーノ君の腕に抱きついとるよ♪」
「うーん…そんなにうまくいくかなぁ…? ユーノ、何の建物か分かってなかったし」
 アイスを食べながら、二人の帰還を待つ一同だった。


 一方、お化け屋敷の中では。
 ガチャン!「うわ!」「…」
 …相変わらず、対照的なリアクションの二人が。
(な、なのはが全然怖がってないのに…かっこ悪いな僕…)
 そう思うユーノだったが… 彼は完っ全に勘違いをしていた。
 入った人間を怖がらせるためだけに存在しているアトラクションなのだ。怖がらない
方がおかしい。彼のリアクションは至極当然、むしろ肝が据わっている方だった。
 普段のなのはであれば、大声で悲鳴をあげ、ユーノよりも遥かに怖がっていただろう。
 しかし…今のなのはは、はっきり言ってそれどころじゃなかったワケで。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 21:17:24 ID:12leq8+R<> 【\】

 なのはの心臓の鼓動も、ユーノと同じように高鳴っていた。
 ―但し、全く別の理由で。
 おかしい。今日の自分は、なんかいつもと違う。
 昨日、フェイトちゃんたちに『デート』と言われたときから。
 ユーノ君の笑顔が。優しい言葉が…
 いつもと、同じはずなのに。どうして、胸にひびくんだろう?

「よかった…なのは、もう少しで出口だって…ってうわぁ!!」
 驚きながらも、常に自分の半歩先を歩いてくれる男の子の腕に、そっと抱きつく。
(…ユーノ君…)
 ここが「お化け屋敷」の中であることすら、なのはには曖昧な現実だった。


「あ! 出てきた!」
 アルフの声と同時に、身を隠す一同。瞬時の動作は、流石のものである。
(お〜やっぱり腕組んどる! 思った通りの展開や♪)
(ホ、ホントだ…)
 二人の様子に、頬を染めるはやてとフェイト。
『あー怖かった… 機械だってわかってるんだけどなぁ。なのは、よく我慢できたね』
『うん…』
『ちょっと休もっか。お腹も空いてきたし』
『そ、そだね…///』
(うーん、なのはちゃんもなかなかやりますねえ♪)
(…イケル! これは落ちるぞ! ユーノ君、もう一押しだぁああ!!)
(…何がだ?)
(はいはい、アンタは黙ってな)
 何とか会話に加わろうとするザフィーラを、アルフが一蹴。
 そんな様子を、彼らの主たちは微笑みながら見守っている。
(こっちも、うまくいったみたいだね) (そーやね☆)

「あーマズイ! 二人共、またお店の中に入っちゃった!」
「あ、でも、窓際の席に座るみたいですよ? あそこからなら見えます」
 エイミィとシャマルは、完全に意気投合してしまっている。
(問題は、この二人をどーするかだね…)
(シャマルはウチがなんとかするとして…エイミィは、どーしよーもないかもしれん…)
(た、多分、5人が全力で引き止めれば…何とかなるかも…)
 下手をしたら…そう、『告白』の場面にまで乱入しかねない執務官補佐をどう引き止めるか、
二人の魔導師は頭を悩ませていた。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 21:18:18 ID:12leq8+R<>
【]】

 そして、30分が経過。
(なーんか、ユーノばっかり喋ってない?)
(アルフ甘い! あれはゼッタイ、告白を待ってるときの乙女の目だ!)
 再びデバイスを起動させ、窓の外から二人を見守る着ぐるみ御一行。
 幼い子供達が群がる中、ネコの着ぐるみが、妙にハッスルした動きを見せている。

―そして、ついに「その時」が訪れた。

 ユーノが急に真剣な表情になり、なのはに何かを話している。
 それに対して、なのはが笑顔で応じた。
 すると…ユーノがなのはに手をのばし、彼女の頬に触れる―
(きたぁああ! クライマックス!!)
(エイミィ、うっさい!)
(ユーノ、頑張れ!)
(シャマル、ザフィーラ、見たらあかん!)
(御意) 律儀に目を閉じるザフィーラ。
(ごめんなさいはやてちゃん、ちょっとムリです!)

 ガラスの向こうでは、ユーノが再び何かを囁き、なのはに顔を近づけていく。
 ドキドキドキドキ…フェイト達の興奮が、最高潮に達したとき。

―ユーノが、自分の額をなのはの額に当てた。

 あ れ !?

 呆気に取られる一同。エイミィまでもが、完全に動きを止めている。
「ま、まさか…」
「どーやら、その『まさか』みたいやね…」
「あ、あははは…」
 苦笑する友人達のことなど知る由もなく、ユーノ達はレストランを後にし…
 そのまま、テーマパークから出たのだった。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 21:19:11 ID:12leq8+R<>
【]T】

      ―テーマパーク内レストラン『ハニードール』―

 さて、今更検証するまでもないが、一応先程の場面に本人達の台詞を加えると。

 会話を続けていたユーノが、なのはの頬が妙に赤いことに気がついた。
「なのは…何か、顔赤くない? 大丈夫?」
「え? 全然大丈夫だよ、うん!」
 少し慌てたものの、笑顔でそれに答えるなのは。しかし、彼女の頬は赤いままだ。
(も…もしかして…なのはの様子がいつもと違うのって…具合悪いとか、そういう…)
 ユーノが、なのはの頬に触れる。
(やっぱり、ちょっと熱い…)
「ごめんなのは、ちょっといい? 熱、あるかも」
「だ、大丈夫だよ〜」
 苦笑いするなのはだが、ユーノは顔を近づけ、おでこを当てる。
「…やっぱり。ゴメン、無理させちゃって。出よう。帰って休まなくちゃ」
「そ、そんな、ホントに何でもないのに」
「ダメだよ。ほら、早く」
 なのはの手を取り、立ち上がるユーノ。なのはへの、申し訳ない思いで一杯だった。


     ―2時間後、艦船アースラ―

(き、きまずい…)
 ブリッジ内に流れる空気に、誰もが口を噤んでいた。
「君達…一体どーしたんだ? 確かに反省してくれとはいったが、
 そんなに酷く落ち込まなくても…」
 事情を全く知らないクロノも、流石にこの雰囲気には耐えられないようだった。
「ユーノ…君からも何か言ってやってくれ。僕はそんなにきつく叱ったつもりはないんだ」
(い、一番話をふっちゃいけないヒトに、ピンポイントで)
(これもクロノ君の才能かな…)
 エイミィとはやてが、あちゃ〜、と溜め息をつく。
「ごめんクロノ、僕もちょっと休ませてもらうよ」
 落ち込んだ様子で、司令室を後にするユーノ。
「…何があったんだ?」 クロノが周囲を見回す。
「うーん、予想以上の重症ですね…」
「しゃーない、ウチがなんとかするわ。みんなはここに残っててな」
 はやてが後を追い、司令室を出て行った。
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 21:20:05 ID:12leq8+R<> 【]U】

「ユーノ君!」
 部屋に入ろうとするユーノに、はやてが呼びかける。
「あぁ、はやてか。どうしたの?」
「それはコッチの台詞や。ユーノ君、なんや元気ないよ?」
(ゴメンユーノ君。…でも、この雰囲気で「覗き見してた」なんて、絶っっ対言えへん…)
 はやての問いかけに、ユーノは苦笑いで答える。
「今日、なのはちゃんとデートやったんやろ…?」
「…うん。でもなのは、具合が悪かったみたいでさ。それなのに、僕が無理矢理
 つきあわせちゃって。ホントに悪いことしたよ」
 俯き気味でそう話すユーノ。

「そーかなあ。なのはちゃん、楽しみにしとったで? 昨日、服選んでるときとか」
 これは、嘘じゃなかった。恥ずかしがってはいたけれど、確かにあの時のなのはは、
楽しそうに笑っていた。…それは、今日も同じ。
「なのはちゃん、楽しみにしてたから、楽しかったから、
 ユーノ君と一緒にいたかったんやと思うよ」
「そ、そーなのかな…」
「うん。まぁなのはちゃんは優しいし、変に気ぃ使うコやから、それもあるかも
 しれへんけど…少なくとも、今日は違うと思う」
「そうだと、いいな…」
「大丈夫、ウチらが保証するよ! せやからもっと自分に自信もって、ユーノ君!」
「うん。ありがとう、はやて」
「はい、どーいたしまして」
 笑顔を向けるはやて。ユーノも、表情を緩ませた。
「あ、それとユーノ君。デートの後のメールは、効果抜群やよ♪」
 別れ際にそういうと、はやては司令室へと戻っていった。

(良かったな、なのはちゃん。ユーノ君は、とっても優しい人や☆
 さ…フェイトちゃん、あとはヨロシク頼むな♪)
<> jewel :【Symmetry?】<>sage<>2006/02/04(土) 21:21:19 ID:12leq8+R<>
【]V】

     ―同時刻、高町家・なのはの部屋―

「それじゃあなのは、ちゃんと寝てるんだよ」
「はぁい」
 美由希が部屋を出て行く。ベッド脇には、フェイトが座っていた。
「もう、何でもないって言ってるのに、お姉ちゃん、大げさなんだから…」
「それだけ、なのはの事を心配してるんだよ。クロノもそうだから、少し分かる」
「心配性だもんね、クロノ君」
 笑いあう二人。
「…それで、『なんでもない』のに、どーしてこうなっちゃったのかな?」
 穏やかな顔で、フェイトが本題に入る。
「えと、それは…」
 口ごもるなのは。
「…ユーノの事?」
「///」 フェイトの言葉に、なのはの頬が薄く染まる。
 ―彼女の魔法陣と同じ、桜色。
「なのはは、ユーノの事、どう思ってるの?」
 フェイトの口調は鋭く、そして温かかった。
「その…とっても大切な…友達…」
「それだけ?」
「…あと、今はちょっとだけ、違うかも…」
「そうなんだ」
 敢えて、それ以上の追求はしなかった。その『想い』は、なのは自身の大切なもの。
 今の自分が、簡単に「好き」という単語で表すものじゃない。
 フェイトは、そう思っていた。
「あのね、フェイトちゃん…ユーノ君は私のコト、どう思ってるのかな…?」
「え?」 逆になのはに問われ、一瞬呆けてしまうフェイト。
「今日のユーノ君ね、何ていうか…いつもと同じだったの。ほんとにいつもとおんなじ。
 優しい言葉も、笑顔も…だからね、ちょっと分からなくなっちゃったの。
 ユーノ君、ホントは私のコト、その…どう思ってくれてるんだろう、って… ///」
 みるみる顔を赤くしながら、なのはは小声で言った。

「それは…きっと…これからも、ユーノと一緒にいれば分かると思うよ」
「一緒に?」
「うん。なのはとユーノは、一緒にいるのが、一番自然なんだ」
 笑顔で、フェイトが語りかける。
「…そっか。ありがと、フェイトちゃん」
「なのは。その言葉は、ユーノに言わなきゃ。…じゃあ、私は帰るね、バイバイ」
「うん、バイバイ」

 パタン、とゆっくり扉を閉める。
(…二人共、よく似てるんだから。ユーノ、頑張って伝えなきゃね)

 クス、と微笑んだフェイトに、ドアの向こうからなのはの携帯の着信音が聞こえてきた。

   (END)
<> jewel<>sage<>2006/02/04(土) 21:27:16 ID:12leq8+R<>  という感じでございます。
 結局、なのはとユーノはこんな微妙〜な関係を6年間も続けた挙句、
いい加減フェイトが頭にきて、>>640氏の今のSSに繋がっていくのですよw

 以上、言い訳&責任転嫁でした。( ̄ー ̄)ニヤリッ <> YUKI<>sage<>2006/02/04(土) 23:09:19 ID:68JgtVXd<> >>176
ナイスです!!
クロノ×エイミィの続きと同時進行のなのは×ユーノ。
気になりますなぁ!

>>jewel氏
甘〜〜い!!
甘くて可愛いです!!

お二人共お疲れ様です! <> 98<>sage<>2006/02/04(土) 23:28:03 ID:14CKFpQr<> うーん、やっぱり皆様凄いですね。
連載長編書くのってかなり大変な気がするんですが、難なくやってのけるあたりレベルの差を感じます。
その上文章もうまいしで羨ましい限りです。私の文章なんてもう 。・゚・(ノД`)・゚・。

私はアリサファンなのでアリサSSに奮闘しているのですが、どうもうまく書けません。
いまいち性格が掴みきれてないんですよね。いまのところ、

強気だけれどもそれは人に迷惑をかけるものではなく、むしろ人を元気にさせる強気さ。
友達への思いやりは人一倍で、怒る時のほとんどは友達のためを思って。
そのリーダーシップも独裁的なものではなく、皆が楽しめることを念頭に置いたもの。
友達を支えることが多いが、支えられることもあり、そのことにちゃんと感謝できる。
考え方は基本的にプラス思考(≠楽観)。行動は積極的。
喋り方と振舞いはどらかというと活発だが、どことなく落ち着いた雰囲気がある。
自分の弱さを素直に見つめることができる。友達と過ごす日常を大切にできる優しい心の持ち主。

と、この程度ならわかっているつもりなのですが、じゃあ具体的にアリサはどんな行動をとり、
どんなセリフを喋るのかと問われると答えに窮してしまいます。
そのせいか書いてもぎごちないものになってしまい、スラスラ書けないでいます。
アリサはこういう喋り方しないんじゃないかなーと思うセリフが多々。
こんなんじゃファン失格ですね…。

何かキャラの行動・セリフを考える上で大切な点、気をつけるべき点などありましたらお教え頂けないでしょうか?
(こんな相談、スレ違いでしたらすいません…) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/05(日) 00:17:36 ID:olUnxjoY<> >>98
あくまでも個人的な意見ですが。
あとはただ書いていくだけだと思いますよ。
>>213を見る限り、よく性格をつかんでいると思います。
それでも納得できないのは、>>98氏がどこかで「自分が思うアリサ」と「自分の書くアリサ」に違和感を感じてるんじゃないでしょうか?

SSは、確かにアドバイスなども必要ですが、結局最後は自分で何かをつかむしかないものです。
>>98氏が納得できるアリサを探してみては? <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/05(日) 00:22:11 ID:uvuHYiX1<> 週末なだけあって怒涛の投下ラッシュがwwwww
ぶっちゃけなのフェスは申し込んだだけで通ってるかわからん罠orz
一応スレみてる人に対しては何かしらおまけするつもりではいますが。
何にせよ通ってからの話orz

>>430
>なんだかエロパロ板なのにエロの割合がどんどん少なくなってますねw
orz←しっかりエロの続き書いてる男

>>jewel氏
え?何俺責任重大?落とし所任されてます?
・・・・・・・・リリカルマジカル頑張りますorz

>>YUKI氏
クロノぎこちないですねwwwwwあんだけ女性に囲まれてて
女性慣れしてないよエロノwwww
そしてしっかり妹してるフェイト萌え

>>98
自分は別に問題ないと思いますよー。てかぎこちない文なら
俺も人のこと言えませんしorz <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/05(日) 03:56:46 ID:1H2NT0jP<> バイト終わってもう一度書き始めてたらこんな時間にorz
というか、3時から12時までバイトってどういうことだろう……?
いつもの3倍働いてるよ……

というわけで2話投下。
まだまだ話は進んでくれませんでしたorz <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/05(日) 03:57:47 ID:1H2NT0jP<>  ユーノは何もない空間にいた。
 それは比喩でもなんでもない。壁も果てもない、空気ですらあるかどうか分からない、認識不可能な空間。
 立っているのか、落ちているのか、あるいは浮かんでいるのか。それすらも分からない場所に、彼はいた。

 そこに、一人の少女がいた。
 距離と言う概念がないから、手を伸ばせば触れられるような位置にいる気もするし、気の遠くなるほど遠い場所にいる気もする。
 何もなく、何も認識することのできない場所で、彼女がいる、ということだけはなぜかはっきりと分かった。

 それはユーノよりも更に幼い女の子だった。6歳くらいだろうか。
 ユーノの胸ほどの身長で、汚れ一つない純白のワンピースを着たかわいらしい女の子だった。

 女の子は彼の前で首を傾げた。パクパクと口を開いて何かを言っているが、なんと言っているのかまでは分からなかった。
 それは彼女にも分かるらしい。伝わらないことが悲しくて、身振り手振りを混ぜて何かを問いかけてくる。

 ユーノには彼女が何を言っているかは分からない。
 けれど、その仕草や瞳、口の動き。その全ての動作の根底にある気持ちは、ダイレクトに伝わってきた。
 だから、気が付けばユーノは、彼女の問いに答えていた。

「ユーノ。僕の名前は、ユーノ・スクライアだよ」

 女の子はユーノの顔をじっと見つめた。それから俯いて、口の中で何かもごもごと呟いていた。
 相変わらず何といっているのか聞こえなかったけれど、彼女がなんと呟いているのか、今のユーノにははっきりと分かった。
 彼女は今、自分の名前を何度も何度も口の中で繰り返しているのだ。

 やがて女の子は視線を上げて、まっすぐにユーノの顔を見た。
 そして、純粋な子供にしかできないような満面の笑みで。

「……ユーノ」

 楽しそうに、嬉しそうに、何度も何度も。

「……ユーノ、ユーノ、ユーノ!」

 そう、彼の名前を呼んだ。

<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/05(日) 03:58:25 ID:1H2NT0jP<> 「……なんだと?」

 時空管理局本局、遺失物係。
 その待合室のソファーに座っていたレーゲンは、極端に低い声でそう呟いた。
 対するフィーゲルも、いつも浮かべている笑みが心なしか固い。

「うん……それがね。見つかったこと見つかったんだけど……」

 見てもらった方が早いとばかりに、彼は手を差し出した。
 そこには透き通った栗色のクリスタル。彼らの作った新型デバイスがそこにあった。

「…………」

 黙って受け取って、魔力をデバイスに通す。
 まだ持ち主が決まっていないどころか完成すらしていないこのデバイスは、誰の魔力であろうと反応する――それがどういう類のものであれ――はずったのだが。

 ――Error. The validation code is different. (エラー。認証コードが違います)

「……どういうことだ?」
「僕にだって正確なことは分からないけど、多分考えてることは同じじゃないかな……」

 まだ開発中で、誰のものでないはずの新型デバイス。それが認証コードでこちらの操作をはじいた。
 プログラムのミスという可能性もあるが、その辺りに関しては散々テストしてきたのだ。そこに原因があるとは思えない。
 なら、それが意味するところは。

「まさか……この一晩であのジャジャ馬がマスターを選んだって言うのか?」
「それ以外に何か考え付く?」
「しかし……」

 顎に手を当てて考えこむレーゲンに、フィーゲルは肩をすくめて笑った。

「そりゃ確かにあの子は気難しいところがあるけど、それでも気に入る子だっているだろう。僕らのアクセスすら受け付けなくなるくらい、ね」
「……誰かが無理矢理登録した可能性は?」
「自分でも信じてない可能性を口にするのはよくないよ。この子がそんな相手を受け入れるとでも思ってるのかい?
 仮にそうだったとしたら、とっくに僕らはお縄についてる。管理局の有能さはよく知っているだろう?」
「……それもそうだな」

 レーゲンはあっさりと首肯した。幾つもの危ない橋を渡ってきている2人は、管理局の有能さを身をもって知っている。
 それは、法を自覚して犯した人間にしか生まれることのない、油断のない認識だ。

「どちらにせよ、早くこのジャジャ馬のマスターを見つけないといかんな」
「そうだねえ。回収するにせよ見守るにせよ、その子を見つけないことには始まらないしね」

 レーゲンは無駄のない動作で立ち上がって、そのまま部屋を出る。フィーゲルもひょこひょことした動きでレーゲンについていった。
 彼らの向かう先は、無限書庫。
 おそらくそこに、『彼女』のマスターはいる。 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/05(日) 03:58:57 ID:1H2NT0jP<>  女の子が、自分の名前を呼んでいる。
 楽しそうに、嬉しそうに。
 何度も、何度も。
 クルクルと踊るようにして自分の周りを駆け巡り、こちらに顔を向けては極上の笑顔を浮かべてユーノの名を呼んでいた。

 ふと、その動きが止まる。
 ワンピースの裾を翻してこちらに向き直り、胸の前で手を組んで、彼女はじっとユーのを見つめていた。
 その口がパクパクと動く。
 何かを伝えようとしているけれど、声を伝える空気さえないこの世界では、言葉はここまで届かない。

 それでも彼女はめげずに口を開いた。
 懸命に、一途に。
 何度も、何度も。
 その真摯な想いはユーノにも伝わって、彼女が何を伝えようとしているのか必死になって耳を傾けるけれど、それでも言葉は届かない。

 少女は何度も口を開いた。
 ユーノはそれに何度も耳を傾けて、その姿を見つめた。
 それは、傍から見ればこっけいな光景だったかもしれない。
 けれど、ユーノも少女もそんなことを気にすることはなく、ただ真摯にお互いを伝え合おうとしていた。

 そして、何の前触れもなく突然に、泡がはじけるようにしてユーノは彼女の伝えたい言葉が分かったような気がした。

 自然と口が動いて、言葉を紡ぐ。
 彼女が伝えようとしていたこと。
 それは――。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/05(日) 03:59:27 ID:1H2NT0jP<> 「……ノ。おい、ユーノ!」

 肩をガクガクと揺すられて、ユーノはまどろみの世界から蹴りとおされた。
 寝起きでまだふらふらとする頭で身体を起こす。
 なんだか酷く頭が重い。何か夢を見ていたような気もするけれど、思い出せなかった。
 顔を上げると、クロノの姿があった。

「あれ……クロノ。どうしたの?」
「……どうしたの、じゃない。まったく、まだ寝ぼけているのか?
 とっくに就業時間は過ぎているぞ。さっさと起きろ」

「ああ、うん、分かった……っていうか、何でクロノが僕の部屋に入ってきてるのさ?!」
「何を言ってるんだ。この前頼んでおいたロストロギアの資料が集まったと連絡してきたのは君の方だろう? それなのに終業時間になってもやってこなかったのはどこの誰だ?」
「そ、そういえばそうだったっけ……ゴメン」

 元々仕事を寝過ごした自分が悪い。素直にユーノは頭を下げた。
 クロノは一つため息をついた。呆れてはいたが、どうやら怒りは収まったらしい。

「まったく、こんな時間まで寝ているなんて昨夜は一体何してたんだ?」
「別にいつもどおりだよ。ただ……ちょっと、夢を見て、ね」
「夢? どんな?」
「覚えてないんだ。だけどなんだか、楽しい夢だった気がする」
「まったく、呑気な話だ……なのはと遊んでいる夢でも見たのか?」
「な、なんでそこでなのはが出て来るんだよっ!?」

 クロノはユーノを一瞥したあと、やれやれとばかりに肩をすくめた。
 本気で飽きられているのが腹立たしい。

「この前フェイトもぼやいていたぞ。いつになったら君がなのはにたいしてはっきりした態度をとるのかってね」
「大きなお世話だよ! なんで君にそこまで言われなくちゃならないのさっ!」

 怒鳴り声はほとんど悲鳴に近くなっていた。ひょっとしたら目じりに涙くらい浮かべていたかもしれない。
 全てが全て、自覚はあるのが厄介な話だった。
 クロノはその悲鳴に我に返ったかのように首を振った。口調を神妙にして謝罪する。

「……すまない。僕が口を出すことではなかったな。エイミィの悪い癖が僕にまで移ったみたいだ」
「別に、いいけどさ……」

 ユーノとしても、別に本気でクロノが憎いわけでもない。
 こうして素直に非を認められると、怒りを継続するのは難しかった。

「僕は先に無限書庫に行っているから、準備が出来次第来てくれ。報告が聞きたい」
「……分かった。すぐに準備するから」
「ああ、頼む」

 そう言うとクロノはそのまま部屋を出た。
 ベッドから起き上がったユーノは服を着替え、寝癖で乱れた髪を整える。その表情は浮かない。
 替えの服を手に取りながら、素直な気持ちが口をついて出た。

「僕だってこのままでいいとは思ってないさ。けど、なのはは相変わらず僕のこと男としては見てくれないし、どうしろって言うんだ……?」

 その問いに答えてくれる人は、誰もいない。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/05(日) 04:10:04 ID:1H2NT0jP<> とりあえずここまで。短い上に話しが進んでないよ……
マジカルリリカル、日進月歩で頑張りますorz

>>98
たしかに皆さんすごいレベル高いですよね〜……私を除いての話ですがorz
とはいっても、98氏の作品も全然ひけをとらないと思いますが。
文章がかけなくなるのは誰でも同じだと思いますよ。実際、私もクロノ×フェイト書けなくてこっちの長編かいてますし。
気分転換もかねて別のキャラを動かしてみるのも良いかもしれませんね。
別のキャラの視点からアリサを書いてみれば、また別の一面を発見できるかもしれませんし。
……偉そうなこと言ってすみません。参考になれば幸いです。

>>176
GJです!
最近クロノ×エイミィにも傾き始めてきてるせいか、終始ディスプレイの前でニヤニヤしている怪しい人になってましたw

>>jewel氏
こちらもGJです!
176氏の作品もそうですが、このスレのユーノとなのは、やたらラブラブだなあ……w
照れてるなのはを見てたらディスプレイの前でもだえてる怪しい人(ry

それに引き換えなんだろう私の書いてるユーノはorz
もっと気張らんかい!! と作者ながら言いたくなってしまいます
話の展開的に狙ってやってるとはいえ、情けなくなってきました……

……と、ともかく皆様GJです!
続きを楽しみにさせていただいております! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/05(日) 06:42:42 ID:Dy8DUqpl<> >>211 jewel氏
萌えました
周りの人もいいですね!
>>221 430氏
wktk
文体も好きです <> 98<>sage<>2006/02/05(日) 19:04:50 ID:zv1owROJ<> >>214
言われてみれば、なんだかアニメ本編を意識しすぎて自分を縛っていたかもしれません。
もっと自分の書けるアリサを大切にしていきたいと思います。
とても助かりました。ありがとうございます。

>>640
問題ないでしょうか。そう言ってもらえると少し安心します。
640氏の文章は、表現が豊かで読みやすい良い文章だと思って読んでますよ。
レスどうもありがとうございました。

>>430
ありがとうございます。
430氏の文章も、状況描写などがうまくてかなりレベル高いと思いますよ。
気分転換って大事なんですね。文章書き始めたのが本当に最近なんで、そういう細かいコツが全然わからなくて。
別キャラ視点から書くっていうのは考えたことありませんでした。今度挑戦してみることにします。
素晴らしいアドバイスどうもありがとうございました。とても参考になりました。 <> jewel <>sage<>2006/02/05(日) 22:35:10 ID:WqraxQaC<>  さて、『Turn over』の続きでございますが。
ようやく本格的に構成がまとまったので、早速書き始めようと思いマス!
 シナリオは3作で完結させる予定です!

 とりあえず1本目、イントロだけで勘弁してクダサイ…orz
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/05(日) 22:36:59 ID:WqraxQaC<> 【T】
    ―時空管理局・巡航L級8番艦『アースラ』―

 カツカツカツカツ…
 司令室の外の廊下から、靴音が響いてくる。

(―こりゃ、相当イラついてるかな?)
 キーボードの上で滑らかに指を滑らせながら、エイミィは思った。
 いささかテンポの速いその小気味良い音は、彼女のほぼ真後ろのドアでふいに止まる。
「やられたよ、エイミィ。3つ目だ…!」
 ドアが開くと同時に、クロノが苛立った様子でそう口にした。
「お疲れ様クロノ君。映像届いてるけど、見る?」
「やめとくよ…見たところで、気分が悪くなるだけだ。それよりも、状況の詳細を」

「了解。…今から34分前、現地時刻で12:47。
 例の長髪の魔導師が、ミッドチルダ支部第7基地を襲撃。
 進入経路は、玄関で警備中の武装局員4名を蹴散らしての、堂々正面突破。
 3分後、通信室破壊により本局との連絡遮断。逃げ出したオペレーター達から
 携帯端末による連絡が本部に届いたのが、更にその8分後。その頃にはもう、
 施設の70%以上が破損または消失。司令部を含むメインシステムは、完全に破壊。
 魔導師の姿は…当然あるわけナシ、と」
「被害者は?」
「魔導師との直接戦闘での負傷が79名。建物の崩壊・火災によるものが11名。
 うち重傷者は8名で、いずれも魔力ダメージによるもの。死亡者は……ゼロ」
「またか…!」
 クロノが、拳を握り締めた。以前、アースラで手合わせた時の記憶が甦る。
 口元に笑みを湛え、強大な魔力を手に、自分達を圧倒した蒼黒の魔導師。
『死者ゼロ』という事実は、逆に相手の強さを見せ付けられているようだった。

「本局で、ユーノ君に会ってきたんでしょ? 何か収穫あった?」
「いや…何しろ、手がかりが映像だけだからな。本局の過去の全犯罪者リストにも、
 同じ顔を持った人物はヒットしなかった。ましてや、無限書庫となると…
 流石のユーノもお手上げだそうだ。せめて、名前だけでも分かればいいんだが」
「無限書庫の情報量の多さが、アダになってるってわけか…」
 お手上げ、という様子で、エイミィが溜め息をつく。
「…前回の遺跡破壊とは違う、管理局への直接攻撃だ。このまま思い通りにさせたら、
 管理局のシステムそのものが麻痺して、犯罪が増加しかねない」
「現状じゃ、警戒レベルを引き上げて、武装局員の配置数を増やす以外、
 対策がないもんね…」
「アースラに乗り込んできた時もそうだったが、こっちの人手不足を巧みに利用してる。
 高い戦闘能力よりも、厄介なのはそのしたたかさだ」
「でも、本局もいよいよ本腰みたいだよ」
 エイミィが画面を切り替えると、本部からの指令が映し出される。
「4番艦から9番艦までを動員して、常時警戒レベル4での哨戒任務!
 これなら、転送ポートですぐに現場に駆けつけられる。
 網にかかる可能性も、少しはあがるってもんでしょ?」
「かけるだけじゃ駄目さ。問題は…食い破られないようにする事だ」
 画面に映る魔導師を睨み付けながら、クロノが呟いた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/05(日) 22:38:14 ID:WqraxQaC<>
【U】
     ―2日後、5番艦『フェンリル』休息室―

「…ヒマだぁ!」
 ヴィータが声をあげ、椅子から立ち上がる。
「こらヴィータ、静かに」
 本を閉じ、苦笑いするはやて。
「だって…はやてが久しぶりの連休で、せっかく一緒に遊べると思ったのに…」
「しょうがないわよ、ヴィータちゃん。これも、大切なお仕事なんですから」
「その通りだぞヴィータ。第一、今我らがこうして主と共にいられるのは、
 管理局への協力が条件だという事を忘れるな」
「わあってるよ」
 ぷん、と拗ねるヴィータ。
「シグナム。シグナムも、そんなにぴりぴりしたらあかんよ。
 せっかくみんな一緒におるんやから、もっと楽しく過ごさんと。な、ザフィーラ?」
「はい」

 特別捜査官として、5番艦での任務補佐についていたはやて。
 レティ提督の計らいもあり、ヴォルケンリッターの四人がそれに付き従っていた。

「それにしても、今回の犯人さんって、何が『目的』なんですかね?」
「確かにな。管理局を襲っておきながら、ここまで死者がいないというのは妙だ。
 以前艦船に乗り込んだときには、あの魔導師は本局への『アルカンシェル』発射を
 示唆していたらしい。あれを本局に打ち込めば、それこそ犠牲者は数千人を超える。
 …そういう意味では、今の行動には一貫性がない」
 シャマルの用意した紅茶を飲みながら、シグナムが真剣な表情で語る。
「…みんなが、わたしの為に闘ってくれてたときと同じで、他の理由が?」
 はやての言葉に、騎士達の表情が曇る。慌てて、彼女は付け加えた。
「あ、みんなの事を責めてるんと違うよ! みんなは、わたしのためを思って、
 必死に闘ってくれたんやから。それに今のみんなは、たくさんの人を守る為に闘ってる。
 もし、シグナム達のことを悪く言う人がおったら、わたしが絶対に許さへん!」
 真剣な様子でそう語る主に、騎士達は微笑みで応じた。
「…有難うございます」 「…」 「はやてちゃん…」
「はやて…」 ヴィータが、はやてに抱きつく。はやてはよしよし、と頭をなでた。

「みんな、どーせなら、わたしらがあの魔導師捕まえて、クロノ君たちを驚かせたろ!」
「お〜♪」
 笑顔で手をあげる、シャマルとヴィータ。残る二人は、微笑と共に頷いた。

 ―この僅か20分後、彼女達の目の前に『EMERGENCY』の文字が現れる。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/06(月) 00:10:00 ID:ItHO9Uu2<> >>430
 GJです。ユーノ新デバイスGET?

>>jewel氏
 GJ!続編キタコレ てか連載スピード早すぎw
<> YUKI<>sage<>2006/02/06(月) 00:20:06 ID:/I0FAC2U<> >>jewel氏
おおぉ!
待ってました!
いよいよ佳境に入っていくんですね。
はやてとヴォルケンリッターの面々とのやりとりが良いですねぇ。

さて、私も新作第1部を書き終えましたので、投下します。
今週は仕事の都合で金曜日までは投下できないと思いますので、ちょっと間があいてしまいますが、ご勘弁ください。
<> YUKI 二人の距離1<>sage<>2006/02/06(月) 00:21:34 ID:/I0FAC2U<> 「んん、、、んあぁ、、いいっ、、、ふん、、、ん、、」
しなやかな裸体 健康的な脚線が 美しさと扇情さを共存させ、見る者の目を釘付けにさせる

細く美しい指が、下腹部からたどる様に秘部を守る薄い布地にたどり着く
なぞるように指が、布地の上から秘部を移動する
優しく そして 淫らに

空いたもう片方の手が女性を象徴させる二つの膨らみにかかり
形を確かめる様に全体をさすり 頂点の突起に指を絡める

「あぁ、、、、はぁ、、いいぃ、、、、、、うううん、、、、、、」

気持ちの高揚と共に快感の波が押し寄せていることがわかる


今自分の目の前に起きていることが現実なのか 少年は確かめることが出来なかった
自分の見間違えでなければ、彼女は自分が最も良く知る人物だ

「え、、、、えい、、、みぃ、、」


ピッピピピピピピピピピピピピッ!!!!!
けたたましく鳴り響く目覚まし
――――ガバッ―――――
その音に驚き少年は跳ね起きた

「はぁはぁはぁ、、、、、、い、、今のは、、、ゆ、め、、か、、、、」
寝汗が凄い
少年の名はクロノ・ハラオウン 弱冠14歳にして時空管理局執務官を努める優秀な魔道士である

「なんで、、、、あんな夢を、、、、、、、しかも、、、、エイミィが、、、」
夢の内容を思い出し、顔を真っ赤に染める
彼の言う女性、エイミィ・リミエッタ 16歳
クロノの学生からの友人で、現在は仕事上執務官補佐として部下になる
が、プライベートでは年上の彼女に勝てることは無く、遊ばれてしまう

クロノにとっては良き友人、部下であり、敵わない姉貴分といった感じだ
だからこそ、クロノは今朝の夢に参ってしまった
今までエイミィに対しそんな感情は持ったことが無かった
しかも性の対象として等とは全く考えたことが無かった相手

その相手がいきなり夢の中で自慰行為にふけっているなど、想像の範疇を越えている
「お、、、、おかしい、、、、、、いや、、、おかしいのは僕か、、、、、」
混乱しつつも、なんとか胸の鼓動をおさめようと必死になる

「落ち着け。大丈夫だ、あれはただの夢だ。僕は何もおかしくない、、、。」
少し落ち着きを取り戻し、なんとか着替えを終わらせる
しかし、、、、、、、

「くそっ、、、、なんでおさまらないんだ、、、、、、、」
心の動悸はおさまったが、彼の中でおさまってくれない個所があった

それは彼の生殖器、、、、
思春期真っ盛りの彼の身体は、ちょっとした事でも反応してしまう
なんとか収まるように、頭の中では様々な数式を考え、邪念を払う
<> YUKI 二人の距離2<>sage<>2006/02/06(月) 00:23:51 ID:/I0FAC2U<>
10分後
やっとおさまったのを確認し、部屋を出てアースラ艦内のブリッジへ向かう

ブリッジの扉の前で深呼吸
「すーーーーはーーーー。良し、大丈夫だ。」
ブリッジにはエイミィ本人が居る 
あんな夢の後だから、余計な意識ができてしまう

バシュゥ
扉が開き、ブリッジに入る
「おはよう。」
いつもどおりの挨拶
仕事場に入ればいつもの自分に戻れる
そう思っていたクロノだったが、、、、、

「クロノ君おっはよ〜!今日は寝坊かい?」
エイミィの元気な挨拶と笑顔
これもいつもどおりの光景だった

「あ、、、、あぁ、、おはよう、エイミィ、、、す、、少し寝過ごしたようだ」
「?  ふぅ〜ん、、、、珍しいねぇ。」
「あ、あぁ、、、たまには,,こんな日もある、、、さ」

クロノはエイミィに顔を向けようとしたが、何故か顔をそらしてしまう
「(だ、、、駄目だ、、、顔を見ることができない、、、、くそ)」
そんな不信なクロノの行動に、エイミィは首をかしげる

「クロノ君、、大丈夫、、、、?なんかいつもと雰囲気が違うけど、、?」
「い、、いや、そんなことはない。僕はいつも通りだ。」
心の動悸を悟られないように、いつも通りの返答を試みる

が、付き合いの長いエイミィは、そんなクロノの変化を見逃さない
「やっぱり何か違う。、、う〜ん、、、、何ていうか、よそよそしいよ。」
「い、いや、、、僕はいつもと同じだ。そんなことより、昨日の残りの報告書を見せてくれ」
「う、、うん。クロノ君がそう言うなら、、、」

なんとか誤魔化すことができ、クロノはホッと胸をなでおろす
仕事に入ってしまえば雑念が生まれることは無い
やっといつもの自分に戻れる

書類に目を通しながらクロノは安心していた
「エイミィ。このグラフの表現なんだが、もっと簡素化しても良いんじゃないか?」
エイミィの報告書に指摘部分を見つけ、エイミィに話し掛ける

が、、、、
そこに居たのはエイミィではなく、金髪の美少女、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン9歳 
クロノの義妹で、彼女も優秀な魔道士である
「兄さん、エイミィならお手洗いに行ったよ。」
「え、、あぁ、、、そうか」
「???」
いつもの兄と違う反応に、フェイトも首をかしげる
いつものクロノなら人を見間違えるなんてまずありえない

<> YUKI 二人の距離3<>sage<>2006/02/06(月) 00:24:50 ID:/I0FAC2U<>
しかも、その後の返答もどこか上の空で、顔を赤く染めた兄はどこかおかしい
「兄さん、身体の具合でも悪いの?」
「え、、、何でだい?」
「だって、、いつもの兄さんとなにか違う感じがするの、、、、上手く言えないんだけど、、、」

クロノは内心慌てていた
「(フェイトにまで気付かれるなんて,,,,)」
「兄さん、、具合が悪いなら医務室に行った方が良いよ」
「い、、、いや、大丈夫。何も問題無いよ」
「そう、、、、、、無理はしないでね」
「あぁ、ありがとう」


結局この日は仕事も大きなミスは無く過ごせた
昼食時に醤油とソースを間違えるという古典的なボケをかまし、エイミィ・フェイトの二人に余計な心配をさせてしまったが、、、

しかし、今日一日でクロノは自分がエイミィに対し、性の対象として見るようになってしまった事に気付いた
仕事中、歩いている時、後姿、様々な時にエイミィを目で追ってしまう
特にエイミィの唇、胸、太もも、後姿のヒップ等、思春期には刺激の強すぎるものばかり

クロノは自分のドス黒い欲望と、理性の間で必死に戦っていた
「落ち着け、、、落ち着け!、、、、、気にしちゃ駄目だ、、、エイミィをそんな目で見ちゃ駄目だ」


クロノは布団に寝転がりながら、明日からの対応を思案していた
いつも通りに接するにはどうすればいいか、、

「くそっ、何も思いつかない、、、、、」
そんな時、
コンコン
ドアをノックする音が響く
「開いてるよ・どうぞ。」
どうせ母親であるリンディ艦長か、フェイトだろうと思った

だが、入ってきたのは、現在の悩みの種、エイミィ本人だった
「えへへ、お邪魔しま〜す。」
「え、エイミィ!ど、、どうしたんだこんな時間に!?」
「うう〜ん、やっぱり今日のクロノ君の様子がおかしかったなぁって思って」
<> YUKI 二人の距離4<>sage<>2006/02/06(月) 00:26:01 ID:/I0FAC2U<>
風呂上りなのだろう、寝巻きのトレーナー上下に身を包み、彼女の身体全体から良い香りがした
「だからといって、こんな時間に男の部屋に入って来るなんて、、、」
「え〜、、だってクロノ君なら問題ないでしょう?」
クロノはこの言葉にショックを受けた
つまり、彼女にとって自分はそういう対象として見られていないということだった

自分では解っているつもりだった
しかし、改めて自覚させられたことによって、クロノの中で何かが崩れてしまった

うつむいたままのクロノの雰囲気がおかしいと思ったエイミィが話し掛けた
「クロノ君大丈夫?」
クロノの顔を下から覗き込みながらエイミィが尋ねる

その瞬間、クロノの中で何かが壊れた

クロノが突然エイミィの唇を奪う
「???!!!!!!」
突然のクロノの行為に反応出来ず、ただ呆然とされるがままのエイミィ

唇を離し、エイミィの両肩に手をかけると、クロノはそのままエイミィをベッドに押し倒す
「キャッ!」
キスの動揺からまだ立ち直ってないエイミィはされるがままに押し倒されてしまう

「く、、クロノ君、、、、」
初めて見るクロノの男の顔に、エイミィは恐怖を感じた
「エイミィ、、、」
そのままクロノの唇はエイミィに重なり、両手でエイミィの両手首を押さえつける
「ん!んん!、、、ク、、クロノ君、、だめ、、だよ」
「エイミィ、、、、もう、、止められない」
キスを繰り返しながらクロノの右手はエイミィのトレーナーの中に滑り込み、下着ごとエイミィの胸に触れる
<> YUKI 二人の距離5<>sage<>2006/02/06(月) 00:26:47 ID:/I0FAC2U<>
「やっ、、、だめ、、、」
「柔らかい、、、」
クロノの感想に耳まで真っ赤にしてエイミィが顔をそらす

「ひ、、ぐすっ、、、お、お願いだから、、、クロノ君、、、もう、止めて。。」
そんなエイミィの言葉はもうクロノの耳には入らず、ただ自分の欲望に従って動いていた

そのままクロノの右手がエイミィのズボンの中に滑り込んでいく
!!
「やっ!、、、そ、ソコだけは駄目!や、、め、、、うう!」
クロノはキスでエイミィの唇を塞ぎ、エイミィの両手による、クロノの右手を押さえようとする抵抗も力でねじ伏せた
そのままエイミィの大事なところに触れようとした瞬間

「いやぁ!!」
クロノの手から開放されたエイミィの右手がクロノの左頬にヒットする
パァン!
乾いた音が部屋に響く

そのショックでハッとなったクロノは我に戻った

「、、、、、、、、、、え、、、、エイミィ、、、」
「う、、、ぐす、、、、ん、、、ひう、、、、ひっく、、、、、、」
泣きながら両腕で自分を抱き,クロノから少しづつ離れていく
「あ、、、あ、、、そ、、、その、、、ぼ、、、ぼくは、、、」
自分のしたことに気付いたクロノは顔を真っ青にしながら何か言おうとした
が、、、、、、、、
「く、クロノく、、、んの、、、馬鹿ぁ!!!!!!!」

エイミィは叫びながら部屋を飛び出してしまった

部屋に残されたクロノは、ただ自分の犯した罪と、彼女を傷つけた自分への怒りに震えていた
「ぼ、、ぼ、、くは、、、、とんでもないことを、、、、、、、」

その夜、クロノは一睡もできずに翌朝を迎えた
<> 31<>sage<>2006/02/06(月) 00:27:22 ID:tf5GnLdS<> ちょっと来てなかったのにもの凄く進んでる…いったい何事ですか?


