4の422 ◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 02:28:14 ID:/5hEfoZ7<> 魔法少女、続いてます。


魔法少女リリカルなのは
魔法少女リリカルなのはA's

のエロパロスレです。

ローカル ルール〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・ エロは無くても大丈夫。
・ 特殊な嗜好の作品は投稿前に確認(注意書き)をお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

前スレです。
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第十話☆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149426325/l50

保管庫です。
☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html
<>☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第十一話☆ 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/09(水) 02:31:05 ID:8mz5knhX<> レイジングハート>>1乙モード! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/09(水) 02:38:33 ID:3JatCY7W<> 3げっと
スレたて乙です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/09(水) 03:22:37 ID:/ZIjZWJa<> 4ゲトー、初ひとケタ。
スレ立て乙です。 <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/09(水) 05:22:59 ID:rLxdvYK0<> 埋め立てが終わりました

あと時間が時間なので職人様方への感想レスは勘弁してください <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/09(水) 11:04:13 ID:R1XsIiwj<> >>1
乙カレー、といいつつ維持書き込み <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/09(水) 13:07:56 ID:DSFshLG/<> その夜、彼は数人の部下と共に暗闇の支配する夜の街へと赴いていった。

「行くのか?」
『ああ、小競り合いで主に軽くあしらわれた奴が、敗残兵として街に潜伏しているらしいから。警戒を強化しなければ』

何故、止めなかったのだろう。
何故、共に行こうとしなかったのだろう。

今になって思うのは、私がその結果を知っているからなのだろう。
結果を知っているが故の、後悔。己に対する、悔恨の念。
このときの私を責めるなど、筋違いも甚だしいというのに。
彼を送り出した先に待つ結果など、知りようがないではないか。
それを責めるなど、未来の自分から見た単なる、傲慢に過ぎない。
なのに、もし。無意味とわかっていながら、その「もし」を考えてしまうのは、
罪なのだろうか。

「気をつけてな」
『ああ……まあ、心配はいらないだろうが……行ってくるよ』

彼が私と同じ道にいたのは。同じ時を過ごしたのは───この晩が、最後だった。



魔法少女リリカルなのはA’s −その想い、緋に染まる暁のように−

第七話 ウォーター・パニック?



「はあ!?連絡を忘れてたって……何をやってるんだ、きみたちは!?」

リンディ持参の通信機に向かって、クロノが怒鳴りつける。
相手はアースラに残ったアレックス達待機組メンバーだ。
なにやら、不手際でもあちらにあったのだろう。珍しくクロノが怒っている。

──とはいっても、真面目なのは彼、一人だけ。

「で、あれ何なの?」
「えー……、と。多分、ロストロギア……」
「ふうん、あれがねえ。危ないの?」
「どうやろな、あんま動いてないみたいやし。近寄らんほうがええとは思うけど」
「そう。……で、なのは」
「は、はいぃっ!?」
「あんた何こっそり、私達から離れていこうとしてるのよ」

抜き足差し足、その場を離れようとしていたところを呼び止められ、なのはがぎくりと立ち止まる。
恐る恐る彼女が振り向くと、そこにはアリサの笑顔が待っていて。
それは有無を言わさずこちらを問い詰めるときの、まさしく100万ドルの笑顔。
内心どんなお仕置きをしてやろうかと考えているときのスマイルで、目が全く笑っていない。
そのある意味恐怖の表情でちょっとこっちにこいやとばかりに上を向けた掌の人差し指でくいくいと手招きしている。
蛇に睨まれた蛙のようになったなのはに、もちろん拒否権はない。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/09(水) 13:09:23 ID:DSFshLG/<>
「なーんかああいうの昔、見た気がするんだけど、気のせいかな。説明してもらえるかしら、なのは?」
「あうぅ……えっと」

アリサが首を捻って見据える先、釣られて一同が目を向ける先には、こんもりと盛り上がった水。
いや、水であった「何か」。
時々蠢いて、低いうなり声のようなものをあげるそれは、彼女達の先ほどまで遊んでいたプール一面に、
その半凝固中のゼリーのような質感の巨躯を湛えていた。
グロテスクでありながらどこか微笑ましい、ぷるぷるとした質感は、彼女達のうち少なくとも
アリサ、なのは、すずかの三人にはどこかで見たような気がするもので。

「具体的に言えば、昔見た夢にそっくりなのよねー。変な生物にプールで水着脱がされてひっどい恥かかされる夢」
「あ、あはは……」
「しかもその夢、いつの間にかプールで眠ってたとき見た夢なのよねー、不思議不思議。寝た覚えなんてなかったのに」
「それってまさか、ジュエルシー……」
「わー!!わー!!フェイトちゃんストップ!!なんでもない、なんでもないから!!」

駄目だ、知られたら絶対、怒られる。
なのはとしては以前魔法のことを打ち明けたときに、うっかり言うのを忘れていただけなのだけれど。
その後思い出して、当時ただのフェレットとして彼女達が脱がされるところをを見ていたユーノのこともあり、
「今更言うのもなんだしなー」と渋って黙っていたのがまずかった。
魔法のことに関して深入りはしないが隠し事もしない、というのが5人の間に決められた約束だったから、
うっかりしていたとはいえ、それを反故にしたことになるわけだ。
そして何よりアリサは、隠し事をされるのを一番嫌う。一体、何をされるかわからない。

けれど、なのはの努力も空しく。

「ふむ。やーっぱ魔法がらみだったのね、あれ……」
「えーと、ね?隠していたわけではないのですよ?ほんとだよ?」
「問答無用!!」
「そんなぁーっ!?」
「お仕置き!!ほっぺ大福もちみたいに引き伸ばしてやる!!」
「ひいいいっ!?」
「わ、ちょっとアリサ!?」
「アリサちゃん、なのはちゃん!?」
「……あはは、元気ええなー」

リンディが張ってくれた結界のおかげで周囲には身内以外いないせいか、
こんな緊急事態にもかかわらず妙に緊張感のない一同。
プールの水が変化したスライムのお化けのような生物が、
一向に襲ってくる気配がないというのもあるのだろうが。
過半数がこういった非日常に慣れきっている人間である以上、
何か変なものがその場にあるというだけでは、パニックにはなり得ないのである。
それが危害を加えるものでなければ、ああ、あるんだな、で済ませることのできる人種なのだから。

「いひゃいいひゃいいひゃい!!ごめんなひゃい、アリハひゃん、いひゃいってばはぁー!!」
「簡単に解放するかー!!この、この、このー!!あのエロ生物に、散々な目に合わされたんだからねーっ!!」
「ひやあああああっ!!ひんはひてなひでたふけてよほーっ!!」
「ごめんなのは、なんて言ってるかわかんないから」
「『みんなみてないで助けてよ』、かな?」
「おおー、すずかちゃんようわかったなぁ」

押し倒されて頬の両サイドを、これでもかと強く引っ張られなのはの顔が変形する。
なのはの悲鳴──といっても、命の危険などとは無縁の、非常に能天気な悲鳴──が木霊する中、
プールに陣取るゲル状生物は、たまにわずかの触手を空中でうねらせるだけで、全く自分から動く気配がない。
実に和み系の光景が、そこにはあった。──わけのわからん巨大生物がいる以外は。
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/09(水) 13:13:01 ID:DSFshLG/<> 「ああもう!!とりあえずはやくこっちの次元にこい!!僕が帰ったら始末書だからな、君達は!!」

アリサの下でじたばたともがくなのはを尻目に、
怒鳴るだけ怒鳴ったクロノが通信機の通話を終えて頭を抱えていた。
パニックにはならないにしても、彼らの対応はあまりにも、普段着すぎるものだった。


*     *     *


「えーっと、じゃああのロストロギアについてわかってることを説明するぞ」

魔導士&騎士一同を集めたクロノの説明は、微妙に投げやりな口調だった。

「あれはつい先日、とある次元の海底遺跡から発掘されたものらしい。魔力量は大体ジュエルシードの三倍」
「……なんか嫌なことでもあったんか?クロノくん」
「気にするな。ちょっと人のいい加減さというものを実感してるだけだ」
「さよかー」
「で、だ。なんであんなものがこんなところにあるかというとだな」

発掘チームから委託されたどこぞの杜撰な管理体制の業者船が輸送中に紛失し、
そのままにしていたものを、ようやく昨日になった段階で管理局に申告して。
また、いつまで経っても届かないのを不信に思った研究者たちが業者に問い合わせその結果、通報したのが発端。
だがしかし、連絡を受けたにも関わらず紛失場所と落下軌道からの推測で、
起動することはまずなく問題ないと判断した管理局が、怠慢な捜索をしたために発見することが出来ず、
放置されたままになったそれが虚数空間で朽ち果てることもなく、無事にこの場所に落ちてきて起動してしまったのである。

「……というわけだ」

そこまで一息に言ったクロノは、大きく溜息をついた。

「起動条件は、水。水を吸収・融合することでそれを触媒に魔力と外殻を生成して術式を行使するらしい」
「あー、なるほど。だからプールの水が全部、あんなになっちゃったんだ」

紅く腫れ上がった両頬をさすりながら、合点がいった様子で頷く。
他の面々も感心したり、あきれたり、様々な表情で彼の話を聞いている。

「ああ。こうなる前に回収できてればよかったんだが」
「……で、その杜撰な対応というのがアースラだったわけだな?」
「うっ…………」
「そりゃ、凹むよなー、艦長として。部下の不始末だもんなー」
「やめてくれ、二人とも。頼む……」

それ以上傷口に塩を塗りこむのは、もう。本当にお願いします。

「で、どうするんですか?このメンバーなら十分封印も可能だと思いますけど」

何はなくとも、とりあえず目の前にあるやっかい事を片付けてしまわないと。
せっかくのバカンスなのに、時間がもったいない。
シャマルがやさぐれているクロノに代わって、ようやく建設的な意見を出してくれた。
幸い、AAAランクを超える魔導師と騎士が、何人もこの場にいるのだ。
これならば封印にもそこまで手間取ることもなかろう。

「ああ、とりあえずは──……そうだな、前衛にヴィータとシグナム」
「了解だ」
「おう」
「後衛になのはとはやて。シャマルは全体の補助を」
「「「はい」」」
「って、ちょっと待て」
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/09(水) 13:14:20 ID:DSFshLG/<>
一同の振り分けは完了、あとはするべきことを皆するだけ。
───といったところで、シグナムが何かの欠落に気付き、踵を返そうとしたクロノを呼び止める。

「お前とテスタロッサは何をするんだ?指揮か?」
「いや、後ろのほうでのんびり一般人メンバーを護ってるよ」
「なっ……楽する気か、貴様」
「そんなわけないだろう」

気だるそうにやれやれと頭を振ってから、フェイトを呼んでクロノは言った。

「ないんだ、デバイスが」
「は───……!?」
「私もお兄ちゃんも、この休暇にあわせてバルディッシュとS2Uとデュランダル、オーバーホールに出しちゃってまして……」
「なるほど……それでは、さすがにな」
「やってやれなくもないが、今回は僕とフェイトは戦力外だ。すまないが指揮はシグナム、君に任す」
「ごめんなさい」

揃って頭を下げる、ハラオウン兄妹。
そういう事情があるというのなら、仕方あるまい。

「わかった。なら、任されよう」
「助かる。……まあ、このメンバーで苦戦することもまずないだろうが、一応な」

既にプールサイドではバリアジャケットと騎士甲冑に身を包んだ一同が、布陣を済ませてスタンバイしている。

「では、行ってくる」
「ああ、気をつけてな。…………ちっ、僕も思い切り暴れたい気分だったんだが」
「もう、お兄ちゃん。不謹慎だよ。普段そういうこと絶対言わないくせに……」

遠ざかっていく二人の声を背に、シグナムもレヴァンティンを起動し、甲冑を身に纏う。
クロノの言の最後のほうは、聞こえなかったことにした。

もっとも、彼女自身今は、無性に暴れたい衝動に駆られていた。

……ロストロギアなら、最終的に破壊せずに封印せねばならぬことさえ気をつけていればいい。
戦うのは、全力で問題ない。ならばおもいきり、いくとしよう。
破壊許可が出ていれば、もっと単純なのだが。

そんな物騒なことを考えながら、彼女は剣を鞘から引き抜いた。
今の彼女に目の前の対象は、心の中のもやもやを発散するための道具としか見えていなかった。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/09(水) 13:20:30 ID:DSFshLG/<> シリアス展開を書いてて耐え切れなくなったのでこんな話になってしまいました。
いいんだ、夏だし。夏だから。夏だもの。
アリサの言ってることがわからない人は無印のSS01を参照してください。
今回のゲル状触手生物は見た目
「透明でなんかぷるぷるしてるちょっとおいしそうな動かないビオランテ」と思ってもらえれば。

>>4の422氏
スレ立て乙です。

>>6スレ480氏
埋め立て乙です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/09(水) 20:37:29 ID:dtO8vDo0<> 獣話を待ち焦がれてる俺が居るのだが、まだ来ないのかw <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/08/09(水) 21:26:15 ID:8KTiT1vf<> スレたて乙です

>>640
触手と聞いちゃあ、黙ってらんねぇなぁ! <> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:46:46 ID:/5hEfoZ7<>
よし、なんとか出来たw
っつか、フェレットの交尾なんてググっても出てこねぇよ!!
あぁ、全然獣っぽくねぇ… orz

いちお「変なエロ物」、という注意書きだけしておきますー。

<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:47:17 ID:/5hEfoZ7<> 「ねえユーノくん、変身する魔法ってあるの?」
 平和な午後の昼下がり。唐突になのはが僕にそんなことを言い出した。
「え? なのははいつも変身してるじゃないか」
 現在の着衣を魔法で粒子レベルに変換し、記憶・保管。しかる後魔力にて形成された
防護服−バリアジャケット−を身に纏う。1ミリ秒に満たない時間でこれらをやっての
ければそれはもう立派な変身だ。
「違うの。えっとね、ユーノくんがフェレットになるみたいなの」
 ああ、そういうことか。
「あ、あれは変身というか、あの姿の方が魔力の流出を抑えられるからなんだ。なのは
やフェイトやクロノや武装隊の人達とかみたいに魔力が高ければそんな心配いらないん
だけど、僕はそこまで魔力が高くないからね、あんまり長時間本来の姿でこっちの世界
に居ると身体から自然に魔力が抜けてしまうんだよ。魔力を自分の身に留まらせるだけ
でもある意味大量の魔力が必要なんだ」
「ふーん、そうだったんだ。じゃぁ私にはユーノくんみたいな変身は無理なの?」
「ううん、必要ない、っていうだけで、なのはならできると思うよ」
 術の細かい制御は慣れが必要かもしれないけど、まぁ、なのはなら心配ないだろう。
「ほんとー! 私もフェレットになってみたい!」
「え、フェレットって…僕みたいな?」
「うんうん!」
 こくこくと頷くなのは。短いツインテールが一緒にぴこぴこ揺れてちょっとかわいい。
「べ、別にフェレットにこだわる必要はないと思うんだけど…」
「えー、だってユーノくんのフェレット姿ってとってもかわいいんだもん、私もなって
みたいよー」
 そ、そうかなぁ。別に僕もこだわってこの姿になったわけじゃないんだけど…まぁ、
なのはがそうしたいなら、いいか。
「わかった。じゃぁ同じフェレットなら術式もなのはに合わせてもそんなに変わらない
から、今から教えるね」
「はーい、わかりました、先生ー。えへへ」

 この軽い一言で始まった出来事は2人にとって思いがけない…いや、そんなものじゃ
言い表せない。
 2人にとって、忘れることのできない、大切な、とてもとても大切な出来事になった…。



   魔法少女リリカルなのは  〜 Miracle Change 〜
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:48:08 ID:/5hEfoZ7<>
 〜  〜  〜  〜  〜

「…と、呪文はそんなところかな」
「ふんふん、なるほど」
 なのはの部屋で2人ならんでベッドに腰掛けて(僕はフェレットでなく本来の姿で)
なのはに呪文を教える。
 ふと気づいたけど、こうやってなのはの部屋で人間形態で並んで座るなんて…初めて
だよな…いつもと違う雰囲気だからかな、なんかどきどきするな…こんな近くになのは
の顔があるなんて…
「じ、じゃぁ一緒にやってみよう。僕に続いて呪文を詠唱してみて。慣れれば言葉に出
さなくても変身できると思うけど、初めてだから口に出したほうがいいと思うから」
 もやもやしたものを吹っ切るように僕は。
「うんっ。わかった、やってみるねー。えへへ、楽しみ〜」
 …そ、そんなに楽しみなのかなぁ、普段のなのはの方がもっとすごいことやってると
思うんだけどなぁ…

「じゃ、いくよ…」
「うんっ!」

 初めて会ったときのように僕の呪文の後になのはが続き、僕となのはの身体が魔法の
光に包まれる。
 慣れている僕の方が先に変身を終え、なのはの居た方向に視線を向けると、ピンク色
の魔力光がまさに収束しようとしているところ。
 がんばれ、と心の中で思う暇こそあれ、一気に光は小さくなり、その光が治まった後
には1匹の白く小さなかわいいフェレットが居た。

「わ、わ、わーーー!ね、ね、成功したんだよね?ね?」
「うん、バッチリだよ。流石なのはだね」

 輝く赤いくりくりとした大きな瞳。毛並みの揃った白い毛で覆われた身体。僕よりも
若干スマートな体系。
 なのはがもしフェレットだったらこんな感じかなー、と、以前ふと思ったこともあっ
たけど、想像してたより全然かわいい。やっぱり元の素材がいいと身体変形の魔法にも
影響するんだなぁ。どんな格好してたって、たとえそれが本来の姿でなくたって、うん、
やっぱりなのははかわいいや。なんか改めてなのはのこと好きになっちゃったかもしれ
ないかな。
 …なーんて、面と向かって言えないんじゃ…ダメ、だよな、はは、情けないや。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:48:53 ID:/5hEfoZ7<>
「どう?見た目おかしくないかな?ちゃんと変身できてる?」

 なのははその場でくるくる回ったり後ろ足で立って背中やお腹を覗き込んだり。
「うん、白くて綺麗で、すっごくかわいいよ、なのは」
 別に意識はしなかったけど、ついさっきまでかわいいなぁ、なんて思ってたから、そ
のまま言葉が出ちゃった。ちょっと表現がストレートすぎたらしい、なのははびくっと
顔をこちらに向けると、そのまま照れたようにうつむいてしまった。
 いや、実際頬が少し赤らんだところを見ると本当に照れていたのかもしれない。
 そ、そんな対応されると…なんだか僕も…
「あ、あの、え、えっと、その…」
「あ、いや、そ、その、えーと、か、かわいい「フェレット」に見えるよ、うん」
「…あ…う、うんっ、ありがとうっ、ユーノくんっ!えへへっ」

 ちょっと赤らんだままの頬で、なのはは小首をかしげるようににっこり笑う。
 フェレット同士だからだろうか、そんな表情が読み取れるのは。

「うわー、天井たかーーい。わわー、ユーノくん、いつもこんな視点だったんだねー」
 我に返ったらしいなのはは早速違う世界に感動しているらしい。
「わーーーーーい、お部屋ひろーーーーーーーーーい♪」
 ぱたぱたと四足で走り回ったり、
「あー、前に無くしたと思ってた消しゴムがこんなとこにー。わーい、よかったー」
 普段入れない机と壁の隙間に滑り込んでみたり、
「えいっっ!!うわー、すごーい!こんなに高く飛べたの初めてーーー」
 床からベットに飛び上がってみたり、
「うわわわ、携帯電話すーごいおっきーい。う〜〜〜ん…ふわぁ、だめぇー開かな〜い」
 違う環境に驚き喜んでみたりと、なかなかに楽しそうだ。
 よかった、なのはが喜んでくれたのなら教えた甲斐があったな。
 術の制御も問題なさそうだし、この辺は流石なのはと言ったところかな。まぁ、変身
魔法は魔法の流出を抑えるものだし、魔法制御もそんなに難しくないから尚更かな。

「ねっ、ユーノくん、ユーノくんっ」
「ん?」
 と、なのはに呼ばれるときのいつもの癖で無意識に上を向いてしまっていた。無論そ
こから見えるのは天井と電灯だけで。いけない、いけない、と視線を降ろすと目の前に
真っ白い姿のなのは。
 ちょっとばかりはぁはぁ言ってるみたいだ。言い忘れてたけど四足で動くのってかな
りの全身運動だから慣れてないなのはにはちょっと疲れたかな?まぁ、いい運動、程度
だとは思うけど。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:51:58 ID:/5hEfoZ7<>
「ありがと、急に我侭言ったのに聞いてくれて。すっごく楽しいね、これ」
 そう言って微笑むなのは。かわいすぎるくらいにかわいい。
 僕の胸がその笑顔でどきんと高鳴る。やっぱり僕、なのはのことが好きなんだな、と
改めて思ってしまう。今のなのははフェレットだけど、そんなこと関係ないみたいだ。
姿形でなく、「なのは」が好きなんだ、っていうことに改めて気付いてなんだかちょっ
と頬が熱い感じ。
「どういたしまして。そうだ、せっかくだから外に散歩に行こうか」なーんて照れ隠し
と…その、ちょっとしたデートの誘いも含めてなのはにそう返そうとしたけど…

「うっ…」

 という呻きと小さな身じろぎに僕の言葉は詰まる。

「ど、どうしたの?どこか痛い?」
「あ、う、うん、だ、大丈夫、な、なんでも…ないから…」

 という言葉とは裏腹に、なんだかもじもじと身体を揺するなのは。怪我をしてるよう
には…見えないけど、なんだか様子がおかしい。お腹のあたりに視線を這わせたりして
る。どこか痒いのかな?

 別段、悪気なんかなかった。まだフェレットの身体に慣れてないだろうから毛繕いと
かよくわからないだろうからかわりにちょっとやってあげようか、なんて考えで、本当
にただそれだけで、いや、というか、なのはのために何かしてあげたくて。

「このあたり?」

 そう言ってなのはの下腹部に潜り込み、それのもう少し下の部分に鼻を突き当て、舌
を這わせ…あ、なんだかちょっと…いい匂いが…
「ひっ!!ひゃぁあああああああああああぁ!!!!!」


 どがぁっ!!!!!


 舌を這わせた瞬間。
 叫び声と共に、なのはの前足が僕の身体を突き飛ばした。
「あぶしっ!!!」
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:52:31 ID:/5hEfoZ7<>
 ものっすごい力で僕の身体は吹き飛ばされ、ごろごろ転がってベッドのヘリに頭を打
ち付けてしまう。
 うう…痛い。
 ぐわんぐわんと揺れる頭で、そういえばさっき舐めた所は人間で言うなら下腹部…と
言うよりは…むしろ股間…というか…その…秘めたる大事な部分…というか…
「うっ…な、なのは、ご、ごめん、わ、わざとじゃなくて…その…」
(蹴られた以外の理由も手伝って)少し出血してるハナを押さえながら、とりあえず誤
らないと、となのはに声をかける。

「……………」

 あれ?
 反応が、ない。
 う…まずい…もしかして相当怒って…る?…

 と、恐る恐る遠巻きになのはを覗き込むと、

「ぅぅ…はふぅ……ぅん…」

 さっきよりも明らかに呼吸の乱れている、よく見ると熱っぽそうにだるげな表情をし
たなのはがいた。どこか具合でも悪くなったのか!

「なのはっ!?」

 慌てて駆け寄ろうとしたが、不意に違和感に気付いた。

「はっ、はぁっ、ふぅぅっ…」

 身体をよじり、確かに苦しそうな声を上げてはいる…ただ…ただ何かそれだけではな
いような…
 具合が悪そうに見えはするが、魔力制御自体は乱れていない、一体何が、と思う間も
なく、自分にも「何か」の兆候が現れた。

 なのはの声…いや、いまなら分かる、これは…
 …これは「喘ぎ声」だ…
 そしていつの間にか部屋に充満しつつあるこの不思議な、いや、身体の奥底の「何か」
を引き出そうとする、この匂い…
 その声と匂いで、僕の身体の「とある部分」が熱さを帯びてくる。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:53:04 ID:/5hEfoZ7<>
「ゆ…ゆぅの…くぅん…な、なに…なんなのこれぇ…熱いよぉ…」
 大きな瞳をうるうると潤ませ、頬を赤く染め、おぼつかない足取りでゆっくりとなのは
が近づいてくる。
「熱いよぉ…ゆ、ユーノくんに舐められたところが…なんだかすごく熱いよぉ…むずむ
ずするよぉ…ど、どうにかしてぇユーノくん…」
 理性で堪え切れなくなったのだろうなのはが、ゆっくりと近づいてくる。ダメだ、ぼ、
僕も我慢できなくなってきた…
「な、なのは、き、来ちゃ…ダメ、だ…」

 近づいてくるなのはを言葉で拒みつつ、身体はなのはの方に自分から歩み寄る。

 なのはは、もう…目の前まで迫っていた。
「ユ、ユーノ…く、ん…」
 僕も…動き出した足を止めることが、できない…
「な、なの、は…」
 もう、目と鼻の、いや、僕らはいまフェレットだから僕の鼻先になのはの鼻がある。
 僕を見つめるなのはの赤い瞳が潤み、高揚した頬の熱を受けたかのような熱い吐息が
僕の鼻にかかる。
「ユー、ノ…くん、なに、なんなの、これぇ…」
 泣きそうな震えた声、でもそんな声すらも…僕の胸の内の「何か」を激しく突き上げる。

 知識としては…知っている…つもりだったけど…いまの、僕となのはは…その、子孫
を確実に残すために動物達が必然と身につけた…いわゆる、その、生殖行為というか、
その、なのは達の言葉で言うならセ、セックス…だったっけ…で、でもそんなのなのは
は知らないだろうし、というか言えるわけも…じゃなくて、その、動物達が繁殖をより
確実にするために普段より性欲を高める時期があって、そのわかりやすく言うと発情期、
というやつで、僕となのはは今まさにその状態になってしまっているらしく…状態変化
魔法がこんなことまで再現してしまうなんて一体どういうことなんだ…姿形は変わって
もあくまでベースは人間なんだから、発情期だなんてあるはずないのに……って…え?
発…情期…………
 たしかこのフェレットっていう動物は…特にメスは一旦発情期に入ると、なんとか、
っていう難しい名前のホルモンが分泌されて排卵…ええと、この場合は…その…えと、
セ、セックスしない限りそれが分泌され続けて…最悪死にも至る…んだった…よな…

 まさか…なのはも…姿を変えたなのはも…そうだ…っていう保障はないけど…逆の
保障もないわけで…
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:54:01 ID:/5hEfoZ7<>
 僕ももう既に猛り狂っているのは内側だけじゃなくて、その、表面的な変化も見事
に現れてるわけで…その…さっきから破裂しないか、ってくらいにガチガチで痛いん
だけど…じんじんずきずきして……これ…なのはの中に入れたらものすごく…気持ち
いいんだろうなぁ……なのはの方は…その…セックスしないと身体が危険…僕もその
この「これ」を治めるためには…セックスしないと…いけないよね…お互い…利害は
一致………

 って!!!!!!!!!だだだだ!!!だめだめだめだめだめ!!!!!!
 な、何考えてるんだ僕はっ!!!!!!!!!!!!
 だめだ、ばかっ!こ、こういうのはち、ちゃんと双方同意の上で…ち、ちゃんと恋人
同士になってからでないと…そ、そんな一時の都合だけで……

「ユーノくぅん、どうしよう…さっきユーノくんに、な、舐められたところが、熱いのぉ、
じゅくじゅくしてなんだかおしっこみたいなのが流れてきてるのぉ、やぁ、ああぁぁ…」

 がくっ、と、さらに一歩踏み出そうとしたなのはの前足がくず折れる。
 その無防備な後頭部から胴体に流れる綺麗なラインと、なのはの…たぶんあそこから
漂ってくる…その、僕の「何か」をたぎらせる匂いが…


 も、もう…ぼ、僕もおおおぉぉっ!!!!!!!!!!!!!!


「なのはぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!!!!」
「ふぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!」

 ぶちぃっ、と僕の中で何かが弾ける音がした。がぶ、と、そんな部分ですら見る者の
僕を虜にするなのはの首筋に食らいつき(い、一応ぎりぎりのところで牙に力を込める
のだけは押しとどまった…と思う…)、そのまま勢いにまかせてなのはを引きずる。

「あっ!ああっ、やっ、いたっ、ユ、ユーノくん、やめっ、やめてぇー!!」
「ふごはーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 多分、なのは、と叫んだ…と思うんけど、もう僕自身何がなんだかわからない、付き
動かれる衝動に身を任せ、ただもう闇雲になのはを引きずり回す。
 さっきはじめて変身したばかりで、まだ十分にこの身体に慣れていないであろう、加
えて(おそらく)足にきているであろうなのはは首根っこを押さえつけられたまま引き
ずられるという不自然極まりない状態で、慣れない全力疾走を強いられる。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:54:48 ID:/5hEfoZ7<>
 すぐになのはの足はもつれ、時折、がくっと崩れるなのはを、それでも僕は、そうし
なければいけないかのように、速度を緩めることなく、引き回し続ける。
「やあぁーっ。お、お願い、ユーノくん、も、もうやっ、やめてぇーーーーーー!!」
「ふむはぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 10分近くはそうしていただろうか、正確な時間なんてわからないけど。ようやく僕
が動きを止めると、なのははべたり、と床に這いつくばる。
「はぁっ、はっ、はぁっ、はぁ、はっ、くはっ、はっはぁっはぁっはぁっ…」
 息も絶え絶えに、もうなのはは満足に喋ることもできずに、ただ喘いでいる。勿論、
それが快楽の喘ぎなどではない…のは明確なのに…そんな声すら、僕には…

 なのは…つらいんだね…いま…楽にしてあげるよ…僕にしか…で、できない…よね?
 だからこれはいけないことじゃないんだよね…そうだよね、僕はなのはが好きだから、
こういうことをしても許されるんだよね…待ってて、なのは、今助けてあげるよ…

 噛んだところ、首筋が少し赤い。痛かったかい、なのは…僕はもう我慢できないよ…
だから…

「なのは…いいよね?」

「はっ、はあっ、え…ふぁぁっ!!!!!!!」

 ぺろ、と赤い首筋をいたわる様に舐めてあげる。ついで耳の後ろ、頭の上に次々と、
なのはの頭に舌を這わせる。

「ふむぅっ!はふっ、やはっ、ユっ、ユーノ…くふんっ!!な、なにっ?!」
「感じてるんだね、なのは、すごくかわいいよ、もっと声聞かせて…」
「へっ!?ええっ、何っ…ひぃはっ!!あっ!ああーーーーーーっ!!!!!!!!」

 がっ、となのはの小さく可愛い耳に牙を立てる。びくびくびくっ、となのはの身体が
震え、お尻を高く突き出してくる。
 あぁ、なのはも…欲しいんだね。わかったよ。今…気持ちよくしてあげるからね…

「じゃぁ、いくよ、なのは…」
「へぅっ?な、なにっ?」

 なのはに覆いかぶさるようにして、突き上げたなのはのお尻に僕の股間を持ってくる。
ぐにゅ、と、僕のそれがなのはの股間に圧迫感を与える。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:55:33 ID:/5hEfoZ7<>
「ふひゃぅっ!!!!!!!!な、なにっ!な、何かお尻っ、んんっあっ!!」

 何も考えず、考えられず、
 ただ「そこ」に向けて、
 僕は…

 ぐずぶっ!!!!!!!!!!

「ぐっがはぁっ!うっうわあああああああああああぁぁぁっ!!!!!!!!!」

「ああああああっ!!なのはっ!なのはぁっ!!!好きだぁっ!なのはっっ!!!!!」

「いたぁぁぁっ!痛い痛い痛い痛いぃーーーーーー!!やっ、やめっ!痛ぁーーー!!」
 突き動かす。
 何も考えず。
 ただなのはの声と、なのはの中の熱さと、僕を握り絞るその感触を求めて、
 僕は、自分でも信じられないくらいの速さで腰を振り続ける。
「なのはっ!!なのはなのはぁ!きっ、気持ちいいよっ!なのはの中すごい気持ちいい
よっ!!!ああああぁぁ、どんどん腰が動くよぉ!止まらないよぉ、もっとしてもいい
よね?なのはもして欲しいよねっ!!!なのはーーーーーーー!!!!」
「痛っ!痛いよぉ!!!!はぁんっ、はぐぅっ!!!うぁっ!あぁんっ!あっ!!」
「ああ、なのは、わかるよ。痛いけど気持ちいいんだね。僕も気持ちいいよ。なのはの
中、最高だよ。もっと気持ちよくなって、なのは。僕でもっと気持ちよくなって!!」
 言い放ち、衝動にまかせるがままだった腰の動きに、自らの意思と加える。
「うあぁぁぁぁっ!!!!ユーノくん、だめぇっ!!いたっ!!ああっ!はぁぁっ!!」
 比較にならない速度と強さになのはが悲鳴を上げる。僕となのはが繋がっている部分
からも何かが、多分なのはの血と愛液と、そして僕から滲み出したものも混じって、そ
れが噴き出している。
 大量のぬめる液が抽送を信じられない速さに高めている。僕の興奮も、そしてきっと
なのはも同じくらいに高ぶっているはず。
 そうだよね、なのは。だって僕はこんなになのはのこと好きなんだもん、今までより
ずっとずっとなのはのことが好きになったよ。なのはだってきっとそうだよね。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:56:09 ID:/5hEfoZ7<>
「はぁぁんっ!!ゆ、ユーノくん、ユーノくん、ユーノくぅぅん!なんなのぉ、あぁっ
なんなのぉ!なんなのこれぇっ!!」
「なのはぁ、なのはも感じるよね、僕がなのはの中に入ってるのわかるよね。ああっ、
なのはっ、気持ちいいよ、なのはぁ、すごいよぉ!!」
「やっ、はぁんっ!ゆっ、ユーノくんなの?!ユーノくんが中に入ってるの?!これっ!
わ、私の中に入ってるの?!あああっ、んはぁっ!!」
「そうだよ、僕だよ!なのはの中に、ぼ、僕がいるんだよ!!きっ、気持ちいいよね?
気持ちいいよね?なのは!!」
「わ、わかんないよぉ、い、いっぱいで、わ、私の中がユーノくんでいっぱいで、あんっ、
わ、わかんないよぉーーーーーーー!!うあぁーーーーっ!!!」

 ただ力の限り、全身の力を下半身を動かす力に変えて、僕はなのはを攻め続ける。

「ああああーー、お、おっきぃ、おっきぃよぉ、ユーノくんのおっきぃのぉ!!!!
あんっ、はんっ!!な、なのはの中、ユーノくんので、ひ、広がってるよぉ。なのはの
中、ユーノくんの形に広がってるのぉーーーー!!」

 そしてその終わりも唐突にやってくる。
 こみ上げ続ける衝動の中にひときわ大きいものが僕の「それ」の先端にじわじわと這
い登ってくる。

「ああああ、なのはぁっ!くるっ!くるよぉ!!なのはの中に出すよぉ!!なのはぁっ、
僕を受け入れて、僕だけのものになってーーーーー!!!」
「あんっ!、な、なに?!何が来るの?ああんっ、はんっ!わ、私どうなるのっ?!」
「僕のものになるんだよ、なのはっ!僕がっ、僕がなのはぁーーーーーーーー!!!」
「ユ、ユーノくんの?!わたしっ、ユーノくんのっ?!?!ああああーーーっ!!!」
「出るよっ!出るよなのはっ!!出るよぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!」

 ぶじゅぅっっ!、と。なのはを突き上げ続ける動きの中で、その腰の動きも勢いも
一切衰えることなく。僕の中から僕のなのはを想う気持ちが形となってなのはの中に
噴き出す。

「「うあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」」
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:57:45 ID:/5hEfoZ7<>
 二人の悲鳴のような声がぴったり重なって部屋の中にこだまする。
 力の全てをその噴出に持っていかれるかのように、僕の全身から、僕の全てがその
流れに乗り、なのはの中へ流れ込む。足も身体を支えることができなくなったのか、
がくがくと震えだす。
 長く長く続くその声が終わると、僕もなのはも力尽き、がくっと崩れ落ちる。

 お互いの荒い息の中、なのはの身体がびくんびくんと震える。なのはに覆いかぶさっ
たまま、その振動をおなかで感じていた僕は、いや、僕の…それは、そんな些細な刺激
にまたしても力を取り戻し、なのはの中でむくむくと鎌首をもたげる。

「あっ!?ああっ!?ユ、ユーノくんっ!ユーノくんのが、ま、また私の中でっ!?」
「そうだよ、な、なのはがあんまりにもかわいいから、僕のこれが、ま、まだなのはの
事を欲しいって!うあぁっ!!」

 ほんの数秒前まで動くことすら、と思っていたのに、なのはの感触であっさりと回復
した僕はくず折れた体勢のままのなのはに向け、再び腰を動かし始める。

「ああんっ!ま、またっ!またくるのっ!?またなのはの中、広げちゃうの!?あんっ!」
「なのはっ!!!好きだぁっ!!!なのは好きだぁっ!!僕のっ!僕のなのはぁっ!!」
 床に這いつくばるなのはに対し、文字通り獣のごとくめちゃめちゃになのはの中を蹂
躙する。必死で起き上がろうとするなのはを潰しては突き上げ、耳を噛んでは突き上げ、
前足でなのはの腰だけを引き上げ。お尻を高く突き出させ、やはり突き上げる。
「ああーっ、はげっ、激しっ、そっ、そんっ!うあぁんっ!ユ、ユーノくんのが、私の
中っ!掻き回っ!!!ああんっ!!!きっ、気持ちいいの!?これっ!?気持ちいいの?」
「そ、そうだよ!僕がなのはを好きだから、僕のこれもなのはを気持ちよくしようとし
てるんだよ。だ、だからなのはもこれを好きになって。僕と一緒に好きになって!!!
好きだなのはぁーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
「ああーっ、す、好きっ!ユーノくんもこれも好きっ!!好きいぃっ!だ、だから、も、
もっとぉ!!もっとなのはのこと気持ちよくしてぇっ!!!ふあぁぁんっ!こ、これ、
す、好きぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」
「ああっ!僕だって好きだよぉ!なのはも、なのはの中も大好きだよぉ!僕のなのはっ
僕だけのなのはだぁーーーーーーーーーーっ!!!」
「ああああぁーー!、き、気持ちいぃーーー!!ユーノくん、好きぃーーーーっ!!」

 お互いがお互いの声に後押しされ、僕となのははどんどん深く強く繋がりあう。
 もう離れない。離れたくない。離さない。
 このまま世界が終わったっていい。なのはと一緒なら。なのはと一緒に居れるなら。
なのはと愛し合えるのなら。

 いつ果てるとも無く。僕となのはは、ただただお互いを求め続けた………。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:58:34 ID:/5hEfoZ7<>
〜 3 Hours Later 〜

 とりあえず。

 なんとか呪縛から解放された僕達は、人の姿に戻り、なのははベッドに腰掛け、僕は
なぜか床に正座しているんだけれども…く、空気が…いや、誤らないといけないのは重々
承知しているんだけども…
 横を向いてベッドに人差し指をぐりぐりしてるなのはを見るとなんと言って誤ってい
いのか全然わからなくて、もう、どうしようも…あぁ…なんであんなことしちゃったん
だろう、僕…

「…た…った…」
「えっ?!」
 なのは?何て?き、聞こえ…
「痛かった、って言ったのっ!!!」
 うわっ!!やっぱり怒ってるっ!!って、当たり前か。
「ご、ごめん!ほんとにごめん、ま、まさかあんなことになるなんて全然知らなくて…
そ、その、と、とにかくごめん!誤って許してもらえることじゃないけど、その…」
「…初めてだったんだから…」
「え…」
 い、いや、まぁ、そ、それはそうだろうな…なのはくらいの年でもう経験済みなんて、
ふ、普通ないだろうし…
「そ、その…それについても、その…僕なんかで、ご、ごめんなさい…」
 ああ、情け無い。自分自身がとにもかくにも情け無い。もっとほかに気遣うことは言
えないのか僕は…
「…違う…よ…」
「…へっ?」
 な、何が??え?違うって?
「ユ、ユーノくんが初めてだ、っていうのは…その…べ、別に…いいの…」
「…………………へっ!?」

 い、いやまて、え?な、何?ど、どういうこと?!

「…ばかぁ…全部言わせないでよぉ…ユーノくんだったら初めてをあげてもよかった、
って言ってるの、もぅ…」
「!?!??!な、なのはっ!?ええっ!?」
「………」
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 22:59:32 ID:/5hEfoZ7<>
 なのはは押し黙ったまま続きを聞かせてくれない。でも目だけは僕の目を真っ直ぐ捕
らえている。
「え、えと、その…」

 ぼ、僕から言わないと…ダメ、だよね。当たり前だよね…

「その…ぼ、僕は…な、なのはのこと…」
「さっきは好きって言ってくれたよね?あれって…嘘?」
「う、嘘じゃないよ!!す、好きだ!なのはのことずっと前から!ずっと好きだったよ!」

 あ、

 言っちゃった…あ、いや…さっきの最中にも言ったんだ…っけ…
「……」
「……」
 なのはは…何も言わない…
 僕も…何も言えない…
 息苦しい雰囲気の中…なのははすっと立ち上がり、僕の方に一歩踏み出す。

「じゃぁ…」
「えっ」
「こ、今度は…」
 言いながらなのはは腰に手を回し、ぷつっ、とスカートのホックを外…ええぇぇっ!!!
「フェレットじゃなくて…」
 すとん、と、スカートが小さな音を立ててなのはの足元に落ちる。
「ちゃんと…」

 ピンク色のかわいいパンティが僕の方へと近づく。

 その小さな布が、持ち主の手で、両側からゆっくりと膝上まで降ろされる。
 あらわになった股間から一筋の光る糸が、下着へと繋がり、そして…ふつ、と消える。

「この姿で…して…くれる?」


        To Be Continue  NEXT Miracle
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/09(水) 23:00:42 ID:/5hEfoZ7<>
いちお前スレ456さんの文章を極力入れてはみました、まぁ、ちょい変わってしまったか
もしれないのはご容赦を…
流石に最後まで獣、ってのは無理でした(^^;)
とりあえず息抜き終了、ということで。
あ、To Be Continueなんて言ってますが、続きませんのでご注意をw



>>640さん
しまった、SS01ネタか、聴いたことないや…そうか、なかなかにえちぃ話っぽいな。
ちょっと入手してみるかw
っつか、ビオランテって、んなゴジラなw
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/10(木) 01:12:00 ID:ehV6nZfg<> >>28
乙!!
すげー、
あの原作から、ここまで文章が広がるのか。
職人さんって素敵に無敵。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/10(木) 20:25:05 ID:1S+CbdY9<> SSキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

変なネタだったけど書いて良かった(^^;

そういえば、動物なら屋外でし放題ですね。
いや、だから何と言うことはないですが。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:00:57 ID:pMVD8t1t<> 投下します。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:01:48 ID:pMVD8t1t<>  初夏。少しだけ雲のかかった空から太陽が覗く日曜日。時折網戸から吹き込むそよ風が
気持ち良い昼前のこと。
 学校も無い任務も無い珍しく暇な時間を持て余し、夜天の主改め蒼天の主八神はやては
居間のソファーに横になってぼんやりと天井を眺めていた。

「あー……なんや、たまにはこういうのも……えーなぁー……」

 小さくひと伸び。以前、一人だけだった頃は、これが普通だった。
 シグナム達が来て、静かな家が一転して騒がしくなり、暗かった空気が明るくなった。
 こうしてぼうっとする時間が減ったのは、仕方のないことだ。失って、初めてその大切
さが解る、というほどのものではないけれど。

「まーいーすーたー」

 そういえば。今年の春、この家の住人がひとり増えた。と言ってもシャマルやシグナム
が産んだわけじゃなくて。

「……そういうんも、この先あるんかなぁ……」

 果たして産めるのかどうか。いや、それ以前に相手ができるのかとか色々、悩みは尽き
ない。相手が出来たら出来たで少し寂しくなるのかなとか。……まあそういう問題はひと
まず置いておいて。

 ……新しく増えた家族。

「まいすたー、今日はおそとがお天気ですよっ!
 こんなところでおひるねしてないでおさんぽしましょー!」
「おー、リインは今日もお元気さんやねー」
「えっへん、リインはいつもお元気さんなのです」

 ――リインフォース。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:02:27 ID:pMVD8t1t<>  リインフォース。正式名称リインフォースU。リインフォース……紛らわしいのでリイ
ンフォースUの事はリインと略そうと思う。リインフォースの欠片をベースにして作られ
た融合型デバイス、である。実体化した外見はリインフォースの面影を残し、そのまま子
供にしたような容貌。以前に比べると、髪の色と瞳の色だけが違った。
 蒼天の魔導書。その名に相応しい、鮮やかな空色の髪。それよりもやや深い、私とよく
似た青い瞳。

「でもなーリイン、今日は私お疲れでおねむモードやねん。ちょお寝かせて」
「それならリイン、マッサージするです!」

 あっさり路線変更するリイン。構って欲しいだけなのかもしれない。それも仕方ないか


この子は生まれたばかりで。それなのに最近は仕事ばかりで遊んでやる暇もなかった。

「んー……」
「まいすたー?」

 半覚醒状態の体を無理やり起こす。ここで構ってやれないでは主の資格はない。……よ
うな気がする。要するに私が遊んでやりたいだけだ。

「よっしゃ、気力回復完了や。お散歩いこか」
「……まいすたー、リインは大丈夫ですよ?
 おねむなら一緒におねむでもいいのです」
「子供は遠慮なんかせんでええの。
 それに、せっかく起きたんやし私はリインと遊びたいな」

 心配そうに瞳を少し潤ませて、見上げてくるリイン。

「ほんとに、ほんとにいいですか?」
「もちろんや」

 その答えに、パッと笑顔が広がった。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:03:05 ID:EzP9c9nZ<>  空は晴天。いつの間にか雲はどこかに消えたらしい。直射日光が肌を焼く。……正直、
暑い。リインは元気に走り回っている。デバイスは暑さを感じないのだろうか。ありえる
話だ。何せリインフォースとの別れの時、真冬なのにも関わらず彼女はタンクトップ(?


姿だった。

「まーいすたーっ! こっちこっちですー!」
「あーこりゃこりゃリインやー」

 呼びかけると素直に走ってまた戻ってくる。可愛らしいんだけれど、見てるだけで暑い



「何ですか?」
「お外では私のことなんて呼ぶんやった?」
「……おそとでは、お姉ちゃんでした」
「よろしい」
「えへへ」

 なでなでしてやる。なでなで。なでなで。触り心地がいいので何度も撫でてしまう。

「お姉ちゃん、大好きですー」

 そのまま、抱きついてくる。ただでさえおめかししているのにその攻撃はヤバイ。ノッ
クアウト寸前だ。ついつい口元がニヤけてしまうのは仕方ないことだと思う。

「あーもーリインはかわええなあっ!」
「お、お姉ちゃん苦しいですっ」
「よっしゃ、今日はリインのしたいこと、なんでも叶えたろ! 何したい?」

 その言葉に、ちょっと考えるように腕を組む。

「うーん、うーん……リイン、公園いきたいです」
「なんや、そんなんでええんか?」
「お姉ちゃんと一緒にいられるだけで、リインは幸せなのです」

 今日はもう、本当にリインが良い子だってことを痛感する。

「そか。私も、リインといるんは幸せやで」
「お姉ちゃんもですか?」
「そやー。リインは可愛えし、ええ子やからな。ほんわかした気持ちになる」
「リインも、お姉ちゃんといるとほわほわします」
「一緒やね」
「いっしょです」

 示し合わせたように顔を合わせて微笑みあった。足はすでに公園へ向いている。

「公園行ったら何して遊ぼか」
「リイン、ブランコのりたいです」
「そんなら私が背中押したろーなー」
「わーいです」

 公園に着き、リインは一直線にブランコに向かう。背中を押してあげて楽しんだ。
 しばらくブランコで遊ぶと今度は砂場遊び。泥だらけになって一緒になってはしゃぐ。
 ジャングルジムで遊んだり、シーソーで遊んだり、スプリングのお馬さんに乗ったり。
 そうして、気が付けば日が暮れていた。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:04:08 ID:EzP9c9nZ<>  空が赤く染まり始め、夕食の準備をしていないことに気付く。リインの保護者のような
つもりでいたが、気付けば自分も一緒になって楽しんでいたようだ。

「リイン、そろそろ帰らな」

 そう言うと、リインは一瞬だけ悲しそうな顔をして。私の胸に飛び込んできた。

「……まだ、帰りたない?」

 首を横に振る。否定。

「ぎゅー、って、してほしいです」

 その言葉に従って、ぎゅう、と優しく抱きしめた。一緒に、頭も撫でてやる。

「あんまり構ってあげられんで、ごめんな?」
「……いいです。まいすたーは、いそがしいですから、しょうがないです」
「それでも、ごめんな」
「……はいです」

 最後にひと撫で。手を放す。

「ほな、帰ろか」
「あっ、まい、……お姉ちゃん」
「んー?」
「お手てつないでほしいです」
「えーよー」
「えへへー」

 夕日が照らす道。手を繋いで帰る。リインの顔はただただ嬉しそうで。
 今日、付き合ってあげて本当に正解だったと、自分を褒めてあげたい。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:05:05 ID:EzP9c9nZ<> 「あっ、たいへんです!」
「ど、どないした?」
「お夕飯のじゅんびしてないです」
「なんやそんなことか」

 確かに、大変ではあるけれど。してなかったものは仕方ない。服は泥だらけ。今から着
替えて買い物に行くにはちょっと遅すぎる。

「たまには出前とるんも悪ないで」
「でまえ、ですか?」
「そいやリインは出前初めてやったな」
「はいです」
「世の中には料理をお客さんに食べさせるお店っちうんがあってな。
 そのお店の人に料理を家まで届けてもらうことを出前いうんや」
「べんりですねー」
「便利やねー。でもなー、自分で作るよりも、ちょう……お金がかかんねんな」
「ぜいたくは敵です」
「その通りや。えらいなーリイン、良くそんなん知ってたなー」
「えへへー」

 泥だらけで家に帰って、シグナムに心配されるのもいいだろう。シャマルに怒られるの
もたまにはいい。ヴィータがリインにやきもちを妬くかもしれないけど、それはちゃんと
言って聞かせてあげよう。

 家族といることの幸せ。

「お姉ちゃん」
「んー?」

 それを、この子にも知ってほしいから。

「大好きです」

 ――リインフォース。今はもういない、穏やかな風は。

「……私も、大好きやで」

 ここで、また。小さいけれど。

「いっしょです」
「うん、いっしょやね」

 だけど確かに優しく、芽吹いていて。
 私に祝福を運んできてくれている。 <> リインといっしょ<>sage<>2006/08/11(金) 00:07:44 ID:EzP9c9nZ<> 色々ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。
稚拙ではありますが、精一杯の力を込めて書かせていただきました。
読んでいただければ幸いです。

お付き合い頂きありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 00:50:10 ID:dE/+FDMQ<> GJ!
リインかわいすぎ(*´д`*) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 00:53:15 ID:8GiDSI1i<> はやての関西弁の暖かみになんともほのぼの。

GJ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 02:13:36 ID:yiknU8DL<> うむうむうむ、読んでいるだけで、気持ちが暖かくなる姉妹ですなぁ。
リインフォースの絶妙な登場もグッドです。
グッジョブですよー。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 02:55:20 ID:fZH1VQ8n<> >>37
萌えと感動でとにかくGJ
是非これからもリインのSS書いてください。
いやマジで読みたいお願いします。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 16:28:25 ID:WbtcgaFG<> ユーノなのは 精神入れ替わりネタはありましたっけ。
あ、第3期オメー <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 18:02:23 ID:5tKtLPKF<> >>42
549氏が書いてましたよ。保管庫にあるかと>入れ替わり物

>第3期
お、はやて家OVAだけではなく3期も決まったんですか、それはめでたい。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 18:10:57 ID:4XKuaNJO<> ところで、保管庫の整理は何時やるの?
五月以降の作品がちっとも掲載されてないんだが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 18:20:49 ID:72ZN3sg4<> [萌えニュース+]「魔法少女リリカルなのは」のTVアニメ3期放送が決定!
ttp://news19.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1155269070/
>コミケ会場で配布中のクリアファイルにて速報

まだ内容とか、何にもわからん状態。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/11(金) 18:33:18 ID:m26uPb4H<> >>42
えろえろユーノシリーズを見ると・・・。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/11(金) 21:56:56 ID:hpmuRCyv<> 「いくよっ、レイジングハート!!」
『Divine buster. Extension.』

光芒が、ゼリーの怪物目掛けて放たれる。
突き進んでいく魔力砲は、大して間もおかず、目標へと到達し───そのまま貫通する。

「ええっ!?」

バスターに貫かれたゲル状生物は、直撃弾の形に風穴を開け。
また何事もなかったかのように穴の上部から崩れ落ちるどろどろの液体が穴を塞いでいく。
まさにバスターは、貫通しただけ。ダメージは、ゼロ。
生物のそのたやすく変形する身体の成せる業だった。

「こんのおおぉっ!!」

それは、直接の打撃についても同様で。
前衛のヴィータもまた、砲撃の通用しなかったなのはと同じように、苦戦(?)を強いられている。
少なくとも振り回すグラーフアイゼンが、有効な打撃を与えられていないことだけは間違いない。
もっともヴィータのほうも一切ダメージらしいダメージを受けてはいないが。

暖簾に腕押し、という言葉がしっくりとくる相手であった。
有効なダメージが期待できるのは、残る二人だけ。

「プラズマスマッシャーやっ!!」
『はいっ!!』

蒐集行使でフェイトの雷撃を使い、相手の水分を電気分解するはやてと。

「紫電、一閃!!」

得意の炎でこれまた水分を蒸発させて勢いを削ぐ、シグナムの二人だけが、戦力と呼べる状態だった。


魔法少女リリカルなのはA’s −その想い、緋に染まる暁のように−

第八話 ウォーター・パニック!!


「あーん、もう、踏んだり蹴ったりだよー」
「どしたん、なのはちゃん?──っと、再チャージ」
『了解です』

一応無駄とわかっていながらも隣で砲撃を続けていたなのはが突如として手を止め、
がっくりと肩を落としたのを見て、はやては尋ねる。もちろん、攻撃の手は休めはしない。

「カートリッジ、ジャムっちゃった……」注:ジャムる=詰まる
『sorry,my master』
「あちゃー……。ま、しゃーないやん。あとは私らにまかしとき」
「うん、お願いねー」
「ヴィータ連れて下がっといてくれるかー。あの子もあのままやってても多分お腹空かすだけやし」
「はーい。ヴィータちゃん、いくよー」

うねうね動く触手たち──もっとも、その動きは非常に緩慢で、目障りというだけの域を
脱していないのだが──と格闘し、ムキになってグラーフアイゼンを振り回していたヴィータの首根っこを
なのはが掴み、ずるずると引き摺って後退していく。
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/11(金) 21:58:06 ID:hpmuRCyv<>
「何すんだよ、あたしはまだやれっぞ!?」
「はーいはい。これ以上やっても魔力の無駄遣いだから向こうで大人しくしてよーね、ヴィータちゃん」
「うっせーよ!!やってみねーと……」
「あんまり我侭言ってると、シャマルさんに告げ口して胸に手突っ込んで奥歯がたがた言わせてもらうよ?」
「……はい」

大人しくなったヴィータとなのはのやりとりに、なのはちゃんもヴィータの操縦がうまくなったなぁ、
なんてしみじみと頷くはやて。
本当は、そんなことしている場合ではないのだけれど。
あれはあれでいいコンビだと再認識して、一人和んでいた。

『マイスター、チャージ完了です』
「そか、んじゃいくで。……しかし、キリないなぁ」

なにせ、広大な敷地のプールの水、すべてが相手にも等しいのである。
いっそのことミストルティンで全部固めてしまおうかとも思ったが、
あちこちに既に水が飛び散ってしまっていて、そんなことをした日にはおそらく
プール全体が石になってしまうことだろう。
事件解決のために被害を広めてしまっては、本末転倒だ。
何よりそうなると被害を修復するための修復班の出動費用がはやての給料から差し引かれてしまうではないか。

「主はやて」
「あ、シグナム。おかえり」

前衛で炎を纏わせたレヴァンティンで触手と斬りあっていたシグナムが、一旦戻ってきていた。
さすがに少々息が上がっている。

「このままでは埒が開きません。なんとかコアになっているものを見つけないと……」
「せやけどなぁ」

ロストロギアはクロノから聞いた話だと、ほんの親指の爪程度の大きさの代物だ。
おまけにその周囲はゲル状に変化した半透明の魔力を帯びた水で覆われているから、
見つけにくいことこの上ない。

「リインフォース、どないや?サーチできそうか?」
『駄目です、あの内部にも身体が液体状のせいか、魔力の濃くなっている部分と弱まっている部分があって……』

どこに核があるのか、特定できない。
大した攻撃をしてくるわけでもなく、動きも鈍重で彼女達にとってはいい的ではあったが、
その点だけは面倒で、厄介な相手。

「どーしたもんかな」
「……私がもっと接近して、視認して探します。それしかないでしょう」
「大丈夫なん?確かにあの子見る限り、シグナムが捕まるような速さはないやろうけど」
「はい、ですから。念のため主はやてはここから牽制と援護をお願いします」
「んー……確かに、それしかないかなぁ。ん、わかった。気いつけてな」
「はい」

シグナムが再び前方へと戻っていくと同時に、くるりと回した剣十字の杖の先端をゲル状生物へと向ける。

「ほな、やろか。リインフォース」
『はい、マイスター』
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/11(金) 21:59:08 ID:hpmuRCyv<> *     *     *


一方の、待機組&一般人メンバーはというと。
のほほんとジュースを片手に、はやて達とゲル状生物の戦いを観戦していた。

「なーんか、苦戦してる?」
「みたい、だね。大きいし、ダメージ効きにくいし」

一般人の皆は、観客。管理局関係者たちは解説者。
ほとんど戦いというよりは害虫駆除の業者の仕事を見ているようなノリで、
二人の戦いぶりを一同は見守っている。

「シグナムの動きが悪いな。調子でも悪いのか?」
「ちょっと、悩み事があるみたい。恭也も気付いてたでしょ?」
「そうなのか?」
「……あいかわらず、この男は……。みんな気付いてたってのに」
「知らなかった」
「もう……」

冷静にその戦闘の内容を講評し、つっこみを入れられる者。

「あー、そこよ、そこ!!シグナムさん、右!!」
「アリサ、大丈夫だから。ちゃんと全部、かわしてるから」

まるで自分のことのように白熱する者。

「あ、あの白い服脱いじゃったの?」
「うん、居ても役に立たなかったし、レイジングハートはアクセルモードのままで維持してあるし」
「リンディ提督が張ってる結界もあるから、ここまで攻撃がくることなんてそうそうないですよ、すずかちゃん」

もはや、世間話に花を咲かせる者まで、様々。
いくらなんでも緊張感がなさすぎである。
時空管理局のお偉方が見た日には(もちろんこの場にも約二名、そのお偉方がいるのだが。一人はやさぐれ中、一人は元来能天気)
卒倒するか激怒して減給処分を言い渡すことだろう。

バカンス中で、おまけに大したことのない相手だということで気が緩んでしまうのは仕方ないことではある。
発端が数々の小さな下らないミスや不始末ということも、モチベーションに影響していたのであろう。

だが、彼らはあまりにも───……油断しすぎていた。
余裕と油断は、違う。
まして、最前線で戦っているのは。

今彼らの中で最も心に余裕のない、シグナムなのだから──……。
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/11(金) 21:59:52 ID:hpmuRCyv<> *     *     *


その変化は、突然にやってきた。
触手を避け、斬り捨ててコアとなっているロストロギアを探し飛び回っていたシグナムの足元が、
急激に盛り上がり眼前に巨大な壁となって立ち塞がる。

「何!?この変化は……!?」
「シグナム、あかん!!止まらんと、動かな!!」
「!?」

同時に、その水壁がぱっくりと大きな口を開け。
急激にその速度を増した触手たちがシグナムの全身にまとわりついて動きを拘束する。

「ぐ……!?しまった!?」

引き千切ろうと試みるも、ゲル状に思われた触手は引っ張れば引っ張るほどゴムのように伸縮してしまう。
際限なく伸びて、とても彼女一人の力では引き千切ることは不可能であった。
はやてが援護射撃でいくつかを切断するも、次から次へと生えてくる触手の数にまるで追いつかない。

「ぐうぅっ……駄目、か……!!」

試しに握りつぶしても、べっとりと掌に気持ちの悪いスライムのような質感の液体が残るだけ。
すぐにプールの水から水分の供給を受け、元の太さに戻ってしまう。

「シグナム、前!!」

状況の変化に慌てて戦闘態勢を整えたなのはにひっぱられながら、ヴィータが叫ぶ。

「!?」

壁が大きな口を開けたまま、ゆっくりと迫ってきていた。
まるで自身の中へと迷い込んできた昆虫を捕食する、食虫植物のように、ゆっくりと確実に。

(しまった、こいつははじめから、これを狙っていたのか───……!!)

あくまでも緩慢な動きで、シグナム達を捕まえようとしなかったのも。
けっして自分からは動こうとしなかったのも。
こうして獲物を捕らえ糧とするための罠であり、手段───!!

必死でもがいても、後から後から絡み付いてくる半分液体の触手の数はあまりに多い。
既に拘束されるのを通り越して、ほぼシグナムの全身はゼリー状の半透明な塊で覆われてしまっている。

「く、レヴァンティン、カートリッジロード!!」

最後の手段として内にこもった衝撃のダメージを覚悟でレヴァンティンにカートリッジのロードを命じる。
ロードしたカートリッジで触手の水分の許容量を超える炎を出すことができれば、と思ったが、
レヴァンティンの排莢装置はわずかに音を立ててずれただけで、作動には至らない。
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/11(金) 22:00:30 ID:hpmuRCyv<>
「何──……!?」

彼女の右腕やレヴァンティンを包み込んでいる触手のせいだった。
粘性の高いそれらが隙間や開閉機構部から入り込み、本来カートリッジが装填され排出されるべきそのシステムを
埋め尽くして、詰まらせているのだ。

(これは、まずい───……っ!!)

既にゲル状生物な開いた大口は、すぐそこまで迫っていた。
自由にならない身体を必死で動かそうとするも、時既に遅く。

「シグナムっ!!」

空の色を移した、半透明の壁が視界一面に広がったかと思った次の瞬間──……、
シグナムの思考世界は、暗転した。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/11(金) 22:06:50 ID:hpmuRCyv<> はい、お盆休み突入でさくさく投下しませんとね。
シグナムさんがえらいことになっちゃってますが、
エロはありませんので御了承ください。

>>4の422氏
けだものが二匹wwww

>>31
続ききぼんぬ


まあなにはともあれ、皆さんあれです

*     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   なのは三期決定おめ!!!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +
     〈_} )   |
        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
――――――――――――

<> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/08/12(土) 00:37:29 ID:ykQbvRzR<> >>44
たぶん希望的観測で9月頃、、、
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/12(土) 12:14:45 ID:0jv64BSW<> >>53
どこかに2007年予定とか書いてあった気がする

なのは第3期おめ!!! <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/08/12(土) 12:31:46 ID:9Bx4IQSm<> <> 42<>sage<>2006/08/12(土) 14:07:03 ID:oz6FoGz0<> >>43 >>46
どうもっす! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/12(土) 16:27:44 ID:KPPxxutl<> 唐突だがシグナムはやてがみたくなってしまった <> 需要調査@ピンキー<>sage<>2006/08/12(土) 18:51:49 ID:oz6FoGz0<> 唐突だがヴィータ(ちんこ付き)×はやて が書きたくなってしまった。
もうある? 需要無い?

3期公式オメ〜 http://www.nanoha.com/ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/12(土) 20:35:09 ID:2XbJarwj<> >>58
組み合わせで言えば549氏が書いてる。「それは眠れない夜なの」
需要は・・・ある人もいるかな?

