さくら花 ちりぬる風の なごりには 水なき空に 浪ぞたちける
甲斐にを迎えてから、二月が経った。大将が危惧するほど伊達の間者は甲斐に入ってきていないようだったし、自身は公家である家の姫君だということで遇されている。真田の旦那を含めて、大将のご家来衆もの出自を疑ってはいない。公家の娘でありながらかなりの力量を持つ兵法者であるを好意的に認めているご家来衆もかなりいて、手合わせを希望する者まで現れる始末だ。
最初の頃こそ躑躅ヶ館に逗留していただったが、公家の姫様として扱われることに辟易したらしく、手合わせを口実に旦那のいる上田城へやってきて居着いてしまった。旦那はこれ以上無い鍛練の相手を得たと喜んでいて、城の人間がこのまま奥方になってくれないかなどと期待していることには気づいていないようだ。立派な武将として早く身を固めて欲しいという城の人たちの気持ちは分からなくもないけど、そもそもを女性としてさして意識してない旦那にそこまでの飛躍は無茶な話だ。
おれは相変わらず大将や旦那から仕事をもらって忙しくしていたから、城に戻るのは久しぶりだ。上田で戦があるというので急いで戻ってきた。
戦を前にして、上田城内は慌しく人の往来が激しくなった。城を防衛するためのものではなく、近くの山里を襲っている賊を討伐しに行くためだけだから、少しばかりの手勢を連れて真田の旦那がそのまま賊の巣だという山へ向かう。支度をする真田隊の者や、兵糧を用意する女たちに紛れてが支度をしているのが見えた。
「姫さん?なんでそんな格好してんのさ」
「おかしなこと聞くね。戦に行くのに小袖じゃあ戦えないでしょ」
確かに、手合わせをする時よりしっかりとした格好をしている。
「戦に出るの?姫さんも?」
「そうよ?真田にそう言われたもの。一緒に戦うのが楽しみだって」
それより姫は止めてくれない、と付け足しては二振りの刀を丁寧に見分した。この刀で、人を斬るつもりだろうか。斬ったことはあるかもしれない、だが、殺したことはないはずだ。甲斐に来てからはもちろん、京の都にいた頃だってあの人の良さそうな連中がに殺しをさせるはずもない。
「今から俺が旦那に頼むから、は戦なんか来ないでくれよ」
刀をゆっくりと納めたはひゅっと眉を吊り上げて、俺を真正面から睨みつける。独眼竜の血筋のせいなのか、そんじょそこらの兵では太刀打ち出来ないだろう、刃そのもののような視線。
「私の腕では足手まといになると言いたいの?弱い人たちを襲うしか能の無い賊に後れを取るとでも?」
は、人を殺したことなんかないだろ。わざわざその手を血に染めることなんかない。はそんなことしなくてもいい人なんだから。俺と違って」
俺は忍として生まれ、忍として育った。人を殺すことも騙すことも仕事のうちだ。真田の旦那は武士として生まれ育ち、武将だから人を殺すのは当然のこと。でも、この子は違う。出自はどうも武家である伊達家のようだが、刀を持っていても振るう必要の無いお人だ。
城の中で傅かれ、煌びやかな着物を身にまとって暮らしてもいいはずの娘だから。が大事に持っている懐刀、その中に蒔絵で記された竹に雀の伊達家紋。笹の葉の枚数までは分からなかったが、伊達家中の女性の中でも限られた家の娘しか持つことはできないだろう。一家一門、外に広まっていないだけであの独眼竜の姉妹かもしれない。
「……でもあたしは米の作り方も知らない。朝夕の食事の作り方も。どういう風にすればお米が食べられるようになるのか、野菜はどうやって作るのか、何も知らない。この城に移ってから、あたしは大して何もしてない。なのに、ここでご飯を出してもらって暮らしてる。あたしを、ただの役立たずにしないで」
細い刀をぎゅっと握りしめたは俯いたまま、そう言った。躑躅ヶ館ほどではないにしろ、大将が逗留を許した客人だから上田の人間も丁重に接していたのだろう。京の八条宇多で、仲間たちと一緒に暮らしていた時とはあまりに違う待遇で困惑していたのかもしれない。
「そんなことない、は旦那の相手をたくさんしてくれてるし、兵の相手にもなってくれてる。それでいいだろ、誰もあんたのことを追い出したりしない。必要じゃないなんて言わない。だから、城に」
は俺の言葉を遮って首を振る。あまりに意固地な態度に思わず苛立った。
「なんでだよ、別にあんたから刀を取り上げようってんじゃない、戦には出ないで城を守ってくれって言ってるだけだろ。なんでそんな意固地なんだよ」
