| 大は小を兼ねる ナルトは任務後にカカシの家に遊びに来ていた。 まだ数えるほどしか来たことのないカカシの家は、上忍だけあってかなりの広さを持った一軒家で、しかも贅沢なことに平屋だったりする。 ナルトにとってはこの広い家を散策することはちょっとした探検みたいでかなり楽しい。 カカシが何も言わないので、ナルトは探検気分でうろうろと家の中を歩き回っていた。 ちなみにカカシはリビングのソファで読書中。(もちろんイチャパラ) 玄関から一番奥まった部屋のドアをキィと開けると、そこは寝室だった。 大きなベッドと窓際に置かれた観葉植物以外はほとんどものが無い。 例外は観葉植物の隣に置かれた小さな二つの写真立て。 ひとつはスリーマンセルを組んですぐに取った7班の記念写真。 不機嫌そうなサスケと、腕組みをしてサスケを睨んでいるナルトと、サスケと一緒に写真に写るのが嬉しいのか幸せそうなサクラと、目を細めて笑っているカカシ。 カカシがこの写真をちゃんと飾っていることに、ナルトはなんだか嬉しくなってへへっと小さく笑った。 ついっと視線をずらすと、もうひとつの写真立てが目に入る。 そこには同じような構図で、見知らぬ人達と一緒に小さなカカシが写っていた。 ナルトは思わず写真に見入ってしまう。 ナルトの知らない昔のカカシ。 今と同じく口布はしているけれど、左目は晒されたまま。 あまり機嫌のよくなさそうな顔。 眠そうな目は相変わらず。 「何、してんの?」 写真に見入っていたナルトの後ろで声がして。 顔だけで振り向くと、イチャパラを手に持ったままのカカシが戸口に立っていた。 ナルトがなかなか戻ってこないので様子を見に来たのだ。 「センセー、これさ、センセーが下忍の時の写真?」 ナルトの背後に立ったカカシを仰ぎ見て、ナルトが聞いた。 身長差があるせいで、後ろに倒れてしまいそうなほど首を反らしている。 その様子に笑いながらカカシがナルトの手元を覗く。 ナルトの手にあるのは、カカシがスリーマンセルを組んでいた頃の写真。 カカシにとっては懐かしさと共に、苦い思い出をも含んだ写真。 大事だった仲間、尊敬していた先生。 どちらもすでに過去の人だったけれど。 カカシは手に持っていたイチャパラを閉じて窓際に置くと、傍らのベッドに腰掛けた。 立ったままのナルトを背後から捉えて自分の膝の上に乗せる。 程よい重みが心地よい。 付き合いはじめた当初は抱き上げたりすると緊張したように体を強張らせていたのに。 今のナルトは素直にカカシの腕の中に収まっていて。 野生の小動物を馴らしたようで、カカシはなんだかくすぐったい気分になる。 蜂蜜色の髪に頬を擦り寄せてその感触を楽しんでいると、 「んもうっ、センセーってば!」 焦れたようにナルトがカカシを呼んだ。 「そうだよ。俺が下忍の時の写真だよ」 ムードの欠片も無いナルトの態度にカカシは苦笑しながらそう答えた。 「センセー、なんかちっちゃくない?」 ナルトが顎を反らしてカカシを不思議そうに見る。 確かに、今の自分達に比べて写真の中のカカシは背も低く、幼い。 そのことにナルトは疑問を感じたらしい。 「あぁ、だってその時、俺、六歳だからね。その後すぐ中忍になったし」 「えーっ!六歳ってセンセー、アカデミーは?」 「入学してすぐ飛び級したからなぁ」 「・・センセーって・・」 ナルトは珍動物を見るような目でカカシを見て、それから大きなため息を吐いた。 「なあんだ、センセーが下忍の時に、こんだけちっちゃかったんなら、オレもセンセーみたいにおっきくなれると思ったのに・・」 なるほど、とカカシは思った。 平均よりもかなり小さいナルトは身長のことをとても気にしている。 同じ班の女の子のサクラよりも小さいのだから、気にするのも仕方ないだろう。 しかし、ナルト達の年頃は、男の子よりも女の子のほうが成長が早い。 心配せずともそのうちナルトも少しずつ大きくなるに違いない。 大丈夫という意味を込めて、俯いたナルトのふわふわの髪を撫でようとカカシが手を伸ばしかけた時。 ナルトがぱっと顔をあげた。 「センセー、俺とおんなじ年の時に変化してみて!」 「は?」 どうしてもカカシの身長がどれくらいだったかを知りたいらしい。 いかにも名案を考え付いたというナルトの顔。 さすがは意外性NO1だけある。 予想もつかないような事を言い出す。 ナルトはわくわくと期待でいっぱいの瞳でカカシを見上げている。 そのあまりに無邪気な顔に、嫌だというのも気が引けて、カカシは渋々頷いた。 やった、とナルトが目を細めて笑う。 結局、ナルトにはとことん甘いカカシだった。 (十二歳ねぇ、どんなだったっけ?適当でいいか・・) カカシはナルトを膝の上から降ろして立ち上がると、印を結んだ。 ぼふん! 「うわぁ、小さいカカシセンセーだ・・」 ナルトより頭半分ほど高い身長。 今と変わらぬ綺麗な銀髪。 まだ左目には傷もなく、カカシは黙っていればかなり綺麗な子供だった。 