>jewel氏
なのは×ユーノの、何という甘い…そして背後で暗躍する親友(?)ズ
そしてお約束の熱オチ…GJです!

謎の魔導士続きキターーーーー!
魔導士の目的、なのは達との再戦などワクテカしながら待ってます!
 
>430氏
地の文章が凄く上手いです。見習わなくては…。ユーノもいい感じですし
オリキャラもなかなか面白そうな二人です。
謎のデバイスもどんなものか、楽しみです。続き、待ってます。

>176氏
懊悩とするクロノに激しくワロタ。本当に女性には弱いクロノくん…
そしてお約束の背後で暗(r <> YUKI <>sage<>2006/02/06(月) 00:29:05 ID:/I0FAC2U<> とりあえずここまでです。
内容は、ラブコメ王道を書いてみようと思ってます。
じつはこの後の構想がまだ中途半端でして、、、、
なんとか形を崩さずに完結させたいなぁ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/06(月) 10:46:55 ID:ufDwXJ4C<> 押し倒しキタ━━━(゚∀゚*)━━━ッ!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/06(月) 17:36:02 ID:5zCOXIVU<> >>YUKI氏
 キタ━━━(゚∀゚*)━━━ッ!! wkwk
 エイミィの「…馬鹿ぁ!!!!!」で悶え死にかけました

>>jewel氏
 キャラのセリフ回しが巧いですね。「なのは」の世界観が良く出てる!
 魔導師のナゾの行動に対する考察にも引き込まれます。
 自分にはまったく先が読めませんw <> jewel :【Turn against】続き。<>sage<>2006/02/07(火) 18:43:08 ID:r/l1SA2h<>  少しばかりですが投下します ↓


【V】
     ―時空管理局ミッドチルダ支部第9基地―

 けたたましいアラート音から三分後、はやてと騎士達を待ち受けていたのは、
 ―以前戦ったのと同一形状の、傀儡兵の群れ。
「何だ、またこいつらかよ」
「シャマル、マスターの反応ある?」
「ええと…はい、まだあります! 3F東、カンファレンスルーム!」
 クラールヴィントが、即座に『敵』の場所を導く。

「主、私が行きます! シャマル、ザフィーラ、主の守りを。ヴィータは遊撃を頼む」
「シグナム!?」
 飛び出そうとするシグナムを、はやての言葉が制した。
「…これだけの数です。私が飛び回るよりも、貴方の広域魔法の方が遥かに有効です。
 二人の後方で、呪文の詠唱を。それまでは、ヴィータがきっと時間を稼ぎます」
「…作戦、なんやね?」
「主?」
 シグナムが、不思議そうにはやての表情をうかがった。
 しかし、はやては真剣な表情を一瞬のうちに消して微笑む。
「…分かった。シグナム、一人でムリしたらあかんよ。すぐに駆けつけるから、
 それまで時間稼いでてな?」
「はい。それでは!」
 風をまとい、シグナムが飛び立った。
 その背中を見届けると、はやては彼女の杖―シュベルトクロイツを空にかざす。
「さ、みんな。いくよ。早いとこやっつけて、シグナムのとこ行かな」
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/07(火) 18:44:04 ID:r/l1SA2h<> 【W】

(カンファレンスルーム…あそこか!)
 既に一部で火災が発生している建物内の一室に、シグナムが飛び込む。
 室内にいたその男は、僅かながら驚いた顔を見せ…体を向けた。
「…おいおい、もう来ちゃったのか? そろそろ本気になってくるだろうと思って、
 傀儡兵を持ってきたってのに、こんなに早いんじゃ意味がない」

 ―長髪の魔導師が、やれやれと苦笑する。

「あいにくだが、貴様の戯言に付き合うつもりはない。
 主の手を煩わせるわけにはいかんのでな。戦うか降参するか、早急に決めろ」
 レヴァンティンの切先を向け、シグナムが言い放つ。
「凛々しいねえ。君、この前の遺跡の時にもいただろう? 見事な戦いぶりだった。
 食事や紅茶なら是非ご一緒願いたいが、今は遠慮させてもらうよ」
 そう言うと、再び魔導師はシグナムに背を向けた。
「逃がすか!」『Schlangeform!』
 連結刃とかしたレヴァンティンが、その背中に迫る。

 ―キイィィン!
 甲高い音が、室内に響き渡った。
「新手!?」 剣を引き戻し、身構えるシグナム。
「…先生、ここは僕が」
 シグナムの攻撃を受けたのは少年、だった。背はクロノよりもやや高いが、
線の細いその体型は、およそ「戦士」という単語には相応しくない。
「すまんな。あとで例のポイントに来てくれ。転位魔法で迎えに行く」
 背中からの声に、少年は振りぬかぬまま、はい、と答える。
「逃がさん!」 ギィン!
 シグナムが切りかかるも、再び少年が間に飛び込み、それを防ぐ。
 (…速い!)
「気をつけろよユウキ。彼女、相当の実力者だ」
「…『アレ』、使ってもいいですか?」
 ユウキと呼ばれた少年が静かに尋ねた。
「…やむを得ないだろうな。本当は、ヒトを相手にそれを使わせたくはないんだが…」
「行って下さい、先生」
「すまんな…死ぬなよ、ユウキ」
「待て!」
 シグナムの声もむなしく、魔導師は光の中に消えた。

「…すみませんが、相手してもらいますよ。追わせるわけにはいきませんから」
 少年は独り言のようにそう呟くと、その細い剣の先をシグナムに向けた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/07(火) 18:45:26 ID:r/l1SA2h<>
【X】

「はっ!」
 幾度目かの少年の斬撃。シグナムは、それを巧みに捌き…はじき返す。
「くっ…!」 ズサァ!
 衝撃を足先から床に滑らせ、少年はこらえた。摩擦力と彼の脚力が衝撃に上回った瞬間、
彼は再びシグナムに飛びかかっていく。
 無謀、ともいえる突進だった。度重なるその攻撃を、シグナムは的確に避け、捌き、
受け流し…そして反撃に転じる。
 此度の少年の肩口からの一振りも、しなやかに身体を反転させてかわす。
「紫電…一閃!」
 捉えた、とシグナムは思ったが…炎を帯びた剣からは、何の手ごたえも伝わってこない。
 少年の姿は、部屋の隅にあった。
(…やはり、速いな。この速さ、或いはテスタロッサ以上かもしれん…)

「はぁ、はぁ… 強い、ですね…」
 やや息を荒くしながら、少年は感嘆に満ちた眼差しで言った。
「諦めろ。その程度では、我が身に傷を与えるのは不可能だ」
 シグナムが言い放つ。確かに、少年は速い。だが、それだけなのだ。
 斬撃の型はでたらめ、そして何の駆け引きもない単調な突進。
 度重なる歴戦を生きてきたシグナムの技・経験・読みは、「速さ」という一項目
のみで埋められる程、浅いものではなかった。
 少年はもう一度飛びかかるも、シグナムに完全に見切られる。
「…もう一度いう。諦めて、あの魔導師の向かう場所を言え。
 今のお前より、私の方が上だ」
「そうみたい、ですね… とてもじゃないけど、敵わないや」
 少年は苦笑いすると、僅かに湾曲している剣を鞘に収める。

 ―諦めたのか、とシグナムは思った。
 しかし次の瞬間、少年の剣を中心に、静かに魔力が集まっていく。
「…すみません、先生。コレ使わないと、ちょっとムリみたいなんで」
 俯きながら薄く笑うと、鞘に収めたまま、少年が身構えた。
「レヴァンティン」
 シグナムの声で、カートリッジをロードしたレヴァンティンが再び炎を纏う。
 先程までとは異なる、少年の隙のない構え。
 空気が、変わった。
「行きます。…僕の、唯一の『技』」

 すっ… 少年の姿が、シグナムの視界から消えた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/07(火) 18:46:06 ID:r/l1SA2h<>
【Y】

 刹那、シグナムには、「何が」起こったのか理解できなかった。
 脳裏にあったのは、『疾い』という一語のみ。
 痛みは全く感じなかった。だからこそ、目の前にいる少年に、直ぐに反撃を試みた。
 しかし、攻撃を受け止めたはずの愛刀は…いつもの長さの半分にも満たない。

 そして次の瞬間―自分の肩口・胸から吹き出す鮮血に、シグナムは意識を失った。

「シグナム…?」
 部屋にはやて達が駆けつけたとき、目の前には信じがたい光景が起こっていた。
 魔導師ではなく、一人の少年の剣が…シグナムの身体をバリアごと「斬った」のだ。
「シグナム!!」
「くそっ!」 『Schwalbefliegen!』
ヴィータが弾丸を放つ。それを避けると、少年は4人から距離をとった。
 ザフィーラとシャマルがシグナムに駆け寄り、瞬時に結界を展開する。
「…傷が深すぎる。わたしだけじゃ、治療は…!」
 シャマルが、落ち着かない様子で言う。
「…テメエェェッ!」
「ヴィータ、あかん!!」
 目の色を変え、少年に飛びかからんとするヴィータを、はやてが止める。
「…撤退や。もう、魔導師もおらん」
「でもっ!! アイツが!!」
「ヴィータっ!」
 躍起になるヴィータに、はやてが涙目で叫ぶ。その声に、ヴィータは武器を収めた。

「撤退ですか…助かりますよ。4対1じゃ、とても敵いそうにないですし」
「…シグナムにもしもの事があったら、わたしらが絶対許さへん。絶対に…!」

 転位用の魔法陣の中で、はやて達は少年を鋭く睨み付けた。
<> jewel <>sage<>2006/02/07(火) 18:53:08 ID:r/l1SA2h<>  ひとまずここまでです。
…はい、ごめんなさいm(__)m 
 はやて&ヴォルケンの戦闘を期待していた方、魔導師の真意を知りたい方…
 完全に裏切った形になりました。
なんか「謎を謎のまま残す事で強引に話を引っ張ろうとする」っていう、
 某火曜ドラマ『アン○ェア』みたいなアンフェアな感じになってますね。

 でも、シグナムの話は一本書きたかったので。
彼女の「敗北」はある意味タブーだとは分かってますが、これも必要な要素だと思いましたので。
 よろしければ今後もお付き合いくださいませ m(__)m <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/07(火) 19:39:24 ID:AkedFTdx<> >jewel氏
お、続きが来ましたね。GJです。
……って、シグナム負けたー!?
魔術師といいこの剣士といいなんだこの強さは…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/07(火) 22:25:45 ID:J3Lwn/22<> >>jewel氏
乙です
そういえばヴォルケンリッターの魔導士ランクって公式で書かれてるっけ?
敵さん方はAAA+かSってところですか

続きマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/07(火) 23:57:01 ID:jWi28Tiw<> 「・・・高町戦技教導官は、別の次元で大切な特別任務中だ。君だって知っているでしょう、八神捜査官」

それは、いつもの彼女ではなく。

「せ、せやけど・・・・」

あくまで事務的な、執務官──指揮官としての、強張った声。

「任務中の人間を呼びつけるわけにはいかない。彼女への連絡は認められない」
「てめ・・・!!」

感情の篭っていない他人行儀で冷徹な言い回しに
激昂しそうになるヴィータを、はやての横に控えていたシグナムが制する。

「・・・・本当に、それでいいのだな?」
「何度も、言わせないで下さい。シグナム捜査官補佐」
冷たい口調とは正反対に明らかに感情的になっている少女の前では、シグナムの確認もにべもなく退けられてしまう。
一方ブリッジの空気は冷たい。これもまた全ては、「彼女」のいつもとは大きくかけ離れた冷たい態度によるもの。
艦長であるクロノでさえ、様子のおかしい妹とはやて達に視線を向けたまま、動かせないでいる。

「・・・・この任務は、『私達の任務』です。なのはの・・・高町教導官の力なんて、いらない・・・!!」




魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−

第三話 彼の者がために・前編




「任務開始は三時間後。詳細なデータを取り終わってから。それまで、解散」

自動扉の向こうに消えた金色の髪は、怒気を孕んで。そしてなお、一目でわかるほど、どこか寂しげだった。
「ッ・・・いいのかよ!!あんな風に勝手言わせて!!いくら今回はあいつが指揮だからって・・・!!」
「落ち着け、ヴィータ。・・・・主、お聞きしたいことが・・・」
「・・・わかっとる。・・・クロノくんにも、説明せなな?」
「・・・ああ、頼む。状況を把握したい。この任務の責任者としても、あの子の兄としても、だ」
はやての向いた先で、クロノが頷いていた。


───辺境の遺跡を発掘調査中のユーノが消息を絶ち、その遺跡内から多大な魔力反応が確認された───・・・。

はやてがあの時自宅で受け取ったクロノからの通信は、そういったものだった。
遺跡内にはロストロギアも確認されており、アースラがこの事件の担当となったため、応援にきてほしい。
クロノからの依頼にはやては二つ返事で答え、騎士達を集め彼らと合流したのだが。

狭い遺跡内部での活動を考え、アースラの直衛にヴィータとはやてが残り、
医療・調査班のシャマルを護衛しつつ残りの四人が突入。

自分も行きたいとだだをこねるヴィータをなだめながらその基本方針を決めた直後。
シャマルの言った一言が、「彼女」の態度を豹変させたのだった。 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/07(火) 23:58:40 ID:jWi28Tiw<> 「そうか、なのはと・・・・。あの子が変だったのはそのせいか」
「ごめんなさい・・・そんなこととは知らずに、無神経に『なのはちゃんはいいの?』なんて聞いちゃって・・・」

はやてからの説明を受け、クロノが考え込み、シャマルが落ち込む。
他の一同も気まずそうにしている。

「シャマルのせいやない。せいやないんやけど・・・」
「テスタロッサの裁断が、任務規定に合法である以上、逆らうこともできない・・・か」

この事件に関して、高町なのは教導官は無関係である。
現場において消息を絶ち事件に巻き込まれたユーノ・スクライアとは顔見知りであるが、そこまでのこと。
家族でもなければ将来を誓い合った仲でもない、単なる赤の他人だ。
また、彼女は別の任務中である。
人員的に考えて彼女に緊急の救援を要請せねばならない状況でもない。
よって、彼女に対しての応援要請は必要ではない。
従って、彼女への不要な連絡は双方の任務遂行に支障をきたすおそれがあり、許可できない。

・・・これが、フェイトの下した結論である。正論一辺倒の彼女らしからぬ論に理由を知るはやてを含め一同は戸惑い、
まともな反論を返すことができなかった。

「クロノ君、なんとかならへんの?」
「・・・できなくはない。しかし指揮をフェイトに任せた以上その判断を覆すのは僕が上官とはいえ、正当な理由なしにやるわけには」
「立場を利用した横暴、になっちゃうもんね・・・」

クロノもまた、提督でありながら彼女を心配している兄という難しい立場なのだ。
補佐席に座るエイミィ共々うな垂れる。

だが、この空気のまま任務に突入するのはまずい。
こんな気まずく噛み合わない雰囲気を抱えたままでは相互の連携にも支障が出るだろうし、
うまくいくはずの任務だって失敗するかもしれない。なのはとの仲は一時的に今は置いておくにしても、
少なくとも一同とフェイトの間だけは正常近い状態に持っていかなくては。

「クロノ艦長、私に任せてはいただけないだろうか」
「君が?」

一様に思案するメンバーの中ではじめに顔をあげたのはシグナムだった。
意外といえば意外、クロノも実際そう言いたいような表情である。

「ああ。それには艦長、あなたの力が必要だ」
「僕の?だが圧力をかけるのは無理だと・・・」
「そうではない」

艦長席のクロノに語るその手には、待機状態のレヴァンティンが既に握られていて。
一同は彼女の言う「対応策」に耳を傾ける。
彼女の説明は対して長くはなかった。

「────というわけなんだが、どうだろう」
「確かにそれやったら・・・」
「問題はないだろう。だが・・・・」
「なんだ、艦長そのジト目は」
「いや・・・まさか君がそんなこすっからい手を思いつくとは・・・・。シャマルやはやてに似てきたのか?」
「む、失礼な。あなたの妹君のことを思ってのことなんだぞ。絡め手と言ってもらいたい」
「あー、クロノ君それひどいわ」
「私そんな風に思われてたんですか・・・」
クロノの言葉に心外そうに返すシグナム、はやて、シャマル。
彼らのやりとりに冷え切っていた艦橋の空気も、いくぶん暖まってきたようだ。 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/08(水) 00:03:11 ID:Jbd2FaMC<>
「・・・まあ、いい。とりあえず頼む、シグナム。僕のほうも君の言うようにやることはやっておく」
「わかった。・・・・では主、行って参ります」

レヴァンティンの鎖を揺らし、心配げなアルフに目をやるとシグナムはフェイトを探しに艦橋を一礼して辞した。
おそらくは自室か訓練室だろう。どちらかに向かえば彼女はいるはずだ。
気持ちが沈んでいる時、フェイトは大抵どちらかにいる。

『マイスター、あの・・・』
「ん?どないしたん、リインフォース」

多少なりとも平時の空気の戻ってきたブリッジにはやてが安堵していると、リインフォースが肩の上で怯えていた。
その摺り寄せられた小さな身体から、頬に彼女の震えが伝わってくる。

「だいじょーぶやて。フェイトちゃんはちょこーっと怒っとるだけや。シグナムならきっと・・・」
『違うんです・・・あれ・・・』
「?あの遺跡がどうかしたんか?」
モニターに映る遺跡の様子に、彼女は怯えているようだった。

『うまく言えないんですけど・・・見たことあるような・・・』
「・・・ほんまか?」
『ごめんなさい、わかりません・・・曖昧で・・・。だから皆さんに言っていいものかどうか・・・』
「いや、ありがと。なんかわかったら言うて。恐がらんでええんよ」

すいません、マイスター。再び姿を消して鍵十字の中に戻っていくリインフォースの様子に気付いた者は他にいない。

(・・・ま、今はまだ黙っといたほうがいいやろな)

幸い、他の騎士達には特にあの遺跡を見て変化を生じさせている者はいなかった。
フェイトのことや、ユーノのことでただでさえごたごたしているのだから、なにかわかるまではこのことは胸にしまっておくべきだろう。

「はやてー」
寄ってきたヴィータの頭を撫でながら、はやては結構自分が難儀な位置にいるということを自覚し、思わず苦笑した。 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/08(水) 00:12:30 ID:Jbd2FaMC<> 前・後編になりました。第三話投下。
みんな投下ペースはやすぎ。自分は必死でやってこのスピードが限界orz
フェイトまだ怒ってます。シグナム姐さんお願いします。

そして皆さん乙。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 00:16:02 ID:ocSXzt0H<> >>640
お疲れ様
いい感じでギスギスしてますねw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 00:40:59 ID:4cGeZ0bq<> >>640
お疲れ様です。
うわぁ、フェイト完っ然にお怒りモードですね。
これからどうなるか凄く楽しみです、頑張って下さい! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 01:49:43 ID:TFDbw477<> >>640氏乙!
続きが気になってしかたがない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 05:25:12 ID:c2Tb5xk3<> >>jewel氏
>>640
 両者GJです! 長編乙!
 はやい、はやすぎるよjewel氏の連載スピード
 怖い、怖いよ>>640氏のフェイト(ガクブル
<> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/08(水) 06:05:59 ID:y/yetdOc<> ここはエロ抜きでも楽しめる良スレですね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 06:07:37 ID:y/yetdOc<> ageてしまった…orz
本当に申し訳ない <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 12:04:48 ID:a8PyVD7V<> ユーノが熱血するSSきぼんぬ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 15:49:20 ID:jsy2lIDJ<> ユーノイラネ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 16:07:09 ID:TFDbw477<> そういう空気悪くなること言うなよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 19:01:02 ID:tzFPHj5G<> じゃあ淫獣くんは私が貰います <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/08(水) 21:11:45 ID:CyDlnWpa<> >>YUKI氏
>>jewel氏
>>640
 皆様全力全開の乙! <> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:10:53 ID:sb0Pq3kc<> チョコもとろけるふたりなの

 バレンタインデーとは思い人にチョコを捧げるなんとも甘ったるい一日である。
 しかし実際チョコばかりあげているのはこの日本だけであろう。実際は花、ケーキ、カードなどを恋人に贈るのが通例である。
 どの道、恋人達が愛を誓い合うという意味では全世界共通の記念日であることに変わりはない。
「今年はたくさん作らないといけないかなぁ」
 カレンダーの赤丸を眺めていると自然と笑みがこぼれてくる。
「お兄ちゃんにお父さんに松尾さんにザフィーラさん、アレックスさんランディさん、あとクロノくん……」
 兄や父、翠屋で働くスタッフ、さらにアースラで働く局員。
 魔導師となってなのはの世界は急激に広がった。それは同時に沢山の友や仲間ができたことでもある。
「義理チョコだからって手は抜けないからね」
 翠屋の時期二代目になるであろう身としてはお菓子作りにだけは絶対の自信がある。それは時空管理局に属する身となった今でも揺るがない信念。
「あとは……」
 顔の温度が幾分か上がった。
 例年とは違うのは何も数だけでない。
「えへへ」
 ベッドの上でなのはの体がコロンと転がった。
「……ユーノくん」
 好きな男の子を思い浮かべて赤面を枕に埋める。それでも気持ちが抑えられないらしく足だけはひっきりなしにパタパタ動く。 
 時折枕から漏れる唸りと笑いが複雑に入り混じった声は傍から聞くなら少々不気味だ。
「ユーノくんユーノくんユーノくんユーノくんユーノくん……」
 新しい魔法の呪文ではないのであしからず。
 今のなのはならその気になればこれでスターライトブレイカーでも何でも出来そうな勢いだが。
「はぁ……」
 上げた顔は夢心地。溢れる笑みは至上の喜び。
 誰もが見慣れた高町なのはは遠い地平の遥か彼方。ユーノに恋する少女が一人、ベッドの上で悶え転がっている。
 そもそも二人の関係が変わったのはちょうど一ヶ月前に遡る。無限書庫の司書として本局へ勤めることとなったユーノが会う機会がないとか――実際はフェイトやはやてに押されてだが――云々で一念発起。
 やる気になったユーノは強かった。正月気分覚めやらぬ三が日明け、ユーノはなのはに告白。
『なのはの全部守りたい! なのはが誰よりも好きだ!!』
 口火を切ったユーノ一世一代の大告白。本当は一晩寝ずに考えた言葉があったのだが、なのはを目の前にしてユーノの理性はショート。結局真正面から馬鹿正直に気持ちを打ち明けた。
 だがこれが裏目に出るどころか気持ち良いほどになのはの乙女を覚醒させた。
『えっ!? あ、ゆーのくん……? あ、え、う、へ!?』
 ちなみになのはに恋愛の免疫はない。九歳だから当然だ。
 今まで彼女がユーノに抱いてきた感情は固い信頼。しかし実際の所、その一部分は異性に対する好意そのものであった。
 好意は信頼に擬態し、目覚める時まで己の存在を着々と拡大させていった。彼女自身、恋というものがよく分からなかったことが拍車をかけにかける。
『わたし……あの、その……えっと……』
 言葉の楔はいい目覚ましだった。飛び起きた好意はなのはの心に恋という感情を一気に爆発させる。
 カートリッジロード――I love ユーノセットアップ!
『わ、わたしも好きです! ユーノくんよろしく!!』
 勢いギガントシュラークでユーノに頭を下げるなのは。しかしこの時はパニック起こして実は全くわかってなかった。
 それが家に帰って反芻して、今までを思い返して、ユーノのことを再認識して――。
 その過程で彼の優しさ、頼もしさ、それにちょっとのかっこよさがなのはの心を揺さぶりかけ――。
 気づけばなのははベッドから転げ落ちていた。
「うん! 頑張らないと」
 起き上がるなのは。両手は胸前で拳を握り見るからに本気のオーラを漂わせる。
 しかしなのはがこうやってユーノのためにいろいろしてやれるようになったのは最近のこと。付き合い始めの一週間なんて、会うたびにリンゴが二つ並ぶ有様である。
 熱が冷め、冷静になって始めて似合いの二人となったわけだ。雰囲気も以前のような落ち着いた感じになっている。
 まぁそれでも甘える時はしっかり全力全開甘えるのがなのはなわけで。
「でも……やるからにはユーノくんすっごく喜ばせたいなぁ」
 ただチョコを渡すだけではつまらない。なにかもっと、もっと彼の心を虜にしてしまうようななにか。
「どうしようかな……」
 何分かそうやって悩んだ結果
「まずは義理チョコ作っちゃおう!」
 目の前の雑務だけを片付けてしまえ。メインディッシュは最後の最後まで取っておくのが吉。
「じゃあさっそくなの!」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 00:11:23 ID:SA4Ie5uA<> >>258
バッカおいらが喰うんだよ。
ユーノきゅんハァハァ <> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:11:49 ID:sb0Pq3kc<>  
 テーブルの上にはボールやミキサー、ありとあらゆる道具がひしめき合っていた。揃えに揃えた武器を前になのはは腕まくり一つして準備万端なご様子。
 流石二代目エプロン姿も様になっている。お菓子作りは魔法以上に緻密で繊細。
 故に油断は即チョコの死に繋がる。
「えっとまずは」
 目線の先は褐色の塊が重厚な雰囲気と共に鎮座している。
 例年好例の翠屋バレンタインデー限定メニューのために桃子がわざわざ海外から取り寄せたというそれはそれは高級なチョコ。そこらのスーパーで売ってるものとは各が違う特級品だ。
「食べやすい方が良いよね、そうするとなにがいいかな」
 義理といえどなのはにとっては日頃の感謝を込めた大事な贈り物。まさかただ溶かして成型したチョコを渡すなんてことはなんとしても避けたい。
 イメージ通りのチョコはないかとお世話になっている桃子直伝のレシピをめくっていく。
「……これならいいかも」
 丁寧な線で描かれたスケッチに目が止まる。絵の下には母の字で名前と材料、それになにやらいろいろなことが書き込まれていた。
 最後の所には『バレンタインには最適ね』と書かれてるおまけつきだ。
「うん! これでいこう!」
 これを元に自分なりのアレンジを加えれば完璧だ。頭の中には早くも完成図が出来上がっていた。
 薬缶がぴーっと嘶き始まりを告げる。
 まずはチョコを砕いて湯銭にかけて、それから生クリーム。隠し味は父の洋酒を少々拝借すれば万事オッケー。
 小さなパティシエ高町なのはの戦いの幕が上がる。


「できた……」
 この上ない達成感に包まれたため息。大きなこと成し遂げた時の疲労感はなんと心地よいものだろう。
 テーブルの上に整列した高町なのは珠玉の一品。下手すればこれでもう本命チョコではないかと疑るくらいの出来だ。
「後は包装すれば完成なの」
 隣に母がいたらきっと褒めてくれるだろう。そんな自画自賛もしてしまうくらいうまくいったのだ。
 これも高町桃子の血を引く娘のなせる業であろう。
 料理の方はあまりまだ得意ではないのだけれど。
「じゃあ次はユーノくんのチョコを……」
 しかしどうすればよいものか。
 ここまで出来たものを作ってしまうと逆にこれ以上のイメージが全くといっていいほど沸いてこない。
 後回しにしたおかげで本命に対して意欲がいつの間にか燻っていた。
「……どうしよう」
 レシピをめくってみてもこれ以上を要求するものはケーキやクッキーなどの一つ上のものしかない。
 やろうと思えばできる。だがなのはには純粋にチョコで勝負したい拘りが邪魔をする。潜在化で暗躍するパティシエのプライドはなんともはた迷惑なことをしてくれた。
「う〜ん……」
 頭を傾げても、ひたすら唸っても、なのはには全くと言っていいほど名案が浮かばなかった。
「思いつかないよ〜」
 万策尽きたか音を上げるなのは。
 駄々をこねるように動かした手が偶然にもレシピに直撃。あろうことかテーブルの上から滑り落ちてしまった。
「あっ!」
 母から借りた大切なレシピ。感情に任せて自分はなにをやっていたのか。
 慌ててレシピを拾う。そのときレシピの隙間からなにかが床に舞い落ちた。
「なにこれ?」
 メモ帳サイズの紙切れだ。レシピのページが欠落したわけではないのだろう。
 なにかのレシピの付け足しなのだろうか。やはり沢山の文字が敷き詰められている。
「えと…………ふぇ!!?」
 読んでなのはは突沸した。
「こ、こんなことする……の? して……いいの?」
 その内容は若干九歳のなのはにはあまりにも刺激が強すぎた。
 対象年齢十八歳以上。そんな断り書きがあってもおかしくはない。
「で、でもでも、これなら……」
 沸点を超えている頭に自制なんてものは存在せず。
「ユーノくんも喜んでくれるよね」
 幼き日々にさようなら。大人の世界にこんにちわ。
 これもひとえに彼を思う純真無垢な気持ちのなせる業だった。 <> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:12:58 ID:sb0Pq3kc<>
次々に寄せられる検索依頼にたった一人の無限書庫司書ユーノ・スクライアは多忙に苛まされていた。
 探せばなんでも出て来る無限書庫。代償は莫大な時間と手間。おかげで暇人しか利用しないという記憶の世界。
「ええと術式破壊について……」
 本の迷宮を輝く鎖が縦横無尽に駆け巡る。
「これかな?」
 本に触れ、鎖を通して内容をあらかた確認すると今度はその鎖で手元まで引き寄せる。
 おかげで休憩以外でユーノがここを動いたことは全くなかった。
「あと凝集による魔力の変化についてなどなど?」
 せめて依頼内容はもう少し明白にしてもらいたい。主といってもまだここの全てを把握したわけではないのだから。
 とは言っても文句を言う相手などここに来るわけもなく。
「はぁ……疲れる」
 疲労感だけがユーノの体に圧し掛かっていく。
 これなら検索魔法を組み込んだデバイスにでもやらせた方がよっぽど効率がいいのではないだろうか。機械なら疲れることもないのだから。
「そういうシステム組んでみようかな……」
 それで特許でもとれば収入にも困らないし、遺跡調査の資金にも出来て一石二鳥だし。
「やっぱりなのはとの将来も考えると蓄えはないとね」 
 すでに将来設計を始めているユーノである。
「さてとそろそろ休憩にでも――」
「ユーノくーん!」
「あれっ? なのは」
 長らく本ばかり映してきたユーノの目が久しぶりに人間の姿を捉える。しかもそれはクロノみたいな目の毒ではなく恋人のなのはである。
 少々生気を失っていた顔が見る見るうちに活力に溢れ輝いてくる。
「どうしたの? わざわざこんな所まで」
「そのね、ユーノくん……これ」
 差し出された両手に桜色の小箱。丁寧に緑色のリボンで包装されている。
「これは……?」
「……開けてみて」
 はにかみのなのはにユーノは小箱を手に取る。手が触れて二人頬を朱に染めた。
 リボンを解いて蓋を開けると茶色い球体が重なり合ってユーノを見上げていた。
「……チョコ?」
 無言で、なのはが小さく頷いた。
「きょ、今日はわたしの世界でお世話になった男の人にチョコを上げる日なの」
 熱暴走する顔を俯かせながらしきりに下ろされた手はひたすらに揉み手。もじもじ、と擬音が見えてきそうだ。
「それで特にお世話になった……というか好きな人にはとびっきりのチョコを上げる決まりがあって」
「そう……なんだ」
 聞いてユーノも熱暴走。書庫内は一定の室温に保たれているはずなのに体が凄く熱い。
「食べてみて、わたしの全力全開」
「う、うん」
 一つ摘まんで口の中へ放り込む。
 普通のチョコとは違ってとても柔らかい。だからといって溶けているという訳でもない。不思議な食感だった。
「なんだかすごくおいしいよ。チョコじゃないみたいだ」
「生チョコって言うの、それ」
 鼻腔を通り抜けるチョコの匂いに混じって独特の香りが感じられる。覚えのある匂いと思えばラムレーズンのそれと似ている。多分隠し味にラム酒を入れたのだろう。
「生チョコか……」
「どんどん食べて」
「うん、そうする」 <> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:14:10 ID:sb0Pq3kc<>
 次いで二口目、三口目――。
 六つ入っていたチョコたちは四つがあっという間にユーノの口へ消えていった。
 そうやって今まで上げてきた人たちはみんな笑顔でこれを食べ終わった。つまりは義理チョコなのだ、これは。
 間に合わせ、なんていうことはない。彼女にして見ればこれからが本命チョコを手渡す時なのだ。
 ユーノが五つ目を口へ入れようと視線をチョコに移した瞬間、なのはは懐に隠していたあるものを口へと素早く放った。
「お菓子作りもできるなんてなのはほんとにすごいよ」
「翠屋二代目ふぇふから」
「なのは? どうしたの?」
「ん、なんでもないよ、あはは」
 危ない危ない。危うく口の中のものが飛び出すところだった。
 なのはの口調に少しだけ眉をひそめたユーノだが取りあえず最後の一つを口にしようと中を見た。そして愕然とした。
「チョコ……半分かじられてる?」
 本当はそこにあるはずなのは多分丸なはず。だけど半円が黙ってユーノを見上げている。
 手に取ってみた。断面が明らかに人の歯形で出来ていた。
「えと……これ、なのは」
 なのはがつまみ食いをしてそのまま入れてしまった、わけないだろう。もしかして自分が食べようとした時ものすごい勢いでなのはが食べてしまったとか。
 あるわけないだろ、そんなこと。
 狐に摘ままれたような顔をするユーノになのは悪戯っぽい笑みを浮かべて僅かに口を空けた。
「えへへ、もう半分欲しい? ユーノくん」
「そりゃ、あるなら」
「じゃあ……」
 言うなりなのはは目を閉じてしまった。そして次に動いたのは唇。
 少しだけ突き出す様子はユーノにはどうみてもそれにしか見えない。いや誰にだって同じように見えるだろう。
「……な、なのは?」
「どうぞ……ユーノくん」
 かすかに動いた唇。漏れてくるのはチョコの匂い。
「なのは……もしかして半分って」
「そうひゃよ、結構辛いんだから早くして」
「で、でもなのはそれじゃあ――」
 ――キスになっちゃうんじゃ。
「バレンタインデーはチョコを上げるだけじゃないんだよ。だからチョコとなのはの気持ちを」
 ユーノの言葉を遮るなのはの言葉。
「上げたいの」
 何かが音を立てて動き出した。
 据え膳食わぬはなんとやら。気がつけばユーノはなのはの両肩に手を置いていた。
「……いただきます」
<> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:15:10 ID:sb0Pq3kc<>
 躊躇も戸惑いもない。
 上気した顔に半開きの唇。チョコの香りに包まれてユーノは目を閉じた。
 近づく顔と顔――。
 唇と唇――。
 三十センチは五秒と持たなかった。
「ん……ふ……」
 くぐもった声。構わずユーノは舌を差し込んだ。
 拒絶の意志はない。むしろ歓迎された。
 チョコが舌に勢いよくぶつかった。押し付けるようにチョコが舌に纏わり付いていく。
「う、むぅ……んぅ」
 負けじと舌でチョコを攻撃。もちろんチョコだって負けちゃいない。要領を得たのかだんだんと滑らかに、大胆に動き始める。
 しばらくそうしてなのはの舌に会うことが出来た。少し苦しかったので口を離す。
 少しだけ褐色にくすんだ橋が二人を繋いだ。
「もう……いいの?」
「全然」
 橋が切れる前になのはを塞いだ。
 まだまだチョコは残っている。全部食べきるまで今度は離さない。肩に乗っていた手が背中と頭にがっちりと回される。
 なのはも応える様に腰に手を回す。
 お互い何処でそんなこと覚えたのか。テレビか映画か、はたまた本能か。
「んぁ……ぅ……はぁ」
「はぅ…………んは」
 嚥下する喉に通るものはチョコとそれから二人の唾液。
 舌はもちろん歯に歯茎、隅から隅まで己で蹂躙し、なのはを味わい尽くす。
 少年と少女でもやってることは大人の遊戯。隙間から漏れる荒々しい呼吸は果たしてどちらのものか。結局は二人を盛り上げるスパイスであることに変わりはない。
 感覚を塗りつぶすチョコの匂いとラムの香り。酒に酔ってはいない。だけどキスには酔っていた。
「ぷはっ!」
「ふぅ……はぁ」
 十分のように二人は三分を楽しんだ。
「……あはは、ユーノくん口の周りチョコだらけだよ」
「なのはだってひげ生えたみたいだよ」
「えぇ! そんなのやだよ〜」
 茶色い髭を蓄えた顔立ちはどこぞの山賊を髣髴とさせる。それでも他が伴っていないせいで思いっきり滑稽なものであるが。
「大丈夫だよ、僕が拭いてあげるから」
 そうやってユーノはなのはの口を嘗め回し、なのはも舐め返して二人の情事はしばらく続くのであった。
<> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:16:13 ID:sb0Pq3kc<>
「いいなぁ……ユーノ」
 無限書庫の入り口の影でそんな二人を見つめる赤い瞳。
 フェイトである。
「ばれんたいん……か」
 よもやなのはの世界にそんな行事があろうとは。来年はぜひとも自分も参加しないといけない。
「でもまだ間に合うよね……」
 まだ今日は終わっていない。今からすぐ家に帰ってチョコを溶かして、多少の手間は魔法で省略すればできるはずだ。
「うん、そうと決まれば急がないと」
 踵を返すフェイト、と足元に転がる人物を思い出す。
 懐から覗く一枚のカードに目が止まった。ちょうどいいものを持ってるじゃないか、この人は。
「兄さん、そういうわけだからデュランダル借りるね」
「ちょ……ま、待てフェイト……話が見えなぐふっ!」
 思い切り背中を踏みつけて既にフェイトの姿は消えていた。
 調べ物で無限書庫に行ってみればなにやら入り口にフェイトの姿。声をかけようとしたら突然サンダーレイジで黒焦げにされた。
 何が何だか分からぬままにクロノは廊下に転がっている。自分の非なんてどこにもないはずだ。なぜだ。
「僕はなんで……こんな目に」
「あ〜クロノ君発見!」
 これはエイミィの声か。なにか急務でも入ったのか、それなら通信してくれればいいのに。
「ほぉら、今日はバレンタインデーなんだから私のチョコを食べないと」
 自分の体が動き出す。顔が擦れて少し痛い。
「艦長も腕によりをかけて作ったんだよ。こんな所で黒焦げになって遊んでないで、さっ、行こっ」
 段々勢いが増していく。襟首を掴まれて連行されるクロノ。自分が何だか珍しい動物にでもなった気分だ。
「エイミィ特製一ガロンチョコ! 私の気持ちと一緒にちゃんと食べてクロノ君」
 なんだろう、その一ガロンというのは。気にはなったが考えるのはやめた。
 まるで伝染病だ、バレンタインデーというものは。誰かが聞きつけ次の日にはアースラ中で持ちきりなのだから。
「そういえばロッテとアリアも遊びに来てるんだった」
「え……」
 いや〜な予感が悪寒と共に全身を這いずりまくった。
「ちょ……まって……やめてエイミィ」
「はいはい、まずはアースラに帰ってからね」
 こうしてアースラに強制連行されたクロノを待ち受けていたのは
 リンディの糖度無限大のチョコレートらしきものとか。
 リーゼ姉妹のチョコ塗れスキンシップとか。
 エイミィの一ガロン、チョコ拷問パーティーとか。
 これ以後クロノはバレンタインデーが一年でもっとも嫌いになったとか、ならないとか。


