水川の職業について考察してみよう。


水川が渡英した後、果たしてどのような職業につくのでしょうか?
作家? でも、個人的に水川抱月先生には日本語で小説を書いて欲しい。(理由はx金子xのSS参照。)
そんでもって。
x土田xとx要xの場合、渡英した水川抱月はこれからどうするのか?
ぢつは、私の脳内で、この場合水川先生は作家を辞めてしまいます(苦笑)
理由はまぁ、それぞれの短編SSの中ででも。
あ、もちろんそのSSやらシチュエーションやらは○久の勝手な妄想ですから、公式設定となんら関わりは無いし、人様の妄想と違うのは、むしろ当たり前だと思います。
そんなんでよければれっつらごー(笑)


x土田x


 憲実は約束を守り、水川のいる英国へやってきた。
 しかし、軍隊に従属していた彼は、五体満足では無かった。
 左腕の消失。命を失うことに比べれば、それはどんなにか些細であるか。
 憲実が生きて、自分の側にいる。その事が奇跡のようで、水川は神に感謝の祈りを捧げずにいられない。

 ただ問題は、彼の職だった。
 日本人であること。隻腕であること。英語に堪能で無いこと。無口な性質であること。
 その事柄全てが、英国においての彼の就職に不利に働いた。
 いっそ、日本に帰って道場を継いでもらい、自分は作家に戻ることも考えたが、まだまだ閉鎖的な日本の状況で、自分という存在がどのように他者の目に映るのか、また、憲実がどのように扱われるかを考えると、それもためらわれた。
 そして水川は一つの結論に達した。

 使ってくれる場所が無いのなら、自分で作ればいい。
 今まで溜めた金と、家からの補助を元に、小さな本屋を開いたのだ。
 どちらかといえば一般的ではない、専門書や外国書の専門店。
 特殊なジャンルなだけに、古本も取り扱うことにした。
 水川と憲実は共同経営者であり、店主であり、店員である。
 二人で充分目が届くほどの小さな店は、流行もしないが、すたれもしない。
 無口すぎるほど無口な憲実の対応も、客が常連になる頃には受け入れられた。
 静かで、穏やかな日々が二人を包んでいた。

「レイフ? どうした?」
 ある日の午後、客の途絶えた店内で、棚の整理を終わらせた憲実が、レジ側でぼぉっとした水川に声をかけた。
 英国に渡ってから、水川と呼ぶのも、抱月と呼ぶのも、繁と呼ぶのも相応しく無いように思えて、憲実は水川をレイフと呼ぶようになっていた。
「ん?」
 水川は顔を上げて、憲実を見る。何処にいても、何年たっても変わらない憲実の深い瞳に安心する。
「小説のアイデアでも考えていたのか?」
 憲実が苦笑を混ぜながら水川の隣に腰掛ける。
 この店には、作家の客が多い。作家が必要とする、専門書の品揃えは水川が見立てている。
 時折水川は店内の本を読み、心を飛ばしているように見える。
 作家という天職を止めているのが自分だと思うと、憲実は心苦しさを感じる。
「店なら、一人でもなんとかなるんだから、お前は小説を書けばいいのに。」
 憲実の声は、何処にいても、何年経っても変わらずに優しい。
「大丈夫。書きたくなったら遠慮せずに書くよ。
 戦争が終わって、日本に原稿を送るのだって容易になったんだからね。」
 慣れ親しんだ作風は日本語でしか表現出来なかったから、英国で小説を発表する気にはなれなかった。
 けれどその前に、この幸せで穏やかな日々の中、猟奇で冥い作品のネタが浮かばない。
 心の叫びが小説の原動力になるのだとしたら、ずいぶんと自分は満ち足りてしまっているのだろう。
 それもこれも、側にいるこの男のせいである。
「そうか。」
 憲実は近くにあった本に手を伸ばす。
 憲実は大分、英語で書かれた本も読めるようになっていた。
 それがまた、自分と共にいてくれる決意のようにも思えて、水川の心は温まる。