本心から書きたいって思うんだったらやるが吉。ここでやらないで後悔するよりかはいい・・・と1つ意見させてもらいます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/12(土) 21:07:11 ID:YKfvVMDh<> 需要?ありありありあり! <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:11:08 ID:6DVXLQ+/<>
第5話 c part

 退屈に身を持て余し寝転がったベッドの上。
 やりたいことは何一つなくてあったとしてもやる気が出なくて……。
 大の字になって投げ出された両手は今のわたしそのままだ。
「魔法……魔導師……魔法少女」
 蛍光灯の光をぼんやりと受け止めながらここ数日のことを振り返って。
 頭の中は本当のこと言っちゃうとぐっちゃぐちゃ。受け止めきれないことが多すぎてパンクしそう。
「アリサちゃん……すずかちゃん……」
 わたしのピンチを救った魔法。あのオレンジ色は今も鮮やかに頭へ浮かべられる。
 最初はフェイトちゃんやクロノくんだと思った。それ以外に魔法の使える人なんていないんだから当たり前な考え方だと思う。
 アリサちゃんが突っ込んでくるなんて予想できなかったし。
「すごい魔法だったな……」
 あんなに硬かった守りを簡単に砕けるなんて信じられなかった。
「それにすずかちゃんの魔法は……」
 わたしでも防ぎきれなかった砲撃を受け止めるだけでなく撥ね返せるなんて。
 最後は二人同時の封印。手ごわいはずのL・ジュエルが今じゃ楽々封印できるジュエルシードみたいに思えた。
 痛む体でなんとか立ち上がって、レイジングハートを拾い上げて。それを取ったら見てるしか出来なかったわたし。
 まだ頑張れたはずなのに、二人のことを手伝うことも出来たのにわたしはそれ以上動かなかった。
「なのはー」
 くぐもった声にコンコンと窓を叩く音。起き上がって見ればいつものようにフェレットが待ち遠しそうにベランダにいた。
「うん、今開けるよ」
 今日はいつもと少しだけ帰りが遅いかな、なんて思いながらバスケットに登るユーノくんを目で追う。
「おかえり、今日は残業?」
「うん、いろいろ遅くなっちゃってね」 
 首を上げるユーノくんの頭に光るもの一つ。まじまじ見てみると体中が水滴だらけになっていた。
 わたしの視線にユーノくんもわかったらしく自分の体を見てあっ、と声を上げた。
「ごめん、外で落としてきたつもりだったんだけど」
「大丈夫だよ、タオルあるから」
 机の上にタイミングよく置いてあった桜色のタオルを取ってユーノくんを包み込む。わしゃわしゃ擦ってもういいかなって所で手を止めるとタオルの隙間からユーノくんが顔を出した。
「なのはぁ、じ、自分で拭けるから」
「だ〜め。誰かに見られたら大変でしょ?」
「そ、それはそうだけど」
 ただでさえ最近お姉ちゃんがユーノくんのこと触りに来るんだからあまりフェレットらしくない行動は慎まなきゃ。
 それにこうやって成すがままなユーノくんは無性に可愛い。
「そっか雨降ってたんだ」
「でも……小雨だっ……しっ」
 そのくらいのことも気づかないなんて……もっとしっかりしなきゃ。
「はい、これで大丈夫」
「ありがと……ふぅ」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:11:44 ID:6DVXLQ+/<>
 なんだか随分と毛の逆立ったフェレットが現れた。しかもうんざりしたような目つきでわたしを見上げてる。
「なんだかこうされると自分がフェレットって思い知らされるというかなんと言うか」
「でもばれたらなれたで大変なんだから……。我慢だよ、ユーノくん」
 思いっきりな笑顔でユーノくんに微笑みかけた。……誤魔化しとは言わないで。
「なのはには迷惑かけられないもんね。うん、なんとかフェレットになりきってみるよ」
 なんだかユーノくんって尻に敷かれるってタイプなのかも。ちょっと浮かんだ考えを心の中で笑ってまたベッドに寝転がった。
 ユーノくんは毛づくろいを始めてる。仕草一つ一つがほんとにテレビで見たフェレットそっくりでなんだかおもしろい。思わず小さく笑ってしまった。
 うん、誰が見てもフェレットだ。
「なのは、電気消そうか? もう遅いし」
「そうだね、できる?」
 当たり前、とユーノくんの言葉を聞いたときにはもう部屋は真っ暗になっていた。それにコツコツと何かが床を机を跳ねる音。
 多分ユーノくんが駆けたんだ。流石に部屋の電気を消してくれるフェレットはいないよね。フェレットは見かけによらず、なんてね。
 ゆっくりと目を閉じてみる。闇の中、耳からかすかに聞こえる雨粒の跳ねる音。
 明日には晴れるかな? 連休明けだからって弛んでたらアリサちゃんに怒られちゃうしね。
 真っ暗な部屋。雨のせいでお月様も見えないんだろう。目が慣れてもやっぱり暗いのは変わらないはず。
 目に入るものがない分だけわたしの頭はいろんなことを考え始めてしまう。寝てしまえばいいのに、目が冴えてる。
 明日のこと、魔法のこと、アリサちゃんのこと、すずかちゃんのこと、フェイトちゃんのこと。
 そういえば今年は温泉旅行行かなかったな……。
 変わりに夏休みにすごいびっくりする旅行をするってお父さんは言ってたけど。
 それからは友達のことばかり考えて、最後は自分のことに戻ってきた。
「ねぇ……ユーノくん」
「…………ん?」
 ちょっと遅れて声がした。わたしは天井を見つめたまま次の言葉を投げかけた。
「どうしても……どうしても駄目だって諦めたことって……ある?」
「どうしてもって?」
「例えば……自分がもう駄目……とか」
「自分が…………か」
 それきり声が途絶える。考えているのか寝てしまったのか、きっとその間が十秒でも一分でもわたしには同じくらい長く感じてるんだと思う。
 黒に染まった天井は底なしみたいでずっと見てるとなんだか心ごと吸い込まれそうだ。
「一つ……あるよ」
「聞いても……いいかな?」
 うんって答えてくれた。
 そうしてユーノくんは静かに語り始める。ゆっくりと語りかけるように、小雨の音に混じってやさしい声が聞こえてきた。
「八歳のとき……だったかな。ある遺跡の調査で僕一人だけ先走っちゃったんだ……」
「なんで?」
「今まで分からなかった最深部への行き方が偶然分かってさ……それで早く行きたいって思って」
「それで?」
 また雨粒のはじける音だけがしばらく続いた。
「スクライア族だってのに罠に掛かっちゃってさ…………死にかけた」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:12:37 ID:6DVXLQ+/<>
 その言葉に背中がぞくって、春なのに冷たい何かを感じた。
「助かったの……?」
「うん、じゃないと僕ここにいないからね。……部族の人たちが後から来て助けてくれた」
「怒られた?」
「もちろん」
 どこか楽しげな口調でユーノくんはその時のことを思い出しているみたい。
 でもちょっと疑問がある。いつも冷静なユーノくんが何で一人でそんな危ないことをしたんだろう?
「ねぇユーノくん。どうして一人で行ったの?」
「今まで解けなかったのが解けたから嬉しくなって……いや、なのはには本当のこと話すよ」 
 短く一呼吸してユーノくんは続けた。
「褒められたかったんだと思う……その時の発掘、結構時間が詰まっててさ」
「そう……なんだ」
「それでさ仲間が言ったんだ。俺たちは家族なんだ、手柄を立ててもおまえがいなくなったらみんな悲しむだろっ、てね」
「それで?」
「結局その奥への行き方を見つけられたのもみんなの言ってることまとめただけなんだ」
 今度は大きく、気持ちを全部吐き出すようなため息。
「僕は一人で行ってたと思ってたけど……いつだって仲間がいてくれた」
「その後は?」
「もうどんなことがあっても仲間と協力し合うって決めた」
「じゃあジュエルシードの時は?」
「初めて発掘隊のリーダー任されてたから責任感じちゃって……また先走り」
 ちょっと気まずそうな笑い声。
「でもなのはに会えて良かった。一人じゃやっぱり何も出来なかったからね」
「……そっか」
 なんだか一人で頑張って失敗したところなんて今のわたしそっくりだ。
 だからってアリサちゃんやすずかちゃんと協力は……やっぱりできない。
「わたしにはユーノくんがいるから一人じゃないよね」
「なのは?」
「もう油断しない。どんなことがあっても乗り越えるから大丈夫」
 そうだ。もし協力して二人が危ない目に巻き込まれたら……。
 考えるだけで胸が苦しい。
「でもそれじゃまた……」
「わたしは傷ついてもいいの。二人には気持ちを分け合うだけでいい。傷つくのまで分け合っちゃ駄目だよ」
「なのは……」
 目を閉じてユーノくんに背を向ける。
 ちょっと話しすぎ。明日は休みじゃないんだから。
「ごめんね、もう終わりだから。……おやすみなさい」
 少しだけ重かった心も軽くなった感じ。多分いろんなこと話してすっきりしたからだと思う。
 いつしか雨音も聞こえなくなって、意識も闇に溶けていった。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:13:26 ID:6DVXLQ+/<>
「でぇえい!!」
 上から下、右から左!
 バーサーカーを縦横無尽に振り回し、くねくね踊る奇怪な植物を力任せにぶん殴る。
「Finish!!」
 いったん離れて装填!
『Splush birst』
 弾丸は二つ。オレンジの塊を狙い定めて打ち下ろす。
 一つは真っ直ぐ、一つはそのままあらぬ方向へ。
 ドゴン! と炸裂する一発目。
 お化け植物は見かけのひょろさも祟ってラフレシアみたいな頭を地面にぶつけて崩れ落ちる。
「すずか! 封印準備!」
「うん! シルフ行くよ!」
『Savar style stand by』
 すずかの魔力を感じたんだろう。花を地面にくっつけたままでもツタを伸ばして立ち上がろうともがき始める。
「でもアタシたちの勝ちよ」
 そろそろと思い上げた視線の先、飛んでいった弾丸が弧を描きながら戻ってくるのが見えた。
 後は完全に標的に狙いを定めるのを確認して高らかに勝利宣言。
「チェックメイト!」
「ジュエルシード……封印!」
 横から飛び出す光が二発目の爆発と共に相手を締め上げそのまま光へと分解していく。
 休み明けの初戦闘は以外にあっけなく、それはもうカップラーメンが出来るくらいの時間で決着がついてしまった。
 なんというか……虚しい。贅沢な悩みなんだろうけど。
「これで一個目だねアリサちゃん」
「え? あっそうね」
「どうしたの、なにかあった?」
「いや、なんかあっさりしすぎかなって」
 やっぱり元が草のせいかアタシたちの相手をするには少々虚弱体質すぎたかしら。
 不満はあるけどそれでケガしたら馬鹿だものね。
「エイミィさん、無事にジュエルシード回収終わりました」
『ご苦労様! なのはちゃんに負けず劣らずの手際のよさっぷりだね』
「これぐらいたいしたことないですよ……なのはは?」
『もう学校に戻ってるんじゃないかな? 三つも封印してこの速さってのはある意味職人技だね』
 うっ……思いっきり負けてんじゃないのよ。
 競い合ってるわけじゃないけど力の差を見せ付けられたみたいで悔しい。
『アリサちゃんたちも早く学校に戻ったほうがいいんじゃない? 昼休みなんでしょ?』
 言われた通りすぐに帰るつもりだ。
 ユーノがいれば外から見えなくなる封時結界というのが張れて時間も気にしなくていいんだけど。
 結局ないものねだりでアタシたちはというととにかくばれないように気をつけるのみ。これも虚しいモットーだ。
 幸いすずかが隠蔽魔法なるものを覚えてくれたおかげで空を堂々と飛んでいけるから行き帰りは楽なんだけどね。
「あっそうだ、リンディさんいますか」
『ん? どうしたの。まさか学校サボるとか言わないでしょうね』
「それはないです……あの一昨日は遅くまで魔法のことで付き合ってもらってありがとうございます」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:13:59 ID:6DVXLQ+/<>
 アタシ唯一の遠距離用攻撃魔法スプラッシュバースト。
 ユーノに言われた通りなんとか誘導性を持たせようと一昨日はリンディさん直々にノウハウを教えてもらっていたのだ。
『もう畏まらなくていいのよ。私としてはアリサさんがちゃんと成果を出してくれたことが嬉しいんだから』
『そうだよアリサちゃん。あれだけ魔力を帯びたものに引き寄せられれば上出来だって』
「そ、そうですか?」
『そうそう! きっと将来はいい魔導師になると思うよ』
「あ、あはは」
 まずい舞い上がってる。褒められると乗せられちゃうのはしょうがないか。
 それだけアタシに才能があるってことで。
「じゃあ私たちも戻ろう」
「そうね。えっと午後は国語よね」
 魔法使いをして、そうしてすぐに平凡な小学四年生に戻る。忙しいというより慌しい。
 こんなのを今までなのはが繰り返していたのかと思うと、今更ながらになのはの苦労を感じる。
 せっかく魔法使いというより魔法少女が三人もいるんだから曜日ごとの当番制というのも案外悪くないかもしれない。
(でもそうすると……)
 アタシとすずかはまだ一人で、というか一人で行動が最初から出来ない。それじゃなのは一人残して寂しい思いをさせてしまう。
(却下ね……)
 しばらくはこのままスタイルで行くしかないか。
 大体なのはが止めてって言ってるのに勝手にやってる身分なんだし、好き勝手考えちゃ失礼だ。
「アリサちゃん? どうしたの」
「え? ああ、ちょっと考え事」
「早く行こう、多分もう予鈴なっちゃうよ」
「うそ!? そんな時間なの? ああ、もう全速力で帰るわよすずか!!」
 飛行魔法は全速前進。カウントダウンを省略したロケットみたいにいきなり空に飛び出して、アタシたちは一路学校に向けて進路を取った。
 今日も快晴の空。日差しが眩しかった。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:14:39 ID:6DVXLQ+/<>
 それから三日――。
 私たちが魔導師になってもなのはちゃんとの朝も、昼も、放課後も特に変化はなくて。
 変化がないってのは文字通りの意味。
 私たちが魔法のこと話題にしようとするとなんだか話の腰を折ってくるし、無理矢理別の話題に変えるようなこともあった。
「アリサちゃんの言う通りだと思う……またなのはちゃん無理したらなんにもならないよ」
「大丈夫だよ。最近はみんな弱い力しかないからあんまり消耗しないし」
「あんたねぇ油断ってこと知らないの? 今度そうなったらどうするつもりなのよ!」
「だから今は絶好調だから……あっ、もうすぐ昼休み終わっちゃうよ。わたし先行くね」
 なんだか私たちが魔導師になったことが裏目に出ているのかな。
 いづらい雰囲気ばかり高まっている気がする。 
「ちょ、待ちなさいよ! ……もう!!」
 お互い抱える事情はある。それを分かり合ってると思う。
 だけどなのはちゃんだって知ってるよね? このままじゃどうなるかって。
「なによなによ! そんなにアタシたちじゃ不満なわけ!」
 どんな人にだって我慢の限界はあるんだよ。
 遅かれ早かれ、それは必ずやって来る。絶対に避けられない。
「そうやって一人でしょいこんで痛い目みたこと覚えていないの?」
 機嫌がどんどん傾いていくアリサちゃんに私もひそかに苛立ちを覚えていた。
 私だっていつも大人しいわけではない。間違ったことにはちゃんと駄目って言うし、曲げたくない気持ちだってある。
「そうだよね……私たちのこと少しは認めてくれてもいいのに」
「そうよ。ほんとにそうなんだから……」
 俯いて唇を噛んで、それでもアリサちゃんは抑えられない気持ちを必死に抑えようとしていた。
 私は……アリサちゃんを見つめながらゆっくりと腰を上げた。
 知ってるだけなら三人はこうならないと思った。
 力を持ってしまったから三人はこうなってしまったと思った。
 でもこの力があったから友達を助けることが出来た。それはこれからもきっとそう。
「やっぱり譲れないよね」
 だったらなのはちゃんにわからせる。傷つくのを見ているだけよりずっと正しいはずなんだ。
 私たちだって頑張ってる。魔法少女には成り立てだけど、必死に頑張ってるんだから。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:15:24 ID:6DVXLQ+/<>
 森に響く怒声は耳を塞ぎたくなる気分にさせる。
 僕には怒ってるほうの言い分もよく分かるし、原因を作ったほうの気持ちも分かる。
 だけどやっぱり悪いのは
「なんで人が封印しようとしてるときに横槍入れるのよ!」
「いいでしょ! 誰が封印したって!」
 なのはなんだと思う。
 発端はほんの少し前、僕たちがこことは別のところでジュエルシードの封印をしたことから始まる。
 エイミィさんからの連絡で別の場所で発動したジュエルシードはアリサたちが封印しようとしているってことがわかった。
 あの二人の成長ぶりを見ている僕としては任せてもいいって思った。そのことはなのはにもちゃんと言った。
「こっちがもう封印準備してる時にやる!? 断りぐらい入れなさいよ!」
「アリサちゃんたちがもたもたしているからやっただけだよ!」
「なっ! そりゃ手馴れてるあんたと比べればとろいかもしれないわよ!」
 今にも取っ組み合いの喧嘩でも始めてしまいそうな勢いで睨み合う二人。
 僕もすずかもあまりの迫力に口を開けることすら出来ず眺めていることしか出来なかった。
「けどアタシたちだってちゃんとやってるの! なのはのこと支えてあげようとしてるのに!」
「頼んだ覚えなんかないよ!」
「ふ、二人とも……ちょっと落ち着いて」
「ユーノくんは黙ってて!!」
「あんたは口出すな!!」
 なんとか仲裁しようとしてもこの通り。二人の剣幕に押し戻されるわけだ。
 男としてはしっかり場を取り繕わないといけないのに立場がなかった。
「二人揃わないと満足に戦えないのによく言うよ!」
「あ、アタシだってやろうと思えば」
「エイミィさんに聞いたよ。あのデバイスは連携しないと戦えないって!」
 ――決まった。
 もう言い返せない。二人のデバイスの最大の強みで弱みを突かれてしまったのだ。
 案の定アリサは言葉が見つけられず眉を寄せたまま立ち尽くしていた。 
「そ、それでも一人だけだってピンチになったら誰も助けてくれないんだから……」
「わたしはもうピンチになんかならない!」
「そんなの……わからないでしょ!」
「少なくともアリサちゃんよりかはならない!!」
 ギリリと歯軋りさえ聞こえそうなくらい口元を歪めて眼光を飛ばす二人。
 ほんとにどうしようもないくらいの状況。
 早くこの時間が終わって欲しい、と思うのは我侭なのかもしれない。
 だってこのそれが終わるということはおそらく
「……勝手にしなさい!」
「するよ!」
 そう、喧嘩別れしかないんだ。
「アタシたち勝手にやらせてもらうから」
「あ、アリサちゃん!」
 踵を返したのは二人同時。
 アリサにはすずかが
「いいよ! 勝手にすれば!」
「なのは!」
 なのはには僕が
 その背中を追った。
 始めてみるなのはの姿。頑なに二人を拒んで何もかも一人でまた背負い直して。
 気の聞いた言葉一つかけられず、ただ僕は心に包む戸惑いに対応するしか出来なかった。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/13(日) 03:21:41 ID:6DVXLQ+/<> コミケ前の投下
もう1時間もしたら出発な私
いい加減、三人を仲直りさせろと思ってる方々
いたらごめんなさい、次回で決着です

<<4の422氏
僕のケモノも目覚めそうです(オイ
なにはともあれ楽しませていただきました

<<31
いいですよね、ほのぼのって
何か思いついたらまた是非

<<640氏
触手プレイいきますか? いきませんか……
むしろほのぼのしすぎな後衛組み

そういえば3期決定ですね
StrikerSに少し微妙な気持ち
アリサやすずかの出番がついに消えるのかな……
日常を増やしてくれれば言うことないんですが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/13(日) 12:47:43 ID:ProlDUJ7<> 3期にメイドロボが出てきてくれないかなと言ってみる

ノエルに出番を… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/14(月) 10:11:13 ID:6zH2pfOV<> 停電だな。はやての家大丈夫だろうか。 <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/08/14(月) 13:20:43 ID:5odpBAxE<> ヴィータとシグナムと犬が自転車こいで自家発電中です。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/14(月) 17:36:04 ID:1MUNMGEg<> 実はシャマルが一番、こぐのが早いのにカマトトぶってこいでくれないんだよな。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/14(月) 20:59:37 ID:pwCimefx<> 寒い。
凍えるように寒くて、冷たい。
そして暗い。

まるで、あの夜に戻ったようだ。
あの日、彼を斬ったその夜は身体の芯から凍てつくような、冷たい雨が降っていて。
空には月もなく、何も見えぬほど真っ暗な世界が広がっていた。

流れ出る鮮血、ただそれだけが温かく。
その生々しいぬくもりに、人を斬るという行為において、初めて私は嘔吐し、涙した。



魔法少女リリカルなのはA’s −その想い、緋に染まる暁のように−

第九話 幻影は、儚く



彼女の腕には、新しく育まれた生命が抱かれていた。
なんとも小さく、儚いそれは、それでいて活力に満ちていて。
無邪気な笑顔を、彼女や我々に向けていた。

『シグナムも、抱いてみる?』

彼女は、そう言って布にくるまれたその子を私に差し出す。

「……え、いや。私は。どうすればいいのかわから……」
『シャマルは?』
「え?いいんですか?……じゃ、じゃあ。ちょっとだけ……」

殆ど、剣以外のものなど持ったことのない私は当然、戸惑う。
今ほど日常生活の経験のなかったシャマルも、恐る恐るといった感じで「それ」に手を伸ばす。
ザフィーラが無言で見守り、ヴィータが興味深そうにしげしげとシャマルに渡されたものを、
見上げていた。

「わぁ……」

彼女に向けていたものと変わらず、「それ」が向けてくる無垢な微笑みに、
シャマルは歓喜の声をあげていた。包み込むように抱き上げて、笑顔を返す。
ヴィータも抱きたそうにしていたが、素直でない性分のせいか、物欲しそうに彼女の両腕の中の
白い布包みを、見つめるだけ。

「彼は?また街の見回りか?」
『うん……そうね。本当はもっと、この子の側にいてあげて欲しいのだけれど……お仕事だから』

シャマルの腕から「それ」を返してもらいながら、彼女は苦笑する。
皆のことを護る、大切な仕事なのだから、と。

私は彼女のことが嫌いではなかった。
彼の選んだ人として、頷ける人物であったと思う。
だから赤ん坊──……二人の新しい命が宿り、生まれたことに、素直に祝福できた。
彼の同僚であり、彼に惹かれていた者として。
また、願ってもいた。
できることならば私たちがこのまま、彼らの幸福をずっと、見守り続けられる。
彼らと共に歩み、この子の成長を見届けてゆける。そんな日々が続いていくことを。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/14(月) 21:01:32 ID:pwCimefx<>
*     *     *

───だが終焉は我々の元に、ある日突然やってきた。

街中の警戒に向かう彼を見送った、その夜のことだ。
どこか遠くのほうで、爆発のような音が聞こえた。
距離は遠く、その日は雨で何も見えず。
これといって大きな魔力の反応もなく、位置的にみても主に危害が及ぶ可能性も殆どなかったため、そのままにしていた。
安寧した暮らしの中で、気が緩んでいたとは言わない。
けれどもしこのとき現場にシャマルを連れて赴いていれば、と今でも思う。彼女の風の癒し手としての力が、あったなら。
しかし、我々はそれをしなかった。する必要はないと判断してしまった。


その結果。
翌日、主の配下にある騎士の一人に呼ばれ現場へと向かった我々は、見ることになる。

瓦礫の山となり燃え尽き倒壊した、いくつもの家。
そしてその中の一角に転がる───……。

焼け焦げ赤黒く変色し、その美しかった金髪さえも消し炭と化した無惨な彼女の亡骸と、
同じように変わり果てた、その両腕の中のかつて赤子であった「もの」。

見る影もなくなった、二人の人間。

親しかった者として遺骸の確認を迫られる中、私達は言葉を発することもできず立ち尽くしていた。
辛うじて応対可能なザフィーラが二言三言、騎士団の男と言葉を交わすと、男は走ってどこかへ行ってしまった。
私達の前には、物言わぬ彼女と、その子供の骸だけが残った。
ヴィータが、私の躯にその顔を埋めてきた。
泣いているのかもしれなかったが、そのときの私に気付く余裕もなく。
半ば無意識に彼女の小さな身体を抱き寄せて、二つの死体を呆然と見下ろしていたのを覚えている。

私達に主から命令が下ったのは、その日のうちにであった。

『騎士団長・コーニッシュが裏切った。捜索の後これを撃破、その魔力を蒐集した上で抹殺せよ───』

*     *     *

「し、シグナムさんが……」
「食べられ、ちゃった……?」

ゲル状の異形生物を遠くから指差しながら、アリサとすずかがぱくぱくと口を開閉し、呆然としていた。
同様に他のメンバーも言葉を失い、凍り付いて身動き一つしない。

シグナムをその内部に取り込んだスライムは先ほどまでと同じように
その身を元の形へと戻し、風に吹かれて柔らかい表面を震わせるに任せている。
内部に閉じ込められたシグナムの姿は、分厚い半透明のゲルに阻まれて
僅かにその緋色の服らしき色のついた影が見えているに過ぎない。

「お兄ちゃん!!シグナムがっ……!!」
「わかってる。これを見ろ」
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/14(月) 21:02:53 ID:pwCimefx<>
慌てる一同の中で、先ほどとはうって変わってクロノ一人が冷静で。
足元のタイルに付着したゲル状生物の破片を指先で掬い取り、何やらやっている。

「……お兄ちゃん、何を……わっ!?」

そして手に付いたそれを、突然フェイトの頬へと擦りつける。
ひんやりとした冷たさと気持ちの悪いぬるぬる感に、フェイトは思わず声をあげる。

「どうだ?」

どうだ、ではない。
頬になすりつけられたぬめぬめを大急ぎでごしごしとぬぐい、
それでも肌に残った嫌な感触に顔をしかめつつ、彼に抗議するフェイト。

「うー……。どうだ、じゃないでしょ。ぬるぬるして、気持ち悪いよぉ……」
「少し、痺れるような感じがしないか?」
「え?……あっ」

言われてみれば確かに、頬の粘液のついていた部分が、
僅かにぴりぴりとした痺れを持っているのを感じる。まるでそこだけが小刻みに痙攣をしているかのようだった。

「これって、まさか?」
「おそらく、神経性の麻痺毒だ。あのロストロギアの性質なんだろう。……接近戦はあまりしないほうがよさそうだ」
「そんなっ……、じゃああの中のシグナムは……」
「今頃過剰投与みたいな状態で酩酊、幻影やら夢やら何か、見てる頃だろうな。……はやく救出したほうがいい」

あの量を一度に浴びては、シグナムといえど長くは持つまい。
態勢を立て直し、迅速に救助する必要がある。

「部隊を再編成する。ヴィータを前衛に、はやてを後衛。フェイト、君はなのはと砲撃の準備を」

*     *     *

私は───……。はて、私は一体、何をしていたのだろう?
さっぱり、思い出すことができない。
ここは、どこだろう。それも思い出せない。
ただ、ここは寒い。寒くて、眠い。
今にも瞼が落ちてしまいそうなほどに、眠い。
いっそ、このまま眠ってしまおうか。

真っ暗で何も見えない空間の中で、彼女は思った。目覚めれば、ここにいた。
思って、いつの間にかどこからか近付いてくる、硬い靴底の鳴る足音に気付く。
誰だろう、静かにしてくれ。もう、眠らせてくれ。
半ばうんざりと下がりかかった瞼を持ち上げた視界は、やはり暗く。
逆に何故だか、彼女自身だけは光に照らし出されたようにはっきりと視えていた。
右腕には、鞘に収まった彼女の相棒たる魔剣がいつの間にか握られ。
握る彼女の身体は緋色の騎士甲冑に包まれ、そういえば戦っていたのだと彼女は思い出す。

でも、一体何と?何のために?
肝心な部分がすっぽりと抜け落ちた記憶に、彼女は立ち尽くす。
立ち尽くしてただ、近付いてくる足音を待っていた。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/14(月) 21:03:34 ID:pwCimefx<>
足音が止み、現れた姿を見て彼女は目を細める。
ああ、やっぱり。
納得したような、諦観したような不思議な気持ちだった。

蒼い鎧も、鋼の光沢を見せる剣も、かつてのまま。
ありし日の彼が、そこにいたから。恭也───はて、恭也とは誰であったか───?、とそっくりな顔立ちの彼は、
握り締めた剣を、彼女へと向ける。

彼女は、ここで彼に斬られるのだ。
自分でも驚くほど穏やかでやさしい気持ちで、彼女は理解した。
そうなるべきだ、そうなっていい。彼女自身彼の姿を見て、それを望んでいた。

「すまんな───……レヴァンティン」

不甲斐ない主で、すまない。
彼女は刃を向ける男以外で唯一、この場にいる己が相棒へと詫びる。
きっとこれは、かつて自身の想い人を斬ったという自身に課せられた、業に対する贖い。
その時が今、やってきたのだ。
義もなく、理もなく。ただ命に従うまま、愛した者を斬った罪。そしてその事実を忘れた罪。
それは生半可なことでは償えるものではない。
自分はたった今から、己の斬った者、その者自身の手で断罪される。
なんとも、罪人にふさわしいではないか。

抵抗する気は起きなかった。これでいいのだ。
そのような資格もなく、また、もう一度彼を斬ることなど到底できはしない。
わが身かわいさに愛した人物を二度も斬ることができるほど、彼女は強くない。

鞘を呼び出し、愛剣を収めようとしたが、何故だか鞘は現れなかった。
だから躊躇なく、彼女は剣を手放した。手放した剣は、暗闇の中に埋もれ消えていった。
僅かに眉を顰めて別れを惜しんだが、それだけだった。

「……主はやて」

シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、リインフォース。それにテスタロッサ。
周囲にいた人々の顔を思い浮かべ、彼女の心は穏やかだった。

───ひょっとすると、私はずっとこの瞬間を待ち続けていたのかもしれない。

彼をこの手にかけたあの日から。
恭也との試合によってそのことを思い出し、苦悩するようになった、その日から。
きっと彼女は待ち望んでいた。そう願っていた。

「──さあ、やってくれ。私は──……あなたのことを、愛していたよ」

無表情だった男の眉が、ぴくりと動いたように見えた。
見えたのを確認し、彼女は目を閉じる。

「あなたには、斬る資格がある。理由もある。あなたになら───私は斬られて、いい」

本心からの言葉を吐き。
心穏やかに、彼女は審判の時を待った。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/14(月) 21:13:32 ID:pwCimefx<> コミケなんてとてもいける距離に実家がないので帰省中は
ss書きが進む進む。シグナムさん話は全部で13話に収める予定なので
あと四話です。あと四話も続くんかいと思った人、ごめんなさいorz
亡くなったオリキャラの彼女はうたわれるもののウルトリィのイメージで
書いてます。多分もうでてこないだろうけど(汗
一方の彼は前々から書いている通り、まんま恭也です。
出番的にはどちらも最低限に納めているつもりですが……。
そう見えなかったらごめんよorz

>>176
フェイトはやく来て三人の緩衝材になってプリーズ


コミケのなのはブースには転売目的のアホウが出現したそうで。
よくもまぁ恥ずかしげもなくそんなことができるもんだ。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/14(月) 21:47:18 ID:jq2Ff3nv<> >>71
ちょwww用意に想像できて盛大にワロタwww
シャマルが団扇扇いで応援している光景してるのも浮かんで
更にワロタ



どうでもいいが、三期はどうなるんだろう?
マジでアリサやすずかが魔法少女になりそうな気がする
・・・それ、なんて魔法少女戦隊?
あと、とらハネタとかも絡まないかなぁ・・・
すずかとか何気に重要人物なんだよな、あれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/14(月) 23:21:37 ID:NETywR86<> プツーン
「なんや、テレビ映らんようなったで」
「あら、掃除機が動かないわ」
「はやてぇ、エアコンも動かないぞ?」
「停電みたいだな・・・」

ミーンミンミンミン・・・・
「そうやシャマル、アレ持ってきてーな!」
「アレというと、アレですか?」
「こんな時のためにあるんやないか!今を逃したらもう無いで!?」
「なんだアレって・・・?」

ジーワジワジワジワ・・・
「じ、自転車?」
「いや、ダイエットマシーンだろう。だが、こんな暑いのにわざわざ・・・・・・・」
「フッ、甘いなぁ二人とも。これはダイエットマシーンちゃう、自家発電装置や!!」
「「な、なんだってー!?」」
「では、ヴィータちゃんはこっち、シグナムはこっちね。ザフィーラはランニングマシーンよ」
「なんでこんな事・・・」
「アカン、このままやとアイス解けてまう」
「・・・はやて、あたし頑張る!」

ちりーん
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ガ───―
「ハッハッハッハッ・・・・・・」
ガ――――
「冷蔵庫動いたでー」
「ほら、頑張って三人共!もう少しよ!」パタパタ
「はぁはぁ・・・」
「大丈夫?ヴィータちゃん」
「大丈夫・・・。終わったらはやてのおいしいご飯と、温かいお風呂が待ってんだ。こんなところで負けてたまるかぁ!」
ガ―――― <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/14(月) 23:22:35 ID:NETywR86<> 「ハァ・・・ハァ・・・、こんな事をしなくても、我慢すれば済む事だろう・・・」
「逃げるの?シグナム」
「な・・・・・・」
「これはあなたの為でもあるの。あなたにとって、これは単なる自家発電かもしれない。でも今逃げてしまったらこの家は、いいえ世界は
再び闇に包まれてしまうわ。私たちはベルカの騎士、誇りある戦士なの!私はあなたがどんなものにも背を向ける事の無い勇敢な騎士という事を知ってる!
シグナム、あなたは私たちの、いえ、ベルカの誇りなのよ!!だから頑張って、はやてちゃんのために!」
「フッ、そうだったな。私は誇りあるベルカの騎士、こんな所で負けるわけにはいかないのだぁ!!」
ガ――――
(シャマル、いつからあんなに黒く・・・・・)
「さ、ザフィーラも頑張って!」(ポチッ
「な、なにをした、ってうおおおおおおおおおお!?」
ガ―――――!
「もうすぐお風呂沸くでー」
「はぁーい。ほらほら、ファイトッ」

たーけやー 竿竹ー
「いやぁ、やっと電気きたなぁ。アイスも溶けずに済んだし、これもみんなのおかげやで」
「みんなお疲れ様ぁ」
「は・・・・・・はや・・・・・・t」(カクリ
「やった・・・・私はやったぞ・・・・・・ベルカの騎士に・・・・・・・栄光あr・・・・」(バタッ
「・・・・・・・・」
「どないしたんみんな?」
「頑張りすぎたみたいですねぇ。あ、はやてちゃん。一緒にお風呂入りましょ」
「でもみんなが・・・」
「大丈夫、疲れて寝てるだけですから」(スタスタ
このあと三人でシャマルの調理法を会議したとかなんとか。
ちなみに冬に第2回が行われたかどうかは定かではない。


ごめん、何となく書きたくなった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/15(火) 09:34:27 ID:9pCzptsb<> >>79

東京に住んでる人に不謹慎ですよ〜(笑)
でもGJっす <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/15(火) 13:58:48 ID:6A61d5J3<> なんか和んだw
ちょうど電車に乗ってたからなぁ… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/15(火) 17:01:05 ID:cG4NYvH9<> >>77
>コミケのなのはブースには転売目的のアホウが出現したそうで。
ごめん640氏。おれ超地方で入手するにはヤフオク頼みなんだ。
おれみたいにヤフオクで買う奴がいるから、転売するやつもいるわけで・・
グッズ欲しくてコミケ行ったのに、転売屋に買い占められて
泣く泣く買えない人もいるわけで・・複雑な心境。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/15(火) 18:13:18 ID:6A61d5J3<> 遅くなったけど、保管庫の人乙 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/16(水) 00:33:46 ID:eEqO4iI6<> >>83
なんか常識外れの数を注文したやつがいたとか聞いたけど、ホントのとこどうなんだろ。
別のブースにいて、その場を目撃してないんだよね。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/16(水) 09:36:04 ID:ELbcPbed<> なんでもCDを300枚注文という話をきいたがネタじゃないのか?
情報元:2ちゃんねるニュース速報 2ろぐ
ttp://2log.blog9.fc2.com/blog-entry-1097.html <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/16(水) 15:09:08 ID:LS1dhXzy<> はやて「抱き枕カバー買えなくて泣きわめくとか300枚とかネタやろ。
    そもそも、うちの抱き枕カバーがないんのはおかしいと思うんやよ」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/16(水) 15:13:22 ID:CQkgmyOJ<> シグナム「(主の抱き枕あったら夜のオカズに使うのに…)」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/16(水) 15:42:33 ID:/z2XqXVK<> Yahoo!オークションとか見るとかなりの数が出品されてるのは事実。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:22:20 ID:nLOESEBs<>
第6話 ぶつかる気持ち、素直な気持ちなの?

「わたし……負けないよ。それで二人が納得してくるなら」
『Shooting mode set up』
 砲へと形を変える杖。

「アタシだって負けるつもりさらさらないから」
『Hammer position set up』
 槌へと形を変える杖。

「全力全開……力の差、見せて上げるから」
 ゆっくりとレイジングハートを掲げればわたしの周りを光が囲む。

「いいわよ、来なさい……返り討ちにしてあげる」
 ゆっくりとバーサーカーを肩に担いで魔力を高める。

 目に映るのは大事な友達。
 相手が何を考え、どんな気持ちか知らないけれど自分の気持ちは決まってる。

「バーサーカー! Go!!」
 
 ――ただ

「行くよ! レイジングハート!!」

 ――この気持ちを

「いっけーー!!」

 ――ぶつけるだけ!!

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:23:03 ID:nLOESEBs<>
 私のクラスで事件が起きている。
 別に物が無くなったとかそういう類のものではない。だけどそれ以上にクラスの雰囲気が揺らいでしまう事件なのは確かだった。
「うん、出来るだけそっとしておいて欲しいかな」
 事の真相を聞いてくる子達には同じ返事であしらって。
 私としてはいい加減そんな対応にももう辟易し始めてる始末で。
 やっぱり止めなきゃいけないと思う。だけどそれでもいいと思っている私もいる。
(悪いのは……どっちもなんだよね)
 どっちも意固地になって。きっと正しいとか間違っているとか、確信できるものは一切なくて。
 あんなに仲が良かった二人が口も聞かない、顔も合わせない。不気味なほど他人になってる。
「ごめんすずか……今日は一人でお昼食べて」
「うん……じゃあ」
 少しずつ、少しずつだけど、私たち三人の絆にヒビが入り始めていた。
 でもそれを止めることは出来なくて、ただ手を拱いて眺めていることしか私には出来ない。
 ただ一つだけ、多分この場合は救いなんだろう。私と同じように悩む人がいた。
(今……いいかな? ユーノ君)
(すずか? うん、僕も話したかった)
 アリサちゃんの隣には私が、なのはちゃんの隣にはユーノ君が。
 同じ悩みを分かち合い、今を変えようと、変えなきゃいけないと思ってる人。
(最近なのはちゃんはどう?)
(なんだか荒々しくなってる……魔法の使い方が滅茶苦茶だ)
(私たちのこと何か言ってた?)
(何も……)
 私たちがジュエルシードを集め始めてからその回収する早さも格段に上がった。
 すでに発動しているもの、特に力の強いものはなのはちゃんが。魔力の少ないものや発動しかかってるのは私が感知してアリサちゃんと封印する。
(皮肉だよね……こうやって仲たがいしてるほうが成果を上げられるなんて)
(ほんとだね……私たちも二人だけのおかげでどんどん実力がついてる)
 それは逆に日常の私たちを蝕んでいく。
 もしも魔法の代償が私たちの絆にあるなら今すぐこの力を捨ててしまっていいのかもしれない。
(でもこんなの違う……なのはちゃんの心を傷つけるために魔導師になったわけじゃないよ)
 傷つくのが嫌だから、守りたかったから。
(それはなのはも同じだと思う。まだあの時のこと責任感じてる……それに怖いんだと思う)
(怖い?)
(この前のこと。もしすずかやアリサが命に関わるような危険に巻き込まれたらって)
 なのはちゃんなりの思いやり……なんだよね。
 だけど自分のことを棚に上げて、自分はそうなってもいいって言ってるのと同じだよ、それって。
(私たちのせいなのかな……やっぱり)
(ううん、すずかは正しいよ。結局みんな自分が正しいって思えるから引き下がれないだけなんだ)
 本当にユーノ君の言うことは的確だ。どっちも贔屓にしないで公平に物事を捉えてる。
 こういう時、客観的に判断してくれる人はとても頼もしい。私はまだ子供だから、どんなに背伸びしても最後はきっと自分の意見しか信じない。
(守りたい……でも守られたいとは思ってない。すずかもそう思ってる?)
(うん、見てることしか出来ないなんて辛いから)
 そうだよね、シルフ。
 右手の薬指に嵌められた指輪。楕円形の宝石は私の問いに答えるように微かに青い輝きを見せた。
(なのはもそうだよ。なのはなりの守りたいって気持ちがあの態度なんだと思う)
(なのはちゃんなりの……)
 だったら私の気持ちってすごい一方通行なものなんじゃないかな……。
 気持ちを押し付けてるだけ……でも押し付けなきゃなのはちゃんは守れない。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:23:43 ID:nLOESEBs<>
(それが間違った考えなのかな)
(どうだろうね……でも最後に決めるのは自分自身だよ)
(そうだよね。私まだ自分がなんで魔法少女になったか答え見つけてないよね)
 探すのに必死になりすぎて……空回りしてる、そんな感じなんだろう。
(だからって焦るのは禁物)
(うん、わかってる)
 一人きりのお弁当は悲しくなるくらいに寂しくて。こんなに早く終わっちゃうんだとしみじみ思って。
 アリサちゃんもなのはちゃんもそう思ってるのかな……?
(あと、僕の勝手な考えだけどさ……もうみんな答えは見つけてるんじゃないかな) 
(……え?)
(きっとさ、きっかけが見つからないからこうやってるだけで)
 そんな答えなんて見つかってないよ。
 今の私にある答えを言葉にするならなのはちゃんを守りたいってこと。守られるより……守りたい。
 でもそれはなのはちゃんも同じで。
 守りたいから……傷つけたくないから。
(…………あれ?)
 ――そうなんだ、同じなんだ。
 私もアリサちゃんもなのはちゃんも心の中にある気持ちは同じ。
(そっか……じゃあ私たちほんとに気づかなかっただけなんだ)
 答えはいつもすぐそばにあって、だけど私たちは自分の気持ちだけを見つめるのに精一杯で。
 足元で待ってくれているその子に全然気づいてあげられなかった。
(……うん、やっぱり私たち仲良しだね)
 最初から答えは此処にあった。見つけてたんだから見つからないのは当たり前だ。
(ありがとユーノ君……あなたのおかげでようやく気づけた)
(お礼を言えるのは僕の方だよ。すずかじゃなきゃできないんだから)
(でもユーノ君でも出来るよ)
(出来ないと思う。それだけ三人の絆って強いから。なのはに聞いたら誰だってわかるよ)
 少し寂しげに、どこか羨ましそうにユーノ君が呟く。
(きっとみんな待ってるよ。だからすずか、もう一度みんなに笑顔を運んで)
(うん、大丈夫だよ)
 さぁっ、と頬を何かが触れた。
 誰かと思って隣を見れば、全開の窓から気まぐれなそよ風が遊びに来ていた。
 緑の香りにまだ季節が春なんだと感じ、五月晴れの空に自然と私は微笑んで。
「運べるよね……私にも」
 言葉は風に乗ってきっと届く。
 
 そう、私の答えは――。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:24:15 ID:nLOESEBs<>
 昼休み、放課後、夜……。
 不定期に舞い込んでくるジュエルシードをアタシはがむしゃらにぶつかって封印して。
「こんの! いい加減にしなさいっ!!」
 真っ黒な霧の塊へ振り下ろす一撃は容赦なく相手の体を打ち砕き。
「バーサーカー! 封印!」
『Yeah』
 その体に秘めた種を有無を言わさず奪い取った。
「こんな相手に負けてらんないのよ」
 吐き捨てるように一薙ぎして、二本の筒からもうもうと出る煙を振り払った。
 なのはに負けたくない。
 ここ数日考えていることはそればっかりで、本当はもっと違うことを考えるべきなのにアタシの頭はいつでもそれを良しとしなかった。
「アリサちゃん……大丈夫?」
「ええ、で次はどこ?」
「……今日は終わりじゃ……ないの?」
「当たり前でしょ!」
 文句みたいに怒気を含ませた声ですずかに向き直る。
 思った以上の大きさの声に内心驚きながら、謝るのもなんだか格好悪いのでそっぽを向いた。
「でも二つも封印できたんだし今日はもういいんじゃないかな」
 戸惑いがちの声にアタシは頑として頷かない。
 こんなんじゃなのはにとっていい笑いの種だ。この程度で満足してたらなのはに到底追いつけない。
「せめて数で上回らなきゃ。悔しくないの、なのはにああ言われて」
「でもあれは……」
「弱いから引っ込んでなさい……そう言ってるのと大して変わらないのよ」
 あれ屈辱と思わない人間はいないだろう。
 見返さなきゃいけないのだ。なのはにアタシたちが立派に戦えて手助けできる魔法使いであると。
「だからすずか」
「……わかった」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:24:51 ID:nLOESEBs<>
 すずかがゆっくりと杖を掲げて地面に突き立てる。
 魔法陣が広がってすずかは念じるように目を閉じた。
『Area search』
 シルフの声を合図に杖の先から光が放たれる。
 ある程度の高さまで上ると続けて輪のように光は広がりながら町全体を包み込んでいった。
 そうやってすずかがジュエルシードを見つけるまで一分も掛からなかった。
「ここから東北東に一つ……南西に一つ。どっちも魔力は帯びてるけど発動しかかってるわけじゃないよ」
「じゃあさっさと行って片付けましょ」
「でも、今日のうちじゃなくても」
 それがどうした。どう考えても先手必勝なはずだ、ここは。
「そうやってなのはの仕事増やす気? 本末転倒でしょ」
「そんな訳じゃないけど……あのアリサちゃん、私ね」
「あんたが行かないならアタシ一人で行くわ」
「えっ! あ、アリサちゃん!!」
 すずかがどう返事したかなんてもう聞こえない。すでにアタシは空の上。
「よく考えたらそうじゃない。アタシ一人でも出来るって証明するいい機会よ」
 二人じゃなきゃ何にも出来ないなんてもう言わせない。
 連携運用じゃなきゃ駄目なんて作った人の決まりごと。使ってるアタシにはそんなの関係ない。
 バーサーカーだけだって出来るに決まってる。
「でしょ?」
『Yeah,though it does depending on you』
 アタシ次第……か。
 ほんと言ってくれるじゃない。だったら尚更見せてやろうじゃない。
「まずは南西!」
『It's oppsite』
「わかってるわよ!」
 アタシだってこれが最良の選択だなんて思ってないんだからね。
 
 なのは……あんただってそうなんでしょ?

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:25:39 ID:nLOESEBs<>
「これで終わり!!」
 六つのスフィアを従えて一気に回り込んだのは相手の真下。真っ暗なのはそれだけ相手が大きいから。
 前は子猫だったけど今度は大きな野良猫。俊敏で鋭い爪に油断は出来ない。
 でも、ただ大きくなっただけ。大きくなっただけだから負けようがない。
「レイジングハート! 準備は?」
『All right.Here you are』
「オッケー! ディバインバスターーッ!!」
 爆音が全身を揺さぶり、桜色の光が噴水みたいに巨体を押し上げ空へと吹き飛ばす。
 バランスを崩すもそこは猫。体をゴムみたいに捻って足先を地面へ向けようとする。
 だけど!
「ディバインシューター!!」
 こっちだって考えているんだ。
 制御限界ぎりぎりのシューターを天へと打ち上げ
「アタック!」
 上下左右、四方八方からシューターを叩きつけそれすら満足にさせはしない。
 光の軌跡を残しながら次々と炸裂するシューター。弾けるたびに欠片が星のように空を飾る。
 流石に可愛そうだと思った。でもそれならジュエルシードに取り付かれている今が一番可愛そう。
「シーリングモード!」
 背中を向けて落ちてくる猫に狙いを定めフルドライブ。
「リリカルマジカル! ジュエルシード封印!!」
 光弾け一瞬にしてわたしを覆っていた影が消えた。見上げれば三毛猫一匹にジュエルシード。
 慌てて手を伸ばすけど猫はするりと手を交わし着地。お礼の代わりか一声鳴いて茂みの中へ消えていった。
「封印完了だね」
 後に残ったのは今日二個目のジュエルシード。
 レイジングハートに収納して一息。
「お疲れ様、なのは」
「うん。じゃあ後残ってるの封印しよう」
「でも今日はもうないんじゃ」
 首を横に振る。そう、今までなら全然ない。
 今は違う。わたしにだって先手を打てる方法があるんだ。
「エイミィさん、悪いんですけどすずかちゃんがエリアサーチした座標転送してください」
「なのは?」
『あ、え? い、いいけどでもすずかちゃんに断ったの?』
「こんなのに断るとかないですよ。やれるときに危険な芽は摘み取らないと」
 確かにこれはずるい方法だと思う。協力なんてしてないけどアースラ経由なんだから共通の情報なんだ。
 勝手な理屈で自分を納得させてすぐに転送された座標を確認する。
「なのは、いくらなんでもよくないよ。それにそういうのは二人に任せたほうが」
「任せちゃ駄目なの! もしもがあったらいけないんだよ。だからその前にわたしが封印する!」
 場所は二つ。どっちもすぐに封印して日没前に今日の分を終わらせる。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:26:14 ID:nLOESEBs<>
「……あのさ、なのは。代わりに行ってそのもしもになのはが巻き込まれたら」
「でもアリサちゃんやすずかちゃんよりかはずっと危険はないよ」
「そうかもしれないけど……」
 言っても聞かない二人。それで喧嘩したって今度だけは絶対に引き下がらない。
 二人が魔法少女になんてならなきゃこんなことにはならなかったんだ。
 分け合って欲しいのは気持ち。それ以上に手をさし伸べられて逆に迷惑かけるなんて嫌だ。
『なのはちゃん!!』
「ど、どうしたんですか!?」
 思考を唐突に中断させるエイミィさんの声。
 もしかしたらL・ジュエルの発動!?
『今の座標の一つから膨大な魔力反応……待ち伏せしてたみたいにいきなり大きくなって』
「待ち伏せって……まさか二人が?」
『ううん、先行しているのアリサちゃんだけ』
「嘘だろ……なんで一人だけで」
 わたしと同じ気持ちをユーノくんが隣で呟く。
 なんで一人で……。
『すずかちゃんならともかく防御のないデバイスじゃ……連携しなきゃ駄目だって艦長からも言われてたのに』
 エイミィさんの言うとおりだ。あのデバイスはそのための二本なのに最初から片方だけで行ったって絶対うまく行くはずがない。
「とにかくすぐ向かいます! ユーノくん、すぐ転送を!」
「わかってるよ! 急がなきゃいけない!」 
 こっちには転送魔法がある。だから最悪の展開になんて絶対わたしがさせない。
 ユーノくんの魔力光に身を包まれながらレイジングハートをシューティングモードに変形させすぐに飛び出せるよう準備をして。
「僕もすぐにあと追うから!」
「うん!」
 アリサちゃん、なんで一人で飛び出したんだろう。
 自分の実力とか、デバイスの得意なとことか全部勉強はしているはずだ。なのにそれでも一人行くなんて。
 すずかちゃんが怪我したのだろうか。そんなわけない。あんな強力なシールドを張れるのに。
 じゃあなんで……。
「アリサちゃん!!」
 転送された座標は目標が見渡せるよう空の上。そうしてわたしはすぐに叫んでいた。
 すごく大きな岩の巨人が今まさにアリサちゃんを押しつぶそうとしていたから。
「こんの!!」
 ディバインシューター装填! ターゲットロック!
「シュートッ!!」
 もう絶対に友達は傷つかせないって決めたんだ。
 巨人の右腕を最初に弾き飛ばしてアリサちゃんを助ける。そのまま二発を回り込ませて正面から叩きつけて。
 あと残りは足元をすくうように踵にぶつけて重心を崩して、巨人を地面へ叩きつける。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:27:04 ID:nLOESEBs<>
「ディバイーン……バスターーーッ!!」
 岩の塊みたいな体をしてるだけあって倒れた轟音はここにいても頭の中にぐわんぐわん響く。
 それすら聞き終える前に巨人を真下にディバインシューターをこれでもかと浴びせた。
『Sealing mode set up』
 わたしの意志を汲み取ったレイジングハートはもう変形を終えている。
 もう後は
「これで三個目! ジュエルシード封っ印!!」
 繰り出される光の乱舞を前に勝利を確信して、だけど心は他に別のことを考えていて。
 なんでアリサちゃんが飛び出していったのか。原因は何なのか。
 もしかしてそれは全部わたしが原因じゃないかって。だってあの時わたしは確かにそう言ったんだ。
 二人揃わないと満足に戦えないって。
 それって馬鹿にして見下してるのと変わらないよ。でもそうでも言わないと二人が止めてくれないって思ったからで。
 嫌だな、わたし。これじゃ言い訳してるだけだよ。
「……なのは」
 わたしが降り立つと同時に呆然としながらアリサちゃんが名前を呼んだ。
 少しバリアジャケットが汚れてたけど元気なアリサちゃんそのままでわたしは心の中じゃすごくほっとして。
「どういうこと……アリサちゃん」
 なのに口から出た言葉は全くの正反対の気持ちで。すごく素っ気無く、ほんとに他人みたいに言い放って。
 ほんとのわたしの気持ちはどこにあるんだろう。
 こうなっちゃうんなら最初から一緒にいればよかった。分け合いたいから。
 でも一緒にいちゃいけない。傷つけてしまうから。
 傷つけてしまうの? あんな怖い思いをすれば誰だって。
 だから一人で傷つくの? 二人よりは傷つかない自信がある。
 なんでそこまでしたいの? みんなを守りたい。大切で大好きだから。
 じゃあわたしを守ってくれる人は?
「わたし……負けないよ。それで二人が納得してくれるなら」

 だから探してる。ほんとのわたしを。
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/17(木) 00:33:10 ID:nLOESEBs<> あ〜コミケは毎度疲れるわ
心くすぐるなのは×ユーノがなかったなぁ
自家発電するしかないか、文で
そんでもって次はなのはVSアリサだったり

>>640
えっ、このままザックリ!?
それはそれで(オイ

>>79
実際、停電になったらやりそうだしなぁ
この一家

むしろ前のレスでアンカー逆向きにしてる俺は何?orz
徹夜明けの投下は危険だな……

<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/17(木) 09:13:57 ID:qAG+JQ3J<> 「アースラがくるまでは待っていられない。そしてこの戦力で出来うる作戦としては、これがおそらくベストだ」

ゲル状の怪物を前にして、クロノが既に配置を終えた一同に念話を伝える。

まずは、前衛のヴィータと後衛のはやてが牽制。
これで可能なかぎりシグナムの周囲の水や触手を拡散、破壊しておく。
次に、砲撃。これを担当するのははのはとフェイト。
なのはのフルパワーのバスターに、フェイトが雷撃の効果が加わるよう補正をかける。
残った水を、これによりかなりの量、電気分解で消滅させることができるはず。
この攻撃で最低でもシグナムをあのゼリー状の身体から露出させ、
あわよくばコアとなっているロストロギアも露出させる。
シグナムの救出を担当するのは、クロノ。
加速魔法のみをかけて、全速力でシグナムをかっさらい、救助する。
このときロストロギアが露出していれば、シャマルの旅の鏡で捕獲、封印してしまう。

「この方法が──……最も成功する確率が高いはずだ」
「「「「「了解」」」」」

頷きあう少女たちを見回して、クロノもまた頷く。
自分を含むデバイスのない二名が不安要素といえば不安要素だが、やるしかない。
囚われているシグナムの身体のことも心配だ。

「よし……任務、開始だ。いくぞ」


魔法少女リリカルなのはA’s −その想い、緋に染まる暁のように−

第十話 甘えと剣と


彼を見つけたのは、降りしきる雨に濡れそぼった、森の中だった。
追いついた、というべきか。
暗がりに、雷によって浮かび上がった彼の顔はたった一晩で見る影もないほど変わり、憔悴していた。
唯一、その目だけにただ爛々と怒気のこもった眼差しが光っていて、彼の心中を表すだけにとどまり、
私もシャマルも、ようやく発見した彼の変貌に思わず息を呑んだ。

「……彼女のことなのか」

彼は答えず、携えた二本の剣を抜き。
小太刀と呼ばれる長さのそれは、幾度となく背中を預けあった戦場で目にした彼の愛用しているもので。

「愛する者を、殺されたからなのか」

視界から、その姿を消す。
全身を襲う突き刺すような殺気に、私が身を翻すと。
先ほどまで私のいたその場所に、彼の小太刀が突き立っていた。
──いや。完全に避けきることはできなかった。
右頬を一筋の赤いラインが走り、鈍く痛みを告げていたのだ。
動いていなければ喉笛が掻き切られていたことだろう。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/17(木) 09:14:54 ID:qAG+JQ3J<>
「っ……」
「団長さん……シグナム……」
「シャマル、下がっていろ……危険だ」

本気。シャマルを下がらせ、レヴァンティンを構えながらも、私は戸惑っていた。
戦うことなど、ありはしない──……そう言った彼の言葉が、空しくも昨日のことのように思い出される。

『……殺されたんだ、彼女を、子供を』

ぽつぽつと語る彼の声は、そんな頃の彼のそれとは大きく変わってしまっていた。
ぎりぎりと歯軋りを交え、掠れた低い声となった、まるで別人のような声。

『主と呼んでいた男に、敗残兵狩りの犠牲として』
『目の前で、焼き殺された』
『笑いながら殺された』
『彼に従うことはもうできない』

吐き捨てられる言葉とともにその太刀筋、一閃一閃が、必殺の軌道。
首筋を、心の臓を狙い放たれる、明確な殺意のこもった斬撃だった。

『殺しにきた相手は殺す』
『退かない者も殺す』
『いつかあの男も殺す』
『その邪魔をする者も殺す』

けれど、私は気付いていた。気付いてしまえた。
一撃一撃にこもる怒りが増していくほどに。
その怒りそのものが、彼の太刀筋を鈍らせ続けていっているということが。
騎士の本能、剣士としての感覚で、わかってしまった。
お互いの実力を知っていたから、その鈍った剣撃で私が倒せぬということも。
そのことにさえ気付かぬ彼の怒りは、一体どれほど深いものだったのだろう。

『たとえ、君であろうと』
「っ!!」

そして、その本能が、彼を殺した。
私に、殺させた。

「──…………え?」

頭上からの一撃に対しての、反射的な反応。
私が望むと望まぬとに関わらず、騎士として培われた私の感覚はそれを迎撃し。
彼の放った必殺の刃は私に届くことなく、鈍った太刀筋を雨に濡らし、我が愛刀に貫かれていた。
的確に捉えられた急所から噴き出す血流が私の顔へ、髪へと降り注ぎ、
彼の身体は身につけた騎士甲冑の重みと共に、泥の地面へと落下する。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/17(木) 09:16:32 ID:qAG+JQ3J<>
見開かれた彼の目は、まっすぐに私のほうを見ていて。
私は自分のやった行為にただ頭を振り混乱することしかできず。
何かを言おうと動いた唇は満足に発声もできぬまま、彼は絶命した。彼は、それっきりだった。
彼がこときれるのを見たとき、今までに感じたことのない激しい嫌悪感が襲ってきた。
雨に濡れた頬を、別の何かが濡らしていく。
胸の奥から、何かがせりあがってくるようなものを感じ、苦いものがこみ上げ、視界が真っ白になって──……。
視界を取り戻したとき、(おそらく)シャマルによって着替えさせられ、寝床に横になっていた。
彼女は何も言わず、何も訊かなかった。
私も、彼のことは訊けなかった。
主への報告の際にようやく、私が彼を「処理した」ことを知った。
城門の上に、裏切り者──彼が、晒されていたから。
肉の殆どを鳥に啄ばまれたそれが彼だと理解するまで、私はぼんやりとそれを見上げていた。

*     *     *

『──君の望みは、違うだろう』

男の声に、シグナムは目を開けた。
切っ先は目の前に突きつけられ、状況は何も変わっていない。
彼の突き刺すような視線も先ほどのままだ。
しかし彼の語る声、それは何百年ぶりかに彼の口から発せられていた。

『こんな幻影でも、君はもっと違う言葉が訊きたかったんじゃないのか?』

幻──自身をそう言った彼は、きつい目を彼女の目にじっと合わせ問い詰める。

「違う……?」
『君は、赦しを欲していたのだろう』

自身の負った罪を。
愛した者を斬ってしまったという負の過去を、清算したかった。
少しでも、身軽になりたかった。
故に、赦しを欲していたのではないか。
目の前の男とそっくりな一人の男と出会い、二人を重ね合わせて見るということで。
彼から一定の距離を置き、踏み込まないことで自分を戒め。
その代償として赦されることを望んでいたのではないか。

『騎士としての甘えだよ、それは』

甘え。それは騎士として、最も恥ずべきことのひとつ。
甘えは剣を鈍らせ、甘えは逃げ道にしかならない。

『闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッターの長でありながら』
「……」

斬られることで赦しを得ようなどというのも、甘えでしかない。
指摘され、唇を噛み、拳を握り締めてシグナムは俯く。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/17(木) 09:17:58 ID:qAG+JQ3J<>
『だが……嫌いではなかったよ』
「!?」

けれど罵倒のあとに待っていたのは、全く正反対の言葉。

『生真面目で。気を張っていて。堅物で。強さを持ちながら甘えを捨てきれぬ、弱い女性としての君は』
「な──」
『なかなかに、好ましかった』

これも彼の言うとおり、幻影だからなのだろうか。
突然の言葉の変化にシグナムの心はおおいに戸惑っていて。

『赦してなど、やらない』
「……」
『だが、気負う必要などない』

彼は自身の想いに従い、彼女は騎士としての務めに従ったに過ぎないのだから。
彼に義があったように、彼女には責があった。
互いの道を行き、ぶつかった。

『だから、背負うだけでいい。忘れなければいい』

眼前へと突きつけられていた剣が、緋色の炎に包まれ形を変化させていく。
忘れなければそれでいい。罪の意識を感じ続ける必要はない。

『一生、背負い続けろ。背負い続けて────その上で笑え。笑ってみせろ』
「……随分な無茶を言う」
『ああ、無茶だ。だが──君の笑顔は君が思うほど、悪いものでもないのでな』

償おうなどと、おこがましいことは考えるな。そのような自己満足、糞の役にも立たない。
ただ覚えていてくれれば、それでいい。償いという逃げ道に、甘えを求めるな。
背負って、笑え。

『だから、見せ続けろ。笑っていろ。それが僕の要求だ。死ぬまでこのことを忘れなければ、赦すかもしれない』
「……傲慢だな、幻影のくせに」
『それはお互いさまだ、たった一度斬られて赦されようと思っていたくせに』
「まったく、だな」
『ああ』

剣を包み込んでいた炎が、消失していく。
彼の手の内に残ったそれは、シグナムの魂とも言うべき、炎の魔剣。
その形状、姿に。一気にシグナムは自分が今まで置かれていた状況を思い出していく。
押し寄せる水の壁と、消えた意識。立っていた暗闇。それは彼の言葉の通りの幻影。
しかし、これは。目の前にいる、彼は。彼だけは──……!!

「……逝くのか」
『ああ。こんな幻に振り回されるなんて、君もまだまだだな、シグナム』
「悪かったな」
『君も早く戻るんだな』 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/17(木) 09:18:44 ID:qAG+JQ3J<>
差し出されたレヴァンティンを受け取ると、急速に彼の姿は薄まっていく。
薄まっていく姿で彼は右手を伸ばして、身長の頭一つ小さいシグナムの頭を、
くしゃくしゃと撫でていく。「幻影」──、そう、今の彼はただの幻影なのだ。

『──女としての君はなかなか悪くないんだ。戻ったら、もっと肩肘張らずに生きてみるといい』
「ああ……、努力、する」
『笑っていろ。──そう、その顔だ。忘れるなよ』
「ふ……く、だからそれは、無茶な、注文だと……」

頬を、一筋の雫が伝っていた。
堪えきれず閉じた瞳から零れ落ちたそれは、顎を伝い一滴一滴、ぽろぽろと落ちていき。
それに気付いた彼は、消えゆく右手を動かし、彼女の頬へと指先を伸ばし、拭って──。

────いや。拭おうと指先が頬に触れたとき、既に彼の姿は消失していた。

彼を失ったその夜から数えて、彼女の長い生涯において、たった二度目の「女」としての涙。
伸ばした手がそれを拭き掃うことはなく、彼は姿を消した。そこに闇と彼女だけを残して。
彼に撫でられた髪は少し乱れ、消えていった掌のぬくもりを残していた。

「──レヴァンティン」
『ja』
「……戻るぞ、いいな」

左の指先で掃われた水滴が、虚空を舞う。
感傷は、後回しだ。

私は、シグナム。ヴォルケンリッター、烈火の将。
課せられた任務も果たさずして、ベルカの守護騎士の名が泣いている。
涙など流して、いられようか。

「全開で、いくぞ」

腰だめに据えたレヴァンティンを、一気に抜き放つ。
同時に、全身に残る魔力をありったけ開放し、視界に広がる漆黒へと叩きつけるように斬撃を見舞う。
漆黒だった世界は、半透明から、空のブルーに変わり。
太陽の光り輝く懐かしき世界が、彼女の眼下に広がった。
彼女の愛おしき者たちがこちらを見上げ、彼女の姿に歓声をあげていた。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/17(木) 09:27:27 ID:qAG+JQ3J<> 明日から日常が戻ってきます、640です。世間では今日から日常も多いっぽいですが。
というわけでお盆休みの高速投下ラストです。
こんなシグナムさんもどうでしょう?…え、だめ?orz

>>83
なる。そういう需要もあるのね。
でもやっぱり実際に行って並んだ人が優先的に手に入れられるべきだと思うのですよ。
>>86
うん、ネタならネタのほうが俺もいいことだと思います。
誰も被害を受けないわけだし。

>>176
このメンバー(アリサ、すずか、なのは、フェイト)のA’sが
すごく気になるwwwやっぱり襲われるのはアリサとすずかの二人なのか、なんてww <> 67<><>2006/08/18(金) 00:43:02 ID:/8Dxd8Mv<> 覚えてくれているだろうか?