「ユーノくん、好きだよ」
「僕も好きだよ、なのは」
 そんなことは露知らず、ますますお暑い二人なのでした。


 そういえばなんであのレシピにあんなことが書かれたメモが挟まっていたのかというと。
 去年のバレンタインデー、兄の恭也の恋人である月村忍が桃子からレシピを借りた頃に遡る。
 桃子から見れば亀よりも鈍い二人の恋にちょっとしたキューピッド気分で自分がバレンタインデーに士郎へ実践したことを書いて挟んでおいたのが始まりである。
 忍がそれを試したのかは定かではないが、それからというもの二人の中は急激に深まったという。
 そしてメモは挟まれ一年の眠りの後、こうしてなのはに出会ったわけである。
 高町桃子のあらゆる技は娘にしっかりと伝承されていくのだった。 <> 176<>sage<>2006/02/09(木) 00:17:08 ID:sb0Pq3kc<> 今日はバレンタインデーも近いということで
なのはの二月十四日を書いてみました
少々キャラ壊れてますがご愛嬌ということで

皆さん今回もGJです
それぞれのペースでこのスレ盛り上げていきましょう

>>jewel氏
みんな生き生きしてますね
これからどうなるんでしょう、わくわく

>>430
取り付かれてもうた
ユーノよ、しっかりしろ

>>YUKI氏
クロノがやってもうた
ああ、思う存分押し倒してください

>>640
ああ、ユーノもなのはもしっかりしないとこうなるわけか
修羅場ですね


では <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 00:23:19 ID:SA4Ie5uA<> >>267
乙です。あと、変なタイミングで割り込んで本当にスマソ・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 02:01:16 ID:Dw7m0SZa<> >>176
GJGJ〜

>「食べてみて、わたしの全力全開」
これギガワロタw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 02:05:22 ID:0vl2RulX<> >>176
これは…某ろだで拝見しましたよ。
まさかあなた様が書いたものだったとは(笑) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 02:08:54 ID:prj3nLJ/<> 176氏乙!!
9歳で将来設計とは…。つか稼いでる時点ですごすぎw

>>268
あるあるwww
気にスンナ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 18:38:56 ID:g33BHqB8<> クロノVerが見てみたい…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/09(木) 21:01:01 ID:Zi4fUd08<> >>270
言われて気づいた。そういえばあったなぁ・・・。
ちょっとびっくり。 <> 31<>sage<>2006/02/09(木) 22:14:48 ID:sc/8hIzg<> >jewel氏
乙です。今回も良い感じです。


>640氏
まだ怒っているフェイにシグナムがどうするのか。遺跡の正体は。
続き、期待してます。

>176氏
胸焼けしそうだ…でもGJです。 <> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/09(木) 23:31:36 ID:CJ5ycULa<>
【Z】
     ―艦船アースラ―

 シグナム、敗北―。

 クロノから告げられたあまりに衝撃的なニュースに、メンバーは言葉を失った。
「そんな…シグナムさんが…?」
 口元に両手をそえ、震えるなのはを、ユーノが支える。
「大丈夫、なんですよね…?」
「今、本局で手術中なの。魔力ダメージよりも、物理的肉体ダメージのほうが酷くて…
 楽観的とはいえない、って…」
 そう答えるエイミィからも、いつもの軽妙なノリはすっかり消えてしまっている。
「…戦闘の映像が残っていた。音声は入ってないが…見るかい?」
 クロノの問いかけに、なのは達は恐る恐る頷いた。エイミィ、とクロノが促す。

 映像は、魔導師が逃げる直前の場面から流れ始めた。
 何事か言葉を交わし、シグナムが仕掛けたところで…現れる、もう一人の少年。
「まさか、このヒトが…?」
「ああ。…信じ難いが、僕と同い年くらいのこの少年だ」
 単独犯、と睨んでいたクロノも、流石に驚いたらしかった。
「でも、シグナムさんの方が、ずっと押してるのに…?」
「…ここからだよ」
 不思議そうに画面を見つめるユーノに、クロノが真剣な表情で告げる。
 少年が剣を収め、魔力を集め始めた。
 数秒後、正に「目にも留まらぬ速さ」で少年がシグナムに近づき―
 ―彼女のバリアを、そして剣を、シグナムの身体ごと斬り裂いた。
「…っ!!」
 鮮血に、思わず目を背けるなのはとユーノ。
 駆け寄ったはやて達が転位魔法で逃げると、少年も画面から消えた。
 クロノが、そこで映像を止める。
「…収めた剣に極限まで魔力を圧縮させ、最高の速度で接近して、斬る。
 このスピードじゃ、回避どころか防御も不可能だ。単純だが、実に理にかなってる」
「クロノ君」
 エイミィが、クロノをたしなめる。
彼女が目で合図した先には…無言のまま立ち尽くす、フェイトの姿が。
「す、すまない、フェイト。…軽率な言葉だった」
「ううん、気にしないで、クロノ」
 そういって手を振るフェイトだったが…彼女が一番ショックを受けているのは、
誰の目にも明らかだった。友であり、最高の好敵手でもあるシグナムの…崩れる姿。
 フェイトは踵を返すと、バルディッシュを手にドアのほうに向かっていく。
「フェイト! どうする気だ!?」
 その腕を取って、引き止めるクロノ。
「…現場に行きます。もしかしたら、なにか痕跡が残ってるかもしれない」
「担当の局員が、もう十分に調べたんだ。君が行ったところで、どうしようもない」
「でも!」
「落ち着け!」
 クロノが、強引にフェイトを振り向かせる。力なくうなだれる彼女の目には…涙。
「フェイト…」 「フェイトちゃん…」
「…今、僕らにできることをやろう。彼女が、戻ってきたときのために」
 執務官として、そして兄として話すクロノの胸に、フェイトが抱きつく。
「…お兄ちゃん…シグナム、帰ってくるよね…?」
 小さく、嗚咽が漏れた。大丈夫、などという気休めを言う代わりに…
フェイトを抱きしめると、クロノは決意の眼差しで、なのは達を見渡した。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/09(木) 23:32:24 ID:CJ5ycULa<>
【[】

「でもさ、わざわざ剣を鞘に収めてからもう一回抜いて切るなんて、
 なんかムダじゃない? 技のスピードとか、落ちちゃうと思うんだけど」
 アルフが、素朴な疑問を口にする。
 彼女にもたれるように座っているフェイトも、大分落ち着いたようだった。
「やっぱり、魔力圧縮の補助じゃないのかな。実際に集めやすくなるし、
 『〜の中』って、イメージもしやすくなるから」
「剣を抜く時間を犠牲にしても、チャージタイムの高速化を計ったってところか」
「…ちがう。あれは、『居合い』…」
 再び対策を議論する中、なのはが口を開いた。

「イアイ?」
「知ってるの、なのは?」
 一同の視線が、なのはに集中する。
「う、うん。あの武器も、『刀』っていう、わたしの世界の、わたしの国の武器。
 『居合い』っていうのは、刀を鞘に収めた状態から攻撃を繰り出して、もう一度
 鞘に収めるまでの、一連の流れ」
「…成る程。剣を抜く動作も、技の内ってことか。ますます厄介だな。
 エイミィ、本局に連絡。なのはの世界、特に彼女の国を中心に、検索の絞込みを」
「了解」
 エイミィが、軽快にキーボードをたたく。
「でも、変じゃないかな。その『居合い』って技以外の攻撃は、見ててかなり粗末だし…」
「相手を油断させるため、とか?」
「今にも、相手の仲間が来るかもしれないのに?」
「そっかぁ。う〜ん…」
 ユーノとアルフがやり取りを交わす。そこへ、クロノが割り込んだ。
「…おそらく、防御や他の要素を捨てて、徹底的にこの技を鍛えてきたんだろう。
 こと1対1における、戦闘のプロフェッショナルだ」
「万能型のクロノ君、こういうタイプって苦手だもんね〜」
 そういって苦笑いするエイミィを、クロノが軽く小突いた。


       ―同時刻、ミッドチルダ某所―

 キイィィンという音と共に、少年の前に展開された魔法陣。
「…おかえりなさい、先生」
 読んでいた本を閉じると、少年は魔導師に言った。
「ご苦労さまだったな、ユウキ。今頃、管理局の連中は驚いてるだろ。
 単独犯のハズが、思わぬ伏兵の登場ってね」
 ソファに腰掛けながら、魔導師は機嫌よさそうに笑った。

「どうだった、あの美人の女剣士さんは?」
「…強かったです、凄く。あこがれます」
「そうか。だが、君はそれを退けた。それは、君が『強い』ことの証明にはならないのか?」
「…僕のは、ただの『力』です。不器用で、一つのことしかできない。
 先生やあの人は、何ていうか…自分の『思い』を貫き通すための『強さ』を持ってる。
 僕とは、全然違います」
 刀を手に取りながら、彼は自虐的に呟いた。

「…君は、『強さ』の本質が何であるかを知ってる。強くなるさ、君も。間違いなくね」
「…はい、ありがとうございます。先生」
 少年は、少しだけ表情を緩ませた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/09(木) 23:33:06 ID:CJ5ycULa<>
【\】
      ―???―

(ここは…?)
 シグナムが気付いた時、彼女の身体は既に、『静寂』の中に漂っていた。
(そうか…私は…)

 ―敗れたのだな。

 おぼろげな意識の中、シグナムはそれを自覚した。
 痛みはない。それどころか、切られたはずの身体にも、傷跡はなかった。

(主は、無事だろうか…?)
 ふと、笑顔が浮かんだ。穏やかで、優しさを湛えた笑顔。
 この手で、守ると決めた。全てをかけ、命にかえても。
(「命に代えても」、か…皮肉だな)
 ふ、とシグナムは微笑った。ただ、無事を祈るばかりの自分が、無性に情けない。

 ―そうだ、レヴァンティンは?
 どんな時も、常に自分と共に歩んできた剣。自分の…魂。
 慌てて探してみるが、見つからない。呼びかけにも、応えはない。
 気がかりが、もう一つ増えた。

「…探し物はこれか? 烈火の将」

 自分の耳、というより頭の中に、突然響いてきたその言葉。
 驚きながら、声が聞こえてきた方向に顔を向ける。
「リイン…フォース…」
 会っていない期間は、それ程長くないにも関わらず、奇妙に懐かしい顔がそこにあった。
 彼女の手には、シグナムの剣―レヴァンティンが握られている。
「久しいな、烈火の将よ」
 微笑と共に、彼女は語りかけた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/09(木) 23:33:58 ID:CJ5ycULa<>
【]】

「…迎えに来てくれたのか。すまないな」
「…」
 シグナムの言葉に、リインフォースは答えなかった。
「主は、ご無事か?」
「心配ない。お怪我もされていないよ。…ただ、お前の身を案じておられた」
「そうか…申し訳ないことをしたな。だが、これで思い残すことはない。
 レヴァンティンもここにいる。…連れて行ってくれ」
 肩を撫で下ろし、小さく微笑むシグナム。

「…いいのか?」
「いいも何も、私は敗れたのだ。仕方あるまい」
「そうではない。お前の心に聞いている」
 リインフォースが、穏やかに問いかけた。
「確かに、お前は敗れた。だが、それはお前が『こちら』に来る理由にはなるまい」
「…『守る』と決めたのだ。この手で。それが適わなかった以上、私は…」

「主が、そう命じられたのか? 『シグナム、自分を守れ』と?」
「そうではない。私が、我が剣と、魂に誓ったのだ!」
「その通りだ、烈火の将よ。ならば、もう一度問おう。
 その『誓い』は、誰が為のものだ? 何故、お前はその『誓い』を立てた?」
「それは…」
 リインフォースの言葉に、シグナムが俯く。

「守るべきものが、貫くべき『思い』があるなら…お前はまだ、消えるべきではないよ」
「私は…」
(…シグナム!) その時、もう一つの声が、シグナムに届いた。
「そうだ、聞こえているだろう? どう応えるかは、お前次第だよ」
 リインフォースが、笑顔で見上げる先―声は、そこから聞こえている。

「私は…主と…八神はやてと、一緒にいたい…!」

 頬に一筋涙を伝わせながら、シグナムが言った。
 その言葉に、リインフォースが微笑む。彼女の主と同じ―心優しき笑顔。
「ゆくがいい、烈火の将シグナムよ。共に行けぬのは残念だが…いつか、また会おう」
「…ああ。そのときは、皆で」
 笑顔で、言葉を交わす二人。

 差し出された剣―レヴァンティンを手に取ると、シグナムの身体は光に包まれた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/09(木) 23:34:39 ID:CJ5ycULa<>
【]T】
     ―時空管理局本局、医務室―

「シグナム…! 良かった!」
 目を覚ましたシグナムに、シャマルが微笑んだ。
「…ここは?」
「本局の医務室よ。三日近く眠ってた」
「…主は?」
「別の部屋で眠ってるわ。ほら、私たちって元はプログラム、純粋な魔力生命体じゃない?
 手術とか、あんまり意味がなくて…結局、はやてちゃんが自分の魔力を直接送り込んで、
 肉体を再構築させたの。波長が合うのって、はやてちゃんしかいないから…」
「そうか、あの声は…それで」
「シグナム?」
「いや、何でもない」
 不思議そうに視線を向けるシャマルに、シグナムは微笑みで応えた。
「あの子に、会ったよ…」
「あの子って…リインフォース?」
「ああ」
「そっか… 『元気』だった?」
「色々と、たしなめられたよ… お前達にも宜しくといっていた」
 リンゴの皮をむきながら、シャマルはそう、と静かに微笑む。

「レヴァンティンは?」
「貴方よりは、ずっと軽傷よ。連結刃になるように設計されてたのが、幸いだったみたい」
「そうか」
「…これ食べたら、もう一度眠るといいわ。一応回復はしてるけど、無理はしないほうが
 いいって。丁度いい機会だから、たっぷり休んで」
 コト、とリンゴの入った皿が置かれる。
「お前達は?」
「はやてちゃんが目を覚まし次第、任務に戻るわ。結局、魔導師は捕まってないの」
「…すまない。私のせいだな」
「逆よ、リーダー。あのとき、あなたがすぐに駆けつけなかったら、魔導師達は
 何の障害もなく逃走、その後も幾つか基地が襲われてだろうって、ハラオウン執務官が
 言ってたわ。相手が警戒心を抱いて、行動を自重してるのは、あなたの功績よ」
「そう言ってもらえると、助かる」
「はいはい。感謝してるんだったら、ちゃんと休みなさい」
 もう一度微笑むと、シャマルは部屋を出て行った。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/09(木) 23:35:40 ID:CJ5ycULa<>
【]U】

 シグナムが再び目を覚ましたのは、それから更に丸一日が経過した後。

 部屋の外の慌しい様子に、シグナムはドアを開け、局員の一人を呼び止めた。
「すまない、何かあったのか?」
「また襲撃事件です! 例の剣士が、今度は単独で基地を襲ってるらしいんですよ」
「!」 局員の言葉に、シグナムの身体に緊張が走る。
「困りましたよ…魔導師が現れてないから、何か他の目標があるんじゃないかって、
 上層部も二の足踏んでる状態なんです」
「それで、どうするつもりなんだ?」
「パトロール中の艦船はどれも遠いですけど、幸い本局から直接転送できる場所です。
 相手も、あの魔導師ほどの力は持ってないみたいです。大部隊を派遣するわけには
 いきませんが、AAAクラスの魔導師もスタンバイして…」
「そうか。礼を言う!」
 局員の言葉を最後まで聞くことなく、シグナムは技術部へ駆け出した。
 そこで待つ、彼女の剣を求めて。


   ―時空管理局クロノス支部第2基地―

「はぁ、はぁ、はぁ…」
 壁にもたれかかり、少年は息を整える。
 身を隠した部屋の外では、局員達が彼を探す声が響いている。
「流石に、先生みたいには、いかないか…」
 鞘に収めたままの刀を手に、苦笑いする少年。
 このままの状態で、局員たちを全て退ける程の腕は、彼にはない。
 かといって、自分が魔力を乗じて刀を解き放てば、確実に致命傷を与えてしまう。
 速さで撹乱してきたものの、それにも限界があった。
 しかもどうやら、応援の部隊も到着し始めているらしい。

(すまない。どうしても、会わなきゃならない人がいるんだ。…絶対に死ぬなよ、ユウキ)

 師の言葉が、少年の頭にリフレインする。
―そうだ。メインのシステムはダウンさせた。あとは、完全復旧するまでに、
通信室にあるサブとバックアップのCPUを破壊すれば、被害としては十二分。

「まだ…引くわけにはいかない…!」
 刀を握りしめ、部屋を飛び出そうとしたとき。
 扉がおもむろに開き… 見覚えのある女剣士が、姿を現した。
<> jewel <>sage<>2006/02/09(木) 23:43:40 ID:CJ5ycULa<> >>640
 GJです! 以前かけたプレッシャーは余りお気になさらずにw
>>176
 同じくGJ! バレンタインネタ…二人が甘い。甘すぎです(*゚ー゚*)

 私の作品ですが…まぁ、こんな感じですよ。
 ベタですが、再戦ですよ。「シグナム反省してねぇ〜!」と思った方もいるかも
しれませんが…その辺は、これから補足していくつもりです。
 朝くらいには完結できるかな…? と思いつつも、爆睡する可能性大なので、
あまり期待することなくお待ちください m(__)m <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/10(金) 01:25:20 ID:SoIIezgR<> >>176
 GJ。二人甘杉w そしてクロノまた死亡w
>>jewel氏
 こちらもGJ。この投稿スピードでこのクオリティw 凄杉

両者乙ですた。
<> 176<>sage<>2006/02/10(金) 22:13:50 ID:fkr7kcpk<> ちょっと顔出してみたらやはり某ロダ見てる人いたんですね
まぁ、あまりになのはさんが不憫さに思わずこっちに先に投下したんですよ
あそこには影響受けたおかげで
アルフ×ザフィではなくシャマル×ザフィとか

まぁそれは置いといて今になって一期のSS01を聞きました
2期では日の当たらない人たちの姿が聞けてすこし感動
なんだか忘れかけてたものを思い出せたような気がしました
やっぱりとらはとは違うことを再認識
そしてなのはとユーノのコンビはいいものだと
アリサとすずかは掛け替えのない親友だなぁ、と
こんな日常がもうあれば、
ここに投下するきっかけなんですよね、これって

すいません、独り言
クロノはもうじき投下できそうなのでしばしお待ちを
皆さんもいい作品が書けるよう祈ってます、では <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:03:52 ID:CgkE5W3i<> ようやく続きがひと段落……なんだか今週書く時間がないよ……orz
皆様の神ペースにまぎれてひっそりと続けていきたいと思っております……。
というか長編にするならタイトル決めないと……どうしよう?
そ、それでは第3話です。他の神の投稿の合間の暇つぶしにでもしてくださいw <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:04:54 ID:CgkE5W3i<> 3.きみのなまえは

 ユーノとクロノが無限書庫に着くと、先客がいた。
 同じ白衣を着た2人組みの男だったが、受ける印象はまったく違う。
 1人はシワ一つない白衣をきっちりと着込んだ男。格好の割りに引き締まった肉体をしているようで、立ち振る舞い一つとっても凛とした気配を感じさせる。
 もう一人は身長は同じくらいだが、細身なためか優男といった印象の男だった。清潔だが使い込んでいるせいかクタクタになった白衣を着て、人懐っこさを感じさせる目尻の下がった目をしていた。
 その優男の方に、ユーノは見覚えがあった。
 昨日一昨日と、今日を含めて3日連続でここを訪れていたし、彼自身が特徴的だったこともあった。けれど、何よりも印象に残っていたのは、彼が検索を依頼してきたその内容だった。

 ――『闇の書』についての資料が欲しい。

 別におかしなこととは限らない。闇の書はロストロギアであり、現代では再現不可能な技術の塊だ。
 それを新しい技術の参考にすることは十分に考えられる。ユーノとてそれが別のロストロギアなら、気にすることもなかっただろう。
 しかし、それが幾人もの主を暴走させ、隣にいる友人の父親をも奪った悲しきロストロギアを気にするなと言うのは、ユーノには酷な話だった。

「ユーノ、どうした?」
「……ううん、なんでもない」

 微かに表情を固くしたユーノに、クロノは僅かに眉を寄せて怪訝な顔をしたが、ユーノはそうごまかした。実際、闇の書の資料を依頼してきたこの青年はユーノの目から見ても悪い人間には見えない。
 ユーノとしては無闇にその事を告げて事態を複雑にすることは避けたかった。

「おっ、来た来た」
「あ……どうも」
「昨日は資料ありがとう。助かったよ」
「あ、いえ、そんな。仕事ですから」

 そんなユーノの心境を知ってかしらずか、優男はユーノに向かって片手を挙げた。
 どう反応していいか分からずに、あいまいに返事する。

「ユーノ。こちらの方は?」
「えっと、こちらは一昨日資料の検索の受けた方で……」

 傍らに立つクロノが当然の質問を投げかけてくるが、ユーノにはどう答えればいいかがわからない。
 とにかく当たり障りのないところを選んで紹介することにした。
 とはいえ、ユーノは嘘や誤魔化しといった類ははっきり言って苦手だ。言葉を選ぶのに四苦八苦しながら、どうにか紹介を終えると、優男はクロノに対して笑顔で握手を求めてきた。

「僕はフィーゲル。こっちの無愛想なのはレーゲン。よろしく」
「時空管理局執務官クロノ=ハラウオンです」

 その一瞬。
 数字にして1ミリにも満たぬほどに僅かに、クロノの眉がピクリと動いた。それはあまりに些細な動作であったし、ユーノにとっては意識しなければ見えないような位置のことだったため、気づくことはなかった。
 そのまま笑顔で応じて差し出したクロノの手を、フィーゲルが握り、握手が交わされる。

「それで、今日は何か御用ですか?」
「そうなんだ。ユーノ君に少し聞きたいことがあってね」

 ユーノは眉を八の字にまげた。
 これからクロノに調べたロストロギアのことを報告をしなければならないこともあるし、彼と話していてクロノに闇の書のことを聞かれるのも避けたい。すまなそうに頭を下げる。

「すみませんけど、ちょっと仕事が入ってるので、少しだけ待っていてもらっても良いですか?」
「うん、全然構わない。ごゆっくりどうぞ」
「それじゃ、失礼します」

 ユーノは2人に一礼すると背を向けて歩いていった。クロノもそれに続く。
 その二人の背中を、2人の研究者はそれぞれの表情で見送った。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:05:27 ID:CgkE5W3i<>  2人の姿が完全に見えなくなってから、フィーゲルとレーゲンは視線を交わした。
 苦笑とため息が交差する。

「危険な橋を渡ることになりそうだとは思っていたけど、まさかいきなり執務官と鉢合わせになるとはね。
 まったく、心臓が凍るかと思ったよ」
「おまけにその動揺は向こうには気づかれていたようだしな」
「……やっぱり?」

 クロノの僅かな眉の動きは、お互いに気づいていた。というより、目の前にいたのだ。集中していれば気づかないほうがおかしい。
 フィーゲルは自分の緊迫感をごまかすように頬をかいて笑った。笑顔のこめかみに一筋の汗が流れる。

「さすがに今すぐどうこうするほどだとは思わないけど、本格的に捜査されたらお終いだろうね」
「だろうな。管理局の職員は優秀だ。俺たちの力でどうこうできる相手じゃない。
 できるのは精々見つからないよう、不審に思われないよう小細工するくらいのものだ」

 レーゲンは頷いた。
 時空管理局を相手に立ち回れると自惚れるほど、レーゲンは愚かではない。
 充実した設備と、正式な教育を受けた職員、そして広大な管轄地域をカバーできるだけの数。
 それらが本気で彼らを検挙しようと思えば、おそらく一週間と持たずに捕まるだろう。
 二人に出来るのは、管理局に目をつけられないように事実を隠蔽するだけだ。
 それも管理局が見つけようと思えば隠しきれるものではない。故に、時空管理局執務官クロノという存在は、2人にとって鬼門とも言える存在なのだ。

「けど、それも見つかったらどうしようもない、と。
 いやはや、まったく予想以上に細い綱だねえ。僕達が渡ろうとしているのは。
 まったく、過ぎたこととはいえ、後ろ暗いことがあるっていうのは良いもんじゃないよ、ホントに」

 大仰に肩を落として嘆く相棒の姿に、レーゲンは肩をすくめた。
 まったく、この男のこういう子供じみた仕草はいつになったら治るのか。
 これだったら10近く年の離れた執務官の少年の方がよほど大人らしい。
 レーゲンはいつもの仏頂面を僅かにゆがめて苦笑した。

「なら、やめるか?」
「それこそまさかだ。この子がマスターを選ぶなんて、この先にあるかどうかも分からない。
 それに何より、僕がこの子の記憶を消すなんて、できるはずがないだろう?」

 レーゲンはうなずいた。そうだ、それでいい。
 自分の相棒は悪人で悪党だが、それを誇って恥じないバカなのだから。

「なら恐れるな。幸い、この程度で捜査を開始されるほど警戒感を与えたとも思えん。まだ猶予は十分にある」
「ラジャー、ボス」

 フィーゲルはおどけて敬礼した。

 ちょうどクロノと別れたユーノがこちらにやってくるのが見えた。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:06:27 ID:CgkE5W3i<>  ロストロギアの報告が終わってすぐ、ユーノはクロノと別れて二人の下へ向かった。
 2人の話がどんなものか分からないが、いつ闇の書の話が出てくるか分からない。
 それだったら先に分かれたほうがいいという判断だった。

「で、今日はどうしたんですか? 資料に何か問題でも……?」
「いや、今日は別件。ユーノ君、これに見覚えがある?」

 笑ってそう堪えると、フィーゲルは手を差し出した。載せられていたのは、栗色のクリスタル。
 思わず声が漏れる。

「これ……昨日の」

 見間違うはずもない。ユーノが昨日拾ったデバイスだ。
 この人たちのだったのか、と心中で納得した。
 たしかにこの人なら、部外費の品だろうとうっかり落としていきそうな気もする。
 そんな失礼な考えが頭に浮かんだ。
 それに気づいたわけもないだろうが、フィーゲルが満足そうに微笑んだ。

「やはり、君が拾ってくれてたのか」
「はい。昨日ここに落ちていたのを見つけました」
「それで遺失物係に届けてくれた、と。ありがとう。おかげで助かったよ。
 ――ところで質問なんだけど、その時、この子に魔力を通したりは?」

 不意に、フィーゲルの瞳に真剣みが混じる。
 その質問に一体どんな意味があるのか図りかねて、ユーノは困惑した。
 しばらくの逡巡の末、それでも誠実に答える。

「はい、持ち主が誰か分かるかと思って……」

 その答えに、フィーゲルとレーゲンはそれぞれの表情で視線を交わしてうなずいた。
 自分の知らないところで話が進んでいく。その不安が膨れ上がるのに耐えられず、ユーノは素直な疑問を口にした。

「あの、僕何かまずいことをしてしまったんですか?」

 感情がそのまま顔に出てしまっていたのだろう。フィーゲルは一度苦笑すると違う違うと手を振った。
 まだ疑念は払えなかったが、その行動に少し安堵の息をつく。

「そういう訳じゃないんだけど、色々面倒なことになっててね。
 とりあえず、最初から説明していこうか」

 そう言うと、フィーゲルは無重力に浮かぶ椅子から立って身体を翻した。
 その振る舞いは、研究者と言うより学者や教師といったそれに近い。けれど、そうした仕草が不思議と様になっていた。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:07:39 ID:CgkE5W3i<> 「格好から予想はついてるかもしれないけど、僕らはミッドチルダの研究者だ。専門はインテリジェントデバイスの。で、僕らの開発した新型デバイスの試作品がこれ」

 ユーノはもう一度そのデバイスに目をやった。特別珍しい形をしているわけではない。けれど、その栗色の輝きが強く印象づいていた。
 その視線に応えるように、デバイスは薄く輝いた。

「君も知っているかもしれないけれど、インテリジェントデバイスは自らが主人を選ぶことがある。この子はそこがまだ未完成でね。
 ほとんど誰も主として受け付けてくれないでいたんだよ。ところが今朝この子を遺失物係から受け取ったら、マスターが登録されていた」

 そこまでくれば話は読めてくる。振り返ったフィーゲルの瞳をまっすぐに見て、ユーノは尋ねた。

「……僕が、その子のマスターとして登録されていたってことですか?」
「その通り」

 出気の良い生徒をほめる教師のように、フィーゲルは笑う。一呼吸おいてから、もう一度ユーノにデバイスを差し出す。

「僕らとしては、この子がマスターを選んだことが驚きでね。できればデータを集めるためにも君に協力して欲しい。要するに、君にこの子のマスターになってほしいんだ。それを頼むために、今日はここに来た」
「それは……」

 ユーノは返事を戸惑った。マスターになるのが嫌だというわけではない。それ以前に、話が急すぎてどうすればいいか分からなかったのだ。
 誰かに相談しようにも、クロノは報告した資料を抱えてアースラへと戻ってしまっている。今更ながらに彼についていてもらえばよかったと公開した。

 フィーゲルの手の中のデバイスを見る。栗色の透き通ったそれは、よく見なければ分からないほど微かに鳴動していた。心臓の鼓動にも似て、一定のリズムで明滅を繰り返している。
 その輝きに、ユーノの視線は引き付けられる。トクン、トクンというリズムに、ユーノの意識が誘われていく。

 あれ、と。
 その明滅を見ているうちにぼんやりとしてきた意識で、ユーノは首をかしげた。
 何かに似ている、そんな気がした。

 ――そうだ。この子は、待ってるんだ。

 何を、と言われても分からない。ただその確信だけがあった。
 デバイスは相変わらず明滅を繰り返している。じっと見つめられているみたいだ、とユーノは思った。

 まるで催眠術にかかっていくみたいに、段々と思考が削げ落ちていく。
 視線をデバイスから離せなくなっていく。

 ――。

 ふと、朧になる意識の中で、小さな女の子の姿を幻視した。

 ――ン。

 それは幻聴だ。聞こえるはずのない声だ。

 ――メ……ン。

 聞こえるはずのない声を、ずっとずっと伝えようとしてきた声だ。

 ――メ……ト……ン。

 だから、応えないと。

「……メート……ヒェン」

 するりとこぼれ出た呟きに応えるように、栗色の輝きがひときわ強くなった。 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:08:10 ID:CgkE5W3i<> 『Yes,master.』

 デバイスによる人工的で事務的な音声。けれどその響きが、喜びに溢れていることを、ユーノは知っていた。
 きっと彼女は、喜びのあまり服を翻して踊っているのだろうと、妄想じみたことさえ当たり前のように感じていた。

「……驚いたな」

 言葉通りに自失しているような呟きに、ユーノの意識がはっきりと戻る。
 今、自分は何を口走っていたのだろう。まるで夢の中にいたみたいに記憶が朦朧としている。
 今やフィーゲルの手の中のデバイスの輝きは誰の目にも分かるほど強くなっていた。
 自失から立ち直ったのか、やれやれと肩をすくめて、どこか面白げな声音で口を開く。

「まさか、名前まで知っているとは……いや、この子から聞いているとは思わなかった」
「え……この子、って……」

 その呟きに対して、宝物を自慢する子供のような満面の笑みでフィーゲルは笑った。
 差し出した手をユーノの鼻先にまで突きつける。

「決まってるだろ? この子だ。
 『メートヒェン』。君が呟いたその名前が、この子の名前だ」

 眼前に突きつけられた栗色のデバイス。それを見るユーノの意識の中で、戸惑いが消えていく。

 そうだ、この子の名前はメートヒェンだ。
 ずっとずっと、あんなに必死になって伝えようとしていた、彼女の名前だ。

「もう一度お願いする。
 ユーノ君。この子のマスターになってやってくれないか?」

 その言葉に呼応するように、デバイスが一際眩く輝いた。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 01:10:05 ID:CgkE5W3i<> こんなところで終了です。
起承転結で言うとようやく起の部分が終わったところでしょうか。
思ったよりもはるかにオリキャラの出番が増えてしまった……もうちょっと地味にするつもりだったんだけどなあ……
とりあえず、ここからはユーノとその周りを中心に書いていきたいと思ってますので、よければお付き合いください。

>>jewel氏
は、早い、早すぎる!!
物凄い更新速度ですね……しかもこのクオリティ。
シグナムの雪辱戦がどうなるのか、師匠と弟子の目的は何なのか、はらはらしながら読ませていただいています。
次で完結という事なので、楽しみにさせていただいています。
がんばってください!

