薫ル水滴 ねぇ、何て顔してんの そんなに涙を溜めてさ。 もっと笑ってよ 俺を、最期の最期まで虜にしててよ。 そんな顔じゃ、縋り付きたくなるじゃない。 焼付いて離れないじゃ無い。 約束したのは。 ナルトとね、何処か遠くまでお散歩した時。 今日だけは、人でいようかって。 物の怪の宿った身体と人間離れした身体 そんな重いものは棄てて、ちょっとだけオシャレをしてさ。 色んな物沢山買って、手を繋いでまるで平和な恋人同士でしょ? ハタから見て宿業を持った人間なんて誰が思うだろうねって。 「ここからさ、出てみたいって思った事ある?」 「え?」 歩いてる時に、楽しそうな顔をしてるからさ。 ついつい現実的な質問をしちゃって。 「この里を飛び出してさ、自由になってみたいと思わない?」 「うーん、無いってば」 でもさ、ナルトはサラリと当り前みたいにそんな返事を返すから。 ちょっと拍子抜けした。 「どうして?」 「だって、『外』に出たってセンセーは居ない」 「俺?」 「センセーが傍に居なきゃさ、俺なんて何処に行ったって只の化物だってば」 運命を背負わされた子供でなければ言うべきではない台詞を。 さも、分かり切った様に淡々と語ってさ。 その時にね、 ああなんて切ないコなんだろうねって 涙腺が弱くなった気になった。 「そっか」 「うん、だから俺はこの里にいるってばよ」 「人間でいられるから?」 「うん、人間じゃないけど、センセーが居るから人間でいられる気がする」 「俺がお前を嫌いになっても?」 「センセーのぬくもりは此処にあるもん」 「俺が、死んじゃっても?」 「ココロには、センセーがいるもん」 期待をして意地悪な事を言えば それがどうしたという様に至上の告白みたいな事を言うから。 じゃあずっと此処にいればいいよって 此処に居てさ、その命尽きる時まで俺を想っていてよって 半ば強制的の様に押しつけてさ。 でも、笑って承諾なんてしちゃってさ。 指きりなんかしちゃって。 俺だけが幸せになった感じだった。 幸せな、約束をした。 でも、今考えれば『それ』は。 一種の呪縛みたいだったのかもね。 「なーに泣いてンの・・・」 「泣いて無いってば」 「いつかは、こうなるって分かってたでしょ」 「うん、分かってた」 涙を一杯に含んだその顔は 自分の命の終わりをさ、こう確実に。 リアルに感じる気がする。 「・・・どんな任務してきたの?」 「一対三十の全く卑怯な暗殺」 「一人なのはどっち?」 「俺」 「あはは・・・それじゃあ、卑怯だね」 「味方はみんな、弱いから。だから殺されちゃったよ」 「センセーは?」 「んー・・・?」 「センセーは、死ななかったね」 「うん、強いから」 きっともうすぐ死んじゃうけどね。 「ナルトの顔見たかったからね、頑張ってここまで寿命伸ばしてきたよ」 「へへ・・・エライってば」 「ね、笑ってくれないの?」 我慢してたみたいだけど、やっぱり無理で。 ホラ、その大きな瞳から沢山の水が零れてるよ? 「ね、涙なんか流してないでさ。笑ってよ」 「だって、止まんねーんだもん・・・そんな器用な事できないってば」 「じゃあ、泣きながら笑ってよ」 「泣きながらでもいいの?」 「・・・笑った顔じゃないと」 お前が笑って無いと 「縋り付きたくなるんだよ」 「縋ってよ・・・」 「ナルト」 「縋って生きててよ」 「はは、無理な事言うね」 「そんなの承知で言ってるんだってば」 それでも、笑ってくれるから。 ああ、なんだかこっちの方が綺麗だなって思った。 涙しながら笑顔なんて、最高のシチュエーションじゃない? 「なぁ・・・」 「何だってば」 「俺ね、お前の事愛してたよ」 「うん」 「お前もさ、俺の事は愛してた?」 「うん」 「約束は守ってくれるの?」 「その為の・・・約束だったんでしょ?」 「ま、そうだね」 けど。 約束を、守ってとは言わないよ。 きっとね、俺以上に好きな人が現れるよ。 その時の為に守ってなんて今は言わない。 お前はさ、強いから。 俺の面影だけでも前へ進めるから。 春が来ても、花を見て綺麗だねって笑ってくれるんだろうね。 夏が来ても、自分で風を手に入れてさ。 秋が来て、枯れ葉を見ても泣かない位、郷愁に浸らない位強くなったらさ。 冬は、俺がお前を温めなくても平気だね。 その時は誰かを。 一番大好きな誰かを温めてあげてよ。 やっぱり、ちょっとヤキモチ妬いちゃうけど。 でも、ずっと独りよりはイイよ。 お前が独りなのよりは、ずっとイイ。 「ホラ、何て顔してんの」 「・・・せんせ」 笑顔が、崩れてるよ。 「死に行く俺にさ、もっと一杯幸せを頂戴?」 全部お前にあげるからさ。 俺を、あげるから。 生まれてきて良かったと思わせて。 「うん、いい顔だね」 「・・・へへ」 「・・・・・・・涙がさ」 「え?」 「ナルトの、匂いがするね」 パタパタと溢れて俺の頬に落ちる涙は あったかくて、イイ薫り。 極上の温もり。 ああ、幸せだね。 最期に見たのは、大きな月。 それと、太陽。 ゆっくりと目蓋を下ろしながら願いました。 どうか早く 俺を忘れて、幸せになって下さい。 思い出を背負うのは俺だけでいいから 幸せに、もっと幸せになって下さい。 薫ル水滴. |
| 四万打アンケートの結果、小説で切ない系となりました。 ので久々に書きました。切ないお話。 というかカカナル小説を久々に執筆しました。 うわ・・・久しぶりなだけにいつも以上にダメダメです。 よ、四万打ありがとうございましたー! こ、こんなヘタレ文で宜しければどうぞお持ち帰り下さい。 持ち帰って下さる方は事後報告でもいいので掲示板に書き込みして下さると嬉しいですv 珠さまのサイト「スロウライダー」で40000HIT記念ですv 私もアンケート、切な系に一票入れました! ほんとに珠さまのお話は切なくって胸にじ〜んときちゃいますvvv 珠さま、これからもステキなカカナル、いっぱい描いてくださいね! ありがとうございました〜<m(__)m> |
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