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今日は朝から誠に会っていない。
おかげで太陽はちょっと不機嫌である。
「むう〜〜。朝ご飯とか昼ご飯のときに絶対に会えると思ったのに…」
避けられているわけではないのはわかっている。きっと訓練をしているのだろうと、ブルーサイレンズの全員が不在ということから推測ができる。
でもやっぱり、
「朝一回、昼一回、夜に一回、そんでもって寝る前に一回は誠に会わないと…はあ…」
落ち着かない太陽なのである。
今日はレッドウィングスは非番であるのに、太陽は誠を探して、基地内を朝からあちこち歩き回っていた。
そうこうしているうちに、時間はすでに4時を回っていた。
「誠、どこにいるんだろうなあ…」
ぼんやりと空を眺めて、太陽はため息をつく。
夏になり、日が長くなったせいか、いまだ日が沈む気配は見えない。
「ずっとずっと探してるのになあ…」
なかなか会えないのだとわかると、誠に会いたいという気持ちが、心の中でうんとうんと大きくなって、切なくて仕方が無い。
「胸がきゅうってしてるよ〜〜誠〜〜」
朝から歩き回っているせいで足が棒のようだ。
もう歩きたくないから帰って誠の部屋で待っていようとも思うのだが、やっぱり悔しいから、
「よいしょ…」
座り込んでいた重たい体を立たせた。
「ふぅ…」
息を吐いた太陽の耳に、
「こら、アリス!誰が休んでいいと言った!!」
聞き慣れた誠の怒声が聞こえてきた。
「誠だっ」
声が聞こえてきた浜辺へと駆けていけば、ブルーサイレンズ面々の姿が見えた。
誠以外は皆砂浜に倒れこんでいる。
「もうアリス走れない〜〜!!」
そうアリスが叫んでいるから、きっと誠はまた無茶な長距離走でも行っていたのだろう。
「誠〜〜〜〜〜っ」
太陽が大声で誠の名を呼べば、アリスと口論を開始するべく口を開いたままの格好で、誠は太陽のほうへと振り返った。
「太陽」
誠と目があった。
その瞬間、すごくすごく嬉しくなって、
「えへへへへへ」
太陽はふにゃりと笑って、誠に向けて手を振った。が、次の瞬間。
「わっ」
太陽は足をすべらせ、砂浜へころげ落ちた。
「太陽!!」
顔色を変えた誠が走ってくる姿が見える。
砂浜に大の字で転がっている太陽は、体中が痛いのも忘れて、笑ってしまった。
「何やってるんだお前は!!」
太陽のそばまで来た誠は、ひざをつき、そっと太陽の前髪をかきあげ、顔を覗き込んだ。
「誠だあ〜」
「は?」
ふんにゃりと笑った太陽は、酷く嬉しそうに、
「誠」
誠の名前を呼んだ。
「っ…?」
思わず顔を赤らめてしまいつつ、誠はいまいち状況を把握できずに困惑した表情を浮かべた。
「何…やってるんだ」
「誠をさ、朝からずーっと探してたんだ」
「なんでだ?何か用でもあったのか?」
「用は特にないんだけどさ。今日まだ誠に会ってなかったからさ〜」
「ああ。朝から訓練のし通しだったからな…」
そこまで口にして、まさかと、誠は顔をしかめた。
「まさかお前、オレに会うためにオレのこと探してたのか!?」
「うん!でさーやっと会えたと思ったら嬉しくって、ついつい転んじゃった!えへへ〜〜」
「えへへじゃないだろ!!ったく。大きな怪我でもしてたらどうするつもりだ!!」
誠の手を借りて、上半身を起こした太陽は、
「うん、ごめんな」
やっぱり嬉しそうな顔で笑って、誠の手を放そうとしなかった。
「だ、だいたいな、非番のお前が寝坊するのが悪いんだろう!?」
いくらつよい力で引いても、太陽は手を放そうとしないから、誠は顔を赤く染めた。
そんな誠を見て、太陽は意地悪そうににやりと笑った。
「誠もオレに会いたかったとか?」
「ふざけるな!!」
「ふざけてなんか無いよ。ちょっと、そうだったらいいなって思っただけ。それにオレ、もう寝坊しないもん。誠とちゃんと毎日会いたいからさ」
「〜〜〜っ!よくもそんな台詞を真顔でいえるな、お前は!!!」
「だって誠がすきなんだもん」
「〜〜〜〜!!!!」
まるで金魚のように口をぱくぱくさせて、酷く動揺している誠の手を、太陽は軽く引っ張った。
「うわっ」
腕の中に誠をおさめ、太陽は満足そうに息を吐いた。
「誠…」
ぎゅううと抱きしめられながら、思わず油断してしまったことを酷く悔しく思いながら、
「このっ…甘ったれ」
誠は毒づいた。
しかし、どんな誠の言葉でも嬉しいのか。
太陽は、
「うん、誠大好き」
と、耳元で囁くから。
誠は最後にはやっぱり、
「〜〜〜〜〜〜馬鹿」
としか、言えなくなってしまうのだった。
強制終了完了!!!!!!!!!!!!!逃。
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