 客の気配の無い店に、静かな時間が流れてゆく。
 季節は秋。本が傷まないようにこの店に窓は無いが、外は楓や銀杏が綺麗な色に染まっている。
 ふと水川は思い立ち、立ち上がって憲実に問い掛けた。
「ねぇ君、僕がキッスしたいと言ったら、出来る?」
 客はいなくとも、ここは店。誰が突然入ってくるかわからない。
 憲実は案の定、驚いたように目を見開く。
 しばらく水川を見つめてから、憲実は小さく呟いた。
「したいなら、そうすればいい。」
 心もち、頬が赤い。
 水川の心が過去に飛ぶ。
 同じ意味合いの言葉なのに、どうしてこんなにも違うのか。
 水川はそっと、憲実の唇に自分の唇を重ねる。
 あの時の水川は嬉しさに震えていた。
 今は・・・今も、体が震える。それは嬉しいからだが、それだけでは無い。
 キッス出来ることが嬉しい。それ以上に、憲実がここにいることが嬉しい。憲実と心を通じることが出来て嬉しい。憲実が・・・存在していてくれて嬉しい。
 そう、愛しさに震える。

 そっと水川が手を憲実の身体に回すと、憲実も片腕を水川の身体に回す。
「僕は、君のことが好きなんだ。」
「ああ。俺も好きだ。」
 幸せすぎて、泣きたくなる。
 いつまでも、この時間が続けばいい。
 本の溢れたこの小さな空間の匂いは、かつて二人が肌を重ねた小さな土倉の匂いに、とてもよく似ていた。


長いのは贔屓ゆえでしょう(笑)
だってなんだか、だってだってなんだもんっ!(理由になっていません)
お互い癒されて、補い合った二人は無敵さ。(?)
いつまでもお幸せに。ほんとにもう。

x要x


 要が英国で大学に入学するために、水川は要に英語の集中訓練を行った。
 というより、実は自分も、長年にわたり日本に滞在し、日本語で会話し、日本語を書いていたので、教えながら復習していたというのが実情だ。
 要がさすがの集中力と記憶力で英語をマスターし、大学入学試験に合格すると、水川は急にやることがなくなってしまった。

「また、小説を書けばいいじゃないですか、レイフ。」
 新しい環境にも慣れ、次第に明るい笑顔を見せるようになった要は、そうレイフに勧める。
「けどねぇ・・・」
 水川は口篭もる。
 霧に閉ざされた町、色を無くした世界、猟奇殺人の本場、探偵小説の聖地・・・。
 確かに、ここイギリスにも創作心をくすぐる素材は多いし、トリックやストーリーは英文で書いても支障無いように思われる。
 けれど。なんというか。
「うーん。書く気が起きないんだよねー。」
 眉間に皺を寄せて、水川は腕を組む。
「水川センセ、スランプですか?」
 日本にいた頃、さんざん編集者から逃げ回る水川抱月を見ていた要には、その言葉が締め切り伸ばしの言い訳にしか聞こえない。
「スランプっていえば、スランプなんだけど。」
 水川は考え込むように目を閉じる。
 その様子が、どうやらいつもと違って深刻そうに見えて、要は口調を変える。
「大丈夫ですか? レイフ?」
 心配そうに水川を覗き込む。
「なんていうか、書けない、というより、書く必要が無いって感じなんだ。」
 言葉を選ぶ水川。
 要は続きを促した。

「そもそも、僕が小説を書き始めたきっかけは、幹彦の存在だった。
 彼の強すぎる世界観が僕に影響を与え、僕は彼の毒に酔っていた。」
 耽美で、退廃的で、エロティシズムに溢れ、グロテスク。
 水川の小説に対する評価は、彼の織り成す特殊な世界観に読者が入っていけるかどうかでかなり変わる。
 熱狂的なファンもいれば、酷評しか書かない評論家もいる。
「それがね、あの事件の後、変わったんだ。
 変な言い方になるけど、僕らは幹彦を失い、そして幹彦を手に入れた。」
 繋いだ手の間に、もう一人。
 要と水川の間には、常に幹彦がいる。
 要は、自分の手のひらを見つめた。
「作家にとって作品が魂の叫びだというのなら、僕にはもう、作品を書く必要が無いんだ。
 僕は、現状に満足してしまっているからね。」
 水川も、自分の手のひらを見つめた。
 そして、要を。

