アーニーとゲドの関係


 アーニーは学術指南のスキルを持つ、学者志望の女の子。
 見るからに内気。眼鏡に内股に本を胸に抱えてるんですよ?
 お約束!(そうか?)
 若い(13歳)ながらも古史探索協会会員で、自分の研究室を欲しがってる。
 あれだね。スキップして大学入っちゃう天才少女のノリだね。

 アーニーはゲドを、生きた歴史で絶大な魔力の持ち主、と、かなり高く評価してるのでは。
 仲間にスカウトする時は試しますが(苦笑)
 それも知識を試してるんであって。ゲドなら合格でしょ? (うちのゲドは本の虫。博学)

 ゲドはアーニーを、将来有望な学者の卵、と見ているでしょう。
 専門知識を持つ人には敬意を払っていそうです。
 ただまぁ、年若い割に子供っぽく無いな。くらいには感じてるかも。
 自由奔放(自己中)な炎の英雄や、傭兵の子供見てきてますからね。
 子供は我侭で外で走りまわるイメージとかあるんじゃないでしょうか。
 城内の他の小さい女の子(シャボン、アラニス、ベル、セシル等)活発だしね。
 ん? ビッキー(小)は別格。あの人は・・・ある意味一番大人だ。(苦笑)


それぞれの素質


 ゲドはふと思い立って、図書館へと出かけた。
 軽い用事のために本拠地と近場の街を往復した時、見慣れないモンスターを見たので気になったのだ。
 ついでといっては何だが、学術指南も受けようと、奥の一角を覗く。
 いつもと同じく、厚い本を熱心に読むアーニーがそこにいた。
 
「あ・・・ゲドさん・・・。」
 最初こそ、話しかけるまで黙ったままいつまでもいたアーニーだったが、だいぶ城や皆にも慣れたようで、おずおずとではあるが自分から話しかけるようにもなっていた。
「雷の魔法について、指南を頼む。」
「・・・・・・・・」
 普段なら、すぐに本を開いて指南を開始するアーニーが、今日に限って黙ってしまっている。
 聞こえなかったわけでは無いらしい。
 その視線は、何か言いたげに、ゲドと、手に抱えた本を往復している。

「どうした?」
 きっかけをゲドがつくってやると、アーニーは決心したようにゲドを見上げた。
 本を抱える腕に力が篭っている。
「何故、私に雷魔法の指南を求めるんですか?」
「・・・」
 ゲドは声が出ない。学術指南に指南を求めることを、疑問に思ったことは無いからだ。
「ずっと、真なる雷の紋章を身につけていたのに。 自分で高めることもしないで。
 宝の持ち腐れじゃ無いですか。」
 アーニーは、怒っているというより、泣きそうに見える。
「私は、私は望んでも得られないのに。
 知ってるだけで、紋章を宿せない私は、理論だけで・・・何も・・・本当は・・・」
 ゲドに言葉を向けるうちに、感情が昂ぶってしまったのか、アーニーは本当に涙ぐんでいる。
「・・・」
 ゲドにはかける言葉が見つからない。
 長いこと、真なる雷の紋章は使わないでいることを己で決めていたから、知識や技術が減っていたのは確かだった。だが、アーニーのこれは、そのことの説明を求めているというより、むしろ、自分の素質についての嘆きだ。
「あ・・・あの・・・ごめんなさい・・・あの・・・」
 ゲドの反応を怒りと取ったのか、アーニーは頭を下げる。
「いや・・・」
 ゲドが何と言えばいいのか迷っている時、後ろから声がかけられた。
「少し、外に出てくるがいい。閉鎖的空間は、心も閉じ込める。
 ゲド、責任持ってエスコートするように。」
 振り向けば、小さいビッキーがゲドとアーニーを見据えていた。
 何か逆らい難い威圧感を感じて、二人は素直に頷いた。


 そして二人は、ビッキーに言われた通り、城内ではあるが城からはかなり離れた、だだっ広い場所に来ていた。
 さすがに、ここまで来る酔狂な住人もいないのか、辺りは静かで、木々を渡る風は心地よい。
 二人は適当な草地を見つけて座った。

