留置所で御剣は思い出していた。

以前逮捕された時には成歩堂が弁護をかって出た。嫌がる彼を説き伏せて。
糸鋸が成歩堂に懸命に頼み込んだと後になって御剣は聞いた。それが本当に嬉しかった。
刑事の立場も省みずに動いた糸鋸。
あの時彼だけは御剣の無実を信じていた。
事件の事を何も話さなかったというのに。そう御剣は思う。
そしてきっと今もこの理不尽な収監に怒りを露にしてくれているのだろうと。そう信じたいと。

何故私など信じる。
私は、キミが知れば吐き気を催すような想いをずっと抱いているのに。

そして御剣は、もうずっと囚われている事に気づく。彼に。糸鋸圭介に。
彼の言葉。守ると言ったその言葉。彼だけが自分の孤独を見抜いたかのように、その言葉を口にした。
そしてその言葉に嘘は無かった。
糸鋸の温かな腕。頭を撫でる手に勝る力を未だ御剣は知らない。

いつかキミは私をプレイボーイなどと言ったな。だが私の目にはキミしか映らないのを知らないだろう。
それでいい。
キミは真っ直ぐ進むがいい。キミといると自分まで真っ直ぐな人間になれた気がして嬉しくなる。

その後に襲って来る自己嫌悪。
全てが欲しいと思いながら、皮肉でそれを覆い隠して彼に対する卑しさ。
普段意識せずにいられたその全てが今、突きつけられる。

キミには知られたくない。

窓の鉄格子を眺め、御剣は思う。

何故キミは私を守るなどと言ったのだ。
キミがそんな事を言うから挫けそうになるんだ。

だが私は私の信条に従う。もしかするとこれが最後の仕事になるだろう。
心残りはキミの事だ。私が今までどれだけ救われてきたか。それなのに私は何一つ返す事ができない。
せめて、キミが望むような検事でいたかった。本当だ。

看守が面会を告げる。面会人の名は糸鋸圭介。その名を聞いた御剣は複雑な気分で鉄格子の向こうに目を遣る。

私は彼を置き去りにしたのに。
私の部下に甘んじている必要などない。そう思っているのに。
今にも終わろうとしている私に関わっていたら、キミはどうなる。
キミの力は私が誰より知っている。だからキミは誰より幸せにならなければならない!

もう全て、白状してしまいたい。
このままキミとの繋がりが切れるくらいなら。
だが、それはしない。
キミの中の御剣検事像を壊す気はない。
この檻の中に、閉じ込めたまま死なせてしまおう。


そして御剣は留置所を出ると、静かに面会室へ向かう。
温かなその手が差し延べられるのも最後。その事実を噛みしめながら。





※イトノコさんの名前出せば現れると水鏡に見透かされたミッちゃんの話

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