何年ぶりだこのスレ。いや、この板…
いつの間に11スレ目とは。

もうなのはからは足を洗ったから今小説見てもついていけないだろうなぁ…
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 10:25:38 ID:ISAMs5Of<> どうでもいいよ。
足洗ったとかついていけないとか、誰もお前に興味ないから。
そのまま消えとけ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 11:40:54 ID:vmx8ODLm<> リインU 「マイスターはやて、ない乳洗濯板ってなんですか?」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 11:49:55 ID:0BHjA/Ko<> >>105
保管庫に67というコテはなかったよ。あなたは誰ぞ? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 12:34:52 ID:l2whcntW<> そもそも顔も見えないのに覚えてるかってwww <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 16:36:57 ID:LPBs/ExY<> カルマの続きとか、もう一人のなのは?だっけ、その続きとか
気になる気になる。
首をながーーーーーーくして待ってますんで、職人さんたちよろしく。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 17:22:19 ID:0BHjA/Ko<> >>110
>もう一人のなのは?
4の422氏の「もう一人の私へ・・・」の事を言っているのか?
別に催促するのが悪いとは言わんが作品のタイトルくらい覚えといてもいいと思うぞ
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/18(金) 20:11:16 ID:11o71afH<> おれには549氏がすずか、640氏がフェイト、7スレ92氏が翠屋FCのマネージャー
4の422氏が、なのはの席の右斜め後ろのおにゃのこに見える、 <> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/08/18(金) 23:50:09 ID:jXiQnk5o<> >>112さん
一応誉められた、と思っておこう。背景の一部とはいえ顔はあるしw
いや、でもあのへんのガヤの声はユーノやらエイミィやらレティさんだと聞いたこと
があるぞ、そうか、俺もその辺のレベルには達しているのかっ!(要約:勘違い)

>>110さん
自分の作品だ、と解釈しておくとしてw(もう一人のなのは)
書きたいのは山々なんですが、今月に入ってまだ2日しか休んでないものでして…
書く時間なんかありゃしねぇ orz

>>111さん
存在を覚えてていただけるだけで今は満足ですのでw

>>176さん
3人なかよくシーリング、とかを期待して安堵していたのに(^^;)
もういいかげんになのはをー(ry

>>640さん
ほのぼのバトル(ただし外野のみ)が結構好きだったんですが、脱出したからには
もう終わりか、むぅ、残念だw
(感想になってないのはご容赦くださいw)
しかし投下早すぎです、さすがフェイトと称されるだけのことはw <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:23:23 ID:38BscoJ2<>
第6話 b part

 しまった――!
 そう思った時には全てが手遅れ。
 アタシを捕らえた無骨な拳は今まさに振り下ろされようとする瞬間だった。
「――っ!!」
 すずかがいればすぐにフォローを入れてくれるはずだった。でもすずかはアタシが置いてけぼりにしてここにはいない。つまり自分で守らなきゃならない。
 だからどうやって?
 当然のことながらアタシのバーサーカーは攻撃一本に特化した杖。
 守ることは大の苦手……ううん、守るという魔法自体入っていない。
 連休の時、リンディさんの授業で聞いたことを思い出した。インテリジェンスデバイスは自分の中の材料で魔法を作る。つまり材料がなければ出来るものもできない。
「あ……ぅ……」
 すずかだったら咄嗟にバリアを張って苦もなく弾き飛ばすはずだ。
 だけどアタシにはそんな力も、余裕持ち合わせてなんていなかった。足が竦んで、自分の意思じゃどうにも出来ないのだ。
 不覚だった。ちゃんと二人で向かっていればこんなことにはならなかったのに。
 感情に任せて行動して、自分を過信して、その結果がコレなんだ。
(なによ、結局アタシが全部悪いんじゃない)
 なのはを支えて、手伝ってあげようと思って手にした魔法の力。なのにいつの間にか見返してやるための力にしてた自分。
(……最低じゃないのよ)
 あとちょっともすればあいつの拳の餌食にされるのだろう。バリアジャケットが何処までアタシの体を守ってくれるのかわからないけどあんな重そうな拳だ、少なくとも無事じゃすまない。
 狼の時は幸い軽傷ですんだけど多分今度は――考えたくない。
 バーサーカーに笑われちゃう。こんな不甲斐ない人間がご主人様だなんて聞いて呆れる話だもの。
 悔しくて悲しくて怖くて、アタシは目をぎゅっと瞑った。
(悪い夢なら覚めて、なんて言わない。一思いにやりなさいよバカッ!)
 せめて心の中だけでは負けないように、精一杯アタシは相手を罵ってやった。
 真っ暗な世界でやってくるであろう衝撃に身を任せ覚悟を決める
 ――その時だった。
「シューーーート!!」
 何かが頭の上で弾けた。
 誰かの声、知っている声、あの子の声――。
 ゆっくりと目を開ける。アタシを押しつぶそうとした拳は明後日の方向へ弾かれ巨人は大きくバランスを崩している。
 続けざまに打ち込まれる光球。どれもが正確に相手に命中しさらにバランスを崩させていく。
(すごい……)
 言葉が見つからない。体当たりなアタシの魔法とはぜんぜん違う華麗な魔法。踊るように光球は巨人にぶつかり、弾けて、ついには相手の背中を地面へと叩きつけた。
 轟音が響き砂塵が舞い上がる。一瞬さえぎられる視界の向こう、砂のカーテンを吹き飛ばす光の柱。追い討ちが終わると同時に眩い輝きがアタシの目に飛び込んでくる。
『Sealing mode set up』
 レイジングハートが羽を広げた。光が辺りを包み込み巨人の体に幾本もの光の帯が絡み付いていく。
 勝負はあった。もうなのはの魔法から逃れられない。
「これで三個目! ジュエルシード封っ印!!」
 崩れていく巨体。光が巨人の体をもとの岩へと変えていく。
 そうして嘶きのような音が辺りをつんざくともうそこに巨人の姿はなくなっていた。
 後にはぽつんとジュエルシードが鈍い光を照らしながら浮いているだけだ。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:24:03 ID:38BscoJ2<>
 すぐになのはジュエルシードのところまで降りてきてレイジングハートの中に収納した。本当に非の打ち所がない手際の良さだった。
「……なのは」
 堪らずアタシは声をかけた。
 エイミィさんが教えてくれたんだろう。なんでなのはがここにいるのかは大方予想がついた。
 ともかく助けられたのは事実なんだしお礼は言わなきゃならない。
 未だバクバクしている心臓は自分の愚かさを教えられているようでばつが悪い。それを振り払うようにアタシは口を開こうとした。
「えと……なのは」
「どういうこと……アリサちゃん」
 だというのになのはの言葉に全てを止められた。
 変わりに
「……見ての通りよ。やるべきことをやって何が悪いの?」
 そんな目一杯の強がりが言葉になっていた。
 アタシは踵を返す。これ以上なのはの顔を合わせていられる自信がないから。
「悪いよ」
 足が止まった、止められた。
 静かに、でもはっきりと耳に飛び込んだ声はそれだけで体を支配されてしまったようだった。
 アタシもそのままで言い返す。見なくたってなのはの顔は想像がつく。だからこそなのはの顔を見たくなかった。
 胸の中に沸くのは罪悪感。抑えながらアタシは誤魔化すようにぶつけた。
「あんたが来なくたってあんな奴ぶっ飛ばしてたんだから。余計なお世話なのよ!」
「余計……なんだ。それでも続けるの? こんな目にあったのに」
 続けるつもり、なんて言わない。
 遠まわしに「こんなこともう止めて」って言っているのだ。答えた所でなんにもならないことくらい、わかってる。
 それがなのはなりの優しさだってこともわかってる。
「じゃああんたは一人でジュエルシード集め続けるの? またあんなぼろぼろになるわよ」
「……うん、そうだよ」
「だからアタシ達には黙ってみてろって?」
「わたしのせいで始まったことだから、わたし一人で終わらせる。誰にも迷惑かけないように」
「――っ!」
 だからこそアタシは引き下がらない。
 絶対この子はこう言うから。自分の事は自分だけで解決しようとするから。
 心の中に閉じこめてしまうから。
「ふざけるのもいい加減にしなさいよっ!!」
 なんでこの子ってこんなに責任感が強いんだろう。アタシだったらここまで出来るのだろうか。
 きっと途中で折れて誰かに相談したりして、少しでも自分の心の重みを分かち合おうとして。
 アタシはなのはに少しでもそうしてもらいたかった。
 だって秘密を共有し合えるなんて親友じゃなきゃ出来ないことじゃない。誰にも内緒で、自分達の世界を作ること。それって親友の証みたいなものだと思えるから。
 あんな突然のきっかけじゃなくて、なのはから手を伸ばして欲しかった。
 一年前のあの時だって……。
「アリサちゃん……」
 アタシはずっと、ずっと怒りながらなのはを待ち続けることしかできなかった。何も出来なった自分だったから。
 だけど今は違う。アタシにだってなのはと同じ魔法の力がある。同じ秘密がこの手にある。
「なんでよ、アタシじゃ力不足だって言うの? 確かになのはに釣り合うような力は持ってない」
「…………」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:24:43 ID:38BscoJ2<>
「でもね! それでもなのはのこと手伝うことぐらい出来るわよ。だから今日までこうやってジュエルシード集めてたんじゃない!」
 きっ、となのはの顔を睨みつけて心の中のありったけの想いを叩きつけながらアタシは強くバーサーカーを握り締めた。
 悔しいけどさっきみたいな有様じゃ半人前以下だってイヤでも思い知らされる。
 それでも負けたくない。
「アタシやすずかは駄目なの? フェイトじゃなきゃ駄目なの?」
「そ、そんなことないよ。フェイトちゃんはわたしよりもずっと魔法の使い方上手だし、強いし」
 そう、フェイトは強い。アタシたちの等分の到達点として見せてもらった戦闘の映像。
 アタシは二人の闘いに息を呑み、ただ見ていることしか出来なかった。近づけたと思って手を伸ばしても届くわけがないほどなのはが遠くにいると思い知った。
「じゃあ強いって見せ付ければ一緒にいてもいいわけね」
「えっ……?」
 アタシは、嫉妬してるんだ。
 ずっと強いなのはにも、一緒に隣で戦えるフェイトにも。
 わざとってわけじゃない。でもアタシやすずかをノケモノにして二人で絆を結んで。
 不公平じゃない。たった数週間で親友になれるのならアタシ達が積み上げてきた三年間はなんだっていうの? 
 友情をそんなことで測るなんて馬鹿馬鹿しいことぐらいはわかっているつもり。
 でも、なのはとフェイトにはそれ以上に強い絆がある気がして、その強い絆がアタシも欲しくて。
「アタシが勝ったらアタシもすずかも一緒に手伝わさせなさい」
 力不足なんて言わせない。なのはに近づけるならアタシはなんだってする。
「本気……なの?」
「見下さないでよ。これでも負けないつもりよ」
 なのはのことが大好きだから。
「わたし……負けないよ。それで二人が納得してくるなら」
『Shooting mode set up』
 なのはの杖が音叉みたいな形へと姿を変える。
「アタシだって負けるつもりさらさらないから」
『Hammer position set up』
 宝玉の後方を覆っていた金具が原型を崩し二本の爪に。攻撃形態へバーサーカーが移行した事を知らせる。
「全力全開……力の差、見せて上げる」
 ゆっくりと天へと掲げる杖。なのはの周りを光が囲んだ。
「いいわよ、来なさい……返り討ちにしてあげる」
 ゆっくりとバーサーカーを肩に担いで魔力を高める。
 自分の実力でどこまでなのはに食い下がれるか、そんなことは全くといっていいほど考えていない。
 あるのは――
(勝つ!!)
 ――それだけ。
「バーサーカー! Go!!」
 アタシのこの子を信じてぶつかるのみ――!
『Splash wave』
 駆け出すと共に杖をこれでもかと言わんばかりに大地へ叩きつける。
 地表を派手に巻き上げながら弾ける茜色の閃光。なのは目掛けて一直線に突き進んでいく。
「行くよ! レイジングハート!!」
『Flier fin』
 なのはの体が浮き上がる。足には羽、確かフライヤーフィンっていう飛行魔法だ。
 ほんの一瞬でなのはは中高く舞い上がりさっきまでいた場所へアタシの魔法が空しく駆け抜けていく。完全に間合いが遠すぎた。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:25:20 ID:38BscoJ2<>
「まだこれからよ!」
『Boost jump』
 距離をとるつもりなのか一気に空中へ逃げるなのは目掛けてアタシも大地を蹴った。
 弾丸になったみたいに体が躍動する。これにはなのはも驚いたみたいですぐさま別の方向へ体を切り返す。そこへ目掛けてアタシはもう一度杖を今度は虚空に向けて振り下ろす。
 弾ける閃光。今度は大きく扇のように波が広がっていく。
「そんなの!」
『Round shield』
 なのはが右手を前に突き出した。すぐさま広がる魔法陣。それは容易く波を防いで見せた。
 やっぱり空中じゃ威力が分散してしまう。
「今度はこっちから行くよ」
『Divine shooter』
 なのはがアタシに杖を向け周りに浮いていた光が次々に放たれる。
 数は六つ、なのはがもっとも得意とする魔法だ。
「シューート!!」
 トリガーが引かれる、もう考えてる暇はない。
「ブースト!!」
 空を蹴り上げその場から一気に離れる。同時にそこへ襲い掛かる光。一歩間違えば全部当たっていた所だった。
 でも息をつく暇はない、確かこれは誘導弾。
 鋭い軌道転換。すぐにこっちへ向かって来る。
「こっの!」
 もう一度空を蹴る。瞬間的な速さならアタシの方が上、この間だけなら追いつかれる心配はない。
 だけどそれだけでかわせれば苦労はしない。
 後ろの方でアタシを追っていた球が突然二手に別れる。二つがそのまま、残りはさらに二手に分かれて左右からアタシを挟み込もうと大きく曲がった。
 逃げ道を全部塞ぐつもりなんだろう。流石なのは、頭の回転は速い。
「なら、こっちだって」
 すぐにアタシも体を捻り今度は今飛んできた方向へ足を再び蹴り出す。
「でぇぇぇぇぇい!!」
 あっという間に距離が縮まり目の前には二つの球。それ目掛けてバーサーカーを力任せに次々に叩きつけた。
 ガラスのように光は砕け桜色が目の前を覆う。綺麗って素直に思える光の欠片。だけどなのははこの魔法でみんなを守ってきたのだ、さっきみたいに。
 当たれば倒される力の結晶、それがこれ。
「次っ!」
『Splash burst』
 振り向きざまに魔力をかき集め発射! 二発の弾頭が完璧なタイミングで残りの球を蹴散らし爆発!
 これでなのなの持ち弾はゼロ。今度はこっちが仕掛ける番だ。
「こっちだって伊達に訓練してたわけじゃないのよ!」
『Meteoroid』
 アタシの周囲を小さな恒星が取り囲む。
 全部で五つ。赤熱して今にも破裂しそうな魔力の塊を
「これでも食らいなさい!!」
 一斉発射!
 進路はなのは。あれだけ魔力を持っていればみんなうまく誘導される。
「くっ!」
 突然なのはが霞のように掻き消える。と、思えば少し離れたところに現れる。
 高速移動魔法を使ったみたいだ。でも五つの弾はアタシが誘導してるわけじゃない。視認しきれなくたって問題ない。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:26:01 ID:38BscoJ2<>
「一気に詰めるわよ!!」 
『Yeah! Buddy!』
 いうなれば自動追尾弾。大好きなご主人様に一目散に駆け寄っていく犬なんだ。
「こんなのでーっ!」
 なのはも黙っているわけじゃない。しつこく追尾してくるアタシの弾丸を自分の誘導弾で冷静に撃墜していく。
 一つ一つ爆発するたび膨大な煙幕が雲みたいに空に浮かんだ。
「アタシにも気をつけなさい!」
 今のなのはは隙だらけ。縮まる距離にアタシはバーサーカーを振り上げる。
「もちろん気をつけてるよ!」
 大降りの一撃はあっさりとかわされる。横目に見たなのははまだ余裕綽々といった所。焦りも何もあったもんじゃなかった。
「アリサちゃんだって自分ので自滅しないようにね!」
 背後で爆音。風圧と共にアタシの後ろからくすんだ雲が噴き出してきた。
 気がつけばあっという間に視界不良。なのはの姿を完全に見失っていた。
「う、うそ!?」
 まさかアタシの弾を目くらましに利用された!?
 やられた。あっちだってこっちの情報持っているのだ。アタシの得意な距離に詰められないよう勤めるのは当然のこと。
「まだ終わりじゃないよアリサちゃん!」
 上から響く声に見上げても目に入るのはいっぱいの煙。なのはは見えない。
 ここから出ないとまずい。全速力で上へと飛ぶ。
「これは受けきれる? シューターバリエーション! テンペスト!!」
 すぐに視界に捉えるもなのはすでに発射体制に入っていた。
 それだけならまだなんとかなっただろう。でも流石に十発も弾を用意されては話が別だ。
「なっ!?」
「いくよ! シューート!!」
 そこにあったのは理性ではなく本能めいた何か。
 感覚が足を動かし、景色が急降下し、風が体へ容赦なくぶつかる。
 あと追うのは光り輝く十発の誘導弾。
「スプラッシュ!!」 
 地面スレスレで方向転換しそのままスプラッシュウェーブ。
 それでも球はいとも簡単に波を潜り抜けていく。遊んでいるようにことごとくかわし、結局二つしか仕留めることが出来なかった。
(残り八つ!!)
 間違いなく止まったらやられる。止まったら最後、四方八方から襲い掛かる光の応酬にノックダウンは確実だ。
「こんのっ!」
 空を蹴り上げ最初の三つを交わす。
 続けざま上と下から、二つ、三つの光と肉薄する。そして避けた瞬間を狙って最初の三つが四方から襲い掛かる。
「ちょこまか!」 
 反射的に杖を振り下ろした。鉄槌が空を薙ぎ払う。けど球は触れるか否かのところで軌道を曲げてアタシの攻撃を簡単に避けていく。
 その動きさえ目で追ってる余裕はない。一箇所に留まった時点でアタシの負けは確定する。
 次はどこから!? 頭の中はそれだけでいっぱいだ。
 もしもなのはがこれにまぎれて攻撃してきたらと思うと、ぞっとする。
「でいっ!!」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:26:42 ID:38BscoJ2<>
 だけどなのははさっきと同じ格好で浮かんでいるだけだった。
 数は減ったけど八発も誘導するのは集中力が必要なのだろう。注意して見れば球の動きもさっきとは違って散発的なものになっている。
 動いている横で全然動いていないものがあったり、明後日の方向から急に引き返してきたり。
 球数が逆になのはにも思いもよらない隙を作らせていた。これならアタシが踏み込めるチャンスが出来るかもしれない
 かすかに見え隠れする希望。アタシは何度も空を蹴り上げその瞬間へ近づけようと試みる。
「はぁっ!」
 どんなに数が多くたって。
「こっちよ!!」
 球の間を掻い潜り。
「スプラッシュ!」
 急停止、急発射。
「なのはーーっ!!」
 真っ直ぐに、ジグザグに、がむしゃらに動いて。 
 球の一つがジャケットを掠めても止まるなんて絶対しない。
「っ!! レイジングハート!」
 なのはが叫ぶ。瞬間、目の前から飛んできた光がいきなり弾け、消えた。
 数は三つ。数を減らした?
(――後ろっ!?)
 ぎりぎりの所で何とかかわすも今度はアタシの上や下、さらに左右から残りが一斉に襲い掛かる。
 さっきよりも軌道が鋭敏。しかも速い!
「なるほどね……自分が最も得意な数で勝負するって! わけ!」
 突っ込んで来た一つを後ろに下がってかわしつつなのはを睨み付ける。
 正直まずい。一つ一つが違う生き物みたいに動き回られてはこっちだって避けられるかどうか。
 アタシの周りをぐるぐると回る光の球。完成間近の包囲網がある。
(どうするの……?)
 なのはもいつ攻撃するかタイミングを図っているのだろう。アタシを眼下に捕らえたまま動こうとしない。
 逃げられるかは微妙な所だ。完全に避けきれるなんて確率的見れば一桁程度もいいとこ。
 かといって一つ当たって体勢を崩されれば残りの餌食になるの目に見えたこと。
(動いたら負ける、動いても負ける)
 最悪のジレンマを抱えてもアタシはそれでも決して諦めない。
 例えアタシの限界が目の前にあっても。
(ほんとにそうなの?)
 自分に問いかけた。
 答えの代わりにバーサーカーを握り締めた。
(そんなわけ……ないでしょ!)
 ここまで来て負けるなんて冗談じゃない。
 諦めるなんてすずかもユーノも、まして矢なのはだって絶対にしない。
 ――だから考える。
 今は計算や理論が通じる場面ではない。必要なのは即ちアイディア、発想。
 限界と思ったら超えればいい。限界なんて、考えた時にしか生まれないんだから。
 答え見つけ出す時間はまだやって来ていない。
(避けられない……弾いてもダメ……なら――!)
 インテリジェンスデバイスは願いを形にする杖。
 アタシは願う、襲い掛かる光を振り払う魔法のカタチを。
 守れなくても守ることは出来る。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:27:18 ID:38BscoJ2<>
 攻撃は最大の――!
「防御よ!!」
 鉄槌の先に光の輪が生まれた。すぐさまそれは勢いよく回転し始める。
 新しい魔法が完成するのとなのはの攻撃開始の合図は完全に同時。
「これで終わらせるから!」
『Divine shooter』
 ピタリと全ての球が運動を止め、一呼吸の後アタシへ一気に襲い掛かる。
「それはアタシも同じ!」
『Counter presser』
 心の中でバーサーカーに声をかけ、アタシは芽生えた魔法を打ち下ろす。
 まずは一つ、正面から来た球を受け止める。だけど今度は砕かない。体を捻りそのまま後ろへそれを解き放つ。
 まるで野球のように、飛んできたボールを打ち返すように。
「いっけぇぇ!!」
 空へ再び放たれた球達は今度は飛んでくる球目掛け衝突し砕け散る。続けざまに横から飛んで来た二つも同じように次から次へ受け止め反対に弾き返す。
 一つを相殺させ、余って一つはなのは目掛けて! 
「ブースト! ジャンプ!!」 
 そっくりそのまま、相手に魔法をお返しする。それが土壇場で思いついたアタシの策。
 バーサーカーは応えてくれた。そう、この子だって簡単にあきらめたくはないのだ。
「チェックメイト! バーサーカー!!」
 なのはは驚きながらもぎりぎりの所で球を避け、すぐに杖を構え直した。
 魔力が集中し生まれる光。今までとは二倍、三倍も大きさが違う。
 距離は近い――でもなのはが仕掛けてくる魔法おそらく一つ。
「ディバインバスターっ!!」
 ドン! と轟音。それに続いて一条の閃光がアタシ目掛け突っ込んでくる。
 このまま飛べば直撃は当然。だからってアタシに避ける気なんて
「毛頭なし!!」
 下から上へ一閃。バーサーカーは光を苦もなく受け止めそのまま空高く弾き飛ばした。
 今まで直線だった光はアタシを始点にベクトルを直角に捻じ曲げられ明後日の方向へ飛んでいく。
 これには流石のなのはも面食らったみたいだ。顔には驚きと戸惑いが交互に表れ、発射中だった魔法をすぐに止めてみせた。
 不意に生まれた隙。待ちに待った瞬間。
 距離は十分。足が風を踏みつけなのはの姿があっという間に大きく鮮明になる。
 刹那ゼロ距離、アタシのフィールド。今度こそほんとにほんとのチェックメイトだ。
 なのはは正面! 当然アタシは突撃するだけ!
 全速前進、渾身の力を両手に込めて!!
『Crush dasher』
『Round shield』
 力と力、魔法と魔法が激しくぶつかり合う。
 眩い閃光、鼓膜を揺るがす轟音、交錯する桜色と茜色。
「くぅぅ!!?」
「はぁぁぁぁぁ!!」
 鈍い音と共になのはを守っていた障壁にひびが入る。なのはも必死に防御してるけどもうこの先どうなるかぐらいわかっているはずだ。
 亀裂は大きく、そして無数に際限なく増えていく。障壁を覆う蜘蛛の巣の中心、ミシミシと音を立てひときわ大きな亀裂が走った。
 アタシは握る手にありったけの力を込めもう一度杖を振り下ろす。
「やりなさい! バーサーカー!!」
『Yeah!』
 そして――割れた。
 粉々に割れた。
 桜色のガラスが夕日の照り返しを受けて鈍く輝く。
「でぇいっ!」
 今なら届く。絶対届く!
 もう二人を遮るものは何もない――! <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/19(土) 01:38:16 ID:38BscoJ2<> これを見てピンと来た方ごめんなさい
昔のあれをいじっただけです
しかもいじってたら文増えたorz
いつにもまして読みにくくてごめんなさい
多分次の話も明日中には……

>>640
今までご苦労様です
そして日常復帰後もお体に気をつけて頑張って

>>67
当方記憶力に自信がございません(マテ
よろしければ何書いてた人か教えてプリーズ

>>107
「それはな、ヴィータみたいな胸のことや。ちなみにわたしはちょっとはある!」

>>112
……わたしは?
いや別にいいんですけどね。エキストラPあたりでも、いっそガヤでも

>>4の422氏
ほら好きな子ほど虐めたくなる、あれ理論です
……大丈夫です次の話で完全な仲直りです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/19(土) 02:50:00 ID:AsaZ6lUQ<> 176タンはアリサにしか見えない。SSに愛を感じるコスモを感じる。 <> 67<><>2006/08/19(土) 05:33:51 ID:fE47Ucji<> マジすいません初代スレ以降来てないので知ってる人がいるはずありませんね…

吊ってきますorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/19(土) 09:37:52 ID:KuLbb7fP<> 小説家は小説で語り、音楽家は音楽で語る。
SS作家なら愚痴ではなく、SSで語ろう。
あとsageよう。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/19(土) 11:54:54 ID:m2VF3LMB<> >>124
↑のは作家でもなんでもなくただの構ってちゃんだから。
構うのはやめて放置推奨。じゃないと図に乗るよ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/19(土) 12:09:02 ID:pxu+MBMx<> 醜い <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/19(土) 13:15:54 ID:9I8J/PlX<> セイセイセイセイセイ

http://www.kirokirorinn.com/sirouto-gazou.html <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:33:20 ID:n86pvAr7<>
第6話 c part

「せぇぇっ!」
 ガキンと重い金属音に確かな感触。腕に伝わるのは確かな手ごたえ。
 すぐ前にアリサちゃんの顔、それを隔てるように杖二本。
 組み合う杖は拮抗する力にギシギシと音を立てた。
 危なかった――あと少しのとこやられてたわたしは。
「どうしてよなのは! これでも、こんなになのはに近づいているのにそれでもダメなの!?」
「違う……違うよ。わたしは二人に傷ついてもらいたくないだけなの!」
「それが気に入らないのよ! 自分がやったから、自分のせいだから、自分だけで終わりにしようなんて考え、アタシは認めない!!」
「わたしだって大切な友達が傷つく姿なんて見たくない!」
 押されかかる杖を腕に全身全部の力を注いで踏ん張る。だけどぷるぷると腕が震えて力が入らなくなってくる。
 まだ頑張れるよ、このくらいで! 
「もしもあの時アリサちゃんがもっと大変なことになってたらわたしどうしていいかわからないよっ!」
 勝手なことを言ってるのはアリサちゃんだ。
 そう思いたかったけど、わたしもアリサちゃんも言っていることとなんら変わりがないことで結局同じことなんだ。
「アタシは、ううん、すずかもユーノもあんたが傷つくの見ていられないのよ。なんで強がりばっかり言うのよ!」
「強がってなんてない! みんなを守りたいだけだから!」
 杖が軋み悲鳴を上げる。腕が痛くて、手はもっと痛くて、感覚も薄れてなにより目頭が熱かった。
 想いをぶつけて分かり合えなくて、もっと分かり合えなくなって、これじゃ子供みたいで。
 でもわたしは譲らない、譲りたくない。
 我が侭がわたしだとしても譲れないんだ!

* * *

 譲れない、絶対譲らない。
 こんな分からず屋に負けてたまるもんか!
「それが、強がりって、言うのよっ!」
「きゃああぁっ!!」
 信じられないくらいの力でアタシはなのはの腕を弾き飛ばした。お互い杖を握り締めた腕が宙に放り出される。
 腕が上がらない。なのはとの鍔迫り合いは自分でも気づかないくらいに力を出していたみたいだった。びりびりと痺れが走り感覚が曖昧になっている。
 でも痛いとか、辛いとか、なんて言葉は頭の中には浮かばない。片腕はバーサーカーを離さないようにするだけで精一杯だけど、まだこっちの腕は動かせる。
 だって目の前になのはがいるんだから。
 今ならきっと、ううん、絶対に届くから。
 だからアタシは残った腕を振るった。アタシが一番伝えたい想いをぶつけるために。
「いい加減に……しなさいよっ!!」
 
 ――パン!

 懐かしい。不意にそんなことを思う、乾いた音がした。
 あの子が頬を押さえている。アタシの手はジンジンと痛い。
 薄っすらと赤みを帯び始めた頬が改めてアタシが平手をしたことを実感させる。
 言葉でしか伝えられない想いがある。だけどアタシはぶつかることでしか伝えられない想いだってあると思う。
「アリサ……ちゃん……?」
「痛い? でも大切な友達を見てるしかない人の心はもっと痛いのよ!」
 放心するなのはを見つめながらアタシは叫んだ。これ以上にないくらいお腹の底から声を出して。
 時が止まったように辺りから音が消えた。残ったのは木々を揺らす風の音と耳障りなくらいのアタシの息遣い。
 頬に違和感が伝う。熱くて頬を濡らしていく何か。
 涙だとわかった。あの子の頬にも同じものが流れていたから。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:34:08 ID:n86pvAr7<>
* * *

 アリサちゃんにぶたれた……。
 思いっきり、手加減なしで。
 何がなんだかわからなくって……わたしの心が一瞬真っ白になって。
 止まらない熱いもの。それが悲しくて出ているのか、悔しくて出ているのか。
(痛いよ……)
 それ以上に心が痛くて泣いていた。
 傷つけたくないのに傷つけてた。守っていたはずなのに守れてなかった。
「……でも」
 頑張ってやってきたことが、わたしが信じてきたものが全部崩れていくような気がした。
 でも心のどこかではわたしは少しだけ安心していた。
 多分、わかっていたんだ。友達だからって、わかってくれるって甘えてただけなんだ。
「でも――!」
 一年前もそうやって、親友だからきっと待っててくれるって。
 でも信じていたものは何一つあってなくて。間違いだらけで。
『Restrict rock』
「え!? なのは?」
 わたしが魔法少女だって二人にばれた時はあんな怖い思いさせたから嫌われると思ってた。
 二人はそんなわたしを優しく包み込んでくれた。すごく嬉しかった。
 だから二人が魔法少女になった時は本当なら飛び跳ねるくらいに嬉しかったんだと思う。
 諦めることを思い知らされなければ、怖いって思いを知らなければ。
「ごめんね……アリサちゃん」
 両手両足、四肢全部空中に貼り付けてアリサちゃんの自由を奪い取る。ここまですればアリサちゃんだって何もできない。
 一瞬フェイトちゃんにアリサちゃんがダブって見えて前にも最後はこうだったなと思い出して。
「でも言ったよね、わたし本気だって」
 それにきっとアリサちゃんやすずかちゃんの魔法に嫉妬してたんだな。
 わたしが倒せなかった敵をあっさりやっつけて。なんか今まで努力してきたこと全部パーにされたみたいで。
 もし一緒にジュエルシード集めたらあっという間に追い抜かれちゃう気がして。置いていかれちゃう気がして。
「なら受けてみてよ、わたしの本気」
 いつも一緒じゃなきゃ……嫌だよ。
 巨大な魔法陣を目の前に展開させて輝きを集める。
『Starlight breaker stand by』
 そっか……わたしみんなと一緒にいたいだけだったんだ。
 三人仲良く、いつも一緒に――。
「カウントダウン――スタート!」
 だから譲れない。
 これがわたしの考えた三人が一緒にいられ続けるための答えなんだ!
「それで勝ったつもりなの……? だったらまだよなのは!!」
『Break charge』
「砕けろっ!」
 レストリクトロックが破られた!? やっぱりアリサちゃんだ、一筋縄ではいかない。
 でも、もうスターライトブレイカーは撃てるはず……なのに魔力が全然集まらない。
(そっか……これも)
 アリサちゃんはわたしよりも魔力を集めるのがうまいって聞いた。多分そのせいで空間の魔力に偏りが生まれているのだろう。
 地上では拘束から逃れたアリサちゃんがわたしと同じように魔力を集めてる。小さいけれど赤々と光る様は夕日がもう一つ出来たみたいで眩しく映る。
 魔法も想いも全力全開。その時もう目の前に。
 引き下がれない、負けられない!

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:34:58 ID:n86pvAr7<>
 着地と同時に空へ放る魔力球。夕日に負けない赤光を放ち、アタシの手を離れた途端周囲の魔力を根こそぎ吸い込み膨れ上がる。
 アタシの顔より一回り大きいだけだけどそれは魔力が極限まで圧縮された証拠だ。
『Okay,splash loaded completion』
 足元から魔方陣が広がりバーサーカーの宝玉が唸りを上げて光を放った。
 アタシはゆっくりと杖を後ろ手に構え直しその時を待つ。
「絶対に負けない」
 空でなのはが
「絶対に勝つ!」
 地ではアタシが
 
 いくわよ……バーサーカー! 
 
 ――なのは!

『Starlight breaker』
『Splash burst over』

「ブレイク! シューーーートッ!!」
「クリティカル! バーーーストッ!!」

 力の限り、自分の全てをぶつけるように、アタシは想いを天高く打ち上げた。
 全部をかけた一撃。風を引き裂き赤の軌跡を残して光は飛び続ける。その先には桜色の激流が同じように風を吹き飛ばしながら突き進んでくる。
「いっけぇぇ!!」
 声が重なり二つの力がぶつかり合う、その瞬間――!!

「二人とも駄目ーーーーー!!」

* * *

 気づいたときには足が動いて、とにかく叫んで、私は飛び込んでいた。
 上からはなのはちゃんの、下からはアリサちゃんの最大魔法。 
 受け止めるなんて出来ないのはわかっていた。でも止めなきゃならなかった。
 魔法を、なにより二人を。
「お願いシルフ……二人のために力を貸して!」
『Obey,mistress.Saver style stand by』
 フルドライブへの変形。鉄の羽は離れ青い羽が生まれ。
『Guadian sphere』
 私の願いは高らかに唱えられる。
 生まれる真っ青な球体は私を、周りを包み込んで大きく成長していく。
 刹那、衝突する二色の光。
 突然せき止められた光はもちろん暴力的な奔流になって私という邪魔者を押し潰そうとする。
 とんでもない魔力を両側から貰っては流石の結界にもヒビが入って行く。だけど私はすぐにそれを塞ぐ。壊される前に修繕して立て直す。
 拷問、そんな言葉さえ浮かんでしまう光景。火花みたいにぶつかり合う魔力が散って、眩さに目を細めて。
「私が……絶対……やってみせる!」
『I am here for that.Sphere full scale』 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:35:29 ID:n86pvAr7<>
 大きく、激しく、シルフの輝きが増していく。
 体から急速に力が抜けていく感じがして、襲ってくる眩暈を首を振って振り払って、ありったけの魔力を送り続ける。
 激しく稲妻を散らしながら球体じは蠢く。受け止めるだけならとっくに壊れてる魔力の量。
 こんな手加減なしに魔法を使って二人とも大人げないよ。
「いくよ……これで――!」
 二人の想いは私が受け止める!
 この結界だって受け止めるんじゃない……受け流すんだ!!
「風よ運べ! 想いと……願い!!」 
 習ったばかりの魔法の概念やインテリジェントデバイスのこと。
 私一人では最後まで組み上げられない。
 だからシルフがいる。互いに補い合って、決して一人じゃない。
「見てて二人とも。これが私の答え!!」
 木々を、大地を、空を染める蒼穹の光。
 それを前にアリサちゃんの魔法も、なのはちゃんの魔法も今までの勢いが嘘のように失われ青の中へ吸い込まれていく。
 掃除機で吸い込むように膨大な魔力を閉じ込めた結界は一際鋭い閃光を放ち、甲高い音と共に粉々に砕け散った。
 キラキラと輝き大気に霧散していく魔力の欠片からすごい魔力を感じる。
 私たち三人分の魔力、混じりあった想いと願い。
 ――私の答え。

* * *

「すずか……」
 すずかの足元、飛行魔法の時に出てくる光の輪は今にも消えそうなくらい淡い輝きを放ちながら明滅している。それがすずかにどれだけ無茶な量の魔力を使わせたのかわかってしまう。
 ゆっくりと地面に足をつけるすずか。ぐらりと体が揺れた。
 それでもバランスを崩す寸前、杖を支えになんとか踏ん張る。
「す、すずかっ!」
 慌ててアタシは駆け寄った。
 らしくないほどに荒々しい息遣い。肩で息をして、額には汗がにじみ、こめかみから一筋汗が流れた後が見えた。
 向こうからもなのはが同じように駆け寄ってくるのが見えた。
「あ、アリサちゃん……」
「な、なんでこんなことしたのよ……。大丈夫なの、すずか」
「そんなの……決まってるから」
 息も絶え絶えに言葉を吐くすずか。顔は白く、とても儚くて立っているだけでやっとじゃない。
「二人とも……もう気は済んだ?」
「ユーノくん……」
 木の陰からユーノが現れる。いつもと違ってどこか冷たい表情は呆れられてるようで怒っているようで。
「後から来てみればあんな派手に戦って……封時結界がなかったら大変なことになってたんだぞ」
「あ……その、ごめんなさい」
 なのはがしゅんとしながら肩を縮こまらせた。アタシもユーノの静かな剣幕に気まずくなる。
「ふぅ……今度からは気をつけること。僕からはこれだけ、あとは」
 ユーノが振り返った先にはすずかがいる。目配せしながらユーノは一方後ろに下がった。
 代わりにすずかがわたしたちの間に立ち、そのままおもむろに
「はい……仲直り!」
 アタシの手となのはの手を取り触れ合わせた。
「すずか……ちゃん?」
「なのはちゃん、私たち二人でジュエルシード集めるの今日で止めるね」
 すずかの言葉に思わず自分の耳を疑った。でもいきなり耳がおかしくなるなんてある分けなくて。
 一体この子は何を口走ってんのよ! <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:36:06 ID:n86pvAr7<>
「ちょ! すずかなに言って」
「アリサちゃん、今日から三人になるけど大丈夫だよね」
 えっ……?
「すずかちゃん、わたし」
「そ、そうよ勝手に決めないでよ!」
「じゃあ二人はどうしたいの?」
 紡がれる言葉一つ一つにアタシもなのはも大いに戸惑って。なんだか強引に言いくるめられ手いる気がして。
 唐突な質問にもアタシはどう答えていいのかわからずどぎまぎしてしまい。
「ぶつかったんだよね。言いたいこと全部言ったんだよね。だから何も言えない、そうだよね?」
「えっと……」
 ふっ、と表情を崩すすずかになのはは恥ずかしそうに目を逸らして。
 そう言われてしまうと……確かにそうで……そんな気がして。
「って一体何が言いたいのよ……すずか」
「気持ち……押し付けあっちゃ駄目なんだよ」
 ゆっくりと静かに、語り聞かせるようにすずかが言った。相変わらず優しげな笑みを浮かべて、なんだか楽しそうに。
「なのはちゃんは私たちに怖い思いさせたくなかった」
「うん……そうだよ。だってしたくないでしょ?」
 それは痛いくらいに伝わってきたなのはの想いだ。
「アリサちゃんはなのはちゃんが一人で頑張りすぎるのが見ていられなかった。もちろん私も」
「……そうよ」
 がむしゃらにぶつけたアタシの、すずかの想い。
「同じだよね、それって。友達が傷つくのが嫌だから守ろうとして」
 黙って、ちょっとしぶしぶな感じで頷く。
「そこまで考えて私……気づいたんだ。こうすればいいって」
「どうすんのよ……」
「どうするの?」
 綺麗に声が重なって、その様子にすずかが笑って
「すごく簡単なこと……回り道しちゃったけど、いつでも始められること」
 そっと囁いた。

「分け合おうよ、気持ち全部を」

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:36:40 ID:n86pvAr7<>
「手を差し伸べるだけじゃない。その手を繋いで、嬉しいことも悲しいことも、みんな分け合おう」
 今まで触れていただけの手をすずかちゃんが握り合わせる。
 わたしの右手とアリサちゃんの左手。指と指を絡ませて、すずかちゃんに促されて自然とそうなって。
 あったかい……アリサちゃんのぬくもりが伝わってくる。
「守るんじゃなくて守りあおうよ」
 そよ風みたいに優しくてわたしの心を全部包み込むような声。じんわりと胸に広がる言葉はわたしの中にあった何かを溶かしていくような感じがした。
 守りあう……今まで思いもしなかった言葉。
「私たちはなのはちゃんを守る。でも私たちが危ないときはなのはちゃんが守って」
「そうすればわたしもアリサちゃんもすずかちゃんも傷つかない」
「ほら、簡単なことでしょ?」
 ほんとだ、ほんとにわたしたちの想いが一つになった。
 すずかちゃんのさっき魔法みたいに想いが一つになった。
「辛いことや悲しいことは半分こ、三人だから三人分こ。でも楽しいことや嬉しいことは三倍」
「ずいぶん都合いいじゃないのよ」
「そうだよ。それにフェイトちゃんだっているから四人分この四倍だよ!」 
 今の喜び全部表すようにすずかちゃんが大きく頷けば釣られてわたしたちも頷いていた。
「これならいいよね、なのはちゃん」
「……うん」
「アリサちゃん」
「……ええ」
 もう拒む理由なんてどこにもなかった。
 あんなにいがみ合ってたのにもうそんな感情どこかに飛んで行っちゃったみたい。
「不器用すぎるね、わたしたち」
「でも分かり合えたからこれで良かったんだよ」
「そう思わないとやってられないものね」
 そうしてみんな笑いあった。ほんとに可笑しくて、馬鹿馬鹿しくて。すごくちっぽけな問題にわたしたちは頭を抱えていたんだ。
 ひとしきり笑いあうとすずかちゃんがまた口を開く。
「じゃあ改めて魔法少女として自己紹介。自分の得意なことと意気込みを。まずはアリサちゃん」
「あ、アタシ!? ちょ、言いだしっぺから言いなさいよ」
 指名されたことに驚きながらもアリサちゃん冷静にすずかちゃんに返した。
 すずかちゃんはというと結構ノリノリな感じになっている。
「しょうがないな。じゃあ私からだね」
 すっと息を吸ってデバイスを見せながら話し始める。
「私はジュエルシードを見つけるのが得意。二人が危ない時はシルフと一緒に絶対守るよ」
『I'm pleased to meet you』
 スラリとしたすずかちゃんのデバイス――シルフが輝きながら挨拶する。
「はい、アリサちゃん」
「も、もう? ……わかったわよ」
 少し照れ気味に、でもやっぱり自慢げにアリサちゃんが口を開いた。
「アタシは壊すこと。このバーサーカーと一緒になのはの道を拓いてあげる、感謝しなさいよ」
『If so you need a little devote yourself』
「あんたは余計なこと言わないの! わかってるんだから」
 あはは、なんだかアリサちゃんらしいデバイス。バーサーカーって名前のわりに面白い性格だ。
「まったく……ほら、あんたの番」
「うん!」
 もちろんわたしは
「魔法少女暦一年高町なのは。得意なことは撃つことでレイジングハートと一緒に狙った獲物は逃しません!」
『Let's make an effort to become a best partner together』
 レイジングハートが光ると他の二つも挨拶するみたいにピカピカと光る。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:37:28 ID:n86pvAr7<>
「敵に回すと厄介ね」
「大丈夫、敵に回る時だって一緒だよ」
「それはそれで物騒じゃない?」
「かも」
 わたしの望んだものが今この手にある。解れかけた絆はまた一本の揺ぎ無い絆になって、前よりもどんなことにも負けないカタチになって。
「よかった……三人ともまた仲直りできたね」
「ユーノくん……」
「僕も体を張った甲斐があったよ。二人とも手加減なしなんだから。こんなに結界を維持するのに力使ったの初めてだよ」
 言うなりユーノくんは光になってフェレットに変身した。
「少し疲れたからさ、ちょっとこの姿で休むね」
 わたしの肩に乗るのだろう。いつもと違ってやけにゆったりした足取りでとてとてわたしに方に寄ってくる。
 て、あれ? 確かユーノくんって……。
「ちょ、ちょっと待ってユーノくん!!」
「え? なに?」
 ユーノくんは疲れのせいで全く気づいてない。
 二人にはフェレットのユーノくんはユーノくんじゃないって言っちゃってるし……。
「やっぱりそうだったんだ」
 すずかちゃんにはなんだか感づかれているみたいだけど
「…………」
 アリサちゃんは口をパクパクさせながら石像みたいに固まっていた。
 なんだか微妙に震えてるのは気のせいですか?
「あっ……」
 ユーノくんもようやく気づいた。
 わたしたちの顔をきょろきょろ見回して最後はわたしの方を助けを請うように見上げている。
 瞳が潤んでいる。
(なのはぁ……)
(うん、手遅れだね)
 ほらアリサちゃんがご立腹だ。無言でバーサーカーを振り上げてる。
 わたしはとばっちりを受けないようにユーノくんから離れる。そっと、そーっと。
「なの」
「去勢」
『Hammer squash』
 ズドン!
 名前を呼ぶ前に鉄槌が落ちた。
『Hammer squah squah squah squah sqaush squah――』
 ズドズドズドズドズド!!
「去勢去勢去勢去勢去勢処刑去勢去勢」
 ドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!!
 ――こ、怖い……。
 ロボットみたいに無表情。右手だけがすごい勢いで上下してる。
 ハンマーが地面を叩くたび砂煙が舞い上がってだんだん大きくなって。時々細かい砂や小石の破片が飛んでくる。
 最初の一発からユーノくんの悲鳴すら聞こえず、砂煙で無事なのかすらわからない。
 削岩機みたいに地面を粉砕し続けるアリサちゃん。これは止められない……。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:38:10 ID:n86pvAr7<>
(ええと、これはほら温泉の時わたしだって見られたわけだし、すずかちゃんもお姉ちゃんや……その分ってことで)
 ごめんね、ユーノくん。
「天誅」
 ズゴーーーーン!!
 そんな一際大きな爆音が炸裂したのを最後にアリサちゃんの怒りもようやく収まったわけで。
「生きてるかな……ユーノ君」
「大丈夫だと思うよ、アリサちゃんだし……多分」
 しばらくしてももうもうと立ち込めた煙は消えなくて、気まぐれな風のおかげでうようやく晴れて。
「あ……お…………ひぃ」
 目も当てられないくらい地面は陥没して月面のクレーターよろしく大きな窪みが完成していた。三十センチくらい深さはありそう。
 その窪みの中心に見事なくらい毛並みが乱れたフェレット一匹。時折痙攣して呻いてる。
(大丈夫? ユーノくん)
(ぜんぶ……よけられ……た……お…………ふへ)
 ……。
 …………。
 駄目だこれ。
『He have brought it on himself』
 うん自業自得。
「思い知りなさい、乙女の怒り」
『Yeah!』
 未だ先端から白煙を上げるバーサーカー。このアリサちゃんには絶対勝てないんだろうな。
 もちろん忠告じゃなくて警告だ。
「さて! 気も済んだことだし帰りましょうか」
「そうだね……うん! 帰ろう」
「なんだかすごい疲れちゃった」
「ほんとへとへとだよね」
 時刻はいつしか夕方の只中。 
 見上げれば真っ赤な夕日に茜色に染まる空。夕日から離れた空は日暮れに遠いようでまだ青い。
 でもオレンジ色の雲を浮かべて少しずつ青も夕日と混じって鮮やかなコントラストを見せてくれる。
 景色全部が夕日へ集まっていくような、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
「あっ、二人とも見てよ!」
 指差す先にぽつんと光る輝き。夜空を始める一番星に自然と微笑み、わたしにはこの全てが今のわたしたちのように思えて。
「まっ、なんにもしても荷が下りたって感じがしてよかったわ」
 もうすぐ日没。すごく赤くなって眩しくて、みんな引っ張って星を、夜を連れてくる。
 だから夕日はアリサちゃん。わたしやすずかちゃんをいつもぐいぐい引っ張ってくれるリーダー。
「ほんと一時はどうなるかと思った」
 すずかちゃんは空。夕日や雲や星を浮かべてくれるようにわたしたちを優しく包んで橋渡ししてくれる。
「なんだかまた明日って頑張れる気持ちになるね」
「まさに記念すべき今日を飾る最高の景色よ」
「記念すべき?」
 アリサちゃんが静かにデバイスを掲げた。デバイスの先にはもちろんあの星。
「アタシたち海鳴魔法少女隊の結成記念日よ!」
 自信たっぷりに言い放ってアリサちゃんは満面の笑顔になった。
「そうだよね、私たちようやくまた仲良しになれたんだから」
「……うん」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:39:08 ID:n86pvAr7<>
 喧嘩もしたけどこうやってわたしたちは三人揃ってここにいられる。
 笑顔も涙も、今は全部分け合える。なんでもっと早く気づかなかったのか自分が恥ずかしい。
「ねぇ、アリサちゃん、すずかちゃん」
「なに?」
「ん?」
 だってわたしにはこんなに誇れる
「わたしたち親友だよね」
「当然! さらに言うなら大親友よ!」
「そうだよ、それ以外に思いつく言葉ないもん」
 友達がいるんだから。
「でも、なんだかんだでなのはのこと大切だからここまで出来るのよね」
「私たちがここまで出来たのもなのはちゃんのおかげだよ」
「一人で何でもかんでも頑張れて、でも一人だから放っておけない」
「なのはちゃんに笑っていて欲しいからどんな時も一緒に居たいって思えるんだよ」
 二人の言葉に胸が温かくなっていく。
 そう、だからわたしは一番星なんだ。みんなのために光り輝いて、でも時々不安になったり、だけどみんなそばにいてくれるからもっと、もっともっと輝ける。
「誰が欠けても駄目なんだよね」
「ようやくわかってきたじゃない、なのは」
「これでもう怖いものなしだね」
「当たり前よ」
(よかったね丸く収まって)
 すごく遠慮がちに念話。そういえばユーノくん生きてたんだっけ。
「こっち来ればいいのに」
「なんだか邪魔する気も悪いかなって思ってさ」
 いつの間にか木陰に隠れてたみたいでこっそり出てくるユーノくん。
 ちゃっかりもとの姿でなんだか足取りが重いのは気のせいかな。
「大丈夫よ、もう気は済んだし」
 今度こそぺっちゃんこになるんじゃないかって思ってるんだろうな。
「ほんと勘弁してよ。本気で命の危機を感じたんだから」
「まぁいいじゃない。お詫びにあんたもアタシたちの魔法少女隊に入れてあげるわ」
 腰に手を当て胸を張って、すっかりアリサちゃんが上の立場だ。
 ユーノくんがちょっと可愛そうにも思えるけど、でもしょうがないか。
「あんたはマネージャー! スケジュール管理とか雑用もろもろよろしくね!」
「えーっ! 何で僕が」
「文句ある?」
「ないです」
 あはは、決まっちゃったみたい。でも仲間はずれにはならないんだしよかったんじゃないかな。
「さぁ明日も明後日も全力全開で頑張るわよ!!」
「うん!」
「もちろん!」
 きっとこれから先どんなことが起こったってわたしたちは負けない。
 芽吹いた絆を友情を、胸に掲げて勇気と希望、不屈の心で

 リリカルマジカル頑張ります!!
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/20(日) 01:54:48 ID:n86pvAr7<> これにてStep第1部「魔法少女爆誕!」編(オイ終了
次からは全く出番がなかったフェイトやアリシア、クロノを
軸にお話は進みます
第2部「お兄ちゃんと呼んでくれ!(嘘)」編

一応小休止ですので
風化しかかってるクロ×エイの続きを書こうかと
エロが久しぶりだ

最後にちょっと小話
某所で見たアリサすずか魔法少女化では
アリサ遠距離、すずか近距離と真逆になっておりました
やっぱり人それぞれなんですかね
私としては三人の原点であるあの喧嘩からイメージを作ってたんですけど

アリサ:喧嘩のきっかけ→遊撃、切り込み→攻撃特化
すずか:喧嘩の仲裁→遮断、介入→防御特化

こんな感じです、ではノシ <> 名無しさん@そうだアリサに投票しよう<>sage<>2006/08/20(日) 09:47:18 ID:UxFQEae1<> クロxエイ…楽しみです <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:09:57 ID:JWk3LgR9<> お久しぶりです、ようやく書き終わりましたので投下します。
あと今回、注意書が何時もより多いです。

似非(えせ)クトゥルフ神話注意
オリジナル魔法注意 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:10:33 ID:JWk3LgR9<> なのは 「平穏だった時空管理局が遭遇した
     史上最大の大事件!」

フェイト「現れたのは古の文明、意思の疎通さえありえない敵
     そして、僅かな時を経て、戦いの火蓋は落された。」

クロノ 「戦士達は、過去最大の敵に己の全てをぶつけ、<遺失世界>ルルイエに挑む
     たとえ、その末路が冷たき骸だったとしても、」

フェイト「そして、激戦の中でこそ紡がれる数々の物語、」

なのは 「魔法少女リリカルなのはACF、始まります!」 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:11:10 ID:JWk3LgR9<> 第5話『激しく荒れ狂う戦火なの』

ソレは己の配下の侵攻先に、『何か』が無数に有る事に気が付いた。『何か』は
明らかな敵意を持って、己の配下を待ち受ける。ソレは人ならざる思考で配下を動かした。
『何か』は数が多いが、どれも矮小で取るに足らない物であった。だが、
配下が『何か』に接触しようとした矢先、前面の『何か』から無数の光が伸びてきた。

アルカンシェルの光が次から次へと異形の軍勢に向かって伸びて行く、
光は軍勢に吸い込まれて消えていった。

閃光

轟音

衝撃

全てが去った後には異形の先発部隊は跡形も無く消し飛んでいた。しかし、異形の軍勢は怯まなかった。
加速し、突っ込んで来る。近接してしまえば撃てない、それを知っていると言わんばかりに
全力でその圧倒的な力を行使する為に、だが、その力の行使を阻む者達が居た。
その者達は己の母艦から飛び出し全力で異形を迎え撃つ、無数とも言える人の軍勢、さらにその間を
縫うように母艦が砲撃を開始する。遥か昔、伝説の時代には勝負にすらならなかった戦争に
人は必勝の数をもって再戦を挑む、自分達の世を終わらせないために、


広いとも狭いとも取れる室内は、無数のゲージで埋め尽くされている。
ゲージの大きさは様々だで、その中に奇妙な物体が一つづ収めるられている。
物体は大雑把に二つに分類できた。すなわち、
封印されているにも拘らず強烈な魔力を発する物と、
封印をしている事を疑問視されるほど魔力が感じられない物
その2つの勢力の境界を進む者達が居た。
「ふう、これでイデアシードちゅうやつは最後やな、」
魔力を失った宝石を厳重に封印しなおし、はやては一息付いた。
「次は何だ?」
「え〜と、炎神、だそうよ、大丈夫、封印解いた瞬間に暴走するなんて事は無いわ」
シグナムの問いにシャマルが答え、ザフィーラがMD状のロストロギアが封印されたゲージを開ける。
その時、ヴィータが声を上げた。
「始まったみてぇだ。」
全員が動きを止め、ヴィータの端末を見る。そこには確かに『開』『始』の二文字が踊っている。
今頃、激しい戦闘が行われている筈だ。はやては友人の身を案じ、静かに目を閉じた。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:11:46 ID:JWk3LgR9<> 異形と人の戦いは最初から熾烈を極めた。異形と正面から渡り合える物は少ない、だから数で相手をするが
それでもこちらの方がやられる場合が多いのだ。それはアースラ艦隊でも同じだった。
なのはの指揮する部隊も激しい攻撃に曝されている。最終的に彼女は班を大きく三つに分けた。
まず後方から複数のグループに分かれて強壮砲撃を叩き込む砲撃班、そして、
彼等を守る防衛班、彼等は特に防御魔法の素質が高かった者が選ばれた。
最後はなのはと共に、足りなり所を補う極少数の遊撃班、ここに割り振られた者は非常に判断力に優れた者である。
轟音と共に砲撃が飛んでいく、しかしそれは狙いをアッサリ外してしまった。流れ弾として何かには
当たるだろうが、その時には減衰しきっているだろう、だが、その砲撃に何かが横から突っ込んだ。
見ると異形が砲撃に消し飛んでいる。変わりに今まで異形がいた場所にはなのはがいた。フラッシュインパクト
で異形を砲撃に押し込んだのだ。彼女はそのままフラッシュムーブでその場を離れ、
次の瞬間には、自分の倍以上はある異形を明々後日の方向に飛んで行こうとした艦砲射撃に叩き込んでいた。
そのままアクセルシューターを発射、バリアの薄くなった所に全弾当てて貫通、
「行け!!」
号令を出すとそこに他の遊撃班が高速弾を集中、沈黙させる。
彼女はそのままアクセルシューターを操り、甲板に降りてきた異形をなぎ払った。
それをものともせずに突っ込んできた一体は、プロテクションで受け止め、バリアブーストで吹き飛ばす。
砲撃魔導師の戦い方を知っている者なら目を疑うであろう変化自在の攻撃、
これこそが彼女の強みであり、他の砲撃魔導師と大きく違う所である。
彼女を表す言葉に「単独戦闘可能な」砲撃魔導師があるのは伊達では無いのだ。そして、
彼女とは違い、忠実に砲撃魔導師の戦いをしているのが砲撃班だ。
その彼等のデバイスが一斉に音を鳴らしカートリッジをロードする。扱いが難しいはずの
カートリッジシステムを彼等は扱い、己の魔力を使わない、これがヴィータ達との模擬戦の果てに導き出された
結論である。すなわち、長期戦に自分の魔力だけで挑むのは余りにも無謀、
ただし、経験の浅い彼等が安全に扱えるように使用に当たってはマニュアル化してあり、さらに、
カートリッジに依存しないでも、威力にさえ目を瞑れば同じ魔法が使用可能にしてある。
規格はなのはやフェイトと同じ物、なのはにフェイト、それにヴォルケンリッターと、カートリッジに
精通したものが周囲に多数いたから出来た芸当である。彼等はその魔力を生かした強壮砲撃で確実に敵を静めて行く、

その光景を横に見ながら激しく動き回る影があった。フェイトは異形をかわしながら、特に強めの敵に
一撃を見舞って行く、彼女が無視したり、しとめ損ねた敵は彼女の背後で一般の武装局員が
集中攻撃でしとめて行く。彼女の背後にいるのはなのはの隊とは別のしっかりと実績を積み重ねた部隊である。
だから彼女のこんな無茶な戦法が使えるのだ。フェイトは背後を気にしずに前方の敵に集中する。
ワンアクションでカートリッジを詰め替え、前方の異形達に狙いを定めると多数のプラズマランサーを放つ
先頭の異形は防御を選択、バリアを展開する。が、プラズマランサーはその直前で停止した。
次の瞬間向きを変え周囲の異形の無防備な側面を襲う、異形の判断が一瞬鈍る。その時にはすでに
フェイトはすでにその異形の前に居た。バルデッシュの刃が異形を分断する。
そして再びカートリッジをロード、傷ついた残りの異形をなぎ払う、次の瞬間には別の敵に狙いを定め
ハーケンセイバーを立て続けに放っていた。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:12:22 ID:JWk3LgR9<> その状況をモニタ越しに確認し、クロノは次の指示を飛ばす。思ったより新人部隊の動きが良いので
余裕が有る。各地の戦況も概ね良好な様だ。ただし、これは相手の本隊が動いていない為だ。
この夥しい異形はルルイエに潜む軍団のほんの一部に過ぎない、異形の群れの多くは
ルルイエの内部、世界と同じ名を持つ寝殿の守りについている。そしてそこに、
ルルイエの最大戦力にして主<旧支配者>クトゥルフが鎮座しているのだ。
その事を考えると被害は最小でなければならない、彼はなのはの隊に帰艦命令を出そうと通信を入れようとする。
その時
「これは!前方に強魔力反応!!」
「!?バリア全開!対衝撃用意!急げ!!」
飛んできたその砲撃はアースラを狙った物では無かった。護衛艦として使用されていた巡航M級艦ポアビツに
深々と巨大な砲撃が突き刺さり、ボアビツは抵抗も出来ずに爆発四散する。そしてその先に巨大な怪物がいる。
「あれは!?」
戦闘前に聞かされたSSS以上の化け物ズールー、それが直ぐそこまで来ていた。すぐになのはは指示を飛ばし、砲撃が化け物に集中する。
だが、そんな物痒くも無いと言った素振りでソイツは悠々と魔方陣を展開する。
周囲に数多(あまた)のスフィアが浮かぶ、少し心得のある者ならそれら一つ一つがスターライトブレーカー
に匹敵する威力があることが見て取れる。そしてそれらは真っ直ぐ、だが高速で発射された。
彼女はとっさにカートリッジの弾奏丸一つ使用してアクセルシューターを有りっ丈作り出し、発射した。
それらはソイツの作ったスフィアにぶつかり軌道を変えていく、その操作を手伝う者が居た
フェイトだ。彼女も同様にプラズマランサーを駆使して軌道を変えあわよくばスフィア同志ぶつけて
相殺しようとする。別の動きも有った。遠距離発動に長けた魔導師達がスフィアの直前に
バリアやシールドを展開、減衰させようとする。だが、それでも決して少ない量のスフィアが
威力を保ったままアースラ艦隊を襲う、
「本艦、左舷に被弾!ツパス左舷に……」
艦橋に被害の報告が響く
(くそ!魔力が違いすぎる!!)
クロノの歯軋りし、砲撃を続けるように指示をだす。バリアで守られているとは言え、
魔力は削っているはずだ。いくら単体が強くても数の暴力にかなうはずが無い
だが、そんな思惑を他所にソイツは悠々と魔方陣を展開し、今度はアースラに照準を定め砲撃魔法の光を灯す。
もちろん、全員黙って見ていた訳ではない、アースラは前方にバリアを集中する。そしてそれより
前に出る物が居た。フェイトだ、彼女は砲撃の着弾予想地点にて相手を見据え、2重の環状魔方陣を展開、
そこより放たれるのはプラズマスマッシャー、狙うはズールーの砲撃との反応爆発、
これならば、技の威力は関係ない、 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:13:00 ID:JWk3LgR9<>
轟音

フェイトの目論見道理二つの砲撃は互いに反応し大爆発を起こす。
(やれたか!?)
だが、彼女は己の目を疑った。
その中を砲撃が飛んで来る。圧倒的な魔力の差に全ての魔力が反応しなかったのだ。
さらにズールーは未だに砲撃を放ち続けている。その魔力に動揺し判断を鈍らしたフェイトの前方で
砲撃が2度目の反応爆発を起こし、フェイト自身は腕を引っ張られてその場から連れ去られた。
見ると、彼女の腕をひっぱているのはなのはの中隊の遊撃班の一人で、
2度目の反応爆発を起こさせたのは、彼女の隊の魔導師である。
さらにアースラはその2回の爆発により十分とは言えないが時間をえ、
射線上から辛うじて外れていた。もはやその射線上に人は居ない、
しかし、ソイツは砲撃を続けたまま、その射線の向きを変えてきた。その先にはアースラがある。
バリアを展開したところで何秒持つか、
フェイトの横の魔導師が叫んだ
「隊長!?無理です!」
視線を見ると異形を弾き飛ばして進む白いバリアジャケットがある。手に持つのは突撃槍
推進力は3対の桜色の翼、それを支えるのは2倉式に増強されたカートリッジシステムと
それによって行われるタイムラグの無い弾倉の交換だ。彼女はすでにズールーの目前に迫っていた。
それを見た瞬間、フェイトの姿はその魔導師の横から消えていた。
なのはの狙いは唯一つ、高速突撃方エクセリオンバスターA.C.S、その完成型を
ズールーのバリアが最も薄い部分、即ち、砲撃の発射地点に叩き込む、その為には砲撃を逆流する必要がある。
彼女は今まで用意していた全てのワイドエリアプロテクションのカードを展開、範囲を狭めて
自分のみにバリアを集中、未だ砲撃を続けるその地点に突撃する。
フェイトはその光景を見てクッと唇を噛む、ソニックホームにソニックムーブまで併用して飛んできたが間に合わなかった。
(まだ距離が遠い、でも!)
彼女はワンアクションでカートリッジを詰め替えるとバルデッシュが変形、巨大な剣と化す。
さらに一枚のカードが宙に浮かぶ、込められた術式は今放とうとしている物と同じ物、
予め込めておいた魔力を使い、自分自身で強壮を行う、
ジェットザンバー・フルパワー、彼女の最大の攻撃をなのはの突撃と同時に放つ、少しでもなのはの突撃の前に
敵の魔力を削る必要がある。そしてこれならばそれ以上の効果も期待できる。
なのはは展開したカードともに魔力の濁流に身を躍らせる。もう弾倉を取り替える余裕は無い、
(お願い、進んで!)
使用できるカートリッジはたったの12発、それをすり潰し、逆流の中を突き進む、周囲のカードが
悲鳴を上げる。だが、確実に、前へ進む、そして、ついにズールーの体にストライクフレームが突き刺さる。
それとジェットザンバーがバリアに突き刺さるのはほぼ同時だった。
だが、次の瞬間、

閃光

轟音

ズールーを中心に爆発が発生、二人はなすすべも無く吹き飛ばされる。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:13:36 ID:JWk3LgR9<> 「二人は!?」
クロノの叫びにエイミィが映像を映し出す。
最初に映ったのはフェイトだった。
彼女はとっさに体を庇ったのか左腕が砕け、バルデッシュに引きずられた右腕は
肩辺りから半分ほど裂けていた。バリアジャケットは辛うじて残っている程度であり、
痛々しい傷が浮かぶ、それでも意識保つ彼女は、そのままの姿勢でズールーを睨みつけている。
次に見つかったなのはさらに悲惨だった。超至近距離から突撃の姿勢のまま吹き飛ばされたため、腕が下がり、
レイジングハートの柄が腹に突き刺さり貫通している。バリアジャケットはほぼ全損しており
覗く皮膚は焼け爛れ、一部で内臓が顔を出す。顔が軽く抉れるだけで済んだのが奇跡的だ
あのカードが無ければ即死だろう、意識は完全に飛んでいた。
「フェイトーーーー!」
アルフの叫びが木霊し、吹き飛ばされてきたフェイトを抱きとめる。それより前方に短距離転送を行った
遊撃班員が自分の隊長を助けに行く、
「あれは何だ!?」
クロノは目を疑った。動きを止めたズールーにあの爆発でダメージを受けた異形達が流れ込んで行く、
良く見ると流れ込まない者も多い、その違いは例外が有れ、僅かにでも動いているか否か
(まさか!?)
一瞬で何が起こっているのかを理解し、次の瞬間には行動に移す。
「遺憾ながらこの空域を放棄する。本艦を除き戦術的撤退!!
 エイミィ!アルカンシェル準備、急げ!!」
「え!?りょっ了解!」
「総員撤収!発動準備が完了する前居に帰艦せよ!!」
アースラの前方に環状魔方陣が展開される。

「アルカンシェル!?無茶だよ!?」
アルフの悲鳴じみた叫びが聞こえる。まだアースラの周囲に敵は多い、さっきの爆発が無差別攻撃だったとしても
艦の周辺に被害は無かったのだ。だが、周囲の部隊はすでに撤収準備を始め、有りっ丈の大技を
周囲の敵に叩き込んでいく、その横では魔法である程度回復したフェイトがバルデッシュを無理矢理掴み
立ち上がった。左手は未だ完全には再生していない、先に使用できるようになった右手だけで激痛を無視して構え居る。
とにかくアルカンシェル発射準備完了までに周囲の敵をある程度以上倒してアースラに帰艦しなくてはならない

「……シャマルさんのカードを大分使わせてしまったな。」
なのは教導官の口調で部下に軽く詫びる。術式変換の煽りで威力が落ちても流石と言うべきか、
それ数枚と部下のごく一部が習得していた回復魔法で彼女は辛うじて動けるようになっていた。
それでも動けるようになったと言うだけで酷いダメージなのは変わりが無い、
例えばレイジングハートが貫通した腹は未だ皮膚や肉が回復せず、破れたバリアジャケットから
血の色の筋肉が除く、それでも彼女はレイジンクハートを構え、カートリッジをロードする。
「準備完了までに時間が有る!少し暴れるよ!良いね!」
「了解!」
彼女達はデバイスを片手に陣形を立て直す。彼女はその中心になってレイジングハートを構えた。
魔力は殆ど尽きている。カートリッジだけが頼りだが、しっかりした足取りで敵を見据え
大量のアクセルシューターを作り出し、
「アクセル!」
その叫びを合図に、彼女の中隊が動き出す。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:14:13 ID:JWk3LgR9<> 動かないズールーに次々と異形が流れ込んで行く、その前方では纏わり付く異形を追い払いながら
白い環状魔方陣を展開するアースラが有る。
クロノの見立ては正しかった。ズールーは傷ついた異形達のリンカーコアを喰らい、砲撃で消費した魔力を回復して行く
恐らく、術式は違えどはやての蒐集と同じタイプの魔法だろう、味方を喰らい己の戦闘能力を回復するのだ
果たしてどちらが先に動くか、
「全員帰艦しました。」
被弾の警報が鳴り響く艦橋でエイミィが冷静に状況を報告する。すでに目ぼしい敵は倒してある。
バリアを貫通できる敵は居ない、あの爆発の御陰で敵の援軍も無い、開き直ってしまうと楽な物だ。
モニタを見ると艦内の医療班が帰艦した魔導師達の手当てをしていた。
その中になのはやフェイトの姿を認め、彼は心の中で胸を撫で下ろす。
あの行動突発的な無茶は注意しようとも考えたが、直ぐにそれを改める。彼女達が動かなければアースラは沈んでいただろう、
それは詰まり、彼女達の行動が正しかったと言う事だ。巡航L級艦とAAA“程度”の魔導師の優先順位など
数値的には比べるまでもないのだから、
「発射準備完了!」
エイミィの声に無言で頷き、鍵に手を掛け、
「照準、ズールー!アルカンシェル、発 射!」
鍵を廻す。それとズールーが再び動き出し、バリアを張るのはほぼ同時だった。
「着弾確認、転送します!!」
アースラは空間が湾曲する範囲より少しだけ離れた地点に現れる。

閃光

轟音

衝撃

その中でクロノはアースラを近づけるギリギリの位置に持っていく用に指示を出す。
後退した戦線を一刻でも早く戻さなくてはいけないからだ。
「晴れます……」
エイミィの報告を聞くまでも無くモニタの視界が晴れる。そして
「なっ!?」
ズールーは生きていた。湾曲した空間から生還し、確かに其処に存在している。だが
「全軍突撃!!今のズールーに魔力は無い!!」
クロノの号令で彼の指揮する全ての部隊が動き出す。目標はすでに人並みのバリアを張るのが精一杯になったズールーだ。
ズールーはなすすべも無く崩れ落ちた。

歓声

部隊から上がった声をクロノは動作一つで制する。これは長く続く戦いのワンシーンでしかない、
今アルカンシェルの御陰でこの空域の敵は少ない、直ぐに陣形を整える必要があるのだ。
「通信が着ています。」
「つなげ。」
直ぐにモニタに右翼総司令官の顔が映し出される。
『ズールーの撃破ご苦労、早速で悪いが至急データーを送ってくれないか?』
『はい、了解しました。』
クロノがエイミィの方を向くと、すでにエイミィがOKのサインを出していた。
送信が終わったのを確認して、クロノが彼に向き直る。
『有難う、そうか、随分無茶をしたのだな、だが、その分データーが詳細に渡っている。助かるよ、
 艦隊の被害も大きいか、ならミッドチルダ第295艦隊がそちらに向かわす。
 彼らが辿り着き次第、持ち場を任せて補給に戻りたまえ、』
『了解しました。ここ以外の戦況はどうですか?』
『ああ、好調だ、最も、ズールーの数で左右されるアヤフヤな物でしか無いがね、』
『そうですか、安心しました。では失礼します。』
通信が切れた。クロノが叫ぶ
「聞いたか!?援軍が来るまでの辛抱だ!総員、それまで生き残れ!」
クロノの号令は通信にのり、アースラ艦隊全てに響き渡っる。そして
『了解』『了解』『了解』……
その答えと共に彼らは前を見据え、異形の軍団に狙いを定める。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:14:53 ID:JWk3LgR9<> 『グレアム提督、大丈夫ですか?』
その通信に艦橋の“上”に立つグレアムは苦笑する。
『ああ、大丈夫だ、それと、私はもう提督では無いのだよ、』
彼はもう何度繰り返したか分からない言葉を反す。彼とリーゼ姉妹はそれだけで独立した隊として
遊撃を繰り返していた。今もロッテが異形を蹴り飛ばし、アリアのスティンガーブレイドが飛んでいく、
彼は戦況を見極め、大きく息を吸い込んだ。ここが使いどころだと判断したのだ。
気が付くとリーゼ姉妹が戻ってきている。3人同時に魔法陣を展開した。
スティンガーブレイド・エクスキューションシフトを三人がそれぞれ自分の特性に有った様に
強壮して行く、周囲に浮かぶスティンガーブレイドは軽く千を超え、その刃はバリア貫通の特性を持つ。
彼は満足そうに頷き、その魔法の狙いを敵陣の中央に定める。
アリアが慎重に友軍から軌道を外し、ロッテが最も効率の良い範囲に敵を捕捉する。
「スティンガーファランクス・エクスキューションシフト!!」
三人の叫びが重なり、無数のスティンガーブレイドが発射される。それらはその名に相応しい殺戮を撒き散らし
異形の軍勢が後退する。だが、その先にいたのは
「お父様アレは!?」
「……ズールー……話に聞いた奴か、」
巨大な化け物が居た。巨大な黒い塊は、ヌメヌメとした触手の塊でその間から真っ赤な目がのぞく、
直ぐにその化け物に砲撃が集中し始める。その一方で既にズールーに遭遇した部隊からの詳細な情報が表示される。
その中にはアースラの報告もあった。それらの情報にざっと目を通し、彼は艦長に通信を繋いだ。
『ふむ、艦長、』
『なんですかグレアム提督、』
『あの化け物、どうもズールーでは無いらしいな、』
『え、あ、確かにそうですね……ベツの存在か、そうでないか……だが、』
『ああ、やるしかない、それと恐らく、司書長の情報の中にデータがある筈だ。』
『確かに、おい、照合急げ!』
最後の言葉は彼にではなく、オペレーターに向けられた物だろう、彼は通信を切る。
「さて、我々がやることと言えば雑魚の掃討だ、」
それだけ言うと魔方陣を展開、彼の周囲をカードが舞い踊る。
すでに二人の使い間はそれぞれの敵を求めて飛び出していた。
<> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:16:00 ID:JWk3LgR9<> 「後方に、艦隊出現、識別……ミッドチルダ第295艦隊、来ました!!」
「来たか!」
クロノの叫びに全員が安堵の吐息を漏らす。
「何をしている!まだ我々の役目は終わっていないぞ!」
クロノはそう言って指示を出す。だが、直ぐに彼らは追いついてきた。
艦隊同士が重なり、一時的に艦隊の密度が倍になる。
『よう、時空管理局!ここは我々に任せて帰りたまえ!』
軽い感じの向こうの提督にクロノは苦笑を持って返す。
『まだ慣らしが終わってないんだろ?それまでは付き合うさ、』
『ハッ!そんなもの、直ぐに終わらぁ!』
彼はそう言って、艦隊の編成を戦場に最適になるように組み直す。その動きによどみは無い
為るほど、口調は軽いがそれだけの裏づけはあるようだ。クロノはそう判断すると撤収を指示した。

「みんな、聞いた?撤収するよ!砲撃班は後4発撃ったら、防衛班はそれを確認してから。
 遊撃班は私と殿(しんがり)良いね!」
「了解!!」
元気の良い返事が返ってき、なのはは胸を撫で下ろし、だが、直ぐに気を引き締め、飛び立ち
異形を一匹外れそうになった艦砲に叩き込んだ。感嘆を漏らすのは始めてみるミッドチルダの軍人たちだ。
そのままディバインバスター・エクステンションを撃とうと、魔方陣を展開したら報告が来た。
「隊長!防衛班撤収終わりました!」
「分かった!先に帰って、直ぐに戻るから!」
「了解!」
彼女は渾身の砲撃を直撃させると、ミッドチルダの隊長に向かって敬礼をする。
「では、後はお任せします。」
「OK、任せられた。それじゃあなヴァルキリー!」
敬礼を返すと彼は前方を向いて号令を掛ける。
「野郎ども!慣らしは終わりだ!気を引き締めろ!でないと俺の手料理一週間だ!」
「そりゃ無いっすよ、隊長!」
そう言いながらも彼らの動きは鋭さを増していく、その光景を尻目に彼女はアースラに帰艦した。

バルディッシュが異形を切り裂く、既に管理局の者は周囲に自分とアルフしか居ない、
それを確認するとフェイトはアルフに向かって言った。
「先に帰って、大丈夫、直ぐに離脱する。」
「でも……」
渋る使い間にフェイトは優しく諭す。
「アルフのスピードじゃあ離脱できないから、」
「分かったよ……」
渋々アルフが下がるのを背に感じながら、フェイトはバルディッシュを振り上げる。そのまま異形を切り裂くと
次の瞬間、ジャケットをパージ、一瞬でソニックホームになるとブリッツラッシュを駆使して
一気にアースラ甲板に辿り着き、先に帰った筈のアルフを出迎える。
「あ……ただいま」
ばつの悪そうな顔をするアルフに笑みを返し、近くにいた。ミッドチルダの隊長に敬礼をする。
「それでは……」
「ああ、任せてくれたまえ、」
彼は敬礼を返すと、帰艦するフェイトを見送った。
「良い子ですね、」
近くにいた隊員が漏らす
「ああ、良い子だ。だから俺たちはやらねばならん、彼女の守った物を守り、脅かす物を排除せねばならん、」
そう言うと隊長は隊員達の方に向き直る。
「その為には……分かるな!」
「ええ」「勿論」「当然」……
手を休めずに口々に返す隊員の声に隊長は満足そうに頷き、自分も魔方陣を展開する。
「なら、それを態度で示せ!分かったか!!」
「了解!!」
全員が気合の声を上げる。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:16:36 ID:JWk3LgR9<> アースラのモニタに格隊の撤収状況が示される。
「……、全員帰艦、ツパス、全員帰艦、本艦……全員帰艦しました。」
エイミィの声にクロノは頷くと全艦に命令をだす。
「コレより、補給陣地に後退する。贐(はなむけ)だ!3発撃ったらそれぞれ転進しろ!」
その号令通り、各艦は次々に機尾を返して行く、アースラも同様に大きく向きを変え、最後に通信を入れる。
『それでは、後は任せるよ、』
『ああ、後方で我々の活躍を拝んでな!』
通信が切れる。あとは補給陣地まで一直線に戻るだけだ。