「あたしの刀はもう、あたしだけのものじゃない。お館様の刀の一つ。お館様に真田の力になるようにと言われたのだから、あたしは真田と一緒に戦に行くよ。それに、人を殺したことはなくても殺すということの意味は分かってるつもり」
大将の名前がいきなり出てきて、ぽかんと口を開けるしかない。大将の刀の一つというのなら、は文字通り武田軍に属していることになる。
「……あたしの乳母はあたしを庇って死んだ。京の仲間だって死んだヤツがいる。彼らを殺した兵の顔をあたしは絶対忘れない。あたしが誰かを殺せば、その誰かの縁者があたしを恨む。でも、刀を振るうってことはそういうことでしょう」
「姫さん……」
「刀を振るっておいて、傷つきたくないとか殺したくないとか綺麗事言えないよ。……あたしは佐助や真田たちに比べたら甘いのかもしれないけど、佐助があたしのことを気遣ってくれてるのも分かってるけど、でも行くよ」
俺の言っていることが甘いのか、の言っていることが甘いのか、俺にはもうよく分からなかった。だって、を戦に出したくないのが単なる『気遣い』とやらじゃないって分かってしまったからだ。
真田の旦那や大将が求める日ノ本の平定、その後の安寧。そんな形の無い茫洋としたものを、俺はいつからかに見ていた。刀を振るっても人を殺したことの無い、時が違えばたおやかに着飾って笑うはずであった、武家の姫君。彼女を血に塗れないままで守り通せば、俺は俺の見知らぬ『平穏』を得られたような気がしていた。
「一つ、聞いてもいいかい?……は何で剣を習おうと思ったのさ?確か従兄弟だか何だかのお師匠さんについて習ったんだろ?」
従兄弟──伊達一門でと近い年代の者、となれば数は限られる。当主の伊達政宗もそうだし、その従弟である伊達成実も世代的には同じだ。ただ、あそこは姻戚関係が複雑だからどう繋がってるかは調べなおさないとはっきりしないが。
俺が尋ねると、は検分しおえた刀をそっと鞘に収めながら、言った。
「強くなりたかったの。強くなって生き残って、役に立てるようになったらきっと幸せになれるって思ってた」
まるで自分が役立たずであるかのような言い方だ。はゆるく首を振る。
「でもそんな甘くは無くてね。あたしの乳母はあたしを庇って死んでしまった。あたしは追われて命からがら京に逃げたのよ。のお父様に匿って頂いて慶次に助けてもらって……それで今あたしは生きてる。昔みたいに誰も守れないあたしじゃない、って自分で確認したいだけなのかも。ごめんね、なんか自己満足みたいで卑怯だね」
「いや……話してくれてありがと。俺様みたいなのに話して良い話だったの?」
は鈍いわけでもなければ思慮の足らない娘じゃない。俺がの生家の目星をつけていることぐらい、とっくに分かっているだろう。その俺に敢えて過去の話、生家との因縁を話してくれた。
「いいのよ、お館様にだって真田にだって聞かれたら話すつもりでいるし。慶次も知ってるしね。アイツはさ、あたしがこの話をしたら馬鹿みたいに泣いてこう言ったのよ。──『これからはおれがお前の家族だ』って。もうあたしには新しい家族が京にいるし、ここの人たちも大切。……あたしには家がいっぱいあって幸せ」
生家を追われても、だからこそ知己を得ていくつも居場所を得たとは笑う。まぶしくて、俺は正視出来なかった。血に塗れぬままの彼女を守ろうとしたことが、滑稽にすら思われる。この強さと潔さ、清廉さは決して血で汚せる類のものではないのだろう。真田の旦那しかり、なべてひとかどの武将と呼ばれるに相応しい者は皆、同じ境地にいる。
「さて、真田が呼んでるから急ごうか。待ちくたびれて痺れ切らして一人で突っ込ませるわけにはいかないでしょ?」
「そりゃそうだ。お供しましょーかね」

上田城から賊の平定を終えてまもなく、大きな戦の気配が濃くなってきた。相手はよりにもよって奥州・伊達。どうやら北条を平らげて甲斐へと矛先を変える腹積もりらしい。忍隊の者を絶えず入れてはいるが、どうやらのことは火種では無さそうだ。ただ、を探しているのはどうやら本当で京に何度も兵をやっていると報告が来ている。
は生家から命からがら逃げてきた、という。その生家と思しき伊達はらしき姫をずっと探している。探し出したを伊達はどうするつもりなのか。どこぞに嫁して和平の先駆けとする予定──には思えなかった。あの竜の旦那が女を送って和平で手を打つ、なんて温い真似を好むとは到底思えないからだ。今回の戦にしても、天下を望むに当たって真田の旦那と白黒つけないと始まらないと嘯いたらしいから、良くも悪くも白黒つけたがる気性には違いない。