>>YUKI氏
うっわーうわうわうっわーー!!
なんだろうこのラブコメというかラブロマンス……部屋の中で転げまわりそうになりましたよ……orz
気恥ずかしいけれどそれがいい!
続きがをワクテカしながら待ってますw

>>640
怖いよ、フェイト……w
大切に思うからこそきしんでいく絆……すごい展開だなあ。
シグナムがこれからどう立ち回っていくのかも気になるところですし、この先が楽しみで仕方ありませんw

>>430
>>なんだかエロパロ板なのにエロの割合がどんどん少なくなってますねw
>orz←しっかりエロの続き書いてる男

 いえいえ、エロを書くのが悪いといってるわけじゃありません。むしろそれこそ本懐!(マテ
 と言うわけでエロもwktkしながら待ってますw

>>176
砂吐くかと思いましたよw
そして何気に哀れなクロノ。とある神の作品を読みふけっていたせいかなんだか新鮮でなりませんw
こんな小学生カップルがいたら私なんかはもう直視できませんね、絶対w

皆様GJです!
本当に皆様レベルが高くて、毎日チェックが欠かせませんよ、本当に。
続きや新作、楽しみにさせていただきます!

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/11(土) 01:21:29 ID:XkONymtZ<> >>290
またしてもリアルタイムで居合わせた、僕は幸運なのだろう
続きを楽しみにしつつGJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/11(土) 01:32:11 ID:Anxe8sTu<> >>430
楽しみなユーノくんSSの続きキタ
A'sでは泣くほど見せ場がなかったユーノくんについに強化イベントが
マジンガーからグレートにゲッターからGにBlackからRXに

続き期待して待っています <> YUKI <>sage<>2006/02/11(土) 01:33:37 ID:STOjp4+I<> 1週間来ないと凄いことになってますね。
感想を下さった皆様、本当に有難う御座います。
続き頑張って書きます。

作品を投下された皆様、まとめてという形は失礼ですがお許しください。

「みんな最高だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/11(土) 02:02:18 ID:tOO8em/0<> >>430
GJです。さあこのデバイスの性能はいかほどのものなのでしょうか!

>というか長編にするならタイトル決めないと……どうしよう?
じゃあ「魔法少女リリカルなのはE's」とか……
ごめんなさい。流してください……orz
<> jewel<>sage<>2006/02/11(土) 08:36:26 ID:18i3JCEp<> >>430
 GJ!…遂に、ついにユーノ君がパワーUPしちゃうの!? しちゃうのか!?
 続きを期待しております!

申し訳ありませんが…『Turn against』の続きは何日か投下できないかもしれません…
急にレポートとかバイトとか重なったもので…orz
あーもう!書かないと忘れるのに!w 次とその次の作品もアイデア固まってるのに!
魔導師との決着つけれねぇよ!(←最悪 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/11(土) 15:22:11 ID:reMnFzfa<> 『──それにしても、少し意外だわ。まさかあのシグナムさんのアイディアだなんて』
モニターに映る女性は、そう言ってころころと笑った。
相変わらず緊張感がないというか、楽観的というか。
上司のそんな締まらない様子に半ば呆れつつ、クロノは報告を続ける。
「・・・笑い事じゃないですよ。こっちは空気から何から大変だっていうのに」
『大丈夫よ、きっと。フェイトならきちんと立ち直ってやってくれるわ』
「だと、いいんですが・・・」
『心配性ねえ、あなたフェイトのお兄ちゃんでしょう?もっと妹を信頼してやりなさい』
「はい・・・」
『まぁ、用件はわかったわ。皆さんにも、フェイトが心配かけて申し訳ありません、って謝っておいて?』
「お願いします」



魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−

第四話 彼の者がために・後編



−アースラ艦内・訓練室−

(知らせるもんか・・・)

誰も居ない広いその部屋で、フェイトは一心に相棒の戦斧を振っていた。
自身の心にある怒り、悲しみ、悔やみ。
それら全てを、振り払うかのように。

『なのはの・・・・高町教導官の力なんて、いらない・・・・・!!』

自分の口から出てしまった言葉が、脳裏に蘇る。
何度バルディッシュを振るおうと、何度忘れようと努力しようと、それは消えることなくリピート再生されていく。

自分が後悔していることを、フェイト自身わかっている。
ユーノのことをなのはに連絡すべきだということも、そして昨日の出来事に頭を下げるべきだということも、確かに彼女の気持ちの中にあるのだ。
けれど。

(なのはにとって、ユーノは友達でしかないんだ・・・だったら・・・!!)

彼女にユーノのことなんか、任せられるわけがない。知らせたところで彼女は、大切な「友達」のことを心配するだけなのだから。
彼の気持ちも、決意も何も知らない彼女などには、けっして。
なのははその無垢すぎる残酷な心でユーノの想いを踏みにじったのだから。
ユーノがいないところで、無意識のうちに。

(知らせたって、何にもならないじゃないか・・・!!)

どうして。どうしてあの子はわからないのだ。
他の誰でもなく、なのはもユーノも、お互いの隣に寄り添っているのが、何より自然な二人だということを。
幼い日にほんの一時抱いたことのある想いも、二人のその姿を見て納得し終着させることができたフェイトだから、わかる。
きっとユーノはなのはでなければ。なのははユーノでなければ、だめなのだ。
それなのに、彼女はいつまでたっても気付こうとしない。

(どれだけユーノが傷ついて、私が我慢してたか・・・わからないくせにっ!!)
<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/11(土) 15:23:33 ID:reMnFzfa<> わかっていたら、「あんな事」言うはずがない。わかってないから、言えるのだ。
その拘りがフェイトに、自分自身の心が発する勧めの声に首を縦に振ることを拒絶させていたのだった。
独りよがりで勝手な独善かもしれない。大きなおせっかい、それでもいい。
なのはに謝らなければ、という気持ちも、激情によってどこかへ行ってしまっていた。

(ユーノは・・・ユーノは私が助けるんだ・・・!!!)

もう親友だろうとなんだろうと、なのはのことなんて知らない。ユーノのことは、この手で助け出す。
ユーノのことを友達としてしか見ていないのなら、ずっとそう思っていればいい。手助けなんて、いらない。
大切に想うだけなら、自分だってできる。ならば自分が助けようとなのはが助けようと同じではないか。
知らせてなんて、やらない。今はもう、なのはと顔を合わせたくない。

「なのはの・・・・馬鹿っ!!!!!」

こんな気持ちでは、ユーノが戻ってきて決意を遂げたとしても、きっと祝福したりなんてできない。
ぶり返した怒りによって目尻にかすかに浮んだ涙にも気付くことなく、必死にバルディッシュの素振りを続けるフェイト。
訓練に没頭することでこのやるせない気持ちを、少しでも忘れたかった。

「・・・?」

訓練室の自動ドアの音に、フェイトは手を止めた。
足音は大人のもの、しかも女性。金属の揺れる音も混じっている。だとすればここにくるとなると一人しか居ない。
「・・・・・ずいぶん荒れているのだな」
「・・・・シグナム。何の用ですか」

彼女は長年の好敵手に、振り向きもせずに応え、問うた。
「何、まだ時間はあるだろう?久々に・・・な。どうだ?」
模擬戦をやらないか────皆まで言わずとも、シグナムの言わんとしていることが、フェイトには理解できた。
そして、拒否する理由もなかった。








「たああああああっ!!!」
「・・・・」

緋色の剣士と、漆黒のマントが宙を舞い、その身を翻す。
二度、三度。斬り合う二つの人影は数瞬の鍔迫り合いの後、共に後方に飛び、距離を置いて停止した。

「・・・・どうした、テスタロッサ。太刀筋が鈍っているぞ」
「くっ・・・・・・・」
シグナムは表情を崩さぬまま、目の前の好敵手と認めた少女に指摘する。相対する彼女は大きく肩を上下させていた。
───彼女が言うのなら、そうなのだろう。こと剣や近接戦闘において、フェイトの知る限り彼女以上のスペシャリストはいない。

それを立証するかのように、どこか今日の模擬戦はフェイト自身もまた噛み合わないままだらだらと続けている感を持っていた。
双方、そう思っているのだから間違いはないだろう。
<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/11(土) 15:24:31 ID:reMnFzfa<>
「やめだ」
「・・・シグナム?」
「やめだ、と言っている。これでは訓練にならん。体力と魔力を浪費するだけだからな。いや、もうしているか」
「っ・・・!!!」

一時間と少し、じっくりやった上でシグナムの吐いた言葉。それだけに言葉を向けられた彼女からしてみれば、屈辱だろう。
剣を下ろし、あえて落胆したかのような挑発的な態度をとりつつ、シグナムは思う。
だがそれでも、彼女には自分達を指揮する者として、しっかりしてもらわねばならない。
感情的な今の彼女ではなく、普段どおりの冷静で温和な少女に戻ってもらわなくては。
自分達だけでなく───彼女自身、普段は陥らないような危機に直面するかもしれない。

「お前がいつも通りでいてくれないと困る。でなければ、指揮を執られるこちらとしても迷惑だ」
「それは・・・・」
「何より」
「・・・?」
「主が困っている。お前は主にとって大切な友人だ。お前がそんなでは主が笑顔でいられない」
「・・・」
『フェイト執務官、データの解析が終了しました。至急ブリッジまでお戻りください。繰り返します・・・・』

時間切れだった。オペレーターや解析班の進めていた調査が終了したのだ。
たとえフェイトが模擬戦の継続を望んだとしても、もうそんな時間はないだろう。

「行ってこい、テスタロッサ執務官」
「・・・・・はい」
「少し頭を冷やしてくれると、ありがたいんだがな」
「・・・・・・」
「私は、信じているぞ」

その言葉は若干厳しいものでも、根底にあるのは自分よりも若い少女である指揮官への心配だった。
無言で立ち去る彼女に、シグナムの──いや、皆の意は少しでも届いただろうか。

(せめてもう少し、時間があればな・・・)

あいかわらず、なんと口下手なことか。
戦うという形でしかその思いを伝えることの出来ない自分が少し、歯痒かった。
けっしてフェイトの心を溶かすことができたとは言い難い。
レヴァンティンを鞘に収めると一応の結果を伝えるべく、シグナムはクロノへと念話を開く。

(───クロノ艦長)
(シグナムか?どうだった、首尾は)
(申し訳ない。正直、うまくいったとは言い難い)
(そうか・・・・いや、済まなかったな)
(いや・・・・彼女のせめてものガス抜きになれば、とは思ったのだが)

元々、そのつもりだったからこそ一時間もの長い間に渡ってつきあったのだ。
事情を知らぬままやっていたなら、ほんの数分と持たずにシグナムは呆れて模擬戦を放棄していただろう。
それほどに今日のフェイトは怒り任せ、力任せの大振りで隙だらけだった。 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/11(土) 15:25:54 ID:reMnFzfa<>
自分との模擬戦を通して普段通りの彼女を取り戻して欲しかったし、苛立ちを発散して欲しかったのだが。
第一段階としては芳しい結果とはけっして言えるものではなかった。

(・・・そちらは?)
(頼まれたことはやっておいた。幸いまだ本局に居たよ。引き受けてくれた)
(そうか・・・なら、よかった)

同時進行で進めていたクロノのほうはどうやら首尾よくいったらしい。

(シャワーを浴びてブリッジに戻る。主達もいるな?)
(ああ。・・・・シグナム)
(何だ、艦長)
(済まないな、妹のことで世話をかけて。遺跡内でもフェイトのことを頼む)

今更、何を当たり前のことを。

(・・・・・当然だ)

シグナムは軽く笑うと防護服を解き、待機状態に戻したレヴァンティンを手に、シャワールームへと向かった。 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/11(土) 15:35:40 ID:reMnFzfa<> シグナム姐さん計算はずしました。第四話です。
まあ、クロノの相手がバレバレってのはスルーの方向でorz
次回から遺跡内部ですね、多分

>>176
素で松尾さんって誰だっけ?と思ってしまった件についてorz
そうか従業員だったのか・・・。

>>jewel氏
バイトその他諸々、頑張って下さい。
というか普段が超高速なので少しくらい遅れても無問題

>>430
淫獣強化キタコレ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/11(土) 15:41:51 ID:Anxe8sTu<> >>640
リアルで遭遇。乙。
フェイトのほうはどんどん暗黒面を開放していってますねw
ラストの修羅場(予想)が楽しみです

続き期待して待っています
がんばってください <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/11(土) 15:50:53 ID:DpolOSn0<> リアルタイムで遭遇って、ついてるなあw
640氏GJです!
ライバルとしてのシグナムや兄としてのクロノの温かさがいいなあw
シグナムのもう一つの策はなんなのか、ユーノは今どうなっているのか、なのははこれからどうなるのか。
とても楽しみでなりませんw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/11(土) 17:13:22 ID:8XMvXHRy<> 640氏乙
wktkしっぱなしです。ユーノの状況がまったくわからんのがなんとも気になる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/11(土) 18:06:05 ID:IQZIQ0vx<> 640氏キタ―――(゚∀゚)―――― !!
待ってましたよ!GJです!!
フェイトさん、まだまだ荒れてますなー。愛憎が一番激しそうなのはフェイトですしね <> 549
◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/02/11(土) 19:31:28 ID:HcWWeANy<> 1月末までの分を保管庫に置きました。
概算だけどhtmlファイル数が500越えたし。
このペースだと、また1つもSS書き上げられないうちにスレ終わりそうww
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 00:32:24 ID:xWBe5QNe<> 楽しみにしてるSSの続きが一気に二つ、なんて良い週末。

>>430
早くもメートちゃんに萌えてます。
フィーゲルとレーゲンも根っからの悪人じゃなさそうで…。
ベルカの騎士達みたいに和解できるんでしょうか。

>>640
姉さんの計算外れるとは思わなんだ。
後でなのはさん怒るだろうなぁ。 この上なのはさんにまで怒られたら、
手のつけられない修羅場になりそうで心配です(゚∀゚)ニヤニヤ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 00:50:33 ID:QSGUD+Wd<> このスレの職人方が結託してリレー小説とか書いたら
もの凄いものが出来上がると思うのは俺だけだろうかw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 05:18:48 ID:qv6qEu4C<> せやけど、それはただの夢や <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 05:44:33 ID:pYOnfj0z<> リレー小説ってあんまりいいのできる気がしないなぁ・・・
成功例って何かあるの? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 08:42:33 ID:eo8UcshG<> >308
 ワロスw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 11:24:57 ID:qovQ5YsX<> >>309
かりんスレは成功中。
というか職人いないからしかたなく住人がリレー始めた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 15:53:38 ID:OJ2YvOPN<> なんでもやってみるのがいいと思うんだ
失敗したら失敗したで面白そうだし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 17:58:21 ID:KkhMypI0<> 触手スレではある程度上手くいったことがありますよ
ただ書き手さんがじゃなくて、住民が4,5レスぐらいで続けてました
面白そうだし、試しにやってみたらどうですか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 18:04:29 ID:eo8UcshG<> つーか、負担がかかるのは神である職人方であることを忘れてはならないw
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/12(日) 23:15:32 ID:qovQ5YsX<> なのはスレじゃ無理だろ。キャラ人気も分散してるしわけわからなくなるだろ。
職人がいるんだし過疎ってる訳でもないからやらなくてよし。

↓以下職人のSSを大人しく全裸待機 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/13(月) 01:05:25 ID:U9b1FeF0<> ど、どどどどどどどうしよう?!
多分なのはSSで一番の神サイトの連載の改訂版プロローグを今更ながら読んだら、白衣の研究員とかデバイスとか似たような設定が……orz
さ、さすがに話の内容は違うけど、あの神と比較されても平気な作品なんて作れる自身が欠片もないです……o...rz

リレーに関しては……どうでしょうね?
皆さんそれぞれのキャラクター像が一致してないと話が右往左往することがあるので、結構ギャンブルだとは思いますが、面白そうだとは思います。
他の神の方々(といっても私は神じゃないですが)しだいなんじゃないでしょうか。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/13(月) 08:13:26 ID:AFM2Lurb<> >>430
むう、「なのはSSで一番の神サイト」がどこだかわからないので、
確かめようがないんですが……
えっと、私は430氏の作品を楽しく読んでいるので、このまま続けてくださればと思っています。

あ〜、何を言えばいいのかわからない……ごめんなさい……orz <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/13(月) 10:31:53 ID:GcAJsODq<> ≫430氏
僕も430氏のは好きなんだがなぁ。そのサイトってどこですか?
凄く気になります。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/13(月) 11:08:06 ID:DjZcXMym<> >317
>318
>>「なのはSSで一番の神サイト」
読む人によって印象は違うので絶対ではありませんが、おそらく「聖痕の刻まれし蒼き鷹」
ではないかと思われます。430氏が書かれた設定も合ってますし。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/13(月) 14:10:01 ID:NyIedUeH<> たしかにあそこの文章のクオリティと執筆速度は異常だな
さすがプロを目指してることだけはある <> YUKI <>sage<>2006/02/13(月) 21:08:12 ID:2oX8HXmu<> プロを目指してらっしゃる方が書かれているのなら納得ですね。

遅れましたが、640氏乙!&GJ!
フェイトはどうなるのでしょう・・ドキドキです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/13(月) 23:34:49 ID:wt2b7DZZ<> >>430
設定が多少かぶるのはよくある事ですし、話の展開が違うなら
気にしなくて良いんじゃないでしょうか。

読んでる方は精々
「そういえば白衣の男とか、新型デバイスの出る話がもう一つあったなぁ」
とか思うぐらいで、一々比較しながら読む人もあまりいないと思いますよ。

その小説がどれだけ凄くても、430氏の作品には、氏の作品だけの
個性と面白さがあるんだから、それで良いんじゃないでしょうか。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/14(火) 10:01:10 ID:hx90/3QZ<> 20日ほどで330KB…どんな高速スレだよ…
速すぎて読みきれないじゃまいかorz

と、嬉しい悲鳴をあげて_ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/14(火) 20:03:13 ID:K9cNADcN<> シャマル、シグナム、ヴィータ、八神家三人娘は主はやてが大好き。
だけどはやてと同姓といった事実が歯止めをかけ、4人の関係は微妙な均衡状態を保っていた。

しかし、そんなある日捜査対象の地で次元航行船の墜落に巻き込まれてしまったはやて。
なんとか異次元人の手によりはやては一命を取り留めるものの、肉体の再生時のミスで性別が反転、すなわち女性から男性になってしまい、はやての日常は一転してしまう!

そして、その日からはやて、シャマル、シグナム、ヴィータの4人が織り成す複雑でどぎまぎな不思議なふしぎな人間模様の幕が上がるのだった・・・



ここまで考えついた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/14(火) 20:33:36 ID:L4MaQZbk<> >>325
それなんてかしまし?
しかし、その手のTSネタはかなり人選ぶんじゃないかな。
後、ザッフィーのスルーっぷりにワロタwww

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/14(火) 22:43:51 ID:HCEt9h7E<> >>324
あかほり乙。後は書くだけだな。未完はカンベンな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/14(火) 23:15:28 ID:TtDH5mHZ<> >>324
それのユーノ版を考えたのは俺だけだろうか <> YUKI <>sage<>2006/02/15(水) 00:05:44 ID:n7lpGAIO<> コンバンワ。
1週間以上空いてしまいましたが、なんとか続きを書くことができました。
しかし、まだまだ中途半端な状態なので、少しだけ投下します。
ちょっと仕事が落ち着くまで時間がかかるかも・・・・・ <> YUKI 二人の距離6<>sage<>2006/02/15(水) 00:07:01 ID:n7lpGAIO<>
    第2話 その一言が・・・・@

翌朝
アースラのブリッジは不思議な空気で満ちていた
いつも居るはずの人間が居ない しかも二人

「艦長・・・・エイミィとクロノ執務官がまだ・・・・」
エイミィと交代予定のオペレータが不安気に相談している

「確かに、、、ちょっと遅すぎるわねぇ。」
アースラ艦長リンディ・ハラオウン クロノの母であり、この船の乗組員にとっても母親的存在

普段絶対に遅刻はしない二人が遅刻している
しかも何の連絡も無い

普段はおっとりなリンディもこの事態に少し困惑していた
「うん、、、。わかりました。私が直接二人を呼びに行きます。」
「か、艦長がですか?」
「ええ。少し気になることもあるし、、、、
  みんなはいつも通り業務を遂行してください」
「は、はい!了解。」
リンディの心の中にも少し不安が生まれていた

そのままブリッジを出てリンディはエイミィの部屋へと向かった





「、、、、んん、、、、うん、、、、、、、、、、、、あ、、、さ、、、、?」
昨夜、エイミィは部屋へと戻ってきてから泣きつづけ、
そのまま泣きつかれ眠ってしまっていた

勿論、目覚ましなんかもセットしているわけも無く
<> YUKI 二人の距離7<>sage<>2006/02/15(水) 00:07:58 ID:n7lpGAIO<>
「あ、、、、、遅刻、、、、、だ、、、、」
いつもなら飛び起きて着替えをするだろうが、今日はとてもそんな気になれるわけも無い

「、、、、、クロノ君、、、、、、、、、、どうして、あんなこと、、、、、、、、、」
思い出し顔を赤く染めつつも、すぐに恐怖感へと変わる
「(怖かった,,,,,,,,)いつものクロノ君じゃないよぉ、、、、あんなの、、、、、」


コンコン・・・・・・
ドアのノックにビクっと身体が反応する
「エイミィ、、、居る?」

「か、、、艦長ですか?」
「えぇ。そうよ。・・・・・中に入ってもいいかしら?」
「は、、はい。どうぞ、、、、」

ゆっくりとドアが開き、リンディが入ってくる


「ここ、、、、、、、、座ってもいいかしら?」
ベッドの脇を指差しながらリンディが尋ねる
「はい、、、、どうぞ。」
ちょうどエイミィの隣10cm位にリンディが座る

・・・・・・・・少しの沈黙の後、エイミィから声をだす
「あ、あの、、艦長、、、今日は、、、遅刻してしまって、、、申し訳御座いません。」
「良いのよ。あなたが連絡もなしに遅刻するなんて絶対に無いものね。
 きっと何かあったんだろうなぁ、、、って思ってたの」
「・・・・・・・・」
「あなたの目を見れば直ぐにわかったわ、、、、」

エイミィの目は泣きつづけた為に真っ赤に晴れ上がっていた

「あ、、こ、、、これは、、その、、、、」
「エイミィ、何か悩んでいるなら、私で良ければいつでも聞くから、、、、
  お願いだから、1人で抱えて悩まないで欲しいの。」
「艦長、、、、、、」
「私はこの船に乗る皆のことが大事なの。エイミィ、、、私にとって、あなたも私の大切な娘なの。だから、、無理にとは言わないけど、、、、もし話せるようになったら、私に相談して欲しいの。」

暖かくて、柔らかくて、包まれるようなリンディの言葉は、エイミィの心に深く染み渡っていった

「それじゃ、私はもう行くわ、、、エイミィ、、、今日はお休みしていいからね、、、」
そのまま立ち上がりドアから出て行こうとするリンディの腕を、エイミィは強く引きとめた

「あ、あの!私,,、、、、、、、艦長にご相談したいことが、、、、、、」

「えぇ。いいわよ・・・・」
微笑みながらリンディはベッドへと戻った
<> YUKI 二人の距離8<>sage<>2006/02/15(水) 00:08:57 ID:4UpKWfu9<>
・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・と、言うことがあって、、、、、」
エイミィは昨夜の出来事を包み隠さず、全てを話した
クロノへの自分の気持ち、怖かったこと、、、、

さすがのリンディも少し驚いていたが、エイミィが話し終わると
「、、、そう、、、クロノが、、、、、、、、、、、、エイミィ、怖かったでしょう。ごめんなさい。」
リンディはエイミィを抱きしめながら優しく、エイミィの髪をさすっていた

「う、、うぅぅぅ、、、、、グス、、、、」
もう枯れてしまったと思っていた涙がまた溢れだした

しかしそれは悲しみの涙ではなく、安堵の涙
1人で悩んでいたことから、リンディという包容力ある女性に包まれることの安心感から生まれた涙

「わたし、、私、怖かった、、、クロノ君がいつものクロノ君じゃなかったことが、、」
「うん、、、、。うん、、、、。」
リンディはただ相槌を打つだけだったが、きちんと包む温かみのある声がエイミィには心地良かった

「、、、ごめんなさい、エイミィ、、。うちのクロノがあなたに酷いことを、、、、、、あなたの心を傷付けてしまったわね。」
「、、、いえ、、、私、、どうしていいのかわからなくて、、、、クロノ君が私のこと、そう言う風に見てるこは嫌じゃないんです、、、。
 でも、、どうしたらいいか、、、いつもどおりにクロノ君と話す勇気無くて,,」

「いいのよ、、エイミィ、、、突然のことだったんだもの、、、、無理してクロノに逢うことはないの、、、、」


「少し距離をおいて、ゆっくりと考えることも大事よ、、、」
「艦長、、、、、」


「エイミィ、今日はゆっくり休みなさい、、、、、、、、大丈夫、、、これは艦長の特別処置よ」
「は、、、はい、、、。有難う御座います」

「それじゃ、私は行くわね。」
「き、今日はありがとう御座いました。艦長。」

にっこりと微笑むと、リンディはそのまま部屋を出て行った


「ふぅ〜、、、まさかクロノがねぇ、、、、、、
 こういうときやっぱり男親が居ないと駄目なのかしら、、、」
クロノの部屋へと向かうリンディにも、やはり不安は隠せなかった

二人の間に何かあったのだろうと、リンディは予想していた
しかし、クロノの暴走までは想像しておらずさすがに驚いていた


「とにかく、まずは母親として叱らなくちゃね」
決意も新たにクロノの部屋へと向かって行く後ろ姿は、どこかオーラのようなものを纏っていた
<> YUKI <>sage<>2006/02/15(水) 00:12:48 ID:n7lpGAIO<> 今回はここまでです。
中身が少なくてすいません・・・・・

リンディの母親という面を出したかったんですが、難しいです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/15(水) 00:26:54 ID:wdc7aqLg<> 細かいことにケチつけるようで悪いんだが、句読点を三点リーダがわりに使うのはやめとけ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/15(水) 00:31:09 ID:KibQMo5Q<> YUKIさんお疲れさまです。
次が楽しみです・・。

>>430さん
メーテちゃん萌え。
最終回でユーノを守って死んじゃう、なんて考えてしまった・・orz
どうか死なせないでくださいね(・ω <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 14:39:55 ID:qGiu1/2g<> この所、「捕われのフェイト」来ないなぁ・・・。一応妄想してみよう。
多少は魔力が回復して、隙を見て逃げようとしたら、シャマルに見つかって、
お腹に手を突っ込まれて、また魔力がカラッポに。
で・・・コアを取り出す部分で、お腹に突っ込んだ手をグリグリ捻じ込んで・・・。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 19:03:09 ID:MO3RmmwU<> アニキャラ総合板のなのは萌えスレに自分の作品を投下したところこちらに投稿するべきとの意見をいただきました。
ですが私の書体は基本的にセリフと効果音、状況説明のカッコ書きのみなのではたしてここに投下してよいのかどうか悩みます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 19:04:01 ID:qATm0Kxz<> >>336
どこかのうpロダにあげて、そのURLだけはるとかにすればいいんじゃね? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 19:11:39 ID:hiKvk7hx<> >>336
どんとこい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 19:19:54 ID:+rd828cm<> >>336
どぞどぞ、書き手さんが増えるのは嬉しいことです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 19:50:14 ID:MO3RmmwU<> >>337-339
どうも、ありがとうございます。既にストーリーがかなり進んでいるのでまずはあらすじを貼ってから進めようと思います。 <> なのは外伝<>sage<>2006/02/16(木) 22:19:44 ID:MO3RmmwU<> 魔法少女リリカルなのは外伝 修練生悶絶!教技指導官・なのは執念の実戦演習

あらすじ

16歳の高校生、櫻井光圀は魔法少女とハァハァしたいという不純な動機で軍事オタクの父やネットウヨの兄を強引に説得して管理局の修練生となる。
だが、彼を待ち受けていたのは教技指導官なのはのものすごいシゴキであった。
0.5%しか出力していないスターライトブレイカーにより打ち砕かれるなど、大変な目にあう。
かわいいなのはにどんどん惹かれてゆく一方で、その魔導師としての能力に尊敬の念を抱く櫻井。
しかし、かつてなのはがフェイトと戦った時のビデオを見た彼は、なのはが自分より年下である事を知り、深く悩む。
念話が使えるようになっていることに気付いた櫻井は、これを使って告白する事を考えるが、それは彼のほかの魔法同様、まるでコントロールができていなかった。

ある日、櫻井のルームメイト、エーレンベルクが外界での訓練中に何者かに襲撃を受けるという事件が発生する。
管理局はこれを重大な事態と受け止め、嘱託の捜査官であるはやてとヴォルケンリッターに調査を依頼する。
一方、なのははすぐに無限書庫で調査を開始。その姿勢に心を打たれる櫻井。しかし、笑顔で話すなのはとユーノを見て、その心には葛藤が生じるのであった。
襲撃事件の発生地点で待ち構えるはやて達の前に出現したのは、人間とはまるで違う生物。
自ら「魔族」を名乗るその魔族兵・キキェリキはシグナムのアームドデバイス・レヴァンティンに狙いを定めて攻撃を仕掛ける。
だがそこは闇の魔道書をコントロールし、リインフォースとして再生させたはやてと優秀な守護騎士である。
キキェリキはシャマルの旅の鏡によって捕らえられ、あっけなく消滅する。
<> なのは外伝<>sage<>2006/02/16(木) 22:22:30 ID:MO3RmmwU<> これを受けてアースラでは会議が開かれる。既に襲撃事件の状況からある程度魔族による行動である事を予見していたユーノは、魔族のもつ脅威の能力 - 転生を説き、その危険性を指摘する。
襲撃状況をさらに詳しく聞き、はやて達の報告を受けたユーノはある結論に達し、フェイトにあることを依頼する。
その様子をみた櫻井は、ユーノがフェイトに告白したのだと勘違いし、ひとりでなのははフリーだと喜ぶ。

だが、実際ユーノがフェイトに依頼したのは、フェイト単独での魔族迎撃であった。二つの事例から、魔族の狙いがあるロストロギアにあり、
しかもそれが魔導師のデバイスに使用されていると思いこんだ彼らが魔導師襲撃を起こしていると踏んだユーノの指示通りにフェイトは義兄クロノに自らの出動を懇願する。
心配性なクロノは最初こそ拒むものの、フェイトの熱意に押されてついに折れる。そこにタイミングよくなのはが現れ、翌日なのは班の訓練を外界で行わせて欲しいと願い出る。
なのはの融通が利かない性格をよく知っているクロノは、これも認め、自らの艦長としての権威のなさを嘆く。

アルフを伴い、魔族の出現したポイントにフェイトが立つ。程なくして上位魔族・ファーゲルがフェイトを襲撃する。不意打ちの烈風斬を交わすと、フェイトはプラズマランサーでこれを迎撃。
しかしファーゲルは高速弾ヴィシャス・ショットを放ち、フェイトはこれをまともに受けてしまう。その隙にバルディッシュを狙うファーゲル。ユーノの予想通り、彼らの狙いはデバイスであった。
大柄な割にすばやいファーゲルに対し、フェイトはバルディッシュのハーケンフォームを起動、完全な近接戦闘スタイルをとる。
フェイトの圧倒的なスピードに翻弄されるファーゲルは加速魔法であるスウィフトモーションを使い何とか抵抗しようとするが、明らかに旗色が悪い。 <> なのは外伝<>sage<>2006/02/16(木) 22:23:48 ID:MO3RmmwU<> この様子を上空で見守っていた魔将軍ミランデはバルディッシュが彼らの目的とするロストロギアが使用されたものではない事に気付き、息切れするファーゲルに引き上げを命ずる。
だがそれでも戦おうとするファーゲルをフェイトはストラグル・バインドで捕獲。管理局への任意同行を試みた瞬間、ミランデが中距離砲撃ダイアブロバスターを放ち、フェイトとアルフは飛ばされる。その刹那、ファーゲルとミランデは姿を消した。
魔界に帰還したミランデとファーゲル。その転生能力のため封印され、長い間、外界との接触を立たれた魔界の環境は劣悪で、本来森や海などきれいな空間で暮らす魔族にとっては厳しいものとなっていた。
彼らはそのためにロストロギアを手に入れようとしているのである。
ミランデは全ての魔族の頂点に立つ大魔道に謁見し、デバイスと彼らの目指すロストロギアとの融合は考えにくく、人間の能力も昔と比べると向上していると告げる。
大魔道はとにかくそのロストロギアを集める事を命令し、ミランデとともに剣士タイタスにもオーブ探しを命じる。
<> なのは外伝<>sage<>2006/02/16(木) 22:41:08 ID:MO3RmmwU<> 主な登場人物

高町なのは(15歳) ご存知我らがなのはさん。
フェイト・T・ハラオウン(15歳) 念願かなって執務官になったフェイトだが、義兄クロノが過保護なためなかなか仕事をさせてもらえない。
八神はやて(15歳) 貴重なベルカ魔法の使い手として管理局に貢献。
ヴォルケンリッター それぞれ、全く変わらない。
クロノ・ハラオウン 本作品では全く権威のない艦長。フェイトのことがとても心配。
エイミィ・リミエッタ あいかわらずなエイミィたん。

以下、オリジナル人物
櫻井光圀 本作品は基本的に彼の視点で記述。16歳の高校生。魔法少女とハァハァしたいがために管理局入り。なのはの訓練で鍛えられているが、実力はまだまだ。
なのはに対して好意を抱いているが、教官と修練生という立場が彼を苦しめる。
エーレンベルク 光圀のルームメイト。魔族による襲撃を受ける。
キキェリキ 下級の魔族兵。はやてとヴォルケンリッター相手に戦い、レヴァンティンを狙ったが敢え無く敗れ、消滅した。
ファーゲル 上位の魔族兵。スピードが自慢だったがさらなるスピードを持つフェイトに完敗して逃亡。
ミランデ 魔将軍。魔族のなかでも実力はおそらくトップクラス。
タイタス 魔剣士。実力はまだ明らかではないが、かなりの実力者と思われる。
大魔道 魔族の長。かつて魔族が転生能力のために封印された経緯を知る人物。ロストロギア(オーブ)回収に魔界復興を賭ける。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 22:51:02 ID:U2stAB40<> >>341-343
もしかして、キャラ個別の高町なのは応援スレに投下していた方?
ROMってましたよ〜。続き見られて嬉しいっす。

書き手さんが増えるのは歓迎です。面白ければ、それで良いと思う。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 22:51:39 ID:Vfrz2MP1<> ユーノはどこいった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 22:58:40 ID:MO3RmmwU<> >>345
そうです。内容が壮大になりすぎてもう個人スレには不適切になったので移籍先を求めてここへ。

>>346
これは失敬。

ユーノ・スクライア 無限書庫の司書として活躍。研究分野でも活躍。襲撃事件をいち早く魔族の仕業だと判断したのは彼。
相変わらずクロノにライバル視されているが、本人もまったくなのはと進展がない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 23:12:46 ID:rCzsPDsE<> 何となく戦隊物の敵みたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 23:35:13 ID:jzSKBqQk<> オリキャラ多杉 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/16(木) 23:39:27 ID:qATm0Kxz<> >>347
自分でサイト立ち上げた方がいいよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 00:01:35 ID:iTGnWs9G<> >>347
オリキャラが多いのは気になるが、主人公側は2人だけならまだいいかな。
ただこの櫻井ってキャラが中心で物語が進んで、なのはたち原作組が引き立て役、
もしくは原作キャラと恋愛関係が成立しちゃうのなら読みたくないかも。
もしそう言う作品なら外部にアップしてURLを貼ってくれ。
最悪断りを入れてから投下するのは必須だな。 <> なのは外伝<>sage<>2006/02/17(金) 00:26:13 ID:PXtbFeyG<> (アースラ内。フェイト、アルフ帰還)
 (  `ー´)  「…そうか、捕獲には失敗したか」
/( ・_・) 「ごめんなさい…」
 (  `ー´) 「フェイトが無事で良かった…」
<//;`ω´)>「(私は無視?ひどい…)」
 (  `ー´) 「とりあえず、詳細な報告も聞きたいし、それに実は…」

⌒*( ・∀・) 「フェイトちゃんお帰り!大丈夫だった?」
/( *・ヮ・) 「なのは…明日外界訓練をするって本当?」
⌒*( ・∀・) 「うん!今だからこそ必要だと思うの!クロノ君にも了解もらったし」
 (  `ー´) 「そのかわり、何かあったらすぐに転送するからな」
⌒*( ・∀・)「わかってる!そのときはお願いね!」
 (  *`ー´) 「…」
/( ・ヮ・) 「じゃあ、私はこれで失礼するね。また後で」
⌒*( ・∀・)「うん!またあとでね!」

