ゴッ!!!
衝撃がかすめた。
全面ガラス張りの壁がビリビリと耳障りな音を立てた。
大阪梅田にある二つのビルの上を繋ぎ、あたかも巨大な門のような佇みを見せる新梅田シティビル。
通称、スカイビル。
全長170mもあるアーチ型の高層ビルの全体が揺れた。
中にいる人々は何事かと驚き、騒ぎ、外を見た。
大阪の街を眺望できるひときわ高い建造物。
その上空で、なのははレイジングハートを握りしめていた。
『ラウンド・シールド』
魔法のデバイスが張った光の盾に、飛び来る光弾が襲いかかった。
ぶつかり、弾かれる。
そのたびに光りと衝撃が飛び散った。
しかし、全てを防ぎきることはできなかった。
大量に放たれた光弾のうち二発が、右のふくらはぎと肩を貫通していた。
最初はわからなかった。
いや、脳が理解することを、NHKの集金が来たときみたいに丁重にお断りしたのだ。
撃ち抜かれた箇所を見る。
皮が熔け、赤黒く焼けた肉がえぐれていた。
奥に見える白い物は骨かもしれない。
切ってあった脳の回路が繋がった。
熱い。
熱い、熱い。
熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い熱い熱い痛い痛い熱い痛
い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛
い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃっっっ!?!!?!!
痛みと恐怖とパニックが一緒くたになり、よじれて絡まって転げ回った。
その時になったようやく、喉の奥から声が込み上げてきた。
溢れる涙と鼻水。
歪む顔。
叫んだ。
どうしていいかもわからずに、感情の赴くまま叫び続けた。
苦痛がもたらす絶叫は、梅田の街を吹き抜けるビル風に溶け消えた。
なのはのさらに上空では、フェイトが別の敵と交戦していた。
「・・グ・・・フゥ・・」
拳がフェイトの腹にめり込んだ。
焦点がブレる。
口の中に胃液が殺到した。
その味に、最後に食べた物が卵掛けご飯だったことを思い出す。
続いて顎の下から突き上げるような一撃。
意識が一瞬途切れる。
手から離れるバルディッシュ。
急に浮力が失われ、フェイトは地面へと吸い込まれていった。