ただ日ごとに増える想いに

沈んでしまいそうで。











滲む月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−










全てが終わった。

と、吉良イヅルは思った。
尺魂界を揺るがした出来事が終息してから二か月が経った現在
予想よりも死者が少なかったのが不幸中の幸いで 想像以上に世界は回復していた。
溜まった仕事、急ぐ足音、雑談する声。
何もかもふだんとかわりないけど。

だからと言って 全てが変わらなかったわけではなく。

奥底に沈めたはずの感情が 一瞬体を満たす。

「ーー副隊長、吉良副隊長」

呼ぶ声にハッと気付く

「どうかしたか?」

「いえ、そろそろお時間が」

時計を見ると定時はとっくにすぎていた

「今日は私が引き受けますよ。」
自分より年上の副官はそう言って笑った。

「明日は早いのでしょう」

聡い彼はそれ以上は言わずまた自分の席に戻った。






痛み
目に映る
銀色

「ーーーー!!」

喉の引きつる感覚で眼が覚めた。
ぼんやりと見えたのはもう見慣れた天井。

またか。

毎晩同じ夢をみる
呼吸が落ちついても身体を流れる汗が止まらない。
深呼吸をして、ゆっくり起き上がり
窓を開けた。

風が涼しい。

まだ眠ってからそこまで時間は経っていないようで 窓から見える外は深々と闇に包まれていた。
薄雲で月が隠れている。
なんともいえないだるさに眠る気にもなれず敷き布団の上に正座し目を伏せた。

明日。 隊首会で新しい隊長が正式に決まる
欠けた席は三つ。
藍染のあとには雛森が就く。
目に溜めた涙をぬぐいながら
「まだまだ藍染隊長みたいにできないけど。」と笑った顔が浮かんだ 。

浮竹のあとには阿散井が。
元々周囲からの評判もよく、 命令違反を咎める声もあったが何より今は上官不足だ。
指導者を早急に決めてしまわなければ 仕事に差し支えてしまうことは目に見えている。
少数の不満で卍解まで辿りついた彼を手放すほど 優秀な人手は余っていない。


そしてもう一つの席は。


ゆっくりと眼を開く。

「行こう」

だれにともなくそう言い立ち上がる。
今日行かなければ


明日は自分も隊長となるのだ。










































































































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