(会議。なのは、フェイト、ユーノ、クロノ、管理局員)
/( ・_・)「ユーノ…じゃなくて、スクライア博士の予想通り、彼らはバルディッシュを狙ってきました」
(○∀○-:) 「やはりそうか。これではっきりしました。」
 (  `ー´) 「もったいぶってないで何がはっきりしたのかさっさと言ったらどうなんだこのフェレットもどき!」
⌒*( ;・∀・)/( ;・_・)「…」
管理局員A 「えーと、スクライア博士、続けてください」
(○∀○-:) 「はい。魔族の狙いはC-級指定ロストロギアクリエイション・オーブと見て間違いないでしょう。」
⌒*( ・∀・)「へぇ…ロストロギアにもC-なんてのがあるんだ…」
 (  `ー´) 「そうか、なのははA級しか見たことないんだよな」
(○∀○-:) 「えー、C-とはなっていますが調べたところこれがかなり危険な代物でして…」
/( ・_・)「危険?闇の書よりも?」
(○∀○-:) 「クリエイション・オーブは世界環境を術者の思い通りに変えるもの。ですが『ノアザルク』という別名を持つように、
術者と術者の選んだ2名を除いては全てその世界から消滅してしまう、そういうものなのです。それに…」
⌒*( ・д・)「それに?」
(○∀○-:) 「このロストロギアは全部でアクア・クリムゾン・ライトニング・フォレスト・カスタムの5つのオーブからなり、
それが一人の手に渡った瞬間に発動するため、最悪の場合、全く関係の無い人々を巻き込みかねない」
煤ワ*( il・д・)/( il・д・) ( il `д´) 「!!」
(○∀○-:) 「それに、さっき調べてもらったら、少なくともそのオーブのうちの1つが例の襲撃地点の近くにあるらしくて…
おそらく彼らはその反応を追ってきたに違いない。そこにいた修練生が運悪く水・氷の魔法を主軸とするストレージデバイスを持っていた」
 (  `ー´) 「アクアと勘違いされたのか」
(○∀○-:) 「その通りです。そして次にあそこに行った調査部隊のうち、シグナムが持っていた『炎の魔剣』レヴァンティンが狙われた。」
/( ・_・)「こんどはクリムゾンと…」
(○∀○-:)「そこで僕はフェイト執務官に行ってもらった。雷魔法が得意なあなたを、彼らはきっとライトニングの持ち主と勘違いすると思って。予想通りでした」
 ( # `ー´)「お前人の妹を囮に使ったのか!!え!?」
(○A○-;)「わわわわわ・・・」
管理局員A「艦長落ち着いて!!」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 00:27:55 ID:PXtbFeyG<> >>351
それはないのでご心配なく。彼が輝くのは本当に一瞬です。
あと、原作にならって悪役も作りません。もっとも、「魔族」というのはいかにも悪役臭い名前ですが… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 01:53:55 ID:UMXHylix<> 自サイトでやったほうが…
もしくはarcadiaとかに投稿したほうがいいと思うよ… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 02:27:10 ID:i5TB3iC7<> というより、顔文字とかやめてくれ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 02:42:44 ID:PBeaZdKR<> だな、クロノには笑ったが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 03:11:35 ID:zin07wqU<> なのはとアリカと真紅が共闘するお話読みたーい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 04:48:20 ID:b5SclOnh<> とんでもないカオスだなそれw <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/17(金) 09:21:05 ID:1vsIiS01<> >>352
 とりあえず、このスレの他の職人の作品読んでみろ。レベルの違いが分かるはずだ。
こんなこと書くとスレが閉塞的になりかねんが、オリキャラやオリ設定が強すぎるのは
「壮大」とは言わん。まして顔文字とか文章に組み込むなんて有り得ん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 10:37:06 ID:3/BbMRq5<> >>359
ageながら、そないな言い方しちゃあかんえ。
オリ設定や顔文字に対する意見は、同意だけど。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 12:04:46 ID:JuRWpNQ4<> >>354
私にHTMLを操る技術があればよかったのですがね…
とりあえず現在構想中のシグナムVSフェイト話が形になるまで投稿は控えます。
スレ汚し申し訳ございませんでした。 <> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:38:37 ID:RAKHdex4<> 8 だが威厳は崩れるばかり

pm 2:05 喫茶リーゼロッテリア

 ――目標補足。
 写真が嘘をつくことはない。紛れもないあの二人こそすずかに託された鈍足カップル。
 カップルと言うにはいささか早計か。しかしどの道そうなる運命に差し向けるのだ。先物取引には自信がある。
「し、忍? ……大丈夫か」
 隣を歩く恋人は不気味ににやつく忍の様子に少々戸惑い気味だ。
「ん〜、だいじょぶじょぶよ」
 本人が申告しても見るからに怪しい雰囲気を纏っていてはそうも言いたくなる。大体、忍がこんな顔を浮かべる時は何かろくでもない企みがほとんどなのだ。
「さぁてと、悩める男女に恋の手ほどきしてあげましょうか」
 前言撤回――全部だ。
 いくら妹の頼みだからって人の恋路に手を出そうとするなんて忍は何を考えているのか。こういうものは本人達の問題であり他人が干渉するなんて愚の骨頂だ。
「忍……言っても無駄だと思うんだが一応言っておく。……こんなことする必要なんてないだろ?」
「その実直さのおかげで桃子さんにまで世話を焼かれたのは何処の誰かさんでしょうか?」
「…………俺か」
 去年のバレンタインデーが脳裏を掠める。
 あんな漫画のような展開はもうご勘弁願いたい。忍ならやりかねないと思っていたのにまさか自分の母親が入れ知恵していたなんて思えるわけが――思える。
 今だって父親と新婚よろしくのいちゃつきを見せているのだ。二人が結婚したのは遥か昔だ。だというのに二人の熱は年々右肩上がりをするだけで衰える様子など微塵もない。
「去年のバレンタインデーは私にとって今までの人生で最高だったわ」
 わざとらしく強調して腕を絡める。
「お、おい……」
 狼狽する恭也に寄りかかるようにもたれ上目使い。
「そういう幸せって人にお裾分けしなきゃ」 
 頬を朱に唇が囁いた。
 素直に可愛いと思ってしまうあたり、相当忍に惚れこんでしまっていることが身に沁みる。確かにそんな目でそういうことを言われると首が縦に動いてしまういそうになる。
<> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:39:42 ID:RAKHdex4<>
「……お裾分けというか、見せびらかせたいだけなんじゃないのか?」
「あはは、バレた?」
「ああ、伊達におまえの彼氏をやっているわけじゃないんだから」
 恥ずかしいセリフだと内心、思った。犬のようにじゃれつく忍に応える代わりに顔を赤くして恭也はひたすらに歩く。
 こんな姿、絶対に妹達には見せられない。せめてあの二人の前だけでは兄として威厳は持っておきたい。浮かぶことはそればかりだ。
「んじゃあ、さっそく行動開始といきましょ」
 行き先は言うまでもなくあの二人の隣の席。何気なく、あくまで自然を装って接近する。
 二人の様子は遠めに見て険悪、というわけではない。どちらかといえば仲のよい姉弟か友人、はたまた恋人か。
 話通りなら喧嘩中のくせに随分と雰囲気は明るいものである。まさか自分の出番が来る前に仲直りでもされたのか。
(まっ……それはそれでいいんだけどね)
 別にこちらとしてはひたすらいちゃいちゃいちゃつくのを見せ付ければいいだけなのだから問題ははない。
 いちゃつく――というよりは恭也を弄って遊ぶことなのだが。
(ギャップがいいのよねぇ……)
 見かけどおり好青年の高町恭也は兎角恋愛に関しては奥手だ。真面目に一途でみんなの頼り。一言で言うならまさにそれ。おかげでデートはいつもこっちがリードするばかり。
 ただ一つ勘違いして欲しくない所は一から十まで全てがこっちのものではないこと。最後の一押しだけはいつも恭也が先に踏み出す。こちらが尻込みしてしまうことも平気でやってのける。
「久しぶりかな〜、オープンカフェなんて」
「し、忍あんまり寄るなって」
 向かい合わせだった椅子を肩が触れるか触れないかまで引き寄せる。
 戸惑う恭也にお構いなしの忍。本当にいつもはこんな調子なのに決める所だけはちゃっかり決めてしまうのだ。わかってやっているのか天然なのか。
 絶対後者に決まってるけど、ようはそんな所に忍は心底惚れていたりするわけで。
「じゃあ俺はコーヒーで」
「私はデラックスパフェで」
「珍しいな、おまえがそんなもの頼むなんて」
「いいのいいの、それとも子供っぽいって思ったり?」
「いや、意外だなって思っただけだ」
 そのパフェはこれから場を盛り上げるための最高の小道具になることをまだ恭也は知らない。おまけにそれに自分が巻き込まれるなんて想像もつかないだろう。
 さぁお楽しみの始まりだ。目線の先にいるクロノとエイミィを眺めつつ忍は心中ほくそ笑んでいた。
 
<> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:40:15 ID:RAKHdex4<>
「なんだか隣の二人アツアツだね」
「別に僕らには関係ないだろ」
 席に着くなり隣り合うように椅子を並べなおす様子を横目に眺めつつ、クロノはコーヒーを口に運ぶ。
「節度って言葉知らないんじゃないか?」
「まぁまぁ、かっかしない。……はぁ、でもいいなぁ。私もあんな仲睦まじくしたいな」
 エイミィはサンドイッチを頬張りながらどこか羨むような視線を向け、夢見がちに口から漏らした。
 あんなののどこがいいんだ。人目も憚らず自分達の世界を作り上げるなんて気が違っても自分はしないだろう。不謹慎極まりない。
「それにあんなの人に見せて何になる」
「自分達が幸せ者だって自慢したいんじゃないかな?」
 それなら家で気の済むまでしてるがいいさ。
「それに見てたら何だか私たちも負けないくらい幸せになりたいって思わない?」
 目の前のような幸せは結構だ。それに相手もいないのに誰が幸せの片棒を担ぐのか。
「思わない」
「うわぁ即答? まぁクロノ君にそう言ってるわけじゃないからいいんだけどね」
「ああ、僕なら絶対あんなことはしないさ。仮にいちゃつくなら二人きりの時だけで十分だ」
「…………へぇ〜クロノ君はそういうのが好みなんだ」
 エイミィが厭らしい笑みを浮かべて自分の顔を覗き込んでいた。
 さりげなくとんでもないことを口走ってしまったことに今更ながらに気づいた。
「か、勘違いするなよ! 例えで言っただけだ、例えで……」
 そうエイミィが何処の馬の骨とも知れない男といちゃついているのを見るなど真っ平御免だ。そんなことしてオペーレーターとして、補佐官としての仕事が疎かにされたらたまったものではない。
 それならばプライベートでとことんまで甘えさせて他人には一切見せないほうが皆のためだ。自分ならそうしている。
「君はオペレーターなんだ。仕事しないでいちゃついてばかりじゃ僕らが大迷惑するんだ」
「だから二人きりか……ってなんで私が話の種にされてるのよ」
 言われてまた、はたと気づく。なんでエイミィを引き合いにしているのだ。
 別に彼女でなくともいいだろうによりにもよって目の前の彼女が頭の中で笑っているんだろうか。
「き、君が悪いんだ。さっきから変な話ばっかりするから」
 何て理不尽な責任転嫁。思ったときには既に時遅し、か。
「じゃあ私がクロノ君と付き合ってると仮定したらプライベートだけ甘えさせてくれるんだ?」
「……そ、そうなるかもしれない」
 なぜだかわからないが心拍数が一瞬大きく跳ね上がった。
 おかげで言葉に少し詰まった。
<> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:41:16 ID:RAKHdex4<>
「少しぐらいはいいんじゃない?」
「駄目」
「仕事人間は嫌われるぞ」
「そこまで仕事はしないさ」
「執務官なのに?」
「……い、いやするというかなんというか」
 口が動くほどに泥沼へと引きずり込まれている。もう下半身はどっぷりと浸かっていた。
「はぁ……クロノ君の彼女になる人って苦労しそう」
「き、君こそ相手が哀れに思えて仕方がないよ。こんな小言ばかりじゃすぐ嫌われるぞ」
「だって男の子にはしっかりしてもらわなきゃ」
「そ、それは……確かにそうだな」
 言論封殺だった。
 どんな言葉も体のいいようにあしらわれ泥沼へ沈んでいく。もう肩まで浸かって来ただろう。
 なぜここまで今日はエイミィに負かされているのだろうか。あまりの滑稽さに情けなく、泣きたくなってくる。
「でもよくやるわよね、あの二人」
「え?」
 エイミィに習って首を動かすとまたも視界にあの二人。
 男性の方の顔が妙に赤かった。原因はもちろん隣の女性のせいだ。
「はい、恭也。あ〜ん……」
「い、いやなにもお前ここまで」
「あ〜〜ん」
「あ、あ、あ〜ん……」
 ああ、幸せそうですね。
 スプーンが男性の口に咥えられ、それを持つ女性は徒に笑みを浮かべ満足そうだ。
「それじゃあ今度は私に、ね?」
「勘弁してくれ……」
「だ〜め」
 多分尻に敷かれる夫とはあんな男のことを指すのだろう。
 油切れのロボットのようにぎこちない手つきで今度は男性が女性の口にスプーンを放り込む。なんだかんだいって最後は妥協してしまっているのだ。
 まるで今日の誰かさんそっくりだった。顔には出さず自嘲した。
<> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:45:08 ID:RAKHdex4<>
「はい、クロノ君」
「ん?」
 目線の先にサンドイッチが突きつけられる。もちろん相手はエイミィ以外のなんでもない。
 目が合うと彼女はやんわりと笑った。
「安心してクロノ君のサンドイッチだから」
「そういう問題じゃないだろ……何の真似だよ」
「隣の真似」
 頭が痛い。羞恥心というものがないのかエイミィ・リミエッタ。いやそれなら着替えに出くわした時もあんな反応するわけがない。
 ――また思い出してしまった。忘れろ、いいから忘れてくれ。
「どしたのクロノ君? 顔真っ赤だよ」
「なんでもない!」
 エイミィがいるせいで余計にイメージが鮮明に結ばれていく。服越しにでも胸の谷間が透視できそうなくらいだ。
 激しく軽蔑したい。
「う〜ん……確かにそこまで照れるなら二人きりってのも説得力あるわね」
「か、勘違いするな! そのくらい僕にだって出来るさ」
 むんずとエイミィの腕を掴みサンドイッチに噛み付いた。そのまま残りを引きずり込み思い切りよく咀嚼。口一杯を一気に胃袋へと押し込んだ。
「うっわぁ……ムードない」
「――ん、ぐぅ!?」
「はい、お水」
 本当にこの子はアースラの執務官なんだろうか。
 コップを手渡しながらエイミィはクロノの醜態ぶりにため息をつく。艦長が見たら泣くこと間違いないだろう。
「ぶはぁ! ……助かった」
「いえいえ、どういたしまして」
 今日のクロノはいろいろと変だ。いつも彼のことは見ていたつもりだったがここまでへたれ姿は見た記憶がない。
 着替えを覗いたことに負い目を感じているのか。だったらもっと謝って貰いたい。あんな一言二言で乙女の気を静めようなどエチケットに欠けすぎているのだから。
 そうは思っても今日はせっかくの休日なので表にこれは持ち出さない。楽しむ時は楽しむだけ、それでいい。
「ほんとしょうがないんだからクロノ君は。片意地張らなくてもいいって」
「張ってなんかない。君がしたいって言ったからやってやったまでだ」
 どんどん拗ねていくクロノを見ながらふとエイミィは考えてみた。
 よく考えたらクロノがこうやって女性と一緒に外出したこと自体皆無ではないだろうか。記憶を辿ってもやはり彼は一人佇んでいる。
「はいはい、そういうことにしておいてあげる」
 クロノを諌めてエイミィは自分の最後のサンドイッチを口に運ぶ。
「じゃあ次、どこ連れて行ってくれるの?」
「どこがいい?」
「楽しいとこかな」
「まかせてくれ」
 立ち上がるクロノにエイミィも続く。多分、今日はこの調子がずっと続くのであろう。
 でもクロノの見たことない一面を見るのは悪くはない。どちらかといえばワクワクしっぱなしだ。
「どうした? 行くぞ」
「うん、今行くよ」
 ならしばらく身を委ねても罰は当たらないだろう。 <> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:46:03 ID:RAKHdex4<>
「なかなかいい雰囲気にはなったかしら」
 喫茶店を後にする二人の眺め忍は一人ごちた。
 並んで歩く後ろ姿はお世辞にもまだ恋人には見えないけれど、それでも二人の間で何かしら進展はあったはず。
 元から基礎工事はしっかり成されている。後は二人がうまい具合に積み上げてくれれば自然と関係もいい物へ仕上がるだろう。
 だからといって自分たちの努力が最初から必要なかったとは思わない。結局きっかけが必要なのだ。そのきっかけに自分達はなった。
「それならもういいだろ忍」
 辟易した顔で訴える恭也。既にテーブルにはパフェの器が二つ並んでいた。
「俺甘いものは苦手なんだ」
「それはどっちの意味で?」 
 嘲笑うような笑みで恋人に問答。
 言わなくたって分かるけどやっぱり直接聞いてみたい。
 ゆっくりと口が開く。這いずり出てきた言葉はため息交じりの呟きで
「……両方」
 そういうことだ。 <> 176<>sage<>2006/02/17(金) 15:47:05 ID:RAKHdex4<>
おそくなりましたが投下完了
今回もいろいろいい作品がどばどばと出て来てなによりです
いいものGJ! 皆さん楽しませて読ませてもらってます

今回も敬称省略ですんません
それではまた近いうちにA`)ノシ


<> 549
◆51nyTkmf/g <>sage<>2006/02/17(金) 21:00:45 ID:N+NKjLw1<> 行き詰まって別スレのSS書いてたんですが、
間違ってトリップキーさらしちゃった。。。orz

次からトリップ代えます。

あと、「なのは外伝」の中の人。
保管庫に入れるのはあらすじからでいい?
たぶん月末ぐらいになると思うけど。 <> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/02/17(金) 21:02:11 ID:N+NKjLw1<> 騙られることも無いと思うけど、
とりあえず変えときます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/17(金) 23:59:52 ID:E+j+u9g5<>
「フェイトちゃんだって本当はユーノ君のこと好きなくせに!」
「…な!何言ってるのなのは?」
「私知ってるんだから…フェイトちゃんがずっとユーノ君のこと見てたの」
「そ、そんなことは…」
「やきもちを妬いてるならやきもちを妬いてるって、はっきり言ったらいいじゃない!」
「なのは!!」

バシッ!!

私はストーブの上の餅をひっくり返した。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 00:02:08 ID:2F/nErDl<> ちょっと書いてみた自分の文才の無さに今は後悔してる(・ω <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 00:33:18 ID:fhnEgTjC<> 不覚にも最期の一文にワロタ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 00:58:06 ID:NFUKPBzZ<> あまりにも古典的オチに油断してワラタw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 01:48:01 ID:6tmOtWcC<> この場合ユーノとは、焼いている餅の事指すと考えれば良いのか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 03:20:06 ID:D6OO10Yg<> 本当に餅を焼いてるフェイトワロス <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 12:12:25 ID:9OaQittp<> 今日は漫画版なのは発売日! <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/18(土) 19:30:46 ID:JOj1MceY<> ───まいったね、これは。

少年は自分に残った力でなんとか動かすことの出来る唯一の部分、首を廻して辺りを見回すと、心中で一人ごちた。

(本当に・・・・まるで力が出ないや)

以前になのはやフェイトの例を間近で見ていたから、情報として知ってはいたのだけれど。
六年前の「あの事件」の最中ならともかく、まさか自分が今更同じ状況に陥る羽目になるとは思ってもみなかった。

(まあ、発動した魔力自体は管理局でも感知してくれてると思うけど・・・)

眼鏡をかけたその文化系の外見に反しいくつかの修羅場はくぐってきたせいか、こんな状態でも不思議と彼はパニックにはなっていない。

(・・・助けを待つしか、ないか・・・)

だとすれば、少しでも体力は温存したほうがいい。魔法が使えない、今は特に。
いざという時、助けに来てくれた人達が自分の持つ情報を必要とするかもしれないのだから。
肝心な時に動けないのはまずい。
その判断の元、壁にもたれかかった姿勢のまま少年は瞳を閉じる。

(情けないもんだな・・・まったく)

何も変わっていない。あの子に頼りきりでサポートくらいしかできなかった、あの頃と、何も。
目蓋の裏に浮ぶのは、この仕事が終われば想いを伝えようと思っていた、想い人の姿。
こうなってしまってはまたしばらくはおあずけだろうか。
記憶してる限り彼女は別任務中のはずだから、この情けない姿を見られることがないのが不幸中の幸いではある。

「・・・?」
じゃり、と床の砂を踏む音と共に人の気配が室内へとやってくる。
どうやら、素直に休ませてはもらえないらしい。
「・・・・・」

それは、彼の予想した通りの人物。さすがにすぐに助けが来てくれるとは少年も考えてはいない。
片目だけ開きそちらの方を見る少年を、「彼女」はじっとみつめていた。

「この『宿』へとまた侵入者がやってきた・・・・・お前の、仲間か・・・?」

───『宿』・・・?宿、ね。なかなか気になる単語だ。

「さあ、ね・・・。けど君がその侵入者とやらを歓迎していないのは、事実なんだろう・・・?」
「・・・・・・」

───だんまり、か。ああもう。こっちはもう、口を開いてしゃべることすら億劫だっていうのに。

「僕としては、君が今目の前にいること自体、不思議なんだけどね」


───君は、なのはとフェイトの手で空に還ったはず。


「何故生きているんだ・・・・・・闇の書の・・・・いや・・・・・、リィンフォース・・・?」



魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−

第五話 仮宿 <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/18(土) 19:31:58 ID:JOj1MceY<>



「ええい!!まぁたこいつらかい!!」
わめきながらも、鉄拳を叩き込む。強力な魔力の込められた拳に打ち据えられ、狼型をした獣は吹き飛び、跡形もなく四散する。

「やれやれ、ちまちまと・・・一体何匹出てくるんだよ、全く・・・」

敵の消滅を確認し、アルフほほっと息をつく。

「通路が狭かったのが幸いだな。あちらもそれほど多数でこちらを攻められん」

そういうシグナムもまた、向かってきた個体を一刀の元に斬り捨て、レヴァンティンを鞘に丁度収めたところだった。

「・・・・ザフィーラも、アルフも大丈夫?」
「は?何が。大丈夫だって。こんな奴らにやられるほどやわじゃないさ。な、ザフィーラ」
「・・・そういうことではない」
「へ?」

彼とシャマルの言葉の意味を図りかねるアルフ。
当のザフィーラは狼型の獣が叩きつけられ四散した壁のその場所を、なぞるように撫でていた。

「お前も気付いてはいるだろう・・・?奴らの素体となっているのは、我々と同じ種族の狼だ」
「あ・・・!!」

つまるところ、自分達が打ち倒し続けているのは、いわば同胞。シャマルの確認は、そのことに対する気遣いの言。

「けどさ!!」
「・・・無論だ。奴らに自分の意志はない。魔力で使役されているだけに過ぎん。そのようなもの・・・まして障害となるものを打ち破るのに、迷いはない」
「だが・・・気になるな。ただの偶然ならばいいのだが・・・。こいつらは、装備している装甲までザフィーラにそっくりだ」
「シグナム」
「お前はどう思う、テスタロッサ」

打ち倒してきた敵に沸き起こった疑問を、指揮官へとぶつけてみるシグナムであったが。
戦闘服に身を包んだ当の少女は、こちらを見向きすらせず、ただ一言、

「・・・別に。私達はユーノを助けることを第一に考えていればいい。任務を、第一に」

淡々とした声で応えただけだった。
無理をしているな───シグナムは相変わらずの彼女の冷徹な態度を、軽い失望と同時に密かにそう評した。
実際、遺跡内部組と待機組に別れ任務を開始して以来。
出発直前の模擬戦同様、彼女の動きには本来のキレというものが全く感じられなかった。
はっきりいって、本調子には程遠い。フェイトの持つ責任感の強さや正義感の強さが、完全に裏目に出てしまっている。


「急ごう、ぐずぐずしてる場合じゃない。シャマル、ユーノの反応は?」
「え?あ、えっと・・・やっぱりわからないままです。多分何らかの理由で魔力が大きく低下してるものと・・・」
「そうですか」
<> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/18(土) 19:32:41 ID:JOj1MceY<>
しかしそれでいて、申し訳なさそうに報告するシャマルとは対照的につとめて冷静さを装っている。
満足とはいえないであろう返事の内容への落胆も、不安そうな素振りもけっして見せようとはしない。
すたすたと歩き出すフェイトは普段通りではない分、冷静で容赦のない、執務官としての仮面を深く被ってしまっている。
その仮面をはがすのは、容易な作業ではないだろう。

「フェイト・・・」
「フェイトちゃん・・・・?」

・・・否、そのように感じているのはシグナムだけではなかった。
助けを待つ友と、自ら拒絶した友。二人の間で揺れる彼女が自分の選択に対してその仮面の下で葛藤し、相当の無理をしていることは
アルフもシャマルも、戦闘以外で他人に対してあまり興味を持たないザフィーラさえもが気付いていた。

「・・・たしか資料通りなら、この先に少し開けた空間があるはず。何かあるとすれば多分そこ。みんな、気をつけて」

先程現れたような使い魔の類が、今度はもっと大きな集団で仕掛けてくるかもしれないし、何か他の障害となる仕掛けがあるかもしれない。
遺跡内では何が起こるかわからないのだから。
あくまでも冷静な「指揮官」として一同に注意を促す彼女は今度もやはりシグナム達の方を見ようとはせず。
皆の方に向けられた普段からけっして大きくはない背中は覇気に欠け、いつもより遥かに儚く、頼りなげに見えた。
それこそ、シグナム達が指摘された自分達のことよりも言った彼女自身への心配へと、その思考回路を傾けるほどに。

・・・・・だからであろうか、烈火の将をはじめとする守護騎士三人が感じているはずのわずかな違和感に対して──ほんの微かな既視感を気付かずに無視してしまったのは。
その感覚は、普段通りであったとしても気付くかどうかは微妙なほど小さく、注意深くしていなければわからないであろう代物。
今自分達が「ここ」に居るのが当たり前という感覚、仲間の姿と酷似した敵。友の姿を感知できぬデバイス。見たことのない場所に対して抱く懐かしさ。
あるいは、リィンフォースの感じたことを直接彼女達が聞いていればそれらの奇妙な違和感に思い到ることが可能であったのかもしれない。
けれど重なったいくつかの要因によって、一行はその違和感に気付かぬままフェイトの後を追い進んでいく。




と。
殿をつとめるアルフの姿が通路の向こうに消えると同時に、その変化は表れた。

───『第二次防衛プログラム、起動』───

発動の証たるトリガー・ヴォイスが響き、彼女達の通り過ぎいなくなった暗い通路を、
漆黒にきらめく暗黒色の光──表現としては奇妙であってもそれ以外に表現できぬ、輝きを放つ正に「黒い光」──が、満たしていく。
光は徐々に集まり、ヒビだらけで砂塵にまみれた床面へと、何かの図形を描きだす。

三つの円を頂点に頂く、三角形の紋様の独特の形をした魔法陣。
そして内部に刻まれたルーン文字はミッドチルダ式のそれとは、明らかに異なった形、配列で。

「・・・・広域結界、発生」
「空間、封鎖」

今では廃れた技術、現在ではシグナムやはやて達を含めてごく少数しか使い手のいないレアな術式。
『ベルカ式魔法陣』、その特徴的な形状をした印を結び利用することができる人間は、限られている。

なのに、朽ち果てた通路の床に浮き出るそれはひとつではなく。またひとつ、ふたつと増えていく。

「夜天の主が庭」
「蹂躙、させはしない・・・」

そうやって描かれた四つの魔法陣の上に降り立った影もまた、四つ。
一様に黒い衣服を身につけ、流れるような銀色の髪をした、女性の姿をして。

在りし日の「彼女」の姿そのままに、手の内にはそれぞれ、一冊の分厚い本を持っていた <> 640
◆x5RxBBX8.s <>sage<>2006/02/18(土) 19:49:02 ID:JOj1MceY<> 資料集買えたけど漫画買えてません。
月曜行ってあるかなあ・・・orz

>>YUKI氏、>>176
お二方とも激しく乙です。自分のペースでどうぞ。頑張ってください。

>>なのは外伝作者氏
ちょっとオリキャラ比率が多いかもしれませんね。
ひとつひとつの描写が少なくても総数が多いとそれだけで
オリキャラの描写に割く比率が多くなってしまうことがあるので
気をつけてください。

<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/18(土) 22:39:58 ID:ItwjkgKS<>
【]V】

「信じられない…あれほどの傷を、この短期間で…?」
 騎士甲冑を纏ったシグナムの姿に、少年は驚きを隠せない。

「…我、守護騎士ヴォルケンリッター。守るべきもの、
 そして『守りたい』ものの為ならば…この剣、何度でも手に取ろう」

 シグナムが、静かに剣を構える。
「…そうですか。どういうトリックを使ったか知らないけど、吹っ切れましたよ。
 今度こそ、貴方を斬る。もう…迷わない!」
 少年が、刀に手をかけた。と同時に、その姿が残像に変わる。

『小手先の攻撃じゃ、貴方には勝てない…最初から、全力でいきます!』
 少年の言葉が、シグナムの周囲全方位から響く。
 薄暗い室内で、少年が刀に圧縮する魔力の光が、流星の様に室内を飛び交う。
 その光の中、シグナムは…
(動かない…いや、動けないのか…?)
 剣を構えたまま、微動だにしない。
(それなら…これで決める!)
 シグナムの斜め後方。少年の刀が、鞘を走った。

―ヒュン!

「な!?」
 風切り音が室内に響く。シグナムの身体には…脇腹に、僅かな傷があるのみ。
(かわされた!? まさか!)
 再び、少年は閃光と共に駆ける。二度目の、一の太刀。
 キイィィィン!
 ―今度はレヴァンティンが、刀を受け止めた。
 激しく衝突した二つの魔力に、空気が震え、弾ける。
「くっ!」
 衝撃をこらえ、距離をとる少年。一方、シグナムは最初の位置から動いていない。

「一度見ただけなのに…もう、見切ったっていうんですか…!?」
 驚きに悔しさを重ねた表情で、少年が問いかける。
「…魔力を圧縮させながらの移動では、どうしても速度が落ちてしまう。
 どんなに気配を絶っても、集めた魔力がお前の技の『出処』を教えてくれる。
 何より…圧縮と撹乱に気を取られる余り、肝心の飛び込みの速度と、
 斬撃の精度が落ちている。それでは、私を捉えることは出来ない。
 こちらも同じように、魔力を剣に乗ずれば、捌く事も可能だ」
 諭す様な口調でそう話すシグナムに、目を丸くする少年。

「それでも、僕にはこれしかない…! たとえ、敗れるとしても!」
 鋭い目で、少年はもう一度、刀を鞘に収めた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/18(土) 22:40:28 ID:ItwjkgKS<> 【]W】

(今度こそ!)
 完全に背中を取った格好で、少年がシグナムに斬りかかる。
「…紫電一閃」
「!! くっ!」
 咄嗟に刀を防御の型に変え、攻撃を受ける少年。しかし、『威力』という点で、
彼がシグナムに敵うはずもなかった。
「うわあああ!」 直撃こそ避けたものの、余りの衝撃に、壁に叩きつけられる。
(完全に読まれた… もう、ダメか…!)

「…剣を引け。お前は、ここで倒れるべき人間ではない」
 シグナムが、厳かに告げる。
「…同情なら、やめてもらえますか。大嫌いなんです」
「そうではない。お前にも、私と同じく…強い『意志』のようなものを感じるからだ」
「それなら、判るでしょう? 絶対に引けない。引くわけにはいかない!」
「…」
 部屋の周囲に、武装局員と魔導師達が集まり始めていた。
「シグナム捜査官補佐! 今の内に、逮捕を」
「すまないが、黙っていてもらえるか。この者との決着は…私が」
 室内に入ろうとする局員たちを、シグナムが剣で制する。

「撃ってこい…最初に私を倒した時のものを超える、お前の最高の一撃を」
「…良いんですか? 今度こそ、どうなるか分かりませんよ?」
 少年の目が、更に鋭さを増す。


「我が名、ヴォルケンリッターが将、シグナム。お前の名は?」
「…ユウキ。両親が、僕に残してくれたただ一つのものが、僕の名前」
「そうか…ユウキ。お前の騎士としての一撃、我が全力を以って応えよう」

 鞘を取り出し、剣に添えるシグナム。レヴァンティンが…弓へとその姿を変えた。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/18(土) 22:42:04 ID:ItwjkgKS<>
【]X】

「…本気ですか? その構えじゃ、回避も防御もできない。死にますよ…確実に」
「案ずるな。我が思いを籠めし矢、必ずやお前を貫く」
 互いの武器を構え、魔力を圧縮していく二人。
 迂闊に飛び込めば、それだけで身を切られてしまうような、極度の緊張感。
 二人が動いていないにも関わらず、その場にいた局員たちは、身を固めた。

「シグナムさん…良かったら、貴方の『強さ』の理由、教えてもらえますか?」
 おもむろに、少年が口を開く。

「…守るべき者たちがいる。今までの私には、それが全てだった。
 だが今の私にはもう一つ、その者たちと『一緒にいたい』という思いがある。
 今ならば分かる。その二つが重なってこそ、真の強さが生まれるのだと」

 誇り高き騎士は、微笑を携えて答えた。
「お前はどうなのだ? ユウキ」
「…身寄りのない僕を育ててくれたのが、先生なんですよ。魔法を教えてくれたのも。
 でも、僕には全然才能がなくて…飛行と念話以外で唯一習得できたのが、
 魔力圧縮とフラッシュムーブの魔法だけ。それでも、先生は僕を見限らなかった。
 長所を伸ばし、徹底的に鍛えればいい…そう言ってくれた」
 一方の少年は、厳しい表情でシグナムに対峙する。

「だから、僕は負けられない。この『技』は…僕そのもの、僕の全てだ。
 そして、そんな僕を育ててくれた先生の為にも…ここで、貴方を斬る!」
 両者のチャージは、既に終わっている。あとは、どちらかが仕掛けるのみ。

「…僕と貴方のどちらが勝ち…どちらが死ぬのか。…行きます!!」
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/18(土) 22:43:18 ID:ItwjkgKS<>
【]Y】

 ―刹那の邂逅。

 一切の小細工なし。最短距離の真正面から、シグナムの懐に飛び込む。
 自分の左脇腹をかすめていっただけの矢に、少年は勝利を確信した。
 柄を握る手には、無駄な力は全くない。そして鞘を走る刀はいつも以上に軽い。
 さながら永遠、とも言えるその停止した時の中。
 少年は、真一文字に刀を振りぬいた。


 キィイン…!