サブモニタには返って行く巡航L級艦が見える。それを見ていた補佐官が呟いた。
「あれって……アースラですよね、」
「らしいな、知っているのか?」
提督は興味の無さそうに問いかける。
「ええ、あの闇の書事件を解決したって言われる艦ですよ、」
その言葉に提督が眉を潜め、念話に切り替えた。
『闇の書の勢力を管理局に迎え入れたっていう奴か?』
眉唾物だな、そう付け加える。
『ええ、私は18年前の事件の当事者です。そしてンカイとの最終戦でアレを目撃しました。』
そう言って唇をかみ締める。
『同じだったのか?』
『ええ』
『そうか……だが、味方だ、今は忘れろ、命取りになる。』
『そうします。』
提督は少し目を瞑って直ぐにカッと見開く、
「6番隊、3番隊の補助に当たれ!3番隊は補給だ急げ!」
それだけ言うと、サブモニタに目を走らせた、そこにアースラはもう映っていない、
(やれやれ、あいつら伝説の担い手かよ……土産話に事欠かねぇ戦場だなまったく、)
<> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:17:13 ID:JWk3LgR9<> 補給陣地は近くの次元世界の内部に作られていた。アースラはそのドッグに停泊すると素早く、修理と補給を済ませて行く
「あと、20分ほどで補給は終わるけど、修理の方で一時間ぐらい取られそうね、」
「そうか、まあ、そんな所だろう、」
クロノはそう言うとオレンジジュースを飲み干した。下を見るとエイミィがサンドイッチを食べている。
その他にもみな思い思いの所で食事を取っていた。武装局員とフェイト達は食堂に居る筈だ。
「ん?通信です。右翼旗艦を通して、ミッドチルダ第295艦隊から通信が来ています。」
クロノに疑念の色が浮かぶ
「繋いでくれ、」
直ぐにモニタにさっきの提督の顔が映し出された。
『やあ、管理局の諸君、食事中に失礼するよ、』
相変わらずの口調に少々面食らいながらもクロノは言葉を返す
『どうした?そちらは最前線だろ?』
ああ、と彼は頷いた
『大口叩いた手前、恥ずかしいんだけどね、次元越しの援護射撃をお願いできるかな?
 ああ、そこまでピンポイントでする必要は無い、数発大きいのを密集地帯に打ち込んでくれればいい、
 確か一人居ただろう?』
ばつの悪そうな顔をするに彼にクロノは直ぐに頷いた。
『わかった。現在の配置をリアルタイムで送ってくれ、それと……たぶんもっと大きいのを叩き込めるぞ』
『?』
首を捻る相手を無視し、エイミィに向き直る。
「エイミィ!」
彼女は指を立てて答える。
「もう連絡してるよ!甲板に向かっている筈、」

なのはは甲板上で魔方陣を展開していた。横を見るとフェイトも同様に魔方陣を展開している。
魔方陣同士は互いに太い線が絡まるように延びて融合していた。
周囲には武装局員達が同様に魔方陣を展開して彼女達の負担を軽減しようとしていた。
ディバイドエナジーで魔力を回復したと言ってもまだ疲労が残っている事には変わりないのだ。
その二人の前にはモニタが浮かんでいた。そこには刻々と変換化する戦場が映し出されている。
二人はその敵の密度が最も高い部分に狙いを定める。
「お待たせしました。おっきいのいきますっ!」
なのはの声にフェイトが答える。
「N&F次元間殲滅コンビネーション!」
二人の声が重なる
「「空間攻撃ブラストカラミティO.D.J」」
「全力全開!」
「疾風迅雷!」
「「ブラストシュート!!」」
次の瞬間、二人の周囲を対流していた魔力が一斉に消えた。
「成功……したかな?」
「どうだろ?」
二人の疑念に答えるようにモニタの敵に変化が起こる。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:17:48 ID:JWk3LgR9<>
ミッドチルダ第295艦隊は苦戦していた。敵の数が多いのもそうだが、周囲の艦隊がズールーとの戦闘で
後退を余儀なくされた事も大きい、
「くそったれ!」
甲板で指揮を執っていた6番隊の隊長は悪態を付く、
部下の多くが傷を負ったが艦に戻って手当てを受ける事も出来ない、そうしてその間にも、敵の攻撃は激しくなっている。
援軍はまだか?
そう思った矢先、世界が歪んだ。
「なんだ!?」
前方、敵が最も密集している辺りの次元空間に異変があった。膨大な魔力が渦巻いている。
とぎの瞬間

閃光

轟音

それが終わった時にはその一帯の敵が亡骸となって漂っていた。
「これは……」
『後方艦隊からの援護射撃だ!お前たちは自分の敵を倒せ!!』
通信の声に、ハッとなった彼は直ぐに指示を飛ばす。もうあの空域から敵の援軍は来ない、
別の方面に陣形をシフトする。

モニタから敵の一群が消えた。をれを見入る二人は確かな手ごたえを感じる。
周囲では武装局員達がディバイドエナジーとカートリッジシステムを併用して、二人の魔力を回復させている。
「もう数発行けるかな?」
「大丈夫、バルディッシュ 」
「Yes, sir」
「レイジングハートは?」
「No problem」
「じゃあもう一回!今度はここにしよう、」
二人は魔方陣を展開、術式に従い発動の為の儀式を執り行って行く、

『やあ、有難う、周辺艦隊の援軍が来て、敵が少なくなったよ、もう自分達の回復に全力を
 注いでくれて結構だ。』
アースラの艦橋モニタにミッドチルダの提督が映し出される。
『そうか?今儀式中のが一発行く筈だがそれを最後にする。』
クロノはそう言うとため息を付いた。
『しかしズールー一体に随分時間が掛かったんだな、周辺艦隊も確かミッドチルダだろう?』
すると彼はため息を付き返した
『アルカンシェルを打ち込むような無茶をしないだけ常識的だろう?』
『条件が整ったから撃ったまでさ、無茶じゃない、それをしたのはうちのエースだ、』
それを聞いて彼は肩を竦める。
『そっか、まあそれじゃあその戦乙女(ヴァルキリー)達に宜しく言っといてくれ、
 本気で助かったってね、』
『分かった、それでは、健闘を祈る。』
『ああ、任せてくれたまえ、』
通信が切れて、クロノは大きく息を吐いた。修理完了まで後少し有るが、危険な隊が出るまで
出番は無い、甲板が映ったサブモニタではすでに武装局員達が撤収していた。
良く見ると、そこにお昼ご飯の入ったバスケットを持ってくるアルフの姿が映っている。
どうもあの二人は甲板で食事の続きをする事に決めたらしい、
その様子を片隅に自分も昼食を平らげる。食べ終わる時には
総司令官から右翼旗艦を通して指令が来ていた。
「……これは……」
署名は確かに総司令艦になっている。彼は息を飲むと口を開く
「エイミィ、艦内放送をそれとアースラ艦隊全艦に同様に……」
「どういう内容だったの?」
「これから伝える。」
疑問符を残し、エイミィから作業終了の報告が入る。彼は一拍置いて口を開く、 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:19:25 ID:JWk3LgR9<>
『アースラ艦隊の諸君、
 未だ食事を取っている者も居るだろうが
 そのまま話を聞いてほしい、

 たった今、
 連合軍総司令官から直々に任務を頂いた。
 本艦隊は現時点より右翼師団を離れ、
 ルルイエ先発突入師団に編入される。
 非常に名誉な事である。

 我々は
 30分後に出港、
 2時間後に突入体性に入る。

 多くの勇士とボアビツを失い、
 戦力が低下している我々であるが、
 諸君なら、
 きっとその役目を果たしてくれる。
 そう信じている。
 
 以上!
 諸君等の一層の働きを期待する。』

クロノの合図で通信がきられる。艦橋は沈黙したままだ。
彼は静かに毒づいた
(うちには新人部隊も居るんだぞ……何考えてやがる!)
だが、30分と言う時間は余りにも短く、悪態を付く時間もないまま
その時間はやってくる。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:20:00 ID:JWk3LgR9<>

無限書庫で情報収集に明け暮れるユーノは一枚のデスクにを手にして眉を潜めた。
書庫と言っても今のご時世別に本以外の記憶媒体があてって当然何だが、
「魔導物語?」
パッケージを見る以上どう考えてゲームである。試しに解読魔法で中をのぞく、
一秒ほどして彼はため息を付き、顔を上げた。そこには一人の司書が居る。
「次から、魔導物語も外してくれない?」
そう言って、司書から書物を受け取る。ふとモニタに影が掛かる。
「通常業務はどうしたの?」
振り向きもせずにそう問いかけると、彼は事も無げに意はなった。
「今の状況では利用者が居る方が不思議なぐらいなもので、」
そう言って彼、副司書長は首をすくめる。
「そう言えばご存知ですか?あと30分程で先発隊がルルイエに突入するようです。」
ユーノは黙って横を指す。そこには一つのモニタに現在の戦況が映し出されていた。
当然、その情報も表示されている。
「……何もかもお見通しと言う訳ですか?……しかし予想より遅いですね、」
その言葉で初めてユーノは顔を挙げる。
「そうでもないさ、思ったよりルルイエの兵力が打って出ていてね、ズールーだけかと思えば
 ペシュ=トレンも、挙句にオトゥームまで繰り出してきてるよ、全部寝殿の直衛かと思ったのに、」
副司書長が首を傾げる
「すると寧ろ楽に進んでいると……」
「そうなるだろうね、最もルルイエの最大戦力クトゥルフは未だ半覚醒、
 これで苦戦してもらっちゃあ困るよ、本命ははカルコサなんだから、」
そう言って、本を一冊用済みの山に掘り込んだ。無造作に投げられた本は何故か綺麗に積み上がる。
彼に言わせれば慣れの問題らしいが、未だに副司書長にさえ出来ない業だ。
「まあ、不安要素が無いわけじゃあない、特に心配はクトゥルフだ。半覚醒のまま果たして終わる相手だろうか?」
まさかね、そう首を竦める彼に副司書長は頷く
「そると心配なのは彼女のことですか?」
そう言った彼の目の先にはユーノが表示していたモニターがあった。そこに表示されたデータの先発師団の中に
アースラ艦隊の文字がある。しかし、ユーノは気にした様子も無く、彼に答える。
「まさか、なのはなら絶対無事だよ、僕が言うのだから間違いない、」
そうですか、そう彼はそう頷くと、しかし直ぐにニヤッと笑って
「私は別に高町教導官の事だとは言っていないのですが、」
「なっ!」
思わず赤面するユーノと笑い声を残し、副司書長は通常業務に戻っていった。 <> 魔法少女リリカルなのはACF
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:20:36 ID:JWk3LgR9<>
なのは 「遂に<遺失世界>ルルイエに突入した次元世界連合!」

クロノ 「しかし、内部の敵は強大で、次々と友軍は散って行く、それでも我々は引く事が出来ない、」

フェイト「寝殿に眠るは<旧支配者>クトゥルフ、其処まで辿り着けるのか?そして、無事生還出来るのか?」

なのは 「結末は予想以上に呆気なくて、そして虚しい、」

クロノ 「断末魔は誰の物だったのか?」

なのは 「次回、魔法少女リリカルなのはACF第6話『歪んだ空、壊す力なの』に、」

3人  「スタンバイ、セットアーップ!!」 <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:21:21 ID:JWk3LgR9<> アバンタイトルと予告を入れてみました。
ああ、時間がかかった割には文章が推敲できて無いorz
みんな短時間でそうやって書いてるんだ……
それとそろそろ無限書庫のネタは解説が必要になってきているんじゃないかと思う今日この頃、

>>640氏、シグナムが無事帰ってきて少し安心、心の決着はこれで着いたって感じですね、

>>176氏、超スピードが羨ましい……そしてユーノ君哀れ、AsSS03の様に行くのは難しいねw <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/08/21(月) 03:23:58 ID:JWk3LgR9<> あ、そうそう、149でクロノが言った贐は意味が違う事知ってて使ってますので
ご了承をば、それではお休みなさい <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/21(月) 08:46:20 ID:lG0jD4uF<> なのはが痛々しい…。ユーノ、行ってやれよ!あんまし大丈夫じゃないから!
ともかくGJです。次回が楽しみです。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/21(月) 20:06:45 ID:3HBh7c86<> ほっ保管庫がっ、保管庫が見れないっ。
一時的なものかと思ったら昨日からなんですが、大丈夫かなぁ? <> 549
◆xbn1Z6LB3Q <>sage<>2006/08/21(月) 20:18:37 ID:0IyYS7Z0<> >>158
鯖会社まるごとおかしいようで様子見です
こんなに長期間ははじめてなので、ちょっと不安
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/22(火) 01:41:07 ID:Dwkc8iS1<> リンディママンて人気無いのかな。
周りの環境からしてエッチィのは難しそうだなorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/22(火) 10:22:02 ID:L3HI4Rt0<> >>160
(*´д`)ぜひママンでww <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/22(火) 10:24:59 ID:kgKbxmoN<>
4 姉弟←→恋人

 でんでんむしほど足並みは遅くはないが逸る気持ちに比べれば圧倒的に遅い速度。
 確実に高度は上がってるけど頂まではまだまだ。
「結構高いよね……」
「しかし中腹でこの眺望なら頂上はもっと凄いんだろうな」
 真下に見える人ごみはすでにアリほどの大きさになろうとしている。見下すわけではないが自分たちが大きな存在になったみたいで気分はいい。
「人がゴミのようだね」
「それだけちっぽけな存在なんだよ、僕らは。群れてこそ人、支えあってこそ人、昔の人はよく考えてるよ」 
 数十分前まで自分たちもあそこにいて、もしかしたらこうやって他の人間にそう思われていたのだろう。
 果たしてその人間にも自分のような哲学的思考だったのかまでは知りえないが。
「クロノ君おじん臭いよ」
「悪かったな」
 恋人にはそういう風に見られているらしい。子供にしては確かに出来すぎたというか……やはり老け込んでいるか。
 ここは口を閉ざし気長に待つのが得策であるらしい。
「それにしてもこんなのんびりした乗り物でよかったのか?」
 自分に気を使った上での選択なら少し申し訳ない。
「ん〜? やだなぁ、そんなんじゃないよ」
 軽く手を振って否定の意志を見せる。
 実際エイミィにとってこれは紛れもない正直な気持ちで、ある目的を持ってこのゴンドラに乗り込んでいるのだ。
 それが何かクロノに分かるわけもないので彼がそう考えるの至極当然。
「そうか……なら安心した」
「うん」
 エイミィの返事を最後にゴンドラの中にしばしの静寂が訪れる。
 二人きりの密室空間。自分たちを見ているものはおそらくこの風景だけでほかにはない。
 頂まで見積もって五分。高さが売りだけあって昇るのにもそれ相応の時間が必要なのだ。
「フェイトちゃんに悪いことしたかな?」
「いや、丁度いいさ。執務官を目指すなら職場体験も必要なんだしな」
「現場を知るってのは大事だからね」
「お兄ちゃんのお仕事は地味だけど重要だからね」
「からかうなよ」
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/22(火) 10:25:34 ID:kgKbxmoN<>
 頬杖ついているクロノの顔が仄かに赤くなる。
 その呼び方は慣れないというか免疫が出来ない。一種のアレルギーのようで呼ばれれば無性にむず痒くなるというか脱力するというか。
 ともかくそんな感じなのがクロノの妹へ「兄さん」と呼んで貰うための弁解だ。
「せめてプライベートだけは呼ばせたいんだが……どうも、な」
「それは願望?」
「彼女の意志を尊重させたいんだ」
 願望なんて言ったらいいように弄繰り回されるのだ。大体、慣れてもいないのに四六時中そう呼ばれて悶絶するなんてとんだ変態志向ではないか。
「じゃ、そういうことにしておく。じゃあさ、私たちが姉弟だったらクロノ君は私のことどう呼んでくれる?」
 悪戯っぽく笑ってクロノに顔を寄せる。突飛な質問にクロノは少し眉を寄せ、少し困ったような顔をした。
「……姉さん……しかないだろ」
「ふ〜ん、お姉ちゃんなんて呼んで抱きつきに来てもいいのにね」
 クロノが無邪気に笑みを浮かべて抱きついてくる。なんて結構ほのぼのしていいではないか。
 異性に甘えられる経験が乏しいエイミィとしては是非とも一度は経験したい。願望である。
「いきなり僕がそんなことをしても気色悪いだけだろ」
「まだまだそういうことしてもいい年だと思うんだけどね、お姉ちゃんとしては」
「願望か?」
 無邪気に笑って思い切り頷いた。
 もちろんクロノは呆れるわけであり、しかしそれはいつものどうしようもない管制官に対する呆れというわけではなく。
「……はぁ、いいか? 僕は絶対君をお姉ちゃんとも姉さんとも呼ばない」
 宣言する。断じてないと否定の意思。
「一度は呼んでもいいんじゃないの?」
「忘れたのか? 僕と君は」
 右手がエイミィの顎に添えられる。くいっと顎を持ち上げて、丁度エイミィの唇が突き出すような格好になって。
「クロノく、ん……」
 久しぶりな柔い感触。有無を言わさない優しい口付け。自然と瞼も下りてしまって。
 ちょっと強引な不意打ちキス。
「姉弟じゃなくて恋人だろ」
 ――そうでした。確かにそうでした。
 顔面温度上昇中。心臓拍動増大中。彼がしたのは当然ちゅー。
「あんまり言わせるなよ……一応僕なりの甘え方なんだから」
「も、もう馬鹿……いきなりしなくてもいいじゃないのよ」
「君のそういう顔を拝めるからな。こっちの羞恥心を払っても十分なおつりなんだ」
 頬は赤く、今にも逸らしてしまいそうな視線。いつの間にか両手がもじもじと所在無く組み合わされていて。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/22(火) 10:26:19 ID:kgKbxmoN<>
「管制官命令です……執務官の恥ずかしい台詞を禁止願います」
 尖らせた口からいつものように事務命令。凛とするよりなよっとしていて威厳も何もないのだが。
 これが精一杯の抵抗。
 思春期真っ只中な少年のかな〜り婉曲――もう言葉そのものが湾曲している甘え。お兄ちゃんと呼ばれ慣れない彼の気持ちが少しだけ分かった気がする。
「ケースバイケースだな。なんてたって君のうろたえる弱点がわかったんだから」
「人のこと弄るのはユーノ君だけにしてよ、もう」
「今まで僕のこと弄繰り回してくれた分だよ。いいだろ? そのくらいは」
「だからって私のしたかったこととらないでよ〜」
 本当なら頂上の景色にクロノが見とれている隙に唇を奪ってやろうと思ったのに。
 顔を真っ赤にして狼狽するクロノをさらに弄れたはずなのに。
「弄られてたのは私のほうだなんて情けない」
 世界はいつだってこんなはずじゃないって本当だと心底思う。
「なるほどな。君のしたかったことが大体わかったよ。まったく油断も隙もないな」
 腕を組んで誇らしげに頷いて自分の優位を際立たされるのはこの上なく悔しい。
 本当ならそうしていたのは自分なのに。
「引っ張っているはずなのにいつの間にか主従逆転してるってクロノ君変な魔法使ってるでしょ」
「あっても使わないさ」
「も〜う!」
 一番管制したいときに自分がクロノに管制されて、これが現場なら大いに問題である。
 せめてもの慰めに売りの景色を見ようと思ってもすでに頂上は過ぎているし。踏んだり蹴ったりだ。
「優しくしてよークロノ君! 悪戯は良くないぞー」
「たまには良いだろ、君と僕の立場を交換しても。職場体験だよ、職場体験」
「なるほど、これが弄られてる相手の気持ちか……って誤魔化さないでよー!」
 せっかくの密室なのに、二人だけの空間なのに、充満する雰囲気はいつもながらのアットホームなもの。立場は逆だけど。
 クロノなりのイチャイチャさせるための気遣いは自分のペースを崩す特効薬だった。
 静まらない心臓にこれがイチャイチャすることなのかと思ってみたり。
「知らなかった、好きな相手のいろんな一面を見ることがこんな楽しいだなんて」
「私はあんまり嬉しくないよー。もう降りたら絶叫マシン巡りだからね、クロノ君」
「勘弁してくれ」
 絶対に主導権を取り戻す。どんな手を使ってもだ。
 クロノ・ハラオウンを操縦できる唯一の人間として、彼の大事な彼女として。
 夏の太陽の下、エイミィの決意は燃えに燃え上がっていった。
「勘弁してあげない」
 今度はこっちから、お返しのキスをクロノに捧げるエイミィであった。
 まだ今日という日は終わらない。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/22(火) 10:26:54 ID:kgKbxmoN<>
すっかり書くことが生活の一部と化している
喜ぶべきことなんでしょうね
次はエロいけると良いな

>>480
激しいなぁ、生々しいなぁ
なんというかリリカルな範疇を超えているような気もしますが
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:07:26 ID:1jOkDrSo<> エロ話最終話投下します。
ハードものかつバッドエンドなので、苦手な方は御注意ください。






<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:08:59 ID:1jOkDrSo<> 「は、ああああああああっ!!!!」

通って。
お願い、通って。
なのはの願いのこもった刃は、男の前に展開された強靭すぎる盾の前に、
空しく弾かれ続ける。

「このおおおおっ!!通って、通ってえっ!!」

なりふり構わぬ半裸の魔法少女の、満身創痍の突撃も、その成果をあげることはできない。
死にもの狂いの雄叫びをあげる彼女とは対照的に、男の顔には酷薄な笑みが浮かび。
その口が呪文を紡ぎ強固なる盾は更にその硬度を強固なものへと昇華させていく。

「う、あああああああぁぁっ!!!!!」

それでも、やってやる。やってみせる。
一層手ごたえの重くなった目の前の障害に向けて、全身の力を込めて長槍を突き出し、
もう一度気合の絶叫を少女があげたとき。

乾いた、無惨な音をたてて。
想いを乗せた桜色の光刃は、黄金の穂先を持つ槍と共に、粉々に砕け散った───…………。


魔法少女リリカルなのはA’s −世界の、終わり−

第五話 少女達の終焉・下


灰色の光の柱が、まっすぐに向かってきていた。

「っく……ぁああああぁぁぁあっ!!!!!」

バリアを展開しつつ、辛うじてかわすもののその破壊力はあまりに大きすぎる。
その周囲に拡散する魔力だけでシールドはなすすべなく破砕し、
なのはは全身を襲う激痛にのたうちまわる。

「か……はっ」

精液にまみれていた殆ど裸の身体が、土ぼこりに汚れ。
僅かに残った白いバリアジャケットが、薄汚れていく。

「反撃しない、とは言ってないからね。さあ、続けてくるといい」
「が、ああああああああああああぁぁぁっっ!!!!」

男はそう言いながらも、レイジングハートを構える暇さえも与えてはくれない。
更にはなのはの得意技、アクセルシューターにも似た灰色の光球が雨あられと降り注ぎ。
なのはのそれを遥かに凌駕する早さ、威力、数を以って、彼女の全身を撃ち抜いていく。

ようやく土煙が去ったあとには、殆ど全裸に近いほどにその衣を破壊し尽された
魔法少女が一人、全身を痙攣させながら横たわるだけ。
額からは裂けた皮膚が血を流し。
杖を持つ左腕は、それを支えに立ち上がろうともがき地を擦る。
やっとのことで起き上がり睨みつける少女を、男は半笑いの小馬鹿にした顔で見ていた。
膝が笑い、腰に力の入らない半裸少女へと男の意を受けて、一本の触手が伸びていく。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:11:47 ID:1jOkDrSo<> 「っぐ……!?」
「立てないなら、立たせてあげるよ」

触手はなのはの喉元へと巻きつき、呼吸の邪魔をしない程度の強さで締め付け、彼女を引き起こした。
強引に起こされた彼女の肌は、赤い擦り傷と、泥の茶。そして精の汚れた白が
あますところなく埋め尽くしていて。首に巻きつく触手は少女にはめられた首輪のようですらあった。

「撃ちなよ、最大の一発を」
「……!!」
「あるだろう、スターライトブレイカーってやつが」

男に言われ、なのははぎくりとした。
ディバインバスターも、アクセルシューターも。
二種類のエクセリオンバスターも、男の防御に傷一つ、つけることはできなかった。
だがしかし。
たしかにまだ、なのはにとって最大の一撃であるスターライトブレイカーは使用していない。
全カートリッジと周囲の魔力を集めて叩き込むスターライトブレイカーならあるいは、ともなのは自身思っていた。
だが、同時に。もしも通用しなかったら。
そう思うと、怖かった。
最後の切り札であるスターライトブレイカーが通用しなかったら、決定的な心が折れてしまう。
その恐れが、なのはに今までスターライトブレイカーを使用することをためらわせていた。

「ただし、それさえも期待はずれだったら、相応の代価は払ってもらうよ。……こんな風にっ!!」
「え?……きゃあああああぁぁっ!?」

首に巻きついた触手が急激に引っ張られ、なのはの身体が宙を舞う。
とても踏ん張って堪えられるものではなく、受身も取れず。
何度も何度も、硬い地面の上へと叩きつけられ、転がされる。身体のあちこちが擦り剥け、血が滲む。
きっかり10往復ほども振り回されたあとで、なのはは先ほどと同じように無理矢理に立たされた。

「うぁ…………ぁ……」
「わかったら…………全力で撃ってくるといい」

そう告げて、男はにっこりと笑った。
なのはは彼の表情に、戦慄した。

*     *     *

男の笑顔に、なのはは寒気を感じた。
──駄目だ。やるしかない。自分の全力全開で向かわなければ。
何をされるか、わかったもんじゃない。

「……レィ……ジン、グ、ハート……大丈夫……?」
『ye……s,my mas……ter……?』

なのはの呼びかけにノイズ交じりの音声で応答するレイジングハートも、その長槍のような機体はボロボロだった。
エクセリオンモードの先端は片側が無惨に折れ、ストライクフレームを発生する部分は拉げ使用できず。
あらゆる箇所にヒビが走り破損し、フレームが剥き出しになり。
真紅の本体部は砕け、その内部にあるコアのCPUともいうべき部分が火花を散らし、露出している。

「スターライトブレイカー……お願い……」
『all……ri,…gh…………t』
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:12:40 ID:1jOkDrSo<>
彼女達自身、フルパワーのスターライトブレイカーなど放てばどうなるかわかっていた。
今の痛めつけられ、傷ついた身体では耐え切れぬほど強大な出力に、
最低でもなのはは吹き飛び、レイジングハートはその機能を一時的に停止し。
最悪なのはもレイジングハートも、消滅してしまうであろうことを。
理解しながら、やらざるをえなかった。
強敵──眼前で笑う男を撃退できる可能性が、それしかないから。
無理矢理に立たされているその身を奮い立たせ、魔力を集中させる。

「カートリッジ……ロード……!!」

残されたカートリッジを、全て使い切る。
身体に残された魔力も、すっからかんになるまで滅茶苦茶な術式で無理矢理吸い上げる。
周囲の空間に残る魔力の残滓も、ありったけ吸収し、注ぎ込む。

それはかつて、あの闇の書の闇に対して放った一撃を遥かに超えて、膨れ上がっていた。

これなら、きっと。いや、絶対に、大丈夫。
あの人を絶対に倒せる。

「いくよ……レイジングハート……」
『starlight……breaker……』

振り上げたレイジングハートを、振り下ろす。

「ブレイク……シューーーートッ!!!!」

光の洪水が、レイジングハートから吐き出されていく。
その勢いはなのは自身にも、レイジングハートにも大きな負担を強いながら
男へと一直線に打ち放たれる。
なのはは全身の激痛に耐え、レイジングハートは崩壊しそうになる機体を精一杯、維持し続ける。

「い、けえええええぇぇぇっ!!!」

男は、一歩も動こうとはしなかった。
掌を、前に出し。
迫り来る噴流を、品定めするような目つきでゆっくりと眺めて。
にやり、と笑ってみせた。
それしか、見えなかった。

次の瞬間には、
なのはも、
レイジングハートも、
膨大なスターライトブレイカーの光量も、

全て、男の放った一撃に飲み込まれてしまっていたから。
見えようが、なかった。
見えようのないまま飲み込まれたなのはが、意識を保っていられるわけなどなかった。

「やはり……この程度か、君も……」

僅かに残されたのは、二つのおさげを結うリボンと、右の黒手袋。そして両足のソックスだけ。
あとはみんな、失われた。名残りのように、白い靴が向こうのほうに片方、転がっていた。
レイジングハートも、上着もスカートも、残っていた他のバリアジャケットも、全て。
魔法少女の敗北を確認した肉鞭が、待ち構えていたかのように大地からその姿を現し。
両手両足に絡みつき、何一つその力が通用せず力尽きた純白の戦乙女を吊るしあげる。
あっという間に、一人の虜囚がそこに生まれていた。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:14:01 ID:1jOkDrSo<>
「3時間だ。3時間ほど、好きにしていい」
「その間に、終わらせてくるからね」

男は嘆息して言い残し、姿を消した。
律する存在が、いなくなったのだ。
男が消えるか、消えないかというタイミングで大地がゆれ、岩盤が砕けていく。
その隙間という隙間から姿を現すのは、なのはを高々と拘束するものと同じ、
何本もの──いや、何十本、何百本という数の触手。
触手たちは我先にと少女の幼い身体へと群がり、絡みつき、その身体を強引に押し広げていく。

「ぐっ!?うううぅぅぅっ!?ひやあああああああぅぅっ!?」

違和感によって目覚めたなのはのことなど、おかまいなしに。
両足をMの形にこじ開け、溶き解されどろどろの二穴へと二桁を数える触手が同時に押し入り、蹂躙し。
はちきれんばかりに広がった下半身の口を前後とも、猛烈な勢いで抉っていく。

「うああああぁぁぁ!!??う……うんぶぅぅっ!?ふぅ、ふぅ、ふぃぎぃぃぃぃっ!!!」

泣き叫ぼうと開かれた上の口も、数本の触手が占領する。
両手は、触手のぬめる先端部をしごかされ、爪先は足コキを強要され。
乳首にも、お臍にも複数の触手が吸い付いて、おいしそうに吸い上げていた。

「ご……ぅ、ふ、ふぅ、ん!!っぷ、は、いやぁ、ん!!んん、ふうぅぅっ!!!」

あまつさえその髪さえもが、肉紐たちの欲望を満たすための道具とされる。
触手たちの形成する海原が、陵辱という荒波を以って、なのはの小さな身体を飲み込んでいく。
なのはは完全にその淫猥な海に溺れ、沈没していった。

「ふひぃ、ひぃ、ふんむぅっ!!ううーーーっ!!!」

だが、なのはが感じていたのは敗北感と快楽。沈没は肉体だけでなく、精神にも至っていて。
全身を攻め立てられ、犯され、貫かれ吸い尽くされるその感覚が、気持ちよすぎる。
なにもかも失い、全てを打ち砕かれた彼女は悦楽の涙を精液まみれの頬に流し、
よがり悶えながら触手に巻きつかれた腰を忙しなく振りたくって果て続ける。
被虐に対する全ての反応が、ごくごく自然になのはの身体から表れていた。
まるで、白濁の尿を漏らし溢れさせているかのように彼女は潮を吹くのが止まらない。

(らめ、これぇ、いい、いい、いい、いいっ!!気持ち、いいよおぉっ!!!)

精液が、おいしい。
ぬめる触手たちが、気持ちいい。
ズンズン引き裂けそうなほどに突き上げてくるその衝撃で、意識が飛んでしまいそうだ。
呼吸すらままならないその苦痛が、たまらない。
素肌に滲む血を舐め取られるそのむずむずと痛痒い感触にさえ、脳が真っ白になる。
M字から間接の可動範囲いっぱいまで開かれる形に変わったつらい姿勢、その苦しみになのはは酔いしれていた。
一度の敗北で、肉体を砕かれ、快楽を植えつけられ。
解放され与えられた二度目の機会、それにおいてもなすすべなく敗れ。
二度目の敗北においてなのはは、その精神までもが砕かれてしまっていた。

「くる、くる、きちゃうぅ……もっと奥、もっとぉぉ……」

三つの口から精液を飲まされ、むせかえり達しながらなのはは快楽に溺れる。
全身、触手と精液にまみれて、目すら白濁で塞がれて、もはや何も見ることができない。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:16:02 ID:1jOkDrSo<>
「あああああんんんぅぅっ!!突いて、突いてえぇぇっ!!ふぐ、もっと、気持ちよくぅぅっ……!!」

精液の混じった涎を撒き散らして乱れ狂い、口を塞ぐ巨根を吸い上げ、
飲み干してはまた空いた口であさましい声で泣き叫ぶ。
お腹も、膣も、張り裂けそうなくらい激しく突き上げられてとにかく、
気持ちいいということしか考えることしかできない。

「はあああぅぅぅぅっ!!はぁ、はぁぁあっ!!くる、そこおぉぉ……そ、そこおおおおぉぉっ!!」

もう、耐えられない。
わざとその先端を抜いた触手たちが顔面へと浴びせてくる精液を受けて、なのはは恍惚に浸っていた。
もっと。もっとたくさん、気持ちよくしてほしい。

「はぁ…あぁ…だめぇ…また、いっちゃうぅ…気持ち、ひぃ、ひぃよぉ…もっと…もっとちょおだいいいぃぃっ!!」

悲しいかな、彼女の願いは瞬く間に叶えられ。
殺到した触手が腸も子宮も、胃もはちきれんばかりに注ぎ込む。

「ごぶうううぅぅぅっっ!!いくうううううぅぅぅぅっ!!きもち、ひぃ、もっと、もっと、もっとおおぉぉっ!!!」

ひくひくと痙攣を繰り返し、遂には背中を反り返らせて白目を剥く。
嬌声をあげ、乱れ狂うその姿は、四匹目のあさましい雌豚の完成を告げていた。

*    *    *

──暗闇の廃墟の中に、男の姿があった。
男はパネルを操作し、辛うじてまだ生きているモニターを操作していく。

「ふむ……この程度で墜ちるとは、つまらない。管理局など、こんなものか」

彼が操作したパネルによって映し出されたのは、各地に存在する時空管理局の支局。
ことごとくが廃墟となったその映像が、暗闇の中に浮かび上がる。

「彼女たちはどうしているかな?」

更にボタンを押し、映像を切り替える。
雌豚達の居場所──それはかつて、海鳴と呼ばれた、魔法技術のない世界の一地方。

「ああ、やってるね」

阿鼻叫喚、というべきなのだろうか。
その世界は男の張った結界によって切り取られていて。
四人の少女たちはその中でもみくちゃにされ、痴態を晒している。

「まあ、楽だったよ。魔力のない者は扱いやすい」

男によって精神を支配された、海鳴の住人達が、少女たちに群がっていた。
その中には彼女達の家族や友人も含まれている。
少女たちは隔絶されたその世界の中で死ぬまで永久に、犯し続けられるのだ。
彼女達がそれを認識できる精神を維持していないのが幸いなのかもしれない。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:17:11 ID:1jOkDrSo<>
「つまらないな。次の相手を探すか」

既に少女たちの身体は、少女たちのものではない。男達のための、肉便器。
少女たちに群がる者には、肉奴隷を貫き放出することしか考えられない。そう、刷り込まれている。
犯される四人の雌奴隷たち──シグナム、なのは、はやて、フェイト。以前そう呼ばれていた
雌豚奴隷たちは貫かれ、引っ掻き回されて。飲まされて、悦ぶことだろう。そう、造り上げられている。
既に、悦んでいるのかもしれない。狂った肉の悦楽の溺れ、よがり叫びながら。
画面の向こうで彼女らは、差し出される肉棒へとむしゃぶりつき、握り擦りあげ、
突き上げ注がれる度に自ら腰を振り乱していたのだから。

男が踵を返し、立ち去る。
男のいた場所、それはかつて、時空管理局の本局であった場所。
周囲に漂う残骸の中には、八番艦……アースラ。そう確認できる認識番号の
描かれた船体のものと思しき破片が、混じっていた。

───完 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/22(火) 18:27:34 ID:1jOkDrSo<> 本当は今朝脱稿したから朝投下して家でていくつもりだったんだorz
だけどアクセス規制にひっかかって書き込めなかったんだorz

とりあえずあと今やってるシグナムさん話が完結したら
フェイトメインの話を1本やりたいと思っています。多分俺の書く続きものは
A’sを題材にしたものではラストになると思います。

>>112
・・・フェイトが中心の話が多いからですか?それは。

>>176
アリサ&すずかについて。
なのはとユーノ、フェイトが加わったら布陣としては完璧ですな。
クロノ&エイミィについて。
なるほどつまりリンディさんのことをお母ちゃんと(違

>>6スレ480氏
相変わらずの質、量、お疲れ様です。
クトゥルフよくわからないのが悔やまれるorz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/23(水) 23:33:43 ID:Oysm+Ypl<> >>640氏
絶望すぎ…DBのトランクスの育った未来並の地獄だ。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/24(木) 01:33:43 ID:siboEDab<>
5 遊び疲れて宿着いて……夜が更ける

「うっわ〜〜! ひっろ〜い!!」
 ドアを開けるなり大歓声で駆け込むエイミィにやれやれとお手上げポーズでクロノも続く。
 それほど感激したのか珍しかったのか、体ごとぐるりと回って部屋の大きさを改めて実感して
「そぉりゃ!」
 傍のベッドへ臆することなく突っ込む。せっかくのシルクのシーツがくしゃくしゃだ。
 修学旅行にでも来たみたいなはしゃぎっぷりを見せる彼女に少し呆れて、でもしょうがないかと思いながらクロノは荷物を備え付けのダイニングチェアーにどっかり乗せた。
「部屋のベッドと全然違う〜」
 顔を埋めて、足をパタパタ動かして喜色満面。軽くカルチャーショックを受けているエイミィを尻目にいそいそとクロノは茶を入れ始めている。
「うわー! こっちは和室なんだー! おお、海が見えるクロノ君もおいでよ!」
「ああ、一服したらな」
 鼻を抜ける緑の香りに舌に広がる仄かな苦味。これが緑茶本来の味だと刻み込みながら、それはもう枯れてしまったように椅子にこしかけくつろいでいる。
 これはしばらく動きそうもない。そう結論付けてエイミィは窓の向こうの海――日本海という名前らしい――を全身で受け止める。
 遥か彼方の水平線は世闇に混じって辛うじて見えるぐらいだけど、視線を落とせば街の灯火が星のように煌いている。
 お世辞にも「宝石箱をひっくり返した」なんて言えないけどこれで十分。文句をつけては失礼千万。
「星も綺麗だね〜」
「予約取るのに苦労したんだぞ。どうやらこっちのレジャーシーズンと重なったみたいだったんだから」
「感謝してますよ、クロノ執務官」
 振り向くエイミィに右手を軽く返事代わりに上げながらさらに茶を堪能。このほうじ茶というのもなかなか味がある。
「でもさぁ、まさかホテルに行くのに転送魔法なんて使うとわねぇ」
「徒歩圏内に宿泊施設を確保区出来なかった、つまり非常事態だ。緊急につき魔法使用も辞さないのは当然だろ」
 最初からこのホテルに決め込んでたくせに。
 よくもまぁ口が回る。そういうのは世間では悪知恵と言うんだぞ。
「ほんっとクロノ君ってば……ふふ、ありがとね」
 だけど咎めるつもりもないのだ。彼が自分のためにここまでやってくれた。
 色恋沙汰に疎そうに見えて意外と考えていてくれたのが今はすごく嬉しい。
「……なんだか素直にされると対応に困るな」
「そう? じゃあ――」
 床を蹴る低い音。と、思えば背後に気配。
 また善からぬ事を考えたのだろう。そう思えば脇から通された腕が体に巻きついてきて。
 ――ちゅ
「んっふっふ、スペシャルサービス……なんちて」
 肩に顎を乗せて頬を寄せるエイミィにちょっと嬉し恥ずかし。
 悟られまいとため息吐いて誤魔化して。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/24(木) 01:34:15 ID:siboEDab<>
 ――いつしか二人の間から言葉は消えて。
 互いの耳元には互いの規則正しい息吹が聞こえる。それ以外には時計の秒針くらいが部屋を満たす唯一の音源であった。
「なぁ……エイミィ」
「……何? クロノ君」
 声を掛け、沈黙を破ったのはクロノが先だった。
 自然と応じるエイミィにさらに一言。
「夜ももう遅いし……そろそろ寝ないか」
 観覧車のように二人きりの密室。背もたれ越しに密着する二人の体。
 否応無しに雰囲気は高まる。男女の――掻い摘んで情事の雰囲気というやつだ。
「ベッド……二つあるよ」
「誰かさんがシーツをぐちゃぐちゃにしてくれたからな、一つしか使えないだろ」
 その程度でベッドが寝具として役目を放棄するものではないのはどちらもわかっている。
 限りなく遠まわし、且つそれなりにデリカシーを持った言葉。
「クロノ君、床?」
 茶化すような声と裏腹にクロノの体に抱きついていた腕が少しだけ強張ったような気がした。
 選択を迫られているのはエイミィだって当に自覚している。
 あの時はキスの後なし崩し的にその先の行為に及ぼうとしていただけにこうやってはっきりと誘われる当然のごとく緊張感が増す。
「この部屋、高かったんだぞ……ベッドで寝かしてくれ」
 高くなんてなかった。執務官というエリートから見ればこんなホテルのスイートルーム一週間貸し切ったって懐は痛まない。
 しつこく食い下がる男は浅ましい。然れども止まれず、一手押し込めば王手の状況。好機は見逃せない。
「そ、だよね」
 今度は上ずっている。駆け引きとしてはこちらに分がある。
 彼女だって先へ進みたいのだ。もちろんこっちだって。焦りは禁物だとわかっていてもクロノはエイミィの次の言葉に鼓動が早まるのを抑えられない。
「私はクロノ君だったら……いいよ。てかそれしかないし、シチュエーションもばっちりだし……興味ないって言ったら嘘だし……」
 エイミィにとってはもう前後の判断がついているかは微妙な所だ。
 心臓はもう張り裂けそうなくらいに拍動してるし、頬も熱を持っている。
「女の子だもん……こ、こういうのにすごい興味あるし、あ、あれ私何言ってんだろ……あはは」
「しよう……あの時の続き。後悔はさせない、君を抱かせてくれ」
 我ながらなんていう歯の浮く台詞だと思う。どこかのドラマか漫画の受け売りか、自分で思いついた言葉なのか、どれにせよ恥ずかしい台詞であるのは言うまでもない。
 少々強引な押し込み方だったがエイミィにとってはもうどんな言葉でも答えは決まっていて。
「……うん…………しよ」
 イエス、としか答えはなかった。
「そ、その前にさお風呂入ってきていいかな? やっぱり綺麗なホテルだから私も綺麗にしたいかなって」
「ああ、僕も汗かいたしな、君に失礼のないよう一っ風呂浴びてくるよ」
 炎天下遊びまわったのだ、出るものはさぞたくさん出たはずだ。女性の手前エチケットはしっかりしておきたい。
 特に初めて体を重ねあうのだから嫌な思い出にさせたくない。
 エイミィも気持ちは同じで、初めてを捧げるのだから出来るだけ清い体で向き合いたい。嫌な思い出にはしたくない、なんて鏡写しである。
「私、上の露天風呂行くけどクロノ君は」
「僕も夜空を見ながらと思ってたんだが」
 行き先は同じらしい。
「じゃあ準備したら一緒に行く?」
「ああ」
 荷物からタオルやら下着やらを取り出し互いの準備はすぐに終わる。
 後はこのまま露天風呂まで行くだけである。
 部屋を出て歩き出す二人。自然と手が結ばれ、それは入り口で別れるまで繋がれたままで。
 風呂から上がり、共に帰るときも汗ばむことなど気にしないままずっと繋がれていて。
 夜は更ける――二人の夜もこれから。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/24(木) 01:34:54 ID:siboEDab<> 投下、って短っ!
次回濡れ場「飲み込んで僕のS2U」

>>640
限りなく果てしなく真っ黒エンド
私はバッドエンドのお口直しってわけでいきますね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/24(木) 10:52:44 ID:H8yuhomR<> >>177
タイトルに噴いたw <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:32:27 ID:sBNSRUHY<>
6 体の神秘に心は躍る

 まずお互いの格好に突っ込むべきなのだろう。
 別に浴衣に対しての文句ではなく
「じゃあ不束者ですけど……よろしくお願いします」
「こちらこそ……」
 ベッドの上で正座で向かい合う男女というものはものすごくシュールな絵図である。
 三つ指つくまでは行かないが頭を下げるエイミィに同じように頭を下げ一礼。
 異様なまでの緊張感は時として人をこんなことへ駆り立てることを身をもって知るクロノであった。
「あはは、ほんとさ……クロノ君とこんな関係なるの夢みたい」
「僕だって……」
 士官学校から今日までずっと過ごしてきた二人が一線を越えようとしている。
 さながら仲の良い――本人たちは真っ向否定だろうが――姉弟のような関係を保ってきた二人。
 それが着替えを覗いてしまっただけでここまで変貌するなんて、人生とは侮れないものだ。
「い、一応聞いておくけどクロノ君こゆことの経験は……」
「残念ながら現実では全くない」
 つまり童貞。
「エイミィは?」
「ふ、普通そういうこと聞く?」
「ぼ、僕だっては、初めてなんだぞ! き、気になるじゃないか」
 もしも、仮に彼女の体を抱いている人間がいたら――。
 前の男と比較されるなんて、もし劣っていたら男としての尊厳が大いに傷つく。それに男としては好きな女性はとことんにまで独占したい。
 クロノのあまりに配慮に欠けた大人気ない質問にエイミィは少し眉を上げ睨むような視線を送った。
「さっきからの反応で分かるでしょ……それに私と一番一緒にいる時間長いのクロノ君なんだよ」
 つまり処女。
「す、すまない……」
「うん……初めては痛いって聞くからさ、優しくしてね」
「ぜ、善処します」
 どちらが上でどちらが下か。この瞬間はまだ彼女が優位な立場か。
「……じゃあ可能な限り僕がリードするからエイミィはそのままで」
「寝てるだけ?」
「多分そのほうがいいと思う」
「……わかった」
 両肩に手を沿えゆっくりとエイミィをベッドに押し倒す。
 結果として覆い被さる格好になってそのままクロノはおもむろに唇を寄せた。
「んぅ……んん」
 エイミィにしては半ば強引のキス。もう少し見つめあうなり雰囲気を高めて欲しかった。
「あむ……ん、んん!」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:33:00 ID:sBNSRUHY<>
 が、それ以上の雑念はクロノが許さなかった。
 舌先が軽くエイミィの唇を撫でそのまま口内へと侵入させようとする。
 負けじと口を開けクロノを招きいれさっそく舌と舌を絡め合わせた。
「んむ……クロノくぅん……」
 猫なで声になりながらクロノの首へ手を回し離すまいとする。
 歯茎や舌、唇を撫で回し、時折舌を吸ってみたりあれからクロノも勉強したのだろうか、前よりも動きが機敏、というかねっとりしている。
 それでも持ち前の管制能力で舌の動きを把握すると、拙いながらもすぐに同じ行動を返す。
「ぷはぁ! あっん! んっ……」
 じゅるっと唾液を啜る音。その度、エイミィ喉がこくこく動く。
 体勢的にクロノから一方的に流しこまれ飲むことでしか対処できないのは少し辛い。
 こそばゆい感覚に身を委ねて、すでに二人の口の周りは唾液にかなり塗れている。
「あ……ちゅ……んー! んはぁ……」
 一分近くはこうしていただろうか。
 二人を繋ぐ銀糸はすぐに切れクロノの目には真っ赤に上気したエイミィの顔が映った。
「も、もう……犬じゃないんだからぁ」
 感想――二回目なのに激しかった。
 上のクロノは真っ直ぐに自分を見つめていて、なんだかすごく立派な男性に見える。
 それは自分の頭が火照ってるせいなのか、はたまた元からだったのか。
「犬でもいいさ……僕だって我慢できないんだ」
 クロノの片手がするりと自分の胸元に吸い込まれた。
 ふあっとした空気の感触。よく見れば胸が外気に晒されていた。いきなりのクロノの行動にはエイミィも驚くしかない。
 いやそれよりも
「エイミィ……き、君下着」
「い、いやぁ! 見るなスケベ!」
 ズムッ!
「ほぅぐぅ!!」
 反射的に振り上げた膝がどこかに沈み込んだ。
 同時にクロノの顔が奇声と共に歪む。
「い、いきなり脱がすなんて酷いじゃないのよ〜!」
「上つけてなかったなんて……知らな、かった……んだ」
 哀れクロノ、エイミィの膝蹴りが入ったのは男の急所だ。
 玉からせり上がる様ななんとも言えない痛感にクロノは言うだけ言ってエイミィの胸に突っ込んだ。
 まさか生の乳房を手よりも顔が先に触れるなんて思ってもみなかった。
「え、え? ちょっとクロノくん〜!」
 半裸の女性に全体重を預け、しかも顔が胸にダイレクト。他人が見れば羨ましいことこの上ない。
 本人もまんざらではなく、地獄のような股間のいたぶりもこの感触を味わうためのパスポートなら痛くも痒くも――流石に痛い。
「は、離れてよ〜! って離れなくていいから!!」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:33:32 ID:sBNSRUHY<>
 圧し掛かられた当人はパニックであるが。
 心の準備できぬままあろうことか乳房を見られた衝撃はエイミィにはいささか強すぎた。
 取り合えず片手で胸を隠してクロノを隣へ引き剥がす。
「もすこし考えてよバカッ!」
「ああ……軽はずみすぎたな」
 下着の上から愛撫する算段をつけていたクロノに現実は非情である。
「脱がすなら……そう言ってよね」
 拗ねてしまった彼女を横にクロノの右手は未だ股間。情けないがまだ痛むのだ。
「あれ? もしかしてクロノ君……」
「そうだよ……見事な蹴りだったよ」
 恨めしそうな視線をあえて天井にぶつけながら答える。
 事の次第をエイミィもようやく悟ったようで覗き込んでくる顔は不安に染まっていた。
「ご、ごめんね……ぐにゃりとしたからまさかとは思ったんだけど」
「反省してくれるならいいさ。雰囲気はぶち壊しだけどな」
 幸い男性機能だけ壊されていないみたいだが。
 さっきのあれはなんだったのか。
 まさに夢、夢心地だ。
「……ごめん、私たちこれからするんだし裸を恥ずかしがってたら始まんないよね」
「それで喜んで脱ぎだしたら僕は寝てたぞ」
「まぁ、それはそうだね」
 相手が露出狂の変態では冷めるというか凍てついてしまう。
 自分だってクロノがどうしようもない変態だったら焦がれていたか……。
 変態執務官――そんな人間の補佐なんて死んでもお断りだ。
「じゃ、お詫びの意味もこめてエイミィ・リミエッタ、脱ぎます!」
 立ち上がるや否や浴衣の帯に手を掛ける。
「なっ? えっ? ちょ、ちょっと待て」
 当然クロノは引き止める。
 そんな色気も無しに脱ぐなど誰が予想できるか、できるわけがない。
「だって私のせいでクロノ君が痛い思いしたんだし」
「だからって理由にはならないだろ!」
「なるの! その代わりクロノ君も裸になって。反対側向いてせーので!」
 公正な取引。確かにこのままベッドの上で寝転んでいたって何も進まず朝が明けそうだ。
 ここは思い切りが必要なのかもしれない。漫画みたいな展開を多少なりとも期待していたのは自分の筋書き通りに進められるかわからなかったから。
 こうなれば臨機応変に対応するしかない。初めて同士の性行為に脚本なんてあるわけがないのだ。
 ともかく落ち着け、落ち着くんだクロノ・ハラオウン!
「わかった……せーのでだな」
 手早く帯を解く。背後からも衣擦れの音がしてすぐにその時が近づいたことを告げる。
 自分は執務官だ。だからこんな局面でも戦える。
「じゃあ……せーの!」
 意を決し、浴衣を解き放った。ついでにトランクスを脱ぎ捨て準備万端。
 ベッドを隔てて裸体の男女。互いの顔はまだ見ぬ相手の体の想像で赤く熟れていた。
「全部脱いだ……?」
「ああ、何もつけてないよ」
「それじゃ改めてよろしくお願いします……クロノ君」
「ん……」
 今までのは前座でありここからが本番。本当に手は抜けない。
 血液がフル充填されそそり立つ息子を見やりながら、心の中で彼女へ頭を下げた。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:34:05 ID:sBNSRUHY<>
 以前、偶然ながら見てしまった下着姿と重ね合わせても
「なんだか変な……感じかな」
 どうも彼女の膨らみは大きくなった……様な気がした。
 さっきから両手は彼女のふくよかな乳房をこねくり回している。
「エイミィ……こうまじまじ見ると胸大きいよな」
「え? 多分そうかな……ってこれは見るというより触るでしょうが」 
 最初はこそ恐る恐るといった手つきであったが加減がわかれば占めたもの。すでに余裕がある。
 流石にそろそろ変化をつけよう。そう思い片方乳房に顔を近づけ躊躇うことなく口に運ぶ。
「ん! クロノ君?」
 本当にマシュマロみたいな柔らかさだ。
 歯を立てないよう唇だけで感触を楽しんでそのまま舌を伸ばす。
「もう……赤ちゃんなんだからあっ!?」
 赤ん坊はこんなにいやらしく乳首をしゃぶりはしないだろう。
 円を描くように動かし、舌先で突いてみたり、思いつく限りの方法で乳首を弄ぶ。
 もちろん片手だって連動させるように様々な動きを取り入れる。摘んで、抓って、押しつぶして。
「はぁう……やらしいん! だからぁ……く、クロノ君はぁ」
 二つのことが滞りなく出来るのも魔導師として鍛えたマルチタスク思考の賜物である。
 一端、口を離して左右をチェンジ。今まで口でしていたほうは唾液でてらてらし、またそれが手の滑りを良くしまた新たな刺激をエイミィに送り込んでいく。
 一方のエイミィは身をくねらせながらただ未体験の感覚に耐えるしか出来ない。
「ほんといくら弄っても飽きないよ。癖になりそうだ」
「ばかぁ……それじゃ変態じゃない」
 すっかり硬くなった乳首を気の済むまで弄って遊ぶ。
 これでは認めなければいけないだろう、変態だと。
「う……ん! やぁ……はぁ、はぁ、ん!!」
「君だって立派に感じてるんじゃないか、変態だよ」
「クロノ君に比べればまだまだよっ! こらぁ、喋ってる時に弄るなぁ……」
 変態の意思一つで形を自在に変える乳房はもう好きにしろとでも言わんばかりに成すがまま。
 今は意識が上に集中している。そろそろ下も触ってみたい。
「はぁぁ、うう! んくっ…………ふぇ? っ! ひゃん! く、クロノ君そこは駄目ぇ!!」
 そんな右手の侵攻をエイミィの手が慌てて止めようとすがってきた。
「まだ、そこだけはっ! 駄目なんだから!」
 内股をゆっくり上下する手を必死に止めようとする。
 その度クロノは胸から快感を送り込むものだから力が抜けて何の妨害にもならない。
 ならば股を閉じようと力をこめるもクロノが自分の足を挟ませそれをさせない。
「意地悪しないでよぉ! ほんとに……んんぅ」
 艶めかしく喘いではクロノを調子に乗らせるだけ。
 そうは分かっていても止まらないのだ。すでに体は快感の虜。
「エイミィ、触るぞ」
「ま、待って、ん!」
 腿から下腹部、そして腿。
 さらさら、すべすべした感触を十二分に刻み込み、宣言と共に手を差し入れた。
「うあ! あっあっ!」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:35:24 ID:sBNSRUHY<>
 生温かい粘液が指先に触れた。ぬちゃり、なんて感じではなく仄かに漏れているような。
 指の腹を押し込めば陰唇の間に容易に飲み込まれる。すると先ほどとは違うぬめりと熱が伝わってきた。
「んっ! ひっ! や、やだいじらないで!」
 ゆっくりと指を蠢かすとエイミィは発作を起こしたような息遣いで首をいやいやと振る。
 本の受け売りにするなら「感度が良い」と形容するべきなのか。
 指だけでなく掌全体で覆うようにさすると反応はより顕著に現れる。
「んくっ! んっんあっ! やぁ……やぁ……」
 力なくシーツを握りしめてエイミィは鳴き続ける。
 胸は口と手、性器は手。三点を責めるそれらは別人のように動き、エイミィを高みへ急速に持ち上げていく。
 圧し掛かるクロノに身動きはとれず、取れたとしてももう満足に動けない。
「だ、だめ! クロノくっん! も、もう私ぃ!」
 もう体全体が熱を帯び、特に大事なところは尋常ならざる湿気と熱と愛液にぐちゃぐちゃになっている。
「エイミィ……」
 すっと指が陰唇から上へとずれる。当然そこには悦びに硬さを持った肉芽。
 知識通り――確信はすぐに征服欲に移り、クロノはそれを指で押し、小刻みに揺り動かした。
「えっ! はっ! そこだめぇぇ!!」
「可愛いぞ」
「っ!!」
 敏感すぎる刺激に脳へ叩き込まれる土石流のようなごちゃごちゃ快感。
 とどめになったのはそっと囁かれた思いもよらない一言。
「う、やぁぁぁぁぁぁあっ!!」
 色に染まった悲鳴が部屋の中を満たした。
 真っ白に塗りたくられる意識の中、体中を激しく痙攣させエイミィは絶頂した。
「あっ…………はぁ! はぁ!」
 硬直が解けると呼吸も再開される。
 今の衝撃で失われた酸素を肺が補充しようと荒い呼吸をエイミィは繰り返した。
「大丈夫か?」
「……なわけ……ないでしょ」
「そうだよな」
「一人でしてるより気持ち良かったんだからぁ」
 意識が朦朧としている。おかげで自分が爆弾発言をしても気づかない。
「そうか……それはなによりだ」
「いちいち手つきがえっちぃんだから! もう、エロノ君だよ……」
 こんな大胆に触ったことなんて今まで幾度か経験した自慰には全くなかったのだから。
 胸だろうが股間だろうが、クロノのすること一つ一つが的確に自分の快感を引き出すのだ。
 これを「えっちぃ」なんて言わずなんて言おうか。
「人前で呼ぶなよ……それ」
「じゃあ呼ばない……でもその代わりクロノ君の見せてよ」
 愛撫されてる最中ずっと異質な感覚が太ももに張り付いていたのだ。
 指でも足でもないそれは触るたび何か粘々したものを擦り付けていい感触ではなかった。
「私の足に擦り付けてる……それさ」
「いや……あんまり見せられるものじゃ」
「見せなさい」
「はい」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:36:15 ID:sBNSRUHY<>
 そうは言っても余韻で起き上がれないエイミィなのでクロノが体を変える。
 丁度、先端が彼女の目の前に来るように胸辺りにまたがり腰を突き出した。
 眼前に突きつけられるクロノの男に思わずエイミィは生唾を飲み込む。顔を背けもせず凝視できるのは好奇心が勝っているためか。
「涎ダラダラだね」
「興奮すれば男はこんなもんさ」
 肉色をした先っちょから染み出る透明な粘液。なんだか水飴みたいな感じで舐めたらおいしそうだとなんとなく思った。
「触っていい?」
「デリケートだから優しくな」
 さっきみたいなのは駄目だ、加えて念を押されてエイミィはそっとクロノの性器を両手で包んでみた。
「ピクピクしてるね」
「ああ」
 脈打つ肉棒になんだか気恥ずかしさを感じる。
 手触りを確かめながら少しエイミィは違和感を覚えた。
 確か漫画ではこの亀頭がもっと露出してグロテスクな印象だったのだが。クロノのはなぜだか半分しか顔を出していない。
 恥ずかしがり屋さんなのだろうか……。
「ねぇ、クロノ君って包茎?」
「大事なもにのカバーを被せるの当然だろう」
「……」
「S2Uだって使用時以外はカードだろ?」
「…………」
「……世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだ」
 寂しげに、この世の終わりのごとくうな垂れた。
「だ、大丈夫だって……クロノ君まだまだ成長するよ」
「第二次性徴期だもんな」
「うん」
 言いつつエイミィは皮を剥いてみた。
 以外にあっけなく、そうして手を離すと皮は戻らず立派な頭が首をもたげた。
「ほ、ほらこんなにご立派だしさ、気長に行こうよ」
「そ、そうか?」
「保障する!」
「ありがとうエイミィ……君が僕の恋人でよかった」
 涙の代わりに鈴口から蜜が一滴、エイミィの胸へ零れた。
「でもさ……おちんちんってもっとすごいものかと思ったけど」
 しげしげ見つめて、手で擦ってみたりしながらエイミィが口にする。
「もっとさ……めがっさ太くて、にょろにょろしたものかと思った」
「なんだよそれ」
 意味不明である。いやなんとなくわかることはわかるのだが。
「可愛いかな……クロノ君っぽいし」
 クロノがそうしたように指の腹で亀頭を摩ってみる。
 なんだかすごく愛おしくなって、もっと触れたいと思うようになる。麻薬みたいだ。
「もう少し腰突き出せる?」
「あ、ああ」
 ぐいっとクロノが腰を出すと自分の口元まで亀頭が近づいてくる。
 舌を出せば舐めることが出来るだろう。当然そのつもりなのだ。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:37:02 ID:sBNSRUHY<>
「はむ!」
「んく! エイミィ!?」
 首を上げ軽く口付け、そのまま口の中へ招き入れた。
 不意打ちに思わず声を上げるクロノ。さらに亀頭を伝う生温かい感触に前かがみになってしまう。
「んちゅ……んぐ」
 唇で挟むようにして、舌で何度も擦りあげて。
 首を上げてるせいか少し安定しないあ。自然と首が上下し、扱く形になった。
「ああ! う! そんなことされたら!」
 それに今まで高ぶっていたクロノが耐えられるわけもなく
「ごめっ! ごめんエイミィ! あぅ!」
 まるで女の子みたいな声で鳴いてクロノはエイミィの口内へ白濁をぶちまけた。
 もちろん予期していなかったエイミィに受け止める余裕などある分けなくて。
「ん! んんぅ! んーーっ!!」
 大きく脈動しながら流し込まれるドロドロをただ甘受することしか出来なかった。
 射精を終えて性器を引き抜くとエイミィは苦悶の表情で自分を見返してくる。
「ご、ごめん。エイミィの口が気持ちよかったから……吐き出して良いん――」
 その前にエイミィの喉が大きく動いた。
 ぎゅっと目を瞑り、苦い薬を飲み込むように一気に胃へと精液を押し込んでいた。
「あはは……青臭いよこれ。粘々するし……」
 おどけるように彼女は笑った。
 飲み心地は最悪なものだったのだろう。仕切りに唾を飲み込んで喉に残ったものを早く流そうとしている。
「無理しなくても良かったのに……」
「いいの! 好きな人のものだもん……どんな味か気になるでしょ?」
 ウィンクして茶化すエイミィに溜まらなく愛おしさがこみ上げる。
「エイミィ……好きだ」
「クロノ君……んぅ」
 キスして舌を絡めて、せめて口の中だけは綺麗にしてやりたい。
 不器用な優しさでクロノとエイミィはもう一度お互いの気持ちを確かめ合う。二人とも分かっているのだ。この唇が離れたらいよいよなのだと。
「はぁ……ねぇ、一つお願いしていいかな?」
「なんだ? 優しくはするぞ」
「そうじゃなくて……」
 今まで見詰め合っていた視線を外し逡巡。でもすぐに同じように見つめてきて。
「呼び捨てにさせて、クロノ君のこと。もう弟じゃない……私の世界で一番大事な人だから」
「ああ……嬉しいよエイミィ」
「うん!」
 潤む瞳、そこから一筋、涙が溢れた。
「ばか……嬉し泣きは後にしろ。照れるだろ」
「いいんだよ……出ちゃうもんは素直に出したほうが良いんだから」
 指で涙を払われながらエイミィは心の中でクロノ・ハラオウンという男性が大切な人だという事実をかみ締めていた。
 クロノもまた、エイミィ・リミエッタという女性に心を満たされることを深く感謝した。
「じゃあ……来て、クロノ」
「ああ……いくぞ、エイミィ」
 開かれた足、性器に性器を宛がいクロノは視線で合図を送る。
 頷き、エイミィの決意を胸にクロノはゆっくりと腰を進めた――。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/25(金) 13:40:20 ID:sBNSRUHY<> えっ、寸止め?
すいません、つらつら書いてたらこうなったもので
飲み込めなかったS2U……orz
夏が終わる前にこれは終わらせておきたいんだよなぁ

それにしてもまた人がいなくなった……ような
もう見てる人いないのかな、あは


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/25(金) 14:08:57 ID:awU/FpFe<> っここにいるよ
GGGGGGGGGGGGJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ""""""""""""""""!!!!!!!!11 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/25(金) 15:20:41 ID:mK3EuPg5<> ここにもいます。GJっす。
いやー、クロノ×エイミィはいいなぁ。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/25(金) 16:46:42 ID:sC8lhbrB<> 炎熱の攻撃魔法、フランメ・シュラークが襲い来る触手を蒸発させる。
倒しきれなかったものはグラーフアイゼンのハンマーヘッドで四散させ、
消滅はさせられなくとも一時的に無効化する。
身を翻し後退する彼女を援護するように、雷を帯びた砲撃が飛来し、
ゲル状のたゆたう海を穿っていく。

「おらおらあっ!!さっさとシグナム返しやがれ、このところ天もどきがよぉっ!!」

安全圏から毒づき、挑発しつつちらりとヴィータは後方を確認する。
彼女から少し離れて、支援砲撃を続けるはやて。
そのわずかに横で待機する、丸腰のクロノ。
更にその後方ではなのはと彼女を補助するフェイトが、砲撃のチャンスを今か今かと待って準備を完了している。
シャマルもクラールヴィントを起動し、タイミングを計っている。

「ったく、うちのリーダーは世話かけやがってっ……!!」

普段全くミスなんてやらかさないくせに、こーいうときだけポカをやらかす。
全くもって頼りにならないリーダーだ。

内心そうは言いながらも、それはやはりヴィータも彼女のことが心配であったから。
黒手袋に包まれた左手の指先に、4つの鉄球を生み出して、グラーフアイゼンを振りかぶる。

「あんなんでもうちのリーダーだ、放せよっ!!」

叫び、鉄球を打ち出そうとする彼女の動作は、
突然に真っ二つに割れ崩壊した水の山と、そこから現れた緋色の騎士の姿によって停止した。


魔法少女リリカルなのはA’s −その想い、緋に染まる暁のように−

第十一話 君のいない世界に見出す意味


ぐらり、と大きくよろめきながらも、空中でシグナムは踏みとどまる。
なんとか、自力で水中から脱出することはできた。

「──っ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「シグナムっ!!」
「───っく……!!なんとか、無事です……主、はやて……!!」

しかし、頭痛がひどい。
少女達のあげる歓声が随分と頭に響き、ずきずきと痛む。
しばらく、酸欠状態が続いていたらしい。横隔膜を何度も上下させ、荒い息を繰り返す。
呼吸もままならぬ液体生物の中に閉じ込められていたのだから、無理なからぬことではあるが。
目の前が、歪んで見える。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/25(金) 16:49:09 ID:sC8lhbrB<>
「邪魔だっ!!!」

ああ、くそ。
うようよと寄ってくる触手を、炎を纏った剣でことごとく切断、蒸発させながら思う。
なんてものを見せてくれるんだ。
頭は痛いし、身体はべとべとした肌触りの水分が全身に纏わりついて、気持ち悪いし。
幻覚を見せていた成分なのか、全身軽い痺れと寒気が残っているし。
碌なことをしないロストロギアだ、本当に。

「シグナム!!危ない!!」

フェイトによって雷撃が付加されたなのはの砲撃が、彼女の背後の触手を薙ぎ払う。
感謝の意を込めた視線を返した際、シグナムはなのは達の後ろでこちらを見ている、
青年の顔を一瞬目の隅に留める。そして彼の手が肩に置かれた、一人の女性のことも。

(笑っていろ、か……)

「……ふん」

自身の放った炎で煤けた頬を微かに歪める。
それがあなたの要求だというのなら、従おう。
ロードしたカートリッジの薬莢を排莢、一層の勢いで刃を包む炎が燃え盛る。

「紫電、一閃────……『零』」

剣技に求められるのは、破壊力だけではない。よってその一撃は、邪道。
破壊力のみを追い求めた邪道であるが故、実戦で殆ど使われることもなく、
長射程を誇るシュツルムファルケンへと取って変わられた、シグナムの最高威力を誇る斬撃。
────使えない。価値のない。故に、「零」。名を、紫電一閃・零と言う。
言ってしまえば渾身の魔力によって灼熱と化した炎の剣を、溢れ出る魔力ごと振り下ろすだけの、技とすら言えないような代物だ。

「はああああああっ!!!」

だが、それは最大級の威力であるが故に振り下ろされ、水分に満ちた相手に対し、その炎熱の刀身を遺憾なく発揮し。
ゲル状生物の身体を構成していた水分、その大半を霧散させる。
ただ大きいだけの相手、動かない、脆い相手であれば、ファルケンよりも有効だ。

「……あれか」

魔力の消耗と、身体に残る神経毒のせいか、くらくらと霞む目に、蒼く光る宝石が浮かんでいるのが見える。
レヴァンティンと鞘をドッキングさせ、ボーゲンフォルムへ。
安定しない照準をあわせながら、シグナムはひとりごちる。