京でや前田慶次が仲間たちと一緒に起こしていた喧嘩祭りなるものも、伊達の追っ手の目からを守るためだったのかもしれない。それだけが理由ではないだろうが、あんな風に人がごった返して馬鹿騒ぎをやっていれば探し人は探しにくいことだろう。伊達と知っても知らずも前田の風来坊や仲間たちがその兵を斬る理由にもなる。風来坊は傾き者、何を考えているのだか知れないというのが世間の評だが、思っているより頭が切れるのかもしれなかった。
戦を数日後に控えた出立間近の夜。俺はの居室の前に立っていた。大将からの命で、だ。
「……佐助でしょ?どうぞ入って」
こちらから声を掛ける前に声を掛けられ、俺は黙って襖障子を開けて中に入ろうとして、思わず目を見張る。は小袖では無しに白い単しか着ていなかった。部屋にあったの荷らしきものも、一所にまとめられている。
「どうしたの?私に話があるのよね?」
「……ああ」
笑んでいるのに、声にはどことなく有無を言わせない迫力がある。この娘を幼い頃に追い出した生家、何を考えては知らないが馬鹿なことをしたねと言ってやりたい。武将と呼んでも相応しい覇気、留守居の城を任せるのにこれ以上頼もしい姫君もそうそういないだろう。
「今度の戦のことでしょう。……奥州、伊達との戦。お館様に何て言われたの?甲斐を出るなら旅装に着替えるから待ってもらえると嬉しいんだけど」
何と返していいか困った俺に、はやっぱり笑って小首を傾げる。
「それとも、不穏な火種は始末するように仰ったの?」
「──……っ!?」
「佐助にそれを言いつけるなんてお館様も酷なことなさるわね。まあ見知らぬ忍だったらいいかっていうとそういう問題でもないんでしょうけど。この国で一番強くて偉い忍は佐助だもん、仕方ないのか」
はひら、と両手を振って武器を持ってないことをわざわざ俺に見せた。の二振りの刀は荷物と一緒にまとめて置いてある。
「これでもご存知な通り、武家の娘だからね、往生際は悪くないつもり」
生き延びるために習ったという刀を置いて、まるでここで殺されることが当然かのように笑う。──本人が嫌がっても、周りが気にしなくても、どこまでもは伊達の姫でしか、ない。
。俺はお館様の命でここに来たんだ」
「ええ、でしょうね」
が甲斐を出たいというなら手引きをしろって言われた。もしが……武田菱を背負って死ぬことを望むなら、一足先に躑躅ヶ館に連れてこいって」
今度はが目を見開いてぱちぱち、と不思議そうに瞬きを繰り返した。なぜ生かしておくの、と顔に書いてある。
「気づいてるだろうけど、俺と大将はの生家ってヤツの目星がついてる。真田の旦那やご家来衆は気づいてないと思うよ。だから俺が密命として言付かったんだ」
「あたしが言うのも失礼だけど、それは温情というには甘すぎる沙汰じゃないかな」
「俺様に言うなよ、文句があるなら大将に直接申し開きしてくれ。最も、俺は妥当だと思うけどね」
「……分かった。とにかく、お館様にお会いする必要があるみたいね。待ってて、着替えるから」
俺に構わず単の上からは小袖を羽織り、さっさと帯を締めて着衣を整える。刀を手にとって佩びるかどうか迷い、荷物と共にまとめて手に持った。
「さ、お館様のところへ連れてって」

深夜の躑躅ヶ館。大将の居室は昼間とは打って変わって真っ暗だ。高杯灯台が二つ、大将の前との前に据えられている。
よ、ここへ参ったということは此度の戦、参陣すると思うてよいのだな」
「……私はお館様に客将としてお仕えしている身、戦ならばいずこへでも参ります。けれど、この戦は少々訳が違いましょう。私の仔細をご存知でいらっしゃるなら、なぜ始末せよと仰られないのです」
「おかしなことを言う。そなたに自害の望みがあろうとは思わなんだ」
「望んではおりませぬが、この期に及んで伊達の名を持つ私に武田菱を背負うことが許されるとも思えませぬ」
がきっぱりとそう言ってのけると、大将は低く唸って黙り込む。佐助、と苦し紛れに俺を呼ぶ声がして俺は首をすくめた。
「言っときますがね大将、俺はちゃぁんと説明したんですよ。大将の沙汰が適しているってことも言い添えましたが、はどうも頑固で」
「伊達の家から逃げて参ったそうだな。何ゆえそのような事態に相成ったか、お主は知っておるか?」
