純白と銀色。


聖なる夜の色。





今宵が
忘れられないクリスマスになります様に。






純白と銀色






風が冷たい季節
息が白くなる季節

「今年も来たねぇ・・・」

アカデミーの職員室内で
暖房を占領して離れない二人の男がいた。

「え?何がですか?」

その二人。

「恋人同士がやたらと浮かれる日」
「ああ、クリスマスですか」

片方は上忍
片方は中忍。  

別に聞こえだけなら珍しくもない組み合わせだが

「イルカ先生は恋人いるんですか?クリスマスを一緒に過ごす。」
「・・・・・・・・分かって言ってませんか?カカシさん」

名前を出すと
とてつもなく珍しい組み合わせ。

カカシとイルカは二人で暖房の前で茶を静かにすすっていた。

「あ、バレました?」
「・・・・・・・・今日は一体何なんですか。珍しくこっちに顔を出されたと思ったら暖房にこびりついて」
「ん〜ちょっと聞きたい事がありましてね」
「聞きたい事?」
「ナルトの事です」


(なるほど)


イルカは相変わらずやる気のない顔をした上忍を見ながら思った。

「貴方が此処に来る時は・・・大抵俺にナルトの事を聞きに来る時だけですからね」
「はは」
「で?今回は何なんですか?」
「ん〜・・・・・・・」

やはりいつもの様に
中々切り出さない、というか
勿体ぶって何かを隠している様なカカシ。

毎度の事なので慣れてはいるのだが
逆に毎度の事だとイルカから急かさないと口を開かないのだ。

「言っときますけど俺、まだ仕事残ってるんですからね。手短に早くして下さいよ」
「・・・冷たいですね〜」
「溜め込んでさっさと言わないからですよ」
「あはは」

全く何が可笑しいのか。
こっちが見通してる筈なのに
イルカは逆に見通しされてる様な感じになった。

「いや、ちょっとナルトの欲しいモノをね、聞こうかな〜なんて」
「ナルトの欲しいもの?」
「ええ」
「クリスマスプレゼント・・・ですか?」
「いやぁ〜・・・・はは」


さっきまで『恋人同士が浮かれる日が来た』などと
さも自分には関係のない様な事を言ってた割には


自分が浮かれ顔。

(なんだかなぁ・・・)

イルカはハァ、と溜息をつく。


「そんなのナルト本人に聞けばいいじゃないですか」
「聞いたらプレゼントするのバレちゃうでしょ」
「だからって何で俺に・・・」
「殺してやりたい位悔しい事ですけど、貴方が一番ナルトとの時間を持ってますからねぇ」

(こ、殺してやりたいって・・・)

「いや、別に今となっては気にしてはいませんけどね」
「はぁ」
「貴方は完璧ただの保護者ですからね。この先も」
「・・・・・・・。」


どことなくトゲの刺さる言い方。

そりゃあ、ナルトは可愛いとは思っているが
確かに恋愛感情はない。
一緒にいると家族みたいなもので。

だけど。

今まで大切にしてきた子をあっさりとこの男に取られてしまっては
気にくわないものがある。

更にはこの言い方。

(のろけに来たのかこの人は・・・)

微妙に眉が引きつる。

「カカシさん。貴方一応・・・相談に乗ってもらう身だって事忘れてないですよね?」
「まさか!忘れてませんよ」

自分も負けずトゲのある言い方をしてみたが
にっこりとした、掴めないその笑顔に更に溜息の出るイルカだった。

「で?ナルトの欲しそうなモノって何でしょうか?」
「欲しいモノ・・・。ラーメンでしょうか」
「・・・・・・・・・・真剣に、なんですけど」
「し、真剣ですよ!」
「やっぱりそれしか思いつきませんよねぇ・・・」

今度は二人で溜息。

流石のイルカにも思いつかないらしい質問。

ナルトは小さい頃からずっと一人だった為か
誰かに甘えたりする事を知らないその子は
自分の欲しいモノなど何一つ願った事はないのだ。

そう
それが幾らイルカにでも。

「思えば・・・悲しい子だよ」
「ええ」
「ずっと愛情なんて知らなかったもんなぁ・・・」
「買って欲しいものなんて思いつくのが不自然ですね・・・」


与えて貰えない変わりに
今あるものを棄てずに大切にしてきたのだから。


「ま、愛なら俺がこれでもかって位あげてるんだけどね」
「ナルトにとっては・・・今はそれで充分だと思い込んでいるんでしょう」
「俺としてはもっと我侭言って欲しいんですけどね」