「お前が、見せてくれたのだな」
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/25(金) 16:50:56 ID:sC8lhbrB<>
夢でもみているかのように、世界が回っていた。眠い。
吐き気も酷い。身体が、脳味噌が、はやく意識を手放してしまえて急かしてくる。
もう少し、耐えろ。あと、もう少しだけ。揺らめく視界を、維持し続ける。

「……感謝している。いいものを見せてくれた」
『Sturmfalken』

幻ではあっても、「彼」と話すことができた。
礼というわけではないが、代わりに、この手で止めてやる。
「彼」に対して感じていた負い目との、決別の意もこめて。

「ありがとう」

この一矢で、終わらせる。
追加魔力として、カートリッジをフルロード。これでなにもかも空っぽになった。

「駆けよ、隼」

引き絞った弓を解き放す。
赤熱していた矢が光へと姿を変え、ロストロギアへと飛んでいく。
大丈夫、照準はずれてはいなかった。このままいけば、機能を停止させられるだろう。
あとは──あとは、シャマルやクロノたちがうまくやってくれる。
安心すると、回っていた世界がついに崩壊した。
真っ白で、何も見えなくなった。身体がぐらり、と姿勢を保てなくなったのをようやく、シグナムは理解する。
落下の浮揚感に包まれながら、彼女は意識を失う。

「シグナムっ!?」

主の声が、耳に微かに残った。
騎士甲冑がひとりでに消滅し、水着姿へとその着衣を戻しながら、
レヴァンティンを握ったまま、シグナムはただの水へと変化したプールに落下する。

(ああ───……心地よい、な……)

水底に光るロストロギアも、上がる水飛沫も。
彼女を引き上げるべく、慌ててこちらへと駆け出す仲間達も、何も見えず。
プールの冷たい水の心地よさにだけ、疲れ果てた彼女は微笑を浮かべ沈んでいった。
溺れるほど深くはないけれど、指先一つ動かすのも面倒で億劫に感じられる。
それでも、彼女の顔にあったのは微笑み。
笑っていよう───無意識にそう思ったのかどうかは、定かではないけれど。
彼女を助けるために水面に飛び込んだ人物の姿にも、彼女は気付かず眠っていた。
プールの水の冷たさ、それだけで今のシグナムが穏やかであるには十分だった。

*     *     *
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/25(金) 16:51:58 ID:sC8lhbrB<>
「───ぶはっ」
「お疲れ様、クロノ。あった?」
「ああ、ほら」

水面から、クロノが顔を出す。
フェイトが差し出したタオルを受け取って、代わりだというように右手の宝石を見せる。
機能を停止したロストロギアを、プールの底から攫って回収してきたのだ。
プール再度へと上る梯子に足をかけて、シグナムのもとへ集まっている皆に尋ねる。

「そっちは、どうだ?」

座り込んだ人の輪の上から身を屈めて、様子を覗き込む。
彼の見たシグナムの顔は、幸いにして穏やかだった。

「少し水を飲んでいたので、吐かせて……ノエルさんに人工呼吸を行ってもらいましたから。あとは私が解毒を」

彼女を膝の上に寝かせているシャマルが答える。
魔力を使い切っているのと、神経毒を長時間浴びていたせいで目覚めても少しの間
痺れや頭痛があるかもしれないということを除けば、何も問題はない、と。

「今は本当、疲れて眠ってるだけです。そのうち目を覚ますと思います」
「そうか、それじゃあ──……」
「俺が部屋まで運ぼう。忍、着替えさせてやってくれ」
「じゃあ、恭也さん。忍さんもお願いします」

まだアースラが来るのを待って事後処理をしなければならない魔導士や騎士たちに比べて、
民間人の恭也も忍も適任といえた。恭也の挙手に、クロノは二人に任せることにする。

「お願いしますね」
「ああ。──美由希、お前も手伝え」
「はーい」

シャマルの膝から、シグナムを背負い恭也が立ち上がる。
すうすうと寝息を立てている彼女を背に、更衣室のほうへ忍と美由希を伴って歩いていく。

「……でも」
「ん、どしたん、シャマル」
「いえ……シグナムの寝顔」

この時代での生活で、随分安らかな寝顔を見せるようになったけれど。

(あんなに穏やかで、満ち足りた寝顔をシグナムがしてるのを見るの、はじめて……かも)

「何か……いいこと、あったんでしょうね」
「へ?何が?」
「いいえ、なんでもありませんよ、はやてちゃん」

頬を緩めたシャマルがそう言ってはやてを煙に巻くと、クロノの手にしている通信機が鳴った。
もうすぐアースラが着くので、準備をしておいてくれ、という。
クロノはもうとっくにそんなものできていると怒鳴り返してから、
皆にそのことを伝えた。アースラが来れば、リンディの張っている結界も解けるだろう。
さも疲れたようにリンディが肩の関節をこきこきと鳴らす。
他の皆と同じようにシャマルとはやても彼に対して、頷いた。

波乱に富んだバカンスの一幕が、終わりを告げようとしていた。
ようやく、彼女達の休暇は本番を迎えようとしている。それにはこの後始末を終わらせなければならないが。
シグナムの髪から滴っていった水が、背負っていった恭也の歩いた後に一本の滲みをつくっていた。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/25(金) 16:57:16 ID:sC8lhbrB<> 十三話で終わるつもりだったんですが、次回で最終回です。
迷走感ありまくりですがorzなんとかまとめるつもりですので。

>>176

>飲み込めなかったS2U……orz
じっくり時間をかけて味わって飲み込むんだと考えれば(ぉ
妹に仕事押し付けて彼女とベッドインするあたりクロノが素敵にダメ兄貴化
していて結構結構 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:46:40 ID:6qs7ucbl<>
7 初めては夜景の見えるホテルのふかふかのベッドの上で大好きなあなたと一緒に

 大きく開脚した足は女性にとって羞恥以外の何者でもない。
 いくら相手が恋人でも辱められることに変わりはないのだから。
 加えて肉のクレバスに突き刺さる男性器は痛々しいほどそこを拡げている。  
「あっ……ぐぅ!! 痛いぃ……」
 肉体的にも精神的にも彼女をいたぶって何が楽しいのか。
 生憎サディストではない。一刻も早く苦痛を取り払わなければならない。
「エイミィ、力抜いて」
「わかってる、けっど!」
 これでようやく亀頭が入っただけなんて酷すぎる。
 なのに痛いくらいに締め付ける膣の感触に脳髄は蕩けそうで。
 体は挿れたいと訴える。心は挿れるなと訴える。
「くろ……くろのぉ……クロノぉ」
 左手はシーツを引きちぎられそうくらいに握り締められて。
 助けを求めるように伸ばされた右手を繋ぎ合わせて。
「いっつ!」
 手が潰される――!?
 女子の握力と思えないくらいに握られる手。爪が食い込み易々と甲に跡をつける。
 これ以上の痛みを彼女は経験しているのか。打ちのめされそうになりながらクロノも痛いくらいに握り返して。
「私……うっ! だいじょぶだからぁ」
「無理するなエイミィ!」
 ぽろぽろと涙の粒を生み落とす瞳にいたたまれなくなる。
 男は気持ち良いばかりなんて不公平すぎる。でも今の状態で快感を共有するなんて無理だ。
 一度抜くか……その方がいいか。
「がんばるから……だからクロノの好きに……して!」
 ガツンとぶん殴られた感じだ。
 何を今更、自分は躊躇う。無理ならやってみせればいい。今を変えるなんて容易いだろう。
 痛みを与え続けるなら、永遠より一瞬だ。
「ああ、君の要望どおりにさせてもらう」
 手を振り解き、両手で腰を掴み固定。激痛にずり上がれていたエイミィの自由を完全に奪う。
 腰を落とし、出来るだけ無理な角度にならないよう勤めクロノは体を乗り出す。
「手の変わりに掴まってろ」
「う、ん!」
 エイミィの伸ばした手はクロノの肩を掴む。やはり爪が食い込み痛い。
 だがそれ以上の痛みをエイミィに強いるのだ。これぐらい自分の罰と思えばいい。
 今の時点で三分の一がエイミィの中に埋もれている。後三分の二を――もしかしたらもう奥にたどり着くかもしれないが――一気に押し込む。
「いくぞ」
 全体重を乗せて腰を進める。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:47:12 ID:6qs7ucbl<>
「いやぁ! あっ、うっ! いたぁ……痛いっ! ぐぅぅ!!」
 劈くような悲鳴。保っていた均衡が音を立て崩れていく。
 膣は突然態度を変えた侵入者を快くは歓迎しない。肉の弾力で必死に押し出そうとしてくる。
 それでも進む。ただ押し込む、突き通す、押し通す――!
「あっ! あっああ!」
 先端を一際締め付けるような感覚。それさえ構わずクロノは腰を前へ突き出す。
「いっいたいっ! う、うぐ! あっ! ああああああぁ!!」
 押し広げるような、引き裂くような。その抵抗を超えると同時にずるりとクロノの全てがエイミィに飲み込まれた。
 あまりに悲痛な悲鳴と共に。
「……エイミィ」
「ひっく……んく……。あはは、クロノに初めてとられちゃった」
「それなら僕の初めてだって……」
 涙混じりの笑顔で自分を和まそうと微笑む。
 可愛くて愛おしい。溜まらずエイミィの頭を撫で、胸を擦った。
「もう……胸は余計だぞ」
「少しは紛れると思ったんだ」
 もちろんクロノが胸を触る意図だってエイミィはわかっている。彼なりの優しさで抉られる様な痛みも我慢できる気がした。
 腰と腰がぴったりと触れ合い、さらに深いところで余すとこなく溶け合って。
 子宮口に頭を密着させ、茎は壁と隙間なく。熱いくらいにエイミィを感じながらクロノは甘美な刺激を幸福を感じていた。
「今さ、お腹の中にクロノがいるんだよね」
「痛むか? それなら治癒魔法で」
「ううん、いらない。だって一回限りの痛みだもん、最後まで感じてたい」
 処女喪失なんて長い人生一回きり。
 二人が初めて繋がった今日という日はありのまま、素敵な思い出にしたかった。
「それに、ズルはよくないぞ」
 頭を撫で、頬に手を沿え目を閉じねだる。
 すぐに柔らかな口付けが来て、また舌を絡めて。
 ゆっくりと時間をかけて、こそばゆくなるけど心地よくて。口を離せばまた橋がかかる。
「そろそろ大丈夫かな……」
「ほんとにか?」
「女は強しって言うでしょ。舐めてもらっちゃ困ります、なんてね」
 見る限りなら大丈夫そうなのだが。
 かといって動かなければ終わらない。いや、多分このままでも放っておけば出てしまうのだが。
 それでは一緒に気持ちよくなれないし。
「じゃ、じゃあ動くぞ」
 黙ってエイミィは頷いた。
 心なしか強張ってきた顔に笑顔で安心させゆっくりと腰を引く。
「ん! ん〜……」
 もうそれだけで腰が砕けそうだった。
 自慰などとは次元が違う。常に全体を擦られる刺激は強すぎといっても過言じゃない。
 もしも一回も出さずに突入していれば今ので暴発していただろう。エイミィの口に出していたことが思わぬ幸運だった。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:48:23 ID:6qs7ucbl<>
「あっ! いっ! はぁう!」
 苦しげに息を吐いてエイミィは耐えている。
 傷に塩を塗りこんでいるようなものだ。ほんとにこれが快感に変わるのか。
 疑心暗鬼を振り払い、クロノは黙って注送を始めた。出来るだけゆっくり。一往復を十秒、二十秒かけるつもりで。
「つぅ! うん!」
 体を支えきれない。あまりの気持ちよさに脳が酔っている。
 亀頭が子宮を叩く度、クロノのは崩れるように前傾していく。
「あっ! えっ? ん……クロノ?」
 いつの間にかエイミィの頭を抱えてクロノは小刻みに動いていた。
 浅い所を行き来して、少ししたら深い所で。登り詰めないようゆるやかに、本能が射精するために激しく動こうとするのを理性で繋ぎとめて。
「うぅ! くぅ……んぅ……あっ!!」
「エイミィ?」
「なんだろ私……今電気が走った」 
 甘い声はもちろんクロノの耳にも届いていた。痛みが和らいできたのだろうか。
「今のところ、もう一回擦ってみてくれる?」
「わかった」
 入り口から少し入った所を言われた通りに擦ってみる。
「ん! うあ! やっ、なにこれ!? あっん!」
 今まで痛みばかり押し殺していた声が始めて快感に声を押し殺していた。
 感じる場所なのかもしれない。今度は意識してそこを擦れるよう前後に揺り動かす。
「あ……あぁ! はぁ、はぁうん!! んっくあ! ああ!」
「良かった、もう痛まないみたいだな」
「そ、そうかな? ……うん、そうだと思う」
「じゃあ少し速くする」
 そろそろ理性の鎖が切れそうだった。
 いくら鈍行運転でもひっきりなしに動かしていては限界だってやって来る。
 もうエイミィの返事も聞かずクロノはピッチを上げ始める。
「へっ? 速くって、っ! あっ! うっやぁ! ま、まってよ! ひゃ!!」
「待てない」
 ぶっきらぼうに答えておいて後は無言。
 一度堰を切った腰は止まることなく動き続ける。
 二人の体液が水音を立て、ぬるぬるとした感触を限界まで味わおうと腰を打ち付ければ乾いた音が部屋に響く。
「やっだぁ! はげし! はげしいってぇ!! 音立てないでよっ! あああ!」
 エイミィだってもう箍が外れ始めていた。
 体の言うことが聞かない。クロノの動きが、温かさが、体全体隅々まで染み渡り浮遊感にも似た感覚が包み込んでいく。
 意識してもいないのに体が反り、腕は離れないようクロノの背中を捕え、目が合えばこちらから激しく口付ける。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:49:04 ID:6qs7ucbl<>
「く、くろの! クロノ! あん! やん!! ひゃはん!!」
「エイミィ……エイミィ!!」
 ただ愛しくて恋しくて。
 このまま一つに溶け合ってしまうような錯覚。それでも溶け合いたくない。
「んひっ! う、うっあ! ああぅ!! ひん! ああ、ああ!」
 完全に一つになったらこの感覚さえ、触れ合うことさえ出来ないんだから。
 だからこのままで、性器を擦り付けて、気持ちを合わせて。
 もっと、もっと、もっと――!
「好きだよ……誰よりも! いや、比べるなんて出来ない! 好きなのは君だけだ!!」
「私だってクロノが大好き! フェイトちゃんにだって艦長にだって渡さないんだから!!」
 ぶつけ合う想いに絡み合う舌。一心不乱に腰は動いて、いつの間にかエイミィも腰を押し付けて。
 激しさを増す淫音。もう限界だ。
 湧き上がる切なげな感覚に亀頭は鉄のように硬く、膣は精を搾り取ろうと妖しく蠢く。
「いく……ぞ! エイミィ!!」
「うぁ! やぁん!! きて! きてクロノぉ!!」
 呼吸の仕方を忘れたように絶え絶えの息遣い。
 呂律も回らず、ただ心の根底に全てを受け止める、それだけがある。
「あっ!! やああああぁぁーーっ!!」
 全身を突っ張らせて激しく反り返りながらエイミィは達する。
「ぐっ! ううぁ……っ!」
 収縮する膣に締め上げられてクロノも欲望を放つ。
 鈴口を子宮口へ押し付け、あるもの全て荒々しく脈打ち撃ち込んだ。
 光の洪水に飲み込まれたみたいに、頭の中は白一色で。
 何も考えられない、考えたくない。
 永遠と一瞬が混じりあった世界に全てを委ねて、クロノもエイミィも同時にベッドへ崩れた。
「はぁ……はぁ……はぁーーっ!」
 大きく息を吐いて、吹っ飛んだ意識を手繰って。
 体中は汗まみれで、せっかく風呂に入ったのに台無しだ。
 重なり合いながら息を整え、一体どのくらいそうしていたのか。
「風呂……入り直さないとな」
「……だね」
 余韻に浸って恍惚してるエイミィにまたキスをして。
「すけべ……」
「ああ、ほんとにな」
 お返しとばかりにクロノにキスをして。
「ほんとだよ……あはは」
「まったくだ……ははは」
 意味もなく、ただ笑いあった。
 ただただ笑って、手を繋いだ。
「愛してる……エイミィ」
「愛してる……クロノ」
 愛を語って、もう一度だけ唇を重ねた。
 上で求め合い、下では秘所から収めきれなかった精が溢れ出ていた。
 純粋な白ではなく純潔の証が混じって。
 
 ――それはまるで二人を祝福する桜のように色づいていた。
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:52:14 ID:6qs7ucbl<>
8 Aエンド:きっとこれが二人の形 Bエンド:これが世に言う因果応報

「結局もう一泊しちゃったね」
「まぁ……有給は腐るほどあるんだし大丈夫だろ」
 とか何とか言っているが宿泊予約を二泊三日に設定していた辺り、始めからそのつもりだったんだろう。
 ほんとどこまでもこの執務官は頭が回る。
「備えあれば憂いなし、だろ?」
 そんでもって心の中までずかずか入り込んで。
 まぁ、今となってはいいんだけど。
「でもフェイトちゃんも災難だったよね。こんな駄目お兄ちゃんのとばっちり食らって」
「執務官には必要だろ」
「臨機応変な対応も」
 自分だってこうやって無断侵入できるんだから。
「わかってるなら大丈夫さ」
「私じゃなくてフェイトちゃんでしょ」
 あんまり生意気なので指でおでこを小突いてやった。
 こっちが年上、図には乗らせず尻に敷く。
「なんだよ……別にいいだろ。妹なんだから」
 ぷいっと横を向いてしまうあたりやっぱりまだまだお子様か。
 子供だったり男だったり、ほんと微妙な年齢だとしみじみ思ってしまった。
「だって私にとっても妹みたいなもんだから、放っておけないでしょ」
「言われればそうだな……ってちょっと待て」
 突然何を言い出すかと思えば……。
 冗談だとしても未来のことを考えるのはいささか早計すぎるではないか。
「君って奴はな……先のことじゃなくて今を考えろ、今を」
 確かに最終的にはそうなるのだろう。
 しかし彼女の名前をハラオウンにするのならもう少し自分の身辺を整えておきたい。
 食いっぱぐれのない安定した高給職。庭付き一戸立てのマイホーム。ちょっとやそっとじゃ困らない貯蓄。以下もろもろ。
「あのさクロノ君……別に妹は言ってないけどね。あくまで妹みたいなもの、でしょ?」 
「……う」
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:52:46 ID:6qs7ucbl<>
「な〜にを考えていたのかなぁ……クロノ君」
 なんだかんだで元の呼び方に戻ってるし。
 にやつきながら顔を覗き込む管制官兼執務官補佐にどうやら自分は
「なんにも考えてない!」
 敵わないらしい。
「そっかぁ……じゃそゆことにしといたげる」
「まぁ、君こそそんなこと言えるんだ。同じこと考えてる時点で、な」
 思わぬ彼氏の反撃にとぼけるように明後日の方を見て頬をかく。
 やろうと思えば簡単に敵うのだ。つまりは彼女に隙を見せるのは安心して任せられるサインであり、それに少しだけ男の余裕って奴が含まれている。
「それにもう弟じゃないんだ。君付けも卒業だろ?」
 呼び捨てにされたりされなかったり、一度言ったことを覆されてはいい気分にはならない。
 本音で言うと結構気に入っているのだ、呼び捨てにされるのを。
「んっと……なんていうか一夜経って冷静になったらクロノ君にやっぱり合わないかなって」
「僕はあってると思うけどな」
「なんかもっとピッタリな感じの呼び方が浮かんできたり」
 言って、一歩先へ飛び出す。
 立ち止まって振り返る。そうして誇らしげに、でも恥ずかしそうに顔を朱に染めて。
「なんていうか……ダーリン?」
 こっちの顔まで熱暴走させる発言だった。
 改めて思う。
 ――やっぱりエイミィには敵わないよ。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:53:18 ID:6qs7ucbl<>
* * *

「で……なにがあったんだこれは」
 アースラ艦橋は地獄絵図と化していた――。
 椅子から崩れ落ちそうになっている職員。床に転がってピクリとも動かない職員。その中に見慣れた人影も。
「ヴィータ……?」
 騎士服のまま突っ伏している少女もやはり動かない。爆睡というより燃え尽きていた。
 エイミィの特等席に寄りかかるように背を預ける湖の騎士。床にはだらしなく自身のデバイスの振り子がだらんと放り出されていた。
 とにかく艦橋そこらじゅうに人が倒れ附し目も当てられない状況。
「みなさん……おつかれ?」
 真っ白なっているランディやアレックスを突っつきながらエイミィはなんとなくだけど空白の二日に何があったか理解した。
「ああ、お帰りなさい二人とも」
 突如として現れた気配に背筋が震えた。
 なにか、言い知れぬ恐怖が忍び寄ってくる。何かと思い振り向くと
「母さんね……すごく頑張ったのよ……褒めて欲しいわぁ」
 そこにあったのはそっぽを向いた椅子。だがそれが回転し始めると、座っていた主が恨めしそうにな視線と共に現れた。
 焦点が定まってない。目が据わっている。そしてなんだその漫画みたいなクマは。
 なんというプレッシャー。影を貼り付けられたように足がすくみ動かない。
 これが管理局提督の実力なのか。
 こんな母親見たことがない。心配より恐怖を感じるほうが上を行っていた。
「ふ、ふふ、ふふふふふふ」
 壊れた人形みたいに小刻みに震えて笑う。どこのホラー番組だ、これは。
「か、母さん……」
「ふふ、ふーっ!!」
「ひぃ!!」
 こんなの母さんじゃない!
 否定を下したクロノの頭はある意味すごく正しかった。
 そうやって不気味に笑い糸が切れたようにリンディは気絶。その手からマグカップが床に転がった。
 中身は……とっくになくなっていた。
「く、クロノ君……逃げよ。やばい、これ」
「ああ、即刻脱出だ」
 本能が警報を発令した。いや、もう警報にもなってない。エマージェンシー、緊急事態だ。
 仲良く並んで出口へ向かう二人。
 しかし現実はいつだってこんなはずじゃないことばかりで。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:53:54 ID:6qs7ucbl<>
「逃がさないよ」
 ドアの向こうから低いケモノのような声がした。
 そうしてドアが吹き飛んだ。
「や、やぁフェイト……」
「あ、いい感じにやつれちゃってるね、フェイトちゃん」
 右手には雄雄しく煌く大剣。少女にはあまりに不釣合いなザンバーフォームのバルディッシュ。
 埃塗れのバリアジャケットに、ツインテールは片方が解け。悟ったような表情に時折ヒューヒューと抜けるような呼吸音。
 もう凛としたフェイト・ハラオウンはどこか彼方に置いてきてしまったようで。
「仕事……たくさん……たくさんあったよ……いい経験に……すごくなったよ」
 ほんとうに長い、果てしなく長い、それはもう永遠のように長い一日だった。
 実質二日だが、彼女の時計は二十四時間経過した時点で壊れた。
 執務官と管制官がいないだけでここまで艦の指揮系統がいかれるなんて、兄の苦労を身に沁みるほど思い知らされた。
 戦闘やら遺失物捜索やら、さらにはトラブルを起こした艦の代打。
 寝る、という行為さえ否定された任務の洪水。
 仕方がないので暇人だったヴォルケンリッターを臨時で雇ってみたが役には立たず。
「だからね……二人には艦のみんなから御礼があるんだよ」
 体を捻って両手で剣を持って。
 何構えているんですか? それじゃまるで魔法を使う感じですよ。
「とびっきりのね……とびっきりのねー!!」
『S……Sir? Please wait wait wait.Nooooooooooo!!!』
 空薬莢が六つ綺麗に連なって、放物線を描いて転がって。
 さらに魔力を込めるとは……。壊れるぞ、てか悲鳴上げてるのわかるだろ、バルディッシュほんとに壊れるぞ。
「天の風琴が奏で流れ落ちる闇の深淵にて重苦にもがき蠢く雷よ!! その旋律彼の者に凄惨な驟雨にして蒼古なる雷のごとく打ちつけよーっ!!」
 金色に染まる光の女神。
 あまりに帯電したせいか蛇のように金髪は揺らめいて。
 眼光は鬼のごとく、自分を親の敵に見るように光らせて。
 この世のものでない。そう思えば思うほどにガタガタと地震でも来たかのように震え竦み。
「受け取って……これが私の――!!」
『Oh my God! Please show mercy to pitiful two person!! Oh! Oh no!』
 キャパシティをなおも超え、砕け散っていく戦斧だったもの。
 バラバラになっていく金色の欠片は彼の涙かもしれない。
「そうだフェイト、休暇をやろう。十日間、いや一ヶ月、いいや一年」
 実際なに言っても無駄なのは分かってるんだけどね。
 ほら、魔力が放電されてブリッジ壊してるぞ。ほら、アレックスとランディが黒こげだ。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:54:33 ID:6qs7ucbl<>
「なぁ、エイミィなんで僕の後ろに隠れてるんだ? ほら、盾にするなよ」
「ほ、ほらクロノ君大黒柱なんだから! 頑張ってダーリン!」
 ――ブッチーン!
「ひぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!?!?」
 堪忍袋の緒が切れた。
 みちみちと繊維一本一本から、じわじわ時間をかけて裂けるんじゃない。
 もう一思いに、一息で、力任せに千切れ飛んだ。
 ここは室内だ。なのになんで暴風域に入る。なんで落雷している。なんで嵐になっている!?
「これからね、ねね! いろ! いろいろいろいろいろあるけどよろしくね、くね!!」
 掲げた右腕超振動! 高まる雷光臨海点! 
「お兄ちゃんとお姉ちゃーーーんっ!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「いぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 絶叫マシーンだ。これは絶叫マシーンに違いない。
 フェイトコースターっていう新感覚恐怖絶叫ホラーマシーン!!
「ぼぉぉるてぇぇくぷるぁぁぁずまぁさんでぅわぁぁぁえるぇくとるぉんるあいとにんぐぅ!!」
 長い呪文だな、あはは。
 なかなかいい発音。巻き舌なんかして呪文に想いを込めてるんだなぁ。
「メガギガテラペタエクサゼタヨタファイナルダイナミックグランドスプリームスペシャルフェイト!!」
 お兄ちゃん、嬉しい――
「ぶるるるるぇいかぁぁぁぁぁぁあーーーーーっ!!!!!!!!!!」
 ――ぞ。
 
 光――あれ。

 消え行く意識に走馬灯。
 そういえば馬鹿げたことを考えたものだ。
 でも現実になったことに自分の頭の出来のよさを胸を張って自慢したい。
 
 二人がいちゃついてほんとにアースラが沈んだんだから。

 きっと管理局も沈むんだろうな。
 ――合掌。
 最後までそんなことを考えながらクロノもエイミィも光の中へ消えていった。
 でも掛け替えのないものを見つけられたんだし後悔はない。
「また……旅行行こうな」
「うん」
 消える。全てが消える。
 ああ、今度はフェイトを凍結させてから旅行に行こう。
 対策をしっかり練っておけばきっと大丈夫さ。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 10:55:06 ID:6qs7ucbl<>
「あはは、フェイトは元気ね」
 同じように光に抱かれごちる人。
 娘の成長に母はとても感激しています。
 でもやりすぎよ。
「もう、こうなるんだったら新しい人探しておくべきだったわぁ」
 
 この期に及んでまだ言うか、あんたは。

 そんなこんなでクロノとエイミィの愛の巣は無へと帰したのでありました。
 めでたしめでたし。

* * *

『Happy end?』
「そうじゃないかな、レイジングハート」
「でもあいつ避妊魔法とか聞いてきたくせに全然使ってなかったな」
「ユーノくんだって初めてのときはそうだったくせに」
「そうだっけ?」
「とぼけないで、ちゃ〜んと覚えてるんだから」
「敵わないな……じゃあする?」
「……えっち……でも、いいよ」
「じゃあ、なのは」
「うん、大好き! あ・な・た、な〜んてね」
「照れるよ、もう」
「ふふふ」

 それよりこの馬鹿っプルどうにかしてください。
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/26(土) 11:02:59 ID:6qs7ucbl<> 宿題に溺れる夏休みボーイたち!
おじさんから最高のサマープレゼント!

すいません調子に乗って
さらに調子に乗ると
 
 改めて思う。
 
 ――やっぱりエイミィには敵わないよ。
 
 そしてこれからもよろしく頼む。
 補佐として、大切なPrivate aideとして――。

 Fin

な感じで修正を>>549
すいませんほんとにorz

これでPrivate aide after days 〜飲み込んで僕のS2U〜は
終幕です
最後の方は前半で止めるも良し、あえて地獄に飛び込むも良しということで
飽きもせず忘れもせず見てくれた方々どうもありがとうございました
もしよければPrivate aideから一気に読んでみるとまたおもしろいかも
いろいろ間と間、時間空いてますし

>>640
ワクテカでお待ちさせていただきます

ではでは

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/26(土) 14:21:05 ID:q7EUcTE0<> めっちゃGJ

フェイトの執務官の一日をkwsk <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/27(日) 23:00:04 ID:lFcusbNl<> >176氏

クロ×エイ派の自分にとってはこの上ないご褒美でした
心からGJを

それから
>「でもあいつ避妊魔法とか聞いてきたくせに全然使ってなかったな」
>「ユーノくんだって初めてのときはそうだったくせに」
>「そうだっけ?」
>「とぼけないで、ちゃ〜んと覚えてるんだから」
ちょww
そこんとこもっとkwskwww <> そうだ、最萌ではやてに投票しよう!@ピンキー<>sage<>2006/08/29(火) 02:31:04 ID:XtUTw0hA<> 保守 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/29(火) 08:26:06 ID:jfLeynRy<> (若干2人の職人さんだけとはいえ)これだけの投下ラッシュなのに保守しなきゃならんとはな・・・・
このスレ、そろそろ存在意義を考えなきゃならん時期なんだろうか・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/29(火) 09:00:15 ID:acwDINm7<> 圧縮もこないだ来たばっかりだし、保守自体がいらん気がする
3期発表で微妙に書き辛い時期でもあるけど感想もそれなりにあるし
<> ヘボ書きマン<>sage<>2006/08/29(火) 09:40:21 ID:EumUTI5m<> 出かける前に 〜月と太陽と・・・〜 の後半上げていきます
相変わらず寸止めですが、次回UPは多分Hシーンだと・・・ <> アリサ<>sage<>2006/08/29(火) 09:41:11 ID:EumUTI5m<>
寝室に辿り着くなり、アタシはベッドに身を投げた。
・・・何でペンション立ってるのよ、この島。いくらなんでも都合が良過ぎる・・・
・・・・・・・・・・・・・さっき、『良い買い物』とか言ってたけど、まさか、ねぇ?

「・・・・・疲れたー・・・・・」
「アリサちゃん、日焼けすごいねー」
すずか、アンタの今の微笑み、ニヤニヤ笑いと同義よ。アタシは騙されないんだから。
今のすずかが、はやてより狡猾なのを分かってないのはユーノくらいよ?

「ユーノ君とのキス、どうだった?」
「・・・・・そっちはどうだったのよ」
「えへへへ・・・・・うん、熱くて・・・甘かったよ。アリサちゃんもユーノ君に夢中になってたよね。えっちな雰囲気だったよ」
ウソ・・・・・最初から見られてたの!?
ううううううう・・・・・・・もう夜なのに顔が真昼より熱くなっちゃったじゃない!!

「おっぱい触らせるだけじゃなくて・・・・・もっとしたかったんじゃ・・・」
「すずかだって・・・・・その・・・・・ユーノにしてあげようとしてたんじゃ・・・」

お互い・・・・・恥ずかし過ぎて黙るしかなかった。何で、あんな事ができたのか・・・・・・ホント、分からない。
ユーノの目を見つめてたら、どうしようもなく身体が熱くて・・・・・ユーノが欲しくなって・・・しちゃった。
すずかも、潤んだ眼でぼんやりしながらユーノの名前を呟いてる。積極的だったクセに、結局溺れたのね、すずかも。


キスした後のユーノの目が網膜に焼き付いて離れないのは、すずかも同じなのかしらね?

唇の感触と味・・・ユーノの味・・・匂い・・・
ユーノと、キスしたい・・・もっと、もっと息も出来なくなるくらい、ユーノの側に行きたい・・・
・・・・・カラダが熱く・・・・・何で、こんなに切ないの・・・?アイツに想いは告げたのに。受け止めてもらえたのに。

足りない。
全然足りない。こんなんじゃ足りない・・・・・・足りないのよ!!!!
・・・・・そりゃ、前からユーノの事思って・・・1人でしちゃった事もあったけど・・・・・
そんなレベルじゃない・・・・・ユーノをメチャクチャにして・・・思いっきりメチャクチャにされたい。
頭の中がそんな風に壊れちゃうくらい、アタシはユーノに狂ってるんだと思う。


何でこんなHな事考えられるんだろう、アタシは・・・・・ <> すずか<>sage<>2006/08/29(火) 09:42:27 ID:EumUTI5m<> 私たちの一族には発情期がある。
人間にだってあるけど・・・私たちのは、そんなレベルじゃない。
理性さえ無くして、貪欲に性の悦楽を貪る様に求めてしまう様になるから・・・・・

私に初めての発情期が来たのは、ユーノ君を初めて元の姿で見た年の夏だった。
なるのが早過ぎだ、ってさくらさんやお姉ちゃんは呆れてたけど。
そんな記憶は薄くて・・・まだ胸もお尻も全然大きくなかった頃だったから・・・
ノエルやファリン(今でも恥ずかしがってる)に舐めてもらったり弄ってもらったり・・・・・

頭に浮かんでくるのはユーノ君・・・いけないって分かってたのに・・・・・
なのはちゃんがユーノ君の事想ってるって知ってたのに、ユーノ君をオカズにしてた。
何度も何度も・・・・・ユーノ君を犯して、犯されて・・・
どうしようもないくらいに・・・・・溺れて・・・・・ユーノ君に会う時、マトモに顔が見れなかった。
中学生に上がっても・・・ユーノ君以外の想像だと満足できなかった。

これは恋なんかじゃない、恋なんかじゃない、ただの性欲なんだから、私はユーノ君を好きになったらダメなんだ・・・・・
そう思って、ずっと隠してて・・・黙ってた。


でも、発情期になって苦しくなる時も、みんなが喧嘩した時も、何か困った事がある度に・・・・・
ユーノ君が真っ先に動いてくれて、気遣ってくれて・・・
笑顔を見てるだけで、死にたいほど恥ずかしかった。やるせなくて、何度泣いたかなんて覚えてられない程・・・

本当にユーノ君の事を1人の人間として好き、って気付いたのは去年。
そう、ユーノ君のいる無限書庫に配置された年(本当は色々誘われてたけど、嫌だったから行かなかった)。
笑顔で出迎えてくれたユーノ君はメガネをかけてて、髪も背も伸びてて。
本当に、久し振りで・・・・でも、全然変わってなくて。

夜の一族である事を告白した時も、発情期の事を話した時も、嫌な顔もせず受け入れてくれた。

分かってるのに・・・・・私は、ずっとユーノ君とはいられないって・・・。
それでも、この想いを消したくない。・・・・・ユーノ君が好きだと想うこのキモチはホンモノだから。
傷つくと分かっていても、私、ユーノ君を愛してる。
私の全部を、ユーノ君に受け入れてもらえたら・・・ってずっと想って、想い続けてる。 <> すずか<>sage<>2006/08/29(火) 09:43:20 ID:EumUTI5m<> ・・・・・あ。
私、一人独白モードに・・・・・入っちゃってた?

ア「へぇ〜〜〜〜〜」(ニヤニヤ
す「!!!!!!!」
ア「すずか、そういう所は変わってないわよね、ホント」
す「えぅぅ・・・・・」
ア「ユーノの事想って、しちゃってたんだ」
す「・・・アリサちゃんはしないの?」

うう・・・アリサちゃんが久々にいじめっ子だよ・・・・・なんとかペースを取り戻さなきゃ。

ア「・・・してるわよ・・・好きだもん」
す「・・・・・・・・・でもね、今夜はユーノ君がいるんだよ?」
ア「すずか、アンタ・・・!?!!?」
ようやく気付いたみたいだね、アリサちゃん?  そうだよ。今回の旅行は・・・そのための・・・・・
ユーノ君、鈍感だもん・・・・・
今日の私達としたキスだって、ユーノ君があんまりにも気付いてくれなくて・・・我慢できなくて、しちゃったんだから。


ア「アタシ・・・こういうの、卑怯だと思う」
す「でも、こうでもしないと気付いてくれないよ?でも、鈍感なのは・・・・・アリサちゃんだって分かってるでしょ?」
ア「分かってるわよ・・・でも・・・・・その・・・するのよね?」
す「・・・・・う・・・・うん」
私だってすごく緊張してるんだよ?膝が震えてて、胸が痛いくらい心臓が激しくドキドキしてる。
アリサちゃんはお腹の下の方を押さえてもじもじしてて・・・

ア「今夜・・・?」
す「うん・・・・・そのつもり」
ア「いつなの・・・?」
す「ええと・・・・・・・・・・・・・」
・・・アリサちゃん、私、そこまで考えてなかったよ・・・・・・・どうしよう・・・・・


ア「・・・・・聞く、っていうのも変よね」
す「ユーノ君に?」
それはおかしいよアリサちゃん・・・どう考えても。ユーノ君に『Hな事したいけど、何時なら良い?』って聞くの?
それとも、『今日大丈夫だから・・・』って言って誘うの?・・・・・それって、恋人通り越してる気がするよ。
私達、まだユーノ君とそんなトコロまで行ってないのに・・・・・あうぅ・・・ <> ユーノ<>sage<>2006/08/29(火) 09:44:10 ID:EumUTI5m<> シャワーの水温は最低に設定する。マイナス1桁まである辺り、どう考えてもおかしいよ、ここの設備。
でも、今のボクにはちょうど良いんだ。・・・一応、マイナスにはしなかったけど。
(キス・・・しちゃったんだよね・・・アリサと・・・・すずかとも)

あの後も、アリサに追いかけられたり、すずかと一緒に泳いだり・・・・・・・砂に埋められたり、抱きつかれて沈められたり。
身体中が日焼けでヒリヒリするほど、2人と思いっきり遊んだけれど・・・
ボクも男なんだと認識させられて・・・・・自己嫌悪してる。

2人の匂いが染み付いて取れなくなってるような気がして、2人の目や表情、唇のイメージが脳裏に焼きついてる。
髪の感触や繋いだ手の温度も、肌の熱さも・・・・・ボクに絡み付いて理性を引き剥がそうとする。

(落ち着け自分!!ボクの事を『好き』って言ってくれた2人をそんな目で見るなんてサイテーな事じゃないか!!!!)


だけど、アリサも、すずかも、ボクがあまりにも手を出さないから、という事を言ってた・・・・・

正直、怖いからできない、というのが本音だ。
誰かを好きになったら、他の誰かを傷つけてしまう・・・・・だったら好きにならなければ良いんだ、って思ってた。
・・・・・今の状況で、誰も傷付けない選択肢はボクの知っている限り皆無だ。


(どうしろっていうんだよ・・・・・!!!!!ボクの大バカヤローは・・・!!!!!)

シャワーは5度に設定しているのに、ちっとも冷たくない。
自分のいい加減さが腹立たしくて0度にして思いっきり浴びて、シャワールームから出た。

鏡に映る自分は、自分で見てても嫌なほど肌も綺麗で髪も流れてて顔もいまだに女性っぽくて・・・・・
好きになれない。
長くなった髪を伸ばして・・・・バスローブを着て・・・・・・これで胸の辺りが膨らんでたら誤解されるかもしれない。
頭を冷やそう。ちゃんと冷静になって話し合わないと、2人に。

『アリサちゃん、この格好で行くの?!』
『何言ってるのよ。ストレートに行かなきゃ無理って言ったのはすずかでしょうが』

慌てて腰にタオルを巻くのと、2人が入ってきたのはほとんど同時だった。 <> アリサ<>sage<>2006/08/29(火) 09:45:44 ID:EumUTI5m<> ユ「ちょ、ちょっと待って!!今出たばっかりだから!!!!」

部屋に入った私達を見ることも無く、ユーノが更衣室へと逃げていく。
シャワーかなにか浴びてたみたいでびしょ濡れのままで。

ア「・・・・・」
す「ユーノ君、けっこう男の子してたね」
すずかの言葉の通り、管理局に来る前・・・アタシがユーノの事を嫌ってた(今考えれば、ただの思い込み)時は女っぽいって思ってたけど・・・
肩幅もあって(そりゃ、クロノとかに比べれば撫で肩だけど)、背も高くって・・・・・
顔は童顔で中性通り越して女顔だけど・・・
・・・・・ユーノって、実はモテるタイプよね。
なのはが好きになった理由は外見じゃないとは思うけど・・・でも、良い男なのよね、惚れた後に気付くなんて・・・
アタシって・・・鈍感?

ア「すずか、ちょっとだけ聞きたいんだけど」
す「何?ユーノ君の身長と3サイズはね・・・」
んな事知らなくてもいいわよ!!・・・なんで知ってるのかは非常に聞かせてもらいたいけど。

ア「ユーノの事好きな子って何人いるの?」
す「・・・・・・・・・・・」

                      すずかの表情が凍りついた。

ユ「ごめん、シャワー浴びてて・・・」
背後からユーノの声がのんびりやってきた。
髪はまだ濡れてて、色気というか・・・男に対して言うのも何なんだけど・・・色っぽい。

ユ「2人がいきなり来たからちょっとビックリしたよ」
ア「いきなりも何も隣だし、第一ここアタシたち以外いないでしょうが。寝るには早過ぎるわよ」

心臓がバクバクしてる。
このまま普通に話して、それで終わってしまえば、すごく楽なはず。
だけど、それじゃこれまでと変わらない。ううん、もっと悪い方向へ進んでいくだけよ。そんなのイヤ!!
言わなきゃ!!女として、私自身として、ここは逃げちゃいけないのよ、絶対に!!

「「「あの!!!!・・・・・あ・・・」」」 <> すずか<>sage<>2006/08/29(火) 09:51:29 ID:EumUTI5m<> す(アリサちゃんも言おうとしてたの?)
ア(今言わなくて何時言うのよ!?)
それはそうだけど・・・・・

ユ「その・・・ごめん!!!!」
へ?
ユ「・・・ボクの事を好きって・・・2人の女の子に告白されてて・・・それなのに・・・何も返事できなくて・・・・・
今まで傷つけたくなくて・・・・・逃げてた。傷つくだけだ、って・・・・・分かってたのに・・・
2人にキスもして・・・それなのに・・・・・選べないんだよ、ボクは・・・」
違うよ、ユーノ君。・・・ううん『ユーノ』、それは、違うよ。
ユーノは悪くないよ。誰かを好きになる事は、悪い事じゃないから。好きになられるなんて、自分じゃきっと気付けないから。
人数が増えたら、困っちゃうのも当然だよね・・・誰だって、そうなっちゃうよ。
意気地なしって言われても・・・

ア「・・・何言ってるの?そんな事誰にだって分かるわよ。・・・それに、ユーノにそんな器用な事期待してないわ」

アリサちゃん、流石にひどすぎるよ、そのセリフは・・・
ア「それでもいいから、傷ついてもいいから・・・ユーノにキスしたのよ。ユーノに全部受け止めてほしいから。
すずかだって・・・アンタの事、私にも負けないくらい・・・・・・
昼間はちゃんと言葉で言えなかったから・・・・・もう1回言うわ。
アタシはユーノが好き。何度でも言ってあげる。ユーノが好き!!アンタ以外に性欲感じられなくなっちゃった責任取りなさい!!
浮気されたって構わない!!捨てられたら・・・アタシ生きていけないから・・・ずっと離してなんかあげない。
だから・・・・・お願い・・・・・目、そらさないで」
す「・・・・・ユーノ君・・・・・私、ユーノ君が・・・好きだよ。アリサちゃんに負けないくらい・・・誰より・・・あなたが好きだよ」
ユ「アリサ・・・すずか・・・・・」


す「ユーノ君・・・・・・・・どっちか選んだりしなくていいから・・・私達の事・・・・・受け止めて・・・・・」
ア「お願い・・・拒まないで・・・・・今だけでいいから・・・アタシも素直になるから・・・・・ユーノ・・・ユーノが好き・・・・・」

私達は前後両側からユーノ君に抱きついた。私は背中から。
ユーノ君は拒んだりせずに、黙って受け止めてくれた・・・。
すごく・・・・・温かい背中・・・・・ <> ヘボ書きマン<>sage<>2006/08/29(火) 09:54:02 ID:EumUTI5m<> 今回は以上です
・・・すいません18禁間に合いませんでした石投げるの勘弁!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/29(火) 19:41:50 ID:XtUTw0hA<> これはあれですな、ロリショタ小説は3期までに凄い勢いで書き上げて投下しないとならんのですな。
こまった、そんなに早く書けないです。
でも頑張る。
(ヴィータは歳が同じだから良いなぁ)

>>217 乙。続きwktk <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/29(火) 20:06:45 ID:fzmXgnAb<> >>217
お疲れです!
目指せ!ユーノ×なのは×アリサ×すずかでの4P!!
と言ってみる…… <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/29(火) 21:12:30 ID:rPsh4oss<> 今月のメガミが出てじわじわと第三期に対する実感が湧いてきて、
少し泣きそうなんですが。なんかA’sの詳細情報をはじめて
見た頃も情緒がこんな感じだったような……。
テンションが変な感じになってなんにも手につかない状態です(書けよss

>>176
完結お疲れさまです。
避妊魔法の詳細についてkwsk

>>ヘボ書きマン氏
さあエロを書こうか <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/30(水) 02:14:17 ID:4RaxfT9O<>
糖度200%の日常

days 2

 夜の生活にゴムなど不要(ミッドチルダ限定)!
 
 ころんとベッドに寝そべって、羞恥に抗いながら股を開いて愛しき人を待つ。
 高町なのはが二番目に好きである体位。通称名を正常位という。
「準備……いいよ」
 てらてらと照り返し粘つく秘部はもう蜜なんて表現より涎を垂らすと言ったほうがピッタリだ。
 指に舌にと、およそ私生活で使わない妙技でたっぷり責められては無理もない。
 上気した顔は自分としては溶けてしまうくらいに熱い。目が熱いのはきっと繋がる喜びを待っているから。 
「うん、気持ちよくしてあげるからね、なのは」
 男はそんな女の顔に理性を根こそぎ持っていかれる。
 いきり立つペニスは天を見つめ、先走った雫がシーツに紙魚を作る。
「あ、うぅ……ん〜」
 擦り付けただけでこれである。
 心地よい快感に身をくねらせ、切なさが枕とシーツを掴ませる。
 震える声は男を狂わせる媚薬。無意識に鳴くことを覚えられるのは彼女の才能故か。 
「ねっ、ねぇ……ユーノく〜ん」
 それで言うならこのユーノも相当彼女の操縦術を心得ているようで。
 あえて挿入せず、摩擦だけでとにかく焦らす。
 彼女に全部ペースを握られないため、彼女の羞恥を煽るため。目的は多々で、一石二鳥か差し詰め二石三鳥か。
 ただこっちもやりすぎると余裕がなくなるのが唯一の欠点だ。
「ん? どうしたのなのは」
「こ、擦ってだけじゃなくて……その」
「その?」
 優しげな顔をして、さも知りませんって顔して。
 わかってる。そうやって自分の口から卑猥な言葉を言わせるのだ。
 前もこうだった。だから今度は絶対言うもんか!
「挿れてるけど?」
「んっく! あ、あうう」
 ジーンと来た。
 虚勢を張ろうとした矢先、壁を擦り始めた刺激にせっかくの負けん気も霧散してしまう。
「あ、あ、あ! ユーノくん! んぅあ!!」
「やっぱり可愛いな……止まらないよ」
「んぅ! あっああ! あ……あ? くぅ!?」
 で、何か変だと子宮が訴えた。
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/30(水) 02:15:53 ID:4RaxfT9O<>  
 いつもならユーノが優しくノックしてくれるのに、今日は一向に訪れない。
 ただ入り口でしり込みするような動きを繰り返している。
「ユーノく……ん? んっ!」
「僕はこのままでもいいんだけね。なのはも気持ちいいでしょ?」
「でもでもぉ……」
「でも何?」
 このままでもいいのは確か。体は悦んでいるのに、でも満たされない。
 もっとペニスが欲しい。亀頭でそこを叩いて欲しい。
「おくまで……いつもみたいにおちんちん……もっと一つに……んう! 繋がってよぉ!」
 卑猥な懇願である。
 彼女は気づいてないかもしれないが、全てはユーノの狙い通り。今日もなのはは敗北した。
 以前の戦法が通じるなんてことユーノだって考えちゃいない。
 司書長で考古学者で結界魔導師。三足もわらじを履けば頭だって回りに回る。それこそコマのように滑らかで高速で。
「もちろん!」
「ひぃやぁああ!!」
 快楽の悲鳴。背骨が軋むくらいに反る。
 ゆっくりと叩くわけでもなく、子宮口に口付けをするだけユーノでもなのはが達するにはおつりが来る。
「ああ! きたぁ……きたよぉ! ユーノくん!! んああ!」
 待ちに待った感覚を全神経で貪って、逃がすまいと膣全体を締め上げユーノを抱きしめて。
「ちょ! なのは絞めすぎだってぇ! あぅ!」
「ユーノくんだもん! 離したくないのは当たり前だよ!」
「いや、でもでも! あぅく!」
 次はどう責めようか思考していたユーノであったがこれまたなのはの無意識の攻勢に一気にペースを崩された。
 いくら頭が切れたって予知などできるわけがない。そういう意味でユーノはなのはを征服しきったわけではない。
 詰めが甘いのかなのはの意地のおかげか。
「やぁん! だめだめぇ!! わたし……わたしぃ」
 必死に腰を押し付けくねらせ、腰を引こうとするユーノを無理矢理に引き止める。
 乳首はピンと勃ち、半開きの口は閉じることもせず。
 目尻からは涙が筋を作り、喘ぐ声は掠れ。
「もう……なのはぁ!」
 我慢比べに付き合える余裕は生憎ない。なのはのおかげでもう気を抜けば出てしまいそうだ。
 腰を掴んで引き寄せて、突き刺すようにユーノはペニスを打ち付ける。
「やっぁああ!!」
 一気に高まる射精感。
 嵐のごとく引いては突き、なのはの膣内をめちゃくちゃにかき回す。
 粘膜が擦れあい、その都度水音が耳に飛び込んでくる。
「あっあっあっあぁ!! もうぅ、わたしぃぃ!!」
 暴れ回るユーノに頂へと打ち上げられる体。抑揚もなにもないただ激しさだけの挿入。
 がむしゃらに腰を振って、快楽に酔って酔わせて。
 痺れ曖昧になる亀頭の感覚にユーノは抜ける寸前まで引き抜き――
「ぐぅ!」
 最奥まで貫き弾けた。
「あああああああっ!!」
 ぶちまけられる精液を残さず受け止めなのはも絶頂に嘶いた。
 最後の一滴まで、塗りこめるように腰を密着させて、ユーノもなのはもしばらくそのままで心を通い合わせていた。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/30(水) 02:16:39 ID:4RaxfT9O<>
「あはは……腰がガクガク」
「僕も腰痛いや」
 シーツに包まりながら改めて今夜を振り返る二人。
 当然生まれたままでお互い腕を背中に絡ませている。熱帯夜だというのに盛んなことである。
「そういえばユーノくん……あれしたっけ?」
「あれ?」
 はてさて、何か忘れていたか?
 興奮冷めやらぬ頭でしばし思考、しかし何一つ思い当たらず。
「避妊結界」
 結局なのはのおかげでようやく思い出す。
 そして事態を把握し
「……すっかり忘れてた」
 頭を抱えるのだった。
 そんなユーノになのははかなり冷ややかな視線をぶつけつつ呆れて見せる。
「ごめん、ほんとにごめん」
 なのはが変に締め上げてなければちゃんと張れたのに……。
 言い訳すればそんなとこなのだが、実際こういう時に男は平謝りしか出来ないのはお約束。
 もうなのはは月のものがあるわけで、下手をすればヒットしてしまうわけで。
 こちらの世界のゴムを使えば良いらしいが生の快感にお互い抜け出せなくて。そういうわけで結界魔導師らしくユーノは避妊専用の結界を使っていたのだが……。
 今夜は見事に大・失・敗!
「でも今日は二十日だから大丈夫かな……」
「そう……?」
「周期と照らし合わせれば大体は……うん、多分」
 肺から空気が抜けた。
 ならば安全だろう。こう見えてもなのははレイジングハートと協力して自分の排卵日や生理周期やら事細かに計算しているのだ。
 個人的にはレイジングハートがそのような機能を持っていたことに驚いていたり。
 むしろ小五でそんなことしてる辺りこの二人相当いろいろぶっ飛んでいる。
「でもちゃんと今度からすること、いいね?」
「はい、肝に銘じます」
 人差し指でユーノの鼻先を押し怒ったフリ。
 流石に反省しているようでユーノも二つ返事だ。
「よろしい、じゃあおやすみだね」
「うん、おやすみ」
「と、その前に」
 ちゅ、とおやすみのキス。
「おはようはユーノくんからだからね」
「うん」
 大好きな人に抱かれてなのはは眠りにつく。
 明日の王子様のキスが楽しみだ。

* * *

 ちなみに避妊結界がどういうものかというと――。

「ええと……子宮口を塞ぐように極微小な障壁を張り、結界で拘束させて……」
「クロノ君……大丈夫?」
「だーっ! こんな真似ほいほいできるかっ!! あのバカエロイタチ!!」
「やっぱりこれ使う?」
「ゴムが一番だな!」
「私としてはダーリンの子供も欲しかったり」
「エイミィ〜」
 
 ユーノだけに許された特権であったり。
 まぁミッドチルダには他にもいろいろあるのだけれどね。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/08/30(水) 02:30:21 ID:4RaxfT9O<> 突発で創作
糖度200%の日常に絡めてミッド式避妊(してないけど)です

魔法なんだからいろいろできそうですけどね、ほんと
ユーノが使ったのは子宮口を結界で覆って精液の侵入を防ぐ
結界魔導師にはわりとポピュラーなものだったり
あとは精子を魔力で誘導させて卵子へたどり着かせないとか(オイ
魔法そのもので排卵時期を完全に固定とか(マテ

3期ついに出ちゃいましたね……
私も>>640氏と同じく泣きそうです
A'sの時はAにちなんでアリシアとか出てくると思えばあれすからね
てかなんというかもうStrikersはリリカルなのはの二次創作にしか見えなくなってきた

結局、気に入らなければ個人個人で補完、そのためのSSですしね
私はゆっくり彼女たちを成長させていきます。Stepのごとく一歩一歩
なのは、フェイト、アリサ、すずかの四人でリリカルマジカルってな感じで

とはいっても私事で少々忙しく、一週間空けます
ではノシ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/30(水) 21:15:30 ID:fEJHat6Z<> なのはの世界観について、よく解ってない自分が
避妊魔法について勝手に妄想してみよう。

転送魔法で、受精だろうが無精だろうが卵子を
すっ飛ばしてしまえば妊娠はしないんじゃないか?

まぁ、やったヤツは回数を追うごとに肩の辺りが重くなってそうだが… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/30(水) 21:29:21 ID:JUxMZEB9<> >>224
とりあえずGJ!!
あと、ウマーなエロイタチは逝ってよしと逝ってみるテスト

ついでに、避妊技術は夜天の魔王が何気にいろいろ知っていたりしてな。
蒐集した中にそういう技術もうわなにをするミストルティンはやめろふじこlp;@:「 <> 無銘兎<><>2006/08/30(水) 22:31:15 ID:VUMnUt1v<> <<210
来た北北続きが遂にキタァ〜!!!
月の吸血姫と太陽の金髪碧眼の打ち手(違
が遂にキタァ〜〜!!!!
やー脳内で二人の立場を言葉と世界に当ててイタチと逝かせてたのは無駄ではなかったな(ォ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/08/31(木) 04:29:09 ID:QdXxKBPy<> >>227
志村ー、アンカー逆逆!! <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/31(木) 17:40:14 ID:JDhG4Nic<> 「はい、冷たいお茶。気分はどう?」

シャマルはプルトップを開けた缶を、ベッドに横になっているシグナムに手渡した。
自分もまたもう一方の手にドリンクを。二人のいるホテルの一室は静かだった。

「ああ……大分いいよ。すまんな、世話をかける」
「それが私のお仕事ですから」

あれだけ水の中に閉じ込められていたというのに、
目覚めると喉がからからだった。身体を起こし呷る烏龍茶が、
喉へと染み渡っていく。
一気に飲み干して缶をサイドテーブルに置くと、シグナムは再度身を横たえた。
天井を見ながら、思った。
まったくもってせっかくのバカンスが台無しだな、と。


魔法少女リリカルなのはA’s −その想い、緋に染まる暁のように−

最終話 君と悠久の旅を


「やっほー、シグナム、具合どうー?」
「失礼します」

シャマルが缶をくずかごへと放り込んだのとほぼ同時にインターホンが鳴り、
彼女が開けたドアから一組の男女が入ってきた。
忍と恭也である。ふたりとももうプールはいいのか、普通の服に着替えている。

「シャマルさん、はやてちゃんが呼んでます。報告書の件がどうの、って」
「あら……どうしよう。シグナム……」
「かまわん、行ってきてくれ。主はやてが困っているなら」
「でも」
「私達が見てますから、行ってきてください」
「いいんですか?」
「ええ。ね、恭也」
「ああ」

それじゃあ失礼して、とシャマルは備え付けのスリッパからサンダルに履き替え。
部屋から急くようにして出て行った。

「大丈夫?」
「大したことはない……少し魔力を消費しただけだ。夕食までには回復してるだろう」
「そうか」

二人は並んで、ベッドの横へと腰掛ける。

「……吹っ切れたみたいだな、何か」
「何?」

恭也が、笑った。
その笑顔は安心したような、溜息混じりに表される類のもの。
天井を見ながら顔を当たっていたシグナムはどきり、と彼らの顔を見返す。

「お前が戦ってるの見てて、太刀筋がなんか変な感じだったから。迷いでもあるみたいな」 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/31(木) 17:41:08 ID:JDhG4Nic<> 「……!!」

よく、見ているものだ。
それほどまでに自分の動きは不甲斐なかったのであろうか。
忍へと目を移すと、彼女は両手と首をぶんぶん振って
オーバーなリアクションでそれに応じる。少し、珍しい。

「あ、私はよくわかんなかったわよ?でも……」
「でも?」
「今のあなた、すごくすっきりした顔してるわ。……解決、したの?お悩みごとは」
「……そうか……そう、だな」

憑き物が落ちたかのような、すごくいい顔。
忍にストレートに評されて、シグナムは悪い気はしなかった。
その「憑き物」の正体のことを考えると、彼がそんな風に評されているのが無性におかしい。

「……ふふっ」
「シグナム?」

───ああ、大丈夫だ。もう忘れなどしないよ。これから一生、背負っていく。
だから、心配してくれるな、「憑き物」よ。
ここにはいない「彼」に向けて、心の中でいたずらっぽくつぶやく。

「少し───、な。思い出していた」
「ふぅん……」

彼女達に言ったところで、わからないだろう。
話をはぐらかしても、顔に浮かぶ微笑は消えない。
身体に残る倦怠感とは裏腹に、心は軽く、清々しい。

「なぁ……、恭也」
「ん、なんだ」
「帰ったら。この旅行から帰ったらなんだが」
「ああ」
「もう一度、私と試合をしてくれないか」

彼のことを思い出すきっかけとなった、あの試合をもう一度。
今度はもっと、ずっと違う気持ちで臨めると思うから。
けじめとするには、もってこいだと思う。

「……いいだろう。今度は負けないぞ」
「どうかな。せいぜい期待しているよ」
「言ったな、このっ」
「ほーらほら。挑発に乗らないの。そんなんじゃ負けちゃうわよ?」
「まったくだ」
「ぐ……」

彼らのことを、ずっと見ていよう。
かつてあの二人にしてやれなかった分、ずっと。
主はやてから授かったこの命が尽きる、その時まで。
忍が言っていたように、そういったことができる程度には、この世界は平和だ。
主や守護騎士の仲間たちと共に歩むように、彼女たちとも共に歩んでいこう。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/31(木) 17:42:06 ID:JDhG4Nic<>
*     *     *

小さな命が、目の前にあった。
差し出されたそれを、シグナムは迷うことなく受け取る。

「ほら、シグナム。抱いてみて」
「───ああ」

彼女は、あの日抱くことのできなかった新たな命のぬくもりを胸に抱いて。

「名前は?」
「『雫』。恭也が考えたにしては洒落てるでしょ」

彼女の腕の中に収まる生命は、小さくも、暖かかった。
無垢な笑顔に、目を細めて自然にこちらも顔が綻ぶ。

ほんの少しだけ、未来の話。

恭也と忍は結ばれ、シグナムは友人として心から祝福した。
二人の間には、すぐに女の子が生まれた。
恭也としては剣を教えたいらしく、シグナムにも協力してくれるようお鉢が回ってきている。
依存はなかったから、恭也と二人でみっちり鍛え上げていくことになるのだろう。

一方のシグナムも、恭也や忍の誘いで、
二人の通う大学のサークルに、たまに顔を出すようになった。
恭也や忍の友人にも何人か、紹介された。
シャマルの勧めで購入した携帯電話のメモリーも幾分増えた。

シグナムは今、それなりに人生を楽しんでいる。
彼女は、笑っている。





───もうひとつ、記述しておかねばならないことがある。

恭也から、中学生時代からの友人だといって紹介された、一人の青年がいる。
初対面の際に交換したアドレスで連絡を取りあううち、
いつしか互いの休みの日、互いのスケジュールが合えばその度に、
二人連れ立って出かけるようになった。
隣にお互いがいるのが、しっくりくるようになっていた。

あくまでこれは、先のこと。まだ彼女たちの知らぬこと。
全ては、ほんの少しだけ。ほんの少しだけ─────、未来の話。

                               end.
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/31(木) 17:43:44 ID:JDhG4Nic<> *     *     *

─────end………?いや、少し待った。

「えーそりゃーなのはとは恋人にさせていただきましたとも」
「ゆ、ユーノくん落ち着いて……」
「でもね、それだけじゃワリに合わないと思うんだ、この扱い」

ごぽごぽごぽ。

「うわっ、ユーノ!?そんなに注いだら!?ていうか未成年だよね!?」
「これが飲まずにやってられますかっ!!」

ぐいっ。ごっくごっく。
実にいい飲みっぷり、と店中から視線が集中する。

「ど、どーしよ、フェイトちゃん……」
「み、見られてるよね、みんなから……」
「すいませーん、角瓶もういっぽーん、ロックでー」
「「もう一本!?」」

どうぞ、お待たせいたしました。
とん、と男の店員が運んできたウイスキーの瓶とタンブラーをテーブル上に置く。

「大体、大体だよ!?殆ど背景とはいえファリンさんやノエルさんだって今回出てるんだよ!?」
「あれ、ファリンさん出てたっけ」
「作者的にはいたらしいよ。本文中には出てきてないけど。……ですよね?」

───はい、ビーチバレーですずかに凹にされてます。(←天の声)

「ね?」
「えっと、フェイトちゃん、今誰と話してたの?」
「さあ?」
「んんなこたぁーどーでもいい!!問題は純然たるレギュラーの一人の僕が出番なし、ってことだよっ!!!」
「うわっ!?」
「ゆ、ユーノくん、お酒臭い……」
「飲んでんだから、あったりまえでしょうがあっ!!」

ぐいぐいと、乱暴に飲み干して。
うーむ。
ここまでユーノの酒癖が悪かったとは。
それでいいのか未成年。

「男女差別!!反対!!」
「いや、クロノやアレックスも出てるし、そういうわけじゃないと思うよ」

ぴしっ

「あ、石化した」
「アレックスさんたち以下っていうのが効いたのかな」
「かもね。どうしよっか、これ」
「「……うーん……」」

かくして、ミッドチルダの夜は更けていく。
一匹の淫獣の嘆きと共に。某月某日、とある居酒屋にて。

本当にend <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/08/31(木) 17:49:34 ID:JDhG4Nic<> はい、というわけでシグナムさん話終了でございます。
少し落ち着きました。
結局シグナムさんとくっついたのは原作キャラのあの人に
なりました。伏線も何もあったもんじゃないねorz
てか今回途中から無茶苦茶スランプに突入してもうダメかと思ったorz
え?ダメだって?hahahahahaha・・・・・orz

>>176
ベルカ式が非常に気になりますな。
個人的には第三期が六年後バージョンなのは全然オーケーなんですよ。
なんというか近づいてくる実感がじわじわきて気分が変に盛り上がっていたと
いいますか。だって六年後でも15歳だもの。いけるいける。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/01(金) 22:16:08 ID:LoXB2ZuZ<> >640氏御疲れ様です。
…赤星すら出たのに出番の無かったユーノに最後まで気付かなかった俺ガイル… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/02(土) 01:39:37 ID:OLkjrjD3<> その2、ごめんよ淫獣。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/02(土) 15:40:11 ID:EwHP9xqq<> おなじくその3、すまねぇ珍獣… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/03(日) 00:18:09 ID:sVP+sagC<> >>ヘボ書きマン氏GJ!
超積極的なすずかが、実はきっちり恥ずかしがってるところに萌え。
>>219さんに同じく4Pなんてどうでございましょ、ハーレムですよハーレム。
大淫獣帝国バンザイ。

>>176氏GJ!
焦らす、淫語を言わせる、最後にギリギリまで引いて一気に打つ。
さすが淫獣はわかってるぜ…!
結界も展開の仕方によっては武器なんで、下手にマネしない方が良さそうですなあ。
出す場所が場所だし。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/03(日) 14:11:16 ID:ppY4VGDL<> どうも。新顔です。
ss投下してみます。
時間は、A`Sの半年後くらい。エロはない予定です。

【1−1】

「ここが例の遺跡なのかい、フェイト?」
開口一番、アルフが怪訝な顔でそう言ったのは、目の前の光景が、聞いていた場所のイメージとはかけ離れていたからだった。
フェイトとアルフ、二人がアースラの転送装置で送られたのは、古めかしい造りの遺跡だった。

「うん、間違いないよアルフ。管理局が調査中の、古代文明の遺跡なんだって」
そう言うと、フェイトは傍らの石壁に手を当てた。
ロストロギアを生み出すレベルの文明の遺跡というわりには、機械的な気配が全く見当たらない。
事前に受けたレクチャーによれば、機械には拠らない、魔法的・精神的な文化を発展させていた文明とのことだった。
自由参加ということでレクチャーを欠席しており、ただ「高度な文明の遺跡に行く」とだけ聞いていたアルフは、もっと機械の廃墟のような場所を想像していたのだった。

フェイトは、目の前の壁から、自分が今いる石室、そしてその先の通路にまで目を向けた。
石造りの石室も通路も重厚感はあるが、閉塞的な息苦しさは感じられない。
それは遺跡内部の空気も同様で、手付かずで数世紀に渡り放置されていたにもかかわらず、埃っぽさはなく、外と同じ風の匂いが感じられた。

「ロストロギアを生み出す水準にあった文明の遺跡は、執務官クラスが調査の指揮をとることもあるから、今のうちにこういう経験もしとけって…クロノが言ってた」
そのために、執務官候補生であるフェイトは、陣頭指揮をとっているクロノに代わり、遺跡の調査済みの区画を見回りに出たのだった。
未盗掘だったこの遺跡からは、ロストロギア級ではないにしても、それなりの価値がある品が多数発掘されている。
情報を聞きつけた盗掘者が遺跡に入り込んでいないかの巡回監視なのだが、現場をフェイトに経験させておこうというクロノの配慮であることも明白だった。

興味深そうに、周囲を見回しながら進んでいくフェイト。
石壁の所々にはこの文明による文様が刻まれており、その一つ一つが、フェイトの好奇心を刺激した。
「ほら、アルフ。これが水草の文様。水草なんだけど、ほら、全体でみると火が燃えているようにみえるから、『火』を表すんだって」
「こっちは…寄り添う大岩の文様かな。『門』とか『入り口』とかの標識だったはずだよ」
新しく得た知識を披露したくてたまらない少女の表情で、レクチャーを受けていないアルフに対して、フェイトが解説を始めた。

「うんうん、フェイトがこういうのにも興味があるんなら、執務官って仕事に就くのも、悪くないかもしれないねぇ」
と、母親のような心境でそれに応じるアルフ。
選択の余地があるとはいえ、その才覚を管理局のために行使するのは、かつての過ちを償うため、フェイトに科せられた義務である。
しかし、それでも興味を抱いてできるのであれば、フェイトの未来の可能性を広げられるものであるならば、それらに割く時間にも、理不尽さを感じないでいられる。
なによりも、今のフェイトには、管理局を介した家族がいる。親友たちがいる。
少なくとも、ジュエルシードをめぐって争った一年前には、望むべくもなかった平穏があることだけは確かだった。 <> 238<>sage<>2006/09/03(日) 14:13:20 ID:ppY4VGDL<> 【1−2】


『こらこら。はしゃぎすぎだぞ、フェイト』
釘を刺す声が、通信機から流れた。
「あ…ごめん、クロノ」
任務を忘れかけていたフェイトは、その声で我に返り、しゅん、としおれた。
『アルフもだめだろ。それじゃあ二人で行かせている意味がないじゃないか』
「あーあー、わかってるよ。次から真面目にやるって」
感慨に浸っていたところに水を差され、不機嫌さを隠さずに返答するアルフ。
『本道から外れた調査済みの通路は、目が行き届かなくなる分、侵入に利用されやすい。気を抜かないでほしい』
執務官としての、執務官候補生たるフェイトへの言葉だ。単純な小言ではない。いくら不機嫌でも、それに関してはアルフも口を挟まなかった。
「さて、行こうかフェイト。まだまだ見回らなきゃいけないとこがたくさんあるし。小言の多いお兄ちゃんも、怖いからね」
反論する気はないが、気に入らないことも確かなので、早々に話を打ち切った。フェイトを促して、さっさと通路を進み始める。
「うん…では、巡回監視に戻ります」