「……私は生まれてはならぬ者だったそうです。災いを成すと大人たちが話している言葉を何度も耳にしました。私は伊達実元の娘、伊達成実の妹にございます。同腹に男女の子が宿ることは凶兆、父の治める大森城を見ずに育ちました。乳母とその家族に育てられ、幼い頃は兄や従兄とも時折逢う機会もございましたが、従兄の元服を控えた日に何者かに襲われ乳母は私を庇って死に、私は乳母の親族を頼って京の家へ匿われた由にございます」
伊達実元の娘、嫡子である伊達成実の妹。その名は伊達において重いものだ。当主伊達政宗の従弟である成実は伊達三傑と呼ばわれる勇猛な武将、息子に家督を譲っている実元は伊達一族の長老として隠居の後も影響力が強い。伊達一門の娘だろうとは思っていたが、まさかここまで重要人物の名が出てくるとは思っていなくて、俺は何も言えなかった。
男女の双子、いわゆる畜生腹。あまりに奇異なことなので忌む風習があるのはどこも同じだ。竜の旦那が元服する前にいよいよ始末しようとした、というのは伊達のためという名目によって成されたからだろう。それが本当にお家のためだなんて俺様には到底思えないけど。
「つまらぬ因習がそなたを苦しめておったか。昔はさておき、伊達の倅はそのような因習を嫌う者と思っておったが」
「かもしれません。ですが、私が今さら戻ったとて良い顔をする者などいようはずも無く。私が伊達に仇成すと伊達のために私を討とうとした者がいるのは事実、私が戻ってそのことが明るみに出れば──要らぬ火種を生みましょう。それを承知で埋伏の毒となるも、一計ではございましょうが」
「……さて、委細は承知した。その上で再び尋ねようぞ。お主、武田菱を背負うてはくれぬか。甲斐を出てどこぞへ旅をするというなら、支度をさせるが」
は困ったように眉根を寄せて大将を見つめ、その傍に控えている俺にも弱りきった視線を向けた。一度目を伏せ、逡巡するように視線をさ迷わせてからゆっくりと平伏する。
「伊達実元が娘、にございます。お館様に対しての数々の隠し立て、お許し頂けるならば武田菱をお授け下さいますようお願い致します」
「無論、元よりそのつもりよ。此度の戦、幸村とは別の部隊を率いてもらう故、こちらへ呼んだのじゃ。今宵は前に使っておった居室で休むと良い。明日には出立致す」
「承知致しましてございます」
もう一度頭を下げたを見やって、大将は傍の灯りを消して小さな声で俺にを部屋に連れ戻すよう言い残し、居室を出て行く。大将が出て行くまで頭を下げていたの傍に近寄ると、はゆっくりと顔を上げた。
「佐助……本当にこれで良かったと思う?私がいることでお館様や真田たちに迷惑がかかったら」
「……心配しなさんな。相手があの竜の旦那じゃぁ俺たちもそうそう余裕ってわけにはいかないけど、相手方が何と言ったって大将が武田菱を預けた以上、は立派な武田の家臣だ。つまらないこと気にしないで、頑張ってくれよ」
「……うん、分かった。ありがとう、佐助」
ほぼ暗闇に近いこの部屋では微かに綻んでいるがどんな顔をしているのか分からない。明るい光の下で見るそれは、今までよりももっと眩しく見えるのだろうと思った。

赤い武田菱。染め抜かれた旗印が、いくつも地に塗れ汚されている。伊達との戦が始まったのは二日前、最初こそ勢いに押されて後手に回っていたがそれを交わして耐えた後、反撃を開始してすぐのことだった。
──本陣が伊達成実率いる隊の急襲を受けたのだ。
竜の旦那はご丁寧に真田の旦那を真っ直ぐに目掛けてきたから、俺は竜の右目こと片倉殿を足止めする役についていた。竜の旦那さえ、真田の旦那が止めてくれればこの戦はすぐにでも終わる。そのはずだったのに。
本陣と言っても大将はそこにいない。大将は騎馬隊と共に出ていて、本陣の守りを負かされていたのはだったのだ。出来るだけ伊達の者と接触させまいとした配置、それが裏目に出た。よりによって実の兄である成実の隊と交戦させることになろうとは。
「どうした?やけに焦ってるな」
「ちょっと野暮用が出来ちゃってねぇ……。旦那ァ!ここは一端引くぜ、あの子がヤバい」
片倉殿の刀をいなしながらそう呼びかけるが、頭に血が上ってる旦那にゃぁ聞こえてないらしい。ここは一発殴ってでも本陣へ引かねば、そう思った矢先。
「申し上げます!」
青い仙台笹を背負った伝令が、高らかに宣言した。
「武田本陣、落ちましてございます!大将、武田信玄は不在!双刀使いの女武者を成実様が捕えられました!」
「……ッ!!」