 要は、かけるべき言葉が見つからなくて黙り込んだ。
「ああ、そんな顔をおしでないよ。」
 水川は困った風に眉を寄せる。
「幸せだ、と言ってるんだから。」
 要は、本当にそうだろうかと思う。
 水川が小説を書かないのは、これ以上、幹彦を世に広げないためなのではないだろうか。
 作家にとって自分や周りの経験は、切り売りできるネタでもある。たとえそんな風に意識しなくても、登場人物や世界観に、実経験が混ざってしまう。
 これ以上幹彦の欠片を放出しないために、水川は筆を置くのではないだろうか。
「要君?」
 要の頭に水川の手が優しく置かれる。
 よく知っているその感覚は、水川のものであり、幹彦のものである。
 一緒にいれば、嫌でも思い出す。けれど、それは辛いだけの痛みでは無い。

 要は顔を上げた。
「じゃぁ、新しい職を探さなきゃですね。
 レイフは案外そそっかしいから、見つけるのも大変でしょうけど。」
 要は、ことさら明るい口調で話す。
「あ、失礼な。これでも前途有望な、優秀な学生だったんだよ?」
「何年前のお話ですか?」
 笑う声に冗談を混ぜて。
「大丈夫だって。ちょっとは信用しなさい。」
「ふふ。」

 ふわりと、水川は要を抱きしめる。
 強くなく、弱くも無く。励ますように、慰めるように。その感覚は以前から良く知っている。
 胸に暖かさが満ちる。
「僕らは三人で生きていこう。これからもね。」
 背中に回る腕は二本なのに、同時に二人に抱かれている気がする。
「ええ。」
 それが、自分達の選んだ幸せだから。
 あの、切なくて悲しくて愛惜しい魂を、二人でずっと、護って生きて行く。


あれ? なんで途中から要視点なんだ?(苦笑)
さすが主人公!(そういう問題でも無い)
ええと。水川と要の純愛は、二人に見えて三人って所がツボです。
ある意味、幹彦と要のハッピーエンドで、水川と幹彦のハッピーエンド。
傷を舐めあうんじゃなくて、間に一人。嗚呼、ロマン。(と、勝手に浸る○久)
 

x幹彦x

パターンがありすぎて。どうしましょうねぇ?
一応、水川が下僕状態で、陵辱BADENDのその後なんて美味しいかと。
でも、同時に、その設定でさらに金子も下僕だったり、あるいは金子が水川の下僕(?)だったりすると、
なお美味しいかも。
どのパターンにするか考え中〜。

内容は。
水川が幹彦と要を見つける。古ぼけた洋館希望。庭に桜の木、あり。
水川は、どうせなら、あんな使えない誠司なんかじゃなく、自分を使えと言う。
まぁ、もちろん誠司は使い捨ての駒なですけど。
誠司は幹彦が死ぬまで持てばいい。
ここで水川は、幹彦と要が死んだ後(要を生き残らせるのは諦めてる)桜の下に埋めてやろうじゃないかと提案。
本当は学校の桜の下が良いのだろうけど、さすがにまずいから。
無論、桜の周りには蔦薔薇。
で、幹彦は色々吟味した上で、提案にのっかる。
皆、壊れてるのは確かなのに、いっそ穏やかな日々が続く。
幹彦、要、ご臨終(苦笑) ただね、ここで、幹彦が死ぬ時に正気に戻る要ってのもアリかと思うのよ。
水川は遺体の埋まる桜を見守りつづける。
途中、戦争で渡英する時は、しっかりとした管理人に託すでしょう。
とにかく。
その庭に、また新しい薔薇ノ木が産まれる。
死を司る、薔薇の絡まった桜の木。(遺体込み)
水川はその洋館で、ずーっと猟奇な小説を書きつづけるのでありました。

・・・をや? 書けた? もしかして??
でもさぁ、この粗筋をいざSSにするとさぁ・・・ものごっつ長くなるのよ。
読みたい人、います? 粗筋あったら中身いらなくない?(をい)

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