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今年もアレの季節がやって来た。 今年は…今年は…ナルトからチョコがもらえる!! はたけカカシは2月に入った途端、一日が終わるたびにカレンダーの前でガッツポーズを取っていた。 ちなみに過ぎた日付にはバツ印が付いていたりする。 毎年毎年出所不明のチョコが山積みのカカシは、この季節その甘い香りを嗅いだだけで鬱に陥っていた。 元々甘い物が好きではないだけに、チョコの山と女性の気持ちは責め苦に等しい。 と、そう思う前に遠慮なく処分させてもらっているのだが。 しかしナルトからのチョコは別格も別格! 例えバケツ一杯のチョコの塊だろうが残さず、大切に喰う気満々だ。 と言うか、一体どんな形のチョコをくれるのだろうか…? やはりハート型? 「いや〜〜〜〜、参ったなぁ〜〜vvv」 参ってるのは己の頭だ。 カカシは一人、まだ貰っても、ましてや貰えるかどうかも分からないチョコについて延々想像を繰り広げるのだった。 今年も…彼女ナシ…かぁ…。 イルカは一人、しみじみとそう思いながら茶を啜った。 今日も今日とて残業である。 彼の場合、人の良さが祟った。 良いなと好意を寄せている女性は皆「イルカさんは良いお友達v」と声を揃えて言う。 独り者と彼女持ちでは何事にも差が生じる。 差とは2月14日にこそはっきりと分かる。 チョコが貰えるかもらえないかの差だ。 自慢じゃないが今まで義理チョコ以外のチョコを貰った事のないイルカは、実は密かに「今年こそは」と思っていた。 が、そんな彼に時は残酷にも待ったなしで進んでいく。 14日まで片手の指で足りる程の期間に入ってしまった。 こうなったら13日の次の日は15日だと自分に言い聞かせるしかない。 イルカはまた茶を啜った。 沈み行く太陽を職員室の窓越しに眺めて、しばしの現実逃避に耽る。 太陽の赤さが切なくイルカの目に沁みる…。 「はぁ…自分じゃない可愛い彼女が煎れた茶が飲みたい…」 言った後のこの虚しさは何だろうとか思ったけど、イルカはそれを黙殺した。 「ねぇ、サスケ君…甘いものってスキ?」 ・・・・・・・・・・・ウザイ。 サスケは正直そう思った。 しかしサクラもほんの少しだけ遠慮がちに尋ねてきたので、無下にするのも可哀想な気がしたサスケは一言「嫌いだ」と言った。 「サクラちゃん!!俺さ俺さ、甘いものスキだってばよ!!」 ナルトがちょろちょろとサクラの周りにじゃれ付きはじめる。 その様子が小型犬を、しかも仔犬を思わせる。 それなのにサクラは、悲しみに打ちひしがれた表情で纏わり付くナルトに「ナルトには聞いてない!」と言い放った。 最近のお子様事情は色々と複雑なのだ。 「だいたいナルトはもらうよりあげる方でしょー?」 そんな風にからかわれて、ナルトは突然真っ赤になった。 サクラはそれを見て、にんまりと笑った。 「うう…っ、でも…どんなのにすればいいか…俺ってば全然分かんなくて…」 「きゃ〜〜〜〜〜〜〜vvvvナルトも悩んでんのね〜〜〜〜〜ッ!!」 ←夕焼けみたいだ…(笑) サクラは嬉しそうにはしゃいだ。 ナルトは可愛くも一人照れ捲くり。 「いいわっ!どんなのがイイか、私も一緒に選んであげる!!」 サクラががしっとナルトの手を取った。 「ホ、ホント?!ありがとってばvサクラちゃん!」 ナルトが頬を染めつつサクラに例を述べる。 こと恋愛に関しては男女間を越えた友情が芽生えるのだろう。 きゃあきゃあ騒ぐナルトとサクラを他所に、サスケは疑問符を浮かべながら「もらうよりあげる」の意味を考えていた。 …サスケはバレンタインを知らなかった。 そんなこんなで迎えたバレンタインデー。 カカシは朝から気合い入れ捲くりで当日を迎えた。 珍しく遅刻もせず、「先生だってやれば出来るんだから、お前たちもやって出来ないことはないと思いなさい」と、 むしろてめーの教訓にしろよと突っ込まれそうなことを朝から絶好調でのたまっていた。 「なんかカカシ先生ごきげんねー」 ひそひそとサスケとナルトに囁くサクラ。 「一楽の50%OFFの割り引き券でも拾ったのかも!!」 