最悪だ。予想出来た筋書きの中で、一番、最悪の結果だ。真田の旦那は今の伝令で目が覚めたらしい、自棄にも近い勢いで猛然と伊達政宗に二槍で迫っていく。
「Hey、お前らンとこは二振り持つのが流行りなのかい?怒りと勢いで勝てるほど……独眼竜は伊達じゃねェぜ!」
「おい忍、お前、余所見するたァ余裕じゃねえか……」
伊達政宗が六爪を抜いて真田の旦那を追い詰めていく、それを助けようにも片倉の旦那がその暇を与えちゃくれない。引こうにも本陣が落ちた今、どこに引くのが最適で大将はどこにいるのか何も分からない。兄である伊達成実に捕えられたというがどんな状態なのかも。
赤い武田菱を染め抜いた陣羽織、本陣を預けるにあたって大将が送ったそれを身に着けた数日前のはとても嬉しそうだった。日の光の下で見た笑顔は、確かに今までで一等眩しかった。なのに。
「お祈りの時間だ。Rest in peace……悪く思うなよ」
彼女を追い詰めた生家からさえ、俺たちはを守ってやれなかった。前田慶次の傍にいた六年、としてではあったけれど、確かに幸せだったはずだ。それを俺たちが甲斐へ連れ出し壊してしまった。自分の末期なんかより、旦那と大将、そしてを守れなかったことが何より嫌だと思った。

伊達本陣。真田幸村との一騎討ちに打ち勝った政宗は、初めて見る光景に目を丸くした。政宗の従弟、伊達三傑の一人でもある成実が平伏している。
「藤五郎?お前どうしたよ。敵将の女を捕えたとか聞いたぜ」
「頼みがある」
「……言ってみろ」
成実の傍には気を失っている女が一人、転がっていた。これが武田の女武者か、と政宗は目をやってまじまじと見つめる。どことなく、成実に似ている気がしたのだ。政宗が家督を継いで成実も大森城を継いで後、二人でずっと影ながら探してきた娘と思えるほどには成実に似ている。が、その背にあったのは赤で染め抜かれた武田菱。成実の妹である娘ならば、背負うべきは竹に雀か伊達一門の女に与えられる雪薄だ。
「この娘は武田の本陣にいた娘だが、お願いだ、この娘を黙っておれに預けてくれないか」
「Really?コイツは敵将、しかも本陣を預かるほどの信を置かれている武将だぞ。女だとしても生け捕ったなら捕虜として扱うに決まってンだろ」
「政宗頼む、後生だ」
成実は頭を上げようとしない。政宗はやれやれとため息をついて、成実に近寄った。他の家臣に聞こえぬよう、小声で呼びかける。
「シゲ、訳を話せ。こいつがお前の妹──だとでも言う気か」
「……その通りだ」
だから、と成実は再び地に擦り付けるようにして頭を下げた。政宗は娘に目をやり、大きく斬られた胸元の着物から覗く懐刀に目を留める。そこにあったのは仙台笹、竹に雀の蒔絵。もともと、上杉家から成実との父である実元に送られた紋。
「マジか……。あの時の忍の慌てようはそれでか。……悪いがそれは聞き入れられねえな。女だてらに双刀を振るった武将だ、真田と同じように扱わせてもらう」
潜めていた声を急に大きくして、政宗はわざわざ陣中に居並ぶ家臣に聞こえるように言い放つ。
「政宗!」
「何度言っても無駄だ。綱元、この女を真田たちと同じ牢へ送る手筈を整えろ」
「御意にございます」
「政宗!どうして!」
尚も声を荒げようとする成実を止めたのは、政宗の竜の爪──刀だ。ぴたりと首筋にあてがったまま、険しい表情でぼそりと呟く。
「この場にいるヤツらの中に、アイツをつけ狙った馬鹿がいたらどうする。頭を冷やせ、藤五郎」
「……ッ」
成実の双子の妹の命を狙ったのは、伊達家臣だ。実元の家臣なのか、輝宗の家臣なのか、もっと別の勢力だったのか十年近く経った今では分からない。が、指図をした何某かが今ここにいない保障は無い。もしここにいるのがだとバレてしまえば、の命は昔よりも危ういことになる。
「済まねぇ……」
「分かりゃいいんだよ、馬鹿」
とんとん、とわざとらしく政宗は刀で成実の首筋を叩き、すっと刀を納めた。七年ほど探しあぐね、京へ送った兵はついに帰らなかった者さえいる。ようやく手元に戻ってきたかと思えば、何を思ってか武田菱を背負って武田の本陣で伊達との戦に挑んでいた
「……チッ、どいつもこいつも」
甲斐武田との戦は伊達側の勝利に終わった。本陣を押さえた後、名立たる家臣団だけでなく大将である武田信玄をも捕縛した、完璧な勝利。だというのに政宗の心は晴れなかった。


伊達領内、甲斐侵攻に当たっての拠点とした小田原城の地下牢。独房の戸を政宗はちゃらちゃらと鍵を玩びながら開け、座しながら死んでいるかと思われるほど沈鬱とした男に声をかけた。
