「自分のおヨメさんは怜侍クンしかいないッスねー」
カレーを黙々と口にする御剣を眺めて糸鋸は改めて頷く。
「う…ム?」
スプーンを置いて、御剣が顔を上げた。
「待った。何故私がおヨメさんなのだ」
「自分がおムコさんだからッス」
「異議あり!これを見たまえ」
御剣が突きつけるスプーンの上に燦然と輝くタコさんウインナー。
「これを作れるキミこそおヨメさんだ!」
「ええっ!そんなの誰だって出来るッス。自分がおヨメさんなんてヘンッス、イヤッス!」
誰だって出来るというその言葉に地味に傷つきながら、御剣は反論する。
「私だってイヤだ!想像してみたまえ、おヨメさんという事はウェディングドレスを着るんだ!」
「大丈夫ッス!ちょっとヒラヒラが増えたと思えば…」
「私を笑い者にする気かッ!」
日射しが暖かく差し込むアパートの一室で、男の意地をかけた勝負がウインナーカレーを挟んで繰り広げられた遅い朝。