そりゃアンタは嬉しいだろうケド…とサクラは呆れた。 「きっとバレンタインだからって浮かれてるのよ…」 ぼそりとサクラが言った。 「見た目あんなに怪しい癖にチョコなんて貰えなそうよね…」 一理ある、と言うか勇気ある一言だ。 「サクラ、こー見えて俺は滅茶苦茶格好イイから毎年チョコ沢山もらってるんだぞー」 しかし! とカカシはそこを強調して話を続けた。 「今年は本命からしか貰わないって決めてるんだーvv」 そのカカシの一言にナルトは一瞬固まった。 (…どうしよう…本命からしかって…俺のチョコは受け取って貰えないってば…) コンプレックスの塊であるナルトは、自分がカカシの本命であることにはイマイチ確信が持てない様である。 一方のカカシ。 (ナルト〜〜〜vvv今日は待ってるゾ☆) と念だか怨だか得体の知れぬチャクラを送っていた。 「サスケく〜んv」 ふいにサクラがとっておきの余所行きの声でサスケに話しかけてきた。 「コレ…一生懸命作ったんだv…受け取って…くれるよね…?」 脅しを交えながら両手で支え持ったピンクの包み紙をサスケに差し出した。 受け取らねばなるまい…サスケは本能的に逃げられないことを悟った。 「あ…ああ…」 震える手でサクラから包みを受け取る。 「チョコなんだけど…」 もじもじと恥じ入るサクラ。 サスケは本人の目の前で包みを開ける。中からは美味しそうなハート型のチョコが入っていた。 確か昨日、甘い物は嫌いだと答えたはずだが…と思ったが、貰ってしかも袋を開けた手前、食べないわけにもいかず、 結果サスケは一つだけ食べることにした。 「サスケ君、甘いの嫌いって言ったから…vvv」 人差し指と人差し指をつき合わせるようにしてサクラが言う。 サスケの口の中にチョコが投げ込まれ、それを咀嚼する。 「砂糖じゃなくて塩入れてみたんだけど…vvv」 「・・・・・・・」 サスケは生まれて初めて人間の食い物以外のものを食べた。そして余りの塩辛さと、不味さに意識が遠のく。 「きゃーーー!!サスケ君?!」 初めてサクラを怖いと思った日だった。 結局その日は倒れたサスケを除いて任務が行われた。<哀れサスケ… 任務終了後、それぞれが色々な思いで歩いていると前方に哀愁漂う見慣れた背中が。 「あっ!イルカ先生だってばよ!!」 ナルトは嬉しそうに目を輝かせると、だっと走り出した。 「あ!ナルト!!」 カカシが嫉妬と殺意の眼差しで中忍を見据え、愛しい子供を捉えようと伸ばした腕はあと少しというところで空を掻いた。 「イルカせんせぇ〜〜〜〜〜!!!!」 「ん?おお!ナルト〜!!」 イルカは両腕を広げて、走ってくるナルトを迎える体勢を作る。 ナルトは走りながら素早く印を結ぶと、「おいろけの術」を披露☆ 「な゛っ?!」 イルカ盛大に鼻血ヴーv 「バレンタインおめでとーだってばよv」←何か間違ってる。 ナルトはおいろけで豊満になった胸の谷間に板チョコらしき形状の包みを挟んでイルカの胸に飛び込んだ。 しっかり受け止めつつも、それがナルトのおいろけで仮初だと分かっていてもやはりイルカはあっさりと昇天した。 「全く何て奴だ!!」 鼻にティッシュを詰めながらイルカは憤慨した。 変化を解いたナルトはイルカの前で唇を尖らせて「だってさー」と言い訳を始める。 「イルカ先生、チョコ貰えなそうだったから俺…」 大きなお世話であるが、ナルトの気持ちは嬉しかった。 「…あー…その…」 イルカはバツが悪くなった。 「ありがとな!!」 頬を指で掻きつつ、イルカは礼を言った。 「エヘヘv」 師弟愛ここに極まれり!!<じぃん☆ しかし、面白くない奴が一人…。 はたけカカシだった。 (ナ、ナルト〜〜〜〜〜!!!!!何で中忍にはあって俺にはないんだ〜〜〜〜!!!!) カカシは悶絶して叫びそうになった。 何故イルカは貰えて自分は貰えないのか? ひょっとしてあのチョコは本当は俺あてなんじゃないだろうかとか色々考えて、殺気がにじみ出ているのが分かる。 カカシはだんだん焦って来た。 もしかしたらもらえないのかも知れない…いや俺に限ってそんな事…いやしかし…ありえないとも言い切れん…。 悶々とする。 