ゲドとシズの関係


シズはえれべーたーがーるです。
上品な立ち居振舞いが人気ですが、どうにもこうにも裏がありそうに見えるのは私だけでしょうか?(笑)
えれべーたーなどという、この時代にはまだ相応しく無さそうな科学技術に燃えるのは何故?
師の影響でありましょうか? 実はアダリーにラブラブ?(笑)
毎日、一日中、えれべーたーに乗り込みその運転に従事する様は、まさにプロフェッショナル。
でも「ねぇ、それって楽しい?」と聞いてみたくて仕方ありません。

シズから見たゲドは、お客の一人(爆)
多分、シズの世界はえれべーたーが中心だと思うので。
ゲドから見たシズは、えれべーたーがーる(爆)
一つの仕事に従事する人間を、おそらくゲドは好ましく思っているので、普通に認めてる。

・・・・・・・・・・・・・をいをい。それじゃ話が展開しないがな(苦笑)
ところがどっこい、何故か浮かぶんですね〜。


地下?階



 炎の英雄が立って、本拠地が決まり、にわかにゲドの回りがあわただしく動いた。
 かつて馴染んだこの城に、そういえば真の紋章について記載された本があると気づき、探してみたが何故か見つからない。
 司書のアイクに聞くと、大事な本は地下深くに保管されているということで、ゲドは普段乗らないえれべーたーに乗ることにした。
 階段で繋がっている2階や地下2階までなら、歩くのは厭わない。
 えれべーたー自体は、子供や年寄りも多いこの城で必要な物だと認識しているが、自分が乗ることになるとは、全く思っていなかった。

「どの階をご利用になられますか?」
 ゲドがえれべーたーに乗ると、えれべーたーがーるのシズが落ち着いた声で話し掛けてきた。
「ああ・・・地下・・・2階より下の階を頼む。」
 そういえば地下深くとだけで、実際に地下何階なのかは聞いてこなかった。
「下にまいります。」
 しかし、ゲドの一瞬のためらいなど気にしない風に、シズは軽やかに答える。

 えれべーたーは静かに動き始める。
 小さな稼動音とともに、この小さな空間そのものが下へと移動していく。
 狭い空間で、見るとも無しにゲドはシズに目を向けた。
 和服と呼ばれるらしい異国の装束に、真っ白な前掛けと髪留めが、化粧気の少ないシズを、より清楚に見せている。
 そういえば、エースはシズ見たさに用も無くえれべーたーに乗ると聞いたことがある。
 いや、用も無く医療室に入り浸るとも聞いたか。
 ゲドがぼんやりと、とりとめのないことを考えていた時、突然えれべーたーが停止した。

「あら?」
 シズが小さな声をあげる。
「申し訳ありません。少々お待ちください。」
 シズはゲドに頭を下げ、なにやらドア近くの計器をいじっている。
  ・・・最近ちょっと、働かせすぎたかしら・・・・
 聞き取れないほど小さな呟きが、聞こえたような、聞こえないような。

 しばらく色々試していたシズがゲドに向き合った。
「失礼いたしました。もう少々しましたら動きますので、しばらくお待ちください。」
「あ・・・ああ。」
 直ったのなら、すぐにも動くのでは無いかという疑問もあるにはあったが、妙に口を挟ませないシズの雰囲気に、ゲドは黙るしか無かった。

 微妙に気まずい時間が流れてゆく。

「あの・・・ゲドさんは、真の紋章を継承していらっしゃるんですよね?」
 ふいに、シズがゲドに話し掛けた。
「ああ。」
 えれべーたー以外のことをシズが話すのは初めてのことで、ゲドは少々驚いた。
「真の紋章を継承した方は、不老不死だとお聞きしましたが、本当なのですか?」
 深い茶色をしたシズの目が、興味深そうにゲドを見つめている。
「ああ。そうらしい。」
 実際、ゲドは紋章を継承してから体の老化を感じない。
「では、継承した時の筋肉そのままに、不眠不休でも働けるのですね。」
 桜色をした、小作りなシズの唇が、上品な笑みを浮かべる。
 どことなく、その笑みと、そのセリフの内容に違和感を感じる。
「あ、ああ・・・そうだが。」
 狭いえれべーたー内で、逃げ場所は無い。
 いや、逃げ場所を探してしまう己の気持ちが不思議だ。
 どうして、シズが怖いなどと感じるのだろう?
 ゲドの筋肉は、いつでも臨戦体勢に入れるように緊張している。

「素敵ですわ・・・。」
 シズが、うっとりとゲドを見つめた。
 もしここにエースがいたら、羨ましがりそうなほど、シズは上気した頬でゲドに微笑んでいる。
 はたから見れば恋でもしているような微笑が、実は違うとゲドは本能的にわかっていた。
「い、いや・・・」
 じりじりとゲドは下がる。
 えれべーたーの故障で狭い空間に閉じ込められた男女二人。
 エースがいたら喜びそうなシチュエーションだが、そんな甘いものじゃないとゲドは本能的にわかっていた。

 不意にシズが一歩、ゲドに近づいた。
 思わず剣に手が伸びてしまうゲド。
 このままでは、一般人、しかも女性に対して剣を構えてしまうという、戦士の風上にも置けない醜態をゲドがさらしてしまいそうになったその時、えれべーたーが動いた。

「あら・・・。直りましたのね。」
 にっこりと微笑んでシズは所定の位置にもどる。
 それがえれべーたーがーるの仕事だからだ。
 ゲドは知らず、大きく息をついた。
 背中に冷や汗が流れていた。

 そして、地下?階にえれべーたーが到着した。

 しかし、ゲドはえれべーたーを降りる気にならなかった。
 階段も無い、地上と切り離された空間に一人残されることに対する恐怖。
 敵地に一人、ということとはまた違う。
 ここから離れるために、またえれべーたーを呼び、それに乗らなければならないということが怖い。
 ゲドは小さく首を振った。
「いや、いい。地下2階に行ってくれ。」
 1階ではなく、地下2階。少しでもえれべーたーに乗る時間を少なくしたかった。

「上にまいります。」
 それがえれべーたーがーるの仕事だからか、ゲドの注文に疑問も挟まず、シズはえれべーたーを操作する。
 小さな稼動音と共に、狭い空間が上昇し、ほどなく地下2階に到着した。
 ゲドはえれべーたーを降り、そのまままっすぐ進む。
 後ろに、えれべーたーの閉じる音を聞き、ようやくゲドは体の緊張を解いた。

 これからは、いや、これからも、移動には階段を使おう。
 そして、地下深くに行かなければならない時は、小隊の単位で降りよう。
 妙な決意を抱いてゲドは踵を返し、城の階段に足をかけた。



 その後、全てが終わり、それぞれがそれぞれの道に戻った後。
 地下?階を根城にしていたランディスの行方を知る者はいない。




                                          了(2003.0402)

相変わらずゲド受けじゃ無いです(笑)
かなり情けないですが(爆)

本家のゲド受107祭りにシズxゲドが掲載された時、「しまった、先越された!」と思うと同時に、
「やっぱシズが腹黒く見えてるのは私だけじゃ無いのね。」と安心もしました。(笑)
このネタ自体は、107祭りの影響で、あっという間に思いついていたので(苦笑)

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