あの冬の日、確かに交わされた約束を、
この雪の中で、一人、思い出しています。
温かかった唇も、
優しい吐息も、
絡めた冷たい指の感触も、
へたくそな嘘も。
7月の空に雪を乞うように、
アナタをずっと待っています。
七月、雪を恋う
その夜は、静かに雪が降っていた。
ナルトは、自室の小さなベットで、一人、体を縮めていた。
分厚い毛布を体に巻きつけて、きつく握り締める。
こんなに寒い夜なのに、きっと、今夜は眠れないから。
昔、イルカ先生が教えてくれた「眠れない夜のホットミルク」も、
今夜は役に立ちそうも無い。
壁にかかった時計は、もうとっくに深夜をすぎているというのに、
ナルトの頭は冷たく冴えたままで、
ただ、じっと小さな体を縮めているだけだった。
冴えた頭が思いつづけるのは、
愛しい、愛しい、あの人の…ーーーーーーーー
コンコン。
雪の降る夜は、とても静かで。
辺りの喧騒や雑音のすべてを包み込んで、雪が降っている様だ。
そんな静寂の中に、小さなノックの音が響いた。
びくんと細い肩が震えて、ドアをじっと見つめる。
こんな時間に尋ねてくる人は…
「ナルト…まだ、起きてるか?」
少し躊躇いがちな声。
「お、起きてるってばよ!」
ナルトは毛布を跳ね除けて、パタパタとドアへ向かう。
鍵を開け、冷たいドアノブをまわすと、カカシが立っていた。
「先生…」
「ごめんな、こんな時間に」
小さく笑って見せる。
開いたドアから冷たい風が吹き込こんで、パジャマ姿のナルトは身震いした。
それを見て、少し慌てたように、カカシは「ちょっと入ってもいいか?」と、
後ろ手にドアを閉め、中に入った。
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二人は、テーブルに向かい合って座り、ナルトの入れたホットミルクを飲んだ。
カカシは、「砂糖の量がちょうどいいねぇ」などと笑っていたが、
ナルトは黙って、カカシが話し出すのを待っていた。
「ナルト? もう眠いのかい?」
いつもの元気な様子が見えなくて、怪訝そうにカカシが問う。
「別に…。先生の方こそ、こんな時間に何しに来たんだってばよ」
「あ…ああー…」
言葉を濁す。
ナルトがじっと見つめると、ややあって、カカシは口を開いた。
「オレ、しばらくこの里を離れるから。」
暫しの、沈黙。
小刻みに震える手をテーブルの下で握り締め、平静を装ってナルトは言う。
「へー…な、なんでさ!」
予想外のナルトの反応に、少し驚きながらも、カカシは続けた。
「いや、任務でな。
期間が長いから、お前らの担当を一回解かれることになった。
お前らには新しく上忍の先生がつくよ」
「長いって…どのくらい…?」
「そうだな…」
目線を上げて、考える仕草。
「半年くらい…かな」
…うそつき。
ナルトの視線には気づかず、続ける。
「ま、たいした任務じゃないでショ。
すぐに戻ってきて、またお前ら鍛えなおすからな〜」
おちゃらけたような物言いに、堪えきれなくなったナルトは、勢い良く立ちあがって声を上げた。
「なんで嘘つくんだってばよ!
オレ、全部聞いてたんだってばよ! イルカ先生も、火影のじーちゃんも、
危険な任務だって言ってた! 何年で帰ってこれるかわかんないって!」
「お前…」
「どうして…どうしてホントのこと言ってくれないんだってばよ!」
ナルトの碧い目から、ぼろぼろと涙が落ちる。
カカシは戸惑った。
ナルトが自分たちの話を立ち聞きしていたことに。
それ以上に、
ナルトが激しく怒りを見せ、泣いていることに。
「……」
顔を赤くして、しゃくりあげるナルトの姿に、
困った顔のカカシは、そっと、手を伸ばす。
「…すまん、正直に言わなくて。
お前に、余計な心配かけたくなかったんだ」
柔らかい髪に触れる。
「……」
「お前も聞いたとおり、確かに危険な任務だ。
…正直、いつ帰れるのかわからない。
だけど、ナルト」
碧い目を、覗きこんで。
「俺は絶対に死なないよ。
お前が立派な忍者になるには、俺が付いてないとナ」
温かい手のひらが、顔を包み込んで。
「せんせぇ…」
堪えきれなくなって、ナルトはカカシに抱きついた。
「せんせぇ……せんせぇ…!
