毎日の御剣との電話。それが何よりも糸鋸を癒す。
糸鋸が自分から切る事はまずない。出来るだけ、御剣の息づかいを感じていたい。そう思う。
だが御剣は、二言目には、仕事に差し支えてはならない、と、そこそこに話を打ち切ろうとする。
自分を思いやっての言葉だと分かっている。
だからと言って寂しさが消える訳ではない。

「アイツが、」
電話が終わってしまった後の喪失感は、いつも一人の男を糸鋸に思い出させた。
「アイツが事件を暴いたから、検事は検事でいられなくなったッス…!」
八つ当たりだと分かっている。成歩堂が暴いたのは警察局トップの殺人に証拠隠滅、捏造だったし、御剣は担当検事として利用されただけだ。
「アイツこそどっかに行っちまえばよかったッス」
だがその真相に御剣が傷ついた事は間違いなかった。
あの事件が明るみに出なければ、御剣が消える事もなかったはずだ。そう糸鋸は思わずにいられない。
「検事は生まれながらの検事ッス。天才ッス。それを邪魔して…」
御剣が父と同じ弁護士を目指していた事。それが何故か検事となって、悪い噂まで出ているのを知り、それを確かめようと弁護士になった御剣の幼なじみ、成歩堂龍一。
彼の弁護で暴かれた事実に御剣はひどく揺らいだようだった。
もしも御剣が検事である事を諦めてしまったら。それは自分とのつながりが消える事を意味する。
「御剣検事を今まで支えてきたのは自分ッス。後からノコノコ出てきてエラソウにするなッス」
御剣が成歩堂を評価する言葉を何度も聞いた。もちろん糸鋸はそんな事を言われた事がない。
それでも糸鋸は大切な人の言葉を信じた。
御剣が逮捕された時には必死で頭を下げ弁護を頼んだ。
「それなのにどうして一人にするッス…」
目を閉じると、法廷で立証する時の凛とした佇まいが浮かぶ。
「検事…」
失敗をとがめる時の皮肉の滲んだ瞳。
「検事だって…自分の事…」
呼吸が乱れ、しがみついて震える姿。
「好き、じゃないッスか…?」
デスクの向こうで日差しを浴びて振り返る、柔らかな笑顔。
「勘違いしても、仕方ないじゃないッスか」
綺麗な手に握られたポットから静かに紅茶が注がれて、そして差し出される…
「検事の紅茶が飲みたいッス…」


検事…もうずっと、笑った顔を見てないッスよ…
アレを知ってるのは…自分だけッス。これからも…誰にも渡さないッス。
どこにも行けないように。抱きしめて。手錠をかけて。檻の中に閉じ込めて…こんな事まで思ってしまうのは全部…

「検事のせいッス…」





※イトノコさんは結構嫉妬深い気がする

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