いつもは背伸びをしても視線を合わすことの出来ないカカシの顔がすぐ近くにあってナルトはなんだかとてもドキドキする。 いつも感じている大人と子供の隔たりがほんの少し薄らいだような気がして・・。 「満足した?」 声もなんだかいつもより少し高い。 「うん・・でも、やっぱりセンセーのほうが大きいってば。もしかしたら、サスケよりも大きいかも・・」 ナルトは背比べをするようにカカシの目の前に立った。 やはりカカシの方がかなり大きい。 「大丈夫。ナルトだってそのうち大きくなるよ。ラーメンばっかり食べてないで、色んなもの食べなくちゃな」 目に見えて落ち込んだナルトを慰めつつ、窘めつつ。 カカシもまた、いつもは腰を折らないと正面から見ることの出来ないナルトの顔がすぐ近くにあることに、新鮮な驚きを感じていた。 目の前のナルトを見つめながら、カカシは今の自分の身長と似たり寄ったりのサスケのことを思い出す。 (サスケはいつもこの目線でナルトを見てるんだよなぁ・・) 綺麗な蒼い瞳、つまんで作ったような小作りな鼻、まろやかなミルク色の頬、小さな淡い紅色の唇。 サスケがいつもどんな気持ちでナルトを見ているのかわかるような気がして、カカシはナルトとは逆に、その事に大人と子供の隔たりを感じた。 それは、嫉妬に似ていた。 自分の知らないナルトを他人が知っているようで。 くいっと小さな顎をつまんで、顔を上向かせる。 びっくりしたように蒼い瞳が大きく見開かれて。 瞳を縁取った意外に長い金の睫毛が瞬きの度に揺れた。 大人げない嫉妬心も手伝って。 カカシはすぐ目の前にあるふっくらとした唇に吸い寄せられるように口づけた。 「セ、センセー!」 突然のカカシの行為に驚いて、ナルトは小さく首を振って抵抗した。 けれど、ついばむように触れるだけの口づけを繰り返すうちに、抵抗していたナルトの体から力が抜けていく。 「っふ・・ぅ」 触れるだけの口づけがやがて深いものに代わり、含みきれなかった唾液が銀色の糸となってナルトの口の端を伝う。 未だ慣れるということを知らないこの行為に、ナルトが苦しげな吐息を洩らす。 それに気付いたカカシが、ナルトの顎を伝った銀糸を舐め上げて、ようやくその唇を解放した。 「・・キス、しやすいね」 にやりと笑ったカカシの言葉にナルトはもともと紅かった頬を更に紅く染めた。 カカシはその様子に小さく笑って、変化を解いた。 カカシがいつもの姿に戻ると、ナルトの頭はカカシの腰あたり。 いつもと同じ場所にある、蜂蜜色のまあるい頭。 これが自分達の今のカタチなのだとカカシは思う。 大きくても小さくなってもカカシはカカシ。 小さくても大きくなってもナルトはナルト。 ナルトが追いつけない部分は自分が合わせればいいのだから。 「ナルト、ゆっくり大きくなりなさいね」 カカシはナルトの体を自分のほうに引き寄せて言った。 「早く、大きくなりたいってばよ」 ぷうと頬を膨らませてナルトが抗議する。 くしゃりとナルトの頭を撫でて、カカシはナルトの前にしゃがみこむ。 「こうやって、しゃがめば、ちゃんとナルトの顔、正面から見れるし。抱っこすればキスするのも別に困らないし。大は小を兼ねるっていうデショ?」 「・・ワケわかんないってばよ?」 「小さくても大きくても、俺はナルトがスキってことだよ」 そういって、カカシは怪訝そうなナルトの頬に口づけた。 「よくわかんないけど、オレもカカシセンセーが大スキだってばよ!」 にっこり笑って、元気いっぱいにカカシの気持ちに応えたナルトに。 カカシは微笑んで、もう一度、今度は唇にキスを落とす。 いつかこの子が。 自分と正面から向き合えるようになった時も。 同じように想っていてくれたら。 それだけで幸せ。 10000HITありがとうございます! こんなところまで来れるなんて本当に夢のようですvv 来て下さった皆さま全員に御礼を言いたいです。 本当にありがとうございました! そして、お持ち帰り小説。 こんなものですが、よろしかったらお持ち帰り下さい。 これからもcaramel boxをよろしくお願いします☆ 吉田さま、10000HITおめでとうございます。 いちまん!ですよ?!さすがです〜 吉田さまのサイトはまほらのようにカカナルに飢えて夜な夜なネットを徘徊しているカカナルジャンキーが辿り着くパラダイスですv この調子で20000、30000とガンガンいきましょー! それにしても、らぶらぶです〜甘々です〜〜〜 こんな素敵な小説をいただいてしまってまほらは幸せモノです(>_<) やはりナルちょはカカシの過去が気になる様子。せめて年だけでも知りたい、私。 でもナルちょは大きくなっちゃだめ! カカナルは慎重さが命!なんだから(笑) 吉田さま、素敵なお話をありがとうございました(^o^)丿 |
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