「なぁ、ナルト・・・・」
「・・・・」
「ごめん」
「・・・・別に、いいってばよ」
「・・・・」

大人と子供。
単純な意見の相違で、二人の会話は途切れた。
いつもは煩いくらいに喋り続ける子供が、今は無言。
本当にどうでもいいことで子供を傷つけてしまった男。

今まで他人との接触に気を配ることがなかったから。
今まで他人に優しく接することなど一度もなかったから。
人を傷つける方法しか知らない自分が、男は酷く情けなかった。

いっそ言葉なんて存在しなければ、子供を傷つけることもなかった。
不器用な言葉しか出てこない自分を棚に上げて、男は世界を恨んだ。
少し冷たくなった部屋の空気を吸い込んで、天井を睨む。


どうしても口に出せない言葉が、男には一つあって。
それを言って欲しがる子供を、いつも悲しませてしまう。

男が言えない言葉。
それはとても単純で。
それはとても短いフレーズ。
それは誰でも知っている言葉だけど。
それでも男には酷く難しい言葉だった。

その言葉が表現する感情。
男はいつも子供に対して感じているけれど。
言い慣れていない言葉は、直前で男を躊躇わせる。
この言葉は、男には相応しくないと。


ふと隣の子供に意識を戻すと。
男にもたれ掛かって眠っていた。
目尻に少し涙が滲んで。
また泣かせてしまったことに気がついた。

眠る子供を抱き寄せて。
男は子供の髪に顔を埋める。
自己嫌悪でささくれ立った心。
子供の甘い香りが男を癒してくれる。

「守りたい」

男は誰に対してではなく誓ったけれど。
結局子供を傷つけるのはいつも男自身で。
結局守られているのはいつも男自身で。
その誓いは守られることなく宙に浮いて。
男を責め続ける。

「一緒にいたい」

男は子供に言われたけれど。
笑って頷いてやれなかった。
子供を傷つけてばかりの男。
この先も、きっと何度も傷つけてしまうだろうから。
本当は、子供の側にいてはいけないのではないかと思うから。

それでも。
子供を何度傷つけても。
子供を守ってやれなくても。
男はもう子供を手放せないから。

初めて出会ったあの時から。
二人の物語は始まってしまった。
それを男は終わらせるつもりなどないから。

力の抜けた子供の小さな手。
そっと握りしめて男は一度だけ息を吐く。
躊躇や自己嫌悪を振り捨てて。
頭を空っぽにする。

たった一つの言葉。
今なら言える気がしたから。
子供が眠っている今なら。
子供が側にいてくれる今なら。

いつも躊躇っていた言葉。
感情に身を任せて。
声に身を任せて。
男はそっと囁いた。


愛してる


「愛しい」だなんて 言い慣れてないケド 今なら言えるよ 君のために
となりで笑ってくれるのならば これ以上 他に何も要らないよ
出逢えたことから 全ては始まった 傷つけあう日もあるけれども 
「いっしょにいたい」と そう思えることが まだ知らない明日へと つながってゆくよ


2001.03.08






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