「…怒られちゃったね」
「いいんだよ、フェイト。あのタイミングで通信入れるあっちが無粋なんだ」
まだ不機嫌なアルフを小走りで追い、横に並ぶフェイト。
「クロノも、わたしのこといろいろと心配してくれているんだよ」
「アイツは、妹ができたとたんに妹離れできなくなったダメ兄貴さ。甘やかしちゃダメだ」
「ふふ、アルフ妬いてるの?」
「そんなんじゃないよ。かわいいフェイトがケモノの毒牙にかからないか心配なだけさ」
そう言うとアルフは、不機嫌さを振り払うために話題を切り替えた。
「フェイト。どうだいこの仕事。続けられそうかい?」
「うん。今のところとっても面白いよ。責任は重大だけど、それはどんな仕事でもおんなじだしね」
「そうか…なら、いいんだ。さっきもとても楽しそうだったし」
フェイトはバルディッシュを構えて警戒態勢をとりながら、それでも少しだけ楽しそうに微笑んだ。
「うん。今度、リンディ提督の許可がもらえたら、すずかやアリサたちにも見てもらいたいな」
「私が何をしているのか、なのはやはやて以外の友達にも、知ってもらいたいから」
<> 238<>sage<>2006/09/03(日) 14:14:47 ID:ppY4VGDL<> とりあえず、いまのところは以上です。
長いかな
くどいかな orz <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/03(日) 20:11:31 ID:8hoC6+t+<> いや、短編ならともかく、続き物で一回分の投下としてはこれはちょっと短いよ。
文の長さの問題ではなく、ストーリーの進行度の問題になると思うけど。

↓参考までに。
15 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/19(月) 22:19:48 ID:0imtd.oI
■書けたところまでぶつ切りで投下する■のは×。
 完結、ないし話の区切りの良いところまで書けていないのにSSを書き込むのは避けた方が良い。
 理由として、
・話のつながりがわかりにくい ・短すぎて感想を書きにくい
・他のSSの書き込みとバッティングを起こしやすい
・スレに初めて来た人にとっては、細切れのSSは非常に読みにくい 等がある。
 SSはある程度まとめて投下、そして理想を言えば一回の投下で本文に何かしらの”見せ場”は作りたい。

ちなみに、エロパロ板でよく見られる現象
1.非常に短いプロローグだけが書かれて投下される。話の動きやエロは次回以降。続く。
2.↑こういう書き込み方をする人は大抵が初心者なので、文章や内容も正直微妙なものが多い。
3.そのため、読んだ人もどう感想を書いていいのか困り、結局スルーしてしまう。
4.無反応、あるいは冷たい反応しか返ってこなかった書き手は、続きを書くのを放棄して去る。

44 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/13(火) 00:45:59 ID:54/qhMaM
>>15
まさにそれ、初めてのSS投下でやったorz(別板だが)
なんで俺だけ叩かれてるんだ?そんなに下手か?(´・ω・`)としてたんだが
最後に現れたパンドラの箱の希望みたいな人が
「冒頭部分過ぎてなんともコメントできないけど」と書いてくれたのを見て
ああ序盤のみの投下って不評なんだな・・・とようやくわかった。

それ以前に内容がまずかったからだ、というのはまあ置いておくとしてw

45 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/14(水) 03:25:39 ID:uOAITS6g
設定紹介みたいな部分のみであまり話に動きがないと、
確かにコメントはつけづらい。
が、それだけが理由で叩くのもちょっとなあ。

46 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/22(木) 09:43:36 ID:9TAk8lWU
>>44
全然話が動いていないのに
「さあ書き上げましたよ一仕事終わった終わった」
そんな顔をされても困るんだ。

47 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2005/12/24(土) 18:56:35 ID:caV67w.I
その程度でわざわざ叩く奴の方がウザイ。
他人のSSを読んでコメントのしようがないと思えば
「乙」の一言かスルーするだけだ。 <> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:52:09 ID:C6FFNQIu<> すっかり月1野郎の4の422です…忘れないでいただきたく…
こんだけ時間空けて何を書いてたかというと、クロノ×なのはなわけで。
ひと月ほど前に公言したエロパートを、と思ったんですが…書いてて伸びる伸びる…

こないだの変な獣SSくらいの長さになったところで今回のエロは諦め気味に次回
回しに…なんとか…早めに次回は上げますので…がんばろう、俺。

とりあえず次回へのプロローグみたいな感じで眺めてください。

〜 CherryLight 〜 A Sweet Night Vol.1 であります。 <> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:53:01 ID:C6FFNQIu<>
 通常。
 喫茶店の丸テーブルに椅子が5つ置いてあったとしよう。
 この場合、テーブルのスペースを均等に使うためや、互いが互いを見る時に不揃いな
視点移動をなくすために、椅子は等間隔に置かれるのが普通である。

 が…

 なにやらこの5人の場合は様子が違っていた。
 1:4
 こういう言い方が相応しいのだろうか、4人が1人に対して詰問するように、4人が
席を寄せ合い、対面の1人に対し、4つの視線を放っている。
 その視線に晒された1人は、自分を攻めたてる(?)4人に対して、もじもじと人差
し指を付きあわせながらちらちらと視線を送っている。

「さ、もう観念して、洗いざらいすっぱりきっぱりぶちまけてもらいましょうか」
「はぅ…あ、あの、その…な、なんと申しましょうか…」
「アリサちゃん、ダメだよそんな急かしちゃ」
(あぁ、やっぱりすずかちゃんは優しい。この場を逃げるにはやっぱりすずかちゃんに…)
「こういうのはじわじわ外堀から埋めて逃げ場をなくしてからゆっっくり聞かないと♪」
「はぅぅっ!!!」
「せや、嘘言われてもかなわんしな。まぁ、大丈夫やて、私らを差し置いてなのはちゃん
1人だけ春が訪れてるんや、友達として幸せ独り占めー、ゆーよーな狭い心は持ってへん
て。なー、なのはちゃん」
「ふえぇぇっ!!!」
「あ、あのね、みんな、えと、なのはも困ってるみたいだし、その、かわいそうってい
うのはあるから…」
(ああっ!やっぱり、やっぱりフェイトちゃんだ!私の事を一番に思ってくれるのはやっ
ぱりフェイトちゃんなんだ!!)
「ありがとう、フェ…」
「だから、なのはが率先して話してくれるまで、待とう、ね?」
「うぇえええん!!フェイトちゃんのいじわるぅーーーーーーーー」
 最後の望みを絶たれたなのは、もはや泣くしかなかった。


  魔法少女リリカルなのは  〜 CherryLight 〜 A Sweet Night Vol.1
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:53:34 ID:C6FFNQIu<>
 〜  〜  〜  〜

「なのはー、先週クロノくんの誕生日だったんでしょ?結局何あげたの?」
 教室。昼休みにぼえっ、と外を眺めて(いるように見えつつ、無論クロノのことで頭
がいっぱいなわけだが)いたなのはにアリサが声をかける。
「あ、ごめんね、アリサちゃんにも色々相談乗ってもらってたんだけど、結局全然違う
ものにしたんだ」
「ほほう、私やすずかの案を蹴るほど良い物見つかったの?」
「うん、えっとね、S2U…あ、えっと、クロノくんが使ってる魔法の杖にね、私の声
を入れてあげたの」
「声?なにそれ??」
「うん、動かすたびに私の声が流れるの。クロノくんすっごく喜んでくれたよ」
 すごいでしょと言いたげななのはだが、当のアリサには今ひとつピンときていない。
「はー…んー…ま、まぁ…なんかよくわからないけどバカップルっぽい選択だわね」
「ば、ばか、ってそんなひどい…クロノくん喜んでくれたもん、ばかじゃないもん…」
 ごにょごにょと語尾が消え行くなのはは放って置いて、アリサは自分の話を続ける。
「で、あっちの方はうまくいった?」
「ほぇ?あっちって?」
 アリサ・なのは双方首をかしげる。
 なのはは何のことだろう、と。
 アリサは何でわからないんだろう、と。
 しょうがない、とアリサはなのはの耳元で小さく呟く。
「(あっちよ、あっち。ちゃんと初H済ませたのか、ってこと)」

 アリサに他意はなかった。

「ややややだやだ、そそそそ、そんなことしないよー」と、うろたえるなのはを、
「え〜〜まだなのぉ、相変わらずお子ちゃまねー」と、からかいたかっただけである。

 …なかなか思ったようにはいかない。それが人生というものである。

「なっ!!なんでアリサちゃんが知ってるの!?!??!?!」


 …とても固まる2人の時間。

 反応のないアリサに、しまった!と口を押さえるなのは。
 双方がそのままの姿勢できっかり5秒。ミストルティンを破ったアリサはそれでも
ぎぎぃ、っと油切れの間接を動かし、くるりとなのはに背を向け、談笑している「3人」
に歩み寄る。
 うつろな足取りで歩を進めるアリサをなのはは「あぅあぅ…」と見送るしかない。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:54:05 ID:C6FFNQIu<>
「…すずか、フェイト、はやて…今日、放課後空けときなさい…」
 3人の前で抑揚のない声で言い放つアリサ。
「アリサちゃん。今日はバイオリンの日だよ」
「あ、ごめんアリサ、私も局に顔出さないと」
「あたしもごめんやー、うちの連中とお出かけせんとあかんねん、今日」
「そんなの全部なしっ!!!!!」
「「「うわぁ」」」
 アリサの御無体な発言に3人は声を揃える。
「…ちょっと、3人とも耳貸しなさい…」
 ちょいちょい、と指先で3人を引き寄せるアリサ。
「「「???」」」
 何だ何だと3人はアリサに顔を寄せる。

「はぅ…なんだかとんでもない予感がそこはかとなく…」
 1人離れた場所で成り行きを見守るしかないなのはは、この後に何が起こるか何とな
く予想がついてしまいうろたえまくる。
「いっそこのまま逃げ…や、そんなことしたらアリサちゃん地の果てまでも追いかけて…」

「…わかった?放課後、時間空けなさいよね」
「「「………」」」
 アリサから顔を離した3人は、一斉に、物も言わずそれぞれの携帯電話を取り出す。

「もしもし…あ、すずかです。ごめんなさい。今日のバイオリンのお稽古なんですけど、
どうしても抜けられない大事な用事ができてしまって…はい、ごめんなさい。来週は必
ず…はい…そうです、友達のとても大切な用事なんです、はい、はい…」

「もしもしエイミィ?フェイトだけど…うん、今日の打ち合わせなんだけど、来週確か
物が揃うんだったよね?じゃぁ悪いんだけど、今日はエイミィだけでなんとかできる?
うん、ごめん。ちょっと外せない用事ができちゃって。うん、クロノもいるしそっちは
大丈夫だよね?あ、うん、わかった。今度のランチで手をうつから。うん、うん…」

「あー、シャマル、あたしやけど。うん、ちょぉ、今日遅くなるんよ。うん、ごめんな。
明日でもいいかな?例のクーポン今週中やさかい、明日ってことで、うん、せや。んー
みんなにごめん、ゆーといてくれる?ちょぉ、ほんま大事な用事あってな…」

 ぱたん。*3

 図らずも、3人が同時に携帯電話を折りたたみ、ポケットにしまい込む。

「「「バッチリOK!」」」

「はぅぅうううぅぅっ!!!!」
 3人とアリサを含めた4人はエイミィばりに親指を突きたてる。
 その視線と指先は完全に叫び声の主の方向を向いていた。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:56:49 ID:C6FFNQIu<>
 〜  〜  〜  〜

 と、いうわけで現在取り調べ真っ最中なわけだが、おおよそなのはも観念したらしく。

「…えと…み、みんなだから言うんだよ、ぜ、絶対他の人に言っちゃダメだからね!」
「わーかってるわよ、んなこと」、けらけらとアリサは、
「だいじょうぶ。ないしょにするからー」、にこにことすずかは、
「心配いらへんてばー」、目を輝かせつつはやては、
「う、うん、ぜ、絶対、内緒」、真剣な顔でフェイトは、

「「「「 だから早くっ! 」」」」

 でもつまるところ皆同じ。

(ほ、ほんとに大丈夫なのかな……)
 後頭部にでっかい汗をかきながら、釈然としない不安を抱えつつなのはは語り出した。
「え、えと、クロノくんにプレゼントあげた後にね……」


 〜  〜  〜  〜


「高町教官?!どうされました、こんなところで。今日は確か非番では?」
「えっ?あ、みんな」
 管理局内戦艦ドック。二番艦アースラの駐留場に通じるドアの前で武装隊の教官がひ
とり、しかも寂しそうに佇んでいれば武装隊の隊員でなくとも何事か、とは思うだろう。
さらに言うならその姿は彼ら3人が見慣れた武装隊の制服でなく、彼女の世界の学業所
の制服。管理局的には私服と呼んで差し支えない格好であった。
「ん、ちょっと…人待ち、かな、うん。えっと、みんなはアースラに用事?」
 ちょっとバツが悪そうに、また言葉を選ぶように、さらに話題を自分から逸らそうと、
彼らに答えるなのは。
「は、自分達はアースラの次回巡航任務時の駐留部隊なので、その打ち合わせが終わっ
たところですが…あの、失礼ですが、艦内に入ればよろしいのでは?」
「う、うん…クロノくん…艦長…やみんなの邪魔しちゃいけないと思って…終わるまで
ここで待ってるの…えへへ、き、気にしないでいいよ」
(あ…)
(そういう…)
(ことか…)
 彼らも先日翠屋で開かれた婚約パーティに出席したクチである。なのはがなぜここに
居るか、何を言いたいかは察することができたが、彼らが口にするまでもなく、

「なのは! ごめん、待たせちゃったね!」
「クロノくん!」

 息を切らせて走り寄ってくるのは、時空管理局提督にしてアースラ艦長たるクロノ・
ハラオウン。
 武装隊の彼らが普段見ている教導官としての顔でなく、1人の、年相応の、恋をする
少女の顔、そしてその笑顔を見せるなのは。無論その視線の先は彼らではなく………。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:57:58 ID:C6FFNQIu<>
「ごめん、早く終わらせようとしたんだけど遅くなっちゃって」
「ううん、全然待ってないから大丈夫だよ。気にしないで」
 実際なのはの待ち時間は数時間に及んでいたのだが、とりあえずそれは声に出さず、
ごくごく自然にクロノの腕に自分の腕をからめ、寄り添……
 と、ふと自分とクロノに視線を送る武装隊面々の存在を思い出し、ぱっとクロノから
離れる。
「あ、あはは、え、えと、その、わ、私はもう帰るけど、み、みんなももう上がり?」
「え、は、はぁ、本日の任務は終了しましたが…」
「そ、そう、それじゃみんなお疲れ様っ。い、行こうクロノくん」
「ああ。それじゃみんなもお疲れさま、先に引き上げさせてもらうよ」
「は、お疲れ様でした。提督、教官」
 敬礼を返す武装隊の3人を尻目に、クロノを引っ張るように足早にその場を去るなのは。
「ど、どうしたの。何急いでるの、なのは」
「だ、だって、なんかみんなに見られてると恥ずかしいっていうか、その…」
「お昼にお弁当持ってきてくれる時はもっとくっついてるじゃないか」
「うー…だってアースラは雰囲気が緩やかだからあーゆーのも許せるかもしれないけ
ど、わ、わたしだって一応教官の立場なんだから、教える人たちの前だと示しがつか
ないと言うかななんと言うか…」
「別に今更、って気もするけどなぁ…」
「気にするのー、もぉー」

「いや、そんな聞こえるように言われてもなぁ…」
「確かになぁ…」
 恋は盲目(ちょっと違う)、本人同士の会話のつもりだろうが、その声の大きさで
は当該の面々に会話はだだ漏れである。
「……でもうらやましいよなぁ、クロノ提督。……教か…いや、なのはちゃんと…」
「…そろそろ、このバッジも捨てなきゃ…いけないのかなぁ…」
「……なのはちゃぁん…」
「…」
「…」

「…」
 ここに揃った3人。実はなのはには言えぬ、「ある番号」を持っていた。

 Star Light−001・Star Light−002・Star Light−003
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:58:39 ID:C6FFNQIu<>
 高町なのは非公式ファンクラブ。その名を「Star Light」と言う。
 偶然にも揃った、総会員数138名のそのトップ3星。
「今日は…飲むぞ…」
「ああ…朝までな」
「他の隊員、いや、会員にも声かけるか…閉会式になるかもしれないからな…」
 武装隊の制服の襟裏に隠すように付けられた流星をモチーフにした会員バッジ。それ
にそっと触れながら、彼らは美しき流れ星が自分達の上を通り過ぎ、そしてもう戻って
こないことに心の中で涙した。


 〜  〜  〜  〜


「さ、今日はなのはが夕飯を作ってくれるんだよね」
「うん、えへへ、実はちょっとまだ自信ないんだけど、がんばって作るからね」
「大丈夫、なのはなら。お弁当でも実証されてるし、問題ないよ。じゃぁ向こうへ行か
なきゃならないから転送室へ行かないとね」
「あ…えっと…そ、その…ことなんだけど…」
 と、ふと足を止め、もじもじと口ごもるなのは。
「ん?どうしたの?」
「えと、その、あの…その、も、もし…よかっ…たら…その…ク…の…え…で…」
 聞き取れぬレベルまでトーンダウンするなのはの声。当然クロノには届かない。
「え、何だって?聞こえなかった…けど…」
「その…えと…フェイトちゃんとリンディさんって…その…私の、その…地球の方の家
に居る…んだよね…」
「え、いや、まぁ、そうだけど…」
 いきなり何のことだ、とクロノは困惑する。
「勿論、今日も…だよね?」
「あ、ああ、そうだけど?」

 闇の書事件の際に設置された、なのは達の世界−地球−での時空管理局の駐屯地。
 事件以来、駐屯地としての機能は無論そのままだが、大きな事件もないまま、ハラオ
ウン家の地球圏別荘となっていた。が、別荘というよりはむしろ、なのはと同じ学校に
通うフェイトのため、フェイトとリンディとアルフにとっては、もはやミッドのハラオ
ウン家よりも本宅と言っていい状況になっている。クロノはといえばさすがに駆けつけ
時間の問題もあり、ややミッドの自宅を使用する割合が多いわけだが。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/03(日) 23:59:13 ID:C6FFNQIu<>
「その…つまり今日はこっちのクロノくんの家には誰も…居ないんだよね?」
「いや、誰も、っていうか、僕が居るんだけど…」
 その言葉になのははもじもじと人差し指をつき合わせながら、
「…そっちじゃ、ダメかな?」
「へ?そっち?」
「だ、だから…こっちのクロノくんの家…じゃ…ダメ、かな?」
「…え?ええっ!?ぼ、僕の家に来るのかい?!」
「ダメ…かな?」
「いいいいいいや、だ、だめなんてそんな、いやいやいや、だ、だめだ、そ、そんな、
き、今日はだ、誰もいないんだぞ、ももも、もし、ぼ、僕がなのはに何か、あ、いや、
そ、そんなつもりは勿論ないけど、いや、無くも、いや、そ、そうじゃなくて!!」
 騒ぎ立てるクロノににこっと笑いかけ、その手をそっと取るなのは。
「クロノくん」
「!?」
「あのね、今日プレゼントしたかったのN2Kだけじゃないんだ」
「えっ?」

(…落ち着いて、大丈夫、私、クロノくんのこと好きだから、大丈夫…うん)
 左手はクロノの手を握ったまま、右手を胸に、大きく一つ深呼吸。なのはは意を決し。

「きっ、今日…ク、クロノくんの家に泊まっても…いいかな?」
「なのっっっ!?」
 騒ごうとするクロノの心とそれを押し留めるなのはの視線。
 クロノは必死になのはの手の感触を頼りに自分を落ち着かせ…ようとするる。
「な、なのは、ちょ、ちょっとまって、ダメだよ、そりゃぁ婚約はしたけど、その、な、
なんていうか、な、なのはのこと大事にしたいから、そんな急に…」
「…クロノくん」
「えっ?」
 ふっとクロノを見上げ、その勢いでそっと口づけるなのは。
「!?」
「私はクロノくんのこと好き。大好き。クロノくんは私のこと嫌い?」
「き、嫌いなもんか!ぼ、僕だって…好きだ」
「じゃぁ…もらって?私のぜんぶ。私、クロノくんにあげたいの。他の誰でもない、私
が一番好きな、大好きなクロノくんに」
「なのは…」
 なのはの瞳に吸い込まれまいと、クロノは想い人をそっと抱きしめる。
(…僕…より、なのはの方が……当たり前だよな、なのはは女の子なんだから……)
「…いいんだね、僕で」
 なのはは言葉の代わりにコクンと頷き、クロノの背中に手を回す。
「…でも、優しく…してね。やっぱり、ちょっと怖いから」
「ああ、勿論」
 背中のなのはの手にきゅっと力が込められたのを感じたクロノは、自分も、となのは
を強く抱きしめ…

「ちょっとあなたたち!!」
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:00:17 ID:C6FFNQIu<>
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
 突然の声に二人はあわてて身体を離し、声の方へと視線を向ける。
「あのねぇ、婚約したのは知ってるわよ。まぁ、若いんだから我慢できないのもわから
なくもないけど。ここは職場よ、節度というものを守りなさい、節度を」
「「レ、レティ提督…」」
 そこにずぅん、と仁王立ちに立っていたのは、やはり時空管理局提督たるレティ・ロウ
ラン。その人である。
「2人とも立場があるんだから、下の者に示しがつかないわよ。自重しなさい、まったく」
「も、申し訳ありません…」
「ご、ごめんなさい…」
 素直に謝ってきた2人に対し、キラリと眼鏡を輝かせたレティは、ここぞとばかりに
ふんぞり返り、腰に手をあて、切々と語り始める。
「いいこと、あなたたち。そもそもあなた達くらい責任のある人間だったら、まず手本
となるべくよう、日々下の者にその姿を見せることが義務となってくるわけよ。わかる?
義務よ、義務。それを何、自分達から風紀を乱す行為なんてもってのほかです。まぁ、
好き同士なんだから、勤務外なら私も何も言わないわよ、でもね……」

《ク、クロノくん、こ、これってもしかして》
《…ああ、レティ提督お得意のお説教モードだな》
《ど、どうしよう。このままじゃ帰れなくなっちゃうよ…レティ提督のお説教は最低2
時間は続くってはやてちゃんに聞いたことあるよ…》
《ふむ、それは困るな…よし、抜け出そう》
 同じ提督の立場としてはあるまじき発言であるが、まぁ、聞かなかったことに。
《ぬ、抜け出すって、そんな…》
《大丈夫、自分に酔ってて、ほら、僕達のこと全然見て無いよ》
 確かにクロノの言うとおり、あーだこーだと言っている割にレティの視線は2人を全く
見ていない。
《で、でも…》
《いいから、ほら、手出して》
《う、うん》
 差し出されたなのはの右手をそっと握るクロノ。
《いくよ、気付かれないように、そーっとね》
《わ、わかった》

《そーっと、そーっと》
《そーっと、そーっと…》

 そろり、そろり、と、とても提督と教導官とは思えぬ振る舞いで、2人はじりじりと
後ずさる。

《よ、し…今だ!走るぞなのはっ!!》
《え?ええ?!》
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:00:51 ID:wCf+5/7T<>
 10mほど離れたところで、だっ、と2人は走り出す。さすがにレティもそれに気付
き、声を張り上げる。
「ち、ちょっと!あなたたち!待ちなさい!!まだ話は終わってないわよ!!」

「すいません!その件はまた後日、あらためてお伺いしまーす!」
「ごっ、ごめんなさいレティ提督ー!」

「ちょっ!こ、こらぁー、まーちなさーーーーーいっ!!」


 〜  〜  〜  〜


「いやぁ、まいったまいった。レティ提督もあれさえなければなぁ」
「もう、私、レティ提督と顔合わせる機会、クロノくんより多いんだからねっ。うぅ、
今度会ったら何言われるか…はぅ、気が重い…」
「そこはそれ、高町教導官の腕の見せ所だよ」
「そんなわけないでしょー!もう!」

 レティの追撃(?)を振り切った2人は揃ってミッドチルダの街に転移していた。
 なのはの概念で言うところのデパートで夕飯のための食材を買い込み…ちなみになの
はがここで一番驚いたのは、食材等のほとんどがなのはの知るものとほとんど相違なかっ
た、ことではなく。食材の鮮度を保つために魔法が使われており、ミッドチルダの世界
では食品を冷凍・冷蔵保存するという概念が無いことであった。閑話休題…そこからハ
ラオウン邸まで徒歩で20分というところ、無論転移魔法や飛行魔法で移動時間短縮は可
能であるが…
「…ね、す、少し…このまま、歩きたいな…一緒に…」
 などと言って恥ずかしそうにクロノの手を握ってくるなのはとの幸せタイムを短縮さ
せようなどという考えはクロノとて微塵もない。
 そのまま2人。寄り添い歩く。
 出会った頃の事、普段の事、休日の事、なのはの学校の事、アースラの事、武装隊の
事、家族の事。繋いだ手のように話題は途切れない。
 それでもふいに、ふとした会話の切れ目、その都度2人は足を止め、辺りを見渡す。
 都合よく人影が見受けられなければ…
「えっと、さっきはクロノくんからだったから、今度は私だね」
「うん」
 繋いだ手はそのままに、クロノの前に回りこみ、そっと爪先立つなのは。
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:01:30 ID:C6FFNQIu<>
「んー……ちゅっ…」
「…なのは…」
「えへへ…」

 10秒間の道草。

 そんなことを幾度と繰り返しながら。クロノは見慣れた、なのはは初めて見る町並み
を共に歩く。寄り添い歩く。沈み行く夕日に赤く色づくお互いの顔を眺めながら。
 そんな幸歩の末、たどり着いたのは…

「ほら、着いたよ。あそこだ」
「わー、ここがクロノくんのい………あれ?…」
「ん?どうしたの?」
「なんだか…見た事ある気がするのは…気のせい?」
 そこに鎮座していたのはいわゆる集合住宅、わかり易く言えばマンションである。
 そして何故?と思うほど地球圏の管理局駐屯所に、ひいてはフェイト達が暮らすマン
ションに似ている。
「ああ、似てるだろ?あっちの家に」
「あ、そっか、あのマンションに似てるのかぁ………何で似てるの?」
 何で、からクロノに視線を向け問うなのは。
「何で、って…あれ?なのは知らなかった?あの建物建てたの管理局だよ」
「へっ?!」
「駐屯地用に管理局が魔法で建築したんだよ。だからあの建物に住んでるの僕の一家だ
けだよ。他の住人とか見た事ないだろ?」
「えええええええええっ!?!?あのマンション全部そうなの!!!」
 何て事をしれっと言い放ちますか、あなた、と言った叫びのなのは。
 対するクロノ(管理局)にとってみれば、別段めずらしくもなく、異世界に管理局の
駐屯地を設置する際にとられる手段としては、ごくごくメジャーな方法であった。
「まぁ、必ずそう、ってわけじゃないけど、よくある方法だよ。事あらば武装局員が集
団で滞在しなきゃならない場合だってあるし、あれくらいの規模の建物は確保しておか
ないとね」
「そうだったんだ…い、言われてみればごもっともだけど…で、でもでもあの事件の時
あんな大きなマンション何時建てたの?私近所だけど全然わからなかったよ、工事の音
とかしてた覚えないし…」
「ああ、あれくらいの建物なら一晩あれば十分だよ。魔法であっという間さ」
「えええっ!!1日で建てたのぉ?!?!
 なのはにとっては驚きとおし、自分だって7年以上も管理局勤めの立場なのに。
「いや、そんな驚くことじゃないんだけど、な…魔法で周辺住民へ強制認識もさせてる
し、急にあれが建っても不思議に思わなかっただろ?」
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:03:25 ID:C6FFNQIu<>
「うー、クロノくんそんなこと教えてくれてないー……聞いてもいないけど…」
「いや、そう言われても僕もなんと言っていいか…」
 認識の相違は思ったより深かった。とはいえ実はなのはがそれ系の知識に疎かっただ
け、とも言えるのだが。
「ま、とにかく入ろうよ」
「あ、う、うん…納得いかないけど…」
 ぶちぶちと、なのはの予定では胸ときめかせながら玄関を潜る(なのはは一軒家を想
像していた)予定が、なにやら小言を呟きながら釈然とせぬままマンションのロビーに
入るはめになってしまった。感動を返せ、となのはは胸の内で繰り返すしかなかった。

 〜  〜  〜  〜 

 そしてまぁ、当然と言うか。

「…うぅ…家の中まで同じ造り…」
 ドアを一歩くぐるや否やがっくりとうなだれるなのは。
「いや、そりゃぁ、この建物をモデルにしたんだし、当然なんだけど…」
「あーん、せっかく『わーこれがクロノくんの家なんだー、へー、すごーい。ね、ね、
こっち何の部屋?』とかすごい楽しみだったのにー」
 と思いきや、一転、狭い玄関でじたばたするなのは。
「な、なのは、わかったから落ち着いて…」
 と、未だにショックを引きずるなのはは玄関口でぶーたれる。
 クロノにしてみればそんななのはもころころしてかわいいのだが、いかんせんこのまま
ではらちが明かない。
「うう、私のどきどきを返して…」
 なのはの台詞に苦笑しながらやれやれ、と思いつつ。
「わかった、じゃぁこれでどう?」
「ふぇっ?」
 なのはがクロノを見上げるが早いか、素早くクロノはなのはに口付ける。
「どう?どきどきした?」
「…ふにゃ…」
 突然のことにやや口調が幼児化するなのは。
「え、えと、えと、えと、その、も、もうちょっと、どきどきしたい…」
「まだ玄関先なのに、なのはは欲張りさんだね」
「うん、だってクロノくんとのどきどきだからもっともっと欲しい…」
「じゃぁ、目、閉じて」
「ん…はい…」
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:04:44 ID:C6FFNQIu<>
 玄関で、靴も脱がず、繋がりあう2人。お互いの肩に回した腕が、そのまま背中へ滑
り、ぎゅっと抱き合う。
 まず唇が、そして背中に回された腕が外され、でも見つめあう視線はそのままに、
「さ、中、入ろう」
「うん…」
 二人は靴を脱ぎ、揃って屋内へ。
 するとなのははささっとクロノの前に回りこみ、
「えっと、その、い、いつか、なのは・ハラオウンになったときの練習、していい?」
「え?」
 何?とクロノが問うより早く、なのははすっと床に膝を付く。
「お、おかえりなさい、…あなた」
「なのは…うん、ただいま、なのは」
 と、それだけでは今のなのはは終わらない。
「え、えと、わ、私たちの世界ではね、こういう時にしなきゃいけないことがあるの」
「そうなのかい?」
 予想が付かないこともない。でもそれを言うまでもない。クロノは甘んじてなのはの
言葉を待つ。
「うん、おかえりなさいの…」
 ゆっくりと立ち上がったなのはは言葉を続ける。
「キス」
 目を閉じ、上を向いてクロノを待つ。
「ただいま…なのは…」

 幾度繰り返したか。が、何度経験してもクロノの胸の高鳴りは収まらない。
 幾度繰り返したか。が、何度経験してもなのはの胸のときめきは収まらない。

 キスだけでこうである。そして今日はさらにその先へ2人は進もうとしている。
 今からこんなだったらこの先どうなるんだろう。そして明日は、そしてその先は…

 期待と不安と憧れと愛しさ。色々なものを胸中に渦巻かせつつ。

 2人の夜は、たったいま、これから。


  To Be continue  〜 CherryLight 〜 A Sweet Night Vol.2

<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:09:42 ID:wCf+5/7T<> 結局8月の休日は3日半でした(T_T)
不公平な世の中ってイヤよね…

あとこの話をもう1回と外伝1本で「CherryLight」は真に完結。
やっと例のやつの続きが…書けると…いいな…(今月も既に休みは6日以下に決定済)

ま、そんなわけで、今回ここまででお願いいたします。
武装隊?ファンクラブ?ああ、確かに話の筋には何の関係もありません。外伝で生きて
くる連中ですのでw

>>640さん
シグさんとエロいのと同時執筆誠にお疲れ様でした。
シグさんは言うことなしですが、エロいのはヴィータが(ry
っていうかなんで別話を同時に執筆できるんですか…無理、私には無理(^^;)
あと前にも言いましたが何そのソニックフォー(ry

>>176さん
爆誕編(オ 完了乙でした。
なのはよかったよかった。これで安心して昼寝もできようというものw
フェイトは泣かすことのなきよう一つよろしく。
あと復活の糖度もGJであります。
私的にはあなたはアリサではなく、リンディ提督ですとも、ええ。この甘人めw

>>6の480さん
ACF乙です。
話の全般に力が込められすぎてて、まさしくlyrical(熱のこもった)。
でもレイハで腹ぶち抜きは勘弁してくださいw

>>ヘボ書きマンさん
640さんと同じく、さぁエロを書こうかw

>>238さん
うん、確かにちょっと短いですね。
私も偉そうには言えない立場ですが、私のように台本チックに「」が多いわけでも
ないみたいですから、もう少し量を書き込めば問題ないと思いますよ〜。
説明文を増やして(伸ばして)1行を2行にも3行にもするのも手ですしw
(↑やりすぎ注意w)
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:10:36 ID:wCf+5/7T<>
この発言は、同人サークルの宣伝文章になります。お気にされる方はスルーしてください。





 〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜

ずいぶん前にちらっとここで使った

 ttp://cream.ath.cx/ichigo/dl.cgi?filename=IchigoCream0235.jpg

 ↑なんですが、どうやら9/10の「とらいあんぐるパーティ4」で販売するとのことですw
 進化(?)してバージョン2になってるそうです。ユーノの部分がレイハになってるとか。
 サークル「春秋門」で委託販売するので宣伝しといてくれ、と作者の方に言われたんですが…
 俺に言ってどうすんだよ、ここしか宣伝場所ない、っつーに(^^;)
 別段私が関与しているわけでは一切ないのですが、まぁ、出かけられる方がいらっしゃった
ら頭の片隅に覚えておいてくださいませー。

 ※ 物品詳細
  なんでも缶ジュース「なっちゃん」に貼り付けるとあっという間に「なのはちゃん」に早代わ
  りしてしまうという『シール』だそうです。
  1枚200円、2枚で300円とのこと(これが高いのか安いのかは申し訳ない、私はわかりません)
  当たりくじ付きで「特製翠屋コースター(リバーシブルミッド魔方陣仕様)」がもらえるそう
  です(なんのことやらwってかコースターをリバーシブルするなw))
  なんでジュースじゃなくてシールを売るのかと思ったら食品はイベントでは販売できない
  そうな。あー、イベントってそういうものなのねw(←イベントとか行った事無い人)

 お目汚し大変失礼致しました。
  
 〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜 <> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/04(月) 00:12:35 ID:wCf+5/7T<> うわ、前もやったのにまたやっちまった。ごめんなさい。
上記URLはエロい絵がたくさん出ますので(w

ttp://cream.ath.cx/ichigo/cream/IchigoCream0235.jpg

こっちの方がよろしいかと思われます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 00:32:03 ID:6MLOPRa7<> >>256
騎乗位の子のgifかわいい・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 01:28:48 ID:xFQVDegH<> >>4の422氏、GJ!
なのはが天然ボケで墓穴を掘ったり、友人一同の熱い友情に責められたり……、ホント面白いっす。
ってか、新婚さんごっこって、読んでるこっちが恥ずかしいってば。
よくやるなぁ、なのは。
しかし、こんなバカップルの惚気話聞かされる羽目になった、アリサ達が可哀想な気が……。

さて、次回のエロ甘話、思いっきり期待してます。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 06:24:23 ID:Oa2UmD95<> 今ならショタが書ける! とあせっていたらいつでも書ける方法がいっぱいあったことに気がついた。
そこで、ネタの1つ 転送事故で6年後に飛ばされてしまったユーノくんがそのままなのはに食べられてしまう。
逆もまた然り、ただしこちらは犯罪チックなので書くのをやめよう。

あたりを書いてみたいのですが、、これはずばりショタなので需要が…
読みたい人がいたら (,,゚Д゚)∩ショタコンです とか、なにか反応があったら書いてみます。
無かったら消えるので気にしないで(^^;

>>242
エロシーンの前って割り切らないといくらでも伸びません?(汗) <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 06:55:40 ID:pAOanyJl<> >>258
まったく同じことを思ったw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 08:34:06 ID:d7zmZTH9<> >>260
俺によし!お前によし! <> ヘボ書きマン<>sage<>2006/09/04(月) 08:48:47 ID:/9fE8rtG<> >>260
OK!!次それやってみよう!!!!
明後日までに誰も書かなきゃ書き始めます
…でも某スレの作品も仕上げなきゃ…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 10:38:27 ID:K08z8311<> >>263
いや、260氏が書くって言ってるんじゃ?
あ、それとも260も263もヘボ書きマン氏なのか、それなら納得 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 12:05:01 ID:6a7mhdPm<> >>260
ショタ歓迎 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 15:01:32 ID:3aq59KN0<> (,,゚Д゚)∩ショタいけます <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 17:53:20 ID:3aq59KN0<> というか別人物でもあえて二通r(二兎追 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/04(月) 18:43:15 ID:sQNqViV+<> 4の422氏乙
すごいバカップルで読んでるこっちが恥ずかしいw
次の本番のほうも期待してます <> 238<>sage<>2006/09/04(月) 19:33:42 ID:9vMHhj91<> >>241
基礎がなっていませんでしたか。
失礼しました。
そして、助言ありがとうございました。

>>4の442氏
わかりました。
やりすぎに注意しながら試みます。

と、いうわけで、足りなかった続きを投下してみます。 <> 238<>sage<>2006/09/04(月) 19:35:30 ID:9vMHhj91<> 「アルフ、そろそろ全部見回ったかな?」
「そうだね、フェイト。この部屋で一応終わりみたいだ。こっから先は、まだ未調査だね」
そう言うとアルフは、目の前に広げていた立体マップを消去した。
フェイトとアルフは遺跡の比較的深い所、長い直線通路の先にある大きな石室にまで進んでいた。

石室は、そこが『部屋』であることを感じさせないほどの、広大な空間だった。
先程まで広げていた立体マップによれば、ここは何も無い、ただの広大な広間だ。
そしてこの部屋から先は、遺跡の構造上、居住区画と推測されている。
危険物の有無の確認を最優先とする今回の調査では優先度は低く、探索は後回しにされていた。

「大雑把にロストロギアが無いかを確認してから、やっと学術調査なんだね。遺跡が傷むって、クロノがぼやいてたっけ」
「それなら、フェイトがなんかうまいやり方を考えればいいんだよ。そうすりゃ、万事解決さ」
「私が…?うん、そうか、そうだよね。そんな仕事の仕方もあるんだよね。これから…」

『material』

そのとき。
抑えられた無機質な発声を、アルフの獣の聴覚だけが、わずかに捕らえた。

『blaster』

「フェイ…」
アルフの体は反射的にフェイトを庇うように動いていたが、間に合わない。
発射地点は部屋の天井近く、超遠距離といっての差し支えない闇の中。
魔力の高まりすら感じる事の無かった、不自然な砲撃魔法による不意打ち。
術者の姿を確認する余裕も無く、フェイトとアルフが居た空間を、緋色の魔力の奔流がなぎ払った。

「フェイト…ちくしょう、クロノ、緊急事態だ!フェイトだけでも転送できるか?」
砲撃の直撃は反射的にかわしたものの、余波で弾き飛ばされたフェイトを即座に抱きかかえ、通信を開くアルフ。
しかし、砲撃を受ける直前まで確かに開いていたはずの回線は、完全に沈黙していた。
「いまさら通信妨害…フェイトが撃たれるまではフリーにしておいて、こっちに警戒させなかったってのかよ?」
アルフは迷うことなく石室を出て、元来た通路を全速で引き返した。

「ちくしょう・・・ちくしょう!」
表面上は軽口を叩いていたが、アルフは決して油断していなかった。
その上で正面からの、よりにもよって砲撃魔法による不意打ちを許してしまったのだ。
フェイトを守りきれなかったアルフの胸は、未知の敵への殺意と、自己嫌悪で満ちていった。

「アルフ…」
腕の中で、フェイトが呟いた。
「よかった、フェイト…すぐ手当てしてあげるから」
「アルフ、上」
「!」
フェイトは、苦痛に顔を歪ませながらも、再度呟いた。
その目は間近にあるアルフではなくその向こう、アルフの頭上を見据えている。
「くっ」
アルフは急制動をかけて身を捻った。その脇を、突風の迅さで拳がかすめる。
拳を避けられた人影は、通路に叩きつけられるような勢いで着地した。
着地地点は、逃走していたアルフの目の前。攻撃しつつ、アルフを逃がさないよう立ちふさがったのは明白だった。
<> 238<>sage<>2006/09/04(月) 19:36:56 ID:9vMHhj91<>
立ちふさがったのは、黒髪黒瞳の少女。
年のころは、フェイトと同じくらいか。
小柄な肢体を、騎士服に似たバリアジャケットで覆っている。
先程の攻撃は、黒い指抜きのグローブを装備した、右の拳から繰り出されていた。
右拳は、ちりちりと魔力の残り火を散らしている。
薄手の革手袋の外見を持つ指抜きグローブの手の甲の部分には、ミッドチルダ術式の魔方陣を刻んだ、金属のプレート。
おそらくはデバイスだ。

通路の床に思い切り拳を叩き込んだ少女だったが、拳には、いささかもダメージは無いようだった。
逆に、かなりの衝撃を受けたはずの石床にも破壊跡らしきものは無い。
先程の砲撃魔法でも、破壊された形跡は無かったように感じた。
外見は単なる石壁であっても、れっきとしたオーバーテクノロジーの産物のようだ。

アルフは、牙をむいて少女を睨みつけた。
外見がどうであれ、フェイトをひどい目にあわせた張本人なのだ。
張本人?
そこでアルフはふと我に返った。
目の前の少女が敵意に満ちた魔導師であるのは、疑う余地はない。
しかし、攻撃は明らかに近接型だ。装備しているのは砲撃に向くようなデバイスではない。
それに、拳に宿る少女の魔力光は鋼色。そして先程の砲撃の魔力光は緋色だった。
フェイトを攻撃した砲撃手とは別人であると、アルフは結論付ける。
「まだほかに敵が…」
その瞬間。
先程の砲撃と同じ色の、今度は高速直射弾が、黒髪の少女と向かい合うアルフの背後、石室の闇の中から放たれた。

『photon bullet』
『defensor plus』

緋色の魔力弾は、アルフの背中越しに展開したフェイトのバリアにより、かろうじて弾かれた。
「フェイト!」
「…大丈夫だよ、アルフ。バルディッシュが、ぎりぎりの所で護ってくれた」
まだ力の入らない声でそういうと、フェイトはアルフの腕の中から身を起こし、自力で立ち上がった。
不意打ちの砲撃の余波に巻き込まれたフェイトだが、その瞬間にはバルディッシュの障壁が発動しており、大きなダメージはまぬがれたのだった。
フェイトは、黒髪の少女と対峙する形になっているアルフと背中合わせになり、正面から飛んでくる砲撃を警戒するよう構えた。
「挟まれている。逃げられない。アルフ、バルディッシュ、やるよ」
『yes,ser』
「くっそう…フェイト、無理するんじゃないよ」
フェイトのダメージが決して軽いものではないことは、背中合わせの自分に、もたれかかって立っていることからわかっている。。
だが、自分が血路を開くから一人で逃げろといっても聞き入れることはないのも、アルフにはわかっていた。
かくなる上は、目の前の敵を倒すか、決定的な隙を作り出して二人で逃げるかだ。
揃ってテレポートする手段もあるが、前方の少女と、後方通路奥からの砲撃手が、その隙を与えてくれはしないだろう。
どちらにしろ。
「フェイトにこれだけのことをしたんだ…五体無事で帰れると思うなよ!」
牙と殺気を剥き出しに、目の前の少女に向けてアルフが咆える。
同時に、フェイトが姿を見せぬ砲撃手と対峙すべく、単身、通路の奥、先程の石室へと突入した。 <> 238<>sage<>2006/09/04(月) 19:42:24 ID:9vMHhj91<> アルフは通路に残り、正面の黒髪の少女と対峙した。

(デバイスは右の手袋。形状からして、用途は近接戦と支援魔法用…戦闘スタイルは、こっちと似たタイプか)
アルフは、今までの経験から、少女のデバイスの用途を推測。
それを扱う少女の、戦闘における『立ち位置』を判断した。

少女が身に着けるのは、濃淡のみで表現された、飾り気の無い騎士服状のバリアジャケット。
軽く握られた拳は、年齢相応に薄い胸の前で構えられている。
無表情ではないが、その表情は感情の起伏を読み取らせるには変化に乏しく、ただ凛とした戦意だけをアルフに伝えた。
冷徹に周囲の状況を把握しようとする、遠くを見据えるような黒瞳とあわせて、ひどくアルフの心を苛立たせる。
「…嫌なものを思い出させるね。つくづく気に入らないよ!」
アルフは拳を握り、少女に突進した。
感情を押し殺した表情。昏い瞳。努めて冷徹で機械的な行動。
プレシア・テスタロッサにジュエルシード収集を強制されていた、あの頃のフェイトを思い出させる少女に。

『lightning bolt』
先を制したのは、少女だった。
気負いで力みが出たアルフの動きを看過し、アルフが突進する姿勢に入った瞬間、無詠唱で魔法を発動。
到達距離を大幅に犠牲にして無詠唱を実現。近接戦の攻撃手段として確立させた、少女独自のバリエーションだ。

「ちっ…くしょう!」
カウンターを取られ、少女の放った魔力弾に正面から当たりに行った形になったアルフは、正面にシールドを展開して光弾を防がざるをえない。
アルフにできる隙を見越していた少女は、フェイトにも比肩しうるほどのスピードでアルフの死角に回り込むと、魔力を込めた拳を突き出す。
アルフは吹き飛ばされ、通路の壁に叩きつけられた。

『chaser bolt』
少女の追撃は止まらない。
同じく無詠唱で自動追尾の魔力弾を生み出すと、対象をアルフにロックして発射。
それを追って自らも、アルフに向かい駆け出す。
アルフが動いても魔力弾が追尾し、魔力弾に対処した瞬間を狙って少女が攻撃を加える構えだ。

しかし、今度はアルフの行動が少女を上回った。
「チェーンバインドッ」
「!」
アルフは、魔力弾に対処しなかった。
シールドを張らずに、チェーンバインドを、すべて少女に向けて展開。
魔力弾は一歩も動かないアルフに命中し、血飛沫を上げさせたが、アルフを無力化させるには至らず。
逆に、アルフは放った無数の魔力鎖の網の中に、少女を捕らえる事に成功した。
「つ・か・ま・え・たぁ!」
魔力弾による傷をものともせず、口角泡を飛ばす勢いで、アルフはバインドに捕らえた少女を振り回して壁に床に叩き付ける。
最後に自分の懐に引き寄せると同時に、大きく拳を振りかぶった。
「歯ぁ、食いしばりな!」
アルフの拳は少女にクリーンヒット。
同時にバインドが解け、少女は後方に吹き飛ばされると、受身も取れずに通路を転がる。
そのまま、床にうつぶせに倒れ込んだ。 <> 238<>sage<>2006/09/04(月) 19:45:11 ID:9vMHhj91<> 以上でした。
至らぬところがあれば、また助言ください。 <> 260<>sage<>2006/09/05(火) 00:13:12 ID:Lj3WBYuq<> いや、別に他の方がネタとってもどうぞ。公開したらどうしようと自由。
ヘボ書きマンさんが書くのならクロノ(大)にフェイト(小)… 犯罪だ…。
逆にしてほのぼの近親**。

「お兄ちゃんの……」
「えっ、え!?」
「かわいい!」
「ちょ、ちょっとまてフェイトなにを、っ」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/05(火) 02:46:47 ID:rPBR4Be4<> >>260が寛大な人でよかった。あなたも書いてくださるんですよね?

ヘボ書きマン氏はこのネタで書くならやはり一言あるべきだと思う。
書くなとは勿論言わないが。 <> ヘボ書きマン<>sage<>2006/09/05(火) 10:13:09 ID:VJB3UeKV<> >このネタで書くならやはり一言あるべきだと思う。
>書くなとは勿論言わないが
そうでした。改めて言います。
>>260さん、ユーノのショタネタ(こういう言い方で良いのかな?)俺も書いても
良いですか?
気分害されてたら本気で申し訳ないです。
許可もらえるまでは自重して他のネタで行こうと思います <> 260@ピンキー<>sage<>2006/09/05(火) 22:19:40 ID:Lj3WBYuq<> >>276 どうぞー、私はネタだけどんどん出てくるタイプなのでなんともありません(^^;

>>275
そろそろなのはで何か書かないとという感じ。
でももう一つこれだキターってネタが浮かばない…。
妄想中…しばらくお待ち下さい フフフ OTZ

−−
それは決定された過去。
悲劇の歴史。
しかしその過去から大切な人を救うため、一人の少女が訪れる。

「おかぁっ、、なのはさん! ここから逃げてください!」
「え? …名前ですか。私の名前は、ユーナ(仮)」

「信じられない! あんなに強力なバリアとバインドを同時っ…あれは!! スターライト」
「あなたは…だれ?」

新しい物語が、始まる。

−−
というのを考えたけど気がついたらエロがなかった orz
それにオリジナルは方針に反します。3期で登場したら別だけど。
(なのはスレが炎上しそうですね)

なのは+ユーノ=強力な防御・安定した魔法・バリエーション多数・体力有り、近接戦闘優秀・バックアップ魔法も 後方支援から単独戦闘まで、最強か?
なのは+フェイト=砲撃+多彩で強力な攻撃魔法・体力有り、近接戦闘極めて優秀、防御が…防御がっ バックアップがいれば最強の気がする
なのは+クロノ=高度な戦術・バランスの良い魔法+砲撃魔法強し 微妙?

そんなことを妄想していました。
本当に(ry <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 01:04:33 ID:OncBwOe3<> 高町戦技教導官による

量産型ナノハ

RHデバイス教導官による

量産型レイハ(カートリッジ付き)

時空管理局のカートリッジ物量作戦による集団ディバインバスター
(量産型ナノハの魔力不足をカートリッジで補う)


とかネタだけ思いつきますた。




敵がいませんorz

いっそ量産型ナノハレイハに反乱でもしてもら……
そうしたらカートリッジが…… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 01:47:49 ID:5wK52Aum<> 高町戦技教導官がなのはタイプの魔道師を量産してるとは思えないんだが。
なのは戦法は、なのはの馬鹿魔力あっての戦法で、
そもまま教えても実践できる個人的資質がなければ意味がない。

例えば、30人くらいのチームで、
10人がかりで防御結界を張って、
10人がかりで長距離砲撃魔法を撃って、
あとの10人が近接戦用の誘導弾を撃ちまくったら、
なのは戦法の真似は出来る。
そういう集団戦法を教えてるのでは?
と妄想。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 01:49:45 ID:4gXHtpnA<> ACFが近い設定で進んでるな、
あれは苦肉の策らしいが <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 01:55:29 ID:OncBwOe3<> だからカートリッジ物量作戦。

量産型ナノハ は射撃魔法基礎だけあれば魔力はカートリッジで補う。

もちろん 量産型ナノハ であるから 白い悪魔なのは には及ばないけど……

量産型には夢がある!

量産型ナノハ03 通称ナノハさん が暴走するところから話ははじま…… <> 279<>sage<>2006/09/06(水) 02:13:54 ID:5wK52Aum<> >>281
その場合、誘導弾が…
ヴィータちゃんも、「アホが。こんな大量の弾を制御できるわけないだろ(大意)」と言ってるし、
あれには、かなり人並みはずれた魔力コントロールが必要という設定では?
誘導弾抜きだと、近接に入られたとき、エライことになりそうだし。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 11:04:59 ID:KTscUywr<> 制御できないなら制御できる人間を作り出せば良い
制御デバイスと脳を直接繋いだり、脳に埋めこんだり
複数の人間による分割並列処理とか <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 13:08:18 ID:OncBwOe3<> >282
量産型ナノハを大量にならべてDV級の射撃を面で展開。

誘導不要。


むしろ量産型ナノハじたいがディバインスフィア。




考えれば考えるほど外道なんです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 14:58:05 ID:TpFs0O1n<> もうそろそろアニメスレ行ってくれ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 16:39:14 ID:pnuvlSvP<> AIをハックされたら終わりだと思った<量産型ナノハ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/06(水) 20:21:58 ID:8EN+KC23<> クローンにすれば…

と思ったがフェイトがいるから駄目か <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/07(木) 00:36:41 ID:reFWbKFj<> つまり、フェイトを洗脳すればいいわけだな。
むしろ、クローン量産型フェイトを洗脳して誘導弾に使えば… <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/07(木) 01:17:12 ID:d93n8mDs<> 量産型なのはの AI には致命的な欠点があったので、自律行動は不可とし、訓練を受けた操縦者が
有線コントローラーで動かすようになった。

後に彼らは「なのはんライダー」と呼ばれるようになった <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/07(木) 01:56:07 ID:edYAkdGd<> ナナハンライダー? <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/07(木) 01:57:20 ID:kQMRwpjx<> ↓ここらで空気を読んで新作プリーズ↓ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/07(木) 07:16:49 ID:mIWBYyjW<> クロノを大量に複製し艦長として1体に1艦預ける

各艦の連携率大幅にUP 任務達成までの所要時間大幅に短縮

経費削減に成功 (ここまで計画通り)

全艦で女性クルーの一斉妊娠発覚

出産のため女性クルー、一斉休暇 急遽人員追加

余計な経費により財政危機に

計画凍結へ <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/07(木) 09:19:59 ID:N6hbM0WM<> >>291
オーケーその願い叶えよう

・・・というわけで新作を投下いたします。全13話予定。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/07(木) 09:21:36 ID:N6hbM0WM<> フェイトの小さな身体が、紙切れのように吹き飛ぶ。
疲労し、魔力を消耗した状態では防ぐことも、避けることもままならず。
遺跡の硬い壁へと激突し、息を詰まらせて口の中に広がる鉄の味を噛み締めることがやっとだった。
詠唱がうまくいったのか、きちんと術式を構築できているのかも、わからない。
ずたずたで両足のニーソックス以外原型を留めていなかったバリアジャケットが、
衝撃を殺しきれずに四散した。

バルディッシュを抱えたまま、膝を折り壁面へと崩れ落ちる。

「っあ……」

その敵は、俊敏な動きでフェイト目掛けて止めをささんと向かってくる。
距離が残り数メートルを切ったところで、フェイトは痙攣する右腕を前に掲げた。
視界は朦朧。大鼠のようなそれに向かい放つのは、砲撃魔法。
相手の一撃を受ける前に構築を完了していた、渾身の一発。

「プラズマ……スマッシャー……」

うまく、いっただろうか。
止められたのなら、封印しなくては。
止められなかったなら、戦わなくては。
ああ、だめだ。眠い。苦しい。光が、眩しい。
目が、開けてられない。

様々な考えを抱えたフェイトは、次の行動を起こすことなく首を傾ける。
そこまでが、限界だった。
まだ微かに動く大鼠に対し立ちはだかった影に、彼女が気付くことはなかった。
その影は、大きいほうと小さいほう。二種類の姿で、彼女を守るように聳え立った。


魔法少女リリカルなのはA’s −the day−

第一話 そんな気がした、曇りの日


「あなたはあの子を働かせすぎだ!!クロノ艦長!!今回は増援の私や高町が間に合ったからよかったようなものの……!!」
「わかっている。わかっているよ……シグナム」

シグナムは、激していた。
アースラ艦内の艦長室で詰め寄られるクロノは、辟易したように彼女をなだめる。

「わかっているが……あの子一人を特別扱いするわけにはいかないんだよ」

机に肘をついた両腕の上に顎を乗せ、溜息をつく。
その様子に、まだ何か言い足りなそうであったシグナムも、言葉を飲み込む。
ここ三週間で、18回。アースラとフェイトが出撃した回数である。
いくら執務官が数の限られた人材とはいえ、この回数は異常だ。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/07(木) 09:23:50 ID:N6hbM0WM<>
「丁度、犯罪の多い時期と新しい遺跡の発見が重なっているからな……どこもこんなもんだ、執務官は」
「っ……しかし!!あの子はまだ、つい先月執務官試験に合格して資格を得たばかりだろう!!」
「ああ、そうだ。だが新米とはいえ、執務官は執務官だ。───少なくとも上層部はそう考えている」
「大した……平等主義だなっ!!」

吐き捨てるシグナムに対して、クロノもいくぶんは同様の気持ちはある。
彼女の──フェイトの兄として、あの子にあまり無理はさせたくない。
この二週間殆ど通えていない学校にも、行かせてやりたい。
シグナムが憤っているのは、はやてからそういった類の話を聞いているからだろう。
特別捜査官である彼女や、教導隊研修中のなのはだって同様に忙しくはあるはずだが、
ここまでの過密さではないであろうから。それほどまでに執務官という役職は、便利屋。
なんでもやらされる使い勝手の良いコマという側面が大きく、忙しい。
昨年までは彼自身もそうであったから、身をもって知っている。
せめて、2〜3日、フェイトに休暇を出してやることができれば。
運び込まれた本局の医療施設が、入院が必要というくらいの診断を出してはくれないかとすら思う。
しかし、兄妹ということを傘にフェイトを特別扱いするわけには、いかないのだ。
あくまで局内においてはクロノと彼女とは、上司と部下。
変なやっかみや風説を受けないためにも、そう割り切らざるを得ない。
クロノは机上の通話装置を操作して、医務局のシャマルへと繋いだ。

「シャマル、フェイトの具合は?」
『あ、はい。怪我は軽い打ち身や打撲だけなのですぐ治ります。ただ……』
「ただ?」
『疲労と、魔力の消耗が激しいです。完全に回復するにはできれば2,3日はゆっくり休んだほうが』
「……そう、か……すまない、わかった。目を覚ますまではそっちで休ませてやってくれ」
『はい、わかりました』

回線を切って、天を仰ぐ。
悪い兄だな、自分は。頭にあるのは自嘲ばかりだった。
整いすぎているほど整っている局の医療設備では、いとも簡単に肉体的ダメージは完治してしまうだろう。
加えてフェイトの魔力回復速度は、常人よりもかなり早い。大して長い時間は休むこともできまい。
元はといえば、長い間治安の悪化を放置していたとあるいくつかの次元のことも、
政治への介入はご法度と各次元国家の無理かつ急進的なロストロギア発掘方針を咎めなかったことも、
全ては管理局そのものに問題があるのだ。
そのツケを、まだ12歳の妹に払わせようとしているなんて。
ちらりと目をやると、シグナムが無言のままこちらをきつく睨んでいた。
睨まれて当然だと、クロノは思った。

*   *   *

フェイトは、眠っていた。
少なくとも今自分が見ているのは夢であるという自覚があるのだから、眠っているのは間違いない。
自分を、第三者の目で見ていた。
そこでの彼女は、バリアジャケットに身を包み、エメラルドのようなロストロギアと対峙していて。
今まさに封印しようとしているところだった。
ザンバーフォームに変型させたバルディッシュを天高く、持ち上げ。
振り下ろそうとした彼女の右手を、誰かが止めた。
驚いてその主を見る彼女に、フェイト自身もまた驚いた。
アリシアが。
アリシア・テスタロッサがそれはやってはいけないとばかりに彼女の手首を押さえて、
悲しげに被りを振っていた。
首を振って、呆然とするフェイトを残し消えていった。
夢の続きはなく。
フェイトはそれから、ただ深い眠りを貪った。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/07(木) 09:25:53 ID:N6hbM0WM<> *   *   *

「それじゃあ……フェイトちゃんのこと、お願いしますね」
「ええ、いってらっしゃい」

これから研修だというなのはは、そう告げて名残惜しそうに部屋を出て行った。
クロノからの通話が切れて、すぐだった。

「……ふう」

ぎしり、と椅子の背もたれを軋ませて、シャマルは体重を預ける。
部屋の隅に二つ設置されたベッドの片方には、金髪の少女が眠っている。
時空管理局第七医療班・主任───現在のシャマルの持つ肩書きが与えてくれた、
シャマルの専用の診察室にして仕事部屋だ。
はやてや守護騎士達に加え、今出て行ったなのはも頻繁に利用するが、
このところ群を抜いて利用頻度が高いのは、今まさにベッド上に眠るフェイト、その人である。

「治せるものなら、治してあげたいけど……」

あくまで自分にできるのは、消耗した魔力と、怪我の治療だけ。
それに後者はともかく前者は、できる限り自然に治癒させたほうが本人の身体にとっても負担が少ない。
加えて魔力が回復すればフェイトは疲労の残る身体を押して、任務に飛び出していってしまうことだろう。
医療に携わる者として、また彼女のことを親しく知る者として、それをさせるわけにはいかない。
怪我の手当てをしてしまったあとで彼女がフェイトにしてやれることといえば、
部屋のベッドを貸与して休ませてやることくらいであった。

「あとで、リンディ提督も来てくれるそうですから。ゆっくり休んでくださいね?フェイトちゃん」

応えるはずのない相手に対し語りながら、端末から彼女のカルテ、そして個人情報を呼び出す。
ディスプレーのないパソコンのようなそれは、シャマルの前に言われたとおりのものを映し出した。

「今月だけでもう、10回目だものね……」

フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。役職は執務官。
病歴なし。怪我による加療歴、多数。
その部分に今回の治療についてキーボードで書き込んでから、何の気なしに
シャマルはフェイトの経歴を見ていく。

「……え?」

ある一点まで遡ったところで、シャマルはあることに気付く。

「PT事件より以前のことが、全くない……?」

どういうことだろう、これは。
いつ、どこで生まれたのかも。実の父親の名前も無く。
彼女が現在の家族であるリンディやクロノと出会うきっかけとなったという事件、
それ以前のことが一切、フェイトの履歴からは省かれていた。

「意図的に、省いた?これを局に提出したのは母親のリンディ提督のはずだから、彼女が?」

よっぽど、隠したいことでもあったのだろうか。

「───あ。そういえば……」 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/07(木) 09:27:18 ID:N6hbM0WM<>
この前祝った誕生日のとき、はやてがぼやいていた気がする。
他の友人達の話題を振ったヴィータに対し、皆の生年月日を答えながら、
フェイトだけは何故だか教えてくれない、と。
シャマルもはやても、ハラオウン一家やなのはの教えてくれたこと以外を
詮索する気はなかったから、そのままにしていたのだけれど。
何か、過去にあったのかもしれない。
悪い癖だと思いつつも、少し興味が湧いた。

『シャマル主任、リンディ提督がお見えです』
「あ?え?ああ、はい。どうぞ」

慌てて端末の電源を落とし、オートロックされていた部屋の鍵を開錠する。
ほどなくして近づいてきた足音が部屋の前で止まり、自動ドアが横にスライドした。

「失礼しますね」
「ようこそ、リンディ提督」

入ってきたのはいつも通りの、柔らかい笑顔の女性だった。
鮮やかなグリーンの髪を、首の後ろで緩く結っている。

「どうです?フェイトの具合は」
「疲れて寝てますけど……大丈夫ですよ。大したことはありません」

はて、この説明を彼女にするのは何回目だったかな。
『大丈夫』、『大したことはありません』。
シャマルは既視感を覚える。それほど、彼女とはやりなれたやりとりだ。

「そうですか……じゃあ、目を覚ましたら連れて帰りますね。いいかしら?」
「ええ。どうぞ待っててあげてください」

壁に備え付けられたコーヒーサーバーから、紙のコップにコーヒーを入れて差し出す。
彼女が甘党だということは既に知っているので、スティックの砂糖もミルクのポーションも、
大量に。受け取ったリンディはそれらをすべて紙コップの中へと注ぎ込んだ。

「休ませてあげられたら、いいと思うのだけれど……ね」

椅子に腰掛けたリンディは、独り言のように言った。
今は皆、どこも忙しいのだから。
それはまるで、自分に言い聞かせているようであった。
母親でありまた、提督である自分が肉親の情にほだされることのないように律するための、自戒としての。

「……あの、リンディ提督?」
「え?……ああ、ごめんなさいね。そうよね、こんなこと言っちゃって……」
「いえ、そんなことはないです」

お聞きしたいことがあるのですが、とは言えなかった。
明かしたくないことがあるのなら、無理に聞く必要もない。
そう、シャマルは自分を納得させた。
何かを、見落としているような気がしながらも。
ふと思いついたフェイトを休ませる手段を彼女に提案する方向へと、
シャマルの心はシフトしていった。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/07(木) 09:56:06 ID:N6hbM0WM<> 久々のフェイト話です。
あくまでフェイトは人間、ならばリンディやクロノたちは
はやて達には彼女の生い立ちを言っていないんじゃないかと思ったわけで。
(聞かれればまあ言うとは思いますが)
その辺から出来たお話。

>>238
それでは、気になった点をいくつか。
>「フェイト…ちくしょう、クロノ、緊急事態だ!フェイトだけでも転送できるか?」
>「いまさら通信妨害…フェイトが撃たれるまではフリーにしておいて、こっちに警戒させなかったってのかよ?」
少し口調がアルフっぽくない気が。
>到達距離を大幅に犠牲にして〜少女独自のバリエーションだ。
まだ登場したばかりで「謎めいている」存在なわけですから、
本人が言うかあるいは解析した結果をクロノあたりに後々言わせたほうがいいのでは?
その点に少し違和感を感じました。

余計な上にすんげーえらそうなこと言ってるね俺orz
個人的には割と期待してます。頑張ってください。

>>4の422氏
墓穴掘りまくるなのは乙wwwwww
バカップルGJwwwww
ヴィータにはね、責められるより責める子でいて欲しいんだ(ぉ

>>ショタ関連についての皆様
書きたいものを書けばいいと思うんだ、うん。
ショタだろうとなんだろうと、作品に愛があれば無問題。 <> 238<>sage<>2006/09/07(木) 13:19:11 ID:7kT6KXRh<> 「そのまま、寝てな」
アルフは少女が動かなくなったことを確認すると、通路の奥、フェイトが消えた石室の方向に目を向けた。
通信妨害で、フェイトとの念話は通じない。使い魔としての精神リンクで、今だ健在であることがわかるだ。

自動追尾の魔力弾を、獣ならではの体力と強靭さで受けきったが、ダメージは大きい。
少女がフェイトやなのはに匹敵する強さかはわからないが、少なくとも魔法資質の大きさは、アルフとは比較にならない。
バインドで捕らえた際に押し切れなければ、間違いなく負けていた。
少女の防御力の無さに助けられたようなものだ。

「フェイト、今行くからね」
アルフは通路の奥に進むため、倒れた少女の横を通り抜ける。
だが、その時。
『physical heal』
少女の体を、鋼色の魔力光が淡く覆った。

「治癒魔法・・・まだやるのかい!?」
アルフは咄嗟に首をひねり、倒れているはずの少女へと視線を向けた。
少女は、無理矢理体を起こし、壁に背を預けながら、どうにか立ち上がっていた。
左手には、かつてリーゼアリア達が扮する仮面の戦士が使用したものと同系統の、魔力カードが握られてた。
おそらく、今の治癒魔法も、カードの魔力で発動させたのだろう。
状況を見て取ったアルフは、少女の足元が定まらないうちに攻撃を仕掛けようとした。
しかしその瞬間に少女は『狙う』視線をアルフに向け、同時に左手のカードを突きつけて牽制。
戦闘開始直後の魔力弾によるカウンターを思い出したアルフは、反射的に防御姿勢をとって足を止めてしまい、攻撃の機会を失した。

「・・・さない」
少女は初めて、アルフに向けて口を開いた。
「通さない。私の役目、だから・・・」

自分にダメージを負わせたアルフに怒りや憎しみを向けるわけでもなく、ただただ目的を遂げようとする目で、少女はアルフを見据えた。
「・・・!」
唐突に。
またもや、アルフは少女の中に、昔のフェイトの面影を見た。
ただ誰かのために、献身的どころか自己犠牲的なまでの行動を貫く心。
ぼろぼろになるまで傷つきながらも結果を出せず、自分の至らなさを責める姿。
感情を表に出さない昏い瞳。
戦闘魔導師としては、致命的にまで薄い防御力。
それを補うための、薄氷を踏むがごとき高速戦闘スタイル。
少女の今までのどんな些細な仕草や外見からでも、そこにかつてのフェイトを見出してしまい、アルフの心はひどく乱れた。
<> 238<>sage<>2006/09/07(木) 13:20:21 ID:7kT6KXRh<>
「…あたしの名前はアルフだ!」
アルフは、たまらなくなって叫んだ。
これ以上、目の前の少女に、昔のフェイトを重ねてしまう事が耐えられなかった。
彼女を『フェイトに似た少女』と、これ以上心の中で呼びたくはなかった。
「あんたにも名前があるだろ、教えろよ!」
つまりは。
この少女を呼ぶ際、フェイトのことを結びつけずに呼ぶ『名前』が必要だった。

その叫びに、何かしらのアルフの想いを感じ取ったのか。
それまで、徹底して張り詰めていた少女の気配が、わずかながら緩む。
少しだけ瞳に日常の色をうかべて。
「リトリア」
とだけ、少女は答えた。

『lightning bolt』
リトリアは、先程と同じく鋼色の魔力弾を浮かべる。
体力は戻り、痛みも抑えた。気持ちの切り替えも済んでいた。
使う必要のなくなった魔力カードを腰のホルダーに納める。
体力が回復するまでにアルフに攻撃された場合の切り札として、抜いていたものだからだ。
少女はすでに、元の戦うための表情に戻っていた。

『fire』
リトリアがアルフに向け、浮かべていた魔力弾を放った。
同時にアルフに向かい駆け出す。
先程の攻撃の際にも、アルフが内心で冷や汗を流した、フェイトにも匹敵する加速とトップスピードだ。