 静寂を破ったその音は、やや無粋な耳障りを伴って、室内に反響する。
 ―折れた刃が、幾度か地面で弾んだ後…静寂の中に横たわった。

「そんな…武器…破壊…? あの一瞬で、僕じゃなく刀を狙ったなんて…」
 彼の間合いそのままの距離に、呆然と立ち尽くす少年。
 眼前で、レヴァンティンが剣と鞘に分かれ…シグナムが、それを腰に収める。
「同情は大嫌いだって、言ったはずなんですけどね…」
「こちらも言ったはずだ。『そうではない』」
 俯く少年に、シグナムはゆっくりと答えた。

「古き友に言われた…『貫くべき思いがあるなら、消えるべきではない』と。
 お前にも、私と同じ騎士としての誇りと思いがある…そう感じた」
「それでも、僕は負けた…僕の全てをかけた一撃だったのに…僕にはもう、何も…」
 折れた刀を握り、少年は涙を流した。

「…すまない。うまく言えないのだが…たとえ倒れたとしても、
 より強い思いを抱いて立ち上がれば…それは、敗北とはいわないような気がする。
 お前の澄んだ太刀筋が、私にそれを教えてくれたのだが…」
 顔を背け、言葉を紡ぐシグナム。こういう時、自分の口下手は何とももどかしい。
「もし、よければだが…その剣、より多くの者を守るために振るってくれないか。
 愛すべき者達のために戦うのも…その、悪くないぞ」

―これでは、考えていることの半分も伝わらないな…
 シグナムは少しだけ自嘲した。それでも、少しでも伝われば、と思った。
 かつて、敵であった友が教えてくれた、『思いを伝える』ことの意味と意義。
 今度は、自分がそれを。

「…まだ、僕を騎士と呼んでくれるんですね…」
「勿論だ。より速く、より強くなったお前と、もう一度戦いたい。何度でも。
 また会おう、騎士ユウキ」
「…………ありがとう…………」
 二人の周りに、局員達が近づいてくる。
 涙とともに差し出された手を、シグナムは静かに握った。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/18(土) 22:44:11 ID:ItwjkgKS<>
【]Z】
       ―2時間後、時空管理局本局―

「はい、手続きは以上になります。お疲れ様でした、シグナム捜査官補佐」
 事務のカウンターで書類を受け取るシグナム。無断出撃の件は、
どうやら犯人逮捕の功績でおとがめなしのようだ。
「あの…彼は、どうなりますか?」
「そうですね…騒ぎはおっきかったですけど、考えてみると支部施設の一部破壊
 のみですからね。前回のときもあなた以外に攻撃した形跡はないようですし。
 年齢的に考えても、それほど重い罪に問われることはないと思いますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
 軽く一礼し、その場を後にしようとしたところで。

「シグナム!」
 不意に届いた声の方向に顔を向ける。守護騎士の仲間達と…主の姿。
 シグナムは早足で彼女達に近づくと、車椅子の前で片膝をついた。
「主…申し訳ありませんでした。またしても、身勝手な行動をし」
 パ ア ン !
 乾いた音が、廊下に反響した。通りがかりの局員達が、何事かと一瞬足を止める。
「はやて…」 「はやてちゃん…」
 シグナムの頬をはたいたはやてに、ヴィータ達が驚く。一方のシグナムは、
はたかれた頬に触れることもなく、押し黙って主の次の言葉を待っていた。
「……心配した……心配したんよ…」
 シグナムの顔に両手を添え、そのまま静かに抱き寄せる。
 剣士の肩には、はやての大粒の涙が落ちた。
「シグナムはとっても強い。わたしを守ってくれるんも嬉しい。でも…私にとって、
 みんなは家族や。守りたい思う気持ちもおんなじ。だから、こないだみたいに
 一方的に守られるんは嫌や。もし、私をかばって誰かがいなくなったりしたら、
 悲しいし、寂しいんよ。だから、まだまだ頼りないかもしれんけど…
 もーちょっと、あとちょっとだけ、信じてな? シグナム…」

「…はい。今度の戦いで、私はとても大切なことに気がつきました。
 主はやて。これからは…いえ、これからも我らは必ず、貴方と共に」
 穏やかな微笑を湛え、シグナムははやてをそっと抱き返した。
<> jewel :【Turn against】<>sage<>2006/02/18(土) 22:45:15 ID:ItwjkgKS<>
【][】

「さ…みんな、返ろーか。ちゃんと休みとって、またお仕事や」
 涙を拭いながら、はやては笑顔をみせる。
「はやてちゃんの手料理、久しぶりですね♪」
「ったく、どっかの馬鹿が一人でムリしなきゃ、もっと早く帰れたのによ〜」
「…何だと?」
 ピク、とシグナムが首飾りに手をかける。
「そないなコト言うて、シグナムが怪我したとき、『ど〜しよ〜』って
 一番泣いとったのって、誰やったかなー?」
「そ、それは…」 ヴィータが少しばかり慌てる。
「お忘れですか主? ここにい」
「テメェは黙ってろよザフィーラ! 普段無口のクセに!」

 そんな何気ないやりとりに、笑顔が溢れた。


     ―同時刻、ミッドチルダ某所―

「2時間、か…」
 時計を片手に、魔導師が呟く。その声は、風下にいるもう一人の女性に届いたようだ。
「待ち合わせの時間、3時なんでしょ? 遅刻っていっても、まだ一時間だけじゃない」
 何とも気だるそうに、彼女は言った。黙って待っているのが性に合わないらしい。
「2時間、なんだよ…ユウキは、昔から約束の一時間前には必ずその場所に
 いるようなやつだったからな。来ないってコトは…やっぱり捕まったんだろう」
「やっぱりって…分かってて行かせるなんて、残酷だねえ。仮にも弟子だったんだろ?」
「いいのさ。ユウキは、いつまでも私などの周りにいるべき人間じゃない。
 あの剣は、もっと『正しい』ことに使うべきなのさ。ただ…」
「ただ?」
「いや…何でもない」

(…あいつを止めてくれたのが、『彼ら』の誰かであってくれたらいいんだがな…)
 言葉を飲み込み、静かに笑う魔導師だったが…その顔はどこか寂しげだった。

「それよりも…仕事の内容ですが、受けてもらえます?」
「勿論。というか、これだけの大金払うなんて、はっきり言って馬鹿よ。
 ハイリスクの割にローリターン。こんなことしてどーするワケ?」
 写真を片手に、呆れ顔で女性は笑う。
「それは良かった。生憎、そういう世界の相場ってものを知らなくてね。
 それに、貴方の言うとおり、私は馬鹿なもので」
 クスリと一笑し、立ち上がる魔導師。長髪が、風になびく。

「…だからこそ、『馬鹿の一つ覚え』をやるのさ。『それ』には、少々思い入れもあるしね」


       (END)
<> jewel<>sage<>2006/02/18(土) 22:51:44 ID:ItwjkgKS<>  1週間近く空きましたが、よーやく書き終えました…
シフトチェンジしやがったバイト先の店長と急にレポート出した教授はとりあえず呪っておきました。
 さて、「残り3本で完結!」と決めたはいいものの、まだ一つ…引っ張りすぎかも。
でもシグナムは書いてて楽しいですね。アルフ&ザフィーラとかもいいケド。
 読んでくださった方、ありがとうございました m(__)m

 他の職人の方々もごくろーさまです。楽しみに読んでおります!
 続きの投下を切望してます! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/18(土) 23:09:18 ID:2l4VbJ1b<> なのは・・漫画も設定集も売ってない>福岡 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 01:34:31 ID:yQPGpmNy<> なのは コミック今日買ってきたにゃん >茨城

在庫一冊しかなかったが・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 01:38:17 ID:PKxPdwYn<> >>640
乙。ユーノやっと出てきたよ、キーパーソンっぽいのに
そして、盛り上がってきた物語に次回を待つ

>>jewel氏
バイト&レポート乙
シグナムはいい… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 02:50:32 ID:XuL5U68h<> >>640
ついにユーノ登場!!って防衛プログラム*4!?
なんかとんでもない事になってますね……続きが楽しみです

>>jewel氏
シグナムはやっぱりいいですね

所で自分も書いてたらオリジナルキャラと魔法が満載になって
しまったのですがいいのかな? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 03:01:29 ID:qboBCmcN<> 漫画&資料集購入完了!!>福島
二冊購入!アニメイトで購入される方へ
女性STAFFは基本的にマナーが悪いらしい…
アニメ店長に聞くのをお勧めします。
福島県はマナー最悪…聞くと「ハァ??」と言われる… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 03:02:28 ID:vnmxCEL5<> >>640
GJ。盛り上がってきましたね。「闇」復活?
>>jewel氏
待ってました。GJです。今回も非常に完成度が高くおもしろかった

>>392
「オリジナルキャラと魔法が満載」は不味いと思われ。
スレの流れにそぐわないし。長編でも2〜3人位までが限度かと。 <> 392<>sage<>2006/02/19(日) 03:16:14 ID:XuL5U68h<> なのはの武装局員の訓練書くとなるとどうしてもね……
たのキャラがいる方が変だし <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:45:24 ID:g3mQU4DY<> はじめまして。突然ですが小説を投下したいと思います。
6年間の空白を脳内補完したものです。オリジナルキャラは一切でません。
初めて小説なるものを書いたのでいたらない点が多いと思いますが気楽に読んでほしいです。

魔法少女リリカルなのはA's+

第一話 「苦悩する少年なの」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:46:58 ID:g3mQU4DY<>
ザーーーーー
豪雨と暴風があたりを吹き荒れ、雷が雲を割る。光が一瞬闇を支配し、音が遅れて耳を塞いだ。
漆黒ともいえる海の上で巨体がうごめき、低いうめき声のような鳴き声をあげた。
その巨体のまわりではピンクと緑の光が巨体を追いかけるように線を引いている。

『ユーノくん!そっち行ったよ!!!』
『くっ!!このぉ!』
ユーノがはなったチェーンバインドが巨体に絡みついたが一瞬にして引きちぎられた。
(やっぱり駄目か…。あの巨体は僕一人じゃ押さえ込むことはできない。せめてアルフかザフィーラさんがいれば…)
「ディバイン!バスターー!!」
光の帯が巨体にあたるが、その進行は止まることはなかった。
『どうしよう!このままじゃ港まで行っちゃうよ!!』
降りしきる雨の中、なのはは必死に攻撃を続けていた。
(魔力を削れば大人しくなるって話だけど、相手の魔力量が桁違いだからな…。
ここはスターライトブレイカーで一気にかたをつけるしかないか…)

『こいつはどうやら陸にあがることしか考えてないみたいだから、なのはは後ろからスターライトブレイカーを
撃って!!僕は前から少しでもこいつを抑えるから!!!』
言うと同時に二人はすばやく配置についた。
「ストラグルバインド!!」
巨体全体にはかけずに片足にのみ幾重にも重ねたバインドをかけ、錨のように海の底へとつなげた。
さすがの相手も少し動きが止まり、不思議そうに自分の片足を見下ろした。
「count down 10…9…」
レイジングハートの前に光が収束し始める。すでにカートリッジをロードした後で魔力量は大幅に増幅し、その大きさは
今まで見た中でも最大級といえる。
(よし、これで…)
勝利を確信した次の瞬間、化け物は海の底と繋がった片足を軸に巨体を反転させ、なのはの方をぐるんと向いた。
「「え…!?」」
二人が驚きを顔に出すと同時に化け物の口から光が漏れた。スターライトブレイカーに勝るとも劣らない魔力を
肌に感じさせる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:48:12 ID:g3mQU4DY<> 知能は限りなく低いと事前に聞かされていた。しかし、どうやら魔力を感じて危険を察知することはできたらしい。
確実にスターライトブレイカーより早く魔力攻撃がくる。
「まずいっ!!」
すぐになのはの方に飛んでいき間に割って入り盾作る。
「ユーノく…!?」

カッ!!!!!

辺りが光に包まれる。
「うわああああああああ!?」
「きゃああああああ!!!」
盾もろともユーノは吹き飛ばされ、遅れてなのはも海へと投げ出された。

ざーーーーーー
雨はなお降りしきり、巨体は何事もなかったかのように振り返り陸を目指した。

「ぷはっ!!」
海からピンクの光が飛び出し空中で止まる。
「はぁ、はぁ…。ユーノくん!ユーノくん!?」
念話も忘れ叫ぶなのは。
『だ、大丈夫…。ごめんなのは、作戦失敗みたいだ…』
そいうとなのはの目の前にユーノが姿を現した。バリアジャケットは破れ、かなりボロボロだ。
「ユーノくん!?大丈夫なの?」
「うん、そんなことより早くあいつをなんとかしないと…」
「でもどうやって…?」
「………」
スターライトブレイカーは不発に終わり、魔力は空気中に散布されてしまった。
今からまた撃つ時間もないし相手がそれを許してくれないだろう。

策を考えていると突然アースラから通信が入った。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:49:17 ID:g3mQU4DY<> 『ごめんなのはちゃん、ユーノくん!こっちの件は終わって今クロノくんが着くから!!』
通信が切れると同時に青い魔法陣が真上に出現した。
「遅くなってすまない」
「クロノくん!!」
なのはの顔が希望の光を取り戻した。
「今からデュランダルであいつを止める。なのははそのサポートをしてくれ」
「うん!」
カードから杖へとその形を変えたデュランダルがキラリと輝いた。
「じゃあ僕は…」
ユーノがなにかを言おうとした瞬間クロノが口をはさんだ。
「ユーノは治療に専念したほうがいい。ここは僕にまかせて休んでいてくれ」
「ユーノくんはわたしよりダメージひどいから、無理しないほうがいいよ。あとはわたし達が何とかするから!」
「あ…うん」
俯きながら答えるユーノになのはが微笑んだが、ユーノはその笑顔を見ることは出来なかった。
「よし!いこう」
「うん!!」
青とピンクの光が遠くの黒い巨体の方へ向かって飛んでいき、あとにはユーノ一人が残された。
やけに雨の音がはっきり聞こえるような気がした。

                 *

「まったく、いかに交流があるからとはいえ時空管理局を便利屋扱いされるのも考え物だな。
こっちはこっちで手一杯だってのに」
「まあまあ、うちがレベルの高い魔導師を他より多く保有してるのは事実だししょーがないじゃん。
資金と技術援助もあるしギブアンドテイクよクロノくん」
そういってエイミィは微笑んだ。クロノ自身十分理解しているが、駆り出される身としては愚痴の一つも言いたくなる。

なのはの世界ともミッドチルダとも違う別次元の世界で、突如強大な魔力をもった生物が出現。どうやら環境の変化や
その他もろもろの要因での突然変異らしいのだが、その沈静化に時空管理局が力を貸すことになった。
そこの次元は別件での関わりもありその後交流が続いていて、今ではエイミィのいうギブアンドテイクの関係である。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:50:13 ID:g3mQU4DY<> 魔法が存在する世界と言えど優秀な魔導師というのはすぐに出て来れない状態で、よく時空管理局に応援を求められる。
もっとも、忙しいのはお互い様なので今回のようにぎりぎりの戦いになることもしばしばである。

「…それでユーノは大丈夫なのか?ずいぶんひどくやられたみたいだが」
ちょうど通りかかった艦内の自動販売機で缶ジュースを買いながらクロノは聞いた。
「うん、今なのはちゃんと医務室にいる。治療も自分でやるって言ってるみたいだし怪我はそれほどでも
ないみたい」
「そうか。ならいいんだが」
ガコンと缶が落ちてくる。
「怪我はいいんだけど…」
「他になにかあるのか?」
「……まあね」
少しの沈黙の後、カコッとふたを開ける音が響いた。

「サポートとしての役目が十分果たせなかったから結構きてるみたい、精神的にね」
エイミィは伏目がちに答えた。今回の件だけではなく、日ごろから少しずつだが感じていたこと。
常にモニターごしに見ていた自分は今のユーノの気持ちをなんとなくだがわかる気がした。
「まあしょうがないだろう。経験から言うと今回の相手を抑えるにはAクラスの魔導師が少なくとも二桁は必要だった。
だからこそ僕にも急遽応援の要請がきたわけだし」
持っている缶ジュースを半分まで飲み干し一息つく。この後書類作成などの事後処理の仕事が山ほど
残っていると思うと軽い頭痛がした。
「むしろあの人数で解決できたことがすごいよ。なのはの成長ぶりには嫉妬するね、まったく」
「クロノくんも前よりは強くなってるよね」
「…まあ少しは成長してるんじゃないかな。日々精進を怠らないのが師の教えだしね」
天真爛漫な二匹の使い魔の顔が思い浮かんだが、ぶんぶんと頭を振ってかき消した。
(自分の頭痛の種を増やしてどうする…)
もはやトラウマとなった自分の中での師の扱いに苦笑するクロノだった。
「だから、だからさ!」
エイミィが少し強い口調で続けた。
「やっぱりみんなとの差が開いちゃって、自分だけおいてけぼりみたいに感じちゃってるんじゃないかな?」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:51:00 ID:g3mQU4DY<> ユーノがそこまで考えているかは分からないが、感じたことをそのまま口に出すことしか今のエイミィには
できなかった。
「…フム」
少し考えた後、ゆっくりとクロノは答えた。
「考えすぎじゃないか?まあ確かに魔力の絶対量や技術的な差は開いてるだろうが、ユーノは頭がいいやつだ。
自分の分(ぶ)はわきまえているだろう。僕としても彼の情報収集能力の方を買ってるし、そっちで活躍して
くれればそれでいいんだがな」
そういって缶ジュースを飲み干した。


クロノくんはわかっていない。いや、わかるはずがないのかもしれない。
わたしは同じ立場だからこそわかる。自分の大切な人が目の前で戦っているときのもどかしさのような感情を。

(男の子ならなおさら強いんだろうな。こういう気持ち…)
ビーっという電子音が休憩の時間の終わりを告げ、艦内の局員がせわしなく自分の持ち場へと戻り始めた。
「それじゃあまた後で」
そういうとクロノは足早にその場を後にした。
行き際に投げた空き缶は空のゴミ箱へと吸い込まれ、カコンと一つ寂しい音を響かせた。

                 *

「ほんとに大丈夫なの?」
「そんなたいしたことないよ。盾を貫通したってより盾ごと吹っ飛ばされたって感じだったし。
その点では結界破壊の属性が付いてるスターライトブレイカーの方が凶悪だよ」
不安げに覗き込むなのはにユーノは明るく答えた。
「凶悪って…もう!」
なのはがぷくっと頬を膨らました。純粋にこういう仕草が可愛いとユーノは思った。
「アハハ、そういえばもうなのはは元の世界に戻った方がいいんじゃない?日本時間にすれば今は夜の7時くらいだよ」
アースラ艦内の時計を見て逆算して言った。
「え!?もうそんな時間?…戻った方がいいかな。…でも」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:51:46 ID:g3mQU4DY<> なのははユーノの方をちらりと見たがそれを感じ取ってユーノはすぐに言った。
「僕のことは気にしないで。大丈夫、もう治療もだいたい終わったし。なのははどうせ明日も普通に学校に行くつもりなんでしょ?
だったら早く帰って寝なきゃ」
なのはがよっぽどのことがないかぎり学校を休まないこと、寝る時間がとても早いことを知っているユーノだからこその勧めだった。
「う…うん。わかった。それじゃあまた今度ね。安静にしてなきゃ、駄目だよ?」
「うん。それじゃあ、なのはも無理しないでね」

バシュッと扉が閉まり、部屋が静寂に包まれた。
「…ふぅ」
両手を頭の下で組み、医務室のベッドに身を投げ出した。部屋を照らす天井の白い光源にユーノは目を細めた。
「なにも…できなかったな」
光から目をそむける様に寝返りをうつとベッドのスプリングがギシッと鳴った。

わかっている。自分はもともと戦闘には向いていないってことくらい。
今回だってたまたま人手が足りなくて、半ば強制的に参加させられたようなものだ。
といってもなのは一人で行かせるつもりも毛頭なく、久しぶりのコンビ復活だった。今までも何度かこういう形での
時空管理局での仕事はあった。フェイトやクロノ、はやて達と事件解決に当たったこともある。
しかし、何度も戦闘を重ねるうちに当然のように現実が突きつけられる。みんながどんどん強くなっているという現実に。
フェイトと使い魔であるアルフのコンビネーションは同じ魔力を共有する性質も加えて最高のものだし、
ヴォルケンリッターは個別の戦闘力がもともと高い。自分のポジションほど曖昧で中途半端なものはないと思う。
だからこそ、闇の書事件から無限書庫での情報収集担当が専らの役目になってたんだけど…。

(それでも、やっぱり見ているだけは…つらいよ)
そう心の中で嘆いたとき、ふいに入室許可を求める電子音が鳴り響いた。
(…誰かな?)
疑問に思ったが思い当たる節もなかった。
とりあえず起き上がってベッドの端に腰掛ける。
「どうぞ」
医務室の応答する機械の操作はよくわからなかったので扉に向かって声を出した。
「あ……」
開いた扉からは意外な人物が入ってきた。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 13:55:30 ID:g3mQU4DY<> 次回へ続く

すでにこれよりちょっと長いボリュームで5話まで書き上げています。
540さんには保存用としてまとめてテキストをアップロードしたいので
都合のいい曜日でも教えてもらえれば幸いです。それでは。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 15:10:29 ID:zMAKfiID<> >>396
乙&GJ! <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/19(日) 16:16:40 ID:hRU//XkB<> お久しぶりです。色々ありましたがどうにか一話分くらいは書き上げることが出来ました。
みなさん、温かいお言葉本当にありがとうございます。マジで温かすぎて涙が出そうになりましたよ……
楽しみにしてくださる皆様の期待に答え……られるかどうかは分かりませんが、出来る限りやっていこうと思います。
……励ましてくださった皆さんにレスかきたいところですが、スレが重くなるから止めた方がいいのかなあ……?
とりあえず、第4話です。 <> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/19(日) 16:17:26 ID:hRU//XkB<>  4.つのるおもいと

 メートヒェンにとって、僅かな例外を除けば、世界とはユーノのことだった。
 ユーノを主に選ぶことによって、彼女の意識が芽生えた、と言い換えてもいい。
 いや、あるいはそんな難解な言い回しをしなくても、単純にこう説明することが適切かもしれない。

 メートヒェンはユーノのことが大好きだった、と。

 だから、2人以外には何も存在しない空間で、少女は毎回ユーノに話をねだった。
 隣に腰掛け、胸にもたれて、首を仰いだ体勢で彼の顔を見上げながら、ユーノが様々な話をするのをいつも嬉しそうに眺めていた。
 少女はユーノが話をしているのを見るのが好きだった。
 話の内容はもちろん、話しているときに彼がふと浮かべる楽しそうな表情や、悲しそうな表情。
 そうした感情の一端が表れるのを見ると、彼の感じてきたことを我がことに出来るような気がした。
 ユーノのことを1つ1つ理解していくことの出来るこの時間が、少女は大好きだった。

 けれど、話が最近のことになる時や、じっと少女の栗色の髪を見つめている時。
 そうしている間、ふとした時に思い出を振り返る彼の眼に、寂しさや親しさ、それらをない交ぜにした強い、強い想いがよぎることがあった。
 届かないことを知っていて、それでも星に手を伸ばしている。そんな切ない瞳だった。

 なぜだろう。理由は分からないけれど、その瞳を見ると少女の胸がちくりと痛んだ。



 無限書庫での仕事を片付けて自室へと帰ってくるなり、ユーノは倒れこむようにベッドに寝転んだ。
 身体が重く、意識にもやがかかったようにぼんやりとしている。それに何より、胸の中で何かが物凄い勢いで渦巻いていた。

 時刻はいつも帰ってくる時間に比べれば、遥かに早い。
 そういえば、最近は定時に仕事を上がっていなかったことを思い出す。
 莫大な無限書庫の蔵書の数に、膨大な検索依頼。
 いくらユーノが優秀であろうとも、決して定時までには終わらせられなかった仕事。
 けれど、今の彼はいつも一緒にいる相棒がいる。そのおかげで、こうして定時に仕事を終わらせることが出来た。
 この分なら、そう遠くないうちに休暇を取れるだけの余裕もできるだろう。
 そうなれば、久しぶりに彼女に会うだけの時間を作ることもできる。

 ユーノは手元の端末を操作した。中空に表れる画面に、短い文章がいくつも表示される。
 それは、なのはからのメールの数々だった。
 最近はこちらの仕事の忙しさを察してくれているからか、なのはからの連絡の多くはメールで送られてくる。
 今日は4人で遊んだとか、仕事がんばってだとか、その内容は様々だったが、それら全てに自分への気遣いが感じられる、そんな優しい文章だった。

 なのはからのメールが来るたびに、毎回のように浮かれる自分がいた。
 なんの変哲もない文面を何度も何度も読み直して、手紙だったならぼろぼろになるくらいに何度も何度も読み込んだ。
 ユーノをそうさせた何かが自分の中で渦巻き、吹き荒れて心をぐちゃぐちゃにかき乱していく。

 ――ユーノ君。

 まだ、はっきりと覚えている。
 屈託なく笑う彼女の笑顔も、優しさと芯の強さを兼ね備えた声も、まっすぐな瞳も。
 そして、その度に締め付けられる胸の痛みも。
 今も思い出すなのはの声は優しくて、本当に優しくて。

 けど、それだけで。

 ユーノはこみ上げてくる何かを押さえ込むように、強く強く目を閉じた。

 昼間の会話が思い出されて、仕事に忙殺されていた毎日によって目を逸らしていた自分に、今更ながら気が付いた。

<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/19(日) 16:18:54 ID:hRU//XkB<>  ――同日。時空管理局本局。

「A班、旧062号次元の崩壊当時の難民リストはどうなってますか?!」
「現在作業進行率およそ60%! あと3時間ください!」
「分かりました! B班、指定した棚の整理の進行状況の報告を」
「既に8割がた終わっています。あと1時間で終わらせてみせますよ!」
「お願いします! それが終わり次第、D班のフォローに回ってください」
「こちらC班、検索する内容が多すぎます! このままでは期日に間に合いません!」
「……B班のうち3名をC班のフォローにまわして下さい! 僕もそちらを担当します!」
「了解!!」

 名の通りの無限を感じさせる、果てなく続く塔のような無限書庫。
 かつては人が立ち入ることもまれだったこの場所が、今は喧騒にまみれていた。
 その中の人々に次々に指示を与えながら、ユーノ自らもすぐに資料の検索に移る。

 年上の部下達の頼もしい返事に頬を緩ませると、ユーノは体重を感じさせない羽のようにふわりと身体を立たせ、ゆっくりと手のひらを前にかざした。
 足元に生まれる魔法陣。どこからか書物が浮かび上がり、彼の周りに集まってくる。
 ユーノ自身が組み上げた検索魔法によって集まった書物。その数、15冊。
 魔法の名手であるリーゼアリアをも驚かせたその数全てがひとりでに開き、ぱらぱらとページを捲っていく。

 初めそれに対して、メートヒェンはうっすらと輝きを保ったまま沈黙を保っていた。
 ただじっと仄かな明かりをともして、それが稼動していることを示している。
 魔法の補助を担当するデバイスとしては明らかにおかしな行為。けれどその主たる少年はその事を疑問にも思わない。
 なぜなら彼女はまだ生まれたばかりの子供で、今自分が使っているそれをじっと見つめて覚えようとしているのだから。

 やがて、メートヒェンは一区切りつけるかのように一度淡く輝いた。

 ――stand by ready.

 その声が響き渡ると同時に、ユーノの身体に異変が起きた。
 彼の魔力の源たるリンカーコア。そこから流れ出る魔力が一気に増える。
 その脱力感に眉をしかめて耐えながら、しかし口元は微笑みの形にゆがむ。
 放出される魔力は二倍。けれど、その中で制御する量は変わらない。

 そして、彼の足元の魔法陣の更に下に、もう一つの魔法陣が燐光を伴って浮かび上がる。

 ユーノの周りに浮かぶ本の数はそのままに、さらに次々と書物が浮かんでは開かれていく。
 その数、10冊。更に時間がたつにつれ、一冊、また一冊と検索される本の数は増える。
 最終的には、その数は15冊に及んだ。
 ユーノ自身の手による本の数とあわせれば、その数は2倍に及ぶ。
 消耗は激しいものの、もとが検索魔法であり魔力自体はそう使わないことも手伝って、そこまで辛いわけでもない。

 閉じた瞼の裏に、一生懸命になって手伝ってくれている幼子の姿を幻視して、ユーノは微笑んだ。

 瞳を開けて、周囲で開いていく資料全てに目を走らせる。自分ひとりでは追いきれない情報量も、今なら問題なく行っていける。

「頼んだよ、メートヒェン」
『All right.』

 胸元のデバイスに信頼をこめた視線を一度送る。それに応えるように、メートヒェンは元気よく輝いて見せた。

「……あれ?」

 視線は胸元を越えて足元へと向かう。その先に、見慣れた金色の髪の姿が見えた。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/19(日) 16:19:27 ID:hRU//XkB<> 「久しぶりなのにごめんね、手伝ってもらっちゃって……」
「そんなこと気にしないで。おかげでこうやって話せる時間が出来たんだから」

 フェイトがユーノと会うのは、実に2週間ぶりほどになる。
 ミッドチルダからは近いといっても、本局は現在フェイトたちが住む世界とはかなり離れている。
 最近はアースラから任務で呼び出されることもあったが、その際にもあらかたの調査を終え、実力行使の段階で呼び出されたため、本局に寄ったことはなかった。
 その帰りにしたところで、フェイトの立場を気遣ったリンディやクロノによって、すぐになのは達の元へ戻っていったため、ユーノと会う機会がなかったのだ。
 執務官試験の関係で本局を訪れることになり、空いた時間で久しぶりに会おうと思ってやってきたのが先ほどのことになる。

 端的に言ってしまうと、フェイトは驚いていた。
 ユーノの検索魔法のことはクロノから聞いていたので知ってはいたが、まさかこれほどとは思っていなかった。
 と、いうよりも、常識的に考えてありえない検索速度だ。
 考えてみれば当然の話である。
 なのはのバスターを受けきるだけの能力と技能を持ったリーゼアリアですら、検索魔法においてはユーノに並ぶことは出来ない。
 ユーノ一人でそれだけの技量を持つというのに、さらに彼自身が制御できる書物の二倍の量を検索しているとなれば、それはもうありえない量といってよいだろう。
 まあ、認識に齟齬があるので別の意味で当然の話なのだが。

「そんなことがあったんだ……」

 彼がデバイスを得るまでのでいきさつを聞いてフェイトは頷く。
 なんともまあ間の抜けたいきさつではあるが、こういったことでユーノが嘘をつくとも思えない。
 彼の首元にかけられたメートヒェンに視線を移した。
 ちょうどジュエルシードのような形をした栗色のデバイスが紐にかけられて胸元にぶら下がっている。

「この子が?」
「うん。この子がメートヒェン」

 頷いて、提げていた紐を首から外してフェイトに差し出す。
 主の手のひらの上で、メートヒェンは淡く光って挨拶した。

『Nice to meet you.』

 礼儀正しいデバイスの挨拶に、フェイトの口元がほころぶ。
 優しい顔で、フェイトは挨拶を返した。

「こちらこそはじめまして。私はフェイト。よろしくね」

 応えてメートヒェンが輝くのを、二人は微笑ましく見つめていた。

 あれ、と、フェイトはおかしな点に気が付いた。
 何がおかしいのか、はっきりとは分からない。ただ、違和感があった。
 なんだろう、と視線を走らせる。ユーノの姿に変わりはない。穏やかな顔も連日の仕事の疲れか少しだけ顔色が悪いが、気にするほどでもない。
 メートヒェンにしたところで、胸元の栗色のクリスタルにも似た小さな姿は今日初めて見た時から変わっていない。

 ……変わっていない?

 フェイトは違和感に気が付いた。フェイトがユーノを見たとき、彼は魔法を使っていた。それも、かなり複雑な検索魔法を。
 にもかかわらず、その時もメートヒェンはこの小さなクリスタルの形をとっていた。
 このデバイスが別の形をとるところを、フェイトは見ていないのだ。
 それなのに、あれだけの魔法の使用を管制しきれている。それが疑問となってフェイトの胸のうちにわだかまっていた。

「うん、それが、メートヒェンにはいろいろあって……」

 そのことを尋ねると、ユーノは困ったようにそう答えた。
 聞かれたくないことというよりも、答えるのが難しい質問らしい。
 事実、ユーノは説明に迷っていた。メートヒェンは開発者の性格そのままに、かなり特殊なつくりになっている。
 それをどう説明するか、ユーノは散々迷った末に、自分が開発者から聞いた説明をそのまま伝えていくことにした。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/19(日) 16:19:59 ID:hRU//XkB<>  元々、レーゲンとフィーゲルの2人はインテリジェントデバイスの管制システム、つまりAIに並々ならぬ興味を持っていた。
 主と心通わせ、状況に応じてその場その場で最適な行動を選択するインテリジェントデバイス。
 それを更に発展させれば、AIは更に深く人間と心通わせ、戦闘以外にももっと汎用性をもたせることができるではないかと考えたのだ。
 そうした考えの先に行き着いた果ては――当時の本人達は知らなかったのだが――リィンフォースの設計思想であった。

 メートヒェンのデバイスとしての種類を正確に表現すると、完全自律式半融合型デバイスということになる。
 だから、正確に言うとインテリジェントデバイスじゃないんだよね、と開発者は笑っていた。

 融合型デバイス。
 それは、ベルカによって開発された意思持つデバイスが状況に応じて術者と融合することによって魔力の管制・補助を行うデバイスの事を指す。
 直接精神とリンクすることにより、他のデバイスを遥かに凌駕する感応速度が得ることができ、また、夜天の魔道書の場合、魔力を蒐集すると言う特性のためか、魔力量も大幅に上げることが出来た。

 とはいえ、ロストロギアである夜天の魔道書をそのまま再現できるほどの技術力はもちろん2人にはない。
 そもそも、開発段階の時点ではその存在も知らなかったのだ、真似することは不可能であった。

 それでも、不完全とはいえメートヒェンは確かに融合型デバイスであった。
 その機能のほとんどを主と融合させることにより従来のデバイスを凌駕する感応速度をたたき出し、また、より深い主とのシンクロナイズを可能とした。
 メートヒェンは主であるユーノの中にいることにより、彼とより深く繋がり、理解し、彼の扱う魔法を自ら覚えることが出来た。
 このため、デバイスをあまり必要としない結界魔法の類であろうと、管制補助だけではなく、先程のようにメートヒェンが自らの意思でユーノのリンカーコアか魔力を引き出し、並列に魔法を行使することを可能とした。

 しかし、開発中であったこのデバイスには一つの大きな問題があった。
 それは、インテリジェントデバイスよりも主と直接繋がることになるこのデバイスは、主の選定の基準が非常に厳しくなってしまうことだ。
 単純に魔法資質や魔力量だけの問題ではない。融合適性やそのほかの数え切れないほどの条件を全て満たさなければ、メートヒェンはその相手を主と選ぶことが出来なかった。
 そのため、メートヒェンが自らの意思で主を選んだことに、二人は非常に驚いて見せたのである。

「要するに、この子はどちらかというと、リィンフォースみたいなデバイスなんだ。
 このデバイスを通してメートヒェンが僕の中に入ってきて、魔力の管制や補助に協力してくれるし、場合によってはさっきみたいに僕とは別個に魔法を展開してくれる。
 ……こんな感じの説明で分かる?」
「分かったけど……」

 ユーノは説明をそう締めくくるのを、フェイトはなんとも言えない顔で聞き終えた。
 さきほどと同じ違和感がもやもやとわだかまっている。今回はその疑問が何なのかは分かっていたので、素直に尋ねた。

「それって、インテリジェントデバイスじゃなくて融合型デバイスじゃないの?」

 説明を聞く限り、これは完全に融合型デバイスだ。インテリジェントデバイスと呼ぶ理由が分からない。
 ユーノは苦笑した。奇しくもそれは、彼がフィーゲルに説明を受けたあとに尋ねたものと同じ質問だった。

「うん。僕もそう思ったから聞いてみたんだけど……」

 その時の答えを思い出すと、おかしさがこみ上げてくる。
 それを不思議がるフェイトに、その時のフィーゲルの返答を教えた。

 ――だって、インテリジェントデバイスの方が、この子が生きてるって感じがするじゃないか。

 その時のフィーゲルの顔を忘れることはきっと出来ないだろう。
 それは、子供が自分の宝物を胸を張って自慢するときのような、無邪気で誇らしげな表情だった。
<> 430
◆uhdacqdci6 <>sage<>2006/02/19(日) 16:27:25 ID:hRU//XkB<> とりあえずここまでです。説明ばっかりで全然話が進まなかったなあ……orz
それにしても、無限書庫の司書って人使って仕事してるんですね。コミック版見るまで知らなくて、あわてて書き直しましたw
次は多分フェイトとの会話の後編になると思います。それとあと1話2話で、大体半分(伏線と言うかネタ振りと言うか)が終わるかなと思います。

私信になりますが、なのはの設定資料集買えませんでした……orz
しかももうどこの店舗も品切れで再生産するまでは買えないそうです……どうしよ?

職人の皆様方も、まとめてではありますが本当に面白かったです。続きを楽しみにしておりますので、がんばってください。

最後になりましたが、応援してくださる皆さん、本当にありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 16:49:17 ID:PKxPdwYn<> やっぱり週末はこの掲示板が潤いますな

>>430
第4話乙
なのはが出てくると思いきやフェイトでした
しかし、なんだかメートタンが修羅場を巻き起こしそうな雰囲気が…
まぁ、修羅場好きなので無問題

俺も、設定資料集買えませんでした…
当日行ったのに無いなんて!orz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 16:49:50 ID:vjpY54IZ<> 430さんGJっすw
続き楽しみにしてますw
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 17:20:53 ID:SemkOFrk<> 職人さんお願い。はやてのエロ読みたい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 17:30:24 ID:8k/SV90G<> 大阪は全滅でした(資料集 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 19:19:42 ID:uVc2YSJ4<> コミックスで普通に淫獣がフロに入ってたように見えたのは気のせいか…
気のせいだよな… <> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/02/19(日) 20:09:41 ID:RtwLxKza<> >>403
保管庫管理人です。
540と549の間違いで自分のことでしょうか?

そうだとして、
保管は元テキストをもらわなくても大丈夫ですよ。
それとも続きが長いので
スレに書かず保管庫に置きたいということでしょうか? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 20:22:59 ID:ssscTrZH<> >>416
間違ってすいません…。549さんでしたね。

単に自分のテキストを正しくスレにコピペして投下する自信がなかったので
元を渡した方が確実かなと思っただけです。
一話ごとの分量はだいたい同じでそれが現在五話分あるということです。 <> 396<>sage<>2006/02/19(日) 20:24:52 ID:ssscTrZH<> おわ、ID何故か変わってる…。この先は396で通します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 20:38:57 ID:dDiYw0g7<> 漫画の一番最後にSee you Next time ! ってあるのは、期待しても良いのかねぇ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 21:09:29 ID:zMAKfiID<> >>419
3月まで待機汁 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 21:35:18 ID:XuL5U68h<> >>415
ガチだよw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:14:28 ID:3VgXO8ZN<> えーっと、すいません、1本落としてみたいんですが、スレって500KBまででしたっけ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:21:32 ID:MopcK3d7<> うん <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:24:02 ID:3VgXO8ZN<> 422っす。
ふつーにテキストでのデータ量がそのまま総容量に追加される。
っていう程度の認識でいいんですよね?
(いぁ、そんなテキストでも10kBもないけどさw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:28:30 ID:MopcK3d7<> 多少のズレ(数十バイトくらい)はあるけど、まあそんなとこだ。
安心して投下してくれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:41:06 ID:3VgXO8ZN<> 422っす。
んでわー。
書き込みとか慣れてないんで手落ちあったら容赦なくよろしくー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:42:37 ID:3VgXO8ZN<>
「バルディッシュ、アーク・セイバー!」
「yes sir」
 闇の中に光の鎌が弧を描き、いままさに彼女 −フェイト・テスタロッサ− に飛び掛らんとしていた異形の者の上半身と下半身を分断する。
 彼女の視界の中にもはや動く物体はない。用心深く辺りに視線を巡らせながら、愛杖 −バルディッシュ− をシーリングフォームに変形させる。
「バルディッシュ・広域サーチ」
「There is no enemy reaction in the outskirts」(周辺に敵反応なし)
 ふぅ、と肩の力を抜いてフェイトは通信機を取り出し、我が家にも等しくなった次元空間航行艦船アースラに送信する。
「アースラ、こちらは掃討完了。なのはの方は?」
 アースラ内でモニターを見張る彼女の兄、 −クロノ・ハラウオン− からすぐさま返信。
「本命はなのはの方だったらしい。でもあっちもあっさり片付いたよ。ご苦労様、戻ってきてくれ、フェイト」
「了か・・・兄さん?」
 通信機から聞こえる音に急に喧騒が混じる。
「クロ・く・ん・・フェイ・ちゃ・の座・・に次元震・・反・!」
《兄さん!兄さん!何が?》
 急にざりざりと耳障りな音を発するようになった通信機を投げ捨てクロノに直接念話を送るフェイト。
 彼女の周辺が揺らした水槽の水のようにゆらゆらとゆらぎはじめる。
 水中で動こうとしたときの目に見えぬ何かがまとわり付くような感覚を全身に感じ、顔をしかめるフェイト。
《フェイト!君の付近で次元震反応があった!規模は不明だ!巻き込まれると危ない、すぐにこっちへ!!》
 ゆっくりと身構えるフェイト。バルディッシュは既にサイズフォームに変形させてある。
《ごめん、兄さん、ちょっと遅かったかな。転移魔法間に合いそうにない・・・》
《フェイト!?》
 既に彼女の周囲の空間は揺れどころかひび割れんかのように軋み始めていた。
「・・・バルディッシュ、全方位プロテクション・・・」
「I can go anytime」(いつでもいけます)

 −− ミシッ!! −−

 彼女のわずか十数メートル先でついに空間に裂け目が入った。

「展開!!!!」
「yes sir!」
 眩いばかりの光の球が彼女を包み込む。直径をぎりぎりまで小さくし、極限の魔力で可能な限り防御力を高める。

 − 直後 −

 グゴァゥッッッ!!!!!!!

 目に見えぬ何か、次元と次元を繋ぐ莫大な力が、それからみればあまりにも小さな小さなフェイトに容赦なく襲い掛かる。

「くぅあっ!!!」
 ゆらぎに攻められるたび、プロテクションバリアが激しく明滅する。わずかでも力を抜けばそのまま次元の狭間に投げ込まれてしまうであろう。
「ぐぅっ!・・・バ・バル・ディッシュ・・・」
「・・yes・・・sir・・・」
「!!!カートリッジロード!!最大出力!!!」
「!!!yes sir!!!」
 アサルトフォームに変形したバルディッシュを真一文字に構えるフェイト。バルディッシュそのものが激しく強く光り輝き、光がフェイトを包み込んでいく。

 が、

 襲い掛かる猛威に対するにはその光はあまりにも小さく見えた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:44:28 ID:3VgXO8ZN<>

 アースラ内司令室。
「だめだ、念話も通じない」
「じゃ、じゃあどうするの!このままじゃフェイトちゃんが!!」
「そんなこと言われなくてもわかってる!!」
 ひっ、と普段見せない形相でクロノに凄まれた −エイミィ・リミエッタ− が後ずさる。
「あ・・・す、すまない、悪かった、その・・つい・・すまない、エイミィ」
 義妹を心配するがゆえの兄の想い、そして執務管としての責務、それらを決してわからないエイミィではない。
「い、いえ、こちらこそ、軽率な発言でした、申し訳ありません」
「いや、すまなかった。それで、次元震の規模は?」
 クロノの言葉に補佐官としての表情を取り戻し、キーボードを操作するエイミィ。
「次元震レベルN−2、規模的にはごく小規模です。範囲はやや広いようですが、次元航行に影響のあるレベルではありません。でも・・・」
「どんな大きさであれ、次元震の発生現場で発生の瞬間に立ち会った者など・・・過去には居ない・・・」
「提督・・・」
 クロノの、そしてフェイトの母親である −リンディ・ハラウオン− が悲痛な面持ちでいつの間にか二人の後ろに立っていた。
「フェイト・・・くそっ!」
「信じましょう、フェイトを。あの子なら・・・きっと」
 息子の肩に手を置くリンディ。だがしかしその手にいつもよりの力が篭っていたことに気付いたのは当のクロノだけであった。
「・・・」
「フェイトちゃん・・・」
 静まり返るアースラ司令室。他のオペレータ達もどう対応していいかわからず互いに顔を見合わせるばかりである。

 永劫とも思えるしかし数分の後・・・

《・・だ・・・う・・・・ぶ・・・》
「フェイト?!」
 あまりの事に念話にもかかわらず声を張り上げるクロノ。
「クロノくん?!」
「クロノ?!」
「あ、い、いや、す、すまない、フェイトからだ。じ、状況を確認する」
《フェイト。大丈夫か?無事なんだな!》
「フェイト・・・」
「よかったぁーーーーー」
 手を組み涙交じりで天を見上げるリンディ。
 コンソールに突っ伏すエイミィ。
 皆も一様に安堵の表情を見せていた。

 ・・・ただ一人クロノ以外は・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 22:45:45 ID:3VgXO8ZN<>
 − 静かだった −

 自分が声さえ出していなければ自分の鼓動の音すらも聞こえて
しまいそうなくらいに。
 しかし。

 静かなだけであった。

 フェイトは今、次元震の只中にバルディッシュと共に飲み込まれんと必死に耐えて抜いている。
 静か過ぎる周囲に自分の息遣いだけが聞こえる。
 必死に魔力をバルディッシュに注ぎ込み。ただただただただひたすらに耐えに耐えに耐えに耐える。
 そんな中に新たな音源が生まれた。

 ギリリッッ!