「難しいなぁ・・・」


らしくもなくポーカーフェイスが崩れる。


「イルカ先生は・・・」
「はい?」
「イルカ先生は・・・去年までナルトとクリスマスしてたんですか?」
「え?あー・・・それがした事ないんですよ」
「へ!?」

思わず驚く。
カカシにとっては意外な答えだった。

「何でかいつもクリスマスは宿直で・・・正直ナルトとしたかったんですけどね」
「宿直・・・」

大方同僚が皆クリスマス事前に欠席届けでも出したのであろう。
それに気付かず毎年こうなっていたに違いない。

「今年もなんですよ」
「・・・明らかに恋人が出来ないのが解ります」
「何がいいたいんですか・・・」
「いえいえ。誠実で正直な人だと」
「褒めてるんですか、ソレ」
「一応」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

「・・・仕事やらなきゃいけないんで・・・いいですか」
「あ、ああ。スミマセン、お手数おかけしました」

遂には話題まで無くなってイルカに追い返される様な台詞を吐かれて
カカシは暖房から名残り惜しく離れた。

(結局わかんなかったな。ナルトの欲しいもの・・・)

ふぅ、とまたポーカーフェイスが崩れた。


仕方なく職員室から出ようとしたその時。


「カカシさん」

追い出した主からの止めの声。
カカシは振り返る

「はい?」
「貴方の欲しいものって何ですか?」
「俺の・・・ですか?」
「はい」

(俺の・・・欲しいもの)


そんなのは
考えなくたって。

ひとつしか無い。


「それを・・・形にしてみたらどうです?」
「形・・・ですか」
「アイツは貴方がくれるものなら何だって喜ぶんじゃないでしょうか」
「そ、そうですかね」
「ナルトが・・・選んだ人ですから」
「・・・考えてみます」
「頑張って下さい」


ピシャンと
静かに戸は閉められた。


「結局・・・のろけだったな」






考えながら道を歩く
周りを見れば
これが隠れ里かという位、無防備かつ景気の入った飾り付けの店が数々。

(形にしてみろっていったってねぇ・・・)

その辺の知識と免疫が全く無いカカシにはお手上げ。
昔は付き合ってた女達にせがまれ色々なものを買わされたものだが
今回ばかりは違う。

自分から、というのが一度もないのだ。

(困ったなぁ〜・・・)

とりあえず今は何も考えずに店を見る事にした。




最初はオモチャ屋。

「ぬいぐるみ・・・なんて小さい子じゃあるまいしねぇ」

相手はいくら子供といっても12歳。
女なら幾つになっても喜ぶ者は喜ぶのだが、
生憎、ナルトは男の子。

「却下・・・でしょ」



次は食べ物屋。

ラーメンを手に取る。

「イルカ先生と一致したとはいえ・・・これじゃあいつもと変わらないし・・・」

それにナルト本人が自分で買ってきてしまうのだから。
全くもって意味が無い。

「却下・・・」



三件目、服屋。

これははっきり言って好みの問題。
ナルトの事であろうからきっとカッコイイ服が着たいに決まっている。

しかし。
カカシにとってはひらひらレースの可愛い服を着せたい所。

言うなれば変態である。

だが、そんな服をプレゼントした日には嫌われて口も利いて貰えないかもしれない。

(本当は着せたいけど)

「却下」



更に困ったまま店を回り続けた。
あの後、本屋だの雑貨屋だの靴屋だのと訳の解らない店まで色々回ったが
どうにもこうにも見当がつかない。

「あーどうしよう・・・」

何故そんなにプレゼントに執着するのか。


(だって、ねぇ・・・)


折角初めて二人で過ごすクリスマス。
記念になるもの、思い出になるものを贈りたいというのがカカシの本音。

自分はどうでも良かったとしても
あの子にとっては誰かと過ごすのは初めてだとイルカから聞いた為か。

尚更。


「も、ホントどうしよう・・・」

疲れてその辺のベンチに腰掛けて再度この辺りの店を見回せば

ふと
一件の店に目が止まった。

「あ」

(そうか・・・)

その店を見てカカシはイルカの言葉を思い出していた。

「俺の欲しいものね・・・」

閃いた様にクッと喉を鳴らす。

(ま、早く言えば初心に返れって事ですね、イルカ先生)

いつもは嫉妬の対象だったけど、
今は感謝。

カカシは立ち上がりその店へと足を動かした。









「これで・・・良かった・・・よな」

やっとの事で買い物も終わり
今立っているのはナルトの家の玄関。

しかし。
何故かそのドアを開けられずにいた。

「あ〜でも気に入らなかったらどうしよう・・・」

いつになく不安な表情でそこに立ったままで悩む。
すると、

ガチャッ!!