「真田幸村。聞きたいことがある」
「何でござるか。某は敗戦の兵。如何様にもなされよ」
幸村は顔を上げようとしない。武田が伊達に破れ、大将以下主だった武将たちが残らず捕縛されたことは既に聞き及んでいる。
「…熱いねぇ。訊ねる前に伝えておくことがあるな。生き残った兵は一人残らず捕らえてある。武田のおっさんも女剣士もお前の部下の忍たちも、全員だ。途中で自害しようとしたヤツが出たんで、怪我人が増えたが、手当てはさせてある」
「……左様でござるか」
「武器は預かったし見張りもつけて牢にぶち込んだが、俺はお前たちを処断するつもりはない」
弾かれたように幸村は顔を挙げ、まじまじと政宗を見上げる。
「……今、なんと?」
「真剣勝負で死んだなら仕方ねぇし、武士ならそれが天命だ。しかし、国が負けたからといって、全員が死ぬ必要はない。coolじゃねぇしな」
「ならば、捕らえた兵はどうなさる」
戦に破れた兵を処断しない、と一国の主が言う意味が分からない。幸村は怪訝な表情を崩せなかった。
「甲斐に戻すさ。武田のおっさんにも城に戻ってもらう。躑躅ヶ館、だったか」
「!」
「信玄公は若輩の俺から見てもかなり良い領主の一人だろう。民に慕われ、お前のように臣下にも慕われている。むざむざ殺してそいつらの反感を買うこともねぇしな」
あの魔王なら殺すだろうが、俺はあいつのやり口が嫌いでね、と政宗は続ける。
「安堵してくださるというのか。それならば、この戦の意味は…」
「あったさ。甲斐は俺のものだし、おっさんには城主に戻ってもらうだけだ。甲斐の年貢は三分だってな。そのうち一分をこちらに寄越してもらう。上納金ってやつだ。あと兵をいくらかと、甲斐の美味いモンを折々寄越してもらうことで話がついてる。ここに来る前、俺は信玄公と話をしてきた」
政宗はしゃがんで座っている幸村と目線を合わせ、にぃと口の端を吊り上げて笑った。幸村は初めて間近に見た奥州王の笑みに、視線を外すことが出来ない。奥州の覇者、独眼竜。関東の北条をも食らい、今、甲斐の武田をも食らった王者。
「…そこでだ、真田」
「何でござろうか、伊達殿」
さきほどとは違う自分の心持ちを幸村は理解し始めていた。目の前の男を敬称で呼ぶことになんら不快を感じない。この男は紛れもなく覇者と成りうる者で、自分どころか敬愛する師をも凌駕して見せた、稀有な存在。
「お前、俺のところに来ないか」
「……某が奥州へ?」
「ああ。お前と、お前の部下、そしてあの女剣士。俺が天下を取るには、お前たちの力が要る。他の兵はおっさんのとこに戻すぜ。上杉が何してくるか分からねぇ以上、上杉との国境線は固めておいたほうがいいからな」
政宗は信玄を躑躅ヶ館へ戻すといい、兵のほとんどをも甲斐へ戻すという。あくまで伊達の領地である甲斐を預けるという形を取って、信玄やその家臣たちを安堵し、民を安堵させることを優先させた。自分より前にこの国主と話したという師は何を思ったのだろうか。
「お館様はなんと仰っておられた」
「Uh……お前に任すってさ。まあ、負けた時点でお前ら全員俺の臣下だけどな」
負けた兵を捕虜でも敵でもなく臣下と呼ぶ、その政宗に幸村はぺこりと小さく頭を下げた。敵わぬ、と思った。
「分かり申した。某、奥州へ参りましょうぞ。正直に申せば、伊達殿と戦ったことはとても心躍ることでござった。共に立つのも面白そうでござる。……殿に対して、いささか失礼したかもしれぬが」
「お前に殿とか言われっと、何か気持ち悪ぃな。今までどおりでいいぜ」
「…伊達殿、でござるか」
ぴし、と弾指が幸村の額に当たる。阿呆、と政宗は笑った。戦場で見せたあの覇気、あの殺気。あれこそが独眼竜の本質であろうと思うのに、戦場を離れて飄々と笑う姿もまた、竜の一面だ。
「馬鹿。俺の一族全員伊達だぞ」
「それもそうでござるな。ならばお名前をお呼びしても?」
「That's right。許す」
「分かり申した、政宗殿。某、そなたについてゆきまする」
信玄を上洛させる夢は、叶わなかった。
けれど信玄が願った日ノ本を統べて民を安堵させる夢は、まだ叶うはずだ。この男の下でならば、それは決して不可能なことではない──幸村はそのことに心がふつふつと沸き立つ思いだった。
「あ、幸村」
牢を出ようとした政宗がくいっと振り向いて、おかしそうに笑う。
「なんでござるか?」
「あの女剣士、伊達一門だぜ。知ってたか?伊達成実っつう、俺の従弟の妹。つまり、あいつは俺の従妹だ」