「!バルディッシュ!!!」

 救済の音では・・・なかった。
 彼女のための杖バルディッシュの中央部に走る亀裂。

 絶望の音色だった。

「バルディッシュ!!!!」
「master・・・」
「バルディッシュ!!バルディッシューーー!!!」
 もはやフェイトにはどうしたらいいかわからなかった。クロノは次元震だと言っていた。だとすれば耐えてさえいればいつかはそれは収まる。ただそれがいったい何時なのかはわからない。
 この静寂の猛威にいつまで晒されなければならないのか、それまで持つのだろうか、プロテクションは、自分の魔力は・・・そしてなにより・・・バルディッシュが。
(兄さん、なのは・・・母さん・・・みんな・・・)
「・・・ごめん、もう・・・」
 気丈な少女の口から絶望がこぼれかけた。
「master・・・It is a request」(お願いがあります)
「な、何?!」
「A double road」
「!な、何言ってるのバルディッシュ!!」
「A method is only it if possible」(もし可能性があるとしたら、方法はそれだけです)
 バルディッシュは彼女にこう言っている。カートリッジをロードしてくれ、と。
 今現在すでにカートリッジをロードしているこの状況で、

 「2発目をロードしろ」、と

                            To Be Continue
<> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/19(日) 22:51:14 ID:Eae47xAM<> 無印を1話から見直してる漏れがきましたよ(今7話 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 23:29:08 ID:zMAKfiID<> >>427-429
GOOD JOB!!
いきなりフェイト大ピンチかよwwいいねぇ、こういう修羅場大好き <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/19(日) 23:49:09 ID:pVnywsE1<> なんか一気に色々投下されてるな…。
スレが賑わって嬉しい限りだ。ってことで感想。
396氏乙!
新しい職人大歓迎。
しかも純粋な本編踏襲っぽい展開に期待が高まる。
430氏いつも楽しく読ませてもらってます。
かなり長編予定みたいですね。
422氏GJ!
なのはは設定多いから戦闘描写大変だろうけど頑張ってくれ。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:27:39 ID:HPyeTU4e<> 皆さん乙ですGJです!
とても楽しく読ませていただきました。続き楽しみに待ってます。


久しぶりに投下してみます。ちょこちょこ推敲してたら2週間経ってましたw
今回はプレシアとアリシアの話を書いてみました。二人がまだ元気だった頃の話です。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:29:44 ID:HPyeTU4e<>  <二人の流れ星 〜この大切な日々を〜>

 「――――。はい、おしまい」
 「うーん、とってもおもしろかったーっ。お母さん、私この絵本大好き」
 「お母さんもよ、アリシア。いいお話だものね」
 「うん!最後に王子さまと王女さまが流れ星に向かってお願いするところ、私大好きっ」
 「もしアリシアが流れ星にお願いするなら、何てお願いする?」
 「王子さまと王女さまのお願いと同じだよっ。私お母さん大好きだもん!」
 「アリシア――うれしいわ、お母さんのお願いもアリシアと同じよ」
 「えへへっ。ねえお母さん、私もあの絵本の子供みたいに、5歳になったら流れ星たくさん見れるかな?」
 「――ええ、きっと見れるわよ。アリシアはいい子ですものね」
 「うわぁ、楽しみー!きっと綺麗だろうなー」
 「ふふっ。元気出たみたいね、アリシア。良かったわ」
 「うん、もう大丈夫。お母さんありがと」
 「それじゃもう遅い時間だし、そろそろ寝ましょうね」
 「うん。おやすみなさい、お母さん」
 「おやすみなさい、アリシア――」

 * * *

「アリシア、いらっしゃい。ごはんできたわよ」
プレシアはできたての料理をテーブルに運ぶ。
「はーい!」
元気のいい返事と共にアリシアの足音が聞こえてくる。
階段を駆け下りてくるその軽やかな音に、プレシアは木琴のような心地良さを感じ、思わず笑みがこぼれる。
アリシアはそのままの勢いでドアを開け食堂に飛び込み、
「今日のごはんなーに?」
「ふふっ、そんなに急がなくてもいいのに。今日はシチューよ」
アリシアに笑顔が広がる。
鍋の中の白いクリームからほかほかと湯気が立ち上っている。
アリシアは母のシチューが大好きだ。母が作ったものなら大抵よく食べるアリシアだが、その中でもシチューだけは格別らしい。
「いただきまーす!」
アリシアは利き手の左手でスプーンを持つと、プレシアが席に着くよりも早く食べ始めた。
みるみるうちにシチューが減っていく。もっと大きな皿に盛ってあげればよかったか、とプレシアは思う。
「おかわり!」
「はいはい、どうぞ。食べ過ぎないようにね」
プレシアは苦笑しながらもどこか嬉しそうだ。自分の作った料理を娘が喜んで食べてくれるのはやはり嬉しいのだろう。
先程よりも多めに盛ってアリシアに手渡す。
「お母さん、ちゃんと覚えてる?」
再び先程と劣らぬ速さで食べ始めたアリシアだったが、ふと手を止め問う。
「なあに?」
「明日のこと」
プレシアはふっと微笑み、
「忘れるわけないじゃない。アリシアこそ準備は大丈夫?」
「うん!楽しみー」
アリシアは本当に母が忘れているかもしれないと思ったわけではない。ただその話をしたくてしょうがなかったのだ。
――明日。アリシアは刻々と迫ってくるその日を一ヶ月も前から楽しみにしていた。
向かう場所は近くの山。いつも週末にピクニックに行くあの静かな山だ。
山といっても険しさはなく、丘と呼んでもいいような、自然溢れるのどかな場所である。
アリシアはその山が大好きだった。足元に広がる優しい香りの綺麗な花、空に響く野鳥の鳴き声、胸に広がる爽やかな風、そんな山の全てが大好きだった。
だからその日も、そこで祝うことにしたのだ。
アリシア5歳の誕生日である。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:30:36 ID:HPyeTU4e<>
 *

夜が明け、夏の朝の鋭い日差しがアリシアを起こした。
興奮してあまり眠れなかったのか眠い目をこすり、ピシャッと両手で頬を叩いて目を覚まし、ベッドからぴょんと立ち上がり、今日のために母が用意してくれたフリルの付いた服を着た。
階段を下りて母の元に向かうと、母は既に台所に立っており、サンドイッチとケーキを作っていた。
「お母さん、おはよう」
「あらアリシア。早いのね、もう少し寝ててもいいのよ?」
「ううん、大丈夫。何かお手伝いしよっか」
「そうね……じゃあ、お弁当のサンドイッチ作ってくれる?」
プレシアは、自分でできるから手伝わなくても大丈夫だ、とは言わない。
アリシアが楽しんで手伝ってくれているのを知っているからだ。それに、アリシアと一緒に料理を作るのはプレシア自身も楽しい。
「じゃあこのトマト切るねっ」
アリシアはその小さな手でトマトを支え、アリシア専用の小さなナイフでそれを切り始めた。
スパッスパッと小気味良い音がしてトマトの輪が積み重なる。
手伝いを始めた当初はその手つきもぎこちないもので、危なっかしさにプレシアは目を離せなかったものだが、今ではすっかり包丁捌きも上達し、安心して任せられるようになった。
アリシアもそれが嬉しいのか誇らしいのか、更に積極的に手伝うようになり、朝や昼の簡単な食事を一緒に作ることは今では日常的な光景となっていた。
「でーきたっ」
自分で切ったトマトと母が元から切っていた野菜を、手のひらより一回り大きいくらいのパンに挟み、完成させたサンドイッチを自慢気に母に見せる。
「上手じゃない。その調子よ」
「うん!じゃあもっと作るね」
アリシアは次はたまごサンドイッチを作ることにした。アリシアは卵の白身の感触が大好きだ。
黄身の濃い味もいいけれど、あの硬いようですぐに柔らかく弾ける白身はなんだか面白い。あんな不思議な物を作れる鳥はすごい。
――そんなことを思いながら卵を手に取り、殻を割ろうとボールに近づける。と、

時間が止まったような気がした。いや、止まったというよりも極端に遅くなったと言った方がいいだろうか。
見える。既に卵は手の中に無い。膝のあたりをゆっくりと下向きに動いている。それが何を意味するのか、アリシアは嫌と言うほど理解した。だが今となってはどうしようもなく、

乾いた音が響き、足元の床に生の卵が広がった。

殻の白と黄色い黄身のコントラストが眩しい。
怒られる。そう思った。
お母さんがこっちを向いた。びっくりした顔をしている。
そうだ、きっとこの前みたいに怒られちゃうんだ。お母さんの研究所でいたずらしちゃった時みたいに。
後でちゃんと考えてみるとあの時の私は悪い子だった。そして今もまた悪い子になっちゃった。だから、
口が開く。
ああ、怒られる怒られる怒られる怒ら
「大丈夫!?アリシア!」
――それは怒りの声ではなかった。
「えっ」
怒らないの?
「どこか怪我してない?」
「う、うん、大丈夫」
あっ――この声は……
「そう、良かった」
プレシアはほっと安心のため息をつく。
……私を心配してくれてる声だ。
聞き慣れた声だった。怒る声よりもずっと聞き慣れた声だった。
でもどうしてだろう。失敗して迷惑かけちゃったのに……。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:31:09 ID:HPyeTU4e<> 「――お母さん……怒らないの?」
「怒るわけないでしょう」
アリシアの考えを見抜いたかのように、優しい声でプレシアは言う。
「アリシアはちゃんとやってくれてるじゃない。これくらい気にしなくていいのよ」
ああ……そうだった。
アリシアは思い出す。
去年だったか、アリシアはボール遊びをしている時に間違えて家の窓ガラスを割ってしまったことがあった。
あの時も絶対に怒られると思った。けれどプレシアは全く怒る様子を見せず、ただただアリシアを心配していた。
私の目の前に広がったガラスの破片を見て、手が離せないって言ってたお仕事を放り出して、駆けつけて来てくれたっけ。
アリシアは改めて思う。
私のお母さんは……すごく優しいんだ。
嬉しさと、申し訳なさと、自分でもよくわからないようないろいろな気持ちが胸の中でいっぱいになって弾けて、
「お母さんっ!」
アリシアは母に抱きついた。
「ふふっ、よしよし」
プレシアはアリシアをしっかりと抱きしめ、頭を撫でる。暖かい母の温もりに包まれる。
ケーキを作っている最中だったからか、胸元からほんのり甘いクリームの香りがする。すごくいい気持ち。
私が悲しいときにはいつも抱きしめて助けてくれる。それだけで私はすごく幸せな気持ちになれる。
そんなお母さんが、私は大好き。
「アリシア、まだお手伝いできる?」
「うん!」
アリシアはゆっくりと母の胸から離れ、目にたまった涙を拭う。プレシアは落ちた卵を雑巾で拭い取り、もう大丈夫よとアリシアに声をかけた。元気よくうなずいたアリシアは新たな卵を手に取り、今度は失敗しないよと母に宣言し、その通り見事に割ってみせた。
さすがアリシアねと母に褒められ、もう先程の失敗で落ち込んだ気持ちは軽く吹き飛んだ。
そうしてアリシアは順調にサンドイッチを作り上げ、プレシアはケーキを完成させ、バスケット一杯に詰まったサンドイッチと小さめの箱に入ったケーキがテーブルに並んだ。
「じゃあ、そろそろ行きましょうかアリシア」
「うん、行こう!」
そのバスケットと箱を持って、二人は手を繋ぎ山へと向かった。

 *

丸い青空を彩るように、クロワッサンのような白い雲がふわふわと漂っている。
草原が広がるこの山の頂上は、あまり人に知られていないようで、今は二人の他には誰もいない。
所々に大きな木が生えていて、見るからに快適な木陰を作っている。二人はその木陰に座った。
「涼しくて気持ちいいね、お母さん」
「そうね。それに晴れて良かったわ」
山にそよぐ涼しげな風と混ざり合った夏の日差しが、二人にやわらかく降り注ぐ。
「あ、お母さん見て!海がキラキラしてるよ」
「あら本当。綺麗ね」
遠くに見える海が太陽の光を反射して輝いている。
この山からは様々な景色が見える。草原のなだらかな傾斜の向こうには海が、その反対側には二人の住む街が、周りには森や山が、季節ごと日ごとに少しずつ色を変え、二人の目を楽しませている。
「ほらアリシア、綺麗な蝶々が飛んでるわよ」
「あっ、ほんとだー」
アリシアが指を差し出すと、ふわりと蝶々が舞い降りた。
「あははっ。お母さん、これ不思議な模様だね」
「珍しい種類ね。この辺りじゃなかなか見れないのよ。良かったわねアリシア」
「うれしいなー――あっ、飛んでった」
「バイバイって」
「ばいばーい!」
自然の多い場所だからだろうか、この山にはいろいろな動物や昆虫も数多く生息している。大きな動物がこの草原に姿を見せることはめったに無いが、小さな動物は時折側に寄ってくることもあり、二人はよくその触れ合いを楽しんでいる。
「お母さん、あそこに何かいるみたい」
アリシアが、少し離れたところでガサガサ揺れている草むらを指差した。茶色がかった尻尾が見える。
「あら、リスじゃない」
「捕まえてみていいかな?」
プレシアは笑って、
「すばしっこいわよ。捕まえられるかしら」
「よーし、がんばるぞっ」 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:31:42 ID:HPyeTU4e<> 草むらに向かって走り出す。気付かれないように、あまり音を立てないように。
茶色い尻尾がピクリと動いた。
気付かれちゃったかな。アリシアは速度を緩めゆっくりと爪先立ちで近づいていく。
まだ大丈夫。
小さな耳が見えた。くりくりした目も見える。よーし、
「えいっ」
両手をかぶせるようにして飛びかかる。
捕まえたっ。
――そう思った瞬間、手と手の間の隙間をすり抜けるようにしてリスは逃げ出した。
「あっ、待てーっ!」
追いかける。全力疾走だ。
だがリスの素早い上にちょろちょろした動きにアリシアの足では適わず、
「あー、逃げちゃった」
リスは森の奥深くに姿を消した。
「ざんねん――あれ?なんだろう……」
アリシアが何かに気付いた。黄色や赤や薄い青が風に揺れている。
目を凝らしてじっと見ると、
「お花だ!」
アリシアが元いた木陰からは隠れて見えない場所にある小さな斜面の向こう側に、色とりどりの花が花畑のように広がっていた。
その花畑を母にも見せてあげようと、アリシアは戻って母を呼んだ。
プレシアはどうしたのかと聞いたが、アリシアは秘密だよと言い、よくわからぬままに連れられて、
「まあ――こんな場所あったのね」
「見て見てお母さん、このお花綺麗だよ」
アリシアが一本の花を摘んで母に見せた。紫色の、下半分が繋がっている五枚の花びらが目を惹く花だ。
「これは――キキョウね」
「キキョウって言うんだー。ねえお母さん、このお花で何かできないかな?」
「そうね……」
プレシアは少し考えて、
「アリシア、花輪って知ってる?」
「花輪?」
「こうやって作るのよ」
プレシアは周りに咲くキキョウから、特に花びらの大きい何本かを選んで摘んだ。
慣れた手つきで編んでいく。みるみるうちにキキョウの花が連なっていき、ちょうどアリシアの頭の大きさ程の花輪が出来上がった。
それをアリシアにちょこんと乗せ、
「はい。よく似合ってるわよ、アリシア」
「うわぁ、綺麗!」
紫色のやわらかな輪を頭に乗せて、アリシアがくるくると舞う。フリルの付いたスカートがふわりと広がる。
まるで天使のようだと、プレシアはふと思った。
「お母さんすごいなー。私にも作れるかな?」
「もちろんよ。教えてあげるから好きなお花摘んでごらん」
「えっとねー、じゃあ私もそのキキョウがいいな」
アリシアはキキョウが気に入ったのだろう。キキョウを何本か摘んで母に見せた。
「まずは、花のすぐ下の茎にもう一つの花を置いて、こういう風に茎を曲げて――」
母の言う通りにアリシアは花を編んでいく。母のアドバイスと手伝いもあって、順調に出来上がっていく。
アリシアの目が輝く。お母さんみたいに、私も綺麗なの作れるかな。ドキドキする。はやる心を抑え、アリシアは丁寧に編んでいき、
そして、完成した。
「お母さん、できたー!とっても綺麗……」
「すごいじゃないアリシア。初めてなのにこんなに上手にできるなんて」
アリシアは少し照れたような笑顔で、
「えへへっ。これお母さんにあげるー。さっきのお返し」
「あら、いいの?アリシアが作ったのに」
「うん、お母さんにかぶってもらいたいの」
そう言ってアリシアは、母の頭に花輪を乗せた。
「ありがとう、アリシア」
自分の頭より一回り小さいその花輪をかぶって、プレシアはとても嬉しそうに微笑んだ。
「ねえお母さん、もっと作ろう!」
「ええ、そうしましょう」
二人は再び花を摘み始める。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:32:21 ID:HPyeTU4e<>
 *

そうしてしばしの時が経ち、太陽が真上より少し傾きかけた頃――
「アリシア、そろそろお弁当にしましょうか」
遊び疲れたアリシアが仰向けに寝転がったのを見て、プレシアがそう言った。
「うん!ちょうどお腹空いてたんだー」
ぴょこんと飛び起きる。
「花も綺麗だし、ここで食べましょうか。ちょっと待っててね」
プレシアが最初にいた木陰から、置いてあったバスケットと箱を持ってきた。
バスケットの包みを解き、開ける。
「ほら、アリシアが作ったサンドイッチよ。おいしそうね」
「あはっ。ちゃんとできてよかったよ」
朝に一緒に作ったときはケーキ作りに忙しく、アリシアのサンドイッチをちゃんと見ることができなかったプレシアだが、こうして出来上がったものを改めて見ると本当においしそうだ。
プレシアは思う。まだまだ赤ん坊だと思っていたけれど、もう一人でこんな料理も作れるようになったのか、と。
自分の知っているところ、知らないところ、いろいろなところでアリシアは成長している。いつか私が手伝わなくても、一人で何でも出来るようになる日が来るのだろうか。
――きっと来るはず。私の元を離れて、広い世界に出て、いろんな人と触れ合って。
それはちょっぴり寂しいけれど、やっぱり、嬉しい。アリシアが元気に生きてくれることが何よりの願い。
「大きくなったわね……アリシア」
「ん?」
「ふふっ、なんでもないわ。さあ食べましょ」
「うん!」
アリシアがサンドイッチを一つ手に取って食べた。最初に作った、トマトの挟んであるサンドイッチだ。
「おいしい!お母さんも食べて食べてっ」
同じサンドイッチを母に手渡す。プレシアはそれを食べ、
「ほんと、おいしい。さすがアリシアね」
「これも食べてっ」
アリシアは、今度はたまごサンドイッチを差し出した。卵を落としてしまい落ち込んだが、母が慰めてくれたおかげで完成できたあのサンドイッチだ。
「ちゃんと……できてるかな」
不安そうにアリシアが言う。プレシアはそんなアリシアの頭を撫で、
「アリシア頑張ったじゃない。おいしいに決まってるわよ」
口に入れてゆっくりと噛み、
「ほら、すごくおいしい」
「よかったーっ。お母さん、ありがとう」
「アリシアも食べてごらん」
「うん、いただきまーす」
花畑の中で、そんな昼の一時が過ぎていった――。

「ふー、おいしかったー」
二人は食べ終わったようだ。バスケットはすっかり空になった。
うーん、と伸びをしながらアリシアが言う。
「なんか眠くなってきちゃった」
お腹がいっぱいになり、遊び疲れていたのもあってか、アリシアはウトウトし始めていた。
プレシアはそんなアリシアを見て、
「今日は夜までここにいるから、寝てもいいわよ?」
「うん……じゃあ寝る……」
フラフラし始めた。本当に眠そうだ。
プレシアはアリシアを側に寄せ、自分の膝に寝かせた。
「はい、おやすみなさいアリシア」
「ありがとお母さん……おやすみなさい……」
アリシアはすぐに眠りに就いた。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:32:55 ID:HPyeTU4e<>
 *

アリシアが目を覚ますと、オレンジ色の太陽が夕焼けと共に、遠くに見える海の水平線から今にも沈もうとしていた。
「ふわぁー、お母さんおはよう。……私結構寝ちゃったのかな?」
「いいのよアリシア、ちょうどいい時間だわ。おはよう」
「ちょうど……?」
「さあ、今日はお誕生日なんだしケーキ食べましょうか」
「あ、うん!」
プレシアがケーキの箱を開けた。甘い香りが辺りに漂う。均等に飾り付けられた苺と、程よく乗った生クリームがとてもおいしそうだ。
大きさは、先程プレシアが作ったキキョウの花輪と同じくらいだろうか。二人にはちょうどいい大きさだ。
アリシアは、すぐにでも食べたいといった顔で母の準備をじっと見ている。
サンドイッチでお腹がいっぱいになっていたアリシアだが、ケーキを前にしてはそんなことは全く問題ではないようだ。
「ねえねえお母さん、もう食べていい?」
待ちきれなくなったのか、アリシアが身を乗り出して言う。
プレシアはいたずらっぽい口調で、
「あらアリシア、ろうそくは立てなくていいの?」
「あっろうそく!立てる立てる!」
アリシアは誕生日のろうそくの火を消すのが大好きだ。なんだか特別な気分になれる。ろうそくの火を消した分、大きくなれるような。
プレシアが箱の奥からろうそくを取り出し、アリシアに渡す。
「じゃあ、立てるねっ」
ケーキの中心に円を描くように、アリシアがろうそくを立てていく。一本、また一本と、ゆっくりと立てていく。
それはまるで、ゆっくりと積み重なってゆく年月のようで。
ろうそくが立つたびにプレシアは思い出す。
生まれたばかりのアリシア、1歳の頃のアリシア、2歳の頃のアリシア……、みなはっきりと覚えている。
初めてアリシアにミルクを飲ませた時のこと。
この量でいいのか、この温度でいいのかと、何度確認しても不安だった。アリシアが嫌がったらどうしよう、吐いちゃったらどうしよう。
だけど、そんな母親になりたての自分にアリシアは優しく微笑んでくれて、おいしそうにミルクを飲んでくれた。
初めてアリシアが一人で立った時のこと。
驚いた。嬉しいよりも先に驚いた。どうしてアリシアが立ってるんだろう、そう思った。
でもその意味がわかった時、私は嬉しくて、嬉しくて、思わずアリシアに抱きついた。びっくりさせてごめんね、アリシア。
初めてアリシアが言葉を喋った時のこと。
お母さん、そう言ってくれた。何よりもまず私のことを呼んでくれた、そのことが信じられなくて、でもそれは本当で。
お母さん、お母さん。そう繰り返すアリシアの声は、世界一の音楽だった。
アリシアと一緒に笑ったり、泣いたり、数え切れないほどの大切な思い出は、私の一生の宝物。
――そして今も、アリシアは立派にすくすくと成長している。

そんなアリシアの全てが愛しくて。
アリシアがいる、アリシアが側にいる。ただそれだけで、こんなにも幸せな日々が――

「でーきたっ。――お母さん?」
並べ終わったろうそくをじっと見つめる母を見て、アリシアは不思議そうな顔をする。
プレシアはふっと笑いかけ、
「さ、それじゃ火を点けましょうか」
「うん!」
プレシアがマッチで順に火を点けていく。ポッ、ポッ、と音がして、五本全てに火がともった。
小さな炎が風にそよぐ。アリシアが寝転がって横から見つめると、沈みかけの夕日が陽炎に揺れた。
「はい、どうぞ」
プレシアが言った。
アリシアは静かにうなずくと、すーっと大きく息を吸い、止め、
「ふーーーっ!」
一気に吹き消した。
消える間際の揺らめく炎の点滅が辺りを照らした瞬間、風にはためくような音と共に全ての炎が消えた。辺りに静寂が戻る。
「お誕生日おめでとう、アリシア」
祝福の拍手が響き渡った。プレシアの拍手と、それにつられるアリシアの拍手だ。
「よーし、ケーキ食べよう!」
楽しみにしていたのだろう。アリシアが早速そう言った。
「ふふっ。じゃあ用意するわね」
プレシアがケーキを切り分ける。同じ大きさのケーキが二つ、それぞれの皿に乗った。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:33:36 ID:HPyeTU4e<> 「いただきまーす!」
「アリシア、おいしい?」
「うん、すごくおいしい!」
「良かったわ、気に入ってもらえて。それじゃ私もいただきます」
アリシアの隣に座り、プレシアもケーキを食べ始めた。
「私、もう5歳になったんだよね」
ケーキを半分ほど食べ終わった頃、しんみりとアリシアが言った。
「お母さん、覚えてる?私がもっと小さかった頃、寝る前に悲しくなって泣いちゃった時、お母さんがよく読んでくれた絵本」
「王子さまと王女さまが出てくる絵本?」
「うん。私ね、その絵本に出てくるようなたくさんの流れ星、いつか見れたらいいなーってずっと思ってたの」
「ふふっ、知ってたわ。アリシア、夜に時々ずっとお空を眺めてることがあるものね」
「あはっ。さすがお母さん、知ってたんだー。ねえお母さん、私にも流れ星……見れるかな?」
夕日が沈み、星の瞬き始めた夜空を、どこか遠くを見るようにアリシアは眺める。
「アリシア」
一緒に空を見上げて、プレシアが言った。
「ん?」
「ちょっと目をつぶっててごらん――お誕生日プレゼント、あげる」
「あ、うん!」
お誕生日プレゼント。なんだろう。
新しい服かな、おもちゃかな。それとも、何かお母さんが作ってくれたのかな。うーん……わかんないや。
アリシアはいろいろ考える。
でも、お母さんがくれるものなら何でも嬉しいな。
――その時、閉じた瞼の中に一瞬紫色が広がって、消えた。
今のは、
「お母さんの……魔法の光?」
「アリシア、目を開けてごらん」
母にそっと手を引かれて立ち上がったアリシアは、ゆっくりと目を開く。

数え切れないほどの光の粒が、満天の星空を駆け抜けた。

「うわぁ……!」
宇宙をそのまま覗いているような、ずっと眺めていると地面がどこかへ消えてしまいそうな星空の中、幾筋もの流れ星が滑ってゆく。
遥か遠くにあるはずの星々が信じられない程に鮮やかで、手を伸ばせば届きそうなくらい近くにあるようだった。
そんな星の一つ一つが様々な色の淡い星明りに包まれて、止まることなく流れるその様はまるで別世界。
夏の澄んだ空気の中、それはとても美しくアリシアの目に映った。白く輝く光の尾が夜空を埋め尽くす。
――アリシアが何度も夢に見た世界だった。
「お母さん、すごい、綺麗……」
幻でも見ているかのように、瞬き一つせずアリシアはその星空を見上げていた。
「これが流れ星よ、アリシア。本物の、ね」
アリシアの小さな暖かな手を両手で包む。
この夢のような世界は、決して幻ではない。
アリシアのために、プレシアが二年以上かけて作り上げた、本当の流れ星の魔法だ。
「流れ星――お願いしたら、叶うかな?」
はっと気付いたようにアリシアが言った。
「ええ、きっと叶うわよ」
「やった!じゃあ一緒にお願いしよう!」
アリシアが母に抱きつく。
プレシアは優しく微笑んで、アリシアを抱き上げた。 <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:34:08 ID:HPyeTU4e<>
夏の夜の涼しい風が頬を撫でる。木々の葉の擦れ合う音が遠くの海の波音と混じって山に木魂する。足元に広がる花畑がゆらゆらと揺れる。
その静かな山の中、二人は星降る夜空を見上げる。
「お母さんと、」
「アリシアと、」
声が重なる。星がきらめく。
プレシアの胸に、アリシアの胸に、大好きなお互いの温もりが広がる。
二人の願いは一つ。ずっと前からそうだった。たった一つの大切な願いだ。
プレシアは知っている。
アリシアも知っている。
一緒に食事を作ったり、一緒にどこかへ出かけたり、一緒に遊んだり。
そんな当たり前の日々がこんなにも愛しいことを、一緒に生きてゆくことがこんなにも嬉しいことを。
時には泣いて、時には笑って、そうして気持ちを分けあって、助けあって。
共に過ごすかけがえのない時間がとてもとても大切で。
だから、
ずっと続いて欲しい。そんな想いを同じ言葉に乗せ、
「いつまでも」
流れる夜空の星に願う。
「幸せに暮らせますように――」

fin. <> 98<>sage<>2006/02/20(月) 21:36:09 ID:HPyeTU4e<>

はい、おしまいです。
プレシアは本当は優しいらしいので、そんな雰囲気が出せたらなーと思って書いてみました。

話の都合上(あとたぶん設定上)猫リニスが出てこなくてすいません。
読んで下さった方、どうもありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/20(月) 23:10:22 ID:dh5teEOX<> >>413

「あかん!ユーノあかんって!・・ユーノにはなのはがいるやん!」
「僕は、はやてがいいんだ!もう我慢できない!はやてはやて!!」
「ちょ!ダメ!ユーノ!あっ・・あかんユーノあかん!あっ!」
「うっ!はやてぇぇ!!」

ビリリ

設定資料集のはやてのぺージがユーノに奪われた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/20(月) 23:29:52 ID:MVwjaZka<> >>443
不覚にも吹いたwwwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/20(月) 23:50:13 ID:R2VlPCTj<> 98氏GJ
この後を思うと涙が… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 00:02:40 ID:s4HzRoEF<> 98氏のを読むと、1期フェイトが思い出されて不憫でならない。
過去話を見ると確かにプレシアは優しい母親だってのは分かるんだけど。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 00:41:35 ID:TCkSQk/N<> 98氏GJ!
プレシア出てるSSってあんま見ないなー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 01:57:05 ID:FWRHMdTl<> 98氏GJ
珍しく泣いた <> 396<>sage<>2006/02/21(火) 02:19:36 ID:Xf/+XGyA<> これから第二話を投下したいと思います。次スレに移るのにちょうどいいっぽいので。
頑張ってミスしないように投下するので549氏保存の方よろしくお願いします。

魔法少女リリカルなのはA's+

第二話 「少年の覚悟、少女の決意なの」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:20:28 ID:Xf/+XGyA<>
「お疲れ〜フェイトちゃん」
転送用の魔法陣から出てくるとすぐにエイミィがお決まりのように親指を立てて微笑んだ。
「今日は、なんか事件が重なったね」
「ほんと嫌なことって一度に起こるもんだね〜」
フェイトはバリアジャケットを私服に変えながらエイミィに話しかけ、アルフはぴこぴことしっぽを振りながら愚痴った。
今日は発生した時間はまちまちだが、なのは、フェイト、はやて、クロノとそれぞれが出動しなければならないほどの大きな事件が
立て続けに起こった。

「そうだよね…ほんと」
「?…なにかあったの?」
「え?なになに?」
少し肩を竦めながら話すエイミィにフェイトが質問した。アルフはフェイトを抱えるようして乗り出した。
もしかしたらなのはやはやてに何かあったのかもしれない。嫌な予感が頭をかすめた。

「なにかあったってわけじゃないんだけど、ね」
「ふぃ〜なんだい、驚かすんじゃあないよ」
ふにゃふにゃと脱力するアルフ。その重みを避けるように移動しながらフェイトはエイミィに聞いた。
「でも、エイミィは何かあったような顔をしてる」
真剣な表情で聞くフェイトと目が合った。たしかに、その目に映りこんだ自分はなんとも不安げな表情をしている。
「まあ、別に隠すようなことでもないんだけどね…」
今日、クロノと話した内容をそのままフェイトに聞かせた。

                         *

「あ……」
扉から入ってきたのはフェイトだった。
エイミィから話を聞いてすぐその足で医務室へと向かったのだった。もしかしたらなのはもまだ帰ってないんじゃないか
という期待もあったが、明日のことを考えればだいたい察しはついていた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:21:20 ID:Xf/+XGyA<>
意外な訪問者にユーノは少し戸惑った。
(たしか別件での捜査にあたってたはずだけど、帰ってきてたのか。でもなんで僕の所に?)
そう、思ったままのことを口にしようとしたが、先に話しかけてきたのはフェイトだった。
「怪我…大丈夫?」
小首をかしげて聞いてくるフェイト。
「あ…うん、大丈夫。もうしばらくしたら自分の部屋に帰ろうかと思ってたんだ」
時計を見ると、なのはと別れてから1時間近くも経っていた。
(こんなに考え事してたのか…)
あらためて自分の悩みが心に大きなシミを作っていることに気がついた。
フェイトはベッドの隣にある椅子に腰掛けると、じっとユーノを見つめた。
「あ…えっと、なに?」
ユーノは端麗な容姿の少女に見つめられて少しドキっとした。
「ユーノ、今なにか悩んでるでしょ」
「へぇ!?」
突然たずねてきたフェイトに先ほどまでの自分の心が読まれたので、驚きでユーノはすっとんきょうな声をあげた。
予想通りの反応にフェイトがクスクスと笑った。
「だって、顔に書いてるから」
「そ、そうかな…」
本当に顔に文字が書いてあるわけではないが、ユーノは軽く頬をさすって消すような仕草をした。
顔の筋肉が少しやわらいだような気がした。

「エイミィから聞いたよ。うまく…いかなかったみたいだね」
「……うん」
エイミィからも心配されていたとは。どうやら自分は感情が顔によく出るタイプらしい。
「…ユーノは、なのはを守りたいんだよね?」
少し微笑みながら話してくるフェイトにユーノは答えた。
「なのはだけじゃないよ。みんなを、守りたい。いや、助けになりたい…かな?」
素直に自分の気持ちを口にした。自分の心を反芻するように。
そして自分に言い聞かせるように続けた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:22:15 ID:Xf/+XGyA<> 「わかってるんだ。能力には限界がある。
僕にはできることとできないことがあって、たまたま今回できないことにあたっただけだって」
ベッドのシーツを直しながら立ち上がった。
「これからは、もう少し戦闘よりも情報収集に専念しないとね。僕にはたぶんそういうのが合ってる」

――ユーノくんには図書館とかそういうのが似合ってる

以前なのはがそう言っていたのをフェイトは思い出した。確かに、適材適所であることには違いないと思う。
でも、自分がもし逆の立場だったら、戦闘面での非力な自分を恨むかもしれない。そんなに割り切れるものじゃない、と思う。
(ユーノは強いね…)
口には出さず、心の中でそう呟いた。本人が理解して向き合っているのだから、下手な同情の言葉はかけたくなかった。

「夕食の時間だけどユーノはどうするの?」
気持ちを切り替えるように自分も立ち上がりながらフェイトが尋ねた。今はなのはの世界では夕飯時だ。
普段暮らす世界での時間に合わせないと生活バランスが崩れてしまう。
「僕はあまりお腹すいてないから…。フェイトこそ、元の世界にもどらなくていいの?」
闇の書事件以降もあのマンションはリンディ名義で借りられている状態で、たまに家族そろって過ごすことがある。
「今日はアースラの中で食べるつもりだったんだ。学校もここから通えるように荷物持ってきてる」
『フェイト〜どこだい〜?お腹がすいて死にそうだよ〜』
タイミングよくアルフからの念話が入った。
「それじゃあ、わたしはもう行くね。アルフが待ってるから」
そういって扉に向かって歩き出した。
「あ、フェイト」
「ん?」
突然の呼びかけにフェイトは振り向いた。黒い大きなリボンがふわっと揺れた。
「ありがとう」
お世辞にも男らしいとは言えないが、ユーノのその時の顔はとても大人びていて、それでいて少し寂しげに見えた。
「うん。またね」
軽く微笑んでフェイトは医務室を後にした。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:23:09 ID:Xf/+XGyA<>
                 *

「あれ?フェイトちゃんやないか〜」
ユーノと別れてからアルフと合流し食堂へと向かう途中、後ろから声をかけられた。
その口調からすぐさま声の主ははやてだとわかった。
「あ、はやて…とシグナムたちもいるんだね」
振り向くとはやての後ろからぞろぞろとヴォルケンリッターの騎士達が歩いてくる。

「こんな遅くまでなにしとるんや?もうみんな事件は解決できたんやろ?」
フェイトと平行して歩きながらはやてが尋ねた。闇の書事件から2年、はやてはもう自分の足で歩けるまで回復していた。
「あたし達はこれから食堂で食うんだぜ〜、な?シャマル」
「はいはい、わたしが買い物を忘れたからでしょ!ヴィータちゃんの意地悪ー」
急に場が賑やかになる。大人数になった上に目立つ集団に囲まれ、自然と周りの局員の目が集まった。
あまり人の目に慣れていないフェイトは少し恥ずかしくなった。これでも昔よりは慣れた方である。

「あ、あの、えっとね、さっきまでユーノとお話しして、それでこれからわたし達も食堂で食べようかなって…」
「なんだい、フェイトはユーノと会ってたのかい。あたしも呼んでくれればよかったのにー」
「あ、うん、ごめんね」
ちょっとふてくされるアルフにフェイトは謝った。あまり意識せずに一人の方がいいと判断したので、少し申し訳ない気がした。
「その話、もうちょい詳しく聞かせてもらおか」
ぽんと肩に手を乗せられ振り向いてはやての顔を見ると、その目はなにか面白いものを見つけた子供のような輝きを放っていた。
なにか勘違いしている。フェイトは直感でそう理解した。
「…う、うん。別にいいけど」
「よし、そうと決まればこれからみんなで食堂へレッツゴーや!」
「「おー!」」
ヴィータとアルフが元気に合いの手を入れ、フェイトと他の騎士達の足取りは少しばかり重くなった。
 
