嘘をつかずに隠し事



月村先生は、嘘をつきません。隠し事はしますけど。

この設定が、萌えです萌え!
推理小説ファンなら誰しも挑戦したくなる犯人像。(いや、違うから)
ああ、思い出すのは古畑。
宗教上の理由から嘘のつけない犯人のシスターが、
アリバイを問われた時に言った言葉は「部屋で音楽を聴いていました。」
実は、殺した人の部屋、ウォークマンで聴いてたのです。
古畑が「犯人は貴方ですか?」と最初に聞いてたら、そこで物語は終了してました。

そしてこの犯人の言った台詞がもう! バイブルです。大好きです。
犯人「言葉が足りないのは嘘じゃ無い。」
至言です。
SS「螺旋の関係」でその精神を使わせていただいてます。


さて話は戻りまして月村先生。
彼もまた、「貴方が花喰ヒ鳥ですか?」と聞かれたら、逃げられない人。
でも、ゲーム終了まで、上手く隠します。素敵です。
嘘をつかずに隠し事をする方法を、いくつか考察してみましょう。




vs.要

幹彦「要君、もしかして疑っているのですか?」
 要は驚いて幹彦を見つめた。
幹彦「私が花喰ヒ鳥ではないかと、そう、思ったのでは?」
要 「い、いえ、そんなことありません!」
幹彦「かまいませんよ。花喰ヒ鳥は貴方なのか、と。そう聞きたいのでしょう?」
幹彦「私は嘘はつきません。 
    多少の隠し事はするかもしれませんけど、質問には正直にお答えしますよ。」
 


 これはゲーム本編にありましたね。そのまんま引用は避けて、少し言葉変えました。
 違和感あったらごめんなさい。変更点がすぐにわかった貴方は月村通!
 質問を先に言うことによって、精神的プレッシャーを与えています。
 こう言われた日にゃあ、素直に幹彦に傾倒している要に問えるわけが無い。
 一つの有効な手段と言えましょう。

vs.あずさ

あずさ「先生が花喰ヒ鳥なんでしょ?」
月村 「どうしてそう思うんですか?」
あずさ「だって、他に考えられないじゃない。」
月村 「というのは?」
あずさ「要さんが綺麗って知ってて、襲いそうなのって月村先生だもん。」
月村 「要君が綺麗だということは、貴方も知ってるのでは?」
あずさ「そりゃ、そうだけど。でも僕はあの時は知らなかったし。」
月村 「私以外にも、沢山いますよ。要君は魅力的ですからね。」
あずさ「うん。どうしてあんなに、綺麗でいられるんだろう。」

 あずさ、話題をずらされております。
 疑問に疑問で返す。これ、隠しの基本。(苦笑)
 他の話題に摩り替える、怒らせて最初の質問を忘れさせる。
 あずさだったら、簡単に誤魔化されそうです。

vs.土田

土田「あんたが花喰ヒ鳥なんだろう?」
月村「そうです、と言ったらどうするおつもりなんですか?」
 土田の目が剣呑な光を帯びる。
土田「決まってる。ただじゃおかない。」
 月村は肩をすくめた。
月村「怖いですね。『そうです』とは言いませんよ。」
土田「その言葉は本当か?」
月村「ええ。」


 土田、突っ込みが甘いです。
 「本当」なのは「そうです、と言わない。」所であって、それは「花喰ヒ鳥では無い。」とイコールで結ばれないのですよ。
 「花喰ヒ鳥か?」→「そうです。」以外の肯定文はOKなんですから。
 「花喰ヒ鳥か?」→「違いません。」「正解です。」「その通りです。」etc。

vs.抱月

抱月「君が花喰ヒ鳥なんだろう?」
月村「君がそう尋ねるということは、答えは出てるんでしょう?」
抱月「ああ。」
月村「では、答える必要はありませんね。ご想像にお任せしますよ。」


 微妙です。
 「ご想にお任せします」をどうにでも解釈出来るのが上級者向けなところでしょう。(苦笑)
 普通に考えれば「抱月は幹彦が花喰ヒ鳥だと思っている。」の肯定。つまりは花喰ヒ鳥の肯定。
 しかし「抱月は幹彦のことを疑ってはいるが、確信は持てないでいる。」と解釈すれば、花喰ヒ鳥を肯定したことにはなりません。
 

vs.金子

金子「あんたが花喰ヒ鳥なんだろう?」
月村「さぁ、どうでしょうね。」
金子「ごたくはいい。『はい』か『いいえ』で答えてもらおう。 あんたが花喰ヒ鳥なんだろう?」
月村「答えたくありませんね。」

 あまり上手く無いやり方かもしれませんが、やはりこれも肯定はしていません。
 嘘はつかないけど隠し事はしてる。 まさにその状態。
 問題は、隠し事をしてるという事実が、聞き手にバレてしまっている所。
 できれば上手に隠したい。


vs.真弓

真弓「先生が花喰ヒ鳥なの?」
月村「その答えが、君の何を変えるのですか?」
真弓「それは・・・別に・・・何も変えませんけど。」
月村「では、聞く必要は無いのではありませんか。」
真弓「答えたくないってことですか?」
月村「そう解釈したいのであれば、どうぞ。」

 質問の拒否ですね。
 答える必要性が無いから答えないのであって、質問の中身の肯定や否定はしない、というスタンス。
 ある意味、話を摩り替える、と同じ。応用編?
 

結局月村先生は、要に聞かれた時にしか、ちゃんと答えないと思うのですよ。
だって、隠し事は出来るんですもん。
そして、月村先生の頭脳と言語能力なら、誤魔化すのも上手いでしょう。
話術スキルと、嘘をつくことも出来る、という点で、一番誤魔化しが上手いのは水川先生だと思いますが。

いやいや、それにしても楽しい。(え?)
こういう、言葉遊びのようなやり取りを考えるのは、かなり好きです。
SS書く時も、大概は台詞から浮かんで、繋ぎとか地の文章で苦労するタイプ。

こんなやりとり、普通の生活でやってたら疲れっちゃいます。
だから、別段〇久が嘘つきで隠し事上手なわけじゃ無いんですよー?(笑)
腹黒、とはよく言われますが(爆)
「物は言い様。」を実践してるだけですってば。(え?)

例。「ゴローちゃんの踊りから目が離せない。」
踊りが下手で心配で目が離せないのか、上手で惹きつけられて目が離せないのか。
さて、どっちの意味だと思います?(含み笑い)
そしてさらに。
「どっち」と聞いておきながら、その二つの内どちらかが〇久の心情である、と明確に定義して無いあたりもポイントです。(邪悪笑い)
つまり、この二つとは全く違う意味で使ったのかもしれないのですよ。
深いですねー。日本語って。そして、上の文は「かも」がポイント。(もういいって)


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