『blitz rush』
「!」
アルフの目の前で、光弾とリトリアの双方がさらに加速。
一瞬で距離を詰められたアルフは魔力弾をシールドでガードでするが、魔力弾がシールドにヒットした瞬間、同じ箇所をリトリアが魔力を乗せた蹴りで追撃。
二重の攻撃の負荷に耐え切れなかったシールドは瓦解し、その隙を突いてリトリアはアルフに突き蹴りのコンビネーションでラッシュをかけた。
名前を教えてやったのだから当然だ、と言わんばかりの、苛烈な攻撃だった。
「…感謝するよ」
だが、その打撃の嵐の中でアルフは不敵に、凶悪に笑ってみせた。
アルフはリトリアの連撃に強引に割り込むと、蹴りで無理矢理間合いを離す。
「これでこころおきなく、ブチのめせるってもんだ!」
戦闘開始直後のように、アルフは全力でリトリアに向かって突進した。
<> 238<>sage<>2006/09/07(木) 13:21:37 ID:7kT6KXRh<> リトリアは、突進からのアルフの拳をシールドで止めると、続けざまに逆腕で投網のようにバインドを放つ。
アルフは退がるのではなく横に回りこんでバインドの網から逃れると、回し蹴りから鉄拳の連撃を見舞った。
しかし、蹴りは器用に避けられ、続く拳はまたもリトリアのシールドに阻まれる。
「ここだ。バリアブレイカー!」
「!」
アルフはシールドに止められた拳をさらに捻りこみ、システムに介入。
打撃を止めるだけが目的だった単純な構成のシールドは容易に介入を許し、一瞬で破壊された。
シールドを破った勢いのままアルフは腕を伸ばし、リトリアの胸倉を掴むと、力任せに手近な壁に向かってブン投げた。
「でぇりゃああっ!」
「…く、ふうっ…」
受身も取れず、リトリアは一直線に壁に叩きつけられる。
「まだまだぁ!」
アルフはリトリアを放り投げた勢いそのままに、リトリアに向かって突進。全力で拳を振りかぶった。
シールドが間に合うタイミングではない。回避行動にも遅い。
逃げ場が無いことを察知した少女は覚悟を決めた。
「…」
無言で息を継ぐと、拳にそれとわかるほどに圧縮された、鋼色の魔力を注ぎ込む。
獣性をフルに活かしたアルフの拳と、魔力で打撃力を跳ね上げたリトリアの拳が激突した。
全力の両者の拳撃は、それぞれをものすごい勢いで反対側に弾き飛ばした。
リトリアはそのまま再度後ろの壁に叩きつけられ、アルフは同じ勢いで、向かい側の壁へと吹き飛んだ。

「うぅおぉおお!」
激突した壁から体を引き剥がすようにして、強引に立ち上がるアルフ。
間髪いれず無理矢理向かいの壁まで跳躍すると、まだ衝撃で体勢を整えきれていない少女に一気に体当たりする。
そのまま、その細い胴を腕ごと抱え込んで、全力で締め上げた。
想像を絶する圧力に、少女の肋骨と背骨が、一斉に悲鳴を上げる。

「くぅ…」
リトリアの顔が苦悶に歪む。
こと格闘戦においては、魔力差よりも骨格の差がものをいう場面が存在する。
この瞬間が、まさしくそうだった。
鋼色の魔力を解放し、その内圧でアルフの腕を引き剥がそうとするリトリア。
しかしアルフは自身の魔力で可能な限りそれを相殺しつつ、純粋な、圧倒的な腕力で締め上げる。
「あ、あああっ」
少女の悲鳴がさらに悲壮なものになる。
「名前の礼だ、殺しはしないさ。けど、腕と胴体の骨全部は覚悟しな!」
アルフが、止めとばかりにさらに腕に力を込めた。
<> 238<>sage<>2006/09/07(木) 13:23:27 ID:7kT6KXRh<> そんな中で、わずかだが、リトリアが魔力の放出密度を高めた。
拘束が緩むほどではないが、それでも少しだけ肉体的な余裕ができる。リトリアは肺に残った息吹を振り絞った。
「…アームズ、ラック…」
どうにか、それだけを呟いた。
「私に…兵装、を」

『o.k』

リトリアの右手にある、黒い指抜きのグローブが応答する。
革製の外見の手袋は、金属製の甲冑の小手へと変形。右腕を肘まで覆うガントレット形態に移行した。
「どんな隠し球があるのか知らないけど…いまさらこの体勢で使いきれるもんかいっ」
アルフの言うとおり、少しでも魔力の放出を緩めればそのまま潰されかねないこの状況で、満足に魔法など使えない。
使えたとしても簡易な魔法だけであり、ろくに圧縮されていない魔法など、攻撃魔法だろうがバインドだろうが、この現状を打破し得ない。
また、例えデバイスでの物理攻撃を狙っても、両腕を締められた状態では的確にアルフを狙えないのだ。

『load cartride』

少女に応じたデバイス音声の意味に驚いて、アルフは思わず顔を上げた。
続いたのは、まぎれもない、カートリッジの装填音。
同時に高まる、手甲型デバイスの魔力。
「な…カートリッジシステム?」
そして高められた魔力は、あらかじめデバイスにセットされていた魔法を起動させた。

『over clock』

魔法の発動に合わせて、リトリアを取り巻く気配が一変する。
今までアルフに抵抗するため無作為に放出されていた魔力が、明確な指向性をもって圧縮され、リトリアの肢体に作用したのだ。

みしり。

アルフは、目をみはった。
同時に、リトリアに起こった変化をそこから読み取った。
渾身の力で締め上げているアルフの腕が、少女の細腕の力に屈し、逆に引き剥がされはじめたのだ。
「肉体的ポテンシャルの…爆発的な増強かい…」
リトリアはさらに力を込めてアルフの締め付けを完全に切ると、間髪入れずにアルフの胸倉をつかむ。
先程とは逆に、そのまま少女がアルフを全力で投げ飛ばした。
アルフは壁面に激しく激突し、一瞬、意識が飛ぶ。
そして。
リトリアは、身を低くしてアルフの胸元に滑り込んだ。

「アームズ・ラック、カートリッジ・リロード。肘部ブースター開放」
『meteor impact,ready』
零距離で腰を落として右拳を引き、左掌をアルフに突きつける。
再装填されたカートリッジが火を噴き、右拳は息が詰まるほどの圧縮魔力で覆われた。
驚愕するアルフの懐で、瞬く間にリトリアは必殺の一撃を組み上げていく。
『fire』
「メテオ・インパクト!」
瞬間。少女の右手甲の肘部分からが推進剤が激しく噴出され、右拳は文字通り爆発的に加速される。
極限まで高められた肉体的ポテンシャルにより、濁流のごとき勢いで跳ねようとする右腕に振り回されることなく、体全体で理想的な攻撃モーションを描ききって。
その破壊力は、余すことなく目の前のアルフに叩き込まれた。
<> 238<>sage<>2006/09/07(木) 13:27:53 ID:7kT6KXRh<> 今回は以上です。

>>640
違和感がありましたか。
キャラの把握がなっていなかったようです。
文体のこととあわせて、注意してみます。
ありがとうございました。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/07(木) 23:21:41 ID:F8u2e8P3<> お初です
ネタ投下します

満天の星空を流れていく星、窓辺からそれを見上げる男の表情は、何処かかなしげだった。

 「すまないが地下に行ってワインを一つ、持ってきてはくれないか?」
男はそう言って、傍らに佇む女性に指示を出した。
 女性は頷き地下のワインセラーへと降りていく。
 「また、儀式が始まるのだ」そう呟く女性
 悠久とも想える時の中で、幾度となく繰り返されてきた儀式
 友を送るための古よりの儀式、これを繰り返す度にあの人は何を想うのだろうか?
女性の顔は」憂いに満ちていた
 やがて女性は目的のワインを見つけ、小さく呪文を呟いた「・・・・・」
詠唱が終わるとワインは鈍く輝きを放つ、時間停止の魔法が解除されたのだ
 悠久の時を越え封印が解かれたそれには、小さな文字で書いてあった
 
 「無限の咎人より、夜天の王に贈る。君が旅より帰るなら、その祝いに共にこれを飲まんとす」

 それを持って女性は、ワインセラーを後にした



 封印を解かれたワインは造られた当時のまま、芳醇な香りと味わいがあった、
男はそれをグラスに注ぎ、一息に飲み干した
 そして家を出て満天の星空へと、ワインを高く放り投げ呪文を詠唱した
詠唱が終わるとワインは、青い光に包まれ星空の中に溶けていった
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 00:30:36 ID:aR38ReLz<>  儀式が終わると、男は女性にこう告げた
「明日、少しばかりここを離れる、悪いがついてきてはくれないか」
 女性は「はい」と短く返した。
 男は更に、他の女性たちにもこう継げた「お客さんの世話を頼むと」
それを聞いた女性たちの顔に、不満の色が現れる。
男は取り繕うように「お土産を買って帰るから」と
 お土産の声を聞いて、どうやら女性たちもしぶしぶ納得したようだ。
 しぶしぶ納得する女性たちを見て、男の顔は、これだから女は困ると言いたげだった。


ー海鳴市図書館

 夜天の王、八神はやては守護騎士シャマルを連れて、図書館を散策していた。
 あの事件以来、身の回りに起こった事態に大忙しで、ゆっくりと趣味の読書が
出来なかったためである
 「シャマル、うちは本を探してくるさかいに、ゆっくりしといてや」
 シャマルと呼ばれた守護騎士は、主を見送り物思いに耽っていた。
 今の主に、召還され平穏に暮らしてきた日々、主のために戦いそして手にした今に。

 守護騎士が物思いに耽っている頃、主である八神はやては、戦慄に包まれていた。
いつの間にか結界に閉じ込められていたのである。
 守護騎士との念話も通じず、身動きが取れないでいた。
 「まさかなあ、こないな所で襲われるとは、シャマルと連絡取れへんし、しゃあないな、うちが
一著相手するか」自らのデバイスを手にし身構える少女に、男の声が優しく響く
 「怖がることは無い、少し君と話がしたいだけだから」と、その声を聞き安堵する少女
少女の前に男が現れた。
 男は自らをアバントと名乗り、古い友人からはやて宛ての伝言があると言った。
その伝言とは
 「あの子を、闇より救ってくれてありがとう、きっとあの子も幸せだった」
 
 はやては理解した、この伝言は誰からのものかを、そして男は、一冊の本を手渡した。
そして男は少女の前から消えていった、と同時に結界も消えていった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 01:05:46 ID:aR38ReLz<> ー夜、八神家はやての部屋
 少女は」昼間男に渡された本を、手に取っていた。
そしてその本を開こうとした時、少女の脳裏に見慣れない風景が飛び込んできた。
 それは守護騎士たちと男が旅をしている様子だった。明るく笑いながら旅する一行
その男の手には今は無き夜天の書、少女は想ったこれは記憶だと、夜天の書が夜天の書として
使われていた時の、最初の主とのもっとも幸せだった時の、夜天の書の記憶
 すべてを見終えた少女の前に、その本は真っ白なページを見せていた。
 その本を見て少女は、自分も書き連ねていこうと想った。守護騎士」たちとの日々を
いつの日か皆で笑いながらこれを読む時まで。




初めてSSを書いてみました、至らない点がありましたら、ご教授ください <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 01:11:30 ID:NnoTZZqa<> とりあえず、書きながら投下よりも、メモ帳かなんかに書き溜めておくのがベターかも <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 02:00:56 ID:3EpQa/T1<> >>304
ネタなのかSSなのかはっきりしてほしい。
SSなんだとしたらタイトルや「END表示」くらいはあって当然じゃないのか?
初投稿とはいえこれくらいは投稿の基礎として、ログ読めば気付きそうなもんだと思う。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 03:38:44 ID:TRo+8+km<> >>308
まあまあ、もう少し口調は柔らかく…言いたいことは大体同意だけどね <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 06:41:09 ID:VmjNcHgD<> ー海鳴市図書館

長音記号で書くべきじゃない。書くなら

−海鳴市図書館

でしょう。何故長音記号なんだ?
最初にネタ投下といいつつ、最後にSSとはこれいかに。
どっちを書いているのか、本人は把握していないのか?
書き方については本人のスタイルなのであまりとやかくいわないが、
句読点の基礎は勉強した方がいい。
それと、市販の小説と自分のSSがどう違うのか、
比較した上で推敲した方がいい。
感想は、内容云々より「読みにくい」。
タイトルの有無はどうでもいい。
<> 92<>sage<>2006/09/08(金) 08:04:15 ID:enmskZnp<> みなさん、お久しぶりです。
誰?と言う貴方。始めまして。

というわけでリハビリを兼ねて書き上げた、隣のシャ○さんをお楽しみください。





楽しんでもらえたらいいな <> ハンティング!<>sage<>2006/09/08(金) 08:05:37 ID:enmskZnp<> 「な、なんだこれは!?
 ヴォルケンリッターの一員、盾の守護獣たる俺ことザフィーラが目を覚ましてみれば、
 見知らぬ部屋の見知らぬベッドに寝かされ、見知らぬ天井を眺めているのは何故だ?
 しかも手足を金属製の鎖につながれ、まったく身動き取れない状況ではないか!
 はたしてこれは一体どういう陰謀か?シ○ッカーか?
 今から俺は改造手術を受けて、仮面ザフィーラになるのか?
 しかし仮面をつけて本名を名乗るというのは、いろいろと問題なのではなかろうか?」
「ふっふっふっ、やっと起きたようだな、蒼き狼ザフィーラ」
「お、お前は謎の仮面戦士!その正体はグレアム元提督の使い魔、リーゼ姉妹!」
「ふっふっふっ、その通りといいつつ変身をとく私」
「貴様、やはり我らをいまだにねちっこくねばっこく、恨みつらみで浪花節なのか!?」
「それは誤解よウルフガイ。なぜならこれから貴方が味わうのは、苦痛ではなく快楽。
 場合によっては苦痛を味わう事になるかもしれないけど、それも気持ちよくなるはずよ」
「どういう意味だ猫姉妹?」
「鈍い男ね、つまりエロい女をメス猫と呼ぶのは何故かと言うことを、そのボディに、
 正確にはその下半身に、レクチャーしてあげようって企画なのよ。企画なのよ」
「何故二度言う?それはともかく、この俺の貞操を貴様達にくれてやる気は無い!」
「ふっふっふっ、残念ながら貴方の意思は尊重されないわ」
「何!?では俺の身体だけが目当てだというのか?」
「イグザクトリィ(その通りです)!」
「言いきった!?しかし俺のマイサン。我が息子が、貴様如きに自由自在にエレクチオン
 できると思わぬことだな」
「大した自信ね…でも数々の初物を、卑猥なテクニックでいただきますしてきた、私達の
 テクニックをシュガーとは思わないことね!」
「ではサッカリン!?」
「サッカリンでも果糖でもないわ。さあそれではうまみ成分をじっくりと味わってもらう
 と言いつつズボンをパンツごとズシャー!そしてポロンとまろびでたモノをバクゥ!」
「ゾイドー!!」


「という感じでいきたいんだけど」
「どう思う?」
リーゼアリアと、ザフィーラに変身していたリーゼロッテがシャマルに問いかける。
「どう思うって言われても…とりあえずザフィーラは、そんな愉快な言動はしないと思う」


<> ハンティング!<>sage<>2006/09/08(金) 08:06:56 ID:enmskZnp<>


「まあ、ソレはおいといて」
「実際どうやって、その状態にもっていくのかが今回の議題なのよ!」
時空管理局の数ある会議室の一つに、グレアム元提督の使い魔たるリーゼ姉妹と、
「と、言われてもねぇ…」
ヴォルケンリッターの一員たるシャマルが集まっていた。
どうでもいいが、空きがあったとは言え、簡単に会議室を占領できたのは、リーゼ姉妹の
長年にわたる働きによって、いろんな人間の弱みとか弱みとか弱みを握っている為である。
管理外世界の人間が、唯一人でやってこれたのは、このような涙ぐましい努力があったのだ。
ちなみにシャマルも、いつトカゲの尻尾きりにされるかもしれない、自分達の微妙な立場故、
いろんな人間の弱みとか弱みとか弱みとか、上は裏帳簿から、下は提督のSM趣味まで幅広く
蒐集していたりする。

それはさておき、何故このようないきさつになったのか?
三行で説明すると、

ザフィーラのチ○コがでかいそうだ
一本いっとく?
いっときましょう!

そんな感じ。

「ザフィーラって一応狼じゃない?野生の本能って言うの?寝てても危険を感じると
 すぐに起きちゃうのよねぇ…」
ため息をつきながら答えるシャマル。
「じゃあオーソドックスに一服盛る?」
「あ〜、駄目駄目」
パタパタ手を振ってリーゼアリアの提案を否定する。
「ザフィーラって私達の中で盾の役割ってことになってるでしょ?主様の食べ物に毒が
 入れられた時を考えて、臭いですぐに気付くようになってるのよねぇ…」
再びため息をつくシャマル。
「いっその事ストレートに夜這いでもしたら?」
シャマルの提案にリーゼ姉妹の顔が曇る。
「ソレはもうやった…」
「へ?」
思わずぽかんと口を開けてしまったシャマルに、二人が気まずそうに答える。 <> ハンティング!<>sage<>2006/09/08(金) 08:08:32 ID:enmskZnp<> 「だってさぁ、女の中に男がひとりーって状態で、なーんにも無いって事もないでしょ?」
「いや、えーと…」
「彼の方からじゃなくても、他のヴォルケンメンバーからとか?」
「そ、それは…」
「ああ、そういえば貴方は彼のこと、どう思ってるのかなぁ?」
「おー、それは是非聞いとかないとねぇ」
「え?え?」
「「さあさあさあさあさあ!」」
気付けば二人に詰め寄られて、部屋の端まで追い詰められているシャマル。
「そ、そりゃぁ…まぁ…その…少しはね、いいかなーなんて…」
「「おー!!!」」
頬を朱に染めながら答えたシャマルを、二人がはやし立てる。
「ほ、ほらやっぱりね。長い事一緒にいたりすると、いろいろあって、いろいろなのよ」
「で、で、実際どうなの?こう、1回ぐらいはやっちゃたの?」
「い、いや、だってね、やっぱりこう、断られて気まずくなったらキツイじゃない?
 OKされても、ヴォルケンリッターの関係が壊れたらやだなーとか」
「あー、まぁ、嫌でもずっと一緒なわけだしね…」
「そ、それに今更って感じもあるし…」
「いいじゃんいいじゃん、せっかく自由になったんだし。当たって砕けちゃえ!」
「ちょっ、ちょっと、もう…だいたい、自由って言うなら、これからもっと素敵な出会いが」
「いやいや、幸せの青い鳥はすぐ近くにいるものよ。駄目で元々、思い切ってアタックしてみたら?」
「だーかーらー…って、なんか二人とも、私がふられるって事前提に考えてない!?」
「そ、そんな事は…」
「無いわよねぇ…」
「もう…だいたいそういう二人はどうなのよ?つまみ食いもいいけど、本命とかいないの?」
「えーっと、そういうのは…」
「ま、アリアはにがーい思い出があるからねぇ」
「え、何々?」
「ちょっとロッテ!」
「あのね…まだアタシ達が使い魔になりたてのころなんだけどね」
「うんうん!」
「ちょっとロッテ!そういう貴方だって、第3艦隊の」
「わー!わー!わー!」
「なーに?そこらへんも詳しく聞かせてもらおうかしら」
「いいわよー」
「あ、アリア、私が悪かったから!」
既に最初の議題は因果地平の彼方。3人はそのまま甘酸っぱい恋の話に花を咲かせたのだった。


<> ハンティング!<>sage<>2006/09/08(金) 08:10:30 ID:enmskZnp<>

1週間後

「こんばんわー」
「おじゃましまーす」
深夜、八神家に忍び込む二つの影。説明するまでも無いが、リーゼ姉妹その人たちである。
「さてさて、首尾よくいってるかなー?」
今この家にはターゲットの男と、内通者しかいないため声を潜める事もなく、目的の部屋に
2人は進み、ついにドアの前までたどり着いた。
「いよいよねー」
「それではー」
「「いっただっきまーす!!!」」
勢い良くドアを開けて二人が見たものは、

「えーん。ごめんなさーい」

正座をさせられ、足の上に重りを置かれた彼女達の協力者であるシャマルと、

「………」

その隣に、無言で立っているザフィーラであった。


<> ハンティング!<>sage<>2006/09/08(金) 08:11:26 ID:enmskZnp<>

数時間前

「ねぇねぇ、ザフィーラ。これ作ってみたんだけど…」
「むぅ…」
野菜の胡麻和えらしきものを差し出されたザフィーラの表情が曇る。
なぜならシャマルの料理は一定の確率で、とてもファンタジックな味わいになるからである。
「はい、あーん」
「………」
一瞬ちゅうちょした後、ザフィーラはいつものようにその口を開こうとする。
見れば味に不安があるのか、箸に摘まれた野菜が緊張で揺れている。
「!?」
開きかけた口を閉じるザフィーラ。
「あれ、どうしたのザフィーラ?ほら、あーん」
「………」
口を開けるように促すが、ザフィーラの口はまったく開こうとしない。
「も、もしかして味の心配してるの?大丈夫よ、今回は自信があるんだから!」
しかしそれでもザフィーラはまったく反応をせず、シャマルをじっと見つめている。
「シャマル…」
「な、何?」
沈黙を続けていたザフィーラが、急にシャマルに問いかける。
「何か変わったものを混ぜなかったか?」
「か、変わったものって?べ、別に普通の材料しか使って…」
「ではその妙な臭いはなんだ?」
「そ、そんな!無味無臭の薬のは…ず…」
己の失言に、見る見るうちにシャマルの顔が青くなっていく。
「ほう、やはりか」
人間形態になり、シャマルににじみよるザフィーラ。
「ど、どうして?」
震えながらなんとか声を絞り出したシャマルに、ザフィーラが答えた。
「不自然に緊張していたからな…」
風の癒し手シャマル。
彼女は己の料理に疑問を持つことがないゆえ、味見すらしないのである。
そんな人間が、緊張しながら料理を差し出す事など、あるわけが無いのであった。


<> ハンティング!<>sage<>2006/09/08(金) 08:13:53 ID:enmskZnp<>


翌朝

「ただいまー」
「おかえりなさいませ、我が主」
友人の家に一泊していたはやてを、玄関で出迎えるザフィーラ。
「あれ、シャマルはどうしたん?朝ごはんの用意でもしとるんかな?」
ヴォルケンリッターのメンバーは、彼女が帰宅すれば必ず出迎えようとするはずなのだが。
「いえ…少し手が離せぬ状態なので」
「ふうん?まぁええか。それならはよう朝ごはんの用意せんとな」
そう言いながら台所へ向おうとするはやて。
「少しお休みになられた方が…」
「ええってええって」
居間を横切ろうとした時、何気なくはやてが部屋の中を見ると、シャマルとリーゼ姉妹が
正座をさせられている光景が目に入った。無論、足に重りを乗せられている。
「なんやあ、リーゼさん達もきとったんや。3人とも最近ずいぶん仲ええなぁ」

           「「「って、リアクションそれだけ!?」」」

<> 92<>sage<>2006/09/08(金) 08:24:26 ID:enmskZnp<> はい、以上です。
3期も決まってめでたい最中に、こんなもんですいません。

それにしても散々言われましたが、6年後とはずいぶんと思い切った決断をしたものですね。
新キャラでロリ分を補給するのでしょうか?
それともヴィータがかってない活躍を!?
いずれにしろ、ザフィーラの出番は悲しいほどに少なくなるんでしょうけどね…
ザフィーラ、士郎さん、執事鮫島がメインの話をしてくれないものでしょうか?
無理ですね

では、感想はまた今度の機会と言う事で、失礼いたします。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 16:33:54 ID:gMZCh5pz<> GGGGGJ!!!! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 17:13:43 ID:hpUzSzQH<> 妄想シーンのザフィーラ吹いたw <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/08(金) 17:43:32 ID:kdJMtNIx<> 92氏GJです、リーゼ姉妹の芝居に吹いたw
隣のシャ○さんは読んでて楽しいのでこれからもドンドンお願いします <> 92<>sage<>2006/09/08(金) 19:06:47 ID:toZRkqyF<> しまったぁ!抜けがあった…

というわけで>>313>>314の間に以下の文が入ります。ごめんね。


「先週、仮眠室で寝てるときに二人で迫ったんだけど…」
「完全に無視されちゃたんだよねぇ…」
今度はリーゼ姉妹がため息をつく。
「ひょっとしてあいつって立たないんじゃないの?」
「もしくはホモとか…」
「そんな事は無いと思うけど…」
「じゃあさぁ、あんた達に手をだした事ってないの?」
「へ?」
予想外の質問に、再びぽかんと口を開けてしまうシャマル。

<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/10(日) 22:50:15 ID:DXW+x2ag<> おお、しばらく来てないうちに色々と
みなさんGJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/11(月) 19:29:36 ID:Po5bh9us<> GJ <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/11(月) 19:54:34 ID:5MZTv8jR<> 魔法少女リリカルなのはA’s −提督の受難−

第一話 追い出されて、転がり込んで。


───ピンポーン。

とある休日の午後。
ユーノ・スクライアは呼び鈴の鳴る音で目を覚ました。

「ふぁい……?」

むくり、と起き上がり辺りを見回す。目も口も半開き。頭は寝癖でぐちゃぐちゃ。
多分今の彼の顔をなのはが見たらいくら長い付き合いとはいえドッ退きするであろう。
夕べも遅くまで仕事をして帰ってきて、寮の自分の部屋に帰りつくなり
倒れこむようにして眠っていたのだから、起こされてすぐに脳が回るはずもなかった。
正直言って、まだ寝足りない。もっと布団にもぐりこんでいたい。
むしろ起こすな。

───ピンポーン。

「──んがっ!?おお?お?」

再び鳴ったインターホンの音に、ようやくユーノはびくりと反応し状況を理解する。
危うくバランスを崩してベッドから転げ落ちるところであった。
枕元の眼鏡をとって寝間着姿のままで玄関へと向かい、返事をする。
一体誰だ、こんな休日の昼間に押しかけてくる暇人は。
新聞だったら無限書庫でいくらでも読めるから間に合っているぞ。
安眠を妨害されたことに対して、不快を感じながらサンダルをひっかけた。

「はい、どちら様でしょう?」
「あ、ユーノか。僕だ」
「……クロノ?」
「そうだ。開けてくれないか」

なんでクロノがうちに?と不審に思いながらも、ユーノは言われるまま鍵を開けた。
ノブを捻り、押し開く。一体全体、人の睡眠を邪魔して何の用だ。
事と次第によっては無限書庫の最下層にバインドして放置するぞ。
犬猿の仲のユーノだからこそ、天下の時空管理局提督に対し思えることだった。

「……や、やあ」

そこには案の定、声の通りに腐れ縁の友人が突っ立っていた。
ただ、いつも見る腹立たしいほどきちんとした身なりはどこへやら。
その身につけた服は微妙にあちこち焦げており、乱れていて。
なにより背中には大きく膨れあがった風呂敷包みを背負っていた。
吐く息からは僅かに酒の匂いが漂ってくる。

「……泥棒でもしてきたの?」

あまりにその格好がアレだったので、ユーノは思わずそう訊いてしまった。
クロノは、がっくりと肩を落とした。

*     *     * <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/11(月) 19:55:41 ID:5MZTv8jR<>
「はぁ!?じゃあ何?家追い出されてきたの?フェイトに?」

とりあえず、ということで。
交替でシャワーを浴びて人心地ついたところでクロノに事情を訊いて、
ユーノは呆れた。時空管理局提督ともあろう人間が妹に家から叩き出されてくるなんて。

「いや……まあ。確かに、僕のほうに非があったのは事実なんだが……」

ちゃんと拭け。髪から水が垂れてるだろ。
そう言ってユーノが投げてよこしたタオルで頭を拭きつつ、クロノが説明していく。

なんでも昨日、久々に早く帰れそうだったので、家にその旨連絡しておいたらしい。
母親のリンディ提督は出張でいなかったけれど、フェイトがいたので夕飯を作って待っている、と言われた。
仕事自体は、一応予定していた通り早めに終わったのだが。
帰宅の途に就こうかと執務室を出たところで、支局に異動した同期の友人に偶然会い話し込んでしまった。
せっかくだし、少しだけということなので、飲みに付き合わされたのだが思いのほか飲みすぎてしまい、
酔い潰れて気がつくと朝だった。

「あー……。ん?でも待てよ。たった一回朝帰りで約束破ったくらいであのフェイトが、叩き出したりする?」
「……実を言うと、一回じゃないんだ、これが」

ぶっちゃけるとこの二週間ほど、碌に家に帰っていない。
それだけなら仕事だとフェイトも納得してくれただろうが、
残念なことにその仕事のことごとくが各次元世界のお偉いさんたちとの会食や接待というもので。
突然予定が入ったとしても、まだなり立てで新米の若造提督に断ることもできず、
その度に家でフェイトやエイミィが作って待っている食事のほうをキャンセルしてしまっていたのである。
プラス普通の業務も残っているから終了後に家に戻ることもできず、ほとんど泊り込み。

「……そりゃ、フェイトも怒るだろう。君が悪いよ」
「ああ……朝家に戻ったら鍵閉められて、結界まで張られてた。無理矢理入ろうとしたらプラズマスマッシャー撃たれた」
「うわ……」
「もう一度挑戦したらファランクスシフト浴びせられた。フォトンランサーじゃなくプラズマで」
「……はは」

道理で、クロノの全身が焦げていたわけである。
ひょっとして、殺傷設定でぶっぱなしたんじゃないだろうか、フェイトは。

「んで、この着替えやら何やらが一式入った風呂敷包み投げつけられてそれっきりだ」

片手にザンバーを持ってたようにも見えたけどな。
ぽむぽむ、と膨らんだ風呂敷包みを叩き溜息をつくクロノ。
いい感じで肥大したそれは、実に小気味よい音を返す。

「……リンディさんは?」
「昨日から行ってる出張で、来週にならないと帰ってこない。戻ってきても十中八九フェイトの側につく」
「エイミィさん」
「電話したら『クロノくんが悪い』とだけ怒鳴られて切られた」
「……あはは……。どうすんの?」 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/11(月) 19:57:30 ID:5MZTv8jR<>
もう、笑うしかない。
あとは残るは使い魔のアルフだが、
アルフは元からフェイトの味方だから、とりなしてもらえるよう期待するのは論外だ。
多分、頭からがぶっといかれる。がぶっと。
ハラオウン家においてクロノはまさしく、四面楚歌だった。
魔導士としての実力がいくらあろうとも、
女系家族の唯一の男という立場は、あまりに脆く弱い。

「……ほとぼりが冷めるまで、置いてもらえないだろうか……」
「…………マジ?」
「うん、かなりマジ」

確かに、切実な問題ではある。
アレックスたちに頼むという選択肢もあるのだろうが、
直属の部下にはこういうことは言いにくかろう。
幸い、この管理局の寮は男二人くらいが一つの部屋に住んで住めないこともないが。
若干狭苦しくはなるが、気になるほどではない。

「なるべくはやく、フェイトに機嫌を直してもらうように」
「……努力します」

一応、交渉成立。
この居候にとっとと出て行ってもらうためにも、なのはにでも話を通しておくべきだろうか。
彼女やはやて達からとりなしてもらえれば、フェイトもあるいは───……。
と。いくつかの案を試しに練ってみるが、ひとつ大事なことに思い至る。

「───あ、ちゃんと食費は払ってもらうよ」
「……はい」

力関係はこの際、はっきりさせておかないと。
その辺、ユーノはきちんとしていた。
クロノが情けなく返事して、了承。拒否権などそもそもない。
かくして、男二人の奇妙な共同生活がはじまった。

「そうそう、夕方から僕なのはと出かけるから。あるもので食べておいて」
「っていきなりその仕打ちか!?」
「いいんだよ?出てってもらっても」
「う、ぐ」

さっそく、家主と居候の上下関係が発揮される。
つーか提督弱っ。部下達にはこのような惨状、とても見せられない。
でも、ここは耐えろ。
拳を握りしめて、精一杯自分にクロノは言い聞かせる。

「返事は?」
「……いってらっしゃいませ」
「よろしい」

それでいいのかクロノ・ハラオウン。
さっそくクロノは、暗澹たる気持ちになっていた。

───つづく <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/11(月) 20:04:37 ID:5MZTv8jR<> 無性に馬鹿馬鹿しい短編が書きたくなってやった。
後悔はしていない。全3〜4話くらい。

>>238
いえいえ。頑張ってくださいね。

>>304
ssというか、ネタの段階ですね。

>>92
いつまでも懲りることのないシャマルさんに乾杯www
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/11(月) 22:41:31 ID:MXOPZpn2<> 管理局の秘密拷問室。
悲鳴と絶叫が反響する、その石壁の奥。
無表情な男に抑えつけられ石床に這うなのはの眼前で、もう一人の男が笑っていた。
フェイトを背後から犯しながら。

少年のようなフェイトの尻に、肥満した男の腰が叩きつけられる。
その度に少女の悲鳴があがり、純潔が失われた血の雫が石床に跳ねる。
なのはの猛獣のような怒号があがるが、その度に背後の屈強の男に顔面を床に
叩きつけられ、折れた歯と血反吐を吐く。
それでもなのははフェイトを救おうと激しくあらがい、顔面を朱に染めていく。
「なのは、おまえの可愛い女の味はなかなかだよ」

男がなのはを見下ろしながら笑う。
「それともうらやましいのか? フェイトに先を越されて? よし、じゃあこうしてあげよう」
男が、フェイトの両ふとももに太い手をかけ、持ち上げる。
「やめて!、それだけはやめて!!」
フェイトが半狂乱となって暴れるが、両腕を縛られて身動きができない。
男は身体を回転させ、なのはの顔の前で、少女の細い両足をむりやり開かせる。
「よく見ろなのは、愛しいフェイトが大人になったところだ」

「見ないでなのは!」
フェイトの絶叫があがり、少女と男の血まみれの結合部分がなのはにさらされる。
男の杭はその間も背後から抱えた少女の中へと打ちこまれ、そして男が痙攣する。
白い汚液が少女の股間から滴り、床の上の破瓜の赤に混じる。

フェイトの双眸から涙が枯れ、そして瞳からは光が消えた。
「殺して・・・・・・・・」
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/11(月) 23:29:20 ID:3xNXQBg7<> >少年のようなフェイトの尻に、

!? <> 名無しさん@ピンキー<><>2006/09/11(月) 23:58:03 ID:YSlgsYPB<> 「まだ」少年のような、だろうな。多分 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/12(火) 03:52:28 ID:/PVNREze<> >>328
わかってないなあ、わかってねぇよ640氏。
なぜそこで「クロノとユーノの料理談議」をやらないんだっ。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/12(火) 22:58:54 ID:YW8zuj19<> >>640氏GJ!
リンディさんは立場上、嫁の味方をしてたほうが平和だよなぁ。
…いやフェイトにせよエイミィにせよ。
家庭との両立に関する要領が悪い辺り、なんかクロノくんっぽかったです。
ところで今回のお話における、なのはさんとユーノの関係はどうなっちょりますか。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/12(火) 23:03:16 ID:X1l6MvYD<> >>640
何故出かけられる前に押し倒さないんだクロノ! <> 司書記録<>sage<>2006/09/13(水) 11:30:33 ID:xZxHO9NQ<> 9,13 白い病室にて

フェイトが狂ってしまった
原因は過剰な虐待による虐めらしい・・・
なぜ?
目の前を少し焦点のずれた目で
床のタイルの上を唾液で汚しながら這いずるフェイト
一緒になのはを連れて来てしまった事を激しく後悔する。

僕よりも驚愕しているクロノ
そしてこの中で最も目の前の光景を否定しているのは、なのはだろう。
這いずるフェイトになのはが駆け寄りそして僕とクロノも近づく
「フェイトちゃん、しっかりして!」
「・・・・・フェイト・・・・・」
なのはとクロノの呼びかけにフェイトは反応すらしなかった
自らの唾液に染まった床をにやにや笑いながら舐め回していた

話を聞くと、フェイトは小学校に転入した時虐められていたらしい
その虐めた少年達が調子に乗って強姦し先輩の中学、高校生の奴等に売るような事をして
フェイトは何度も呼び出され犯されていたらしい・・・
許せない
しかしフェイトが呼び出され犯されている事に僕もクロノもなのはも気づかなかった
当然だ
フェイトは自分が犯され続けている事を知られまいと必死で自分を取り繕ったのだから

なのはが泣きながらフェイトの体を揺さぶる
悲痛ななのはの泣き声はじわじわ体を蝕んでいくように僕を苦しめる
しばらくしてクロノが怒りに震える感情を、押し殺しながら言った
「・・・・・・・二人にしてあげて」
ドアを開けてクロノが部屋を出て行く 、その瞳には憎悪と狂気を宿らせていた・・・

僕もそれに続く
一瞬後ろを振り返り・・・自分を激しく罵る
なのはがフェイトに抱きついているのが見えてしまった
この場所から早く逃げ出したくてドアを閉める
フェイトの狂声となのはの嗚咽が耳に呪いのようにへばり付いていた
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/13(水) 12:27:36 ID:QK0xIkWo<> 鬱 <> 238<>sage<>2006/09/13(水) 15:34:41 ID:kDw/X2fc<> 「メテオ・インパクト!」
瞬間。少女の右手甲の肘部分からが推進剤が激しく噴出され、右拳は文字通り爆発的に加速される。
極限まで高められた肉体的ポテンシャルにより、濁流のごとき勢いで跳ねようとする右腕に振り回されることなく、体全体で理想的な攻撃モーションを描ききって。
その破壊力は、余すことなく目の前のアルフに叩き込まれた。

かに見えたが。

『arc shield』

その寸前、流星のようにアルフを撃ち抜こうとするアームズ・ラックに割り込むように、青い半球状のシールドが現れた。

カートリッジからの魔力を拳に圧縮し、推進剤で加速させたアームズ・ラックの一撃は、通常、生半可なシールドなどものともせず貫通する。
しかし、半球状のシールドに浅い角度で接触『させられた』拳は、その表面を滑り、削るだけで、そのまま外側へとそらされてしまう。
直後、さすがに外圧に耐えかねた半球状シールドは破壊されたが、その中心に居たアルフには、拳は触れる事すらできなかった。
「…!!」
完全に拳をすかされたリトリアは、勢いで前につんのめるが、即座に推進剤の放出をキャンセルすると、ダンサーのようにくるりと身を翻して体勢を保持。
突然の乱入者に驚いた様子で、一気に飛び離れて間合いをとった。

「ち…今日はとことん気に入らない日だよ。まさかあんたに助けられるとはね、クロノ!」
「それは、悪かったな。次からは気をつけるよ」
アルフの悪態に応じながらも、厳しい表情のまま、少女から視線を外さないクロノ。
クロノの周囲には、転移魔法陣の残滓らしい光の粒子がまだ粉雪のように舞っており、転送直後の行動であった事が理解できた。
「時空管理局執務官のクロノ・ハラウオンだ」
デュランダルを構え、執務官としての厳格な口調で、クロノはリトリアに告げた。
「管理局監視下の遺跡への無断侵入。ならびに、調査隊メンバーへの攻撃。申し開きがあるのなら、デバイスを手離して御同行願おうか」
一方のリトリアは、一時の困惑状態からは脱したようだった。
クロノの説明で、合点がいった、という表情をみせる。
と、同時に、ホルダーから手品のように魔力カードを取り出し、即座に起動。
二人が何か行動する間もあればこそ、リトリアは一瞬でクロノとアルフの目の前から消えた。
発動した術式から見て、中距離の転移魔法。
状況の不利を見ての、迷いの無い撤退である事は明白だった。
「…」
少女の消えた位置を見続けるクロノ。
逃げられた自分の不手際を責めているというよりは、何かひどく気がかりな事を反芻しているように見えた。
<> 238<>sage<>2006/09/13(水) 15:36:21 ID:kDw/X2fc<> アルフ。フェイトは無事か?」
少女が消えた後、クロノはアルフに向き直り声をかけた。
「ああ。今はまだ奥の部屋だよ。別の敵と戦ってる」
精神リンクを介してフェイトの状況を伝えるアルフ。
しかし、通信妨害のため、漠然とした状況はわかっても、フェイトとの念話は不可能だった。
『よかったね〜フェイトちゃん無事で』
「エイミィ?通信は回復したのかい?」
『ああ、クロノくんに端末もってってもらってるからね。クロノくんがいるとこだけなら通信妨害あっても届くんだよ』
「なるほど。で、フェイトが無事で良かったってのは、なんだい?」
『それがさ、聞いてよアルフ。フェイトちゃんが撃たれたとこで通信切れちゃったんで、クロノったら大慌てでさ』
『指揮ほったらかして、すぐ転送システムでそっちまで飛んでっちゃったのよ』
「なるほどね」
『おかげで仮眠中だったリンディ提督も起こさなきゃならなくなるし。アレはクロノくん、あとから絶対提督にセッキョー責めだね〜』
普段なら作戦行動中、そこまで無駄話をしないはずのエイミィがやたら饒舌なのも、フェイトが無事だった喜びの裏返しなのだろう。
『やっぱお兄ちゃんなんだね〜、クロノくん。兄妹愛ってやつ?いいな〜妹。私にはクロノっていう出来が悪い弟がいるだけだからね。フェイトちゃんみたいな妹が…』
「無駄話が長すぎるぞ、エイミィ」
執務官としての叱責と、バツの悪さを隠そうとする少年の大声の、両方を抱えながらクロノ。
「エイミィ、調査隊メンバーの撤収状況は?」
『アレックスにやってもらってるよ。現在80%ってとこかな。クロノくんの転送作業を優先させたんで、少々遅れ気味』
「悪かったと思ってるから、そろそろ勘弁してくれ。引き続きそっちは頼む。アルフ、奥に行くぞ。フェイトの援護に入る」
「ああ、気に入らないが今は従ってやるよ」
そう言って、アルフは精一杯の皮肉を利かせた声で言った。
「なあ、『お兄ちゃん』」
<> 238<>sage<>2006/09/13(水) 15:37:41 ID:kDw/X2fc<> リトリアがテレポートアウトしたのは、管理局の言うところの、未探索区画の奥だった。
フェイトが最初に砲撃された大部屋の、さらに奥。管理局にとっては未知の領域だ。

しゅうっ、と手甲から圧縮魔力の残滓が蒸気のように放出される。
同時に、デバイスが警告音声を上げた。
『caution』
『system overflow』
『change of standby mode 』
カートリッジ連続使用のため、システムがオーバーフローをおこしたのだ。
この状態では、普通のデバイスとしての機能すら満足に働かなくなる。
デバイスへのそれ以上の負荷を避ける理由からも、こういった状況では、強制的に待機状態へと移行するようプログラムされていた。
本来は戦闘を前提としていない、砲撃制御用補助デバイスの、それが限界だった。
そのため、アームズ・ラックは、連続して取り扱えるエネルギー量に極端な制限がある。
先程の戦闘で、最初からフル稼働状態にしておかなかったのも、このためだ。

使い魔に床を舐めさせられた時は、まだアームズ・ラックに余裕があったので十分に戦えた。
しかし、アームズ・ラックが稼動不能になるほどの大技を使ってしまった後での、魔導師の乱入となると話が違う
通常の強度しかないシールドで、メテオ・インパクトをかわすほどの技量と機転をもつ魔導師との戦闘などもってのほかだ。
最悪、捕縛されて、相手に何らかの情報を渡してしまう状況にもなりうる。
逃げるより他に選択肢がなかった。

そもそも、使い魔は派手な消耗なしで無力化できると踏んでいた。
デバイスの強度が低く、本来の彼女の力が発揮できない状況でも、自力が上なのは明らかだったからだ。
しかし、相手のペースに巻き込まれ、余分なダメージを背負い込んでしまった。
締め付けに対抗するために魔力の放出も余儀なくされた。
その上、邪魔が入って使い魔を無力化させられなかった。
うまくいかない。失敗してばかりだ。

「今の残り魔力からいって、大技の使用は無理…せっかく借りたデバイスもしばらく使用不能、か」
だが、嘆いていても始まらない。
「…アームズ・ラック、最後に私を癒す余裕はある?できる範囲で、構わないから」
『o.k』
すでに通常形態である革手袋に変化していたアームズ・ラックが、わずかに明滅した。
右手の甲の魔法陣から淡い鋼色の魔力光がこぼれ、少女の体を包む。
もたらされたのは、そこそこの魔力の回復程度のものだったが、それだけで少女は気持ちを切り替えた。
これからまた、戦いの場に赴かねばならないのだ。
役目は終えたとばかりに、アームズ・ラックは待機状態であるカード形態に移行。少女の手の中に納まった。
<> 238<>sage<>2006/09/13(水) 15:39:15 ID:kDw/X2fc<> 今回は以上でした。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/13(水) 19:37:19 ID:YIdHdToe<> >>335
ぜひ回復する過程をっ(ノ△`。) <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/13(水) 20:56:49 ID:h7EzqweF<> スレに書き込めない状態が続いたり、
保管庫のサーバーが落ちてたりしている時のためにこんなんつくってみました。
管理をしてくださっている549氏も忙しいようですし。

ttp://d.hatena.ne.jp/orz640/

大丈夫、スレへの投下ペースは落としませんから……多分orz
HP管理&運営してく知識ない人間でごめんよみんなorz
レス返しは今週末の投下の際にでも。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:11:42 ID:pdxxGwHL<>
第7話 鏡合わせの二人なの?

 この世界から太陽がいなくなって数刻。
 星たちの世界の下、私は目的の場所へ向けひたすら歩いている。
 ほんっと、飛べばあっという間なのに母さんもリニスもダメダメ言ってやんなっちゃう。
「魔法に反応したらって……それくらい私にもわかるよ、もう」
 せめて家の庭にあればいつだって楽に行けるのに。
 後ろに見えた私の家はもう指の先くらいの大きさ。
 丘の上は眺めが良いから大好きだけどふもとの此処に来るときだけは嫌いになってしまう。
「でも綺麗だからいいかな」
 急に吹いた悪戯な風が、花びらを飛ばし私を目隠しする。
 月夜を飾る白い精は今宵もひらひらと舞い踊っていた。
「こんばんわ」
 微笑と共に目の前に広がる花畑。月の光を浴びて淡く輝く白い鈴花。
 鈴蘭のような花――リニスはそう言っていた。
 秘密の園は私を快く受け入れてくれる。地面を覆い隠してもまだ足りなそうに咲き誇る花の群れ。一歩踏み入れるたび葉が擦れてかさかさ音を立てた。
「ほんとにみんな小さい……でもすごく綺麗な花」
 そっと屈んで頼りなさげな茎にそっと触れて、そのまま指を動かせば淡く輝く花に指が触れる。
 心地よい香りが鼻をくすぐって、思わず微笑む。
 でも別に花を愛でるとか、そんなつもりでここに来たわけじゃない。
「また君たちの種、貰っていくね」
 立ち上がり軽く深呼吸。見上げた夜空には煌々とした月。
「落ち着いて……アリシア」
 自分に言い聞かせバルディッシュ・プロトを起動。
「プロト……準備はいい?」
『Yes,Sir.I'm ready』
「うん、いい子」
 そっと左手を天へ。
 プロトの調子はリニスの整備ですごぶる万全。私の心も夜闇のように暗く空っぽにして。
「アルカス――クルタス――レイギアス――」
 願い持たず、死んでしまったように意識を閉じて
「結ばれし渇望の果実……成就の時来たりて今ここに実を落とさん」
 何か考えればそれがジュエルシードを暴発させる。
 想いの込めない魔法。ただそれだけを心に描いて私は呪文を唱える。
「バルギル――ザルギル――プラウゼル――」
 この瞬間だけは心の中に大好きな母さんやリニス、憎いフェイトもいない。
 空っぽに、黒に飲まれていく心。もしかしたらこのまま私が消えてしまうように思えて。
 でもそれさえ私は感じてないんだ……。それが心を失くすことだから。
「――ハーベストシード」
 トリガーとなる最後の呪文を唱えれば淡い、白い輝きは徐々に青い光へ変わっていく。
 花から産み落とされる光は私の周りに集って、今夜の空のように煌いて。
 心が黒から白に塗りつぶされるまであっと言う間だった。

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:12:20 ID:pdxxGwHL<>
「――リシア! アリシア!」
「えっ……わぁ!!」
 突然、目の前一杯に出てきたリニスに思わず飛び退いたら
「あいっ……たぁ!!」 
 ドサッと豪快に尻餅。
 おしり思いっきり打った……。
「な、い、いいきなりどうしたのよリニス!! び、びっくりしたじゃない!」
 突きつけた人差し指はすごく震えてて自分でも驚いていることがありありだ。
 一体いつからリニスはこんな性質の悪い悪戯をするようになったんだろう。
 リニスはというと私の驚き方に腰に手を当てため息してる。
 ……うわ、主の威厳形無しだ。
「びっくりしてるのは私です。誰だってデバイスを掲げたまま気絶してれば驚きもします」
「え? ……あれ? 私、意識飛んでた?」
 リニスは首を横に振らなかった。
 あはは……そうみたい。
「二度目だから大丈夫だと思ったんだけど」
「どの道その魔法は危険すぎます! 精神を消失させる魔法なんて使い方を間違えれば」
「わかってるよ」
 でもそうしなければジュエルシードは手に入らない。
 母さんのためにも、私のためにもこの種は大切な希望なんだから。
「それにリニスが呼んでくれればいつだって私は戻ってこれるから」
 多分、心を持ってかれなかったのも、リニスが名前を呼んでくれたから。
 私だってこの魔法の危険性は十分知っている。さっきのだって気絶してたわけじゃない。
 心を無くしていたから世界が分からなくなっただけ。だからさっきまでここに立っていた私は私の形をした人形。
「人形なのはフェイトだけで十分だしね」
 そうだ。人形はフェイトで私は心の通った人間。
 これだけは厳然たる事実。
 なんてリニスの口癖真似てみたり。
「また今度こんなことあったらよろしくね」
「そういうことはまず自分で努力してからですよ。他人頼みが常な子なんて育てたくありません!」
「もう、私が今のご主人様だよ」
「今はそうでも私は元主のプレシアの意志を尊重します」
 まったく強情な子なんだから。
 でもそれがリニスなんだ。一年に満たない時間を一緒に過ごしたけど、リニスにはもうずっと昔から知っている感じがする。
 母さんが私のために使い魔を作ってくれるって話したときに聞いた母さんの昔の使い魔。
 リニスって名前の優秀な使い魔。その名前の響きが私にはすごく心地よくて。
「じゃ〜あ私はいつご主人様って認めてくれるの?」
「さぁ、それはあなたの頑張り次第です」
 その後、私は母さんの部屋で見つけたアルハザードの魔法で、こっそりリニスをこの世界に呼び戻した。
 そうして魔法陣の真ん中でうずくまる山猫を見つけた時、私の心の中に「はじめまして」なんて言葉浮かばなくて。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:12:59 ID:pdxxGwHL<>
 初めて出合ったのに、再開なんて有り得ないのに。
 でも懐かしくて
「勉強は嫌だよ〜」
「実戦ばかりで筋肉馬鹿になるのはもっと嫌です」
「ああいえばこう言うー」
「お互い様ですよ」
 ――お帰りなさい。
 自然とその言葉で彼女を祝福した。
「うう、絶対リニスをぎゃふんと言わせるくらい、フェイトよりも立派な魔導師になってやるんだから!」
 その後で母さんから聞いた。リニスはフェイトを教育するために生み出したって。
 だから私の使い魔にしたくなかった。それは母さんの優しさだ。
 でもね、私にとってはそれってすっごく大きなチャンスなんだ。
「ではまず、溜まっている出力関連の勉強をしましょうか」
「……リニスって勉強しか頭にないの?」
 リニスに認めてもらえば私はフェイトからリニスを奪ったってことになる。
 フェイト以上の存在になって、フェイトのことなんて忘れるくらい立派になって、フェイトの居場所を奪える。
 リニスのこと誰よりも、母さんと同じくらいに大好きなんだから。
「はい」
「…………勉強馬鹿」
「聞こえてますよ」
 ……それでももう少しだけ優しくしてくれてもいいんじゃないかな。
「まぁ、いいですけど。それにしても今回は随分な数のジュエルシードを収集したんですね」
「母さんがね、撒いて来いって」
「また、あの世界ですか?」
 ううん、と首を振る。
 種を撒くのはもっと別の場所。だからこんなに沢山の花が枯れてしまった。
「この子達は種を取っちゃうと枯れちゃうんだよね」
「元よりジュエルシードを生み出すための装置ですからね」
「駄目だよ……装置なんて言っちゃ。生きてたんだよ、この子達は」
 その命を壊してしまったのは私。
 大事な目標の代償に費やしてしまった命だ。
「すみません……少し言い過ぎました」
「……うん」
 あんなに柔らかに光っていた花はみんな茶色くなってしおれている。
 地面に倒れてしまった花たちは、もう花と呼べない。枯れ草か何かだ。
 私に出来る償い。結局それって自己満足だけど、せめてこの子達を安らかに送って上げられるなら。
「プロト、ご苦労様。戻って」
 再び宝石になったプロトを懐にしまって私は深呼吸して息を整える。
「アリシア……私は先に戻っていましょうか」
「いいよ、聞いていて」
 目を閉じて、両手広げて。
 夜風を体全体で受け止めて、その風に想いを乗せる。
 さぁ、優しく心を込めて、柔らかに――

 歌おう。

* * *
  <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:13:38 ID:pdxxGwHL<>
「相変わらずの歌姫っぷり、お見事です」
 軽く拍手して心からの賞賛を送る。
 月夜を背景に一曲披露したアリシア。このまま世に出しても恥ずかしくない歌唱力を持っている気がする。
(それは世に言う親バカの類ですが)
 環境的に言うことないアルハザードだが一つだけ致命的欠陥がある。
 手付かずの自然ばかり……つまりは娯楽設備がない。暇を持て余しきりという現状。
「えへへ、ありがと」
「この花たちも安らかに逝けたでしょう」
 私など読書するなりして効率の良い余暇の消費は出来ているのだが。
「なんか今度は賑やかな曲とか歌ってみたいなぁ」
「ミッドに出かける機会があったら探してみましょう」
「うん!」
 嬉しそうにはしゃいで、体全体で喜びを表す。
 流石に遊び盛りの十歳。アリシアにとって自然と戯れるだけでは当然飽きが来るもので。
 私自身、いろいろ遊びになりそうなものを考えてみたがこれといったものはなくて。
 打開策に詰まって、どうしようかと思った挙句、苦し紛れに教えた歌。
 これもミッドで立ち寄った店でたまたま流れていたのが印象に残っていた程度なのだが。
「じゃあ早速明日にでも」
「いけません! まずは体調を整えて、です」
 だが思いの外これがアリシアにはあっていたようで。
 道具を必要とせず体一つで出来るという事実は、この世界に対しては類まれなる順応性を秘めていたのだ。
 それからというのもアリシアの暇つぶし対策に魔法の授業の合間に時折組み込んでいる。
(しかし、まさかプレシアが許可してくれるとは)
 一応念のため、プレシアにこの件に関して許可を願ったところ二つ返事で承諾された。
 娘の教育には必要だと考えたのか、はたまた娘のことを思ってか。それは全く見当がつかないのだが。
「魔法も歌も、自分の体が資本なのですから。いいですかアリシア――」
 どうせ歌をやるならここは徹底的に。生憎、教材の取り寄せに関しては無限に財力があるので――よく出来た偽造通貨なのは目を瞑ってほしい――事欠かない。 
 まずどんなことも最高の環境で。鉄は熱いうちに叩けるだけ叩く!
「お説教はたくさんだよ!」
「ちょ! まだ話は終わってません! 待ちなさいアリシアーッ!!」
 脱兎はあっと言う間に花畑を抜け来た道を戻っていた。
 慌てて追うも一足遅れた。すでアリシアは最高速度。
「猫に戻れば追いつけるよ〜」
 見透かしたようにアリシアの失礼極まりない一言。
 私がこの足で追いつけないことを知った上とは……ムカつきます。
「こ、この後が怖いですからね! 覚悟しなさいアリシア〜!!」
 本当に時々、この子は大魔導師プレシアの娘なのかと信じたくなくなる。
 ああ、頭が痛い……頭痛薬ありましたっけ?

* * *
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:14:25 ID:pdxxGwHL<>
 中心街からそう遠くない場所。
 星々輝く空に金色はよく映える。
「バルディッシュ!! ランサーセット!」
『Yes,Sir』
 総じて十発、狙いはただ一つ。
『Photon javelin』
「蹴散らして! プロト!!」
 雷光の塊、その数二つ。
 あっちもあっちで準備完了。
「ファイア!!」
「ファイアーッ!!」
 発射と同時に身を屈め飛翔!
 ランサーは相手の弾頭へ次々に飛び込ませ相殺、これで一つ!
 即座にサイズフォームを起動させもう一発の横をすり抜ける。
 ランサーより何倍も大きい魔法。けどそれが仇になって機動性は全然ない。
「はぁぁぁぁ!!」
「くっ! プロト、ランス!」
『Lance form』
 アリシアのバルデイッシュも変形。斧刃が立ち上がり天を指す。
 生まれる金色の刃、黒き槍を引っさげアリシアが向かい打ってくる。
「でぇ! せぇい!」
 先に仕掛けてきたのはアリシア。まずは上から一閃。大振りだから当たるわけがない。
 続けて腰を捻っての横薙ぎ。すかさずバルデッシュで受け止め軽くいなす。
「そのくらいで!」
 弾くと同時に、横薙ぎでこちらも反撃。
 だけど手応えなし。切っ先が触れる直前、上体を落とし潜り抜けられた。
 大した反射神経だ。
「ざ〜んねん!」
 杖を回し、仰け反り大きく振りかぶる。
 同時にシステム音。
『Ax bite』
 斧!? 
「せええりゃ!!」
 全体重を乗せた斬撃。
 電撃を帯びた斧には不釣合いなほど大きな刃。
(受け止めきれる!? ――無理だ!)
「ブリッツ!」
 即座に判断、高速移動。
 後方へ距離をとると同時に、空を切り裂いた刃が音と衝撃を吐き出す。
 打ち付ける旋風に思わず背筋が凍った。
「こっの!」 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:15:03 ID:pdxxGwHL<>
 下手に受け止めていればバルディッシュごと真っ二つになっていただろう。
 殺傷設定ならただでは済まない。
「サンダースマッシャー!!」
 なら、この距離で。
「ボルトスマッシャー!!」
 合わせるようにアリシアも雷撃。あの時の砲撃魔法だ。
 迸る雷は大気を焼き焦がして一直線に翔ける。
 私は一つ、アリシアは三つ。正面からのぶつかり合いじゃ最初から勝ち目なんてない、か。
「だけどこんな出力便りじゃ!」
 もう一度、加速。
 同時に相殺されるスマッシャー。残りの二発はすでに私に進路を変えている。
 でも、もう遅い。
「アークセイバー!」
 一撃、渾身の振りで鎌を解き放った。
 すかさず突っ込んで来た一発目をすれ違うように回避。さらに横から襲い掛かる二発目を体を落として一気にかわす。
 そして鎌を再装填しさらに一撃。
「ブラスト!!」
 アリシアが気づく前に挟み打つ光刃を起爆させる。
 これで視界は奪い取った。
 威力ばかり上げる余りアリシアのスマッシャーは弾速、挙動が鈍い。だから冷静になれば簡単に避けられる。
 接近戦でも力任せの攻撃ばかりだ。研ぎ澄ますことをアリシアは全くしていない。
「バルディッシュ! 準備はいいね?」
『Get set』
「よし、いい子!」
 ――決める。
 勝負はあの煙が晴れた時。
「雷光、剣となれ! 切り裂け闇を!」
 クロノに教えてもらったこの魔法でアリシアを倒す。
 そしてなんでこんなことをしているのか。母さんの目的が何なのか全部聞かせてもらう。
 空が見えた――
「サンダーブレイド!!」
 極限まで加速された金色の剣が私の横から嵐のように飛び立った。
 サンダーレイジのように相手を拘束しない分、威力も、速さも増している。これだけの物、アリシアは絶対にかわせない。
 アリシアは驚いていた。
 あれだけの大出力魔法の後、私の読みどおりアリシアは何の準備もしてなかった。
(これで――勝てる!)
 確信した。
 なのにアリシアは鼻で笑って、冷たい瞳をして何かを紡いだ
 
 ――それだけ?

『Sonic move』
 
 大気が嘶いた。
 飛翔なんて生易しい表現じゃなかった。
 十三発の雷剣の舞踏。その只中を縫うようにあっさり苦もなく、踊るように避けていく。
 上へ下へ、右に左に、私の想像をとうに超えた動き方。
 宙返り、回って、高く飛んで、剣が道を作っているようにさえ見えた。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:15:41 ID:pdxxGwHL<>
「甘いね、フェイトは」
 正直、目で追ってられたのは最初だけだ。後はまともに視認すらさせてくれなかった。
 ただなんとなく、アリシアはここにいるだろうなんておぼろげに考えていて。
 あっという間にアリシアは私の目の前で笑っていた。
『Lance lunge』
 手首、肩、そして背中に光の羽。
 初めて会ったときは飾りかと思ってたけど、これって高速移動用の補助魔法……?
 完全に反応できなかった。
 構え直す一瞬すらアリシアの一突きの前に砕かれた。
「うっ……く……ぅ」
 喉元へ突きつけられた切っ先。
 唾を飲み込むことさえ許されず私はその場に貼り付けられた。
「大丈夫……消しはしないって言ったでしょ?」
 口元を歪めて、アリシアが嘲笑うようにくすくす笑う。
 自信に、勝利に酔った目。
 どこか肉食獣みたいに残酷で、私の命を握っていることがそんなに嬉しいのか。
「でも結構頑張ったよね。だから教えてあげる、私が何でこんなことしているのか」
 紡がれる答え。
 それすら満足に聞けない姿勢で、私はいま自分を包んでいる状況に打ちのめされていた。
「私はあなたとは違う……知ってる魔法も、得意な戦い方も」
 少しだけ切っ先が喉に食い込んだ。
「私はフェイトじゃない……アリシアだから」
 赤い瞳が私を睨み続ける。
 炎みたいに揺らめいて、憎しみしか映してない。
「優しい母さんだっている。その母さんのお願いだから、ジュエルシードでこの世界にも夢を見させるようにって」
「ゆ……め?」
「だけどあの種はもう撒いちゃったからね。この種は増えないから、うんと沢山撒かなきゃいけない」
 ほんと面倒なんだから。
 付け足してアリシアがため息。でも顔はどこか楽しそうだった。
「フェイトに会えるんだからね、何度だって撒きに来れるよ」
「そん……なこと……させない」
「じゃあ今度はこうならないようにね」
 なるわけがない。今のは油断してただけ。
 アリシアがこんな魔法使ってくるなんてわからなかったから。
 ……そんなの負け惜しみでしかないのに。
「それじゃ今日はさよなら。あんまり寄り道してると母さんにしかられるからね」
 軽やかに後ろへ飛んでデバイスを閉まう。
 敵の目の前でそんなことするなんて私じゃ考えられない。撃ってくださいって言ってるようなものなのに。 <> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:16:27 ID:pdxxGwHL<>
「リニス! 帰るよ!」
 呼ばれ、すぐにリニスが飛んでくる。
 アルフが相手をしていたはずなのに法衣に乱れがほとんどない。
(……アルフ、返事して)
(ああ、ごめんフェイト……バインドされて動けない)
 無事、みたいだ。……良かった。
「ふぅ、ようやく終わりですか。まぁ、こちらは眺めてるだけでしたけど」
 言って私を一瞥する。
 冷徹というには程遠い表情。どちらかといえば困ってる、呆れてるような感じがした。
「今回はフェイトの悪いくせに助けられましたね。甘く見て六十点です」
「え〜!? だって私が勝ったんだよ」
「もっと上の魔導師ならあんな隙だらけではすぐにやられますよ」
 手厳しい意見だけどリニスの言うことは最もだ。
 アリシアは納得いかないようで頬を膨らませているけど。
「余裕は身を滅ぼします。派手に見せることが戦いではないのです」
「ふん……わかってますよ」
 膨れるアリシアにやれやれとお手上げするリニス。
 前もそうだけど、二人が一緒になると途端に緊張感がなくなる気がする。
「もう、帰るよ」
「はい、では帰って今日のおさらいでも」
「しないから」
「しますよ」
 それって心から信頼しあって、気を許してるから。昔の私よりも、リニスに自分を見せているから?
「ではまたのご機会にでも。後フェイト、結果が出なければ終わりではありませんよ」 
 光と共に二人が消える。
 転送魔法の残滓が風に流されていく中で、私は自分の敗北をもう一度噛み締めていた。
 
 ――すごく……悔しい。
<> 176
◆iJ.78YNgfE <>sage<>2006/09/13(水) 23:20:48 ID:pdxxGwHL<> お久しぶりぶり(マテ
久しぶりです、ほんとに
いろいろありましたが今日から復帰です

久しぶりStepはミッドへ出張中のフェイトたちから
わからなかったら前の読んでね(オイ
A'sの魔法も使いまくりですが、まぁ一年経ってるとしてますから
このくらいはありかなと

敬称は今回省略で
みなさんいろいろご苦労様のGJです <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/15(金) 03:55:04 ID:vwkVn7Il<> >>351
おかえりなさいませ。ごしゅじんさま(はぁと <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/15(金) 18:43:13 ID:5Bz+S5m5<> 「入院?フェイトが!?大丈夫なの!?」

なのはとはやてから聞いた事実に、アリサが素っ頓狂な声をあげた。
彼女の大声に一瞬びくりと肩をすくめたなのはは、まあまあと
両腕を突き出して説明を繰り返す。

「あー……、でも、病気とか大怪我とか、そういうことじゃないから。大丈夫」
「検査入院ってやつやな。ここんとこフェイトちゃん、働きすぎやったから」

過労とか、身体の異常とか。そういったものがないかどうかの検査のためやね。
なのはの言葉を、はやてが引き継いだ。
アリサとすずかは顔を見合わせて、ようやく安堵の息をつく。

「なんだ……どこか怪我したとかじゃないのね」
「うん、三日くらい入院して、色々検査受けるって」
「ま、担当はシャマルやしな。特に問題もないやろ」

そもそもが、自分から休みをとろうとしないフェイトちゃんを無理矢理休ませるためのものなんだし。
最近、働きすぎだったから。
なのはがそう言うと、アリサもすずかも、妙に納得して頷いたのだった。
二人のリアクションに、なのはとはやては顔を見合わせて苦笑いすることしきりだった。


魔法少女リリカルなのはA’s −the day−

第二話 break out


───暇だ。暇で、仕方がない。

「あの、シャマルさん。やっぱり私……」
「だーめ。もう検査の手続きしてあるんだし、ドクターストップが正式に出ているでしょう?」

持参した文庫本はもう全部読んでしまったし、雑誌もこれといって読んでいるものは
最新号は来る前に読み終えてしまった週の谷間。
診察を受けて、検査の書類に同意のサインをしてしまうと、寝る以外全くすることがなくなってしまった。
全然眠くもないのに。

それでも、一日目はなんとか堪えたのだが。

「することなくて暇なのはわかるけど、最近ずっと忙しかったんでしょう?たまにはいいんじゃないかしら」
「はあ」

ここは、入院したフェイトに用意された個室。
花瓶にはリンディが持ってきた花が生けられ、少し殺風景であった室内に彩を添えている。

フェイトは渋々の入院生活を強いられていた。
彼女に課せられた任務の量は執務官であるとはいえ、まだ12歳の少女に対しての勤務時間としては
あまりに過剰だと判断した医療班からの要請……いや、抗議(黒幕はシャマルである)により、
上司兼母親のリンディを通じフェイトには三日間の休養を兼ねた検査入院が命じられていたからだ。

「三日間くらいゆっくりするのも、いいものよ?」
「……そうですか?」 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/15(金) 18:45:42 ID:5Bz+S5m5<>
けれど執務官になって以来働きづめであったフェイトにとっては、
このゆっくりと流れる惰性のような穏やかな時間が、どうにも落ち着かない。

「午後の検査は、まだですか?」
「んーと、CTが空くのが3時だから……もう少しかかるわね」
「結構……長いですね」

別に、どこも具合の悪いところなんてないのに。
できることなら仕事を放り出してきたアースラに、今すぐにでも駆け戻りたかった。
昔は兄の仕事中毒ぶりを笑ったものだが、フェイトもしっかりその道を歩んでいるようだ。
シャマルが空いた時間を見つけては、退屈しないようにと話し相手に来てくれるのが救いだった。
彼女がいなければ、暇で暇で死んでしまうところだ。
他の人間が働いているのに自分だけ休むというのも、なんだかきまりが悪いし。

「あら、もうこんな時間ね」

だが、折悪しく彼女の仕事の時間がまわってきたらしい。

「すまないけれど……行くわね?昨日の検査結果ももうすぐ出ると思うし」
「はい」
「逃げ出したりしちゃ、だめよ?」
「しませんってば」

またしばらく、無為な時間が続きそうだ。
シャマルが出て行った引き戸が徐々に閉まっていく。

「はやてって……すごかったんだな」

かつて入院生活を送っていた親友の名を呟いて、
フェイトは既に読み終えた枕元の文庫本へと手を伸ばした。
あと今日も入れて二日。
入院生活というものは時間の経過が遅い。
まだまだ、耐えなければならなそうだ。

*    *    *

「はやく!!第三処置室に!!」

医療局内に響き渡る怒声に、フェイトは振り向いた。
どたどたと乱雑な走る足音を伴って、何台ものストレッチャーが看護師たちに押されてくる。
飲み物でも買おうと部屋を出ていた彼女は、慌てて壁に寄る。

「!?」

フェイトが道を開けたそこを通り過ぎていく患者たちは、ひどい有様だった。
一様に深手を負い、苦痛にもがき苦しんでいる。

(第五武装小隊……?なのはの?)