「!」
それだけ言って政宗は去ろうとする。が伊達の姫?幸村は降ってわいた言葉を整理できぬまま、声を荒げた。
「政宗殿!一つ、お尋ねしてもよろしいでござろうか」
「なんだ。言ってみろ」
政宗は貼り付けていた笑みを消し、真面目な顔で幸村を見下ろす。
殿は…なぜ甲斐について来られたのであろうか。京で某と会い、そのまま甲斐へと来られ、お館さまにもお認め頂いて武田の兵として過ごしておいでだったのは、何であったのだろうか」
は京の公家、家の娘だと名乗っていたはずだ。伊達の姫と言われればあの武芸にもさらに納得がいくが、ならばなぜ甲斐へやってきたというのだ。あまつさえ、信玄から武田菱をも授けられた家臣として戦に望んだのは自身の願いだと聞いている。政宗は幸村の問いにしばらく黙っていたが、腕を組んで小さくため息をついた。
「……さぁ?ただな、幸村。あいつが嘘をついていたにしろ、ただ黙っていたにしろ、あいつが自分で選んでお前と甲斐に行った、甲斐で過ごした、それは真実だぜ。一つの嘘で全ての真が無くなるというものでもあるまい」
「…そうで、ござるな。殿は今、どうなさっておいでだろうか?」
本陣が落ちたと聞かされて、が捕縛したと聞かされて。何も守れぬ己に対して怒りが沸き、それを叩きつけても目の前の独眼竜には敵わなかった。
「確か寝てたぜ。あいつ、変なとこで神経図太いからな。お前の忍…猿飛だったか、そいつも寝てた」
「佐助の、怪我は」
「怪我?ひどいモンじゃなさそうだったな。重傷者は区別なく手当てしてる。その場にいなかったってことはそんなに大した怪我じゃねェんだろうよ」
「…じゃあな、幸村。他のやつらと話が終わったら全員牢から出すつもりだ、それまで大人しくしてろよ」
もうお前は俺の臣下だからな。政宗はそう続けて踵を返し、牢から出た。かちゃりと鍵が閉められた後に翻した背、幸村は一つ頷いて声を返す。
「承知致した、政宗殿」
政宗が幸村の声を受けて後、入ったのはを寝かせている牢だ。
「…。おら、起きろ」
小さく揺すってやるとはむにゃむにゃと緊張感の無い声を上げながら身を起こす。
「んー…梵天か。ここ薄暗くてついつい寝ちゃった」
「どんな理由だ馬鹿。…奥州に帰るぜ」
帰る、という言葉には眉根を寄せた。起きている顔を見ればなるほどたしかに成実の妹だ、と政宗には得心がいく。幼い頃も似ているところのあった兄妹だが、成長した今となってははどちらかというと成実よりも政宗に似ていた。
「あたしも、ってことだよね」
「当たり前だ。お前はもともとあの城の人間なんだからな」
が生まれたのは大森城であって米沢でも岩出山でも無いが、伊達一門の姫であるから米沢城に居室があってもなんら不思議無い身だ。政宗がそう言うと、は忌まわしそうな表情を浮かべて首を振った。
「…あたしはそう思わない」
は成実の双子の妹で、男女の双子は凶兆であると主張して嫡子である成実のみが城に残されは生まれてすぐに城を追い出されていた。政宗はその頃のことを詳しく知らないが、声高に主張した家臣団の他に実母もを追い立てたと聞いている。男女の双子を孕んだことで実母自身も数々に責められたそうで、成実はその様子を影ながら見ていた。
を亡き者にしてその事実を隠そうとする動きがいつから活発になったかは分からないが、はある日小十郎について剣を習っている二人の輪に入ると言い出して剣を共に習い、政宗が元服する前に姿を消した。後から聞けば、元服の直前にが乳母一家と暮らしていた家が急襲され、後に残されたのは乳母の亡骸であったという。は無論両親の顔を知らない。城から出る際に実元が与えたという、伊達家の懐刀一本だけが身分を明かすものだ。
「お前がどう思おうと関係ない。信玄公との間で話がついた。領土の一部、年貢の一部、そして兵の一部を奥州に納める形でおっさんは城に戻す。他の兵もな」
「その兵の一部、ってのがあたしなの?」
「お前と幸村、幸村の部下だな。下手に数もらうより、よっぽど使えるやつらだ」
が成実と刃を交えて生き延びられるほど、強い武者であるとは思えなかった。これは政宗にとって嬉しい誤算だが、刃を交える破目になった成実の苦悩は察して余りある。妹の命を繋ごうと慣れぬ平伏まで家臣団の前でしてみせた成実。
「あたしを奥州に戻すのは、あたしが伊達成実の妹だから?」
「それがないとは言わんが、兵として使えるのも事実。最も、奥州に戻ったら成実が戦には出さないとか言い出しそうだが。あいつ、身内にはほとほと甘くできてるからな」