「あの・・・すみません・・・さっきは取り乱してしまって・・・。」
 アーニーが恥じ入るようにうつむいた。
 聡明であるということは、冷静に他者や状況の分析が出来るが、それと同時に、自分にも常識の枷をかけてしまうということだ。
「構わない。お前はもっと、子供らしくてもいいと思う。」
 子供ならではの我侭や癇癪も、アーニーはその聡明さで押さえてきたのだろう。
 自分に対しての評価を知ることの出来る聡明さは、子供にはいささか重い気もする。
「子供らしいと言われたこと、そういえばありません。」
 アーニーは眼鏡を指で上げた。
「我侭は子供の特権だ。
 ・・・聞くから、なんでも言うだけ言ってみろ。」
 本来なら、こういう役目はゲドに向かない。
 適任が他にいるのは確かだが、アーニーのコンプレックスが真なる紋章にあるのだとしたら、説得には3人しかあたれない。そして、その内の二人は、今日は遠征だ。

「あの・・・私・・・真の紋章を見るのは始めてなんです。」
 アーニーは、ゲドと目を合わさずに、自分の前の草を見つめている。
 ゲドも、黙ったまま、見るとは無しに遠くの木々を見つめている。
「昔から本を読むことが好きで、知識を得ることが好きでしたから、
 この世界の成り立ちや、歴史、紋章学を勉強するのは楽しかったんです。
 ゲドさんの紋章を始めて見た時は、心が震えました。
 これが、世界の創造に関わった紋章で、500年の長きを存在し続けている英知の具現化なんだと。
 人が決して達することの出来ない、世界の真実を秘めた紋章。
 ずっと、ずっと憧れていました。」

 風がアーニーの髪を揺らす。
 綺麗に巻かれたその髪は、風に煽られた後も、すぐその形を取り戻す。

「それを宿すことによって、色々と問題が起きるのは、考えれば判ります。
 けれど、それを宿すことの出来る人は、選ばれた人です。
 私のような凡人が願っても、決して届かない神話の領域。
 もし、私が真の紋章を得ることが出来たなら、その紋章を最大限に活かそうとするでしょう。
 その紋章が500年の間求めてきたもの、与えてきたものを解明したくて。
 想像しただけでわくわくするんです。
 それに、不老の恩恵を受けるなら、研究時間は無限にある。
 素晴らしいことですよね。
 でも・・・私が紋章を継承することは、決してありません。」
 アーニーは、自分の右手を見つめた。
「私には、紋章を継承するだけの器が無いんです。
 年齢のせいでも、性別のせいでも無いんです。ただ、私には適正が無い。
 紋章についての知識をどんなに得ても、私はそれを活かすことが出来ないんです。」

 人によって、紋章を宿せる場所や数、種類は限られる。
 それは生まれつきの資質によるものが大きい。
 まれに、経験を積むことによって新たな場所に紋章を宿す者もいるが、
 そういう者は、元から他の場所には紋章を宿せていた場合が多い。
 最初から紋章への適正が無い者は・・・おそらく一生涯において、紋章を宿すことは無いのだろう。
 それはある意味、幸せな生き方だと思うのだが、アーニーには、それが苦痛なのだ。

「1つ年下のアラニスが、3つも紋章をつけられて、しかも、魔法に関しての素質もあって。
 比べることが無意味だと判っていても、少し寂しいんです。
 私は、教えることしか出来ない。
 教えられた人は、紋章と共にそれを活かして自分の物にして、もう私を必要としない。
 いいえ、私は元から必要無いんです。
 だって、勉強なんて、しようと思えばいくらでも、本を読めば出来るんです。
 ・・・そう考えたら、悲しくなってしまって。」

 アーニーはまた、うつむいた。
 その姿は、13歳の子供だということを差引いても小さく見えた。
「・・・お前には、お前にしか出来ないことがある。」
 遠くを見つめたまま、ゲドは口を開いた。
「紋章学といっても、その幅は広い。
 自分に合った素質を伸ばそうと思っても、指針が無ければ知識の海で迷うばかりだ。
 お前は、自らの知識と経験と素質で、人の素質を見抜き、方向性を与える。
 それは、他の者には出来ない、貴重な資質で、お前の財産だ。」