すれ違いざま、ストレッチャー上の男達の襟元の部隊章が目に留まった。
あれは確か、なのはが今部隊長を務める小隊のマークだ。
気になった彼女はふと、近くを歩いていた他の看護師へと尋ねた。
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/15(金) 18:48:21 ID:5Bz+S5m5<>
「すいません、ちょっと」
「あ、フェイト執務官。どうかなさいましたか?」
「いえ、私じゃなくて……何かあったんですか?彼らは」
「え?ああ、彼らのことですか。なんでもロストロギアの暴走事件二件、同時に同じ場所で起きたらしくて」
「!?」
「それが思いのほか強力らしく、担当の班がほぼ壊滅状態になったそうです。
 今は隊長の方が殿をつとめて、応戦をしながら増援を待っている状況らしいですが……」

どこも今は手一杯で、増援にはしばしの時間がかかるとのこと。
前線に出た経験がその看護師にはないのだろう、どこか彼女の言い方は
他人ごとのようでしかなかった。

「!!その隊長って……!!」
「はい、高町小隊長の班です」
「!!」

なのはが?一人で、戦っている?
しかも、武装隊を壊滅させるほど強力な暴走したロストロギア、二体と?

「なのはが……危険に……?」

大変だ。自分が、のんびりしている間に。
こうしてはいられない。
フェイトは看護師に礼を言うと、急いで自分の病室へと取って返した。

*    *    *

シャマルが自分のデスクに戻ってくると、フェイトの検査結果がいくつか届いていた。
もともとが方便のような検査入院だ、これといって心配はしていなかったので、
コーヒーを淹れてから座り、ボードに挟まれた各種カルテに目を通す。

「……うん、フィジカルには特に異常なしっと」

満足すべき結果に彼女は頷き、ページをめくる。

「───え?」

ぴたり、と指先と視線が止まった。

内臓疾患、なし。
消化器系の状態も良好。
疲労が溜まっているだけで、低下しているものがあったとしても、すべての数値は許容範囲内。
ただし。
とある、たった一つの項目が赤くチェックされているのを除いて。

「リンカーコアに異常……?しかも、これ……いや。そんな、有り得ない。どうして」

何かの、間違いかと思った。
一瞬、自分の目を疑った。
見たことも、聞いたこともない異常がそこには記されていたのだから。
自分とその主が親しくしている少女の身体を調査した結果から、そんなものが出るなんて。

「!?……え?」
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/15(金) 18:49:31 ID:5Bz+S5m5<> だが、彼女のその疑念を振り払い、現実のものとするように。
もう一度めくったカルテの上質な紙は、更なる裏づけとなる数値をシャマルへと突きつける。
せっかく淹れてきたコーヒーも、手つかずだった。

「嘘、でしょ」

さっと血の気が引いていくのが自覚できる。
このような症例、人間ならば有り得ない。なのに、なぜ。

「シャマル主任!!」
「!!」

彼女に、自失は許されなかった。
部下の一人──、白衣を着た看護師が慌てふためいて、呼び出しや確認もせずに
息せき切って執務室へと駆け込んできたのだ。
シャマルは内心どきりとしながらも、手早くフェイトのカルテを机上に戻すと、
顔色や精神状態が気取られぬよう顔を伏せて作業をしているふりをして
ごまかした。

「ど、どうしたの?そんなに慌てて」
「逃げたんです!!」
「は?」

逃げた?誰が?

「フェイト執務官が、病室からいなくなったんですよ!!」
「なんですって!?」

取り繕っていたことも忘れて、シャマルは立ち上がった。
フェイトがいなくなった、だと。だとすれば───……。

「一体、どこに!?」
「さ、最後に話したという看護師が言うには、高町小隊の怪我人が運び込まれてきたのに居合わせたと……」
「いけない!!」

まずい。ならばおそらく彼女が向かった先は、ひとつ。

「アースラのクロノ提督に連絡!!それと、人事課に連絡して動ける人を回してもらって!!」
「は、はい!!」

なのはのところに救援に向かったと思って、まず間違いない。
彼女の苦戦を聞いて、いてもたってもいられず、飛び出したのだろう。

「なんとしても彼女が戦闘に参加する前に連れ戻すのよ!!」

彼女を今、戦闘に参加させる──高位の攻撃魔法を使わせるのは、危険だ。
シャマルは焦る気持ちを抑え、通話機を手にとった。
我が家に誰か、残っていることを祈りながら。
次元を超えて家の電話と繋がったことを示す電子音の連続が、実にもどかしかった。

彼女から要請を受けたシグナムから、倒れたフェイトを保護したと連絡が返ってきたのは、
およそ二時間後のことであった。
シャマルはらしくないほど強く机を叩き、その後力なく椅子にへたりこんだ。

フェイトの入院期間は、即座に延長された。 <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/15(金) 19:02:27 ID:5Bz+S5m5<> 色々説明不足なのは追い追い……はい。
構成地味にミスったかも試練ですよorz

>>332氏、>>334
ウホッ(ry

>>335
重い、重いよ……orz

>>238
少し戦闘時の視点が、アルフのものなのかオリジナルの子のものなのか、
あるいは第三者(読者&筆者)のものに置かれているのか曖昧な気がします。
……ごめんね何度もえらそうにorz

>>176
アリシアとリニス、良いねえ(孫を遠くから見つめる目で)
非常にGJでございますよ。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/16(土) 14:21:29 ID:/YDKO6gc<> リインU「マイスタ―640。私も表舞台に立ちたいですぅ」 <> みなを導く、輝く風になれるよう<>sage<>2006/09/16(土) 14:28:22 ID:yWlguttf<>
 ―――生きていくこと。
「なんでや、これから、やっと始まるのに。これから、うんとしあわせにしてあげなあかんのに」
 みんなのしあわせがわたしの願い。みんなの笑顔がわたしのたからもの。
 だからあなたひとりを逝かせるなんて認められない。長いあいだ悲しみの中で生きてきた。そのぶんだけ、これから喜びの生を歩んだっていいはずだ。
 いや、あなたはそうでなきゃいけない。やっと救われたんだ。わたしに家族をくれたんだ。暴走なんかさせないって約束した。
 ちゃんと抑えてみせる。あなたのしあわせは、これからわたしが守っていく。だからお願い。わたしといっしょに、生きていようよ。


 ―――生ききること。
「私はもう、世界で一番幸福な魔導書ですから」
 主のしあわせがみんなのしあわせ。主の危険をはらい、主を守るのが器のつとめ。
 約束はもう立派に果たしてもらった。もうじゅうぶんに守ってもらった。だから今度は私のばん。
 主を守るためにもっとも優れたやり方を選ぶのは当然のこと。自身の生の終焉がそうであるならば、それはこのうえなく誇らしいことだ。
 主のしあわせを守るためにこのいのちを役立てることができる。つとめを果たすことができる。これ以上のしあわせがどこにあるだろう。


 ―――名づけられたこと。
「私の名はそのかけらではなく、あなたがいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈ってあげていただけますか」
 私のいのちはここで潰え、存在は永劫に消えてなくなってしまうけれど。
 私の意志はあなたの魔導と騎士たちの魂に残ります。私はいつもあなたのそばにいます。
 あなたはこれから、悲しみと傷痕を背負いながら未来を生きる。だけど、その重さはみんながわかちあうから。
 もちろん、私だって。みえない両腕で、いつもあなたを抱きしめている。


 ―――生まれた意味。
「祝福の風リインフォース。私の魂はきっとその子に宿ります」
 祝福の風、願いははなれえぬ絆へと。想いと力を主の中に溶かして、魔導の器は空へと還る。
 小雪の舞う、鉛色に鎖じられた空のした。小さく無力なかけらが落ちてくる。
 マイスターは涙が頬をつたうままに、てのひらに残った小さなかけらを、叶えられなかった小さな願いといっしょに胸に抱きしめた。
 腕をのべてその痛みを受けとめる。祈る想い風にかわれ。冬を溶かす春の風になってあなたへ届け―――
<> みなを導く、輝く風になれるよう<>sage<>2006/09/16(土) 14:29:36 ID:yWlguttf<>
 右腕の先に小さな衝撃を感じて目を覚ます。薄暗い部屋、ベッドのうえ。わたしは隣で寝ていたヴィータの顔面に、右のてのひらをのろいうさぎ人形の頭ごしに突きこんでいた。
 なんかすごいことをしているなあわたし、とぼんやり思った。まばたきをした。首をかしげた。わたしはなんのために片腕を伸ばしたんだっけ?
 のろいうさぎの後頭部にあてた手を無意味ににぎにぎと動かした。ぬいぐるみのやわらかな感触。だんだんと思考が覚めてくる。自分のやらかした行為をしっかり自覚する。
 伸ばした腕を引こうとしたちょうどそのタイミングでヴィータが短く呻いた。ぎょっとしてかたまった。わたしを細目で睨みつけた。
 怒られるかと身構えたわたしの手をヴィータはけだるい様子ではらいのけ、のろいうさぎをわたしから奪い取り、眠りを妨げるうっとおしいものから逃れるように寝返りをうってわたしに背中を向けた。
 ややあって規則正しい寝息が戻ってくる。眠りの邪魔をしてしまったことを、わたしはその背へ向かって声に出さずに謝った。
 そっとその反対側に意識をやる。わたしを背中から抱くマイスターのやさしいにおい。健やかな寝息。安らいだ寝顔。さっきの騒動で起こさないで済んだみたい。安堵する。

 夢をみていた。
 リインフォース。子守唄のように繰り返し聞いた物語。夜天の騎士達の大切なおもいで。
 わたしは自我を持った融合型のデバイスであり、マイスターはそのわたしの主だ。『融合』とはよく言ったもので、わたしたちは潜在的に精神のつながりを持っている。
 普段は精神リンクは切断しているはずだけれど、さっきまでは眠っていて互いの心が無防備なまま身体が密着していた。だから主の心がわたしに流れ込んでしまったのだろうか。

 そもそもなんでわたしはシュベルトクロイツの中ではなくベッドの上で寝ているのだろう。
 昨日の記憶を掘り返す。夕方、マイスターの膝のうえで甘ったれていたまでしか思い出せない。いつしか眠ってしまってベッドに運ばれたのか。

 ふたりの眠りを壊さぬよう、おそるおそる静かに上体を起こした。
 起床の時間までまだずいぶん間がある。カーテンの隙間から窓を覗けば春の夜がまだ白みはじめたばかり。
 頭はまだ重いけど目がずいぶんと冴えてしまっている。このままもう一度寝直す気にはなれない。ため息をついた。
 リビングでみんなを待っていようか。外の夜明けの呼吸はまだ冷たいだろうけれど、陽が昇ればすぐに、街にあたたかな風が通り抜けるようになる。

 わたしが生まれたのも、こんな季節のときだった。今日は何日だっけ。壁のカレンダーに目を移す。
「あ……」
 日付を確認して、わたしは息を漏らした。
「一年、経っちゃったんですね」
 なんの因果だろう。リインフォースの夢をみて目を覚ましたのが、今日という日だなんて。

 リインフォースがマイスターを送り出した冬色の聖夜の向こう側。
 雪を降らせる深い雲の晴れた、蒼天広がる季節のもと。一年前の今日という日にわたしは生まれ。
 春の風に舞いたつ花のなみの中で、わたしは八神家の家族たちに出会ったのだ――― <> みなを導く、輝く風になれるよう<>sage<>2006/09/16(土) 14:31:08 ID:yWlguttf<>
 早朝の冴えた空気と薄闇の静謐な雰囲気に満ちたリビング。気分を切り替えるようにぶんぶんと頭を振る。
「リインフォース」
 足音を忍ばせてソファーへ向かって身体を運ぶその途中、ふいに投げかけられる声があった。目を向ければリビングの一角でザフィーラが身を起こしている。
 足音を忍ばせたことは意味がなかった。わたしの気配を感じて目を覚ましてしまったのだろう。
「ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」
「いや、構わない。それよりもそちらこそどうしたのだ?」
 なにかあったのか、と。
 心配させてしまったことが申し訳ない。ソファーに座っておいでと手をのべた。わたしにザフィーラが前足をかける。膝のうえに抱き上げ、ふかふかの毛に頬ずりする。
「なんでもないです。ちょっと目が冴えちゃっただけですよ」
 言いながら、抱きしめたまま寝ころんだ。
「疲れているのか? 昨夜は実体のままで眠ったようだが」
 疲れているといえば、疲れているのかもしれない。言うに言えない気持ちが胸に渦巻いている。どう整理すればいいのかわからない。
 ヴィータとマイスターに挟まれて眠る中、いままで伝え聞くだけの物語を、はからずもこの目で覗いてしまった。

「……よく、わからないです」

 あんな夢、見たくなかったと思う。たちこめる霧のように気分は晴れない。
 世界で一番しあわせな魔導書と同じ名前を与えられたわたし。生まれてから今日でちょうど一年が経つ。たったの一年。
 脳裏に浮かぶ、強くてやさしい彼女の姿。いまのわたしは彼女にはとても遠くて。
 届かなくて、もどかしくて、泣きたくなる。どうしてわたしはこんなに子供なのだろう。家族の誰と比べてもわたしはまだまだ未熟で、活動時間も短ければ力も足りない。

 抱きしめる腕に力がこもる。ザフィーラはなにも聞かずに、わたしの為すがままにさせてくれた。
 その気づかいに甘えて思考に沈む。こいぬのぬくもりに顔を埋めて目を閉じた。大きく息をつく。

「ザフィーラは、いくつですか」
「リインフォース?」
 唐突な問いかけに戸惑いの声。
「わたし生まれてからまだ一年しか経っていません。たったの一年です」

 積み重ねてきた年月の垣根、天地に横たわる悠久の隔たりを訴える。
 地から見あげる夜天の雲の姿は遠く、その距離は重い。

 リインフォース――祝福の風。
 祝福。誰かのしあわせを祈ること。
 その祈りを届ける、強く支えるもの。

 わたしも大人になりたい。早く、いますぐに、『リインフォース』になりたい――― <> みなを導く、輝く風になれるよう<>sage<>2006/09/16(土) 14:32:26 ID:yWlguttf<>  午前。本局の廊下をマイスターとふたりで歩く。
 今日のマイスターの仕事は、先日まで手がけていた事件についての書類作り。
 捜査自体は終わっていても、扱うものがロストロギアなだけあって報告書ひとつまとめるにも手間がかかる。
「でも今日はお仕事これだけや、今夜は大事な用事があるからなー、お昼までには終わらせてみんなでじっくり準備せな」
「大事な用事ですか?」
 それは初耳だった。尋ねると、
「夜になったらわかるよ、それまでのお楽しみや」
 そう言ってマイスターは、妙に楽しそうに微笑んだ。
「お、クロノくんとエイミィさんや」
 訝しんでマイスターを見つめていると呟いた。その声に前方に視線を向ける。
 言葉のとおり、対面にクロノとエイミィの姿をみとめた。ファイルを覗きこんで話をしながらこちらへと歩いている。

「ああもう、リインちゃん今日も可愛いなあ!」
 挨拶をするなりエイミィに抱きしめられる。クロノの「あまりリインフォースを困らせてやるな」という小言もどこ吹く風。こちらとしてはどう返事をしたものか苦笑いを返すしかない。
 わたしもザフィーラにいつも同じようなことをしているのだし、彼女に抱きしめられるのは決して嫌いではないのだけれど。
 だけどいまは、子供扱いをされることに少なからず抵抗を覚えてしまっている。そんな自分が嫌だと思って、胸が痛んだ。
「クロノくん、これから仕事かー?」
「ああ、もうじき出航だ。そっちは?」
「わたしはデスクワーク。昼までにはあがれるかな」
「他のみんなは?」
「ヴィータたちは休みや。レティ提督に今日は休みにしてくれるよう前から頼んでおいたんよ」
「前から? ああそうか、今日は―――」
「そ。今日は―――」
 言葉を切ってマイスターとクロノがわたしを見る。ふたりとも同じように微笑んでいた。
「そっか、もう今日かー。早いもんだなー」
 エイミィがわたしの髪を撫でる。
「あの、今日ってなにがあるんですか?」
「ふっふーん、それははやてちゃんが教えてくれるまでのお楽しみなのだ」
「なんで君が威張るんだ。さ、エイミィ、僕らはそろそろ行くぞ」
「はいはい」
 わたしから手を離して立ち上がった。
「クロノくん、今回はどれくらいの期間なん?」
「予定では一週間程度かな」
「そっか。艦のクルーっていうのも大変やな」
「別に一週間毎日危険の中にいるわけでもないさ」
「そうそう、どっちかといったら暇をもてあます日も多かったりするんだこれが」
「あはは、ま、どっちにせよお仕事頑張ってな、ふたりとも」
「君たちもな」
「じゃね、はやてちゃん、リインちゃん」 
「あ、はい。気をつけてください。クロノ、エイミィ」
 結局、疑問を放っておかれたままの別れ。釈然としない。
 去り際、
「はやてちゃん、リインちゃん、今日はおめでと」
「はい、おーきにです」
 エイミィがそう言って手を振って、マイスターも笑って手を返したことの意味がわからずに、わたしは眉を寄せながらふたりを見送った。


「ほんならわたしはレティ提督のところにいるから、なんかあったら呼んでな。終わったら迎えに行くから」
「はい、マイスターも頑張ってください」
「ん、すぐ終わらせてくる。そっちもユーノくんに迷惑かけないようになー」

 マイスターと一度別れて、わたしが向かった先は無限書庫。マイスターがわたしを必要としない仕事をするときは、わたしはシュベルトクロイツの中で眠っているかここに居てマイスターを待つかのどちらかが常だった。
 何度来ても圧倒させられる書庫の規模、だけどこの圧迫感が不快かといえばそうでもない。わたし自身が魔導書に縁を持った存在であるせいか、ここの雰囲気は不思議とわたしを落ちつかせる。
 なんの比喩でもなく、文字通りに『本に囲まれていられる』ここの空気がわたしは大好きだった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/16(土) 14:34:12 ID:yWlguttf<> すいません、急な外出の用事が出来ました。
続きは深夜か、もしくは明日の朝に。

中途半端になってしまってほんとうに申し訳ない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/16(土) 18:40:14 ID:/YDKO6gc<> リインU「マイスタ―363涙腺うるうるです。楽しみにしてるですぅ」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/16(土) 18:44:59 ID:ohkenyVX<> 翠星石!翠星石じゃないか! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/16(土) 23:51:38 ID:ER6b8193<> 突然で悪いんだが誰かリリカルゆーののログ持ってる人いない?
ユーノ好きなんで見たくて見たくてしょうがないんだが見れない・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/17(日) 04:01:00 ID:eye/rwz3<> 最近保管庫の人大丈夫なのだろうか。
4ヶ月もSSの更新が無い・・。

>>362
GJ! <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/17(日) 07:55:22 ID:tJtggop8<> >>363
これはいいリインUですね
続きマダー?(チンチン
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 00:52:59 ID:pd4o7gH1<> えと、なぜか妄想エロ電波受信して書き上げてしまいました。
拘束だったり大人のおもちゃ使ったりしてるので、そう言うのが苦手な方はご容赦ください。
それでは、『エロなの』をお楽しみ下さい。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 00:55:48 ID:pd4o7gH1<>  勝手に漏れ出る荒い吐息を、なのはは必死でこらえていた。
(大丈夫、なのは?)
 星がきらめく夜空の上。
 正面でデバイスを構えるフェイトの心配そうな思念に、気づかれないよう注意しながら笑顔を浮かべた。
(うん、私は大丈夫だから)
 もう一度レイジングハートを構え直し、フェイトをじっと見つめる。
 カレが作り出したインナー。
 その感触がなのはの心を責め立てていた。
「レイジングハート、お願い」
「Yes,Master」
 周囲に二〇前後のアクセルスフィアが展開されて……、同時にインナーが激しく振動した。
 緩やかな螺旋を描いて先端まで伸びた細く平たい紐が、同世代の中では大きい方の胸をぐにぐにと揉み上げる。
 キャップ状の先端部分がきゅっと乳首を吸い上げては噛みつくように急に狭まった。
 脇腹や脇の下に密着したそれが優しく狂おしいまでに蠕動し、おしりも激しく揉みまくられて、その感触だけでも腰が砕けそうになる。
 ……それ以上に、前と後ろにくわえさせられているバイブの振動が脳裏を焼いていた。
「っ!」
 激しくかき回され最奥まで貫かれる前と、激しく前後運動を繰り返す後ろの感触は、頭が真っ白になりそうなほどの快感を与えてくる。
 フェイトがハーケンフォームのバルディッシュを構えて、周囲にこちらと同じ数のフォトンスフィアを展開するのが見えた。
 アクセルシュートを全てプラズマランサーで打ち落とし、同時に近接距離へと飛び込んでくるつもりだと気づいて、咄嗟にアクセルフィンに魔力を込める。
 フェイトがソニックムーブで間合いを詰めるのが早いか、こちらがフラッシュムーブで間合いを取るのが早いか。
 一瞬の見極めが重要な勝負なのに、なのはの脳裏にあるのは早くこの火照った体をどうにかして欲しいという想いだけ。
 カレの展開したインナーは、なのはの意識を敏感に読みとって絶頂に達する寸前で挙動を止めてしまうようにできているから。
 気持ちいいのに最後までイケない辛さで、頭の中はもう溶けきっている。
「行っけーー!!」
 構えたレイジングハートを突き出すのと同時に、アクセルシュートが一斉にフェイトに向かって走り出す。
 同時、体の中が限界まで掻き回され胸も乳首も激しい愛撫に晒される。
 体の熱さだけに思考が集中しそうになって、それでもなのはは必死でフェイトに意識を向け直す。
 三六〇度ありとあらゆる方向に散らばらせたアクセルシュート。
 それを見ても動こうとしないフェイト。
 これで終わらせることができるなら、それでもいい。
 そう思いながら、なのはは一気にフェイトに向けてそれを集中させた。
 途端に、それまで動いていなかったインナーが始動した。
 股間の前の部分に張り付いているそれが、クリトリスを激しく吸い上げて細かな振動を与えてきた。
 びくんっと、身体が跳ね上がるのが抑えられなくて、勝手に腰が前後に動きかけて。
 そのせいで、アクセルシュートの挙動が直線的になってしまった。
「……プラズマランサー」
 フェイトの呟きと同時に、周囲に展開されていたフォトンスフィアから一斉に飛び出したプラズマランサーがアクセルシュートを全て打ち落とした。
 殆ど同時にフェイトの姿がなのはの視界からかき消える。
 ソニックムーブを使ったのだということだけは理解できた。
 そのままとまることなく動き続けているから、こちらからは捕らえることができなくて。
 だから、フェイトが飛び込んでくるのをひたすら待つ。
 フラッシュムーブの挙動は直線的で小回りはきかないが、それでも瞬間的な速力だけを見ればソニックムーブに勝るとも劣らない程なのだ。
 だから機を逃さなければ勝つことができる。
 そんな事を頭の片隅にちらりと浮かべてはいるが、残りの殆どの部分をただ桃色ににじむ世界に心をゆだねていた。
 もう、いつ達してもおかしくないくらい、身体は熱くなっている。
 変わらず動き続けるバイブとインナーが気持ちよすぎて、心が崩れそうになって。
「っ!?」
 だから、フェイトが自分の正面、予想よりも外側に現れたとき、何も考えられずにフラッシュムーブで真後ろに飛び去った。
 それだけの魔力を高めたことで、またインナーとバイブが動きを強める。
「っっ!!」
 それでも辛うじて持ちこたえて動きを止めると同時に、フェイトに向かってバレルショットを放つ。
 これで時間が稼げると思ったから、続けて起きたことに反応できなかった。
 フェイトの身体に命中したバレルショットがそのまますり抜けたのだ。
 背後に誰かがいる気配を感じるのと同時に、ぴたりとのど元にハーケンフォームの切っ先があてがわれた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 00:57:28 ID:pd4o7gH1<> 「今日は私の勝ちだね。なのは、本当に大丈夫?」
 耳元で優しく囁かれて、なのはは言葉も出せずにコクコクと頷く。
 普段だったら、少し悔しいと思うのに、今日はただこれで終われるという安堵だけが先に来て、もう我慢できなかった。
「う、うん大丈夫だよ。そ、それじゃ、私、先に行くね」
 身体は限界までほてっているのに、インナーもバイブも動きを弱めてしまっているから。
「あ、なのは」
 フェイトの心配そうな声に応えることもできず、なのははカレの元へ跳んだ。


「はぁはぁ…………」
 バリアジャケットを解除しても、インナーは消えることなくなのはを責め続けていた。
「ねぇ、お願いお願いだよ。早くコレはずして」
 電気が消えたままのカレの部屋。
 薄暗がりのベッドに腰掛けるカレに、なのはは必死で懇願する。
 早く絶頂に達したい、はやく最後までイカせてほしい。それしか今は頭になくて。
「それがお願いする態度かい? 言葉遣いはちゃんとしたら?」
 薄暗い部屋の中、ベッドに腰掛けているカレをなのはは涙を浮かべてじっと見つめる。
 にやりと、口元をゆるませるカレのほしがっている言葉は理解できて、それでもその言葉を口にするのはやっぱり恥ずかしくて。
「ほら、なのは。して欲しいことはちゃんと口で言わないと伝わらないよ?」
「……あの、その…………お願いします…………はずしてください」
 ぽろぽろと涙をこぼしながら口を開いて、言われる前に服を脱ぎ捨てていく。
 黒い革製に見えるインナーがなのはの大人びた身体を扇情的な物に変えていて。
「おねがいです、もう、我慢できないんです。だから、だから……」
 カレがほしがっている言葉は、どうしても口にできなくて、だからただおねがいを続ける。
「はぁ……、本当は好きなのに自分から言うのは嫌なんだ? 変だね、それってさ」
 ずきんっと、なのはの胸が痛む。
 その何気ない言葉が、大好きなカレの口から出たと思うだけで寂しくて悲しい。
 そう思った瞬間、ぱちんっとカレが指を鳴らした。
 インナーがすぅっと闇に紛れるように消えて、バイブも消滅する。
 ぽたぽたとこぼれ落ちる液体の感触は普段なら恥ずかしいはずなのに、今はただ早く弄って欲しいと言うことだけしか脳裏にない。
「ゴメン、冗談が過ぎたね。大好きだよ、なのは」
 立ち上がったカレがそう言いながらすぐ側に来て、いきなり胸を掴まれた。
 さっきまでとは違う手の平の感触と、じっと見つめてくるカレの目に浮かぶ、申し訳なさそうな目が、昂りきっていた心と体の限界を容易に超えさせた。
「あ……あぁ…………んっ……あ? ふぁぁああああっっっ!!」
 胸を掴まれただけなのに一気に頂きに押し上げられて、ぷしゃっと股間から液体をまき散らしてしまう。
「もしかしてもうイッたの? そんなに気持ちよかったんだ」
 カレがそのまま胸を揉み始めて、それだけでびくんびくんっと勝手に身体が勝手にはね回る。
 つっと太股を伝い、直接床にぽたぽたとこぼれ落ちているそれが少し恥ずかしくて、そう思うだけで余計に気持ちが良くて。
「ふふっ、なのはもホントHになったよね」
「そ、そんなこと言っちゃやだ……んっ!」
 恥ずかしさに思わず言葉を紡ごうとして、なのはは思わず息を詰めた。
 優しく動く指先が、肌をつつっとなぞり始めたから。
 胸の先をくるくると回すように弄られ、それが徐々にしたに降りていく。
 脇腹やへそを弄られて一番下に到達する寸前、まだ形を成すまでには至っていない和毛のあたりをさすり始めた。
 その先をさわられるのは、いくら何度もしたことだとしてもやっぱり恥ずかしくて、それでもこの状態で耐えるには、身体の熱はとてつもなく熱すぎて。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 00:58:52 ID:pd4o7gH1<> 「……あ、あの」
「何かな?」
 涙目でカレを見上げる。
 このまま最後までさわって欲しい、早くもう一度イカせてほしい。
 その思いは伝わっているはずなのに、カレが向けてくるのは単なる微笑み。
「あの……その…………さわって」
 精一杯の勇気を込めて囁いたのに、カレがなのはに向けてくる微笑みは変わらなくて。
「どこをさわって欲しいのかな? ちゃんと言ってくれないと解らないよ」
 さっきと同じ言葉を言われて、恥ずかしさのあまり涙が一粒こぼれ落ちる。
「非道いよ。そんなの、言えない、言えないよぉ」
 ぽろぽろと涙が後から後から零れて、不意にぎゅっと抱きしめられた。
 顎を上げられたと同時に唇が重ねられて、そのまま舌が入り込んできた。
 不思議な甘さと温もりが舌に絡んできて、なのはもぎゅっとカレの首筋に腕を回して激しく舌を動かす。
 大好きなカレにキスをされている、そう思っただけで体が熱くなって。
「んっ…………んっっ……んぅっっっっ!!」
 一気に頂へと押し上げられた。
 激しくカレの舌を吸い上げながらも、体中から力が抜けてカレにもたれかかる。
 ぴゅっとまた潮を吹いていることを自覚して、恥ずかしさが募る。
 ちゅぽんっと音がして、カレの舌が口から抜け出るのが切なくて、つっと走った銀の糸をぼうっと眺めていた。
 そのまま、優しく抱き上げられて、ベッドに座らされた。

「……なのは、両手を後ろに回して」
 どこかぼうっとした頭で、カレの言葉通りに両手を後ろに回す。
 何をされるのか解らなくて、それでもそれが不安だとかそんな気持ちはいっさい無くて。
 だから、反応できなかった。
「ストラグルバインド」
 カレがぽつりと呟いた瞬間、後ろに回した両手が手首のあたりで縛られて、両膝のあたりに絡みつく。
 膝に絡みついたそれが後ろに引っ張られて、M字状に足を開かされた。
「あ、え……や、やだ! 見ないで、見ちゃイヤ!」
 思わず身をよじってカレの視線から身体を隠そうとして、それが無駄なことに気づく。
 にこりと笑顔を浮かべたカレがすぐ傍に近寄って、
「ひゃんっ!」
 いきなりなのはのそこを下から上へとなで上げた。
 その刺激と、くちゅりと湿っぽい音がたったせいで、なのはは顔を真っ赤にする。
「ふふっ……。そう言うけど、なのはの此処はもっと見て欲しい、さわって欲しいって言ってるよ?」
「そ、そんなこと無いもん」
 意地悪な笑顔を浮かべるカレの質問に、顔を逸らしてなのは否定の言葉を吐き出す。
 こんな格好をさせられるのが恥ずかしくて、もっと普通に抱いて欲しくて、なのに、いつも意地悪で。
「……コレでも?」
 カレがなのはの顔の前に右手を差し出してくる。
 その中指が液体で濡れ光っていて、それに押し当てて離した親指との間で糸を引いた。
 どきんっと、心臓が強く跳ねて、恥ずかしすぎて泣きたくなる。
「大体さ、もう何度も見てるんだよ? 満月や太陽や電灯の明るい光の下でさ。なのに、なんで恥ずかしがるの?」
 そんなカレの声に、なのはの脳裏に今までの経験がよみがえる。
 たとえば、人気のない夜の公園。
 たとえば、プライベートビーチの一角。
 たとえば……、階下に家族がいる自室。
 思い出すたびに、体中が熱くなってくる。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 00:59:50 ID:pd4o7gH1<> 「それに、ホントはさわって欲しいんでしょ? ほら、僕が何か言うたびに、とぷんとぷんって、愛液が零れてるよ」
 それは自分でも解っていたことで、それでもカレに指摘されるのがとても恥ずかしくて。
 なにより、大好きなカレの少し変わったやり方に翻弄されるだけの自分がイヤで、なのははぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「ぐすっ……非道いよ……なんで…………ひっく…………なんでそんな意地悪なの」
 カレが驚きの表情を浮かべるのが、涙で歪んだ視界で僅かに見えて、なのはは泣きながらカレを見つめた。
「っく……やだよ、こんなのやだよぉ…………もっと優しくしてよ……いつもみたいに……ぐすっ…………優しいアナタでいてよ…………」
 もう、自分でも耐えられなくて、目を閉じてなのはは想いを吐き出す。
 そうでもしないと、誰よりも大好きで大事なカレを、嫌いになってしまいそうだったから。
「……ゴメンね、なのは」
 カレの優しい声が聞こえて、額にちゅっと口づけされるのを感じた。
 そのまま今度は左右の瞼に順番にキスされる。
 それは、くすぐったさと嬉しさの混じった奇妙な感触で、カレの唇が左右の涙の跡をぬぐっていく感覚が、気持ちよかった。
「なのはの事、誰よりも好きだから。大好きだから、僕は意地悪しすぎるんだ」
 そう言いながらカレがなのはをぽすんと押し倒してきて。
「やりすぎないよう注意してるんだけど、でも抑えられないんだ。だけど、それはなのはを愛してるからなんだ」
 カレの言葉が胸の中にしみこんでくる。
 カレが自分を愛してくれている、そう思うだけでなのはの身体と心は高みへと向かって上っていく。
「だから、ゴメン」
 その言葉を合図にして、ぴたりと入り口に熱い物があてがわれる。
 こちらが何かを言うよりも早く、カレが一気に最奥まで突き込んできた。
「っっ!!」
 最初からずっと昂ぶっていた身体とカレの言葉で舞い上がっていた心の相乗効果で、あっという間に絶頂に達するなのは。
 びくびくと痙攣する全身に、頭の中が真っ白になる感触に、ただ入ってきただけでイッ手締まった自分に、ただ怖さを感じて、なのはは必死でカレを見つめる。
「か、かはっ! ま、まって……ふにゃぁぁぁぁっっっっ!!」
 お願いだから、しばらく動かないで欲しい。そう言おうとしたのに、カレがいきなり全力で動き出して、一瞬でなのははまた上り詰めた。
「ゴメン……なのは…………止まれない!」
 ずんっと最奥を突かれる度、ずるっと中の壁を引っかかれる度、カレの手が全身をはい回る度になのははイッてしまう。
 普段なら、インターバルを置いて繰り返される絶頂が、ずっと終わることなく続いていた。
「や……やは…………こ……こわ……ひぎっっ!? こわれちゃう…………おねが、おねがい……やすませ…………ひゃふっっ!!」
 なのはの必死の懇願にカレの動きが一度止まった。
「はふ……はふぅ…………」
 何とか呼吸を整える。
 もう少しで訪れそうだった真っ白な高み、それに至るのが怖くて、だから安堵した。
 カレがぱちんっと指を鳴らす。
 両膝を固定していたバインドだけが解けて、カレが一旦なのはの身体から離れた。
「っ!」
 ずるりと引き抜かれる感触だけでもう一度イッて、それでもまだ終わっていないカレが離れた理由がわからなくて。
 不意にくるんとなのはの身体が回転させられた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 01:01:26 ID:pd4o7gH1<> 「え?」
 同時に肩の当たりに親指くらいのアクセルフィンが展開されたことに気づく。
 ふわりと浮かんだ上半身は、ちょうど四つんばいになったときと同じ高さで動きを止めた。
 一瞬訳がわからなくて、縛られたままの手を前に回そうとしてしまう。
「え、あ、な、何……っっ! いやぁっっ!!」
 いきなり舐め上げられて、イキながらなのはは振り返った。
「や、やだやだやだそこはダメ! 汚いからだめっっ!!」
 カレの顔がおしりに埋まっているのが見えて、同時に後側が舌でほじくられる。
 前もクリトリスを愛撫されながら、指で掻き回されてまたちかちかと視界が明滅する。
「でも、気持ちいいんでしょ?」
 顔を上げたカレが少しだけ意地悪な笑顔を浮かべていて、反応するよりも早く、カレがそこから離れた。
 そのまま、ずんっと一気に一番奥まで貫かれる。
 大きく目を見開きながら息を吐き出すのと同時、後側にも何かが入ってきた。
「っっ!」
「ほら、こっちもきゅって締め付けてくるんだしさ」
 カレが作り出したバイブが後ろに入ってきたのだと気づかされた。
「ほら、気持ちいいんでしょ。ずっと痙攣しっぱなしで締め付けっぱなしだしね」
 そんなカレの言葉が、どこか遠くから聞こえてくる。
 ちかちかと明滅する視界。
 頭が着いていかないほどの早さでずっとイキ続けているから。
「ひゃふっっ!! ひぁっっ!! ふにゃぁっっ!!」
 カレの動きとバイブが連動して、身体の内側を掻き回される。
 カレが背中に身体を預けて胸を揉みしだいてくる。
 伸ばされた手が口元に触れて、思わずそれを舐めしゃぶる。
 びくびくと震える体。
 白くなっていく心。
「なのは…………なのは……イクよ」
 カレの言葉を胡乱な頭で聞きながら、ゾクゾクと背筋を振るわせた。
 今までも最大の高みが迫っている事に気づいたから。
「くっ! なのはっ!」
 荒い息とともに吐き出されたカレの声。
 胎内にぶちまけられた熱い液体の感触に、ぷつりと心のどこかがキレた。
「っっにゃぁぁあああっっ!!」
 今までで最大の絶頂を全身で味わいながら、なのはは暗い闇の中に意識を落としていった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 01:02:40 ID:pd4o7gH1<>  それは、少し懐かしくて悲しかったこと。
 それが夢なのだと、なのは自身気づいていた。
 だけど、それをただ見ることしかできないことも解っていて。
 だからなのはは、ただそれを見つめていた。


「……え?」
「だから、僕は……僕たちは、なのはのことを一人の少女として愛している」
「そうなんだよ。なのはがどちらを選んでも、それは構わない。だけど、僕もこいつもこのままでいることにもう、耐えられないんだ」
 アースラの食堂内の一角。
 人気のないその場所で、正面に腰を落ち着けているユーノとクロノの言葉に、なのはは何も言うことができなかった。
「混乱させてすまないと思う。だが、僕は自分の気持ちをこれ以上隠していられないんだ」
 真剣な眼差しで見つめてくるクロノ。
 六年間、同僚としてまた頼れる先輩として、いつも相談に乗ってくれていたのが、その気持ちの表れなのだと今更知って、なのはの胸が痛む。
「なのは……、ゴメン、いきなりだったよね。でも、もう耐えられなかったんだ」
 沈痛な表情を浮かべるユーノ。
 ユーノがそんな気持ちでいたなんて、なのはは全く気づいていなかった。
 長い休みの度にわざわざ来てくれる大事な友達、そんな風にしか思っていなかったのに、その気持ちに気づいていなかった自分が、今でもよくわかっていない自分が、少し辛かった。
「……私」
 けれど、二人から告白されて胸が高鳴ったのも事実だった。
 なのはだって中学生で、恋愛話には甘いあこがれを持っているのだ。
 嬉しくないわけがなくて。
 それでも、胸の奥がちくんっと痛む。
 どちらかを選ぶと言うことは、どちらかを選ばないと言うことだから。
 二人の想いに応えたい。
 優しい二人の綺麗な想いに、自分も同じ想いを抱きたい。
 それでも、もう一人を傷つけると解っていても、選ばなければならないのならなのはが選ぶのはカレの方。
 その言葉を投げかけられてより強く胸に響いたのはカレだったから。
 それはきっと、ずっと前からなのはもカレに惹かれていたから。
 だからなのはは、カレの言葉を受け入れた。
 カレの傍にいられる嬉しさともう一人を傷つけた痛みを共に抱いて、なのははきっと少し大人になれた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 01:03:55 ID:pd4o7gH1<> 「……ん…………」
 ゆっくりとなのはは目を覚ました。
「あ、起こしちゃった?」
 隣で横になっているカレが、優しい笑顔を浮かべて見つめてくる。
 それに気づいて、自分の痴態を思い出して顔を真っ赤にする。
 汗や涎などは綺麗に拭われて、カレの部屋に常時置いているパジャマが着せられていることに気づいて。
 それが余計に恥ずかしかった。
「なのは、ゴメンね」
 その優しい声に恥ずかしがりながらも、なのははカレを見つめる。
「ホントは、さ。こんな事しちゃいけないって解ってるんだ。なのはのいやがることはしたくないんだ」
 カレの真剣な声に、なのはは何も言わずにじっと耳を傾ける。
「でもさ、なのはは可愛いしたくさんの人に慕われているから、だから僕だけの、他の誰にも見せないなのはが欲しいんだ。……そりゃ、大人のおもちゃとか使うのは行きすぎてるって言われるのも解ってる。でも、それでも……」
 それ以上、カレが言葉を紡ぐよりも早く、なのはは少しだけ背伸びしながらカレの頬に優しくキスをする。
「私は良いよ。……そうしたいんだったら。そのあまり意地悪にならないでくれたら」
 ああして、動きを縛られるのはかなり恥ずかしくて、インナーやバイブを使われるのは正直少し辛いけれど、そうされていると自分の全てがカレの物になっている気がしていた。
 だから今までは、イヤだけど本気では抵抗してこなかった。
 いつもはきちんと優しく愛してくれていたから。
「今日はね、凄く意地悪だったもん。大好きな人にあんなに意地悪されるのは悲しいよ」
 何も言わずに見つめてくるカレに、なのははそれでも笑顔を向ける。
「だからね、あんまり意地悪じゃなかったら私は良いよ。……それに……ちょっとは気持ちいいし」
 最後の方は小声で呟いて、カレがくすりと笑ったことに気づいた。
「むーー、なんでそこで笑うかな」
「あはは、ゴメンゴメン、なのはは本当に可愛いなって思っただけ」
 言われてまた顔が真っ赤になる。
「あはははは、ホントに可愛いね」
「っっ!」
 からかわれているように思えて、思わず手をのばしてカレの頬をつまむ。
「いひゃひゃひゃ! いひゃいいひゃい、ほへんほへんっへ!」
「……もう、ホントに意地悪なんだから」
 なのはは手を離しながら、ぷいっと顔をあさっての方向に向けた。
「ゴメンってば、機嫌なおして、ね?」
 さわさわと頭を撫でられて、それだけで嬉しい自分を思い知らされて。
「……意地悪」
「ん」
 それでもカレの手の動きは止まらなくて、その気持ちが抑えきれなくて。
 なのははカレの顔へと視線を向け直す。
 口元が勝手にゆるむのを自覚して、そのままなのはは笑顔を作った。
「……ノ君、大好きだよっ!」
 カレが何かを言うよりも早く、カレの唇にキスをした。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 01:08:59 ID:pd4o7gH1<> えー、と言うことで、なんてーか無茶な話になってしまいました。
最初はクロノ×なのはのショタエロなんて書こうと思ってたのに、気が付けばこんな話に。
どこから電波受信したんでしょうねぇ(ぉ

今回の相手がエロノなのか淫獣なのかは、皆さんのご想像にお任せします。
いや、どっちもできそうな気がしてますし……。
まぁ、基本純愛しか書けないんで、拘束が半端すぎるとか、なんで鬼畜ルートにいかねぇってツッコミはどうかなしの方向で(汗

そ、それでは読んでくださった方、ありがとうございました。 <> 396
◆SIKU8mZxms <>sage<>2006/09/18(月) 02:01:49 ID:itrt98uJ<> こんばんわ。396です。覚えている人はお久しぶり。そうでない人は初めまして。
まずは3期おめでとうございます。とても嬉しいかぎりです。
お前誰だよという人は549氏の保管庫で検索してください。そこそこ面白い小説が読める…かも。
さて、3期が始まってしまう前に、自分の妄想を全て吐き出すため、新作をつい先日書き始めました。
あれから何も書いてないし、最初は下手かもしれません。そして最大の注意事項。オリジナルキャラが出ます。
前回の様に逃げずに、細かく設定を決め、できるだけなのはの世界を壊さず書いていくつもりです。
ただ、前よりは絶対面白くする自信はあります。

ちなみに第一話〜第五話は日常パート&オリキャラなしなので多少の伏線を気にしなければ誰でも読めます。たぶん。
時間軸は闇の書事件から3年たった4年目の夏。なのは達は中1。前作A's+とは一切関係ありません。それでは投下します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:02:38 ID:itrt98uJ<>

プロローグ



暗雲の立ち込める空。気まぐれに轟く雷鳴。森林の深緑が不気味にあたりを包むように広がっている。
強風は大地に縛られない全てのものを巻き上げるように吹き荒れる。
その暗黒の中、二つの影が対峙するように浮かんでいた。

「お願い!理由を聞かせて!!」

白い影、先端に赤い宝玉のついた杖を持つ少女は必死に訴えた。
その少女の懇願の叫びに少年はデジャヴを覚えた。
それと同時に、自分がまだ信頼されている事に胸を締め付けられる。

マントをたなびかせ少年は考える。
どうしてこんなことになったんだろうか。選択を間違えた?他に方法がない?
しかし答えなどないことはわかっていた。
今は、自分を信じるしかない。

「杖をかまえて…」

静かに、しかしはっきりと少年は言う。少女からは少年の表情は見えない。
少女の逡巡が長い沈黙を生み、杖の先端の赤い宝玉にぽつ、ぽつ、と雨が当たり始めた。
しだいに雨は強さを増していく。

「僕と戦うんだ」

少年はゆっくりとした動きで両手を腰の後ろに回す。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:03:32 ID:itrt98uJ<> そして腰から2本の刃(やいば)を抜き、片方をくるっと回して逆手に持ち変えた。
自分のよく知る優しい少年には不釣合いの凶器に、少女は目を見開いた。

「なんで!?そんなのできない…できないよ!!!」

少女は大きく首を振りさらに訴える。
泣いているのか、そうでないのか激しい雨で定かではない。
困惑と悲しみから杖を持つ手が震え、杖に当たる雨粒が弾けた。

「引けないんだ。それに、引かせるわけにもいかない。だから…」

自分を納得させるように、言えない苦しみを振り払うかのように、力強く少年は続ける。
そして二つの鋭利な刃先を少女に向け、自分の目線にまで持ち上げ構えた。
決意を秘めたエメラルドの美しい瞳に少女が映る。

「だから、僕と戦え!!!」

カッと光った稲妻を合図に少年は飛び出した。
高速で向かってきた少年に怯えるかのように、少女は、杖を構えた。


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:04:18 ID:itrt98uJ<>

魔法少女リリカルなのはA's++


第一話 「きっかけは再会から」


<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:04:55 ID:itrt98uJ<>
「ユーノ!ユーノ・スクライア!!」
「うわっ!!!」

突然の声にユーノの体が跳ね上がり、その拍子にバサバサと机に積まれた本が崩れ床へと落下した。
室内にほこりが舞い、目の前にいる人物と咳き込む。
突然入ってきた刺激にユーノは激しく混乱し、自分の置かれている状況が把握できなかった。
顔を上げると、眼鏡をかけた女性がきつい目をしてこちらをにらんでいるのがぼんやり見えた。

「…よだれ、拭いてください」
「え!?あ、ごめん!」
反射的に出た謝罪とともにごしごしと口の辺りをぬぐいながら、周りを確認する。
両脇には様々な分野の書籍が本棚に並び、床にも折り重なるように本が散らばっていて足の踏み場もない。
机の上では板のようなコンピュータが光を放っていて、広げられたままの本には染みがついていた。
そして最近かけはじめた眼鏡が転がっているのを見てユーノはようやく理解した。
自分が居眠りをしていたということを。のろのろと眼鏡を手に取りかけると、
自分よりも7、8歳も年上の女性のにらみがはっきり見え、恐怖とともに少し目が覚めた。

「これが管理局から頼まれていた資料で、こちらが民間企業からの依頼書です」
いまだに動きが鈍いユーノとは対照的に、女性はてきぱきと手持ちの資料を渡してきた。
もちろん書面ではなくカード型のデータ蓄積機器で、区別のためか可愛らしいラベルがついていた。
彼女がつけたのだろうか。ギャップで少し笑いが込み上げたが、ユーノは必死にこらえた。
今は謝ることが先決だ。
「あの、えっと…ごめんなさい」
深々と頭を下げると後ろで結った髪が前に下りてしまい慌てて直した。
その様子を見て女性はため息をつくと、少しやわらかい口調でユーノに話した。
「お疲れのようでしたら、休暇届をお出しになったらよろしいのでは?
といっても、今は2日間が限界ですけど」
矛盾するような発言にユーノは顔をしかめたが、女性は気にせず続けた。
「あなたはこの無限書庫には必要不可欠な存在です。倒れられたら困ります」 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:05:30 ID:itrt98uJ<> 「…わかってますよ。僕だってこの仕事は嫌いじゃないですし」
寝起きで機嫌が悪いのもあってか、ユーノは少し反抗的な口調で返した。
「元気があるようなので私は失礼します」
女性は微笑むとつかつかと扉に向かって歩き、さっさと出て行ってしまった。
ユーノはその反応に半ば呆れ気味に扉を数秒見つめ、気を取り直すように床に散らばった本を本棚に戻し始めた。
「はぁ…」
あらかたの本を戻し終えると、大きなため息とともにどっかりと椅子に腰掛け、目を瞑る。
眠気はとっくに吹き飛んでいたし、もう寝てもいられない。ただ、目を瞑っている間も山積みの問題の存在が頭を離れなかった。
眉をひそめ再び目を開けると少し薄汚れた部屋の天井が見えた。
同時に、迫ってくるような感覚を覚える。
「休み…ね」
そう一人ごち、しばし考えた後背伸びをして途中だった仕事を続けた。


無限書庫。そこは『世界の記憶を収めた場所』とも呼ばれている。何年も前から時空管理局本局内にある
その巨大なデータベースが本格的に使われるようになったのは、つい最近の事である。
きっかけは3年前の闇の書事件。情報収集能力を買われたユーノが利用し、見つけるのに数人で何年もかかるであろう
情報をほぼ一人で引き出し、それを元にクロノ率いるアースラチームが事件を解決した。
ユーノに管理局から声がかかるのは時間の問題だった。ユーノ自身知識への探究心と好奇心から二つ返事で司書として
働くことを決めた。仕事の内容も十分理解していたし、なにより実際働いてやりがいがあった。
初めは数人の司書とともにまったく整理されていない“無限”と冠される資料達を少しずつ整理していった。
もちろんまだ終わっていないし、終わることはないだろうが、誰も手をつけていないものに触れるということは
ユーノの心をより弾ませた。検索魔法に関しては特に優秀であったユーノは整理中も舞い込む情報検索の
依頼を的確にこなし、その名は書庫外にも知れ渡り各方面へ多大な信頼を得る結果となった。

なったのだが、それが問題だった。管理局からの仕事以外にも情報検索の依頼が来るようになったのだ。
過去の、しかも失われてしまった資料があるかもしれない無限書庫の可能性もまた無限大だ。
司書の数は大幅に増員され役職としての明確な組織化が進み、名ばかりであった司書長にも管理能力が問われることとなった。
結果、今までの司書長は依願退職、まるで決まっていたかのように推薦されたユーノが後釜に座らされた。
優秀なユーノを逃がしたくはないという本局の意向もあったのかもしれない。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:06:05 ID:itrt98uJ<> 異例のスピード出世をしたにもかかわらず、ユーノは元々責任感が強かったのもあり変わらずよく働いた。
それでも、暇を見つけては友人達と会ったり自分の研究を続けたりした。
忙しい日々に不満はなかったし充実していると言える。言えるが、どうも最近心に空白を感じていた。
無限書庫に働く前にはなかったこの微妙な違和感の正体がなんなのかわからず、それが無性にユーノを不安にさせるのだった。


「ふぅ…」
ユーノはコンピュータから顔を上げると室内の時計に目を移した。
かれこれ3時間ほどかけてデータ整理が終わらせた。今日の分の仕事は一通りこなしたといってよい。
(夕食時か…)
ユーノは健康管理には一応は気を遣っている方なので、食事は時間通りに食べるようにしている。
3日に一回は。…いや、4日に一回は。
ふと、コンピュータ上の本局のスケジュールが目に入る。
(そういや今はアースラが停泊してるんだっけ)
本局には整備とエネルギー補給のために戦艦が数隻入れ替わるように入ってくる。
ここ数日はアースラの番だったはずだ。久しぶりに顔を出すのも良いかもしれない。
疲れのせいか精神的に弱っていると自分でもわかったので、ここらで気分転換しに行こうと思った。
実はこのような考えでアースラに出向いた事は過去にも何度かあったのだが、必ず会うのは自分を小馬鹿にする年上の青年だった。
(もういいや、この際会うのがクロノでも)
当人が聞いたら怒りそうなことを考えながら、ユーノは立ち上がり部屋を後にした。

                 *

「失礼します」
無機質な扉が音もなくスライドし、栗毛色のショートカットの少女とロングヘアーで長身の女性が部屋へと入室した。
中にいた女性は二人を見てゆっくりと微笑んだ。
「いらっしゃい」
まるで家にでも招くかのような女性の物言いに少女は微笑み返し、隣の女性は少し肩の力を抜いた。
もとより緊張感はなかったが、直属ではないとはいえ自分の上司に当たる人の部屋だ。それなりに心構えもしてきてある。
しかし、局内では珍しく日本の品物が多いその部屋では、つい普段以上にリラックスしてしまうのだった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:06:42 ID:itrt98uJ<> 「今回もお手柄だったわね、はやてちゃん」
「いえ、これもシグナム達のおかげです」
はやてと呼ばれた少女が隣の女性に微笑むと、女性、シグナムは当然とばかりに軽く頭を下げて言った。
「我らの手柄は主の手柄。何も気にする必要などありません」
その予想通りの反応に上司であるリンディは苦笑した。
「3年でロストロギアを7つ…。時空管理局始まって以来の快挙ね」
部屋にある大きめのスクリーンにこれまで確保したロストロギアの情報が映し出される。
危険なものから、あっけなく入手できたものまで。はやてはその映像を見て感慨にふけった。
闇の書事件が解決してから3年。管理局で働くようになって3年。今では足も完治し、自分の意志で自由に好きなところへ行ける。
長かったような短かったような、とにかく自分の魔法使いとしての始まりの全てがそこにあった。

「はやてちゃん?」
「はぇ!?す、すいません!」
ぼーっと映像に見入っていたので突然現実へと引き戻されはやては驚いた。シグナムも隣で不思議そうな顔をしている。
「あ、あの、でも、これも私たちだけやなくて管理局の人たち皆が頑張ってくれたおかげやと思います」
少し恥ずかしげに、前から思っていた事をはやては述べた。
たとえ自分達に大きな魔力と能力があろうと、なんの情報もなしに広大に広がる次元の海からロストロギアを見つけることは
砂漠に落とした針を見つけることよりも難しい。時には無駄足になることも少なくはなかったが、送られてきた情報は厳選され、
いつもはやてとヴォルケンリッターの助けとなってくれた。
「それは私も同感です。特に、無限書庫がなければこれほどの成果は得られなかったでしょう」
珍しくシグナムが自ら発言した。おそらくシグナム自身も前から思っていたことなのだろう。はやてと騎士達とを結びつけ、
過去の償いを果たすことが出来る任務。それを十分にこなし、なおかつ期待以上の評価を得ることができているのだから当然だ。
「短期間での無限書庫のフル稼働…。本来あるべき姿なのだけれど、これもひとえにユーノ君のおかげね」
リンディも頷きながら言う。あまりの情報量ゆえ誰も手をつけようとせず宝の持ち腐れだった無限書庫は、今では十二分にその力を発揮している。
無限書庫の仕事は恐ろしいほどの激務であることをリンディは最近知った。
相手は世界の情報なのだ。整備するだけで途方もない年月を浪費するだろうことは想像に難くない。
「ユーノ君といえば、これは私自身も感じていることなのだけど…」
リンディは角砂糖を一つ湯飲みに落としながら言った。
「本局でのデスクワークって、結構寂しいものなのよね。だから、たまには顔くらい出してあげてね」
リンディは実の子であるクロノと養子にしたフェイト以外にも、自分が関わった全ての子供達をまるで我が子のように目をかけていた。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:07:19 ID:itrt98uJ<> 報告会とは名ばかりのこの世間話の場も、はやてと十分にコミュニケーションをとるためのものだ。
もちろん、自分が寂しいと言うのも嘘ではなかった。
「はい、わかりました」
はやては微笑みながら了承した。なのはとフェイトは学校で、クロノとエイミィにはアースラで顔をあわせるが、一番世話になっている
ユーノにはここしばらく会っていない。
(なんや今までが失礼やった気もするなー)
自分の態度を振り返りはやては内心苦笑した。
良い返事が聞けたリンディはにっこりと微笑んだ。
そうだ、ついでだからあのことも教えてあげよう、と小さな悪戯心とともにはやてに話しかけた。
「ああ、そういえばついさっき無限書庫に関して決まったことがあるのだけれど…」
少し面白そうに切り出すリンディに、はやてとシグナムは不思議そうに顔を見合わせ耳を傾けた。

                 *

ユーノは迷いそうになる白い通路を淡々と歩いていた。どこを曲がっても同じように見えるというのはデザイン的にはいいだろうが
機能的ではない、とユーノは以前から思っていた。
曲がり角に来るたびにデジタルの表示が点灯し目的地を示してくれるので迷うことはなかったが。
ふと、数メートル先で扉が開き人影が中から出てくるのが見えた。

「あれ?はやてにシグナム…?」
そう呟くと向こうもこちらに気づいたようで、ユーノの名前を呼んで手を挙げた。
「なんやえらくタイミングええなー」
「そうですね」
「?」
近づいてくるやいなやはやてとシグナムがそんなことをいうのでユーノは首を傾げた。
そのまま三人で通路を進むとはやてが話しかけてきた。
「ところでユーノ君はこんなところでなにしてるん?」
久しぶりに本局では聞かない特有の訛りを聞いてユーノは少し新鮮な気分になった。
「いや、ちょっと休憩がてらアースラに行こうかなって思って」
そう言うユーノの瞳に憂いのようなものが見えたのをはやては見逃さなかった。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:07:53 ID:itrt98uJ<> (やっぱりリンディさんの言ってたとおりやな)
大人の見る目は違う、と改めて思った。それとともに目の前のこの疲れきったような少年をどうにもほっとけなくなった。
たぶんこれは生まれ持った自分の性分なのだろう。
「シグナム」
「なんでしょう」
シグナムは主の呼びかけに即座に答えた。どんなときでも気を抜かないのが騎士としての心構えだ。
「今日は私もアースラに寄るからシグナムは先に帰っといて。夕飯は皆で食べてしまってええから」
「はい、わかりました」
シグナムは答えながらもヴィータが寂しがるだろうな、と思った。
「ヴィータには冷凍庫の私のアイスあげてええよ」
「言っておきます」
まるで心を読んだかのように付け加えるはやてにシグナムは微笑みで返した。
その生活感溢れる会話の様子を見て、ユーノははやて達は立派に家族として絆が生まれていることを実感した。
(…家族か…)
久しく会っていない自分の家族を思い出す。スクライア一族。そこに血の繋がりはなかったが、温かい家庭があった。
母親のような女性もいた。今はみんな何をしているんだろうか。
急にミッドチルダへの郷愁のようなものをユーノは覚えた。
「ほら、なにしとるんや。はよ行こ?」
「え?あ、うん」
少し物思いにふけったが呼び声に気づき、ユーノははやてに連れ添って歩き出した。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 02:08:33 ID:itrt98uJ<> 次回へ続く

次回予告

第二話 「ひねくれた友情」
<> 396
◆SIKU8mZxms <>sage<>2006/09/18(月) 02:09:46 ID:itrt98uJ<> はぁ、久しぶりの投下で緊張で手が震えた…。
最初のプロローグは夢か、現実か、比喩か、そもそも誰のことなのか各自で予想すると、この先楽しく読めると思います。
かなり悩んだんですが読んでる人を引き込むために設けました。
タイトルはまぎらわしいですが、某機械語をイメージしています。理系なもので。
396の書く小説は男キャラ燃え(特にユーノ)、恋愛描写萌えです。そういうのが好きな人、是非。それでは。
<> うほ<><>2006/09/18(月) 03:30:13 ID:VGOBZk6B<> やべ・・・・
すごくおもしろそう・・・ <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 04:21:45 ID:od3TCf8I<> >>363
つづきをおまちしてまする。
>>389
はい、おもいっきし、引きずり込まれてます。 <> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>SAGE<>2006/09/18(月) 06:36:46 ID:kyKlTYd8<> ネカフェから書込みだー(こんな時間にw)
そろそろ次スレですね。また私が立ててもいいのかな?
22時くらいには立てれるんだけど…(さすがにネカフェではやりたくない、と言うかトリ合ってますようにw)
ま、夜までに立ってなかったら私立てます〜
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/18(月) 10:01:33 ID:Me4Ry73X<> >>363
                _∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_
     デケデケ      |                         |
        ドコドコ   <   続きマダ〜〜〜〜!?         >
   ☆      ドムドム |_  _  _ _ _ _ _ _ _ _|
        ☆   ダダダダ! ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨
  ドシャーン!  ヽ         オラオラッ!!    ♪
         =≡= ∧_∧     ☆
      ♪   / 〃(・∀・ #)    / シャンシャン
    ♪   〆  ┌\と\と.ヾ∈≡∋ゞ
         ||  γ ⌒ヽヽコ ノ   ||
         || ΣΣ  .|:::|∪〓  ||   ♪
        ./|\人 _.ノノ _||_. /|\
         ドチドチ!
<> 4の422
◆h7y.ES/oZI <>sage<>2006/09/18(月) 18:31:38 ID:4KeHsRCP<> うぉあ!スレ立てしようとしたらホストはじかれた!
誰か変わりにスレ立てお願いします(^^;)

−−−−−−−−−−↓−新テンプレw−↓−−−−−−−−−−−−
魔法少女、続いてます。

 ここは、

  魔法少女リリカルなのは
  魔法少女リリカルなのはA's
 ( 魔法少女リリカルなのはStrikerS )

 のエロパロスレです。

ローカル ルール〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

*● Even if there is not Eroticism, it is all right. My Master!
 (エロは無くても大丈夫です。マスター!)

*▽ Sir. But The Epistles of strange taste(included adult oriented)
                   asks for confirmation or Instructions of beforehand.
 (サー。しかし特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に確認又は注意書きをお願いします)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

*+ マイスター、前スレと保管庫はこちらですっ!

 ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第十一話☆
 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155058094/

 ☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html

−−−−−−−−−↓−−ノーマルテンプレ−−↓−−−−−−−−−−−−−−−−−−

魔法少女、続いてます。

 魔法少女リリカルなのは
 魔法少女リリカルなのはA's
( 魔法少女リリカルなのはStrikerS )

のエロパロスレです。

ローカル ルール〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・ エロは無くても大丈夫。
・ 特殊な嗜好の作品は投稿前に確認(注意書き)をお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

前スレです。
 ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第十一話☆
 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155058094/


保管庫です。
☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html
<> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/18(月) 18:58:43 ID:mpEEkBO4<> 立てました。

☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第十二話☆

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1158573423/l50 <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/09/18(月) 23:18:42 ID:ORijQiVA<> ご苦労様です。埋め立て開始しますね、

例によってアレ注意ですが <> 「同人誌」フェレットのタンゴ4
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/09/18(月) 23:19:21 ID:ORijQiVA<> 緑に輝く 魔方陣
書庫はいつも君のものさ
フェレットのタンゴ
タンゴ タンゴ
僕の恋人は フェレットさ
だけどあんまり つれないと
デュランダルは
(キュー)
お預けだよ
ララララララ ララ
(キュー)

クロノ(独白)
 ね、寝れない……
 理由は分かっている。
 読んでしまった同人誌だ。
 シグナムの少女趣味全開の文と
 ヴィータの耽美ここに極めりと
 言った絵のダブルパンチは
 強烈だった。
 しかも全年齢かと思えば
 最後の最後でユーノを
 半裸緊迫、ローターin(ピー)
 で放置プレイだし

 ……ヴィータ(外見年齢8歳)に
 何書かせてるんだ。
 シグナム…… <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/09/18(月) 23:23:29 ID:ORijQiVA<> と言う訳で埋め立てクロノ×ユーノです。
ようやく同人誌から返ってきました。
次スレでは多分月村家に突撃です。
多分……

今回は容量が少ないのでまだ
色々出来そうですね <> 6スレ480
◆erhU6I9J2g <>sage<>2006/09/18(月) 23:37:38 ID:ORijQiVA<> 忘れてた(汗

>363 氏
続きは次スレで待っています。

>396氏
お帰りなさい <> 埋め@396
◆SIKU8mZxms <>sage<>2006/09/19(火) 01:51:33 ID:tfsnORC2<> 容量まだみたいなんでお手伝いを。
アップロードしたけどレスとして投下はしなかったので保管庫に載らなかった超短編です。
書いたのが前作書いてる時でタイトルが某アニメともろかぶりです。
ラノベは読まないので知りませんでした。では投下します。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/19(火) 01:52:05 ID:tfsnORC2<>
PM9:00 八神家

「あ〜いいお湯だった〜」
「はやて〜次入っていいぞ」
シャマルとヴィータがバスタオル姿で居間に出てきた。
「はやても一緒に入ったらよかったのに」
ヴィータがふてくされ気味にはやてに言った。
「さすがに中学生で体も大きなってしもたからな〜。三人はさすがに無理やろ。今度二人で入ろな」
「おー!」
はやてが入れ替わるように風呂場に入って行った。
居間ではシグナムが本を読み、子犬フォームのザフィーラが足元で眠そうに丸くなっていた。
テーブルには十字架のアクセサリーとなっているデバイスが置いてある。
「アイス、アイス〜♪」
ヴィータがアイスにスプーンを突き刺そうとした瞬間、テーブルのデバイスから半透明の少女が浮かび上がった。
『騎士のみなさん!』
ちょっと強めのその口調にシグナムは本から顔を上げ、ザフィーラは重たそうにまぶたを持ち上げた。
「んだよ。なんかよーか?」
目の前のアイスへの集中を妨げられたヴィータが少し苛立ち気味に言った。
『あの、騎士のみなさんに相談があるんですが…』
恥ずかしげにそう言うリィンフォースに、4人の騎士達は不思議そうにお互いを見合わせた。




            リィンフォースの憂鬱



<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/19(火) 01:52:38 ID:tfsnORC2<> 「実体化の方法を教えてくれ〜!?」
ヴィータがスプーンをくわえながら大きな声で言った。
『あ!!し〜!し〜です!!』
指を一本立て口元に当てながらリィンフォースは必死にヴィータに注意した。
「でもどうして急に?はやてちゃんにも聞かれたくないみたいだし…」
シャマルが濡れた髪をタオルで拭きながら尋ねた。
『こほん!』
それを聞いたリィンフォースは一息ついて騎士達を見渡しながら言った。
『プログラムである騎士さん達が実体化できて、わたしが実はわからないなんて
マイスターはやてに知られたらはずかしーじゃないですか。それに…』
元々小さいリィンフォースがさらに小さくなりながら続けた。
『わ、わたしだってマイスターはやてと一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりしたいんです…』
もじもじしながら小声で話すリィンフォース。
「そんなこと言われてもな〜。意識してねーからわかんねーよ」
ヴィータがアイスの最後の一口を放り込みながら言った。
『ええぇぇ!?』
リィンフォースはショックで蒼天の魔導書を落としそうになった。
「前のリィンフォースは普通にできてたよな?」
ヴィータがシャマルに尋ねた。
「そういえばそうね。……そうだ!」
ポンッと手を叩きシャマルがひらめいた。
「自分で魔力を込めてみたら?」
それを聞いたリィンフォースは目が点になる。
『そ、そういうものなのですか…。ようし、むむむむ…』
さっそくリィンフォースが魔力を込め始める。どこにどんな風に魔力を込めているのかは本人にしかわからない。
「テレビでも元気があればなんでもできるってあごの長いおっさんが言ってたしな!」
「頑張って!リィンちゃん!」
『はぁぁぁぁ!!』
ヴィータとシャマルが応援し、リィンフォースがその応援に答えるように声を上げる。
<> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/19(火) 01:53:13 ID:tfsnORC2<>
その様子を眺めていたシグナムが呆れ気味にザフィーラに言った。
「通常、主はやてが承認しなければ駄目なはずだが」
前のリィンフォースはあくまで例外中の例外だ。
ザフィーラが目を伏せながらそれに答えた。
「その通りだ。我々騎士達は主の魔力を元に存在しているのだからな。
そもそも、融合型デバイスのリィンフォースの様子は主に筒抜けのはずだ」

「アハハハハ」

耳を澄ますと風呂場から笑い声が聞こえてきた。

「まったく、最近お前達の騎士としての自覚が薄れて困る…」
「少女漫画を読んでいるお前もな」
憤慨するシグナムにザフィーラがすかさず突っ込んだ。

『たぁぁぁぁ!!!』
「頑張れ頑張れリィン!」
「だっしゃーー!気合だーー!!」
相変わらず力むリィンフォースと応援するシャマルとヴィータ。

八神家は今日も平和である。


追記:リィンフォースは風呂から上がったはやてに実体具現化させてもらってその夜一緒に寝たそうです。


<> 埋め@396
◆SIKU8mZxms <>sage<>2006/09/19(火) 01:56:59 ID:tfsnORC2<> 以上です。A's++第二話は水曜あたりに投下します。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/19(火) 02:19:36 ID:HxNbgTpf<> >>400-403
これが盗作でなくてなんとする?ええ?



ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/05_396/01_02.html
ちゃんと保管庫の↑のページにあるんですが言いたいことはありますか? <> 640
◆CaB8KPh.gs <>sage<>2006/09/19(火) 02:31:18 ID:TPeEbQ47<> >>405
盗作もなにも↑のページにあるものも396氏の書いたものである件について <> 埋め@396
◆SIKU8mZxms <>sage<>2006/09/19(火) 02:35:03 ID:tfsnORC2<> >>405
載ってたんですね…。作者別で見てたので気がつきませんでした。
すいません。 <> 名無しさん@ピンキー<>sage<>2006/09/19(火) 02:51:49 ID:89oE1o7h<> >>405
> 言いたいことはありますか?

もう言いたいことはないと思うが、まあ今度から作者名とトリップくらいは確認しような。 <>