自分しかり、しかり。成実が自分の妹を守れなかったことをどれだけ悔やんでいるか、傍に置いている政宗には手に取るように分かった。だからこそ、伊達を継いだ後に兵を使ってまでもを探そうとしたのだ。
「そう…。梵天丸、約束をして」
「ああ?負けた癖に偉そうだな」
幼名を呼ばれるとまるで昔に戻ったようだ。
「守ってもらえないなら死ぬまでよ。あたしを生かすつもりなら約束をして」
「ちっ…なんだ、言ってみろ」
性質の悪い脅しをかけやがる、と思っても政宗は口に出さなかった。にとって伊達は少なくとも良い印象など無いのだろう。家を追われ命を狙われ、両親や兄から受けられるはずの愛情さえ与えられず──京で逃げ回られたのも仕方ないことだ。まだが伊達領内にいた頃、政宗と成実はこっそりと逢いに行っていたがそれも十分であったとは思えない。手元に戻った今、多少ならば我侭だろうと何だろうと聞いてやるつもりでいる。罪滅ぼしになるはずも無いが。
「あたしを政略結婚の駒に使わないで。それだけは絶対に嫌なの。それさえ守ってもらえるなら、戦に出てもいいし女中の真似をしてもいい、だからお願い」
長い髪を揺らしては政宗を真っ直ぐ見つめ返した。飾り気の無い姿だが、城の奥に住まう女たちのように飾り立てればさぞかし美しい姫になるだろうと思われる。どこに出しても恥ずかしくなどない、由緒正しい姫だ。
「何でだ。お前は傍流とはいえ伊達の姫。それが役目だとは思わないのか」
「あたしはお城では育たなかったし、そもそも父母の顔も知らない。たまに遊びに来てくれた梵天と時宗丸兄さまぐらいしか、伊達の人たちを知らない。いまさらお姫様やれっていわれても無理よ。逃げ延びて京の街にたどり着いたんだけど、そこで出会えた人の影響、かな」
ふっとは初めて表情を緩める。京でを捕まえることは叶わず、どのように暮らしていたのかすら政宗たちには分からない。乳母の縁者であったという、左大将を頼ってその娘として過ごしていたとは聞いている。
「…叶わぬ恋に操を立てる、ってか?」
「そんなんじゃない。その人との間には何も無かったよ。大事な友達。京でその人とはぐれてから幸村に出会って、面白そうだから甲斐についてったけど…」
「伊達の人間が甲斐の城で、ね」
政宗の言葉に含まれたものを察して、はきっと眦を吊り上げて政宗を睨む。うっすらと漂う覇気が、目の前の娘は紛れも無く伊達の姫だと政宗に教えた。
「あたしの剣を認めて、あたしを剣士として置いてくれたのはお館さまよ。尊敬してる。お仕え出来てよかったと思ってる」
「…奥州に戻れば嫌でも分かるだろうさ。お前は伊達の人間だ」
は不服そうに唇を尖らせて、もう話すことは無いとばかりに口をつぐむ。伊達を継いだ自分ではなく、武田信玄に仕えて良かったと言われた政宗とて面白く思えるはずもない。が、その苛立ちを飲み込んで政宗はぐしゃりと髪をかき混ぜた。

「何」
「俺はな、政略結婚なんてまどろっこしい真似嫌いなんだよ。身内の女を送ってそれで戦が止むなら、この世はとっくに統一されてるぜ。女を送ろうが和睦を結ぼうが戦は止まない。真に統一されない限り止まないのなら、俺が止ませてみせる。Partyは派手なモンに限るからな」
戦が続く世で、虐げられるのは農民たちだけでなく兵卒たちだけでなく、道具として扱われる女たちとて不幸なのだ。全てのくだらない輪廻を止める、それが政宗の狙いだった。はしばらく政宗の顔をじっと見ていたが、やがてようあって笑う。笑うとさすがに兄の成実に似ていて、幼い頃に見せた屈託の無いものにも似ていた。自分たちの守るべき花だと二人で恥じらいも無く話していた頃の、稚い笑みに。
「ありがとう!」
「はッ、俺はしたいようにしてるだけだ。礼を言われる筋合いは無ぇな」
「……ほんと梵天も時宗兄さまも変わってないよね。小十郎も変わってなさそう」
「ああ──変わっちゃいねぇよ」
変わったのは自分たちを取り巻く環境、そして世の趨勢。そのどれもが政宗を時代の表舞台へと押し上げ、否応無しに成実やをそれに巻き込んでいく。


いかがでしたか、 さん。ようやく伊達陣営へ。ぶっちゃけ、こっからが本番。慶次が合流するのはこの次かな。

お付き合い有難う御座います。多謝。
2010 1 3 忍野桜拝


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