オレこそ…ごめん…
オレ、先生がホントのこと言ってくれなかったことよりも、
先生が居なくなっちゃうことに怒ってるんだってばよ…」
「ナルト…」
「先生は悪くないのに…先生だって辛いのに…
オレがもっと大きかったら、オレがもっと強かったら、
先生といっしょに行けたのに…」
涙を拭いながら、悔しそうに唇をかむナルトが愛おしくて、
カカシは抱きしめる腕に力を込めた。
「すぐに帰ってくるよ」
「…だから嘘つかないでってばよ…」
鼻声のナルトに苦笑しながら、やさしく髪を撫でる。
「…絶対、帰ってくるよ」
「うん…」
「俺は、死んだりしない」
囁いて、涙で濡れたナルトの顔に、何度も何度もキスをする。
髪に、耳に、瞼に、唇に。
触れられた場所が、熱を帯びていくのがわかる。
その熱が愛おしくて、狂おしくて、
涙は枯れることなく溢れつづける。
「今夜はオレの傍にいて…」
「…ああ」
「ずっとずっと抱きしめていて」
「ああ」
「ずっと…」
涙が頬を伝わって、ポタポタ落ちる。
「傍にいるよ」
そう言って、カカシは大きな手の平で、何度もナルトの頭を撫でた。
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「あ……う…」
腰に回された腕に、徐々に力がこもる。
口付けは激しく繰り返され、飲み込みきれない唾液が口の端を伝わる。
ナルトはそれだけで十分感じており、
その腕に支えていてもらわないと、力が抜けて倒れてしまいそうだった。
「は…ぁ…せんせ…」
やっと唇が離れると、カカシは軽々とナルトの体を抱き上げた。
そのままベットに運ぶ。
その小さな体を優しく横たわらせ、もう一度、深いキスをする。
そうしながら、片手でパジャマを脱がせ、白い肌を愛撫する。
ナルトの半開きの口から、小さな吐息が漏れる。
胸の薄紅色の飾りを舌先で舐めると、ピクンと躰が震えた。
「ああ…ん…はぁ……や、やめ…」
器用に、いやらしい動きでそこを攻めながら、手は徐々にゆるく反応を示す中心へ向かう。
「あっ…う…くぅん…あ…ぅ…」
快感を堪えるような、鼻にかかった甘い声で泣き、その声がカカシを煽る。
片手で胸の飾りを愛撫しながら、もう一方の手で、天を指すそれに優しく刺激を与える。
「せ、せんせぇ…っ」
早く楽になりたくて、ナルトの腰が自然と動く。
そんな様子を楽しむように見て、カカシは微笑む。
「ナルト…カワイイよ」
「ひゃ…あうッ…せんせぇ…!」
カカシの頭がすばやく移動し、濡れた舌先が敏感なそれを包み込んだ。
「せん…せぇ…っ!!」
大きく躰を震わせて、ナルトは、堪えきれない熱を放出した。
トロリとした液体で、カカシの指と唇が濡れる。
息を荒くしている唇にキスをすると、
ナルトは、カカシの首に腕を絡め、舌の動きに応えた。
激しい口付けを繰り返しながら、カカシの手は、ナルトの後ろに回りこむ。
まだ、硬く閉ざされたそこを、ナルトのもので濡れた指で弄る。
すこしずつ、指を侵入させていくとナルトの口から愛らしい声が漏れる。
「…やっ…あ…あふ……センセ…っああっ…」
内部で蠢く指の動きに合わせて漏れる吐息に、カカシは、もっと、もっと奥まで指を進める。
そして、ある一点を強く擦りあげると、その声は一段と艶を帯びた。
「ああっ…せ、せんせぇ…っ…ふあ…あ、あんっ…」
湿ったそこが、くちゅくちゅと卑猥な音をたてる。
カカシは、再び反応を示し始めたナルトのそこを握りこみ、濡れた舌でなぞり上げた。
「やあっ…あ…あっ」
挿入された指の動きと、敏感な場所を攻めたて、開放を促す舌先に、
耐え切れない熱が、再びナルトを襲う。
「せんせ…ぇ…あ、もう…あっ…アー…っ」
ビクン、ビクンと躰を振るわせ、ナルトは欲望を放出した。
カカシは、白濁したそれを綺麗に舐めとると、
とうに硬くなった自分の熱を、ぐったりしているナルトの濡れた蕾に押し込んだ。
「ひっ…いやぁ!…ああっ」
体を裂く熱に、ナルトが悲鳴を上げる。
カカシは、その泣き顔に優しくキスをしながら、ゆっくり、熱い自身を進ませる。
「ああっ…ふ…んんっ…あっあぁ…」
気が遠くなるような熱の移動に、絶間無く嬌声が響く。
ナルトの両足を持ち上げ、更に開かせて、密着する。
小刻みに突き上げると、愛らしい声が途切れ途切れに漏れる。
「あっああ…あっ…せん…せぇっ…やぁ…あうっ…」
涙を浮かべて自分の名を呼ぶ少年を、幾度も、幾度も攻めたてる。