                 * <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:24:05 ID:Xf/+XGyA<> 「ふ〜む、それはジレンマってやつやな〜」
顎に手を添えながらはやてが感想を述べた。みんなの食事は一通り終わり、今はお茶を飲みながらくつろいでいた。
「じれんま?なんだそれ、うめーのか?」
聞きなれない言葉に台詞がひらがなになるヴィータ。まだまだ知らない言葉は山ほどある。
「初めて聞く言葉をすぐに食べ物に直結させるな。食い意地がはっていると騎士の品位が疑われる」
お茶をすすりながらシグナムがぴしゃりと言い放った。
「んだよ。シグナムだって昨日の『どっちの料理がうまいでショー』を涎たらしながら見てたじゃんかよ!!」
「な!?涎などたらしていない!ヴィータ、偽りでわたしを陥れるとは言語道断。その曲がった根性、今ここで叩きなおしてやる!」
「おーおーやってみろよ!あたしはシグナムのそのでっけーおっぱいをぺしゃんこにしてやるからさ」
「くっ!!もう我慢できん。レヴァンティン!」
言うと同時に待機状態のデバイスを手に取る。
「こらこら、シグナム、ヴィータ、その辺にしとかんと明日の朝食はシャマル担当にするで」
「「すいません」」
「ちょ、ちょっと!!!」
シグナムとヴィータが大人しく席に着き、逆にシャマルがヒステリックに立ち上がった。
「あんた達って見てて飽きないね〜ほんと」
「…………」
頬杖をつきながらニヤニヤするアルフに全く返す言葉がないザフィーラだった。


「まあうちらも皆つよなってきてるしな〜。ユーノくんがそう感じるのも仕方あらへんのかも」
「我々ベルカの騎士も魔力量は増えませんが技術的には強くなりますからね」
みんなを見渡しながら話すはやてにシグナムがつけ加えた。
「なーなー、つってもよ、ユーノは足手まといってわけじゃねーんだし別にいーんじゃねえか?
んなこと言ったらシャマルだって似たようなもんだろ」
足をバタバタさせながらヴィータがはやての顔を覗き込んだ。
「ムカッ、あのねヴィータちゃん、わたしはサポートとしてプログラムされてるの。専門なの。スペシャリストなの。
あんまり馬鹿にしてるとカートリッジ作ってあげないわよ。ついでに冷蔵庫のヨーグルトも没収」
「おーぼーだ!!」
ヴィータが両手を挙げて抗議した。
「ちょっとヴィータは黙っとき。話が先に進まへん」
「ご、ごめんなさい」
しょんぼりとしてストローに口をつけた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:24:59 ID:Xf/+XGyA<>
「で、でも、ユーノ本人はちゃんとそれをわかってるんだよ?」
ようやく発言できそうな雰囲気になったのでフェイトは恐る恐る口を開いた。
「そこが偉いとこやな〜。今も無限書庫で働いてるようやし、将来のビジョンっちゅーのがはっきり見えとるんやろな」
両腕を組みながらうんうんと唸るはやて。

(将来…か。あれから2年、来年には執務官試験がある…)

自分にはできることがたくさんあるし能力も十分にある、と思う。なら、あとはそれが発揮できる方向へと突き進めばいい。
ユーノだって、挫折や諦めだけで言ってるんじゃないんだ。自分のできることを精一杯やろうとしてる。だったらわたしだって…。
なにか今まで自分の中でもやもやしていたものが晴れた気がした。

「うん、決めた!わたし、執務官試験受ける!!」
「へ!?」
話が跳んでいきなりそう宣言するフェイトに、はやてはお茶をこぼしそうになった。

「ほんとかい!?フェイト!」
「なにか思うところがあったようだな。応援するぞ、テスタロッサ」
「頑張ってねテスタロッサちゃん」
「お、おー。なんかよくわかんねーけどすげーな〜」
それぞれの反応の後、フェイトが元気よく微笑んだ。
「うん!頑張るね!!」



「な、なんやよーわからんけど、めでたしめでたしってことでいーんか?」
「主、私に意見を求めないでください…」
釈然としないはやてにザフィーラが小さく嘆いた。
<> 396<>sage<>2006/02/21(火) 02:30:28 ID:Xf/+XGyA<> 次回へ続く

読みやすさと本編のイメージをなるべく壊さないという2点に気をつけてる
つもりですがなかなか難しいですね。他の職人さんはすごい。
ちなみにアニメとドラマCDのみの情報でコミックや設定資料等は見てないので
色々違うかも知れません。二次創作なので勘弁してください。それでは。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:37:41 ID:qHLI3cUI<> >>396
乙です。十分、読み易いっすよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 02:52:37 ID:cThWcUiF<> >>396
乙です。
ユーノが主役だと思ったんですが、そうでもないみたいですね。
十分なのはの雰囲気がでてると思いますので、これからも頑張って下さいね。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 05:57:56 ID:DZMZtSZH<> >>396
乙です。
文章構成もしっかりしてるし、句点等の配置も良く読みやすいです。
続き楽しみにしてますので、これからも頑張ってください。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 13:15:12 ID:07sthAHB<> >396氏

>「こらこら、シグナム、ヴィータ、その辺にしとかんと明日の朝食はシャマル担当にするで」
>「「すいません」」
>「ちょ、ちょっと!!!」

ハゲワロス <> jewel<>sage<>2006/02/21(火) 17:34:38 ID:7vAfio5u<> >>98
 涙腺が壊れるかと思いましたよ…GJです!
>>396
 乙でした。私も、すごく読みやすかったと思います。


 それでは、私も次のやつを投下したいと思います。
『Turn over』、『Turn against』の続きになります。読んだことない方は
めんどくさいと思うんでスルーして下さって結構です。出来れば、最初から読んで
感想いただければ幸いです…。 ↓ <> jewel :【Against justice】<>sage<>2006/02/21(火) 17:35:58 ID:7vAfio5u<>
【T】

「はぁ〜♪ 生き返る〜! やっぱ一日の最後はコレだよねえ〜♪」
 恍惚の表情を浮かべる、時空管理局執務官補佐。
 湯気に包まれた声は、広い浴室でやわらかく反響した。
「お疲れさま、エイミィ」
 ちゃぷ、という音と共に、髪を下ろしたフェイトがエイミィの隣に座る。
「ほーんと、お疲れですよ。まったくあの上司、次から次へと仕事持ってきやがって〜」
 拳を握り、ファイティングポーズのエイミィに、フェイトは苦笑いで応える。
 上司とは勿論、自分の兄であるクロノのことを指しているからだ。
「フェイトちゃんからも言ってちょうだいよ。ほんっとに馬鹿みたいに真面目なんだから」
「私が言っても、多分変わらないと思うけど…」
「いーや、いける! フェイトちゃんが涙目で『おにいちゃん、おやすみほし〜い』って
 訴えれば、ヤツは溜まりに溜まった有休全〜部使うに違いない」
「そ、そっかな…?」
 苦笑いを続けるフェイトに対し、エイミィは何とも怪しい笑みで謀を企てる。

 ところが、不意にその表情を崩すと、エイミィはあごの辺りまで深く湯船につかった。
「…ま、もう慣れたけどね。クロノ君とは付き合い長いし、年上として
 これくらいのコトは我慢してやんないと」
 やれやれ、という様子で、わざとらしく溜め息をつく。
「クロノ、口ではあんまり言わないけど、エイミィにはすっごく感謝してるよ。
 二人の様子いつも見てるから、分かる」
「いいこと言ってくれるじゃ〜ん、フェイトちゃん! その通り、
 あの真面目バカには、私っていうパートナーが必要不可欠なのですよ。
 クロノ君にも、そこんトコちゃんと伝えておくように」
 ビシ、と上機嫌で人差し指を立てるエイミィを見て、フェイトは微笑んだ。

「…ところでさ、エイミィはやっぱり、将来クロノと結婚するの?」
「へ?」 唐突な問いかけに、珍しく目を丸くするエイミィ。
「あ、そーしたら、エイミィが私の二人目のお姉ちゃんになるね♪」
 さらりと言ってのけるフェイト。勿論、確信犯で。
 一瞬うろたえた(様に見えた)エイミィだったが…数秒と経たず、いつもの
不敵な笑みをうかべる。
「…年上をからかうとは…ナマイキ!」 「!!」
 目の色が変わったエイミィを目にし、とっさに胸元を隠すフェイト。
「…あれぇ? どうしたのかなぁ、フェイトちゃ〜ん?」
「いや、その…何となく、身のキケンを…」
 完全に表情をオヤジ化させたエイミィに、じりじりと追い詰められる。
「ひどいなー。私は『お姉ちゃん』として、妹の発育じょーきょーを
 確かめようとしてるだけなのにぃ」

 3秒後。何ともやかましい声と共に、浴室に水音が響いた。
<> jewel :【Against justice】<>sage<>2006/02/21(火) 17:36:50 ID:7vAfio5u<>
【U】

「………遅い」
 空のペットボトルを右手でもてあそびながら、クロノが呟いた。
 同時に、ミーティングを『入浴後』としてしまった自分の浅はかさにも呆れる。
 彼が通信室に入って既に30分。エイミィの入浴時間は、とうに1時間を越えている。
『まあ、エイミィさんのお風呂は相当長いからね。しょうがないよ』
 モニター画面から届く、ユーノの声。彼も、かれこれ10分以上待たされている。
「仕方ない、僕らだけで先に始めよう。君も相当忙しいだろうし、待たせるのも悪い」
『OK、それじゃあ』
 画面の向こう側で、ユーノがボタンを操作する。

 ―映し出されたのは、あの長髪の魔導師。

 ようやく判明したその名は、ディノ・ストライン。特Aクラスの捜査対象となった彼は、
既に『DS』という管理局統一の通称でそう呼ばれていた。
「さっき、本局の情報部から連絡があったよ。ミッドチルダの出身で、両親以外の
 家族はなし。過去の犯罪歴もない。それ以外には、とりたてて特徴はなかったそうだ」
『シグナムさんが捕まえた剣士から、何か新しい情報は?』
「そちらもゼロだ。あの少年には、名前以外の素性を全く話していなかったらしい。
 『知れば、君に迷惑がかかる』と言っていたようだ。…本当にそう考えていたか、
 はぐらかしていただけなのかは、何ともいえないが」

『…僕は、本当にそう思ってたんだと思うな…なんとなく、だけど』
「…同感だ。あれだけの力を持っているのに、余りに回りくどいやり方ばかりだ。
 何かしらの目的と、強い『意志』があるに違いない」
『前に3人で戦ったとき、あの人に言われたんだ。まったく偽善だ、世界を守ろうとでも?
 って…なんか、妙にそれが頭に残っててさ』
「…難しいな。自分達こそが善だ、なんて言うつもりは毛頭ないけど、
 少なくとも、貫くべき『意志』は、僕らにもあると思う。たとえ…偽善でも」
『クロノ…』
 真剣な顔で語るクロノに、ユーノは口を噤んだ。慌てて、クロノは表情を緩める。
「すまない、気にしないでくれ。…それより、君の方では何か掴めたか?」
『時間はかかったけど、無限書庫になかなか興味深い記録が残ってたよ。
 本局のデータベースに、何も残ってなかったのもうなづける』
 ピ、とユーノが送ったデータを見て、クロノが驚く。

「これは…!」
『そう。15年近く前、2週間っていうごく短期間ではあるけど…あの魔導師、
 時空管理局の外部協力者だったんだ。リーゼさん達みたいな、戦技教官としてね』
<> jewel<>sage<>2006/02/21(火) 17:38:34 ID:7vAfio5u<> …とりあえず、プロローグでした。
 今回は多分短めになると思います。ラストに向けての橋渡し的な感じです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 17:47:30 ID:/k4ka9NB<> >>464
ついに最終章突入ですか
楽しみにしてます……
ところで

まさか

TOP-G? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 18:13:34 ID:46yXr2WL<> >TOP-G
……え?佐山時空? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 21:31:51 ID:LMTgoliF<> >>464GJでした。楽しみに待ってます
>>465,466終わクロ知っている人多そうだな。本スレで話題になったこともあったし。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 23:21:23 ID:Xf/+XGyA<> >>464
どんなラストになるか非常に楽しみです。乙&GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/21(火) 23:58:58 ID:0B2TghqG<> そろそろ次スレだね。
まだ一月たってないけど。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/22(水) 00:41:52 ID:VZchkUBm<> >>jewell氏
最初っから読んでみた。……激GJ!
この台詞回しのうまさはくせになるな <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 00:42:47 ID:VZchkUBm<> ageてしまった…
スマンちょっと吊ってくるorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 11:16:07 ID:exDlLFRQ<> 浴室をもっと詳s(ry <> 396<>sage<>2006/02/22(水) 13:27:01 ID:pJHHq20i<> まだ容量残っているようなので続きを投下しますね。

魔法少女リリカルなのはA's+

第三話 「恋の種たちなの」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:27:44 ID:pJHHq20i<>
「はぁ…はぁ…つ、強くなったな…」
クロノが息も切れ切れに話しかける。
「そ、そんなこと、ないっ、て…」
額の汗を手の甲でぬぐいながらなのはが答えた。
どうやら勝負は引き分けのようだ。お互いの魔力は飛ぶのがやっとというところまで消費されている。
「ふぅ、まったく末恐ろしいな」
そう言いながらクロノは天井を仰ぎ見て深く息を吐いた。

――約1時間前

「ぼ、僕と戦いたいって?」
クロノは突然の申し入れに少し上ずった声をあげた。
「う…うん」
なのはは恥ずかしそうに俯きながら続けた。
「あ、あのね。これからもっと色んな事件に関わっていくだろうし、魔導師としての技術と言うかレベルを上げたいなーとか
思ってるんだけど、なかなかわたしより強い人っていなくて、それでフェイトちゃんがたまに鍛えてもらってるって聞いて
わたしもいいかなって思ったんだけど…」
もじもじしながらも結構とんでもない発言をするなのはにクロノは閉口させられた。
「だ、駄目かな?」
なのはが上目遣いで見上げながらクロノに懇願した。身長差からくる必然であり、決して狙ってやっているわけではない。
どっちにしろ効き目は抜群で、クロノの心臓は自分でカウントできるくらいまで高鳴った。
「あ、あ、ああ。べ、別にかまわない、ぞ?」
意識しなくても顔が上気しているのを感じ、せめてもの抵抗として目を合わせずに言うクロノ。
「ありがとう!!それじゃ、さっそくいこ?」
そういってクロノの手を引っ張りながらなのはは走リ出した。5歳も6歳も年下の女の子に手を引かれながら後をついていく姿は
なんとも情けなかったが、今のクロノには自分を客観的に見れるほどの思考能力はなかった。

トレーニングルームに着くと、さっそくクロノとなのははお互い向き合った。
「それじゃあ、よろしくおねがいします!」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:28:32 ID:pJHHq20i<> ぺこりとお辞儀をして、なのはは胸元からレイジングハートを取り出す。
「レイジングハート、いくよ!」
『stand by ready』
レイジングハートがキラリと光り、いつもの機械的な音声が聞こえた。
「セーット、アーーップ!!!」
レイジングハートを高らかに投げ上げると、なのはは赤い光の球に包まれた。

バリアジャケットを着用するための光の球を見て、ようやくクロノの心は落ち着いてきた。
(今のなのはは僕でも勝てるかどうかわからないな…。本気で行かないと)
キッ前を見つめ、精神を集中する。
ポケットからカードを取り出し目の前に放り投げる。クルクルと回転したカードが一瞬にして黒い杖へと変わった。
「いこうか、S2U」
ぱしっと杖を掴みながらクロノが囁いた。

お互い準備が整い、杖を構えながら少しずつ空中へと上昇した。
途中、クロノがルールを説明した。
「あくまで模擬戦だからカートリッジの使用は不可。もちろんエクセリオンモードはもってのほかだ。
戦闘での致命的なバインドを受けたり、魔力が尽きた時点で終了。
まあ、フェイトから話は聞いているだろうからあとはやるだけだな」

部屋の中央の位置でぴたりと止まり、クロノがくるっと杖を一回転させて持ち直した。
「それじゃあ、スタート!!!!」
掛け声と同時に、部屋の中で青い光とピンクの光がはげしく飛び回った。

                  *

「お疲れ様、なのはちゃん」
ガラス張りの休憩室で休んでいる二人を見かけたエイミィがジュースを差し入れに来た。
「あ、エイミィさん。ありがとう!」
飲み物を受け取って笑顔を見せるなのは。クロノは椅子に腰掛けタオルで汗を拭いていた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:29:08 ID:pJHHq20i<> 「ほら、クロノくん」
エイミィが缶を放り投げ、クロノが片手でそれをキャッチした。
「ありがとうエイミィ。そういえば、仕事の方はいいのか?」
缶をあけ、豪快に喉に流し込んだ。久しぶりにレベルの高い戦闘をしたので疲れもひとしおだった。
「あ〜、うん。前に一気に事件が重なった反動かな?今はさっぱりなにも起こってないよ」
オーバーに両手を左右に広げてエイミィが話した。
何も起こっていないというのは言い過ぎだったが、大きい事件というのは今のところ報告もなく、その結果クロノやなのは達に
暇が出ていた。といっても、クロノは事務的な仕事を生真面目にこなしていたし、なのはの本分は学生である。
さらにこんな模擬戦までして、エイミィとしては少しは休んでほしいと思っていた。

「起こっていないが、今この瞬間起ころうとしているのかもしれない。未然に防げればそれに越したことはないんだがな」
「気は抜けないってことだよね…」
クロノが苦笑し、なのはが真剣な表情で手に持っている缶を見つめた。

(まったく、この二人はほんっと真面目なんだから!)
理不尽な苛立ちのようなものがこみ上げ、考えもなしにエイミィは口走った。
「もう!二人とも模擬戦もいいけど、もっと年齢相応のこともしないと。暇があるなら二人でデートでもしてきたら?」

一瞬沈黙がおり、休憩室が静寂に包まれた。

「なななな何を言ってるんだ!暇じゃない暇じゃない暇じゃない!!」
真っ赤になって否定するクロノとは対照的になのはの目は点になっていた。
さすがに、もうすぐ成年になろうとしているクロノが惨めに見え、エイミィは助け舟を出すことにした。
「ま、冗談なんだけどね。あんまり無理してるといざって時に困ることになるよ。そんじゃね〜」
そう言って休憩室を飛び出すエイミィ。自分で撒いた種にはとことん水を与えないタイプである。

残されたクロノはどうしていいかわからず、とりあえずなにか言わないと、と思いなのはに話しかけた。
「あ、あの…えっと…ま、まったく!エイミィのやつは!!い、今のはほんとに冗談なんだから、な?」
一応確認をとると
「うん、わかってる」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:29:49 ID:pJHHq20i<> 笑顔とともにあっさり肯定され、それはそれで惨めになるクロノだった。

                  *

「う〜ん…」
黒いリボンが心なしかしおれて見え、金髪のツインテールがふわっと机に広がった。
「うわ!どうしたんだいフェイト!具合でも悪いの?」
ボリボリとおやつ代わりにドッグフードを食べていたアルフが心配そうにフェイトの顔を覗き込んできた。
「あ、うぅん、違うの。ちょっと問題がわからなくって」
そう言って起き上がりながら机に散らばったプリントを一つにまとめた。
「お!これが執務官試験ってやつの問題かい。ひゃ〜むつかしそうであたしにゃ無理だね〜」
「うん。っていうかアルフ文字書けないよね、その前に」
冷静に突っ込みつつ手元の本を開いた。ミッドチルダの魔法に関する分厚い書籍だが、これにも載ってないような
問題まで出てくるんだから驚きだ。

執務官試験を受けると決めてから数ヶ月、その難易度の高さに少々お手上げ状態だった。
学校の試験のように他者と比べるような試験ではなく、あくまで個人の能力を見てふるいにかける試験なのだから
難しくて当然と言えば当然だ。
「でもフェイト、実技ならフェイトが一番じゃないのかい?」
アルフが不思議そうに尋ねてきた。一番とか、そういうのじゃないんだけど…と言おうと思ったが先に問題点を話しておこう
と思った。
「うんとね、執務官は平均的に能力が高くて、色んな状況に対応できるようじゃないと務まらないんだ。
だから実技じゃそういうのも求められて…」
そう言いながら現執務官であり、兄でもあるクロノの顔が思い浮かんだ。あの生真面目な兄が一度落ちた試験だ。
それを超えたいと思う一方、自分じゃ無理ではないのかという気弱な考えも浮かんだ。

「あ!!わかったよ!フェイト、防御系は苦手だもんね〜ってあたしもなんだけど」
耳をピーンとはったかと思いきや、しゅんと伏せさせながらアルフが言った。
使い魔と主人の性質が似るのは当然だが、こうはっきりと突きつけられると悔しいやら情けない気持ちになった。
「はぁ、誰かに教えてもらわないと駄目かな…」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:30:30 ID:pJHHq20i<> 「せっかく兄妹になったんだからクロノに教えてもらえばいいんじゃないのかい?」
しっぽを振ってすり寄りながらアルフが言ったが、フェイトは首を振った。
「クロノは今も忙しいし、それに…執務官試験に受かるために執務官から教えてもらうのは、その、なんか違うかなって」
「う〜ん、あたしゃそれでもいいと思うんだけどね〜。ま、フェイトがそうしたいってんならそれでいいと思うよ。……あ!」
フェイトの太腿に頭を乗せていたアルフが再び耳をピーンと立てながら頭を上げた。
「いい先生がいるじゃあないか!うん、それがいいよ!!」
そう言ってアルフは机の上にあったフェイトの携帯を開きピポパとボタンを押し始めた。


…が結局操作方法がわからなかったので、アルフの提案を聞いたフェイトがその“先生”に電話をかけた。

「ちょっとやってみたかったんだよぉ…」
自分の想像通りにいかなかったので、ふてくされ気味に残りのドッグフードをぼりぼり食べるアルフだった。

                  *

「あの…よろしくお願いします」
「えと、こちらこそ…」
ここは無限書庫の前にある数ある客室の中の一室。
まるでお見合いのように向かい合って座る少年と少女。
「でも、ほんとにいいの?ユーノだって、仕事があるんでしょ?」
不安げに尋ねるフェイトにユーノは明るく答えた。
「ううん、大丈夫だよ。防御系の魔法は僕の専門分野だし、ちょうど今その研究もしてたんだ。それに…」
ユーノが真っ直ぐにフェイトを見つめた。エメラルド色の瞳が綺麗だった。
「フェイトには僕の分まで強くなってもらいたいしね」
「ユーノ…」
微笑みながら言うユーノにフェイトは何も言えなかった。
でも、ユーノが言うとおり執務官試験を通して自分が強くなると思うと、合否にとらわれずに頑張れる気がした。
「それでね、こことここをもうちょっと詳しく教えてほしいんだけど…」
「あーここはね、このアルゴリズムの方が速くて…」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:31:04 ID:pJHHq20i<> こうしてユーノの授業が始まり、時間はあっという間に過ぎていった。

                  *

「あ、だからここはこう変換するのか…」
「うん。まあデバイスを使えばもっと効率的にできるんだけど、条件上こっちを使うしかないんだ」
ところ変わってアースラ艦内。ユーノの所用と休憩もかねて訪れたが、移動しながらも試験勉強は続いていた。
ユーノの教え方は懇切丁寧で、フェイトは昔リニスに教えてもらっていたときのことを思い出していた。
(なんかこう見るとちょっと顔も似てるような…)
ユーノの横顔を見つめていると、その視線に気づいたユーノが急に振り向いた。
「えっと、もしかして僕の顔になんかついてる?」
フェイトと顔を合わせてからかなりの時間が経ってるのに、今までずっとなにかをつけていたんだろうか…。
ユーノは顔を上気させながら頬をぬぐった。
「あの、えっと、ち、違うの。……あのね、ユーノの教え方が昔のわたしの先生に似てるなって思って」
フェイトの顔が少し暗くなったのにユーノは気づいた。
フェイトの昔と言えばプレシアと一緒に暮らしていたときだ。きっとその先生は今はいないんだろう。直感でそう思った。
「そっか。きっといい先生だったんだね。ってこれじゃあ間接的に自分を誉めてるみたいだ」
そう言いながら笑うユーノに、フェイトは暖かい優しさを感じた。
昔のことは自分の中でけじめがついているが、過去は過去として存在するわけで、やっぱり今でも触れるのには勇気がいる。

(わたし、ちゃんとできてるよね?リニス…)

感傷に浸りながら歩いていると、目の前に見知った三人がいるのに気がついた。
「あ、あれってなのはとクロノ?エイミィもいるね」
「ほんとだ」
少し離れたところにガラス張りの休憩室があり、三人が談笑しているように見える。
なのはとクロノは少し疲労しているように見えた。
せっかくだからと近づこうとするフェイトだったが、ユーノの足取りは心なしか重かった。
しばらく歩くとエイミィの声が聞こえてきた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 13:31:45 ID:pJHHq20i<>
『もう!二人とも模擬戦もいいけど、もっと年齢相応のこともしないと。暇があるなら二人でデートでもしてきたら?』

「え!?」
フェイトが驚いて足を止め、ユーノは半歩後ろで俯いた。
「あ、あのあの、えっとね、これはたぶん…」
ユーノの顔を覗き込むように言うと、ユーノはばっと顔を勢いよく上げてまくし立てた。
「ああああのさ!ぼ、僕、先に用事済ませてくるから!だから、また今度ね!!」
言うと同時にユーノは今来た通路を逆方向に走り出した。
「あ!ユ、ユーノ!!!」

ユーノの走る足音が響き、通路に一人ぽつんとフェイトは取り残された。
(ユーノ…)
全速力で走っていくユーノの後姿を見て、なんだかとても胸が苦しくなった。
(なんだろう、この気持ち…。よくわからないけど…)
すぐにでもそばに行って慰めの言葉をかけてやりたい。そんな衝動にかられた。

「あれ?フェイトちゃん、こんなとこで何ぼーっとしてんの?あ、そだ!今なのはちゃんがね…」
休憩室から出てきたエイミィがフェイトに気づいて話しかけてきた。
「あ、あの、わたし、ちょっと用事があって!!ま、また!」
そう言ってユーノの駆けていった方向へと駆け出した。

結局その日はユーノとは会えなかった。会っても、なんて声をかけたらいいかわからなかったが。
「また今度…か」
初めて触れる新しい自分の感情に戸惑うフェイトだった。



「えっと…なんかあった?」
取り残されたエイミィは一人ごちた。
意図せぬところで撒かれた種に、自然と雨が降るのを待つばかりとなった。
<> 396<>sage<>2006/02/22(水) 13:35:47 ID:pJHHq20i<> 次回へ続く

予告
第四話「波乱のパーティーなの(前編)」
第五話「波乱のパーティーなの(後編)」

というのでもうすでに完成してます。そういえば主人公ですが、一応ユーノです。
登場人物をまんべんなく出すと自然に出番が薄くなります。あとテーマは恋愛です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 16:00:23 ID:gUHlcPhk<> >>396
乙、そしてGJ!
先の読めない展開でした
次回も頑張ってください。…というかもう完成してるみたいでしたorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 19:02:55 ID:0kNJ4kqp<> 396氏もう最高!!!乙!
はやく続きが読みたいです。はやくはやくはやくうう・・う!

でちゃった・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 19:07:16 ID:CcTHPMrV<> 1ヶ月で1スレ消化かよ…まだ200番台読んでるのに。・゚・(ノд`)・゚・。
ログ保存しとくか(´・ω・`) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/22(水) 21:04:52 ID:HI8gXOFO<> >>396氏おもれーよ!GJ! <> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/02/22(水) 21:13:24 ID:b3Xee5NN<> 残り16Kで、書き上げたのが25K……。
またスレの終わりに間に合わなかった。。。orz

10時ぐらいになったら新スレたてます。 <> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/02/22(水) 21:15:40 ID:b3Xee5NN<> 魔法少女、続いてます。


魔法少女リリカルなのは
魔法少女リリカルなのはA's

のエロパロスレです。
エロは無くても大丈夫。でも、特殊な嗜好の作品は投稿前に確認をお願いします。

前スレです。
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第五話☆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1138073204/l50

保管庫です。
☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html
<> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/02/22(水) 21:35:28 ID:b3Xee5NN<> とっとと建てました。

☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第六話☆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140610972/l50
<> 371<>sage<>2006/02/23(木) 00:05:55 ID:6Pb+ihMX<> 549氏新スレたて&SS保管庫の管理おつかれさまです。

・・そのあの・・厚かましいお願いですが、ボクの
SSも保管庫に入れてください。あれ以上のものは
書けません。お願い549ままん <> 371<>sage<>2006/02/23(木) 00:10:28 ID:A0BbVIe4<> タイトルは「骨太家族もちっこたべて〜」 <> 埋め@396<>sage 感想大感謝!!<>2006/02/23(木) 00:17:51 ID:zfASCUyr<>
「チームはやての質問コーナー!!」
「な!どうしたんですか主はやて!!やぶからぼうに」
「ここで396の小説に対するみんなが感じとるであろう疑問を架空のお便りとともにお答えするんや」
「架空のって…」
「ほないくで〜。まず一つ目や。なになに、『エロはないんですか』」
「エ、エロ!?ヴィータにはまだ早い!!」
「ちょっとシグナム、目を隠しても意味ないわよ。それにまだって成長しないんだから酷じゃない?」
「つーか離れろよ!おっぱいがあたって気持ちいいじゃねーか、悔しいくらいによぉ!」
「す、すまん…」
「んでどうなんや?」
『ないです』
「フーン、ってなんでリィンフォースが答えてんだ?」
『可愛い子は何を言っても許される、だそうです』
「た、たしかに…」
「じゃああたしでもいいじゃん」
『馬鹿な子は なんか つかれる』
「よーーーし表出ろ!!久しぶりにキレちまったからよーーー!!」
「待て待て、リィンフォースは悪くないだろう(たぶん)」
「それにヴィータちゃん!リィンフォース=はやてちゃんと戦うってことよ」
「はっ!!」
「ほぉ〜〜、いい度胸しとるな〜ヴィータ。ほな、屋上行こか?久しぶりにキレてしもたわ(ビキィ」
「いやだああああぁぁぁぁぁ(ズルズル」

「ちょっと、一つ目で終了しちゃったけどどうするの?この後」
「オチをつけねばなるまい」
「なんだザフィーラ、いたのか。いるならいるでちゃんと吠えねば」
「わふっ」

「………え!?これがオチ?」
(完) <> 371<>sage<>2006/02/23(木) 01:31:56 ID:A0BbVIe4<> 396氏グッド!萌えたわん(;´Д‘)ハァハァ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/23(木) 02:10:29 ID:uD0cHmfT<> >>491
ワロスww
完全にお笑い担当だなw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/23(木) 15:08:52 ID:Imu1QmoG<> 391氏には是非ちびリィンフォースのどたばた日常っての書いて欲しい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/23(木) 15:09:39 ID:Imu1QmoG<> ごめん396氏のまちがいだお。 <> 埋め駄文<>sage<>2006/02/23(木) 23:07:25 ID:AeMQl1eT<> クロノin八神家

「…うっ」
ドパッ
はやての顔に、手に、胸に白くドロリとした液体が掛かる
はやてのまだあどけない顔も、今は白い液体で汚れている
しかしはやてはさして気にせず、左手に付いたソレを嘗めあげる
「ん…おいしいなぁ…」
そう呟き次は右手のも嘗め取る
「うん…やっぱりおいし…」
それを聞き、隣にいたクロノが呆れ顔で言う
「いや、拭き取れよ、とろろ…」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 00:49:58 ID:lmUqQOHK<> >>496
洗わないと痒くなる罠。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 03:00:16 ID:ByRTjxfX<> 痒くなるのは体質のせい。
おいらは痒くならないので漫画などである山芋で痒くなるシーンの辛さが理解出来ない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 20:45:12 ID:uIgLiADb<> え!?
あれって体質?
しらんかった・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 20:57:23 ID:3JueNcPW<>
              ノ”’丶    , - ─ /     ト、
             /     'ヽ〆              l  ヽ
            /        ヽ              !    ヽ
           /                        ヽ    ヾ
          ノ            /        ヽ      ヽ    i
        ノ           .i  l      ヾ   l   l    ゝ    .|
       /            l|   i    /ヽ   lヽ  iヽ  |     i    i
       i   /       ( lヽ, l    | _丶_l__,ヽ,,|..ヽ. .i     .|  .|
      l   |   ./     ヽ!.; -,,i、,,..|.i~~::::::::::::::::::::::ヽ | .  lゝ,,. i   !
      l  .:|   .イl  l i:"~:::::::::::::::::i-ーi::::::::::::::::::::::::: l│ .|  l ヽ!  ゝ
       l . |.|  l i l  l.:::::::::::::::::::::lヽ .l l:::::::::::::::::::::'' .リ ! i.  .l   i   ヽ
       l |.|  l l i i  l::::::::::::::'' ノ \l -.---ーー¬"/  / /   /    ヽ
        ヽ |  l.l  i i\iヾ-¬'"  丿       ./ ///  /      ヽ
          l  i .l  ヽ| iゝ     ヽ        //!. ' |o/        丶
         丶 lノi   | ,.i      ⌒        '  /  /~o          ゝ
          ヽ | 丶  | i  \             ./  / .'"~ハ      ト 、  ヽ
          / ヽ  ヽ |丶 ,,ノヽ          /  . i ゝ  .ソ      i  i ヾ、 i
         /    ii 丶/Wヽ   丶_ ___,/     l  ~  .    i  l i   ) .i
         i   ハ ゞ  __ヽ ,,,,| ̄      ̄i ̄;;;"'l  /l /i  /l /| /  /ゝ/
         ゝ i | /\    \ ヽ      | |;;;;;;;;;;;l / i / i  / i/ i/   //
          \i/    \    \ヽ.    | |;;;;;;;// i/.| l/      '
           /       ヽ    ヾl    | ヽ;;;;;'└┐. |  |
          / ̄\      丶     ヽ  イ  ヽ;;;;;;;;;;.| |   |
          i ̄ ̄ \      i     i/ | ̄" '¬ - ...||,,,  i
         l ̄ ̄ ̄ |      l        i        ~ ''__- ,,
         | ̄ ̄ ̄ ̄|      .i       ./      ¬-( =/ | -
        |              |       /           'メ  |  " , <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 20:58:39 ID:3JueNcPW<>
              ノ”’丶    , - ─ /     ト、
             /     'ヽ〆              l  ヽ
            /        ヽ              !    ヽ
           /                        ヽ    ヾ
          ノ            /        ヽ      ヽ    i
        ノ           .i  l      ヾ   l   l    ゝ    .|
       /            l|   i    /ヽ   lヽ  iヽ  |     i    i
       i   /       ( lヽ, l    | _丶_l__,ヽ,,|..ヽ. .i     .|  .|
      l   |   ./     ヽ!.; -,,i、,,..|.i~~::::::::::::::::::::::ヽ | .  lゝ,,. i   !
      l  .:|   .イl  l i:"~:::::::::::::::::i-ーi::::::::::::::::::::::::: l│ .|  l ヽ!  ゝ
       l . |.|  l i l  l.:::::::::::::::::::::lヽ .l l:::::::::::::::::::::'' .リ ! i.  .l   i   ヽ
       l |.|  l l i i  l::::::::::::::'' ノ \l -.---ーー¬"/  / /   /    ヽ
        ヽ |  l.l  i i\iヾ-¬'"  丿       ./ ///  /      ヽ
          l  i .l  ヽ| iゝ     ヽ        //!. ' |o/        丶
         丶 lノi   | ,.i      ⌒        '  /  /~o          ゝ
          ヽ | 丶  | i  \             ./  / .'"~ハ      ト 、  ヽ
          / ヽ  ヽ |丶 ,,ノヽ          /  . i ゝ  .ソ      i  i ヾ、 i
         /    ii 丶/Wヽ   丶_ ___,/     l  ~  .    i  l i   ) .i
         i   ハ ゞ  __ヽ ,,,,| ̄      ̄i ̄;;;"'l  /l /i  /l /| /  /ゝ/
         ゝ i | /\    \ ヽ      | |;;;;;;;;;;;l / i / i  / i/ i/   //
          \i/    \    \ヽ.    | |;;;;;;;// i/.| l/      '
           /       ヽ    ヾl    | ヽ;;;;;'└┐. |  |
          / ̄\      丶     ヽ  イ  ヽ;;;;;;;;;;.| |   |
          i ̄ ̄ \      i     i/ | ̄" '¬ - ...||,,,  i
         l ̄ ̄ ̄ |      l        i        ~ ''__- ,,
         | ̄ ̄ ̄ ̄|      .i       ./      ¬-( =/ | -
        |              |       /           'メ  |  " , <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/02/24(金) 20:59:11 ID:j0wIzN8z<> 俺も痒くならない
とろろが痒くなるのは不水溶性の針状結晶が皮膚を刺激するとかなんとかだったような
…というと、>>498や俺の手の皮が人より分厚いか鈍感かと思われそうでやや不愉快だが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 20:59:40 ID:3JueNcPW<>
              ノ”’丶    , - ─ /     ト、
             /     'ヽ〆              l  ヽ
            /        ヽ              !    ヽ
           /                        ヽ    ヾ
          ノ            /        ヽ      ヽ    i
        ノ           .i  l      ヾ   l   l    ゝ    .|
       /            l|   i    /ヽ   lヽ  iヽ  |     i    i
       i   /       ( lヽ, l    | _丶_l__,ヽ,,|..ヽ. .i     .|  .|
      l   |   ./     ヽ!.; -,,i、,,..|.i~~::::::::::::::::::::::ヽ | .  lゝ,,. i   !
      l  .:|   .イl  l i:"~:::::::::::::::::i-ーi::::::::::::::::::::::::: l│ .|  l ヽ!  ゝ
       l . |.|  l i l  l.:::::::::::::::::::::lヽ .l l:::::::::::::::::::::'' .リ ! i.  .l   i   ヽ
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         丶 lノi   | ,.i      ⌒        '  /  /~o          ゝ
          ヽ | 丶  | i  \             ./  / .'"~ハ      ト 、  ヽ
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         /    ii 丶/Wヽ   丶_ ___,/     l  ~  .    i  l i   ) .i
         i   ハ ゞ  __ヽ ,,,,| ̄      ̄i ̄;;;"'l  /l /i  /l /| /  /ゝ/
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        |              |       /           'メ  |  " , <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/02/24(金) 21:00:36 ID:3JueNcPW<>
              ノ”’丶    , - ─ /     ト、
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