そんな考えが堂々巡りで結局結論を導き出せない。 まぁまだ一日が終わったわけじゃあるまいし、と何とか自分に言い聞かせてその場を凌ぐ。 「そんじゃあね〜〜〜!イルカ先生!!」 「おう!!チョコありがとうな!」 「あ、それ義理チョコだってばよ?」 「ぐ…っ、し、知ってるよ!」 何も義理チョコだと宣言しなくたって…。 イルカはちょっぴり涙が出そうだった。 元気良く手を振って去っていく可愛らしくも憎たらしいクソガキをイルカは引き攣った笑顔で見送ったのだった。 結局その日はチョコを貰う事無く解散となった。 カカシは相当凹んだ。 一体何故チョコが貰えなかったのだろうか? 「ナルト…何でなんだぁ〜…」 もしかしてイルカに上げたあのチョコは実は本命チョコだったとか…。 ひょっとして俺との恋愛はおあそびだったとか…!! 「…原因を追究せにゃ…!」 カカシは急いで身支度を整えると、部屋を後にしたのだった。 一方その頃、ナルトはナルトで凹んでいた。 「カカシ先生ってば…本命にチョコ貰えたのかな…?」 ちょりっと涙ぐみながらナルトは呟いた。 テーブルの上にはカカシにあげようと思って用意したチョコレートの包みが。 結局あげられなかった。 「…どーしよ…コレ…」 呟いてから、ナルトはチョコの包みを開いた。 ナルトは一人で食べることにした。 小さなチョコを指でつまみ、口に放り込もうとした瞬間、激しくドアを叩…いや、むしろ殴る勢いでノックする音が聞こえた。 怯えながらもドアを開けると、そこにはカカシが立っていた。 「よっ!」 「よっ…って先生…どうしたんだってばよ?」 「どうしたんだってばよって…ひどいってばよー」 ナルトの口調を真似て、カカシが涙を零した。無論嘘泣きであることは言わずもがなであろう。 口真似すんなとナルトにどやされながらも、カカシは家の中に招き入れられた。 「さっそくなんだけど、なんでチョコくれなかったの?」 カカシの頭の中にはもはやそれしかない。 「…だって…」 言い淀むナルトを他所にカカシはテーブルの上に乗っているチョコに目線が釘付けになった。 「…あのチョコってさ…俺にじゃ…ないの?」 むしろそうあってくれとカカシは祈る気持ちで尋ねた。 ナルトは俯いて小さく頷いた。 「何でくれなかったの?」 カカシは責めると言うよりも、優しく言い聞かせるようにして尋ねた。 「だって…カカシ先生…本命からしか…貰わないって言ったじゃんか…」 小さな声でそれだけ言うと、ナルトは口を真一文字に引き結んで黙ってしまった。 確かにそう言った。 けれど、その『本命』がナルトであると言うのに。 「あのねぇナルト…俺今日一日ずっとナルトからチョコ貰えるの楽しみにしてたんだよ?」 カカシがそう言うとナルトはえ?と顔を上げ、カカシを見詰めた。 「それに俺が言う『本命』の相手はナルトなんだけど…なんだ…ナルトは俺の事そーは思ってなかったんだ…」 くっ、とカカシは目頭を押さえた。 自分で言って悲しくなったらしい。 「な、違うってば!!そんなことないってばよ!!」 「じゃーそれを証明して見せてよ」 そーじゃないと信用出来ないとカカシは意地悪な事を言う。 案の定、ナルトはどうすれば良いのか思い悩んだ。 その時、ナルトの目の端に、テーブルの上のチョコが写った。 ナルトはチョコを一つ抓むと、口の端に咥えた。 そしてそのままカカシの唇へと近づけて、ちゅっと唇を重ねる。 チョコは見事にカカシの口の中へ。 「カカシ先生すきだってばよ」 ああ…陥落…。v 口の中に広がる甘い味と、ナルトの告白を噛み締めながら、カカシは最高の幸せに浸るのだった。 ☆オワレ☆ やあやあハッピーバレンタイン☆ バレンタイン、いかがお過ごしですか?? 何とかバレンタイン企画を書き上げる事が出来てホッとしております(笑) 今回珍しくエロもなく(笑)平穏無事に甘々なカカナルが書けた事を喜ばしく思っていたりいなかったり…<どっちだ。 こんな面白味も何もないssですが、一応お持ち帰りOKです。 テイクアウトの際は掲示板なりメールなりでお知らせしてくださると嬉しいですv ではでは〜☆ 夕焼けセンチメンタル拝 |