「設計図、か…?」
糸鋸の本棚の前に落ちていた何かの書類。御剣は何の気無しにそれを取り上げ、座卓に頬杖をついてめくってみる。
糸鋸が茶を出して座ると身を乗り出す。
「そうッス!これはスゴいッスよ。ロケットパンチって知ってるッスか?」
「まあ一応は。スーパーロボットの基本攻撃だろう?腕がロケットになって飛んで行き、敵を攻撃する」
「それッス!そこからヒントを得て設計したのがこの、“ロケット異議あり!”ッス」
「ちょっと待ちたまえ」
「これを装備すれば、どんなしぶとい弁護士でもものの2秒でダウンッス!」
「装備?まさか…」
「という訳でそのうち腕の型を取らせてもらうッス!茜ちゃんに教えてもらった最新の足跡検出を応用して、」
「異議あり!」
「まだ早いッス」
「そういうことではないだろう!」
「えー。ミクモちゃんだって絶対喜ぶッス」
「それは喜ぶだろうが…イヤ、待て、ミクモくんをダシにするとはヒキョウだぞ!」
「大丈夫!“ロケット異議あり!”は実用化に問題があるッスから。完成はまだ先ッス」
「…一応聞いておこう。問題とは?」
何が大丈夫なのかよく分からないまま、御剣が尋ねる。
「発射した後、自分で取りに行かなきゃならねッス。せっかくカッコ良く異議ありキメても、その後怜侍クンが自分で取りに行ってたら台無しッスから」
御剣の脳裏に、異議あり!と同時に発射されたロケットを眉間に受けて吹っ飛ぶ成歩堂の姿と、弁護人席までいそいそとそれを取りに行って、真宵にもう一度発射して欲しそうにワクワクとした瞳で見つめられる自分の姿が一瞬にして浮かんだ。
「だって怜侍クン、もう目からビームは出せるッスし」
「出るかッ!」
「キャー!やられたッスぅ〜」
「…次回のアフタヌーンティー、楽しみにしていたまえ」