 アーニーが顔を上げた。
「それに、知識は、現象に形を与える。」
 ゲドは肩幅ほどの空間を開けて両の手を向かい合わせた。
 その手の間に、紫色の光が走る。
「例えば、どうしてこんな現象が起こるんだ?」
 ゲドは目線でアーニーを促す。
「それは・・・ゲドさんの持つ真なる雷の紋章が、両の手の間に高い電圧をかけているからです。
 電圧をそのままに、両の手の間の空気の圧力を下げれば、光り方はまた変ります。」
 アーニーの答えは淀みない。
「俺はその仕組みを知らずに、現象だけを起こす。
 お前はその現象に理屈と形を与える。その結果、また新しい現象が起こる。」
 ゲドの手の間の光が、緑色に変る。
「例えば花が咲いていても、それが花だと認識しない者にとって、それは花じゃ無い。
 それを意識して、認識する者がいるから、それは花でいられる。
 世界も、紋章も、似たような物だと俺は思う。」

 ゲドの手の中の光が一瞬白く輝いて、そして消えた。
 アーニーは、その光を眩しそうに見つめた。
「真空放電に近いですね。電界に、磁界の影響が無いから、真っ直ぐに電子線が飛んで。」
 ゲドは苦笑する。
「お前なら、いつか紋章の無い世界が来ても、代わりの力を見つけられそうだな。」
「え?」
「紋章に頼るばかりでは、人は堕落する。」
「そうでしょうか。」
「お前は世界にとって必要な人間だ。」
 ゲドの静かな、けれど力強い声に、アーニーは再度うつむいた。
「そうなら・・・どんなに・・・」
 アーニーの声が震えている。
 ゲドは、それ以上声を掛けることを止めた。

 柔らかな日差しが注いでいる。
 国を賭けた戦争が起こっていようが、世界はありようを変えない。
 人だけが世界を変えようとしても、変るはずも無いのに。
 真の紋章は万能では無い。
 その希少性と神秘性に、夢を見る者も多いけれど。
 決して、人は人の領分を越えられないのだ。

「色々・・・ありがとうございました。」
 どれくらいの時間がたった後だろうか。アーニーの声の震えが止まっていた。
 上げた顔に、涙の跡は見えない。
「いや・・・」
 ゲドは頭を横に振る。たいしたことはしていない。
「なんだかすっきりしました。」
 アーニーは立ちあがって、衣服についた草を払った。
 聡明なアーニーは、自分で結論を出したのだろう。
「私は私なりに、世界に関わっていくことにします。
 それが多分、私の役目ってことなんだと思うから。」
「そうか。」
 ゲドは立ちあがり、アーニーの頭に手を置こうとしたが、帽子に気づいてためらった。
 挙げた手を、肩に落とし、力づけるように何度か軽く叩く。
「何かあったら、またここに来るといい。」
「その時は、一緒に来てくれますか?」
 見上げるアーニーの目の色は、図書館にいた時と違って柔らかく和んでいる。
「ああ。」

 図書館へ戻る道すがら、アーニーはずっと、自分の研究した歴史について語っていた。
 その口調がとても楽しそうだったので、ゲドはつられて微笑んだ。
 若い力が作る新しい世界。その鮮やかな色彩に想いを馳せて。


〇久(2003.0611)


 うーん。my設定入っちゃいましたね。
 どうしてサポートメンバーには紋章が無いのでしょう?
 それとも、紋章はあるんだけど明記されて無いだけなのでしょうか?
 一々つけかえるの面倒くさいし?
 だとしたら、このSSもどきの設定は根本からひっくり返りますね。(苦笑)

 アーニーが紋章をつけたら、経験値が無くてもmaxまでレベル上がっていそう。
 水、蒼き門が似合いそうで、魔法リフレクト、集中、精密、魔力温存はデフォルトで持っていそう。
 ・・・・・・・・強いじゃん。


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