「!?」

いきなり目の前のドアは開けられた。

「カカシせんせー?」
「あ、びっくりした・・・」
「せんせー何やってんの?」
「え?」
「さっきから気配ビンビンで玄関にいたままで」
「・・・・・・・・」

何とあろう事か。

上忍が
かたや暗部にまでいて手配書に載る、木の葉の里のトップを争う程の忍が。
いつも無意識に消している気配すら消さずにいたのだ。

(かなり・・・重症かも)

そう思わざるを得ない。

「俺も詰めが甘いね・・・」
「え?何の?」
「・・・・・・・まさに油断大敵」
「さっぱり分かんねーってばよ・・・」

眉を寄せ疑問顔な子供。
カカシはそんな子供の頭を撫でながら言った。

「いや、何でもないよ」
「まいっか。それよりせんせー早く入ってってば!寒いよ〜」
「ああ、スマンスマン」
「あ、きっと入ったらびっくりするってばよ!」
「何?何かあるの?」
「それは見てのお楽しみ〜!」
「じゃあ、おじゃましまーす」

家に入り
トコトコと歩くナルトの後をついて行けば

「うわー・・・・。」

キッチンにあるダイニングテーブル。


そこには
豪華な料理が沢山置いてあった。

「すっごいね」
「でしょでしょ!」
「お前作ったの?」
「うん!」

にんまりとした笑顔で返事を返す。

いつもラーメンしか作らなかったナルトが
こんなに豪勢かつ丁寧に料理を作れるとは思ってもいなかった。

「ナルトがこんなに料理できるなんて知らなかったよ」
「十二年も一人でいればこの位作れるってばよ」
「へ〜・・・」

十二年。
嫌でも一人で作らばければいけなかったのだろう。
少し哀しみを感じたが、カカシは言葉を続けた。

「俺、十二年以上一人でいるけど無理」
「先生も少しは何か作れってばよ・・・」
「いいよ」
「何で?」
「だってナルトが作ってくれるし」
「え?」
「ナルトが俺の分も作ってくれるんでしょ?」
「・・・・・・へへ」

満面の笑みでカカシの腰に抱きつく姿は
何ともいえず可愛らしく。
カカシはこの場で押し倒してしまいたい欲望に駆られた。

(でもダメ。今は我慢我慢・・・)

そう、その前にプレゼントを渡さなければいけない。
カカシは思いきってナルトに切り出してみた。

「あのね、ナルト」
「んー?」
「先生、ナルトに渡したいモノがあるんだ」
「渡したいもの?」
「クリスマスプレゼント」
「え!?」

次の瞬間、パアっと嬉しそうな顔の子供が目に映った。

「あ、あのさあのさ!俺もあるの!」
「え?そうなの?」
「うんっ!」
「・・・・・・・嬉しいなぁ〜」

思わず顔がニヤける
こんなに一杯の料理まで作って貰った上に
更にはプレゼント。

「じゃ、一緒に渡そうか」
「あ、ちょっと待って!今持ってくる!」

タタッとプレゼントを取りに奥の部屋まで行くその姿は
なんとも微笑ましい光景。

ナルトから貰えるものだったら何でも嬉しく
ナルトから貰えるのだったら他は何にもいらない。

(俺って幸せ・・・)

「これ・・・気に入って貰えるよね」

きっとナルトだって。
カカシから貰えるものなら何だっていいに違いないのだから。

「おまたせ〜!」

嬉しそうに綺麗なラッピングのプレゼントを片手に
自分も綺麗なラッピングのプレゼントを片手に。

「はい、じゃあコレ。メリークリスマス」
「メリークリスマスだってばよ!」

同時に手渡す。

「ね!これ開けていい!?」
「どーぞ」

直ぐにガサゴソと包みを開けるナルト。
包みを開けたその中には

小さな箱。

「これ・・・」
「フタ、開けてみて?」

ドキドキと箱のフタを開ければ。



キラリと光る、銀色の指輪。



「ゆびわ・・・」
「今日ね、イルカ先生の所に相談しに行ったの」
「イルカ先生?」
「ナルトの欲しいモノは何かなって」
「うん」
「そしたらね、俺の欲しいモノを形にしてみたらどうだって言われて」
「・・・うん」

「俺の欲しいモノはね。ナルト、いつだってお前なんだ」
「俺・・・」
「うん、だから・・・これはお前は俺のものなんだよっていう印」
「・・・・・・・・」
「永遠に、俺のものなんだっていう形」
「・・・・・・・・」


「受け取って・・・永遠に俺のものになってくれる?」
「せんせー・・・・・・」


ナルトはそのまま沈黙してしまった。

(あ、あれ・・・)