もっと、もっと、その声が聞きたい。
その声も、躰も、温もりも、
その存在すべてをこの手に刻み付けて。
いっそ、このままナルトを壊してしまえば、心残りなど無く行けるのかもしれない。
そんな思いを必死で振り払うように首を振って、
絶間無く吐息を漏らすその唇に、優しく口付ける。
ナルト…ナルト…
先生、先生、せんせえ…
何度呼んでも、足りない。
手を伸ばして、揺れる銀色の髪に触れる。
こうして触れることができなくなるなんて。
いっそこのまま意識なんか無くなるほどに壊してくれたら、
いつまでもその余韻をこの躰に刻み付けておけるのに。
もっともっと激しく動いてほしくて、必死でその首にしがみついて密着する。
「ふぁ…っ…せんせぇ…せんせ…えっ」
熱すぎる塊が、何度も自分の敏感な部分を擦り上げる。
その度に躰は震え、甲高い声が漏れ、涙が溢れる。
最初は痛みでしかなかった摩擦が、今では快感に変わり、
ぐったりしていた自身がまた頭を上げる。
カカシの熱いものが動くたびに、躰の中心から熱が生まれて、
感覚のすべてを支配していく。
ひたすら声を上げて、その快感を貪ることに没頭する。
「ああ…あ…ひ…あぁっ…せんせ……」
カカシもまた、その声に煽られて、動きを早める。
空いた片手で、三度目の開放を待つナルトのそれを攻める。
「あっ…ああ…せん、せぇ…っ!!」
先刻の優しい刺激とはうってかわって、乱暴なまでに擦り上げられて、
ナルトはすぐに反応を示し、息も絶え絶えに喘いだ。
「ああっ…ふ…せんせ…ぇっ…もう…あっ…あっ…」
「…ナル…ト…っ…」
カカシのそれも、限界を訴え始める。
ナルトは必死でしがみついた背中に爪をたてる。
「せんせぇ…せん…せぇぇ…!」
快感に、
そして哀しみに、
ナルトは幾度もカカシの名を呼んだ。
ひときわ大きく躰を痙攣させ、己の性のすべてを吐き出す。
「…くっ…」
少し遅れて、カカシの温かいものがナルトの奥に放出される。
ぐったりした二人は、互いの顔を手で包み込むように触れ、見詰め合う。
「せんせぇ…せんせぇ…」
小さな声で、ナルトは何度も繰り返す。
涙でぐしゃぐしゃになった顔にかかる前髪を掻き揚げ、おでこにキスをする。
「だいすきだよ、ナルト」
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やがて、小さな寝息を立て始めた少年を、カカシは愛おしそうに見つめる。
その、小さな頬に残る涙の跡を、指先でなぞる。
ねえ、オマエの傍で、こうしていつまでも
その寝顔を見つめていられたら、どんなに幸せだろうね?
「この気持ちは、ずっと変わらないから」
最後の、優しい、小さなキス。
零れた涙がひとすじ、頬を伝っていった。
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窓の外が明るくなり始め、ナルトが目を覚ましたとき、
その横に、カカシの姿は無かった。
残っているのは、体に残る痛みと、かすかな温もりと、
最後に触れた優しい唇の感触だけで。
「…うそ…つきっ…」
ナルトの瞳から涙が零れる。
昨日の熱がよみがえる。
先生の強い腕、
先生の柔らかいくちびる、
先生の声。
「カカシせんせぇ…」
優しいキスを思い出す。
その唇に触れる。
そして、耳元に残る、ささやかな吐息と、
約束。
『この気持ちは変わらないから。』
涙が零れて、
咽喉が詰まって、言葉が出せなくて。
それでも。
「…オレもだってばよ…せんせー…」
だいすきだから。
ずっと待ってるから。
だから、オレの隣に帰ってきてね。
その大きな手で髪を撫でて、オレの名前を呼んで、
そして「だいすきだよ」って囁いてね。
その約束だけで、オレはずっと生きていけるから。
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あの冬の日、確かに交わされた約束を、
この雪の中で、一人、思い出しています。
温かかった唇も、
優しい吐息も、
絡めた冷たい指の感触も、
へたくそな嘘も。
7月の空に雪を乞うように、
アナタをずっと待っています。
「せんせー…」
春が来るよ。
宝谷シナコ様からの強奪品。
あぁ〜なんて切ないお話なんでしょ。
Hありの完全版とH無しと両方置いてあったんですけど、迷わず完全版の方をいただいてきてしまいました。
ぜひぜひ、カカシ先生生還編を……(切望)