もしかして。
やっぱり気に入らなかったんだろうか。
そんな不安と考えが頭を巡った。

「な、ナルト・・・」
「せんせー!俺のも開けてみて!」

そんな不安を余所に
ナルトの催促。

「あ、うん」

言われるままにナルトからのプレゼントを開けてみれば


開けてみれば。


「・・・・・っ!」


そこには、

純白と言っていい程の

真っ白なガラスの指輪があった。




「ナルト・・・これ・・・」
「俺もね、サクラちゃんに相談したんだってば・・・」
「サクラに・・・」
「そしたら、イルカせんせーと同じ事言ってた」
「同じ事?」
「サクラちゃんに俺の欲しいもの聞かれて『カカシせんせーしか欲しくない』って言ったら・・・」
「・・・・うん」
「言ったら・・・指輪にしろって」


「指輪は・・・『貴方が欲しいって伝えるプレゼントなのよ』って・・・」


頬を赤らめながらも辿々しいが一生懸命に伝えるその姿

「ナルト・・・」

カカシは堪らず、その身体を抱きしめた。

「・・・これって、以心伝心っていうのかね・・・」
「・・・いしんでんしん?」
「離れてても同じ事考えてるよーって事かな」
「・・・・・・・うん。じゃあ、いしんでんしんだってば・・・」

きゅう、と
ナルトがカカシを抱きしめ返す。

「コレ、大事にするよ」
「俺も」
「・・・左手、出して?」
「左手?」
「うん」

ナルトが左手を差し出せば
先程プレゼントした銀色のリング。
それを薬指にはめて。


「ナルト。ずっと俺のものでいて下さい」


優しい笑顔で言えば


「・・・・・・・・うんっ」


涙目で、返事を返す。


「俺にもはめてくれる?」
「うん」
「左手の薬指にね、はめるんだよ」
「薬指・・・・?」
「そう、永遠に愛を誓う時は左手の薬指に指輪をはめるの」
「へぇ・・・・・・・じゃあ、左手出してってば!」
「はい」

カカシの大きな指。
小さな指を絡ませて薬指に純白の指輪を通せば
ぴったりと違和感無くはまった。

「ピッタリだ」
「うん・・・いつもね、手繋いでるから・・・サイズこれくらいかな〜って」

恥ずかしそうに笑う

「俺のもぴったりだってば」
「そっか。良かった」
「せんせー・・・ずっと俺のものでいてね」
「勿論」
「大好きだってば・・・」
「俺も大好き」


もう一度抱きしめ合って
見つめ合って


誓いの、キス。


「せんせー・・・っ」
「ナルト・・・・」




もう、お互いしかいらない。




「料理・・・どうしよっか」
「食べるってば?」
「うん・・・食べたいけど・・・今はナルトがいい」
「・・・っ」

カカシはひょいっとその赤い顔を覗き込む

「ナルトは、料理と俺・・・今はどっちがいい?」

意地悪に聞けば
ナルトはぎゅっと目を瞑って

「・・・・・・・・・・せ、せんせーがいいっ・・・」


必死の告白。


そんなナルトの告白にカカシはフッと笑みを捧げ
その場で静かに押し倒して頬をすり寄せた。

「えっちしようか」
「・・・・・うん」


愛しい子。
永遠の幸せ。


さあ
聖なる儀式を始めましょう。


「メリークリスマス、ナルト」








手を絡ませれば

純白と銀色。


聖なる夜の色。





今宵はきっと
一生忘れられないクリスマス。







END.

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


せ、洗面器洗面器洗面器洗面器ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

全くもって私らしくないクリスマス激甘小説を書いてしまいました。
うわぁ・・・もうコレ絶対砂吐くって。
しかも長過ぎ。(大汗)

こんな小説でもお持ち帰り私て下さる方は
掲示板かメールで御報告いただけますと大変嬉しいですv

皆さん、よいクリスマスをv



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ほわわわわ〜ん(←幸せにひたっている音)

甘々でらぶらぶで、こんなステキな小説お持ち帰りだなんて!
珠さま、ありがとうございます〜〜〜っ

ナルトがね、ガラスの指輪でもどんなにか買うのに苦労したかなぁって考えるときゅーっと胸が痛みます(>_<)←いや、そんな乙女じゃないだろ…
そしてそれを贈られたカカシはどんなにかナルトが愛しいだろうって思うと、もうもう、世界名作劇場とタメはるぜ!みたいな?

私の中で聖夜の鐘が鳴り響いてます!
あぁ〜〜心が洗われてゆくわ〜〜〜〜〜(昇天)


ホントにステキなお話、ありがとうございましたvvv




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